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エゴイスト達のティザーフィルム/涼的小说

エゴイスト達のティザーフィルム 自我主义者们的预告片

32,659字1小时5分钟

「作られていない、こんなに美しくて幸せそうな誰かの顔が撮れるなんて、初めてなんだよ」
「从未见过,能捕捉到如此美丽幸福的面容,这还是第一次」


オフのお仕事でどこかのハイブラのアンバサダーとしてプロモーション撮影をするseisの話
关于 seis 在休息日作为某高端品牌的代言人进行宣传拍摄的工作


※注意事項 ※注意事项
・何でも許せる方向けです。閲覧は自己責任にてお願いします。
・内容可能包含敏感话题,请谨慎阅读。阅读责任自负。

・レ・アールにて冴潔が同チームに所属しています。 ・冴潔在レ・アール队中与同队成员互动。
・濃い目のモブががっつり出演&よくしゃべります。 ・有较多戏份的配角频繁登场并活跃对话。

閲覧いただきありがとうございます。いいねやコメント・スタンプなどいつも嬉しく見ています。お返事できておりませんが、励みになります。ありがとうございます。
感谢您的浏览。点赞、评论、表情等总是让我感到开心。虽然未能一一回复,但这些都是我的动力。非常感谢。


穏やかで距離は近くて、でもまだサッカーだけでいい、みたいなseisを書いてみたい人生だった……。
我曾想过一种平静而亲近,但仍只专注于足球的生活,就像写一个 seis 那样……。

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 水を指先でかき分けていく。両の手を片方ずつ順に出して前へ進む。やがてゴールにしていた壁に手を突くと、冴は勢いよく顔を上げた。濡れた前髪を手でかき上げて来た方向を振り返る。
用指尖拨开水面,双手交替着向前摸索。不久,当手触到作为终点的墙壁时,冴猛地抬起头。她用手拨开湿漉漉的刘海,回头望向来时的方向。

 ホテルの屋上に作られたプールは最近作られただけあって綺麗だった。周囲の建物から覗かれないように壁はあるが、ガラス窓も多く閉塞感は感じない。天井はなく、空を見れば朝の日差しが緩やかな角度で差し込んでいる。
酒店屋顶上的泳池刚建成不久,非常干净。四周有墙壁防止被窥视,但玻璃窗很多,没有闭塞感。没有天花板,抬头就能看到早晨的阳光以柔和的角度洒落。

 プール自体は広くない。深さも、冴が立てば水面が胸元にくるまでに止まる程度だ。本気で泳ぐには物足りないが、まあこんなところでガチ泳ぎするのは、後にも先にもきっと自分たちくらいだろう。
泳池本身并不大。深度也仅够冴站立时水面到胸口。认真游泳的话可能不够尽兴,但在这里拼命游泳的,恐怕也只有我们了吧。

 冴はバシャバシャと音を立てて近づいてくる人影を見つめた。最後の最後でゆっくりと壁に手を突いた潔は、水面から顔を出すとプハッと大きく息をする。
冴盯着发出哗啦哗啦声靠近的人影。最后慢慢靠在墙上的洁,从水面露出脸,呼地深吸了一口气。

 「おつかれ」と声をかければ、恨めしげな視線が冴に対して向けられた。
 「辛苦了。」话音刚落,一道怨恨的目光便投向了冴。

「冴……速くね?」 「冴……你太快了吧?」
「お前が遅いんだろ」 「是你太慢了吧。」

 冴は壁に背を寄りかけて息を整える潔を無表情で見下ろす。
冴靠在墙上,面无表情地俯视着调整呼吸的洁。

「お前、泳ぎは苦手なのか?」 「你,不擅长游泳吗?」
「俺の実家が海なし県なのはご存知ですかね。鎌倉育ちの糸師さん」
「你知道我家在无海县吗?在镰仓长大的糸师先生。」

