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きらきら星のワルツ/町的小说

きらきら星のワルツ  闪烁星光的华尔兹

94,563字3小时9分钟

「きらきら星のワルツ」  《闪烁星光的华尔兹》
A6/356P/全年齢/3000円  A6 尺寸/356 页/全年龄向/3000 日元
※イベントではノベルティーのうちわ(先着順)が付きます。
※活动现场将赠送限量团扇(先到先得)。


素敵な表紙はきょたさん(@kiyotamaru_2)に描いて頂きました!!
封面插画由きょた老师(@kiyotamaru_2)倾情绘制!!

装丁は全て餃子さん(@gyouz4)にデザインして頂きました!
整体装帧设计由饺子老师(@gyouz4)操刀完成!


✦本のあらすじ✦  ✦故事梗概✦
女の子として生まれた潔世一が大学の夏季休暇にドイツに渡り色々あってカイザーと出逢い恋に落ちる、二ヶ月間のアバンチュールなラブコメ。
以女儿身降世的洁世一在大学暑假赴德期间,因缘际会邂逅凯撒并坠入爱河,展开为期两个月的浪漫爱情喜剧。

捏造満載かつ、男じゃないが故に世一がそもそも青い監獄に行けてないifの世界です。
这是一个充满虚构元素的世界线设定——由于并非男性身份,世一根本没能进入蓝色监狱。

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そうして受けた〝お金持ちクレーマー〟のお家は──世一の予想を超えた規模だった。
于是他们来到的"富豪"宅邸——规模远超世一的想象。

いやうん。立地の時点で既に〝ウワッ〟て感じだったんだけど。
不不。光看地段就已经让人"哇哦"地惊叹起来了。

実際の家を見たらもう、ドデカすぎて絶句するしかなかったというか。
实际看到房子时更是大得让人哑口无言。

なんかもう、セレブ映画のセットみたいだったのである。
简直就像是明星电影里的布景一样。

──ミュンヘン市南部のグリュンヴァルト地区。  ──慕尼黑市南部的格林瓦尔德区。
イーサル川沿いに位置する閑静でいて緑豊かなここは、ミュンヘン都市で最も高級な住宅地の一つとされている。
坐落于伊萨尔河畔的这片宁静而绿意盎然的区域,被誉为慕尼黑都市圈最高档的住宅区之一。

ちなみにバスタード・ミュンヘンのクラブハウスからは車で10分ほどの位置にあり。
值得一提的是,这里距离巴斯塔德·慕尼黑俱乐部的训练基地仅有约十分钟车程。

だからか、バスタード・ミュンヘンのトップ選手は皆ここグリュンヴァルトに住居を構えていると噂があるのだ。
或许正因如此,传闻巴斯塔德·慕尼黑队的顶级球员们都选择在格林瓦尔德安家落户。

なのできっと、世一憧れのノア様も、この地区にある豪邸のどれかに住んでるんだろうけど……。
所以,世一憧憬的诺亚大人,肯定也住在这个地区的某栋豪宅里吧……

「──いや、ほんと広いってぇ……」  "──天啊,这也太宽敞了……"

この圧倒的規模感ときたら。  这压倒性的规模感。
リビング一つで、思わずくらりとする程広い。  光是客厅就宽敞得让人头晕目眩。
世一が今借りてる全部屋をすっぽり入れても尚空間が余るだろう大きさに、ここだけで何畳分あるんだろうと気が遠くなる。
世一现在租住的整个房子都能轻松容纳进去还绰绰有余的规模,光这个空间就不知道有多少叠大小,想到这个就让人头晕目眩。

「こんな家で一人暮らしって、流石に空間無駄すぎない……?」
"在这么大的房子里独自生活,未免也太浪费空间了吧......?"

部屋の中でテントを張ってもなお余るだろう広々とした空間に、思わず溜め息が出てしまう。
在宽敞得即使搭起帐篷也依然显得空旷的房间里,不禁让人长叹一口气。

そりゃ、確かにいつもお金持ちのお家を掃除しているけど。
虽然确实经常给有钱人家做保洁啦。

でもそれは、ここと比べると所詮上の下くらいだったと思い知らされるというか。
但这一切与这里相比,终究只能算是中上水平罢了。

こんな上の上な、規格外のトップオブお金持ちの家は流石に初めてというか……。
如此顶级、超出常理的富豪宅邸,果然还是第一次见识……

例えばこの、ツルツルピカピカした白い床材は一体なんなのか。
比如说这光滑锃亮的白色地板材质究竟是什么。

大理石ってやつ? 大理石って、こんな真っ白なのもあるんだ……?
是大理石吗?原来大理石还有这样纯白的品种……?

「……まあでも、なんもないから掃除はしやすいかも」
“……不过嘛,因为没什么东西,打扫起来倒是挺方便的”

そう、この豪邸。やたら広い割に──なんだか妙に、物が少ない。
没错,这栋豪宅。明明大得离谱——却莫名奇妙地,没什么摆设。

いや、なにもないわけではないのだけれど。  不,倒也不是什么都没有。
だって棚の上とか机の上とかに、キラキラしたお高そうなアクセサリーが不用心に置いてあるし。
毕竟架子上啊桌子上啊,都随意摆放着闪闪发亮、看起来价值不菲的首饰呢。

でも、その他の家具とかは少な目というか。なんだかまるでモデルルーム鑑賞用のディスプレイみたいというか。全体的に生活感がないというか……。
不过其他家具之类的倒是很少。总觉得简直像样板房一样。整体上缺乏生活气息……

ドが過ぎるお金持ちの家ってこういう感じなのかな。  超级有钱人的家就是这种感觉吗。

──けどまぁ、広くなってもやることは変わらないので。
——不过嘛,就算空间变大了,要做的事情也不会改变。

「……よし! ちゃっちゃとやって、ちゃっちゃと帰ろ」
"……好!赶紧干完,赶紧回去吧"

長い髪をキュッと高い位置で結んで。  将长发高高地扎起。
そうしてゴム手袋を装着して、簡易式のモップを組み立てていく。
然后戴上橡胶手套,开始组装简易拖把。

綺麗にする部屋は、頭にきちんと叩き込み済み。  要打扫的房间,已经牢牢记在脑中。
だから間違えて不要な部屋に入る心配は、多分ない。  所以大概不用担心会误入不该打扫的房间。

なので、うん。  所以,嗯。
時間内に、全部しっかり綺麗にするぞ!  一定要在规定时间内,把这里全都打扫得干干净净!


