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救いはこの空に/鴇田的小说

救いはこの空に  救赎就在这片天空

26,760字53分钟

お互いを大事に思っているできてないモスファイが逃れられない諸事情で初えっちするまで。全てが強めの幻覚で火種も半神化も良いように捏造しています。
!Ver.3.2『安/眠/の/地/の/花/海/を/歩/い/て』時点で書いています。3.2終了までのネタバレがありますのでご注意ください!

2ページ目より性描写がありますので18歳未満の方の閲覧はお控えください。受け攻めともに♡喘ぎ濁点喘ぎ等があります。
1ページ目は指フェラまで。

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お互いに相手のことを生き様も含めて美しいと思っている2人が癖です。亡国の王子と世界の救世主のカップリング、壮大だなぁ

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 『紛争』の半神となった身で暗黒の潮の化身と戦い続ける。ステュクスの河を渡らず甘美な誘惑にも引き摺られることなく。いまやモーディスの日常となったとある日のことだった。黒と橙に塗れた敵の外装を拳で屠ったその刹那、ちりりと身を焦がす熱さを感じたのは。
身为『纷争』半神之躯持续与暗潮化身战斗。既不渡冥河之水,亦不为甘美诱惑所动。这本已成为万敌的日常。当用拳头撕裂黑橙相间的敌甲刹那,却感受到一阵灼烧身体的炽热。


「ごめんなさいモーディスさん。いろんな文献を片っ端から探してみたんですけど、有効なものは見つけられませんでした」
"“对不起万敌先生。我翻遍了各种文献资料,但没找到有效线索”"

「そうか……忙しいところ感謝する」  "“这样啊……百忙之中多谢了”"
「変ですねぇ。今までそんな症状を訴えてきた方はいらっしゃらないし、物理的な傷も全く見当たりません」
"「真是奇怪呢。至今为止从没有患者反映过这种症状,而且完全找不到任何物理性伤痕」"

「……だが、このわずかに焼けるような痛みは日ごとに増してきている」
"「……但这股微弱的灼烧感每天都在加剧」"

 思わず胸元を押さえれば心配を色濃く宿したヒアンシーの瞳が物憂げに曇る。「とりあえずはこれを。人体の炎症を抑えてくれるお薬です。それでも、患部が分からないのであまり意味は無いかもしれませんが……とにかく、私も全力で治療法を探してみますから」「頼む」と約束を交わして彼女の元を去る。処方された薬は彼女の腕をもってしても気休め程度でしかないと、どちらも分かっていた。
下意识按住胸口时,风堇盛满忧虑的眼眸蒙上阴翳。「先用这个吧。是能抑制人体炎症的药。不过...既然找不到患处,可能没什么效果......总之我也会全力寻找治疗方法的」「拜托了」交换约定后离开她身边。双方都心知肚明,即便是她亲手调配的药也不过是杯水车薪。

「……モーディス」  "「……万敌」"
「アグライアか。クレムノスへの兵士の派遣、助かった」
"「阿格莱雅吗。向克莱姆诺斯派遣士兵的事,多亏了你」"

「ええ、構いません。貴方の身に起きていることについて、少し」
"「嗯,没关系。关于发生在你身上的事,我想稍微」"

 オクヘイマの女主人へ連れられパルネア上層部へと向かう。「……懐かしいな」と声が漏れた。青と金で彩られたこの上層ピュエロスで何度作戦会議をしただろうか。ぐるりと辺りを見渡せば「ふふ」とわずかに笑う声が聞こえた。怪訝な顔を向ける。
被奥赫玛的女主人带领着前往帕尔尼亚上层。「……真令人怀念呢」漏出一声轻叹。在这蓝金交织的上层皮埃洛斯不知开过多少次作战会议。环顾四周时,听见「呵呵」的细微笑声。投去疑惑的目光。

「どうした?」  "「怎么了?」"
「いいえなんでも。……拗ねていましたよ。貴方から直接ここへ来ると連絡を貰えなかったと」
"「没什么。……只是在闹别扭呢。说没能直接收到你要来这里的通知」"

「……別にヤツを探していた訳ではない」  "「……我并不是特意来找那家伙的」"
「そうですか」  "「这样啊」"
 アグライアは軽く頷いた。その発言が冗談か本音かを測りかねるのはいつものことだ。
阿格莱雅轻轻点头。分辨她的话是玩笑还是真心,向来不是件容易事。