「埼玉出身の奴は全員泳ぎが下手だと? んなわけねぇだろ」
「埼玉出身的家伙游泳都不行吗?怎么可能嘛」

「んぐっ……きょ、今日はたまたま! と言うか俺は平均! ……、たぶん」
「唔……今、今天只是偶尔!或者说我是平均水平!……大概」

 潔は自身なさそうな声で呟きふいっとそっぽを向いてしまった。冴はふっと吐息で笑って口角を上げる。
 洁低声嘟囔着,显得没什么自信,突然转过头去。冴轻轻叹息,嘴角上扬,露出一丝笑意。

 澄んだ水は太陽の光を受け入れて揺らめいている。キラキラと輝く水面を見ながら、冴は不満気にしている潔の頭を柔く撫ぜた。濡れた黒髪はいつも以上に乱れやすくて面白い。
 清澈的水面在阳光下波光粼粼。冴一边看着闪闪发光的水面,一边温柔地抚摸着不满地皱着眉头的洁的头。湿漉漉的黑发比平时更容易乱,很有趣。

 プールには他に客もおらず完全に貸切状態だ。上半身の素肌を無防備に水面に晒す潔は先ほどの泳ぎがよほど悔しかったらしく、足の使い方や腕の回転速度について、ブツブツ言いながら何やら反省を始めている。右手の指先を唇に当てて考え込む瞳は真剣そのもの。負けず嫌いも考えものだと思い、冴はつい肩を落とした。もちろん、自分のことはすっかり棚に上げている。
 泳池里没有其他客人,完全是包场状态。上半身毫无防备地暴露在水面上的洁,似乎对刚才的游泳感到非常不甘心,一边嘟囔着脚的运用和手臂的旋转速度,一边开始反省。右手手指抵在唇边,认真思考的眼神非常专注。冴心想,洁这种不服输的性格真是让人头疼,不禁叹了口气。当然,他完全把自己的事情抛在了脑后。

「おい」 「喂」
「うわっ!」 「哇!」

 冴は水中に残されていた潔の左手を手にとった。目を見開いた潔は素っ頓狂な声を上げ、慌てた顔で冴を見る。青い瞳を冴に向けると、ピシリと体を硬直させた。冴はぐっと潔に顔を近づける。
 冴捡起了留在水中的洁的左手。洁瞪大了眼睛,发出一声怪叫,慌张地看着冴。当他的蓝眼睛转向冴时,身体猛地僵住了。冴紧紧地靠近洁的脸。

「俺を放置とは良い度胸じゃねぇか」 「敢把我丢下,胆子不小啊」
「うっ……、だって負けっぱなしは悔しいだろ。なぁ冴、もう一回勝負……!」
「唔……,但一直输很让人不甘心吧。喂,冴,再来一局……!」

「ダメだ。今日は終われ」 「不行。今天就到此为止」

 潔の主張を冴はバッサリと切り捨てる。30分泳げばロードの代わりとしては充分だろう。これ以上はやらないから止まれという意図を込めて、冴は水の中にある潔の手と指を絡める。潔はむすりと頬を膨らませていた。
 冴毫不留情地拒绝了洁的请求。游 30 分钟作为代替已经足够了。为了表达不再继续的意思,冴将水中洁的手指缠绕在一起。洁鼓起脸颊,发出不满的声音。

 指先を動かして彼の手の感触を追う。指の長さを感覚で追って、手のひらをすり合わせてギュッと握る。親指の腹でつるりとした甲を撫ぜれば、潔の意外と節くれた手の形がなんとなくわかる。これが親指の関節で、こっちはきっと人差し指。指の間をくすぐりながら遊んでいると、潔は恨めしげな眼をして冴を見上げた。
 指尖轻动,追寻着他的手触。凭感觉捕捉手指的长度,摩挲掌心,紧紧相握。用拇指腹轻抚那滑润的手背,洁那意外骨节分明的手形便隐约可辨。这是拇指关节,这边定是食指。在指间轻挠嬉戏,洁便投来幽怨的目光,抬头看向冴。