︎✦︎︎✦︎︎✦︎  ✦✦✦


──とまぁ、そんなこんなでドデカ豪邸を綺麗に掃除した、次の日。
──就这样,在把这座超大豪宅彻底打扫干净的第二天。

いつもの如く事務所オフィスに来ていた世一──仕事道具を持ち帰って家から現場に直行&直帰するのも有り、、なんだけど、世一は人恋しくホームシックになりそうだから毎回オフィスを経由して行き来しているのだ──は、ボスと二人並びながら神妙な顔でパソコンのディスプレイを覗き込んでいた。
一如既往来到事务所的世界第一——虽然也可以把工作工具带回家直接从家往返现场,但世界第一总觉得那样会太寂寞,所以每次都特意绕道办公室——此刻正和老板并肩站着,神情严肃地盯着电脑屏幕。

ディスプレイに並ぶ5つの星。  屏幕上排列着五颗星星。
それは勿論〝最高満足度〟を指し示すモノで。  这自然代表着"最高满意度"。
そうしてその下に表示される一文──〝今後はこのスタッフ固定に〟という文言に。
而下方显示的那行文字——"今后请固定指定这位服务人员"的字样。

やっぱり世一は、ポカンと口を開いてしまう。  果然世一还是惊讶得张大了嘴。

「……おチビちゃんたら、いったいどんな魔法を使ったの? 特別気合いでも入れたのかしら?」
"……小不点儿,你到底用了什么魔法?难道是特别打起精神了吗?"

「いやぁ……いやぁ? いつも通りだったんですけど……」
"没有啊……真的没有?我就是和平常一样……"

そう、世一はいつも通りに働いただけなのだ。  没错,世一只是像往常一样工作罢了。
そりゃ広大クソデカな敷地に圧倒されはしたけど。でもやる事はいつも通りで、やった事もいつもと変わらない掃除のみ。
虽然被这广阔的宅邸震撼到了。但要做的事情还是老样子,实际做的也和平常一样只有打扫。

だから洗濯とか買い出しとかはしていない。だって世一の〝項目〟は、掃除だけだから。
所以洗衣采购之类的都没做。毕竟世界第一的"服务项目"里,只包含打扫卫生嘛。

──というのも、ここの家事代行ハウスキーパーはスタッフによって〝受け付ける業務内容〟が違うのである。
──因为这里的家政服务有个特点,每位员工"承接的业务范围"都不相同。

例えばミラなら掃除とベビーシッターで、他のスタッフだと掃除洗濯に買い出しといった感じで、そのスタッフ本人が〝出来る〟と設定した事だけが仕事内容になるというか。
比如米拉就只接打扫和保姆工作,其他员工则负责打扫洗衣采购之类,完全取决于员工本人设定自己"能够胜任"的项目。

そうしてその中で、新人の世一は現在〝掃除だけ〟を受け付けるようにしていて。
就这样,新人世一目前只接受"单纯打扫"的工作。

なので世一は掃除スキルは評価される一方〝買い出しもしてほしい〟とか〝料理の作り置き対応はないのか〟とかの要望クレームが、割と入れられてたりもするんだけど……。
所以虽然世一的打扫技能备受好评,但"希望也能帮忙采购"或是"能不能提前做好饭菜"这类要求,其实也经常被提出来……

「何がよかったんですかね……?」  "到底是哪里做得好了呢……?"
「なんなのかしらね……」  "谁知道呢……"

二人して、ウーン? と首を傾げる。  两人同时歪着头发出"嗯?"的疑问声。
でも、マジでわからないのだ。確かに世一は掃除を丁寧にする人間だけれど、相手はそもそもクレーマーとして扱われている面倒、、な客、、
但确实毫无头绪。虽然世一确实是个做事细致认真的人,但对方毕竟是作为投诉客户被对待的麻烦人物。

から、、この顧客の家を掃除する人間スタッフは、大抵念入、、りに、、掃除している筈で──なんせクレーム、あまり入れられ過ぎるとスタッフ評価が下がるので──掃除が丁寧だったから世一が選ばれたという線は、恐らく薄い。
按理说负责这类客户家打扫的员工,大多都会格外仔细——毕竟投诉过多会影响员工考核评分——所以单纯因为打扫认真而选中世一的可能性,恐怕微乎其微。

「……日本人がよかったとか?」  "……莫非是因为他是日本人?"
「……その可能性が一番高いわね」  “……这种可能性最大呢”

──スタッフの情報は、基本的に課金したら別だけど客側には国籍と使用言語しか開示されないようになっている。
——根据规定,工作人员的信息原则上只向客人公开国籍和使用语言。

そうしてスタッフを〝担当〟として固定にすると指名料が発生するし、そうでなくても料金は希望する部屋の個数や広さで計算されるので。
如果将工作人员固定为"专属服务",就会产生指名费用;即便不固定,费用也会根据所需房间的数量和面积来计算。

件の金持ちクレーマーは、まあまあな値段を支払うことになるのだが──それでもいいというのだから、本当にかなりの大お金持ちなんだろう。
那位爱投诉的富豪客人,虽然要支付相当可观的费用——但既然他表示无所谓,想必真的是超级大富翁吧。

だって多分一回の掃除の料金、世一の一週間分のお給料よりもお高くなる筈なので。羨ましい限りだ。
因为大概一次的清洁费用,应该比世一整个星期的工资还要高吧。真是令人羡慕啊。

「まぁなんにせよ、クレーマーじゃなくなったならもういいのよ。これからも頑張ってね、おチビちゃん♡」
"总之不管怎样,既然不再是投诉者那就没事了。以后也要加油哦,小不点♡"

「はい……」  "好的……"

このお客さんの意図を理解出来ない不明瞭さは、やや気持ち悪いけど。
虽然这位客人意图不明的暧昧态度让人有点不舒服。

でもまぁ、この規模の家の掃除で指名料が入るということは、そのまま世一の懐も温かくなるということなので。
不过嘛,能靠打扫这种规模的房子赚取指名费,也就意味着世一的手头能宽裕些了。