「モーディス。貴方のその症状はおそらく半神化によるものでしょう」
"「万敌。你的症状很可能是半神化导致的」"

「まあ、十中八九そうだろうな。ヒアンシーともそう話していた」
"「嗯,十有八九是这样。我也和风堇这么说过」"

 今までとの明確な違いといえばニカドリーとの紛争の試練に打ち勝ち自らが半神となる覚悟を決めたぐらいだ。その原因が直接今の状態を齎していると考えることは自明の理に思える。
与过去最明显的区别,无非是在与尼卡多利的纷争试炼中获胜,并下定决心让自己成为半神。认为这直接导致了现在的状态,似乎是理所当然的。

「紛争のタイタンの齎す何らかの不和が、半神となった貴方へ流れ込んできているのだと仮定すれば……その不和を取り除けば良いのです」
"「假设纷争泰坦带来的某种不和谐,正流向已成为半神的您体内……那么只要消除这份不和谐即可」"

「ふん。俺の腹を割きでもするか。喜んで実験台になるが」
"「哼。要剖开我的肚子吗?我很乐意当实验品」"

「いいえ。例え貴方の臓物をいくら抜き出したところで結果が変わるとは思えません。不死の体とはいえ、そう不用意にステュクスの河を何度もさかのぼらせるわけにも行かないでしょう。苦しみは、できるだけ少ない方が良い」
"「不。即便取出你再多内脏,结果也不会改变吧。虽是不死之身,但也不该随意多次逆渡斯提克斯冥河。痛苦还是尽可能少些为好」"

 あまりにも含みがあった。不遜に鼻を鳴らしアグライアを睨む。
 话中带刺太过明显。傲慢地哼了一声瞪向阿格莱雅。

「っは、何が言いたい」  "「哈,你想说什么」"
 眉間に深く刻まれた皺と地を這うような声。鬣を逆立てる獅子にも金織はまるで動じない。彼女はむしろ考えるように一度目を伏せ、そうしてその美しい瞳へゆっくりとモーディスを映した。
眉间深深刻着皱纹与近乎贴地的嗓音。即使面对鬃毛倒竖的雄狮,金织也纹丝不动。她反而若有所思地先垂下眼帘,而后缓缓抬起那双美眸,将万敌的身影映入其中。

「……とはいえ、一般人にその処置を任せることはできません。通常であれば火種を迎え入れることにすら心身の代償が伴うのですから。代償なしに火種を自らの肉体へ宿すことができた者は、私が観測しうる限りこの長いオンパロスの歴史でも二人だけ」
"「……但即便如此,也不能将处置权交给普通人。通常情况下,光是接纳火种就会让身心付出代价。而无需代价就能将火种寄宿于自身的人,据我观测,在这漫长的万帕洛斯历史中也仅有两位」"

 白く美しい指が二本持ち上がる。  两根白皙美丽的手指缓缓抬起。
「貴方が取り得る選択肢はふたつ。ひとつはあの天外からの開拓者、そしてもうひとつは」
"「你面前有两条路可选。其一是追随那位天外来客般的开拓者,而另一条则是——」"

「……だから呼ばなかったのか」  "「……所以我才没有呼唤你」"
「知ってはいましたが、このケースにおいても貴方の意志は固いようですね。幸いにも猶予はあります。任せているクレムノスの最前防衛ラインが打ち破られるか、もしくはその瞳の輝きが失われないまで……ですが」
"「我早已知晓,但即便在这种情况下,你的意志依然坚定。所幸还有缓冲时间。直到克莱姆诺斯的最前线防御被攻破,或是那双瞳中的光芒尚未熄灭之前……不过」"


 アグライアの言葉がこびりついている。耳に、脳に。いっそのことザグレウスの手でも借りてクレムノスに戻り、戦いの最中一度脳漿諸々をぶちまけてからもういちど蘇ってしまいたいと思うくらいには。
阿格莱雅的话语黏着不去。在耳畔,在脑海。甚至让我想干脆借扎格列欧斯之手回到克勒姆诺斯,在战斗中途把脑浆什么的统统泼洒出来再重新复活一次。