「くすぐったいんだけど……」 「好痒啊……」
「そう感じるようにやってる」 「就是要让你觉得痒」
「ちょ……っ! もぉ~!」 「等……下!真是的~!」

 バシャりとプールの水が跳ねる。潔は顔を赤らめて右手で水面を叩いたが、水の中の手を振りほどこうとはしなかった。それどころかお返しとばかりにぎゅ~っと力を籠める始末。本当に、こういうところがムカつくほど愛おしい。
 水花四溅,洁满脸通红地用右手拍打着水面,却没有试图甩开水中握着的手。不仅如此,他还反过来紧紧地用力回握。真是的,这种地方让人生气却又无比可爱。

 手を握ったり、キスをしたり。他人と触れ合う感覚は時として人に安らぎを与えるものらしい。ただ、冴が潔以外に触れたいと思うことは不思議となかった。繋いだ手を触れ合わせながら潔の顔を見ていると、彼は穏やかに口角を上げる。
 牵手、亲吻。与他人接触的感觉有时似乎能给人带来安宁。然而,冴却不可思议地从未想过要触碰洁以外的人。他一边感受着相牵的手,一边看着洁的脸,嘴角温柔地上扬。

 かち合った青い瞳は柔らかな光を宿している。黒い髪の先からぽつぽつと水滴がしたたり落ちて、艶のある頬を水滴が伝う。冴は繋いだ手をそのままに、反対の手で潔の目尻を軽く拭った。当然のように冴の手を受け入れる潔は目を細め、へへっ照れたような声を漏らす。
 碰撞的青眸中闪烁着柔和的光芒。黑色发梢上水滴点点落下,滑过光泽的脸颊。冴握着的手未松,另一只手轻轻拭去洁眼角的湿润。洁自然地接受冴的触碰,眯起眼,发出略带羞涩的笑声。

 弾力のある頬っぺたの感触を味わい手を離した。その時だった。
 感受着富有弹性的脸颊触感,手缓缓离开。就在那一刻。

――カシャリと明確に、シャッター音が聞こえたのは。
――清晰地,咔嚓一声,快门声响起。

 びくりと肩を跳ねさせた潔は水の中にあった手をパッと放した。2人揃って後ろを振り向けば、そこにいたのは撮影を担当しているカメラマンの男。
 洁被吓得肩膀一抖,迅速松开了水中握着的手。两人同时回头,站在那里的正是负责拍摄的摄影师。

 彼は冴と潔の視線に気づくと、手に持ったカメラに目を落とす。一拍置いてハッとした顔をすると、彼は俯き前髪をグシャリと強く握った。明らかに、”やってしまった”という反応だ。じっと見ていると、男は深く息を吐く。
 他察觉到冴和洁的视线,目光落在了手中的相机上。稍作停顿后,他露出了惊讶的表情,低头用力抓了抓前额的头发。显然,这是“搞砸了”的反应。静静地看着他,男人深深地叹了口气。

「すまない。……本当に、すまなかった」 「对不起。……真的,对不起。」

 呟いた彼は罪人のような重い足取りで近づいてくる。
 他低声嘟囔着,像罪人般沉重地走近。

 冴は潔と互いに目を合わせ、頷きあってプールから上がった。戸惑ったように眉を顰める潔をよそに、冴は刺すような声音で男に言う。
 冴与洁对视一眼,点头后从泳池中起身。无视困惑皱眉的洁,冴以尖锐的声音对男人说道。

「パパラッチの真似事とはいい度胸じゃねか」 「模仿狗仔队,胆子不小啊」
「あー……、ごめん。キミたちのプライベートに水を差してしまったことは謝る。けれど、オレはパパラッチじゃなくてフォトグラファーだ。綺麗なものは撮りたくなるし、理性的でいられない瞬間もある」
「啊……,抱歉。打扰了你们的私人空间,我道歉。不过,我不是狗仔队,而是摄影师。看到美丽的东西就想拍下来,有时理性也控制不住。」

「へぇ?」 「诶?」
「言い訳にしか聞こえないだろうが、どうか理解して欲しい」
「听起来可能只是借口,但请理解我。」

 俯いた男は、カメラマンとしてのプライドと芸術家としての葛藤が混ざりあっているのか、なんとも複雑な表情をしていた。悔し気に唇を噛む様からして本当に申し訳なく思っているらしい。
 低着头的男人,脸上交织着作为摄影师的骄傲与艺术家的挣扎,表情复杂。从他懊恼地咬唇的样子来看,似乎真的感到非常抱歉。