これも推し活ノア様グッズの為! と気を取り直した世一は、組み直しとなったシフトに世一はスケジュールアプリを無言で開いていったのだ。
"这都是为了追星事业!"重新振作精神的世一默默打开日程管理软件,开始调整排班表。


✦✦✦


──世一がその顧客の"担当"になってから、変わったことがひとつ。
——自从世一成为那位客户的"专属管家"后,有件事发生了变化。

「……またある」  「……又出现了」

光沢の強い、黒く艶々とした多分石のダイニングテーブル。
光可鉴人的黑色亮面石材餐桌。

その端に置かれた──これ見よがしな、100ユーロ札の
桌边赫然摆放着——刻意炫耀般的成沓百元欧元大钞。

つまりは、置いてあるのだ。  换言之,就这么放着。
机に。不用心にも札束の金がたんまりと。  在桌上。毫不设防地堆着厚厚一叠钞票。
ちなみに束といっても、特に結んだりはしてないやつなので。そらもう大雑把かつダイナミックにモサッと積まれている。
说是"一叠",其实也没有特意捆扎起来。就那么随随便便、气势十足地蓬松堆放着。

「……うーん?」  "……嗯?"

〝これ〟を初めて発見したのは、担当になって最初の勤務日。
第一次发现"这东西"是在担任管家后的首个工作日。

リビングの食卓に無造作に置いてあった一枚のユーロ札に、世一は最初置き忘れかなと素直に思った。
客厅餐桌上随意搁着的一张欧元纸币,世一最初还单纯以为是有人忘在那儿的。

別に、チップの存在を知らなかった訳ではないけど。  倒也不是不知道小费这回事。
でもチップ文化が根強いドイツで珍しいことに、ボスが率いるこの家事代行ハウスキーパーのバイトは〝チップ込みの値段〟を謳っていて。なので出先でチップを用意されることは、基本的にはあまりないのだ。
不过在小费文化根深蒂固的德国,老板带领的这个家政兼职团队却罕见地标榜"价格已含小费"。所以外出工作时基本很少会遇到需要准备小费的情况。

それこそ、働きぶりを気に入られた時に〝またよろしくね〟って感じで、お小遣い程度にくれるくらいというか。
真要给的话,也就是客户满意服务时,会像"下次还要麻烦你哦"这样给点零花钱程度的表示。

──いや、そもそもチップの相場は大体5~20ユーロ。
──不过说到底,小费行情基本在 5 到 20 欧元之间。

なのに今置かれている札束は、どう見ても100ユーロ札。
可眼前这叠钞票怎么看都是 100 欧元面额。

だからやっぱり、チップとするには額があまりにも大きすぎる。
所以果然还是觉得,作为小费金额实在太大了。

なので置き忘れと判断するしかないというか。  只能认为是客人遗忘在这里的吧。
この100ユーロに下手に手を出して、変にトラブルになっなクレームを入れられても困るなと思ってしまって。
要是贸然碰这一百欧元,惹上麻烦就糟了——我不由这么想着。

結局〝こういう忘れ物もあるよな〟と無理やり納得した世一は、100ユーロを机のラインと平行になるよう綺麗に置き直し、そのまま屋敷を後にしたのだ。
最终,世一勉强说服自己"这种遗忘物也是有的吧",将那张 100 欧元纸币重新整齐地摆放在与桌沿平行的位置,就这样离开了宅邸。

──そうして次に来た時。札の枚数が増えていた。  ——于是当他再次造访时。纸币的数量增加了。
具体的に言うと、100ユーロ札が二枚に。  具体来说,100 欧元纸币变成了两张。

つまりは──ここの家主、危機感が死滅してるタイプの不用心なのかもしれない。
也就是说——这栋宅子的主人,或许是那种危机感完全消亡的粗心类型。

だって、どう考えても他人が出入りする場所に放置するような額じゃない。
因为这怎么看都不像是会随意放在外人进出场所的金额。

例えばここが鍵のかかってる部屋なら百歩譲ってまだ、、わかるのだが。なんで自分が雇った家事代行ハウスキーパーの人間が来る日に、わざわざこんな無防備盗んでくださいと言わんばかりに大金を置くのか。
如果这里是上锁的房间,那勉强还能理解。但为什么偏偏要在家政服务人员上门的日子,如此毫无防备地放置这么大笔现金。

いや、裏をついて考えると──もしかしてこれ、マジでチップだったりするやつ?
等等,换个角度想——难道这真的是所谓的小费?

でも、チップで100ユーロってなんだよ。100ユーロだぞ。100ユーロが二枚だぞ!?
可 100 欧元当小费算什么啊。整整 100 欧元啊。还是两张 100 欧元!?

日本円で大体3,2000円くらいのチップとか。流石に有り得ないだろ。金銭感覚バグりすぎ。
大概 3 万 2 千日元左右的小费。这也太离谱了吧。金钱观念完全崩坏了。

なので間違いなく、これは絶対に置き忘れで。  所以毫无疑问,这绝对是遗忘在这里的。

だからその時も、世一はウゲ〜〜危機感終わってんなという顔をしながらまた端を揃えて置き直し。
所以当时世一也一边发出"呜诶——"的声音,一边重新把边缘对齐放好。

何か忠告でも書き残した方がいいかなぁとか思いつつ、いやでもそこまでする義理もないかと。その日もそのまま帰ったのだけど。
想着要不要写点什么提醒的话,但又觉得没义务做到这个地步。那天也就这样直接回去了。

───けれどその後も、ソレ、、は世一が出勤する度に続き。
───然而即便如此,每当世一上班时,这件事仍在持续。

札の枚数も順当に二倍、四倍、十倍と増え──最終的に"札束"と呼ばれる分厚さになってしまって。
钞票的数量也顺理成章地翻倍、四倍、十倍地增长──最终厚到足以被称为"钞票堆"的程度。

毎回無造作に置かれている〝大金〟に。流石に恐ろしさを覚えた世一は、そこで初めて書き置きを残したのだ。
面对每次都被随意放置的"巨款"。就连世一也不禁感到毛骨悚然,这才第一次留下了字条。