「おっ、モーディス! いまはこっちにいるのか」  "「哦,万敌!你现在在这边啊」"
「……開拓者か」  "「……开拓者么」"
 出会いたくないと思うときに限って出会いたくないヤツと出会ってしまうのは、人の身であっても半神であってもそう変わらないらしい。灰色の髪をした開拓者に「丹恒はどうした」と黒髪の相棒のことを尋ねれば「今は市場に行ってる。どうしても買いたいものがあるんだって」との返答が返ってきた。
无论是凡人之躯还是半神之体,似乎都逃不过这个定律——越不想遇见谁,就越会撞见最不愿见的人。当我向灰发的开拓者询问「丹恒去哪了」,得到的回答是:「他现在去集市了,说有非买不可的东西。」

「こだわりが強いんだよな~まあその分目も確かなんだけど」
"「那家伙可挑剔了~不过眼光也确实毒辣」"

「……そうか」  “……这样啊”
 へらへらと笑う姿はどうにも憎めない。その言葉に彼の相棒への親愛が乗っているのだから尚更だ。
那副嬉皮笑脸的模样实在让人恨不起来。尤其是话语里还满溢着对他搭档的疼爱。

「あれ? もしかして具合悪い? あーでもそりゃそうか。なんか食べてく? 奢っちゃうよ」
"“咦?该不会是身体不舒服吧?啊不过也是呢。要不要吃点东西?我请客哦。”"

 ヒアンシーと同じく心配を浮かべた黄玉の瞳がモーディスを窺う。空の色とは似ても似つかない色、明らかに低い身長。アグライアの立てた指のひとつ。こちらの方がよほど健全だ。心臓か、頭か魂か、自分の中の何かがそう叫んでいる。もうひとつよりも、こいつの方がよほど。
与风堇同样浮现担忧神色的黄玉眼眸窥探着万敌。与天空颜色截然不同的瞳色,明显矮小的身材。阿格莱雅竖起的手指之一。这个显然健全得多。心脏也好,头脑也好,灵魂也好,体内有什么在如此呐喊。比起另一个,这家伙显然——

「モーディス? 大丈夫か」  "「万敌? 你没事吧」"
「ああ、心配ない」  "「啊,不用担心」"
「本当か? あっ、ルトロで休んでく?」  "「真的吗? 啊,要在ルトロ休息一下吗?」"
 放っておいても勝手に転がり出す状況まで、てんで都合が良い。加えておそらくこのぶんだと、アグライアからモーディスの件については伝えられていないのだろう。もし伝えられていたのなら、この開拓者ならば開口一番にそのことについて話すだろうし、いくら骨董品があるとしてもあの男が側を離れている訳がない。
情况好到即使放着不管也会自行发展。此外,照这架势来看,阿格莱雅恐怕还没把万敌的事告诉他吧。要是已经说了,这位开拓者肯定一开口就会提起那件事,而且就算有古董在,那男人也不可能离开他身边。

何かに後押しされるように自分らしくもない弱り切った思考が顔を出す。
仿佛被什么推动着,连自己都不像的、彻底软弱的想法浮现在脑海中。

「開拓者……じつは」  "「开拓者……其实」"
「モーディス! 相棒!」  “万敌! 搭档!”
「ファイノン」  "「白厄」"
 駆けてくる足音に、開拓者の嬉しそうな声に、これ以上ないぐらい絶望した。振り返りたくないとすら思うのに、ぐっと背後から肩を抱かれて視線を合わせるに他なかった。空の色をそのまま映した瞳、同じくらいの身長に、開拓者よりも逞しい身体。そしてアグライアの立てた指の。
 听到奔来的脚步声,开拓者欢快的声音,我陷入了前所未有的绝望。甚至不想回头,却被从背后紧紧搂住肩膀,不得不与之四目相对。那双映照着天空颜色的眼眸,与我相仿的身高,比开拓者更健壮的身躯。以及阿格莱雅竖起的手指。

「……どうした」  "「……怎么了」"
 はりついた喉をどうにか動かして唾を飲みこむ。名前はどうしても呼べなかった。
 我艰难地动了动发紧的喉咙咽下唾沫。无论如何都叫不出那个名字。

「君と相棒こそどうしたんだい。こんな往来で」  "「你和搭档这是怎么了。在这种大街上」"
「ご飯でも食べるかって話してた。な、モーディス」  "「正商量着要不要去吃饭呢。对吧,万敌」"
「ああ」  "「啊」"
「まあでも、ファイノンが来たんならもうお役御免だな」
"「不过既然白厄来了,咱们也该功成身退了吧」"

