这是用户在 2024-9-21 11:08 为 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21716951#3 保存的双语快照页面,由 沉浸式翻译 提供双语支持。了解如何保存?
default
短編集(冬)/あきづき的小说

短編集(冬) 短篇集(冬)

10,585字21分钟

X(twitter)上で参加させていただいた新ワンライへの投稿作品(2024年2月分)を主にまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的新一期投稿作品(2024 年 2 月分)的主要汇总。

各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000~3000 字。目录请参阅第 1 页。


素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
illust/95808309 插画/95808309

--------------------------------
X(twitter)アカウントはこちら。 X(twitter)账号在这里。
twitter/naranashitori 推特/鸣鸟不飞

作品への感想など、いただけると大変喜びます~。 非常欢迎您对作品的感想等反馈~。
https://wavebox.me/wave/6fkx4sxl1mdjem2s/

3
white
horizontal

行き違いバレンタイン 错过情人节

 糸師凛が自宅の玄関を開けると、そこにはコート姿にマフラーを巻いた男が一人立っていた。
 糸师凛打开自家大门时,只见一名身穿大衣、围着围巾的男子独自站在那里。

 その光景に、凛は僅かに目を見開く。  看到这一幕,凛微微睁大了眼睛。

「よお、凛」 「哟,凛」

 そう言って凛の名を呼ぶ男の顔は見知ったものだ。それは当然のことだった。何処の誰とも知れない訪問者を相手に扉を開くほど、凛の防犯意識は低くはない。加えてこの日男がやって来ることは元々予定されていたスケジュールの一部だったので、突然の訪れに驚いたというわけでもない。
 说着呼唤凛的名字的男人的脸是熟悉的。这是理所当然的。凛的防范意识并不低,不会轻易为不知从何处来的陌生人开门。再加上这一天男人的到来原本就是预定好的日程的一部分,所以也并没有因为突然的来访而感到惊讶。

 では何が凛の意識を攫ったのかといえば、それは男が片手で抱えるようにして持つ、真っ白な花束だった。
 那么是什么攫住了凛的意识呢?那就是男人用一只手像抱着一样拿着的纯白花束。

 男は花束の一部が潰れそうになっていることに気付き、少し角度を調整して抱え直す。
 男人注意到花束的一部分快要被压坏了,稍微调整了一下角度重新抱好。

「その手に持ってやがるのは何だ、クソ潔」 「你手里拿的是什么,混蛋洁」
「これ?」 「这个?」

 問い掛けた相手は、凛に向かってあっけらかんと笑いかける。そうしてバレンタイン、と戯言を口にした。
 被问到的人,向凛轻松地笑着。然后说出了“情人节”的戏言。

 来週の水曜日、そっちの家で。 下周三,在你家。
 そういう約束で次の予定は纏まった。通話の切れたスマートフォンの画面を見下ろし、潔世一は小さく笑う。
 就这样约定好了下次的安排。洁世一低头看着通话结束的智能手机屏幕,轻轻笑了。

 その背をチームメイトが軽く叩く。気さくな性格で、誰からも頼りにされている男だった。潔にとってもこのチームに馴染むまで何くれとなく面倒を見てもらったので、日常のシーンでは頭の上がらない相手である。
 队友轻轻拍了拍他的背。他性格爽朗,深受大家信赖。对洁来说,也是在这个团队中融入之前,不知为何总是照顾他的存在,所以在日常场景中是个无法摆出高姿态的对象。

 チームメイトは明るい笑みを浮かべて言った。  队友脸上浮现出明亮的笑容说道。

「いつもの相手か?」 「还是老对手吗?」
「ああ、うん。次のオフ会うことになって」 「嗯,是的。接下来有个会面。」
「そうか、よかったな。楽しんでこいよ」 「是吗,太好了。好好享受吧」
「ありがとう」 「谢谢」