メモに残した言葉は〝Wissensie, was Wachsamkeit ist?〟
纸条上写着〝Wissensie, was Wachsamkeit ist?〟

意味は、ザックリ言うと〝もうちょっと警戒心を持った方がいいぞ〟とか、そういうカンジニュアンス
简单来说,意思就是"你最好再多点戒心"之类的感觉。

でも、如何に頭の可笑しい男でも、流石に書き置きまで残されたら行動を改めるだろう、なんて。
不过就算是再神经大条的男人,看到这种留言也该收敛行为了吧。

良い事をした気分になっていた世一は〝これでお金を放置することがなくなりますように〟と、半分神頼みのような心地で屋敷を後にしたのだけれど。
带着做了好事的满足感,世一怀着"希望这样就不会再有人乱放钱了"的半祈祷心情离开了宅邸。

しかしそのまた次の勤務日───何故か量が、更に増えてしまったのだ。
然而到了下一个执勤日——不知为何,钱的数量反而变得更多了。

書き置きした意味がまるでないというか、マジで学習能力がなさすぎる……。
这留言简直毫无意义,说真的学习能力也太差了吧……

そして端的に怖い。普通に恐怖だ。  而且直白地让人害怕。真的挺恐怖的。
何がって、この光景に慣れ始めてきた自分が。  要说恐怖在哪里,就是自己居然开始习惯这种景象了。
もう金がただの紙にしか見えなくなってきたというか。このままだと金銭感覚、おかしくなる気がする……。
现在看钱就像在看废纸一样。再这样下去,金钱观念怕是要出问题……。

「つか、もうこれ100万軽く超えてね……?」  "话说,这早就轻松超过一百万了吧......?"

──机にこんもりと盛られた、札の山。  ——桌上堆成小山般的钞票堆。
そう、もう束超えて山なのである。きっと100枚なんてとっくに超えてるだろというか。
没错,已经多到超出"捆"的概念形成"山"了。肯定早就超过一百张了吧不如说。

ここまで来ると〝この客はイカれてるのかもしれない〟という疑惑が〝この客は恐らくはイカれている〟という確証に変わってしまうというか。
事到如今,原本"这位客人可能脑子有问题"的怀疑,已经转变为"这位客人恐怕确实脑子有问题"的确信了不如说。

いやでも、マジでイカれてるだろ。もう不用心どころじゃないだろ。
这也太离谱了吧。已经不是粗心大意能解释的了。

なんで机に金で山作ってんの? これどういう意図? もしかしてお持ち帰り自由だったりする?
为什么要在桌上堆钱山啊?这到底什么意思?难道可以随便拿吗?

「………、……………よし」  "………,……………好"

──机にこんもりと積まれた札束、いや札山を見ながら、世一は静かに気合いを入れ直す。
——望着桌上堆积如山的钞票,不,应该说是钱山,世一默默重新打起精神。

本日の掃除は、一応終了済み。つまりは、ここから先は自由時間。
今天的打扫工作姑且算是完成了。也就是说,从现在开始就是自由时间了。

なのでスマホを弄ってもサボりにはならないワケで──神妙な顔をした世一は、慣れた手つきで通話アプリを開きコールを掛けたのだ。
所以摆弄手机也不算偷懒——一脸严肃的世一用熟练的动作点开通话软件拨出了电话。

『はぁい?』  喂~?
「──あ、もしもしミラ? 今ちょっと時間ある?」  "——啊,喂?米拉?现在有空吗?"

電話の相手は、もうすっかり親友レベルに仲良くなったミラだ。
电话那头是已经亲密到堪称挚友的米拉。

そうしてミラは今日、確か〝一日家でゴロゴロする〟と言っていた筈なので。
记得米拉今天说过要"在家躺平一整天"来着。

多分、この通話に付き合ってくれるだろうなと思っての、これは打算的な突撃連絡だったりする。
想着她应该会陪我煲这通电话粥,这通突击联络其实带着点小算计。

『大丈夫よ。何かあったの?』  没关系呀。发生什么事了吗?
「ありがと! えっと、例のお客さんの話なんだけどさ」
"谢谢!那个...关于之前说的那位客人..."

『アー、あのクレーマー?』  啊,那个投诉狂魔?
「そう、その人」  "对,就是那个人"

持ち込んだ掃除道具を片手でガチャガチャと解体して帰りの身支度をしつつ、世一は言葉を選んで唇をまごつかせる。
世一单手哗啦哗啦地拆解着带来的清洁工具,一边做着回去的准备,一边斟酌着词句,嘴唇微微颤抖。

というのも、流石にその客クレーマーの家で悪口事実を言うのはアレ、、かなと思ったのだ。
毕竟在客户家里说坏话确实不太合适。

基本留守中に掃除を任されているから、本人に聞かれることはまずないだろうけど。
反正基本都是趁他们不在时打扫,应该不会被本人听见。

でも、万が、、があったらヤダなぁというか。ないとは思うけど。
但万一被听见就糟了——虽然觉得不太可能。

「なんかあのお客さんさ、最近お金を不用心に置くようになったんだよね」
"话说那位客人啊,最近总把钱随便乱放呢"

『普通にチップじゃない?』  『这不就是普通的筹码吗?』

──即レスである。  ——秒回。
いやうん。世一とて、同じ立場ならば真っ先にそのチップの可能性に行き着くと思うので。
嗯...不过我觉得就算是世一站在同样的立场,肯定也会最先想到这种可能性。

間違ってはないんだよな、札束の種類と枚数さえ常識的な範囲に収まってたら……と思わず遠い目をしながら、世一はごにょごにょと言葉を濁していくのだ。
其实也没错啦...只要纸币的种类和数量在常识范围内的话...世一目光飘向远方,含糊其辞地嘟囔着。

「ン~~いや、なんかちょっとチップとは違うかなっていうか……」
"嗯~~不对,感觉和 Chip 还是有点不一样……"

『どう違うの?』  哪里不一样?