「え、どうして?」  "「诶,为什么?」"
「積もる話もあるだろ」  "「积攒的话也有不少吧」"
 えへんと胸を張る開拓者に教えてやりたい。今はそんな話など無いのだと。むしろこのまま共に行動してくれないかと思っていたのに、やけに軽快なトークを交わす開拓者とファイノンのせいで、自然とファイノンとの二人きりが確定してしまった。おまけに「お。丹恒から連絡きた。買い過ぎたらしいから手伝ってくるわ。じゃあ」と手を振られれば引き留めることなどできやしない。
 真想告诉那个挺起胸膛得意洋洋的开拓者,现在根本没什么好谈的。明明更希望他能就这样继续同行,可由于开拓者和白厄异常轻快的对话节奏,不知不觉就变成了必须和白厄独处的局面。更过分的是,他还挥着手说「哦。丹恒来消息了。好像买太多需要帮忙。那我先走啦」,根本拦都拦不住。

 小さくなっていく開拓者の姿を共に見守った男は、モーディスへいつものように微笑んだ。
一同注视着逐渐远去的开拓者身影,男人如常对万敌露出了微笑。

「久しぶり。相棒の言う通り、積もる話でもしに高温ピュエロスへ……って雰囲気でもなさそうだ」
"「好久不见。正如搭档所说,本想借着叙旧的名义去高温皮耶罗斯……但看起来气氛不太对劲」"


 おかしい。数刻前は放っておいても自分の都合の良い方向に進む状況に笑うどころか乗ってしまおうかとすら考えていたのに、なぜ俺は俺のルトロにファイノンを引き連れて帰ってきているんだ。考え得る限り一番まずい。
 不对劲。几刻钟前还觉得放着不管事态就会朝有利方向发展,甚至考虑过顺水推舟,为什么现在我会带着白厄回到自己的ルトロ。这简直是能想到的最糟状况。

 そんな状況を気にも留めず、ファイノンは途中の露店で買ってきた布を手近にあった椅子へと掛けた。アグライアの織布ほどではないが黒地に金糸で緻密な紋様が彩られている、なかなかに高級そうな布だ。
 白厄对这般状况毫不在意,将途中从露天摊位买来的布料随手搭在近处的椅子上。虽不及阿格莱雅的织品,但黑底金线交织的精密纹样,显然是相当高级的布料。

「災難だったね」  "「真是场灾难啊」"
「おまえ」  "「你这家伙」"
 開口一番でこちらの事情がアグライアを通して透けているのだと確定してしまう。オクヘイマ、強いてはオンパロスを守護する者として天外からの開拓者には伝えずとも、黄金裔であるファイノンにまで伝えない可能性は限りなく低いだろうと考えてはいたが、できれば自分がクレムノスへ帰ってからにしてほしかった。
 开口第一句话就确定我的处境已通过阿格莱雅暴露无遗。作为守护奥赫玛——更准确说是守护昂帕罗斯的存在,虽然我早料到天外开拓者或许不知情,但连身为黄金裔的白厄都没被告知的可能性微乎其微。只是私心希望至少等我回到克雷姆诺斯后再发生这种事。

「それでのこのこついて来たのか」  "「你就这么跟过来了啊」"
「まあね」  "「算是吧」"
「俺には、お前の考えていることが分からん」  "「我搞不懂你在想什么」"
「なんで? 簡単なことだろう……モーディスこっち」
“为什么?这不是很简单吗……万敌过来”

 ファイノンに手招かれる。さすがに寝台であれば近づくつもりなど一切なかったが、彼は手水場の側に立っているだけだったので呼ばれるがままに近づく。水流で手を清められ、柔らかな布で拭かれて「お前は俺の教育係か」とでも言うつもりだった。買ってきたばかりの黒布を頭に被ったファイノンが、清めたばかりのモーディスの指をふたつ、口に含むまでは。
 被白厄招手唤去。若是在床榻边自然毫无靠近的打算,但他只是站在洗手池旁,便顺从呼唤走了过去。水流洗净双手,柔软的布巾擦拭时,正想说「你是来教导我的吗」。直到刚买来的黑布蒙住头的白厄,将洗净的万敌两根手指含入口中。