 彼は勢いよく頭を下げ、ほぼ直角に腰を折った。  他猛地低下头,几乎将腰弯成了直角。

「嫌な思いをさせてすまなかった。キミたちが仕事を降りると言うならオレからブランドに話をするし、オレに降りろと言うならそれにも従う」
「让你们感到不快,实在抱歉。如果你们说要退出工作,我会向品牌方说明;如果你们让我退出,我也会遵从。」

「ちょっ……そんな、!」 「等等……怎么可能!」
「潔」 「洁」
「これも渡すよ。データは転送もされていないから安心して欲しい。煮るなり焼くなり水没させるなり、好きにしてくれ」
「这个也给你。数据没有被传输,所以请放心。煮也好烧也好沉水也好,随你喜欢处理吧」

 男はカメラから一枚のカードを抜き取り、冴と潔に差し出した。大切なデータが入っているであろうマイクロSDを躊躇なく他人に渡す様に、潔はふるふると首を振る。
 男人从相机中抽出一张卡片,干净利落地递了过来。他毫不犹豫地将装有重要数据的微型 SD 卡交给他人,洁则连连摇头。

「いや、いいよそこまでしなくて。その……データ消してもらえればそれで良いし」
「不,不用做到那个地步。那个……只要帮我删除数据就可以了」

「ありがとう。けど、イサギは良くても、サエはダメだと思うから」
「谢谢。不过,虽然伊佐木可以,但我觉得佐惠不行。」

 カメラマンは力なく笑って冴にチラリと視線を向ける。冴は眉間に皺を寄せてカメラマンを睨みつけた。
 摄影师无力地笑了笑,瞥了冴一眼。冴皱起眉头,瞪着摄影师。

「さ、冴……」 「冴……」

 潔は縋るような目つきをしていた。こいつは本当に、サッカーが絡まなければ他人に甘い。職業柄、下手に情けをかけて面倒ごとに繋がる可能性もゼロじゃないのに。冴ははぁ……っと水底より深いため息を溢した。それでいて、自分はサッカーを除けば潔に甘いのだから頭が痛い。
洁的眼神中带着依赖。这家伙真的,只要不涉及足球,对别人就很宽容。职业原因,随便同情可能会惹上麻烦,但也不是完全没有可能。冴叹了口气,那叹息深沉得仿佛来自水底。然而,除了足球,自己对洁也很宽容,真是头疼。

「お人好しに免じて、見逃してやる」 「看在你好心肠的份上,饶你一次」

 言えばカメラマンは信じられないとでも言うように目を見開いた。
话音刚落,摄影师像是难以置信似的睁大了眼睛。

「っ! ありがとう。恩に来るよ」 「啊!谢谢。我会报答你的。」
「とっととカメラ見せろ。この場で消せ」 「快把相机拿出来。当场删掉。」
「もちろん」 「当然。」

 カメラマンはカメラにカードを刺し直すと手早く画面を操作し始める。表情が明るくなった様子に、現金だなと冴は思った。
 摄影师重新插入卡片后,迅速开始操作屏幕。看到他表情变得明朗,冴心想,果然是现金啊。

 冴と潔は揃って男の手元を覗き込む。画面にあるのは彼が先ほど撮った写真だろう。
 冴和洁一起凑近看男人的手边。屏幕上显示的应该是他刚才拍的照片。

 あ……、と声を上げたのは潔だった。冴もまたその画像を見てピタリと動きを止めてしまう。カメラマンはどこかほっとしたように微笑んでいた。
 啊……,发出声音的是洁。冴也看到那张图像后,瞬间停下了动作。摄影师似乎松了口气,露出了微笑。

「邪魔したのは、本当に悪かったと思ってる。けど、我ながらよく撮れたと思ったんだ。今まででもトップクラスの出来栄えだった。作られていない、こんなに美しくて幸せそうな誰かの顔が撮れるなんて、初めてなんだよ」
「打扰到你们,真的很抱歉。不过,我真的很满意这张照片。这是我拍过的最好的一张。从未见过如此美丽、如此幸福的表情,仿佛从未被创造出来过。」