がしかし、相手はやはりドイツ人時短民族  但对方毕竟是德国人。
本題に早く入れと言わんばかりに切り込まれて。誰に咎められてるワケでもないのに、世一はなんとなく気まずくなってしまう。
仿佛在催促他快点进入正题般直切主题。明明没被任何人责备,世一却莫名感到一阵尴尬。

「なんか、量が多くて」  "感觉数量有点多啊"
『どのくらい?』  有多少?
「……具体的に言うと、100ユーロ札が机の上に山なりに詰んである」
"……具体来说,100 欧元纸币在桌上堆成了小山"

『100ユーロが山なり!? 確かにそれはチップじゃないわね……』
100 欧元堆成山!?这确实不像是筹码呢……

そんでもって、やっぱりチップじゃなかった。  结果发现,果然不是小费啊。
そりゃそう。常識的に考えて、100ユーロの山をこんな不用心に置きっぱなしにするのは普通におかしい。
这还用说。按常理想想,把 100 欧元堆成这样随手乱放,怎么看都不正常吧。

というか、マジでこれ総額幾らなんだろう。なんか、本気で100万超えてたりしない……?
话说回来,这些钱加起来到底有多少?该不会真的超过一百万了吧……?

「これってどうしたらいいと思う? いつもバラバラに置かれてるから、端を揃えて置き直してるんだけど……」
"你觉得这些该怎么处理?平时总是散乱放着,所以我都会把边角对齐重新摆好……"

『ウーン。そうねぇ……──あの客、最近は大人しいみたいだけどクレーマーだし。きっとケチつける種を探してるんじゃないかしら』
『唔...这个嘛...——那位客人最近虽然看起来很老实,其实是个爱找茬的主。肯定在鸡蛋里挑骨头呢』

「エッ」  「诶?」

すると突然低いトーンで不穏なことを言い出したミラに、思わずギョッとしてしまう。
面对突然压低声音说出危险发言的米拉,我不由得心头一惊。

でも、けど、ケチつける種って。え、それつまり……どういうことだ?
但是,鸡蛋里挑骨头?等等,那也就是说...什么意思啊?

「……つまり?」  "……所以呢?"
『世一がお金を抜き取るのを待ってるのよ! それで世一が一枚でも抜き取ったら〝盗まれた!〟って言ってクレーム入れる気なんだわ! だからそんな枚数もわからない状態にしてるのよ。絶対そう! なんて陰湿なヤツなの。絶対に東ドイツ出身よ、ザクセンとか!』
世一在等我们抽钱呢!只要世一抽走哪怕一张,他就会大喊'被偷了!'然后投诉我们!所以才故意把钞票数量弄得不清不楚。绝对是这样!这人太阴险了。肯定是东德萨克森州来的!

取り敢えず、ミラの決めつけステレオタイプな思想は置いといて。  暂且不论米拉的武断推测。
じゃあこれは、所謂〝罠〟という事なんだろうか。例えばそう、懐に収めた瞬間にトラップカードが発動するタイプの……。
那么这就是所谓的"陷阱"吧。比如说那种,刚把钞票揣进口袋就会触发的陷阱卡类型......

──頭の中にぼんやり浮かぶ、某相棒劇画チックの方に。  ──脑海中朦胧浮现出某个搭档的身影。
いやいや今はそんな時じゃないと頭を振りつつ、小さい時観てたけどアニメ結構面白なったよな〜〜主に劇的展開なトコが、とか。やや現実逃避気味に思ったり。
不不现在不是想这个的时候,我边摇头边想,虽然小时候看过但动画确实变得很有趣了呢~~主要是那些戏剧性的展开之类的。思绪略带逃避现实的意味。

「……なるほど? じゃあやっぱり、綺麗に整えるだけでそれ以上は触らない方がいいやつだね」
"……原来如此?那果然还是只要整齐梳理就好,多余的部分最好不要碰的类型呢"

『綺麗にする必要なくない?』  『根本没必要弄漂亮吧?』
「それはほら、一応掃除しに来てるから……」  "那个嘛...毕竟名义上是来打扫的......"

あと、今までやってたことを突然止めたらいつもきっちり整えて帰ってたから、それはそれでクレームに繋がりそうだし。
而且,如果突然停止之前一直在做的事,搞不好反而会引发投诉。

うん。触らぬ神になんとやらな感じで一回書き置き残して接触しちゃったけど、これ以上は深追いせずにそっとしとこう。
嗯。俗话说"不碰神像不遭殃",还是别深究了,就这样放着吧。

心の中の相棒も〝イカれ野郎は放っといて俺と決闘デゥエルしようぜ!〟って言ってるし。デッキないしデュエルはしないかな。
内心的搭档也在喊着"别管那个疯子了!来和我决斗吧!",不过我没带卡组所以还是别打牌了。

「でもありがとうミラ、安心した」  "不过还是谢谢你啦米拉,我放心多了"
『いいわよ。今度ご飯いきましょーね』  没关系呀。下次一起去吃饭吧~
「うん。じゃあね、ほんとありがと!」  "嗯!那再见啦,真的太感谢了!"

──ちなみにドイツサッカーは、一対一での対人戦デュエルが特に人気盛んなんだよな。
──顺便一提,德国足球特别流行一对一的对抗赛呢。

そもそも体格がいい人種というのもあって、肉弾戦での激しいボールの奪い合いは最早お家芸と化していて。
毕竟他们本就是体格强健的种族,那种激烈争夺球权的肉搏战早已成为看家本领。

だから選手も身体能力フィジカル重視のタイプが厚いというか。なんだろ、やっぱり食生活が違うのかも?
所以球员们也普遍更注重身体素质。该怎么说呢,或许终究是饮食习惯不同吧?

