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糸師凛のほえほえ大作戦/ふあか的小说

糸師凛のほえほえ大作戦 糸师凛的汪汪大作战

20,606字41分钟

あらすじ 故事梗概
 潔に絶賛片想い中の糸師凛。友人としても恋人候補(仮)としても良好な関係を築いていると思っていた。しかしある日、偉大なるお兄様にその自分本意な付き合いを咎められてしまう。これを機に相手のことをちゃんと考えることを決意した凛だったが、潔の好きなタイプが自分とは正反対であることを知ってしまい──?!
 洁正在热烈单恋着糸师凛。他以为自己作为朋友和潜在恋人(暂定)与凛建立了良好的关系。然而某天,他伟大的哥哥指责了他这种违背本意的交往。以此为契机,凛决心认真考虑对方的事情,但却发现洁喜欢的类型与自己完全相反——?!

頭ぽやぽや凛ちゃんによる世紀の大作戦が今、始まる!
头脑有些迷糊的凛即将展开一场世纪大作战!


※ギャグ寄り ※偏向搞笑
※凛ちゃんがピュア&乙女 ※凛酱纯真且少女
※つまりキャラ崩壊 ※也就是说角色崩坏
※糸師凛がコミュ力ワーストの実力を遺憾なく発揮しております
※糸师凛正在毫无保留地发挥他那糟糕的沟通能力。

※甘々
※蛇足も蛇足。序盤から何を書いているのか分からなくなって字数が膨大になりました
※多余的话也是多余的。从一开始就不知道在写什么,导致字数变得非常庞大。

※何日かにかけて書いているので、おかしいところ、矛盾点あるかもしれませんが、どうかなにも考えず読んでください。
※因为分几天写,可能会有奇怪的地方或矛盾点,请不要多想,随意阅读。


※読後の苦情は受け付けません ※阅读后的投诉不予受理

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──突然だが、凛はモテる。それはもう大変にモテる。
──突然,凛很受欢迎。他非常受欢迎。

まあ、当然といえば当然だ。あの目鼻立ちの整った端正な顔立ちに、筋骨隆々とまではいかずとも、バランスの取れた身体。抜群のサッカーセンスにあの年俸がついてくるときたら、彼を逃がそうとする馬鹿はいないだろう。
嗯,可以说这是理所当然的。他那五官端正、轮廓分明的脸庞,虽然没有到肌肉隆起的程度,但身材匀称。再加上他出众的足球天赋,以及随之而来的高薪,想要错过他的人恐怕没有吧。

女性なんかは特にそう。だから、それを野暮だと知っていても世間は、凛の恋愛事情を知りたがるし、それにともなってメディアは凛を追いかける。
尤其是女性。因此,尽管知道这有些不识趣,但世人还是想知道凛的恋爱情况,随之而来的是媒体对凛的追逐。

…だから昨日だってあんな記事が出たのだ。 …所以昨天才会出现那样的报道。

潔は、フランスへ向かう飛行機の中で頬を膨らせた。その手には昨日発売の日本の某週刊雑誌が握られている。
洁在飞往法国的飞机上鼓起了脸颊。他手中握着昨天发售的日本某周刊杂志。

〖糸師凛、都内のデパートでお忍びデートか…♡!?〗
【糸师凛,在都内百货公司秘密约会…♡!?】

潔からすれば、なんとも下世話で嘘くさい記事だ。 从洁的角度来看,这真是一篇极其低俗且虚假的文章。
写真の角度からして、なんとも可愛らしい女性が隣にいるように写っているが、凛は彼女のことを見ていない。おそらく、凛に向かってキャーキャー言っていた女性の中から、さもいい感じで近しい距離に写るように、調整して撮られている。こんなのが本当に世間から求められているのか、と思うが、実際この雑誌の売れ行きは好調なようだった。
从照片的角度来看,似乎有一位非常可爱的女性坐在旁边,但凛并没有看她。可能是从那些对着凛尖叫的女性中,特意调整了距离,拍出了这种亲密感十足的照片。我不禁思考,这样的内容真的被大众所追求吗?但实际上,这本杂志的销量似乎很不错。

糸師凛に関する熱愛報道のデマ記事は、今までいくらでも出てきた。しかし、今回の記事には今までとは違う疑問点がいくつかあることで話題になっていたのだ。
关于糸师凛的热恋报道的假新闻,之前已经出现过很多次。然而,这次的报道因为存在一些与以往不同的疑点而引起了热议。

────────
『糸師凛の地元って鎌倉じゃなかった…?』 『糸师凛的家乡不是镰仓吗…?』
『貴重なオフの1日に、あの糸師選手がわざわざ都内のデパートに行った……ッてコト…!?』
『在宝贵的休息日,那位糸师选手特意去了东京的百货商店……这是怎么回事…!?』

『糸師選手ってスキンケアとかするんだ…そりゃあんだけ綺麗な肌で何もしてないわけないわな』
『糸师选手也会做护肤什么的…毕竟皮肤那么好,不可能什么都不做的嘛』

『あの辺て女性用のスキンケア用品とか置いてあるブースじゃん!マジ😭💔』
『那边不是有卖女性护肤品的摊位吗!真的😭💔』

『今回こそ黒か…??』 『这次真的是黑色吗…??』
『潔選手も兄貴も一緒じゃない…だとっ!?』 『洁选手和哥哥也不在一起…难道是这样!?』
『兄貴一緒だったことあるか??』 『你和哥哥一起过吗??』
『with潔選手なら』 『如果是和洁选手一起的话』
『凛&潔選手と冴&潔選手と凛&冴&潔選手なら見るよね』
『凛和洁选手,冴和洁选手,还有凛、冴和洁选手一起的话,我会看的』

『凛&冴選手は今んとこ見ないな』 『凛&冴选手现在看不到啊』
『いつ聞いても意味わからんくて草』 『每次听到都不明白什么意思,笑死』
引用元:某掲示板
────────

こんな具合に…。 就这样…。
つまりよりにもよって、潔が凛のもとへ赴く前日に微妙に信憑性のある熱愛報道の記事が出てしまっているのだ。しかもそれが潔にバッチリ伝わっている。なんてこった。
也就是说,偏偏在洁前往凛那里的前一天,出现了一篇微妙地具有可信度的热恋报道。而且洁也完全知道了这件事。真是糟糕。

…しかし、凛はそんな記事のことはすっかり忘れている。本人からすれば、だってどうでもいいのだから。デマだし。てな感じである。
…然而,凛已经完全忘记了那篇报道。对他来说,反正都是无稽之谈。