「おいっ」  "「喂」"
「ふぁに?」  "「白厄?」"
「離せ……っ、く、口を」  "「放开……呜、嘴、嘴巴」"
「やだ」  "「不要」"
 唇をすぼめた拍子にちゅっと音が鳴る。モーディスの手首を握るファイノンの力は強く、なにより無理矢理振りほどけば口腔内を傷つけてしまいそうでそんなことなどできやしない。モーディスの戸惑いや拒否にも律儀に返事をよこしてくる度にファイノンの舌が、口の中の柔らかな粘膜が指先に当たって肌が粟立つ。
 抿唇时发出啾的一声轻响。白厄握住万敌手腕的力道极重,更何况若强行挣脱恐怕会划伤口腔黏膜,根本做不到。每当万敌的困惑与抗拒都被白厄一板一眼地回应时,那舌尖就会蹭过口腔内柔软的黏膜触到指尖,激起阵阵战栗。

「おい救世主、よせ……ッく、」  "「喂救世主,别这样……呜、」"
 窘めるようにちゅうと吸われて思わず声が漏れた。根からの負けん気が作用しておイタを繰り返す舌を人差し指と中指で捉える。挟んで前に引き出せばファイノンが身じろいだ。黒布のせいで顔は見えないが露骨な戸惑いにやや満足した心のままに、指の先で舌先を弄ぶ。
 像是要制止般被轻轻吮吸,不由得漏出声音。天生的好胜心作祟,我用食指和中指捉住那反复舔舐的舌尖。夹住往前一拉,白厄便扭动身体。虽然黑布遮脸看不见表情,但那份明显的慌乱让我心里稍感满足,继续用指尖玩弄他的舌端。

「……っ、……ぅ……ッん」  "「……嗯、……呜……嗯」"
 くぐもった声が聞こえる。さわさわと奏でられているはずの水流の音はいつの間にかモーディスの頭の中からかき消えてしまった。ただ、嬲れば嬲るほど抑えきれずに聞こえてくるあやかな声にひたすら満たされる。段々と厚く、熱くなってくる舌の根元にまで指を這わせて優しく撫でてやる。
听到一阵含糊不清的声音。原本应该潺潺流淌的水声不知何时已从万敌的脑海中消失。只剩下那越是玩弄就越发抑制不住、愈发清晰的声音充斥着他的感官。手指沿着逐渐变得厚重而炽热的舌根爬行,温柔地抚弄着。

「んぐっ」  「嗯咕」
 ごくんと唾液を飲みこむ音をさせながら引っ込もうとした舌を引き留める。そのまま前へ引き出すと健気についてくる男の口の中、黒い布に隠された場所からつつと透明な唾液が伝って床まで落ちた。
 咕咚咽下唾液的声音响起,试图退缩的舌头被强行挽留。就这样向前牵引时,顺从跟随的男人口腔中,从黑布遮掩处缓缓流下透明涎液,一直滴落到地面。

「っはは」  "「哈、哈」"
 この上なく甘美だ。これだけのことをしても、ファイノンがモーディスの指を離すことはなく、むしろ熱心に舐めて吸ってを繰り返している。ぞくりと始めとは違う理由で体が震え、ようやくモーディスは指を引き抜いた。
 此刻甘美至极。即便做到这种程度,白厄仍紧咬着万敌的手指不放,反而更加热切地反复舔舐吮吸。与最初不同的战栗理由让身体陡然颤抖,万敌终于抽出了手指。

根元までてらてらと光っているファイノンの唾液塗れの指を眺めていると何だかとっても変な気分になってきてしまいそうだったのでそっと洗う。まだ布を被っているファイノンの頭へ触れ、その黒布ごと剥ぎ取ろうとすれば勢いよく頭を押さえられた。
望着白厄那根沾满唾液、连指根都湿漉漉发亮的手指,不知怎的整个人都开始变得不对劲起来,于是悄悄将它洗净。当我触碰仍蒙着黑布的白厄头颅,试图连布料一起揭下时,却被猛地按住了脑袋。

「まって! まだ、待って」  "「等等!还、再等一下」"
「……どうしてだ良いだろう。ことは済んだはずだが」
"「……为什么呢。明明事情应该已经结束了啊」"

「ちょっ……まだ駄目だって」  "「等……还不行啦」"
「……分かった」  "「……知道了」"
 了承を出したものの、一向に顔を出そうとしないファイノンにいい加減痺れを切らしたのはモーディスだった。
 虽然表示了同意,但面对迟迟不肯露面的白厄,最终失去耐心的是万敌。