「……よし」  "……好"

目の前の山を見て、ふぅと息を吐く。  望着眼前的山丘,他轻轻呼出一口气。
こんもり積もった山は、けれど多分纏めたらそれ、、なり、、収まりが良くなる──筈なので。
堆积如山的文件,不过整理起来应该会整齐许多——本该如此才对。

これが終わったらご褒美に聖地巡礼しちゃおうクラブハウスを覗こう、なんて。
等忙完这阵子,就去圣地巡礼犒劳自己吧。

思いながら、世一はぐわしとユーロ札を掴んでいったのだ。
世一边这么想着,边哗啦抓起欧元钞票。


✦✦✦


──なんか、装飾品が増えたな。  ——总觉得,装饰品变多了呢。

そう思うのは、やっぱりあの、、クレーマーの家で。  会这么想,果然还是因为那个投诉狂魔的家里。
今までなかった所に、物凄く特徴的な花瓶──しかも、全部同じデザイン!──が置いてある現状と、その花瓶のあまりの独創的ハイセンスさに。
从未出现过的地方,突然摆着极具特色的花瓶——而且全都是同款设计!——面对这种现状,以及那些花瓶过于标新立异的造型。

世一はつい、ニマニマと口許を弛めてしまうのだ。  世一不禁咧开嘴角,暗自窃笑起来。

「……ふッ、玉蟲かよ」  "……呵,彩虹色吗"

この、奇抜すぎるデザインときたら。  这个设计也太标新立异了吧。
黒くぬらっとした花瓶の表面で主張する、ボコボコとした丸い──これは、硝子がらす
漆黑光滑的花瓶表面突兀地凸起着疙疙瘩瘩的圆球——这难道是玻璃?

なんにせよ、国民的アニメ映画に登場する赤かったり青かったりする目が沢山ついてるデカい蟲を彷彿とさせる、真っ黒な花瓶に。
总之这个纯黑花瓶,简直让人联想到国民级动画电影里那些长满红红蓝蓝眼睛的巨型昆虫。

なんかもう、センスが面白すぎて笑いが込み上げてきてしまう。だってマジで、異質すぎるって!
有趣到让人忍不住笑出声的品味。因为真的,太异类了!

「しかも、ふ、青い薔薇って……んふふッ」  "而且,蓝、蓝玫瑰什么的……噗嗤"

そう、突然どうにかなっちゃったのか。  没错,突然就变成这样了。
よく分からない位置に置かれた花瓶全てに、鮮やかな青い薔薇がこれでもかとぎゅうぎゅうに詰め込まれているのだ。
所有被随意摆放的花瓶里,都硬生生塞满了鲜艳的蓝玫瑰,简直要溢出来似的。

だからなんか、ここだけ現代美術感が凄いというか。異物感凄くてコラ画像みたい。
所以这里莫名充斥着强烈的现代艺术感。违和感强得像合成恶搞图一样。

「もう、んふッどういうセンス?」  "真是的,噗...这算什么品味啊?"

──気を取り直して、持ち込んだハタキでパタパタと表面を撫でていく。
──重新打起精神,用带来的掸子啪嗒啪嗒地轻拂表面。

置かれたばかりだから、多分埃は付いてないだろうけど。でもまぁ、一応やっとくかというカンジ。こういう光沢のある黒って、埃とか指紋目立つし。
因为是刚摆放好的,大概还没沾上灰尘吧。不过嘛,想着还是稍微打扫一下好了。这种带光泽的黑色,特别容易显灰尘和指纹呢。

「しかも危機感は終わったままだし……」  "而且危机感还一直没消退……"

最早見慣れてきてしまった、山なりの100ユーロ札。
最早已经看习惯了的、堆积如山的 100 欧元纸币。

なんなら今日は数枚床に落ちちゃってて。むしろこんなに集める方が難しくない? って思ったり。これ毎回せっせと銀行から卸したりしてるのかな。
甚至今天还有几张掉在了地上。反倒觉得收集这么多不是更难吗?每次都要辛辛苦苦从银行取出来吗?

というか今更だけど。毎回ちゃんと整えて帰ってるのに、なんでいつもこんなぐちゃぐちゃなんだろうか。
话说现在才意识到。明明每次都整理好才回去的,为什么总是弄得这么乱七八糟的呢。

紙を集めて綺麗に纏めるのって、意外と時間かかるんだけどな、なんて。思いながらも、世一は慣れた手つきで札束を纏めていくのだ。
整理纸张并收拾整齐,意外地还挺花时间的呢。虽然这么想着,世一还是用熟练的手法将钞票整理成捆。

「ふっふ~~んふふ!」  "哼哼~哼哼!"

──世一がこんなにもご機嫌なのには理由がある。  ——世一如此心情愉悦是有原因的。
明日は世一の憧れてやまない大好きなノア様が所属する、バスタード・ミュンヘンの公開練習日なのである。
明天就是他憧憬已久的诺亚大人所属的拜仁慕尼黑公开训练日。

そうして公開練習や練習・親善試合などに欠かさず駆けつける世一の存在は、徐々に地元のサポーターからも〝わざわざ日本からノア見たさに応援しにきた熱烈なファン〟と認知され始めており。
就这样,每次公开训练和友谊赛都必定到场的一世,渐渐被当地球迷们认知为"特意从日本赶来支持诺亚的狂热粉丝"。

最近だと「ここ見やすいよ」とか「こっちおいで!運が良かったら視線貰えるよ!」などと好意的な扱いをして貰えるようになったものだから、その分楽しさも跳ね上がりクラブハウスに行く日は前日からウッキウキになってしまうのだった。
最近甚至开始受到"这里视野最好哦"、"来这边坐!运气好的话还能和他对上眼神呢!"之类的友好对待,这让他的观赛乐趣倍增,每逢去俱乐部参观的日子,从前一天就开始兴奋得手舞足蹈。

もちろんファンショップショップでのお布施も欠かさない。  当然球迷商店的"供奉"也从不缺席。
そう〝私が買ったグッズの購入費用が巡り巡ってノアのサッカーの糧となる……!〟と別の楽しみを見い出いしてた世一は、そりゃもう全力で散財する様になっていた。
"我购买的周边商品最终都会转化为诺亚足球队的运营资金......!"抱着这种新发现的乐趣,一世简直开启了疯狂购物模式。

クラブハウスで行われる公開練習は、大抵朝の10時から開始される。
俱乐部举办的公开练习通常从早上 10 点开始。

だから場所取りの為にもいつも一時間前には着くようにしていて。
所以为了占个好位置,我总是提前一小时到达。

その為にも絶対に寝坊はできないから、今日はこの仕事が終わったら家でゆっくり明日の準備をする予定なのだ。
因此绝对不能睡过头,今天工作结束后打算回家好好准备明天的事。

「は〜〜~、楽しみ……♡」  「哈~~~,好期待……♡」

──明日は、どんなカッコイイ姿が見れるんだろうか。
──明天能看到他多么帅气的英姿呢。

手際よく札を纏めながら、世一はうっとりした顔で〝明日のノア様〟に想いを馳せていく。
世一娴熟地整理着卡片,脸上浮现出陶醉的神情,思绪早已飞向"明天的诺亚大人"。

特に公開練習の日は、練習後に選手との交流タイムを作ってくれたりするから。
尤其是公开训练日,练习结束后还会安排与选手互动的环节。

もしかしたら、運が良ければノア様にサインを貰えるかもしれない。
要是运气好的话,说不定还能拿到诺亚大人的签名呢。

それに、握手とかも出来ちゃったりして……!  而且,还能握手什么的……!