──と、まあ。そんなこんなで迎えた【ほえほえ大作戦】決行日。最初の最初から雲行きが怪しいが、そんなこととはつゆも知らない糸師凛は、自分の作戦に抜かりがないことを何十回も確認し、そわそわ(無表情)しながらソファに腰を掛けて潔の訪問を待っていた。
──就这样。在这样的情况下迎来了【汪汪大作战】的执行日。从一开始气氛就很诡异,但对此毫不知情的糸师凛,反复确认自己的计划没有疏漏,紧张(面无表情)地坐在沙发上等待洁的来访。

しばらくするとチャイムが鳴った。 过了一会儿,门铃响了。
凛は跳ねるように立ち上がると、玄関に向かいドアを開けた。そこにはいつも通りの潔が立っていた。
凛像弹起来一样站起身,走向门口打开了门。那里一如既往地站着洁。

「よー!凛久しぶり!元気だったか?」 「哟!凛,好久不见!你还好吗?」
「…遅ぇ」 「…好慢啊」
「えっ!まだ昼前じゃん。いつもより早い方じゃね?」
「哎!现在还没到中午呢。不是比平时还早吗?」

2週間以上前から待ってたんだから、遅いに決まってんだろ。
都等了两周多了,肯定算慢的啊。

凛は「フン…」と鼻をならして先にリビングへと移動する。潔は気にした様子もなく「おじゃましまーす」と言いながら、呑気に靴を脱いで洗面所へ向かった。
凛哼了一声,率先走向客厅。洁毫不在意地喊着“打扰了——”,悠闲地脱下鞋子,朝洗手间走去。

大丈夫、今のところ順調だ。凛は思った。今日やることは普段とさして変わらないが、自分で作戦を立てただけあって、凛もそれなりに緊張していた。
没事,目前一切顺利。凛心想。今天要做的事情和平常没什么两样,但毕竟是自己制定的计划,凛也感到有些紧张。

日本に帰省した際に購入したそれなりに高いきんつばをローテーブルに並べ、約束していたプレミアリーグの凛のお気に入りの試合のDVDを用意する。これなら話が変に途切れることはないし、潔をソファに固定できれば、こちらからアクションがしやすい。
她将在日本探亲时购买的相当昂贵的金锷烧摆放在低矮的茶几上,并准备了她最喜欢的英超联赛比赛的 DVD。这样一来,谈话就不会无故中断,如果能把洁固定在沙发上,自己行动起来也会更方便。

本当は、家に招くことができずとも、潔の趣味である散歩が最高のルートでできるように、フランスの景色のいい場所を探し、寄り道できるカフェなどの下調べも、凛は完璧にしていた。
实际上,即使不能邀请到家里,凛也完美地准备好了,为了让洁能以最佳路线享受他喜欢的散步,她寻找了法国风景优美的地方,并调查了沿途可以顺便去的咖啡馆等。

現時点では、その努力が日の目を見ることは無さそうだが、幸運なことに、潔はいつもよりも早めに凛の家に到着している。お家デート(仮)を終えた後でも、何か潔の喜ぶことができるかもしれない。
虽然目前看来这些努力似乎不会得到回报,但幸运的是,洁比平时更早到达了凛的家。即使在家约会(暂定)结束后,也许还能做些什么让洁高兴的事情。

何はともあれ、甘えるチャンスはいくらでもあるのだ。必ず可能な限りアピールして、今回のデート(仮)を成功させるのだ。
无论如何,撒娇的机会多得是。一定要尽可能地展现自己,让这次约会(暂定)成功。

少しして、潔がのんびりと洗面所からリビングにやってくる。きんつばに合わせたお茶でも用意してやろうと、ダイニングへ行っていた凛は、その音を聞きながら、ドキドキと心臓を鳴らす。
过了一会儿,洁悠闲地从洗手间回到客厅。凛原本打算去餐厅准备一些与羊羹搭配的茶,听到那声音,心跳加速。

潔は、一体どんな反応をするだろうか。喜色満面で礼を言うか。はたまた、驚きのあまり言葉を失うかもしれない。
洁会有什么样的反应呢?会不会满面笑容地道谢?或者因为太过惊讶而说不出话来。

潔の反応を想像し、ふわふわと浮き立つ足を押さえつけながら、凛は湯呑みをもってリビングへ入る。
想象着洁的反应,凛按捺着轻飘飘的脚步,拿着茶杯走进客厅。

すると、テーブルに並べられたきんつばを静かに見つめる潔の姿があった。
于是,可以看到洁静静地凝视着桌上摆放的きんつば。

「…?おい、潔…?」 「…?喂,洁…?」

凛が声をかけると、潔はハッとしたように顔を上げて、こちらを見た。
凛出声招呼,洁像是吓了一跳似的抬起头,看向这边。

「ご、ごめん!きんつば、ビックリして。こっちには無いだろ?日本で買ってきたのか?」
「对、对不起!金锷烧,吓了一跳。这里没有吧?是在日本买的吗?」

「…?ああ。」 「…?啊。」
「凛きんつばとか好きだっけ?」 「喜欢凛金锷烧之类的吗?」
「食ったこと無い。甘いもんは別に嫌いじゃねぇ。」 “没吃过。甜的东西倒也不是不喜欢。”

潔はそっか、と言いながらやっとソファに腰をかけた。
洁说着“这样啊”,终于在沙发上坐了下来。

…後者だったのか?どうやら、驚きのあまり言葉を失っていたらしい。凛は思ったような反応を得られず、少しがっかりしたが、お茶を目の前に置いてやると、少し顔を明るくしたので、まあ良しとした。
…是后者吗?看来,他似乎因为过于惊讶而一时语塞。凛本以为会得到预期的反应,却未能如愿,有些失望,但当他把茶放在面前时,对方的脸色稍微明朗了一些,于是凛也就释然了。

潔が嬉しそうにきんつばに手を伸ばすのにならって、凛もフォークでそれを小さく切った。口に運ぶと、薄皮のもっちりとした食感とあんこの甘さが口いっぱいに広がった。かなり甘いが、高いだけあって上品な甘さで、確かに、これはお茶に良く合う。
洁似乎很高兴地伸手去拿金锷,凛也学着他用叉子把它切小。放进嘴里后,薄皮的弹性和豆沙的甜味在口中扩散开来。虽然相当甜,但因为价格高昂,甜味显得很高雅,确实,这和茶很搭配。