「今から十秒数える間に俺に剥ぎ取られるか、十秒以内に自分から顔を出すか選べ」
"「从现在开始数十秒内是被我剥光,还是十秒内自己主动露脸,选一个吧」"

「ええ! 急すぎる」  "「诶!太突然了」"
「うるさい」  "「吵死了」"
 待ってやる義理などないので早速数えだす。優柔不断を発揮しているファイノンは五秒くらいまでああだのううだのと唸っていたが、とうとう八を超えたあたりでぴょこんと顔を出した。乱れている白髪を手櫛で直している男はいつも通りだ。
 没有义务等他所以我立刻开始数数。优柔寡断的白厄在五秒左右还在嗯嗯啊啊地犹豫不决,但最终超过八的时候突然探出了头。那个用手梳整理凌乱白发的男人一如既往。

「はい、これで満足? それで、どうだった? やっぱり効果あっただろう」
"“给,这下满意了吧?所以,怎么样?果然有效果对吧?”"

「ああ。助かった。お前の方も問題ないのか」  "“啊。得救了。你那边也没问题吧?”"
「うん! 問題は全くない。君と一緒にニカドリーと戦っただけのことはあるってことさ」
"嗯!完全没问题。和你一起对抗尼卡多利的经历果然很有价值。"

 ファイノンはいつも通りだ。呆気らかんと笑う顔も、得意気に上がる語尾も。体に異変はないと確かめて、ようやくモーディスは肩から力を抜いた。
 白厄还是老样子。那副呆愣愣笑着的表情也好,得意上扬的尾音也罢。确认过身体没有异状后,万敌终于卸下了肩头的力道。

「そうだな」  "「是啊」"
 本心からの言葉だった。嘘偽りなどなく。   这是发自真心的话语。没有丝毫虚假。
確かに、体に溜まっていた熱さはこのルトロに来る前よりも確実に治まりを見せている。けれどそれは、アグライアのあの仮説が、あの白く美しい指が差した通り、この白く気高い男が正しき解になってしまうという動かぬ証拠でもあった。胸に過ぎる一抹の不和に蓋をする。
确实,比起来到这座ルトロ之前,体内积攒的燥热确实有所消退。但这恰恰印证了阿格莱雅那个假设——正如她那白皙美丽的手指所指出的那样——这位洁白高贵的男子将成为无可辩驳的正确解答。我强行按捺下心头掠过的一丝违和感。


 熱い。熱い、気がする。そう思うことでしか誤魔化せない。
 好热。感觉,好热。唯有这样想着才能勉强蒙混过去。

 暗黒の潮の手下共はこれと決めた防衛ラインにまではほど遠く、蘇る度に訪れる川の水面や血で濡れる鎧を介して映る自分の目はいつも通りだ。憂いなど何もないのに、こびりついた美しい声に恐怖を覚えたかのように何度も確認してはまだ大丈夫だと言い聞かせている。何をそんなに強迫観念に駆られているのか分からないまま。
 暗黑潮汐的爪牙们离既定防线还相去甚远,每次复苏时倒映在河面与血染铠甲上的眼眸也一如既往。明明毫无忧郁,却像被那萦绕不去的美丽声音吓到似的反复确认,不断告诉自己还没问题。就这样不明就里地被强迫观念驱使着。

誤魔化すように頭を振れば汗が散る。永遠に変わることのない濃い宵闇から出でた影に何発めかの拳を打ち立てたところで視界がぐらりと揺れた。すぐに湧いてくる黒い拳が自らに襲い掛かる瞬間がやけにスローモーションに見えて、拳を握り込んだ瞬間。
像是要蒙混过关似地摇头甩落汗珠。即便向从永不改变的浓黑夜色中现身的黑影挥出不知第几记拳头,视野仍剧烈摇晃起来。紧接着涌出的黑色拳头朝自己袭来的瞬间,在异常缓慢的镜头中,我攥紧了拳头。