 写真に写るのは2人の顔だ。広いプールに浸かってただ見つめ合っているだけの。
照片中是两个人的脸。他们只是在一个宽阔的泳池里,彼此凝视着。

 それでも、瞳にも、口元にも、穏やかな幸福が表れていた。空から差し込む太陽の日差しも、抜けるような青空も、水面に揺らめく光の粒も。濡れたあずき色の髪も、柔らかくも意志の強い瞳の青も。
尽管如此,他们的眼中、嘴角都流露出平静的幸福。从天而降的阳光、清澈的蓝天、水面摇曳的光点。湿漉漉的淡褐色头发,柔和却坚定的蓝色眼眸。

 日常にあるたった一瞬を切り取ったその写真は、冴にとっても潔にとっても、確かに特別なものだった。おそらく他の誰かが見ても分かるだろう。繋いだ手は映っていなくとも、互いの存在が傍にあるのが幸せなのだと、こちらが感じていることくらい。
 那张捕捉日常中一瞬的照片,对冴和洁来说,确实是特别的。或许其他人看到也能明白。即使没有映出牵着的手,彼此的存在在身边就是幸福,这一点我们都能感受到。

 冴は写真を見ながら思わず喉を震わせた。  冴看着照片,不由得喉咙一震。
 
「本当に、腕は良いんだな」 「真的,手腕真好啊」
「困ったことにそれだけが取り柄だよ。けれど、もう少し理性的でありたいと今日は思った」
「麻烦的是,那是我唯一的优点。但今天,我希望能更理性一些。」

 カメラマンは肩を落とした。冴は密かに潔を見つめる。彼は写真を見て目を輝かせている。この顔を曇らせるのは、いくら自分でも気が引けた。冴は諦めたように後ろ頭を軽く掻く。
 摄影师垂下了肩膀。冴暗中注视着洁,他正看着照片,眼中闪烁着光芒。让这张脸蒙上阴影,连自己都觉得不忍。冴像放弃了一样,轻轻挠了挠后脑勺。

「やっぱデータももらう」 「果然还是要数据。」
「うん。そうしてくれるとオレも嬉しい」 「嗯。你能这么做,我也挺高兴的。」

 「悪いけど消すのはしのびないや」と彼は笑った。そうして下げていた鞄からタオルを抜き取り潔に手渡す。軽く手を拭くように促してから、男は改めてカメラからSDカードを抜き取った。
「抱歉,删不掉啊。」他笑着说。然后从放下的包里抽出毛巾,干净利落地递过来。示意轻轻擦手后,男人再次从相机中取出 SD 卡。

「これ、今撮った写真しか入ってないからそのままもらってくれ。濡らさないように気をつけてね」
「这里面只有刚才拍的照片,你就直接拿去吧。注意别弄湿了。」

「ありがとう」 「谢谢」

 潔が微笑んで言うと、男は力なく首を振る。  洁微笑着说道,男人无力地摇了摇头。

「どうか礼は言わないで。無礼を働いたのはオレだ。むしろ土足で踏み込んだのに、許してくれてありがとう」
「请不要道谢。失礼的是我。反而是我未经允许闯入,还请原谅,谢谢」

「お前、なんでここに来たんだよ」 「你为什么来这里啊?」

 冴はプールサイドに準備されていたタオルをとりに足を進める。髪を拭きながら男の姿を窺ってみた。まあ明らかに泳ぎにきた格好ではない。ラフなシャツとデニム姿で、手にはカメラと少し大きめのショルダーバッグだ。
冴走向泳池边准备的毛巾。一边擦着头发,一边窥视着男人的身影。显然他不是来游泳的。穿着随意的衬衫和牛仔裤,手里拿着相机和一个稍大的肩包。

「気分転換だよ。部屋に篭っててもつまらないから。インタビューの前に、写真をもう一度見直しておきたかったしね」
「来转换心情啊。一直待在房间里也无聊。在采访前,想再看看照片。」