かたわらで「でらうま~」と頬を緩ませる潔を見て、凛はもう一口と手を伸ばした。
在一旁看到洁放松脸颊说“真是美味~”,凛又伸手去拿了一口。

しばらく静かにきんつばを堪能していたが、潔が突然口を開いた。
静静地享受了一会儿金锷,洁突然开口说话了。

「…凛って、何しに日本に帰ったんだ?まさかきんつば買いに行くためだけに、帰省した訳じゃないだろ?」
「…凛,你回日本是干嘛的?总不会是为了买金锷烧,就特意回乡的吧?」

「………普通に、実家に顔だしただけだ。」 「………只是普通地回老家露个脸而已。」
「ふうん。」 「嗯。」

実家に帰ったのは本当だ。流石に、お前のために肌をやわもちにするためのスキンケア用品ときんつばを買いに行きました、などと言えるわけもなく、凛は曖昧に言葉を濁した。
回老家是真的。毕竟,要说什么为了你皮肤变得柔软而买的护肤品和金锷烧,这种话也不可能说出口,凛含糊其辞地糊弄过去了。

再び、沈黙が流れる。二人とも無言で、試合や映画を観ることはあるし、食事のときは比較的静かなので、沈黙は珍しいことではない。しかし、いつもは何も気にならないのに、なんだか先ほどとは空気が変わった気がする。というか、それ以前の違和感を感じるのはなぜだろうか。
再次,沉默流淌。两人都经常在无言中观看比赛或电影,吃饭时也相对安静,所以沉默并不罕见。然而,平时并不在意,却不知为何感觉刚才的气氛变了。或者说,为何会感到之前的违和感呢?

「………………………………きんつば、もう1個食うか?」
再次,沉默流淌。两人都沉默不语,有时会看比赛或电影,吃饭时也比较安静,所以沉默并不罕见。但平时并不在意,总觉得刚才的气氛变了。或者说,为什么之前就感觉到了不协调呢? “………………………………金锷烧,再吃一个吗?”

「んえ?いいの!?食べる!」 「嗯?可以吗!?吃吧!」

沈黙に耐えきれないと思うものの、凛はきんつばをエサに潔に話しかけることしか出来ない。
尽管觉得无法忍受沉默,凛只能用金锷作为诱饵,干脆地开口说话。

凛は足元の紙袋からきんつばの箱を取り出し、潔の皿にあけてやろうと皿を手元に寄せた。
凛从脚边的纸袋里取出金锷的盒子,打算打开后放在洁的盘子里,于是将盘子移到手边。

………手元に寄せる? ………靠近手边?

凛はピタリと動きを止めた。恐る恐るソファの座面を確認すると、凛と潔の間には二人分ほどの隙間がある。
凛突然停下了动作。她小心翼翼地确认沙发座面,发现凛和洁之间隔着大约两个人的空隙。

いや、遠いだろ。 不,这距离也太远了吧。

普段であれば、広いソファの真ん中あたりに二人揃ってぴったりと座っているはずである。距離感がバグっている自覚はあるが、正直満更でもなかったため、凛は日頃からあの距離感バグを堪能していた。それが今では一人分ですらない、二人分。潔は何故か二人分という、超長距離を空けて座っている。
平时的话,两人应该会紧挨着坐在宽大沙发的正中间。虽然意识到彼此间的距离感出了问题,但凛并不完全介意,反而平日里还颇为享受这种距离感的“故障”。然而现在,连一个人的位置都不够,是两个人的位置。洁不知为何,隔着超长的距离坐了下来。

「…………、おい。何でそんなに距離空けて座ってんだ。」
“……喂,为什么坐得那么远?”

凛が指摘すると、潔は分かりやすく肩をびくつかせた。
凛指出这一点后,洁明显地肩膀一颤。

「…ふ、普通じゃね?」 「…这不挺正常的吗?」
「前はもっとくっついて座ってただろうが」 「之前不是坐得更近吗?」
「……いや、それは前までがおかしかったんだろ…!よく考えたらさ、あんなに近くなくてもいいかなって。ほら、まだまだ暑いし?」
「……不,那是因为之前不正常吧…!仔细想想,没必要那么近吧。你看,现在还很热呢?」

何言ってんだ…? 你在说什么啊…?
明らかに潔の様子がおかしい。ちなみに今日のフランスの気温は16℃である。空調を調整しているし、少なくとも暑くはない。
显然洁的样子很奇怪。顺便说一下,今天的法国气温是 16℃。空调已经调整过了,至少不会热。

凛が潔を訝しむような目で見ていると、潔は慌てたように、机の端に積み上げられたDVDたちを指差した。
凛用怀疑的眼神看着洁,洁慌张地指着桌边堆放的 DVD。

「あ、あっあれ!前に言ってた凛のお気に入りの試合のやつだよな!用意してくれたのか?」
「啊,啊!那个!之前说的凛最喜欢的比赛对吧!准备好了吗?」

凛はああ。とだけ答えた。見せてくれよ!ときんつばを頬ばりながら笑う潔は、先ほどの気まずい雰囲気は微塵も纏っていない。
凛只是回答了一声「啊」。「给我看看!」洁一边笑着一边吃着金锷烧,完全没有刚才尴尬的气氛。

距離が遠いのがとてつもなく気がかりだが、凛はおとなしくレコーダーにDVDをセットした。
虽然距离很远,但凛还是乖乖地把 DVD 放进了录像机里。

リビングの明るさを調節し、いつもより少し暗い状態で、再生ボタンを押す。テレビ録画をDVDに落としているため、それはすぐにスタジアムの映像を流し始めた。
调节客厅的亮度,比平时稍微暗一些,然后按下播放按钮。因为电视录像已经转录到 DVD 上,所以它立刻开始播放体育场的画面。

しばらく映像を見ながら、あーだ、こーだと意見を交わす。あっちの5番がここに、それならここで9番が抜け出しているから…云々。1度サッカーの話になれば、先程のことなど意識の遥か外へ飛ばされてしまう。あっちに指差し、こっちに指差ししている間に二人の距離は肩がくっつくほどに近くなっていた。
一边看画面,一边交换着各种意见。那边的 5 号应该在这里,那么这里的 9 号就会突破……等等。一旦聊起足球,刚才的事情就会被抛到九霄云外。在指指点点之间,两人的距离已经近到肩膀相碰。

試合が終わり、試合結果が映し出される頃、凛はそっと潔の顔を盗み見た。顎に手を当て、ぶつぶつと画面の中の選手を褒めたり、動きの意図を考察したりしているようだった。
比赛结束,比赛结果显示出来时,凛偷偷地看了洁的脸。他把手放在下巴上,嘟囔着表扬画面中的球员,或者分析他们的动作意图。