 そう返し、少しだけ眉を下げて笑う。  如此回应,微微垂下眉梢,露出笑容。
 潔には少々思うところがあった。いつもの相手、という持って回った言い方で呼ばれる人物についてだ。潔が日常的に連絡をとっている様子を見て、チームメイトが揶揄うようにそう呼ぶようになったというのがその呼称の経緯である。
 洁有些心事。关于那个总是被称作“固定搭档”的人。这个称呼的由来,是因为队友们看到洁日常与他联系,便戏谑地这么叫了起来。

 しかしその人物とは糸師凛、すなわちライバルチームに所属する選手であるのだということを、潔はもう随分長いこと言い出せずにいる。別に公言する必要はない、わざわざ言いふらして回るような話でもないのだが、潔にとってはほんの少し気まずい思いがずっと続いていた。
 然而,洁一直难以启齿的是,那个人其实是糸师凛,即对手队的球员。虽然没必要特意公开,也不是那种需要四处宣扬的事情,但对洁来说,这种微妙的尴尬感一直挥之不去。

 そんな潔を他所に、チームメイトは会話を続ける。  在洁沉浸于自己的思绪时,队友们继续着他们的对话。

「次のオフ…バレンタインだな! 当然贈り物は用意するんだろ?」
「下次休息日…是情人节啊!当然要准备礼物吧?」

 疑いもしない顔に面食らう。  面对他毫不怀疑的表情,我感到困惑。
 潔にとってバレンタインとは、女性がチョコレートを男性に渡して告白する、そういうイメージのイベントである。自分と凛に関係があるとは思ってもみなかった。
 对洁来说,情人节是女性向男性赠送巧克力并表白的活动,他从未想过自己与凛之间会有这种关系。

 しかしフランス人のチームメイトによれば違うらしい。首を傾げる。
 然而据法国队友所说,似乎并非如此。他歪着头疑惑不解。

「いや、特に考えてないけど…こっちだとそういうもん?」
「不,我倒没特别想过……这边都是这样的吗?」

「勿論だとも。そうだな、花くらいは用意するのが当然だ。日頃の感謝を表すのは大事だぞ、イサギ」
「当然啦。嗯,至少得准备些花,这是理所当然的。平日里的感谢之情很重要,伊佐木。」

 日頃の感謝。  平日的感谢。
 鸚鵡返しに呟く。チームメイトはうんうんと力強く頷いた。
 鹦鹉学舌般低语。队友们用力地点头。

 その言葉で、ようやく少し腑に落ちた。  听了那句话,终于稍微释怀了。

(義理チョコとか、友チョコとか。そういえば日本でもあったな、そういうの)
(义理巧克力啊,友情巧克力之类的。这么说来,日本也有过这种东西呢)

 日本のイベントごとは往々にして原型からかけ離れていると聞くし、おそらくこちらではそのニュアンスの方がメインなのだろう。
 听说日本的节日活动往往与原型相去甚远,恐怕在这里,那种微妙的意味才是主要的吧。

 考えてみればフランスに移ってからこっち、凛には随分と世話になっている。この機会にその感謝を示すというのも悪くない気がした。
 仔细想想,自从搬到法国以来,对凛真是受了不少照顾。借此机会表达一下感谢,感觉也不错。

 潔はなるほどと納得し、礼を告げる。 洁恍然大悟,点头致谢。

「わかった、ありがとう。そうするよ」 「明白了,谢谢。我会照做的。」
「ああ、仲良くやれよ」 「啊,好好相处吧。」

 グッドラック、と親指を立てる様を見て苦笑する。  看到他竖起大拇指说“加油”的样子,不禁苦笑。
 いちいち大袈裟な男だが、そういうところが皆から好かれる一因でもあるのだった。
 他总是这么夸张,但正是这种地方让他深受大家喜爱。