 そうして彼はノートパソコンが入っているらしい鞄をポンと叩いた。
 于是,他轻轻拍了拍那个似乎装着笔记本电脑的包。

「一応、インタビューそのものもオレが担当する予定だ。どこまで話を聞くか、踏み込むか、写真を見て判断しようと思ってさ」
「顺便说一下,采访本身也预定由我来负责。我会根据照片判断要问到什么程度,深入到什么程度。」

「あの、聞いて良い?」 「那个,可以问一下吗?」
「なんでもどうぞ」 「请随意」

 カメラマンはにこやかに言う。  摄影师和蔼地说。

「写真で、俺たちのことどこまでわかるんですか?」 「通过照片,你能了解我们到什么程度呢?」

 首を傾げた潔を見て、カメラマンは「う~ん」と唸った。2、3度視線で潔と冴の顔を交互に見くらべ、困ったような顔で少し俯く。
 看到洁歪着头,摄影师发出“嗯~”的呻吟声。他来回看了洁和冴的脸几次,露出困扰的表情,稍稍低下头。

「一緒にいて、心地良い相手なんだなってことくらい。なんとなくあっさりしてるから、依存とかそんなものでもなさそうだし……。木漏れ日の下で黙って隣で過ごせる関係。友達以上、恋人ニアミス。まあ、いつか収まりたい場所はわかってるんだろうなって、そんな感じかな。
「只是觉得在一起很舒服而已。感觉很自然,不像是依赖什么的……。在树荫下默默地待在旁边的关系。朋友以上,恋人未满。嘛,大概知道总有一天会安定下来的地方吧,就是那种感觉。

 けど、よく知らない人間にそういうの推測されるの、嫌だろう?」
 但是,被不太了解的人这样推测,会讨厌吧?」

 なるほど、と冴は思った。このカメラマン、やけにプライベートと仕事の線引きをはっきりさせようとするとは感じていたが、こちらの関係を知りすぎるのを躊躇っていたせいらしい。
 原来如此,冴心想。这个摄影师,总感觉他特别想明确区分私人生活和工作,似乎是因为担心了解太多这边的关系。

 自信なさげなわりに、男の言葉は的を射ている。  虽然显得没什么自信,但男人的话却一针见血。
 潔は苦笑して頬を掻いた。  洁苦笑着挠了挠脸颊。

「俺たち、そんなにわかりやすかったかな」 「我们表现得有那么明显吗?」
「傍目にはわからないと思うよ。けどスナップの撮影になると、どうしても意識して内面を見ようとせざるを得なくなる。一連の流れで見ていればただ仲が良いんだなって程度。でもオレは、その中から特別な一瞬を切り出さないといけないから。あとさっきも言ったけど、」
「旁人看来可能不觉得。但一旦进入快照拍摄,就不得不下意识地展现内心。整体来看,只是关系好而已。但我是摄影师,必须从中捕捉到特别的一瞬。还有,刚才也说过了,」

「?」
「綺麗なものは、撮りたいんだ。プロとして立ってるキミ達も良い。けど、2人が穏やかにしてる時も、オレはとても綺麗に感じた。勝手だけどね」
「我想拍下美丽的东西。作为专业人士的你们也很棒。但你们平静相处的时候,我也觉得非常美丽。虽然有点自作主张。」

 カメラマンはそう言って静かに肩を落とした。おそらく自分自身に呆れているのだろう。
 摄影师说完后,静静地垂下了肩膀。大概是对自己感到无语吧。

 コンセプトは関係なく、好きなものを撮りたいエゴが抑えられないと。そう語る彼はこればかりはどうしようもないという顔をしつつ、どことなく楽しげに微笑んでいた。
 无论概念如何,想要拍摄自己喜欢的东西的自我无法抑制。他如此说道,脸上带着一种无可奈何的表情,却又莫名愉快地微笑着。