そこで凛は唐突に、くっつきたい、と思った。 于是凛突然想贴上去。

ほえほえ大作戦フェーズ2は、端的に言えば甘え殺すこと。凛は思い立ったがそのままに、潔の肩にこてん、と頭を乗せた。途端、潔が固まったが、凛の猛攻は続く。
汪汪大作战第二阶段,简而言之就是消除撒娇。凛想到就做,干脆地把头靠在洁的肩上。顿时,洁僵住了,但凛的猛攻还在继续。

撫でろと催促するように、潔の肩口に顔を埋め、グリグリと頭を押し付ける。この状態では潔の顔は見えないが、今のところ拒否はされていない。
她催促着要抚摸,把脸埋在洁的肩头,用力蹭着头。虽然看不到洁的脸,但目前还没有被拒绝。

うまくいっている。 一切顺利。
凛は内心ほわほわ(無表情)としながら、潔から香るミルクのような匂いや、凛より少し高い体温を堪能していた。
凛内心感到温暖(面无表情),享受着洁身上散发出的如牛奶般的香气,以及比凛稍高的体温。

しかし、いつもなら「どうした?凛、具合悪いの?」とでも話しかけてきそうな潔だが、今はそれがない。というか、なにも言わない。
然而,如果是平时,洁可能会问:“怎么了?凛,不舒服吗?”但今天他没有说这样的话。或者应该说,他什么都没说。

不思議に思った凛がほんの少し肩から頭を浮かせると、潔はすっかりずれてしまった自身のきんつばの皿の前に身体を滑らせた。
凛好奇地微微抬起头,从肩膀上浮起,洁则滑向自己完全偏离的羊羹盘子前。

先程と同じ二人分の距離が空く。 与刚才相同的两人份的距离再次拉开。

「あ、ああああありがとうな!凛がお気に入りの試合なだけあって、めっちゃ面白かった!!」
“啊,啊啊啊谢谢!果然是凛最喜欢的比赛,真的非常有趣!!”

「………………」 “………………”

距離を空けられて不満気な凛に向かって、潔は更なる爆弾を落とす。
面对被拉开距离而显得不满的凛,洁投下了更重磅的炸弹。

「あ、どうする??言ってた試合も見終わったし、俺もう帰ろうか!」
“啊,怎么办??你说的比赛也看完了,我也该回去了吧!”

「は……っ?」 “哈……?”

潔の思わぬ発言に、凛は声を上げた。ここで帰りなどしたら、滞在時間、過去最短である。
洁的意外发言让凛提高了声音。如果现在回去,停留时间将是史上最短。

意味がわからない。というか、先ほどからずっと潔の様子がおかしい。
不明白是什么意思。而且,从刚才开始洁的样子就很奇怪。

もしや、順調だと思っていたこの作戦に何か穴があったのだろうか?しかしながら、ここでやすやすと潔を帰してはたまらない。まだ作戦は遂行しきれていないのだ。
难道说,原本以为顺利的这次作战有什么漏洞吗?但是,不能就这样轻易让洁回去。作战还没有完全执行完毕。

凛が一人分程距離を詰めると、同じだけ潔も横にずれていった。
凛缩短了一人的距离,洁也同样向旁边移开了相同的距离。

「おい、何で避ける。」 "喂,为什么要躲开。"
「…いや、別に避けてねえよ?うん。」 "…不,并没有特意躲开啊?嗯。"
「避けてんだろ。」 “你在躲我吧。”

自分でも語気が強まっているのを感じる。 我感觉到自己的语气变得强硬。
ジリジリと詰め寄るも、潔はそれから逃れようとソファの端に行ってしまう。とうとう逃げ場がなくなると、潔は大きくのけ反り、それを追い詰める凛は背もたれに手を着く。
尽管我步步紧逼,洁却试图从沙发边缘逃开。当无处可逃时,洁猛地向后仰,而紧追不舍的凛则靠在椅背上。

今にも押し倒してしまいそうなほどの距離と体勢でお互いを見つめあっている。
在几乎要将对方推倒的极近距离和姿势下,彼此凝视着对方。

心臓は、一生のうちに脈を打つ数が決まっているという説があるが、もしそれが本当ならば、おそらくこの数分で凛の寿命は、すくなくとも三年は縮んでいる。
有一种说法是,心脏在一生中跳动的次数是固定的。如果这是真的,那么在这几分钟里,凛的寿命恐怕至少缩短了三年。

凛は、それほどまでに心臓が忙しなく動いているのを感じていた。自分で近づいているくせに、なんて身勝手な心臓だ。
凛感觉到自己的心脏在剧烈地跳动。明明是自己主动靠近的,这颗心脏却如此任性。

しかし、潔が突如自分を避け始めたという事実は、許しがたいものだった。なんとか理由を聞き出さねば、ほえほえ大作戦どころの話ではなくなってしまう。
然而,洁突然开始避开自己的这一事实,是难以接受的。必须设法问出原因,否则“汪汪大作战”就无从谈起了。

潔のために、フランスの景色のいい場所を探した。 为了洁,寻找了法国风景优美的地方。
潔のために、それなりに高いきんつばを用意した。 为了洁,特意准备了相当贵的金锷烧。
潔のために、2週間スキンケアを頑張った。 为了洁,努力进行了两周的皮肤护理。
潔のために、白目を向きそうな程文字の多い(凛基準)猫の本を読んだ。
为了洁,我读了一本字多到几乎要翻白眼的(以凛的标准)猫书。

潔のために…… 为了洁……

凛はここ数日で〖好きな人のために何かをする〗ということに些細な喜びを感じていた。これまで、どれだけ自分がなにもしてこなかったのか、というのを痛感させられた。
凛在这几天里感受到了为喜欢的人做些什么所带来的微小喜悦。这让她深刻体会到,自己以前究竟有多么什么都没做。

潔が自分に笑顔を向けるのを見たかった。何をしても、誰に対しても、へらへらニヤニヤしているようなやつが見せる、一等の笑顔を凛にだけ向けてほしかったのだ。
洁希望看到自己对他露出笑容。无论对谁,无论做什么,总是嘻嘻哈哈、笑嘻嘻的那种人,洁只希望他能将那一流的笑容只展现给凛。

「理由を言え、お前ごときが俺を避けるなんて…くだらねぇ理由だったら、ただじゃおかねぇ。」
“说清楚理由,像你这种人居然避开我…如果是什么无聊的理由,我可不会轻易放过你。”