「……ふふ! 場所取り頑張っちゃうぞ〜〜!」  "……嘿嘿!我要努力占个好位置啦~~!"

正直子供みたいに飛び跳ねたいくらいのワクワクだけど。
说实话,兴奋得简直想像小孩子一样蹦蹦跳跳。

今はまだ仕事中なので。我慢我慢、とぎゅッと手のひらを握る。
不过现在还在工作中。要忍住忍住,我紧紧攥住手心。

でも、帽子キャップも応援ユニフォームもタオルマフラーも、しっかり準備済み。
但是,应援帽、应援队服和毛巾围巾全都准备妥当了。

だから後は、今日の仕事を片付けたら〝ご褒美〟を待つだけなので。
所以接下来只要完成今天的工作,就能等待"奖励"了。

「……ノア様、どんな練習するのかな」  "……诺亚大人今天会做什么样的练习呢"

静まり返った部屋の中で、そうぽつりと小さく呟いて。
在寂静无声的房间里,我轻声这样喃喃自语道。

勝手に弛んでいく頬を取り繕うこともしないまま。微笑んだ世一は、トントンッと纏めた束をそっと机の上に置いたのだ。
连掩饰脸颊自然松弛的笑意都懒得去做。微笑着的世一轻轻将整理好的文件束"咚咚"两声搁在桌上。


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──クラブハウスでの公開練習は、やっぱり別格に楽しい。
──俱乐部公开训练果然格外有趣。

フィールドを囲うフェンスは、恐らく世一たちサポーターが見やすいように多分120cmくらいの高さしかなく。
围住球场的栅栏大概只有 120 厘米高,想必是为了让世一他们这些支持者能看得更清楚些。

お陰で遮るものが何一つない──世一は9時頃に来て最前列をキープしている為更に──良好な視界に。
多亏如此毫无遮挡——因为世一 9 点就来了并占据了最前排——视野格外清晰。

一時間前から来てよかった……としみじみ思いながら、世一はノアの勇姿をスマホで連射したり動画を撮ったりしてうっとりと瞳を潤ませていた。
提前一小时来真是太好了……世一由衷感慨着,一边用手机连拍诺亚的英姿或是录制视频,一边陶醉得眼眶湿润。

「はぁ〜〜……♡」  "哈啊~~……♡"

──ノア、マジでかっこいい……♡  ——诺亚,真的太帅了……♡
もう、視線は完全にノアに釘付けである。いや勿論他の選手だって凄くイイと思うけど。でも肉眼で見れる距離にノアがいると、もうそこしか見れなくなっちゃうというか。
我的视线已经完全被诺亚吸引住了。当然其他选手也都很厉害啦。但当诺亚出现在肉眼可见的距离时,我的目光就再也无法移开了。

あ♡ ノア、マジでかっこいい……♡ ボール運び最高♡♡ さすが世界一♡♡ ──いや、世一とていつもはこん、、なん、、じゃないのだ。そういつもは。
啊♡ 诺亚真的太帅了……♡ 运球技术超棒♡♡ 不愧是世界第一♡♡ ——不对,就算是世界第一平时也不会这么夸张的。平时明明不是这样的。

だけどもう、なんと言えばいいのか。これはドイツに来て試合やら練習やらをいくつか見学していく内に自覚していった事なのだが──世一はノアを肉眼至近距離で捉えるとこう、脳がジュ、、ッッ、、となってしまうっぽいのである。
但该怎么说呢。这是在德国观摩了几场比赛和训练后逐渐意识到的事——当用肉眼捕捉到世界第一的诺亚时,大脑就会"滋——"地短路。

もっと具体的に言うと、頭がバカになってノアのコトしか追いかけられない状態になるのだ。
更具体地说,就是会变得头脑发昏,只能追着诺亚的身影跑。

著しく脳機能が低下して、本当にノアだけで頭がいっぱいになっちゃうというか。
大脑功能明显下降,满脑子真的只剩下诺亚了。

ノアを視る直前まではピッチにいる一人一人の選手の名前も全部分かってたはずなのに、ノアを視た瞬間ノア以外の全てがただの〝脇役B名無し〟になってしまうというか……。
明明在看诺亚之前,应该还能清楚记得场上每个球员的名字,可一旦看到诺亚,其他所有人瞬间都变成了"路人 B"……

これは多分、憧れを拗らせすぎた弊害で。  这大概就是过度沉迷憧憬带来的副作用吧。
あと恐らくは、世一が途中で夢を切り替えたのも原因の一端である気がして。
另外我总觉得,世一中途改变梦想也是部分原因所在。

まぁ、だからつまり。今日のノアもかっこいい♡  啊,所以就是说。今天的诺亚也好帅♡

「はぁあ~~♡ こっち見てくんないかな、ノア……ん?」
"哈啊~~♡ 能不能看看这边呢,诺亚……嗯?"