 潔は大きな目を瞬かせると、クスリと笑って口角を上げる。
 洁眨了眨大眼睛,轻轻一笑,嘴角上扬。

「カメラマンさんもエゴイストってことだ」 「摄影师先生也是个自我主义者呢」
「ブルーロックの最高傑作にそういわれるのは光栄だね。ああ、もちろんここでの話はどこにも言わないと約束するよ」
「被称作《蓝色监狱》的最高杰作,真是荣幸啊。啊,当然,这里的话我保证不会告诉任何人」

 そう言うと、彼は2人の表情をじっと窺う。そうして意を決したように口を開いた。
 说完,他仔细观察着两人的表情。然后像是下定决心般开口了。

「不躾でわるいんだけど」 「不好意思,有点冒昧」
「なんだ」 「什么事?」
「サエとイサギは、将来の約束とか、してるのかい?」
「沙惠和伊佐木,你们有做过什么未来的约定吗?」

 なんとも唐突な質問だと思った。冴は無表情で答える。
 这问题来得太突然了。冴面无表情地回答。

「特にしてない」 「没什么特别的」

 潔も俯きがちに頷いた。そうして遠慮がちに冴の手を握ってくる。絡められた指先の感触に、冴は吐息交じりに微笑んだ。チラリと彼の顔を見て、カメラマンに向き直る。
 洁也微微低头点头。然后小心翼翼地握住了冴的手。感受到交缠的指尖触感,冴带着叹息露出了微笑。他瞥了一眼洁的脸,又转向了摄影师。

「するつもりもねぇよ。……今は、な」 「没打算做。……现在,还没」

 まだ何もない。何もないが、ないままでいようとも思っていない。
 什么都没有。虽然什么都没有,但也不打算就这样保持空无。

 冴は空を見上げて一面の青に目を細めた。  冴抬头望向天空,眯起眼睛凝视着那片蔚蓝。
 俺たちは今、ただフィールドで生きることを望んでいる。けどいつか、あの青々としたピッチを降りる日がきたら、その時はもっと。
 我们如今只渴望在球场上生存。但总有一天,当离开那片青翠的草地时,那时将会更加。

 
「冴」
「ん……、あとは内緒な」 「嗯……,剩下的就是秘密了」

 名前を呼ばれ、冴は繋いだ手を強く握った。  被呼唤名字,冴紧握了牵着的手。
 存外、穏やかに凪いだような今の感情は嫌いじゃなかった。そのうちチームが分かれて、潔と"はいさよなら"して、それっきりになるなんて思えない程度には、この手の感覚は自分の中にすっかり馴染んでしまっている。
 窗外,平静如止水般的此刻情感,并不讨厌。不知不觉间,团队已经分道扬镳,与洁道别后,便再无交集,这样的想法已无法触及,这种感觉早已深深融入我的心中。

 きっとこの先、惹かれ合う事を止められないだろう。心地の良い、ちょっとした狂いを身体に植え付けられた気分だ。
 想必今后,这份相互吸引的感觉是无法停止的吧。那种舒适中带着一丝疯狂,仿佛身体被植入的感觉。

 おそらく潔にとっても同じ事。何も言わずにぴったりと寄り添ってくる彼の表情は不思議と嬉しそうだった。ニコリと笑う彼の姿は微笑ましい。
 或许对洁来说也是如此。他一言不发却紧紧依偎过来的表情,竟意外地令人欣喜。他微微一笑的样子,令人心生暖意。

 カメラマンは「ご馳走様」と口にした。そうしてなんだかほっとしたような顔をする。
 摄影师说了声「多谢款待」,脸上露出了如释重负的表情。

 
「今は何があっても、キミ達にとってサッカーが大切なのは変わらない、と理解したよ」
「无论现在发生什么,对你们来说,足球的重要性都不会改变,我明白了。」

「ああ。間違ってない」 「嗯,没错。」
「良かった。なんかちょっと安心した」 「太好了。总觉得稍微安心了些。」

 潔は「え」と声を上げる。カメラマンはニコリと笑った。長い金髪のポニーテールが風にのって揺れている。
 洁发出「诶」的一声。摄影师微微一笑。长长的金发马尾随风摇曳。