けれど今の潔は、何故か傷つくような、今にも泣きそうな顔をしている。
但现在的洁,不知为何,脸上带着一种受伤般的、仿佛随时会哭出来的表情。

凛は、そんな顔をさせたかったわけではない。 凛并不想让对方露出那样的表情。

意を決して、乾く口を無理矢理開く。 下定决心,强行张开干渴的嘴巴。


「ただ、俺が何かしたなら……………………………………………
“只是,如果我做了什么的话……………………………………………”

謝って、やらないことも…ない。」 “道歉了,不做也不是……不可能。”

終わった。 结束了。
凛は自分の恋の終わりを悟った。こんな顔をさせて、子供のような暴言を吐いて、出てくる言葉がこれとは。
凛意识到自己的恋情结束了。让她露出这样的表情,说出像孩子般的气话,出口的话语竟是如此。

もしも相手が自分であれば、一発ぶん殴って帰っている。もう大作戦どうこうの話ではない。
如果对方是自己,早就一拳打过去回去了。已经不再是关于大作战的讨论了。

凛は今にも泣き出したい気分になった。 凛感到自己几乎要哭出来了。

…ごめん、兄ちゃん。相談にのってくれたのに…。兄ちゃんなんだかんだ潔のこと、気に入ってたのに…。それに関しては、正直まだちょっとモヤモヤしてるけど…。ごめん…
…对不起,哥哥。明明你愿意听我商量…。虽然哥哥你总是说潔的事情,其实你很喜欢他…。关于这一点,老实说我还有点迷茫…。对不起…

凛が頭の中でイマジナリー兄ちゃんに謝りはじめた頃、潔が「ごめん」と口を開いた。その顔を見ると、眉は下がりきり、目にはうっすらと涙が滲んでいる。
凛在脑海中开始向想象中的哥哥道歉时,洁开口说了声“对不起”。看到他的脸,眉毛完全下垂,眼睛里隐约渗出了泪水。

「…ごめん…凛。凛は何も悪くないから…」 “…对不起…凛。凛你什么错都没有…”
「じゃあ、何で避けるんだよ」 “那为什么要避开啊?”
「…」
「…潔。」 “……干净利落。”

凛は、潔のサファイアのような目をまっすぐと見つめた。相変わらず、綺麗だと思う。試合中の脳を焼き切るような、青く燃え盛る瞳とは違う。凛の好きな、あの海のような静かなきらめき。
凛直直地凝视着洁那双如同蓝宝石般的眼睛。她依然觉得它们很美。这与比赛时那双燃烧着青色火焰、仿佛能烧灼大脑的眼睛不同。这是凛所喜爱的,那片宁静如海般的闪烁光芒。

凛の心臓が、またドキリと高鳴る。 凛的心脏再次怦然跳动。
瞳の中に、つらつらと揺らめく波があった。凛を映すサファイアから感じる、熱い眼差し。それは欲をはらむ色をしているような気がした。
眼中,波光粼粼地摇曳着。从映照着凛的蓝宝石中感受到的,炽热的眼神。那似乎带着某种欲望的色彩。

これはまるで───── 这简直就像是─────


「…………俺、凛のこと………好き、なんだ。」 “…………我,对凛………是喜欢的。”


突如、凛の頭の中でウェディングベルが鳴り響く。 突然,凛的脑海中响起了婚礼的钟声。
地元の協会。牧師の前で向かい合う二人。紙吹雪が一通り舞ったあと、静寂が辺りを包む。潔と凛の両親も兄貴も、祝福してくれている。ブルーロックメンツは血涙を流して手を叩いているのが見える。ざまあみろ。
当地协会。牧师面前相对而立的两人。纸屑飞舞一番后,四周陷入寂静。洁和凛的父母、兄长都在给予祝福。可以看到蓝锁成员们流着血泪在鼓掌。活该。

禿げた牧師が、息を吸い、誓いのテンプレートを読み上げる。
秃顶的牧师深吸一口气,开始宣读誓言的模板。

「病めるときも健やかなときも、互いを支え、生涯愛し合うことを誓いますか」
“无论是生病时还是健康时,都互相支持,誓言一生相爱吗?”

「…誓います」 “…我发誓”
「誓います」 “我发誓”

「それでは、誓いのキスを」 “那么,来个誓约之吻吧。”

「……潔」 「……洁」
「……凛♡」

凛は潔の肩にそっと手を置く。二人は互いに見つめあう。凛が頭を傾けると、潔はゆっくりと目を閉じた。
凛轻轻地将手放在洁的肩上。两人相互凝视着对方。当凛倾斜头部时,洁缓缓地闭上了眼睛。

柄にもなく、緊張から震える唇をそろそろと近づける。極めて優しく、包み込むように、唇を重ね──────
不由自主地,紧张得颤抖的嘴唇缓缓靠近。极其温柔地,仿佛要将对方包裹起来,双唇相叠──────


──る前に、凛の意識は現実に戻ってきた。はっとした凛を、潔が不思議そうに見つめていた。
──之前,凛的意识回到了现实。洁好奇地注视着突然回过神来的凛。

潔が凛を好き? 洁喜欢凛吗?
凛のこと好き…好き…なんて甘美な響きなのだろう…。凛も潔が好きだ。そう、晴れて両想いになったのだ。
凛的事情喜欢…喜欢…这种声音真是甜美啊…。凛也喜欢洁。是的,终于变成了两情相悦。

潔はほえほえな凛に惚れたのか??ということは、作戦は成、功……………?
洁是喜欢那个傻乎乎的凛吗?这么说,计划是成功了……………?

宇宙を背負って固まってしまった凛は、潔の顔がどんどん曇っていくことに気が付いていない。
背负着宇宙而凝固的凛,并未察觉洁的脸色越来越阴沉。

じゃあ、潔の態度がおかしかったのはほえほえな凛に惚れた結果、恥ずかしがっていたからなのか…?なんだそれ可愛い…
那么,洁的态度变得奇怪是因为对可爱的凛产生了好感,感到害羞了吗?那真是可爱啊…

凛なりの結論が出たところで、潔が再び口を開いた。 凛得出结论后,洁再次开口了。

「…ごめん…急になに言ってんだろうって感じだよな。忘れてくれ。やっぱ、今日は俺帰るよ。」
“…对不起…突然这么说感觉很奇怪吧。忘了吧。果然,今天我还是回家了。”

「っ…は?おい待て」 “啊?等等,喂!”
「凛。頼む、離して…」 “凛。求你了,放开我…”
「…なんでだよ。お前、俺のこと好きなんだろ。」 “…为什么啊。你,不是喜欢我吗。”