──なんて思っていた瞬間。  ──正这么想着的瞬间。
ふいに、なにやら空気が突然ざわ、、と揺れたのを感じて。
突然,感觉周围的空气莫名地颤动了一下。

釣られるように視線を向ければ──え? なんかやけに顔面がキラキラしている選手が、何故か覇王のようなオーラを纏いながらズンズンとこっち来てる……。
视线不由自主地被吸引过去——咦?有个面部莫名闪闪发光的男人,不知为何散发着霸王般的气场,正大步流星地朝这边走来……


いや───公開練習なんだからちゃんと練習しろよ。  喂——这可是公开练习啊,给我好好训练啊。

サポーター自分のファンも観てるのに。なにやってんだあの男あの選手の名前なんだっけ
粉丝们都看着呢。那家伙在搞什么啊。

ノアを見習ってちゃんと──待って! えっ♡ うそ今のシュートかっこよ!! うわー! うわわ~~~!! ちゃんと最初から全部観たかった! うそ悔しい!! でもカッコイイ……♡ ──練習しろよな。あ♡ また撃つ♡
学学诺亚认真——等等!♡ 天啊刚才那个射门太帅了!!哇啊!哇啊啊~~~!!好想从头完整看一遍啊!可恶好后悔!!但是真的好帅……♡ ——给我好好训练啊。啊♡ 又射门了♡

「〜〜~ッッかっこいい……♡」  「~~~太帅了……♡」

はぁ♡ と恍惚の息を吐きながら世一がうっとりしていれば。
世一正陶醉地发出恍惚的叹息时。

今度は世一が居る場所から少し離れた所──特に指定位置などはない筈だけど、不思議なことに同じ選手を推すサポーター同士で何故かいつも固まったりするのだ──から、感極まったような黄色い悲鳴が次々と上がり出したのである。
突然从离世一稍远的位置——本不该有固定站位,但奇妙的是支持同一位选手的粉丝们总会不自觉地聚在一起——接连爆发出激动的黄色尖叫声。

「ミヒャエル!ミヒャエルがこっちに来てるわ!」  "米歇尔!米歇尔往这边来了!"

───そっか、あの人ミヒャエル・カイザーだ。  ───原来如此,那个人是米歇尔·凯撒啊。
ノアを浴びてとろとろに蕩けていた思考ピースが、カチリとハマる感覚。
沐浴在诺亚光芒中逐渐融化的思绪,突然咔嗒一声严丝合缝地归位。

そう確か──あの糸師冴日本の至宝も選出された新世代世界11傑世界で最も活躍している若手選手にFWでリスト入りした、バスタード・ミュンヘンの〝次代の英雄ノエル・ノアの後釜候補〟って言われてる選手だったはず。
没错记得──那个糸师冴也入选了新世代世界十一杰,作为前锋上榜的,应该就是被称为拜塔·慕尼黑"下一代英雄"的选手。

えっと、なんだっけ。脚の振り抜きの速度はノアよりも速いとか。なんちゃらなんちゃらっていう、なんか凄いシュート技があるとか。曲がったりもするとか。
呃,还有什么来着。说他摆腿射门的速度比诺亚还快。还有什么来着,好像掌握着某种超厉害的射门技巧。还能踢出弧线球之类的。

ウ〜〜ン。だめだ他にもなんかあった気がするけど頭が動かないノアでいっぱいだ
呜~~嗯。不行啊,总觉得还有其他什么事但脑子转不动了。

──でもまあ、別にいっか。  ——不过嘛,算了也无所谓。
そう、名前を思い出しただけでもう及第点だろ、と世一は思い直して。
世一转念一想,光是能想起名字就已经及格了吧。

さぁて今のノア様はと視線を向け直し──ひえあシュート練習してる! え〜〜最高! 格好いい! 天才! ──本当に今日ドイツ来て良かったと、もう何度目かも分からないことを思いながら一人胸をときめ「オイ、女」かせていれ「オイ、お前だお前! そこの貧相な身体の日本人!」ば─────ア゙ぁ゙ん゙?
那么现在诺亚大人正在——哇啊在练习射门!诶~~太棒了!帅呆了!天才!——真心觉得今天来对了,数不清第几次这样想着独自心跳加速"喂,女人"起来"喂,说你呢你!那边瘦巴巴的日本人!"时————啊゙啊゙?

世一は右を見て、左を見た。  世一看了看右边,又看了看左边。
しかし、日本人らしき女性はいない。  但并没有看起来像日本人的女性。

一人アジア系っぽい人はいたけど。  虽然有个貌似亚裔的人。
しかしその人は恐ろしくグラマーだったので、残念なことに〝貧相〟には該当しない。
可惜那人身材火辣得惊人,实在不符合"寒酸"这个标准。

というかこの人に対して貧相とか言ったらお前の目は腐ってんのか状態である。
倒不如说要是敢说这人寒酸,你的眼睛怕是瞎了吧。

「……、…………」  "……,…………"

なので仕方なく、マ~~~ジで仕方なく。  所以实在没办法,真~的~是~万~般~无~奈~啊。
世一は声が飛んできた方に、苛立ちを隠すことなく顔を向てやる。
洁世一连掩饰烦躁都懒得做,直接扭头瞪向声音传来的方向。

するとそこには先程接近してきた金髪碧眼のやたらに顔が良い男──とは言っても世一のタイプはノア様なのでマジでアウトオブ眼中なのだが──が世一を睨みつけていて。
只见那里站着个金发碧眼、长相异常俊美的男人——不过世一喜欢的类型是诺亚大人,所以这人根本入不了他的眼——正恶狠狠地瞪着世一。

いや、は? なんでこんな知らん男に睨まれなきゃならないの? と驚き半分、なんだコイツ自分が選手だからって舐めてんのか? あ? と喧嘩腰半分で世一も舌打ち直前の険しい顔をしてきれば。
哈?不是,为啥要被这种素不相识的男人瞪啊?世一半是错愕半是火大,这家伙该不会仗着自己是选手就瞧不起人吧?啊?他当即摆出剑拔弩张的架势,咂舌前的凶恶表情已然就位。

唐突に、男はこんな言葉を投げつけてきたのである。  突然,男人甩来这么一句话。


「お前──この練習が終わっても帰るなよ。ぜッッッたいにそこに居ろ」
"你——练完也别想走。给老子在那儿待好了"


──なにこの男。  ──这男人怎么回事。
この、初対面の相手に対しての、上から目線の物言い。腹立たしい通り越して今、嫌悪感がすごい。
这种对初次见面对象居高临下的说话方式。已经不止是让人火大,现在简直厌恶到极点。

端的に言うと、アイツ嫌いかも。  简单来说,我可能很讨厌那家伙。

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