「言ったろ。フィールドにいるキミ達をかっこいいと思ってるって。……ファンなんだよ。スタジアムに行ってキミたちの写真を撮ったことは何度もある。私的にチケットとってさ」
「我说过的吧。我觉得在球场上的你们很帅气。……我是你们的粉丝。去过好几次球场拍你们的照片。还特意买了票呢。」

「そう、なんだ」 「是啊,怎么了」
「うん。戦うキミたちの姿は眩しくて美しくて、とても魅力的だと思ってる。汗をかいて、熱狂の中に身を投じてさ。みんな、そういうキミたちを求めてるんだ。いつまでもそこにいて欲しいって、オレもずっと思ってる。キミたち自身も、できるならフィールドで死にたいはずだろう?」
「嗯。你们战斗的身影耀眼而美丽,非常迷人。挥洒汗水,投身于狂热之中。大家都在渴望着那样的你们。我也一直希望你们能永远在那里。你们自己,如果能选择的话,也一定想在赛场上战死吧?」

「……それもあってる」 「……那也没错」
「だな」 「是啊」

 冴に続いて潔も頷く。  冴之后,洁也点头同意。
 いつまでもサッカーをしていたい。ゴールの快感を味わっていたい。サッカーしか知らない馬鹿でいたい。けど一生なんて、プロの世界ではありえない。仕方がないことだが、時間は限られてしまっている。
 永远想踢足球。想感受进球的快感。想一直做个只懂足球的傻瓜。但一生这种事,在职业的世界里是不可能的。虽然无奈,但时间总是有限的。

 でも終わるのは今じゃない。  但结束并非现在。

「オレは好きなものを撮りたい。だから、できれば長くキミらにサッカーをしていて欲しい。フィールドのキミらも、魅力的な被写体なんだ」
「我想拍下喜欢的东西。所以,希望你们能尽可能长久地继续踢球。你们在球场上,也是非常有魅力的拍摄对象。」

 カメラマンはそう言って両手を使いフレームを作る。指と指の間に2人の姿を収めると、ふっと笑って、ひらりと手を開いて見せた。
 摄影师说着,用双手比划出取景框。将两人的身影纳入指间后,他忽然一笑,轻轻地摊开手展示。

「けど、戦っていないキミたちの姿も好きだとわかったからね」
「不过,我也明白了,我喜欢你们不战斗时的样子。」

 綺麗だったと、彼は言う。それからポケットを探って革のケースを取り出した。1枚名刺を抜き取ると、2人にそれを手渡した。
 他称赞道:「真美啊。」然后摸索着口袋,取出一个皮革盒子。他抽出一张名片,递给了两人。

 
「だから全力で走り終えたら、ここに連絡して欲しい。キミたちが戦場を降りた時には、もう一度、オレに写真を撮らせくれ」
「所以,尽全力跑完后,希望你们能联系我。当你们离开战场时,请再让我为你们拍一次照片。」

「お前、完全に開き直ってるだろ」 「你这完全是破罐子破摔了吧」

 冴は眉間に皺を寄せて言った。カメラマンは「バレたか」と軽く呟く。潔は呆れ気味に笑って名刺を受け取る。
冴皱起眉头说道。摄影师轻声嘀咕:「被发现了啊」。洁无奈地笑着接过名片。

「あなたはもっと、デリカシーのある人だと思ってた」
「我本以为你是个更有分寸的人」

「好きなものを追うのに手段は選んでられないだろ。ここまで話せたならもうなんでも良いや。
「追求喜欢的东西,手段是无法选择的吧。既然能说到这个份上,那就什么都好说了。」

 でも、今ここで約束するよ。次会った時には、また最高の仕事をしてみせるから」
「但是,现在在这里约定吧。下次见面时,我会再次展现最棒的工作。」

――連絡待ってる ——等待联络

 そう言って、男は笑った。  说完,男人笑了。
 

评论

  • taki 
    8月20日回信
  • Cheri 雪莉
    8月20日回信
  • めっちゃ、良かったです⋯ 素敵なお話でした 2人の空気感がすごく好きです ありがとうございました
    非常、非常棒…… 真是精彩的故事 非常喜欢两人的氛围 非常感谢

    8月18日回信
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