だったら、離れる必要なんてない。俺も、潔が好きだから。そう言おうとして、それはパシンッという音で遮られた。
那就没必要离开。我也喜欢洁。正要说出口,却被“啪嗒”一声打断了。

頬が熱い。 脸颊发烫。
片頬のじんじんとする痛みに、潔にビンタされたのだと悟った。凛の頭のなかは、はてなでいっぱいだった。兄ちゃんにもぶたれたことないのに…!という感じである。
一侧脸颊的阵阵疼痛,让她意识到自己被狠狠地扇了一巴掌。凛的脑海中充满了疑惑。连哥哥都没打过我呢…!她心里这样想着。

「凛。浮気は最低な行為なんだぞ…!いくら可愛くても、俺は許さないからな。」
凛。出轨是最差劲的行为……!无论多可爱,我都不会原谅的。

「…………………浮気…?……、なに言ってんだ………………さっきから」
“………………出轨…?……,你在说什么啊………………从刚才开始”

凛がようやく絞り出した声は、カッスカスだった。当然である。やっと両想いになれたと舞い上がっていたら、頬を思い切りはたかれ、おまけにどこかの誰かと浮気をしていることになっている。なんのことやら、もう凛の情緒はぐちゃぐちゃである。
凛好不容易挤出的声音,嘶哑得像破锣。这很自然。刚刚因为终于能够两情相悦而兴奋不已,却突然被狠狠地打了耳光,甚至还被误会与某人有了外遇。这一切让凛的情绪彻底混乱了。

「…記事みたよ。その記事みて、凛のこと好きだって…自覚した。ごめん。でも、恋人いるって知らなくて…気持ち悪いかもしれないけど…少しのあいだだけ、好きでいてもいいか…?」
“…看了那篇文章。看了那篇文章后,意识到自己喜欢凛了。对不起。但是,我不知道你有恋人…虽然可能让人感觉不舒服…可以让我暂时继续喜欢你吗…?”

「待て。記事ってなんだ。」 “等等。文章是什么?”
「え?あの昨日出た…あの、都内のデパートに彼女のプレゼント探しに行ったんだろ?」
“诶?昨天不是出去了吗……就是,去市内的百货商店给她挑礼物了吧?”

凛は押し黙った。 凛沉默不语。
都内のデパート…正直、心当たりしかない。 都内的百货商店……老实说,只有可能是那里了。
確かに、マネージャーがなんか記事が出るとか言っていた気がする。凛からすれば、どうせいつものデマだしどうでもいい、という認識だったが、もしかしたら、潔は何か大きな誤解をしているのかもしれない。
确实,我感觉经理好像说过会有什么报道出来。对凛来说,反正都是些平常的谣言,无所谓了,但或许洁可能有什么重大的误解。

「きんつばだって、そのついでに買ってきてくれたんだろ?」
“连豆沙包也是顺便帮我买的吧?”

「………違ぇ。」 “……不对。”
「え?」 “诶?”
「きんつばは、ついでじゃねぇ。……………わざわざ買いに行ったんだよ。」
“金锷烧可不是顺便买的。……是我特意去买来的。”

誤解は、解かねばならない。ここで間違えたり、引き下がったりしてしまえば、二度と取り返しがつかないと、凛の中の何かが警笛をならしている。
误解必须解开。如果在这里犯错或退缩,就再也无法挽回,凛内心有什么在吹响警笛。

「……………お前が、きんつばが好きだって知ってたから。」
“……因为我知道你喜欢金锷烧。”

「…俺、のため……?」 “…为了我……?”
「そうだって言ってんだろ…」 “不是说了是那样嘛…”

凛はすでに羞恥で死にそうだった。今、部屋が暗くて良かったと心底思う。二度とこんな思いは御免だった。しかし、ここでの恥の結果、潔世一が自分の物になるのなら、安いものだと思った。
凛已经羞愧得快要死了。她由衷地庆幸现在房间里很暗。她再也不想经历这种感觉了。但如果在这里的耻辱能换来洁世一成为自己的,她觉得这代价还算便宜。

「じゃあ、なんで都内のデパートに行ったんだよ」 “那,为什么去了市中心的百货店啊?”
「…………………お前が」 “…………………是你”
「俺が…?」 “我吗…?”
「お前が、俺がチビだった頃の写真を可愛いとか言って褒めてただろ。」
“你不是说过我小时候的照片很可爱,还夸我来着吗?”

「え?うん。」 “诶?嗯。”
「………だから………!肌とか、その頃の自分に戻せば…てめえが、俺に惚れると思ったんだよ…!」
“……所以……!如果能回到那时候的皮肤,我以为你会喜欢上我……!”

それを聞いた潔は、ムッと眉を寄せた。 听到那话的洁,眉头一皱,显得有些不悦。

「…なんだよ」 “……什么的。”
「………嘘つき。」 “………骗子。”
「あ"?」 “啊?”
「だって、チビの凛はリップなんかしないだろ…!洗面所に置いてあったの見てんだよ!!」
“因为小凛根本不会用唇膏的吧…!我看到洗手间里放着的那支了!!”

凛は、今度は叫び出したい気持ちになった。 凛这次想要大声喊出来。
泣きたくなったり、叫びたくなったり、たった数分で、凛の情緒はブンブンに振り回されている。
想哭,想喊,短短几分钟,凛的情绪就被搅得天翻地覆。

「…っそれは…」 “…那是…”

凛は二の句が継げなかった。途端に、自分の単純さとバカさ加減に嫌気が差してきた。どうして、あの店員に言われるのを真に受けて、あんなグロスとやらを買ってしまったのだろう、と。
凛无法接下第二句话。就在这一瞬间,她对自己的单纯和愚蠢感到厌烦。为什么会把那个店员的话当真,买了那种所谓的“唇彩”呢?