 そんなわけで潔は凛の家に向かう途中、ちょうど見つけた花屋で花束を作ってもらった。
 就这样,洁在前往凛家的路上,正好在一家花店订了一束花。

 店員からは真っ赤な薔薇を勧められたが流石に固辞した。それがこの国のスタンダードなのだとしても、潔にとってはハードルが高すぎる。悩んだところで隣に並んでいた白い薔薇に目を惹かれ、それをメインに据えて纏めてもらった次第である。
 店员推荐了鲜红的玫瑰,但洁还是婉拒了。即便这是这个国家的标准,对洁来说门槛还是太高了。犹豫之际,目光被旁边那朵白玫瑰吸引,于是决定以它为主,搭配其他花束。

 普段縁のない場所だが、生花の匂いは存外快い。たまにはこういうところもいいなと潔の気分は上向いた。
 平时不常来的地方,但鲜花的香气意外地令人愉悦。偶尔来这样的地方也不错,洁的心情也因此好转。

 
 ダイニングテーブルの上、花瓶代わりのピッチャーに生けられた花を前に凛は改めて問う。
 餐桌上,代替花瓶的玻璃壶中插着鲜花,凛再次问道。

「で、こいつはどういうつもりだ?」 「那么,这家伙是什么意思?」
「さっきも言っただろ。バレンタイン。知り合いからこっちだとそういうイベントだって聞いてさ。郷に入っては郷に従えっていうし」
「刚才不是说过了吗。情人节。听说这边有这样的活动,入乡随俗嘛。」

 テーブルの向こう側、潔がくるりと目を回して言う。
 桌子对面,洁转了转眼珠说道。

 凛は考える。ふざけた知り合いとやらが口にした「そういう」の意味を、こいつは正しく理解しているのだろうか。
凛在思考。那个轻浮的相识所说的“那种”意思,这家伙真的理解正确了吗。

 フランスにおけるバレンタインは、確かに日本のそれとは少し異なる。チョコレートは登場せず、女性から男性に何かを贈ると決まっているわけでもない。
在法国的情人节,确实与日本的有所不同。巧克力并不出现,也不是规定女性必须向男性赠送什么。

 だが、本質的にはそう変わらない。浮かれ散らかした色恋沙汰。恋だの愛だのを伝える日。凛が今まで不要なものとして切って捨ててきたそれらの命日。
然而,本质上并无太大差异。是放纵情感、谈情说爱的日子。是传达恋爱、爱情的日子。是凛至今视为无用而割舍的那些日子的忌日。

 黙したままの凛を気にすることなく、潔は続けて口を開く。
 洁毫不在意地继续开口,无视了沉默的凛。

「お前にこういうの贈るのって初めてだけど、うん。改めて、いつもありがとな。凛」
「虽然这是第一次送你这样的东西,嗯。再次说声,一直以来谢谢你了,凛。」

 感謝の言葉を告げて、潔は笑った。その穏やかさに、凛の眉が僅かに跳ねる。
 洁笑着表达了感谢。那份平和让凛的眉头微微一跳。

 しばらくの沈黙の後、ふん、と鼻を鳴らす音が小さく響いた。
 片刻的沉默后,轻轻地响起了一声不屑的鼻音。

 隣の部屋から微かに漏れる潔の鼻歌を聞きながら凛は一人、小さな長方形の紙切れに目を落とす。
 凛独自一人,目光落在一张小小的长方形纸片上,耳边传来隔壁房间洁轻声哼唱的鼻歌。

 花束にひっそりと添えられていたメッセージカード。それは花屋が気を利かせて勝手につけたものだった。
 花束中悄然附上的留言卡。那是花店特意附上的。

 そこにフランス語で記された愛の言葉を、凛は射殺すような眼差しで睨む。
 凛以射杀般的目光瞪视着那上面用法语写下的爱的言语。

 そしてぐしゃりと握り潰し、くずかごに放り込んだ。
 然后将其猛地捏碎,扔进了垃圾桶。


评论

暂无评论
人气插画标签
人气小说标签