「………別に、誰かに言いふらしたりしないぜ?リップが似合う彼女と、お幸せにな…凛。」
“……我可不会到处乱说哦?祝你和那位适合涂口红的她幸福……凛。”

そう、凛を押し退けて去ろうとする潔の手をつかんだ。驚く潔を無視し、凛は洗面所へと足を向ける。そのまま潔の手を引いて、ずんずんと進んでいく。
是的,我抓住了想要推开凛离开的洁的手。无视惊讶的洁,凛朝着洗手间走去。就这样拉着洁的手,大步向前走。

洗面所に入るとすぐに、紙袋に入ったままのグロスを認めた。潔はこれの中身を覗いたのだろう。
一进洗手间,就看到了装在纸袋里的口红。洁大概是想看看里面的东西吧。

雑に手を突っ込んで、取り出したグロスをクリアケースから引っ張り出し、蓋を勢い良く開ける。それは、凛のよく知るスティックのりのような形ではなく、蓋の内側に綿棒のような先が付いているタイプのリップのようだった。使い方が分からず一瞬戸惑ってしまったが、凛はええいままよとチェリーピンクの液体を綿棒のようなものの先で唇に塗りたくった。
粗鲁地将手伸进去,从透明盒子里抽出那支膏状物,猛地打开盖子。那并不是凛所熟悉的那种棒状胶水的形状,而是盖子内侧附有类似棉签尖端的唇膏类型。因为不知道如何使用,凛一时有些困惑,但随即不耐烦地用那类似棉签的东西蘸取樱桃粉色的液体,涂抹在嘴唇上。

「な、何…?!凛?」 “什、什么…?!凛?”
「…っ、どうだっ!!!!!」 “……怎么样!!!!!”
「うおっ!!!何が!?」 「哇!!!什么!?」
「……………………キッッッッッッ…」 「……………………可恶……」
「キッ!?」 「可恶!?」

「キス……ッ!!!したくなるだろ!!!!!」 “亲吻……!!!想亲吧!!!!!”

潔はぽかんと凛の顔を見つめた。正直潔から見て、今の凛は唇の色がわからないほど、顔が真っ赤だった。
洁呆呆地凝视着凛的脸。说实话,在洁看来,现在的凛脸红得几乎看不出唇色。

ベタベタで、お世辞にも丁寧に塗れているとは言えないが、凛は今、彼にできる精一杯で、潔になにかを伝えようとしている。
虽然涂抹得并不细致,甚至难以称之为礼貌,但凛现在正尽自己所能,诚恳地想要传达些什么。

足元に目をやると、さっき凛が投げ捨てたリップのクリアケースが転がっていた。そこには〖思わずキスしたくなる唇〗の文字。
低头一看,凛刚才扔掉的唇膏透明壳子正滚落在脚边。上面写着“让人不禁想吻上去的唇”的字样。

「凛……………」
「…………んだよ………笑いたきゃ笑え。殺してやる。」
“…………是啊………想笑就笑吧。我会杀了你。”

物騒……。
けれど、潔の口はぷるぷる震えて、今にもにやけてしまいそうだった。
然而,洁的嘴唇颤抖着,仿佛随时都会笑出声来。

潔のために都内までわざわざきんつばを買いに行ったと言う凛。潔が可愛いと褒めたから、惚れてくれると思ったから、そんな理由でスキンケアをしたと言う凛。今、目の前でリップのせいでたらこ唇のようになってぷるぷる震えている凛。
凛说为了洁特意去都内买金锷烧。因为夸洁可爱,以为他会喜欢上自己,所以才做了护肤的凛。现在,眼前因为涂了唇膏而变得像鳕鱼子嘴唇一样,颤抖着的凛。

潔にはそんな凛が、可愛く見えてしまってたまらない。
洁觉得那样的凛,可爱得不得了,简直无法自持。

潔は、とうとう耐えきれず、ぷっと吹き出した。 洁终于忍不住,扑哧一声笑了出来。

「殺す。」 “杀掉。”
「うわっ!待て待て…!」 “哇!等等…!”

潔はこちらに向かって手を伸ばす凛を、胴に手を回すことで制した。凛は、急ブレーキをかけた車のように、声にならない声を上げて固まった。胸に耳を当てると、ドコドコととんでもない速さの心音が聞こえる。
洁伸手向这边,凛则用手环住他的腰以制止他。凛像急刹车后的车子一样,发出不成声的声音,僵住了。将耳朵贴在胸口,可以听到心跳声异常快速,咚咚作响。

…か、可愛い~~~~っ!? ……啊,好可爱~~~~!?

よくみれば、額にうっすらと汗をかいているし、顔は、首まで真っ赤になっているではないか。
仔细一看,额头微微冒汗,脸都红到脖子了。

潔は、ゆっくりと凛の頬に手を伸ばした。 洁缓缓地将手伸向凛的脸颊。

「……ごめんな、凛。ビンタなんかして。」 “……对不起,凛。打了你一巴掌。”
「……………………………………ああ。」 “……………………………………啊。”
「…俺、昨日あの記事みてさ、すごく嫌な気分になったんだ。別に、凛はただの友達だし、祝福してあげるべきだろって、思ったんだけどさあ。」
“…我昨天看了那篇文章,感觉非常不舒服。虽然凛只是普通朋友,我应该祝福她的,但就是觉得不太对劲。”

「……………………ああ。」 “……………………啊。”
「無理だったんだ。………だから、俺…凛のこと好きなのかも……って。そう思ったら、途端に凛の顔見るの恥ずかしくなって、でも、凛に彼女がいるってなったら苦しくなって…」
“我撑不住了。……所以,我可能……喜欢凛……想到这个,突然看到凛的脸就觉得很害羞,但是,如果凛有女朋友的话,我又会很难受……”

「…………あんな記事、いつもだろうが。」 “……那种报道,不是常有的事吗。”
「うん。でも、今回はあるかもって、結構噂んなってたんだぜ。凛の地元鎌倉なのに、都内にいるし。しかもデパート。」
嗯。不过,这次可能真的有哦,听说传得挺厉害的。凛明明在她的家乡镰仓,却出现在东京,而且还是在百货公司。

「………………ああ。」 “………………啊。”
「なんで、帰国したとき都内にいたんだろうって、日本で何してたのか聞いたら、実家に帰ったとか言うし。……嘘吐かれたって思った。」
「为什么,回国的时候在东京呢,我问他在日本做什么,他说回老家了。……我觉得他在撒谎。」

「…………………ああ………」 「…………………啊………」

結果的に、潔になにかした訳じゃなかった。その事実に凛は心底安心した。ギッギと音をたてながら、ぎこちなく、ゆっくりと潔の背中に腕を回す。潔はふくふくと笑いながら、腰に回した手の力を強めた。凛は潔の肩口に顔を埋め、しばらくギュッと抱きしめ合う。
结果上,洁并没有做什么特别的事情。对于这个事实,凛由衷地感到安心。她发出咯吱咯吱的声音,笨拙而缓慢地将手臂环绕在洁的背上。洁一边发出呼噜呼噜的笑声,一边加强了环绕在腰间的手的力度。凛将脸埋在洁的肩膀上,两人紧紧地拥抱了一会儿。

潔が自分の腕のなかで笑っている。心底幸せそうな顔で笑っている。先ほどは噛み締められなかった喜びを、今度は目一杯噛み締めた。
洁在自己的怀抱中笑着,脸上洋溢着由衷的幸福。这次,她尽情地品味了刚才未能深切感受到的喜悦。

すると、腕の中の潔が、おずおずと顔を上げた。 于是,怀中的洁怯生生地抬起了头。

「許してくれる…?」 “你能原谅我吗…?”
「……あ?何をだよ」 “……啊?什么啊?”
「ええ……?……ビンタしたこと、とか。」 “呃……?……打耳光的事,之类的。”
「……………………………………許さねぇ。」 “……………………………………不会原谅的。”
「…うう…」 “…呜…”

スッと潔の熱をもった手のひらが凛の頬を滑る。 洁那只带着热意的手掌轻轻滑过凛的脸颊。

「…凛、このリップ…なんで買ったのか聞いてもいい?」
“凛,我可以问一下你为什么要买这个唇膏吗?”

「…………よくねぇ。」 “…………不太好。”
「……じゃあ、俺の都合が良いようにとっても良い?」
“……那,按照我的方便来可以吗?”

「…………勝手にしろ」 “…………随你的便。”

潔は、うん。と返事をすると、そろそろと顔を傾けた。薄く開けた目蓋から覗くサファイアは、まっすぐとこちらを見据えている。ミルクのような甘い香りと、うっすらと汗のにおいが鼻を掠めた。
洁回答了一声“嗯”,然后缓缓地歪了歪头。从微微张开的眼睑中透出的蓝宝石般的眼眸,直直地凝视着这边。牛奶般的甜香和淡淡的汗味轻轻掠过鼻尖。

────────ちゅ。 ────────啾。

甘いリップ音。ほんの一瞬だけ重なった唇の感触が、残っている。ずっと欲していたものだった。
甜蜜的唇音。仅仅一瞬重叠的唇感,依然残留。这是她一直渴望的东西。

誰にでも笑顔を振り撒く潔でも、きっと誰にでも唇を明け渡す訳じゃないだろう。凛はやっと、潔の唯一を一つ手に入れたのだ。
无论是对谁都展露笑容的洁,也一定不会对每个人都敞开双唇吧。凛终于得到了洁的唯一。

「…………どう?」 “…………怎么样?”
「……………………悪くねぇ」 「……………………不错嘛」
「そっか」 「这样啊」
「けど、──────足りねぇ」 「但是,──────还不够」
「ぇ、んむっ?!」 “诶,嗯呣?!”

ちゅっちゅと唇をついばみ、額に、こめかみに凛は思うがまま吸い付いた。夢にまでみた感触に、凛は夢中になった。耳元に唇を持っていったとき、ふはっと声が聞こえた。顔を離すと、潔が頬を染めてふわふわと笑っている。
凛轻轻地啄着嘴唇,随心所欲地吸吮着额头和太阳穴。她沉浸在连梦中都渴望的触感中。当她将嘴唇移到耳边时,听到了一声轻笑。当她离开脸庞时,洁的脸颊泛红,轻盈地笑着。

「…………んだよ」 “…………是这样的”
「んーや。可愛い、なって」 嗯,不行。变得可爱点。
「………………は」 ………………啊。
「可愛い、凛。肌もすべすべだし、ちゃんとケアできて偉いな~!もちもちだな~凛♡」
“好可爱,凛。皮肤也光滑,护理得很好,真了不起~!还这么有弹性~凛♡”

「……」
「……?」
「……」 “……”
「あれ?ごめん、……怒った?」 “哎?对不起,……生气了?”
「……………………………………知らねぇ。もっと言え。」
“……………………………………不知道。再说点。”

潔の周りには、ハートの紙吹雪が乱舞した。 洁的周围,心形的纸屑在空中乱舞。
あ~~~~~~~~~~~~っ!!!?可愛い♡♡!!なんかほえほえしてる~!?なんだこれ!何この可愛い生き物♡♡♡
啊~~~~~~~~~~~~!!!?好可爱♡♡!!怎么有点像在撒娇~!?这是什么!这个可爱的生物是什么♡♡♡

「はぁ~~~~~可愛い♡♡凛♡」 “啊~~~~~好可爱♡♡凛♡”

凛はもっと言え、とでもいうように額をグリグリと肩に押しつけてくる。潔は、まあるい凛の頭を撫でた。抱きしめた体制のまま、頬を寄せ「好き、可愛い♡可愛い、凛♡」と求められる限り愛をささやいた。
凛用力地将额头蹭到洁的肩膀上,仿佛在说“再说点什么”。洁抚摸着凛圆圆的头,在拥抱的姿势中,将脸颊贴近,不断地低语着“喜欢你,可爱♡可爱,凛♡”,只要被要求,就不停地倾诉爱意。

その日は、凛のお気に入りの試合のDVDをもう1本観てから、フランスの街並みを二人で散歩した。凛の見つけた美味しいカフェテリアでコーヒーを買って、甘いケーキを食べた。
那天,我们先看了一部凛最喜欢的比赛的 DVD,然后两人一起在法国的街道上散步。在凛找到的一家好吃的咖啡馆里,我们买了咖啡,还吃了甜蛋糕。

散歩やお出掛けだけなら、いつも通りだが、ことあるごとに潔が
散步或外出时,总是如常,但每当有事时,洁就会……

「ありがとな~凛。好き!」 「谢谢你~凛。喜欢你!」
「口元にクリーム付いてるぞ。ははっ!凛可愛いな~」
「嘴边沾了奶油哦。哈哈!凛真可爱~」

と言うせいで、凛は終始ドキドキしっぱなしだった。ふざけんな。可愛いのはお前だ。
因为这些话,凛一直心跳不已。别开玩笑了。可爱的是你啊。

こうして、二人のお付き合いはスタートした。 就这样,两人的交往开始了。
そして、日頃からそんな良質な愛にどっっぷりと浸かった凛は、喧嘩したときも「なに言ってんだ、俺は可愛いだろ」と堂々と口にするような自己肯定感激高な、ぴゅあぴゅあ甘えた凛ちゃんになってしまったのでした。
于是,平日里沉浸在如此优质爱意中的凛,即使在吵架时也会自信满满地说出“你在说什么啊,我可是很可爱的”,变成了一个自我肯定感极高、甜美撒娇的凛酱。

めでたしめでたし。 可喜可贺,可喜可贺。

评论

  • くま

    もう可愛すぎてずっとニヤついてました。最高ですありがとうございます

    6月26日回信
  • たい焼き
    6月26日回信
  • さなぴꕤ 

    ぎゃー!好きー‼︎凛ちゃんかわいい

    6月26日回信
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