 眩い剣戟が暗黒の渦の手下共を切り裂く。何度も見てきた斬撃が二度三度と打ち込まれ木端微塵に散っていくその後方から彼を狙う影へ結晶を飛ばして貼りつけにすれば、モーディスの意を汲んで反転しながら手下を袈裟切にした。影の断末魔が消えていく。
耀眼的剑光劈开黑暗漩涡的爪牙。屡见不鲜的斩击接二连三落下,将敌人斩得粉碎。自那后方瞄准他的黑影,我射出结晶将其钉住,领会万敌之意旋身回斩,将喽啰斜劈两半。黑影的临终惨叫逐渐消散。

「助かったよ。でも今回は僕の方が君の窮地を助けるプリンスだっただろ?」
"「得救了。不过这次轮到我当解救你于危难的王子了吧?」"

「言ってろHKS」  "「给我说清楚 HKS」"
 返事に鋭さが無いのは自らの不利を悟っているからだが、どちらにせよこの男がいるのなら話は早い。戦闘の興奮と出逢った高揚感は心身ともに戦意を増強させ、自然と男の向かい合わせの位置に立とうとしたところでその腕を掴まれた。思わず顔を見れば爽やかな顔で何とも思っていないように謝られる。
回应缺乏锐气是因为意识到自身处于劣势,但无论如何有这个男人的存在事情就好办多了。战斗的兴奋与邂逅的昂扬感令身心战意倍增,正当他下意识要站到与男人对峙的位置时,手腕却被一把抓住。抬眼便撞见对方清爽的面容正若无其事地道歉。

「悪いね、今日はこっち」  "「抱歉啦,今天这边请」"
「は? っおい」  "「哈?喂」"
 ぐいぐいと引っ掴まれて奥へ連れ込まれる。この男がクレムノスに来たことは片手で数えるぐらいしかないというのに勝手知ったるなんとやらだ。
被粗暴地拽着拖进深处。这男人来克莱姆诺斯的次数明明屈指可数,却表现得像熟门熟路似的。

 戦士として自然と休まる場所を探す嗅覚にも優れているのか、少し奥まったこの場所は柱の崩壊も免れ、比較的マシともいえるモーディスのねぐらと言っても差し支えない場所だった。寝乱れた敷き布やら少し前に摘まんだ果物やらが、ここを離れた時のまま残っている。少しだけ居心地が悪かった。
或许战士天生具备寻找休憩之所的敏锐嗅觉,这个稍显隐蔽的角落不仅躲过了立柱坍塌,甚至可以说是万敌相对像样的巢穴。凌乱的铺盖和不久前啃过的果核,都保持着主人离开时的模样。让人莫名有些不适。

 けれどまあ、この男がここを休める場所だと判断したことは褒めてやらなくもない。
不过嘛,这个男人能判断出这里是可休憩之所,倒也值得称赞。

「勘が良いな。俺は戻る」  "「直觉不错。我回去了」"
「だめ」  "「不行」"
「……なに? 俺が何の為にここにいるか忘れるほどの頭ではないだろうお前は」
"“……什么?你的脑子还不至于差到忘记我为何会在这里吧。”"

「それでも、今日はだめ」  "“即便如此,今天也不行。”"
 青く澄んだ瞳の決意は揺るがない。この男がこんな目をしているときはなかなかに厄介なものだと知っている。
那双湛蓝清澈的眼眸中,决心毫不动摇。他深知当这个男人露出这种眼神时,事情会变得相当棘手。

「……埒が明かないな」  “……没完没了啊”
 被りを振る。こうして押し問答を続けている間にもあいつらがいつ湧いて出てくるか分かったものではないのだから。けれど次にその口から出た言葉は、モーディス自らの足首に楔を打つにふさわしい一言だった。
甩了甩兜帽。在这般争执不休的当口,谁也不知道那些家伙何时会突然冒出来。然而从她口中吐出的下一句话,却成了足以让万敌自缚双脚的致命发言。

「アグライアと、相棒に頼んである」  "「已经拜托阿格莱雅和搭档了」"
「来ているのか、ここに? オクヘイマを離れて」  "「他们正在赶来吗?离开奥赫玛到这里?」"
 それでは本末転倒だ。ファイノンは首を振った。  那可就本末倒置了。白厄摇了摇头。
「違うよ。兵の派遣を。アグライアのはだいぶ見慣れたけど、相棒が使ったアレは何だろう、どこかの星兵団を投影しているみたいなんだけどよくわからないんだ、とにかく天外の技術ってのはすごいよね」
"「不对啦。我说的是派兵的事。阿格莱雅的倒是看习惯了,但搭档用的那个究竟是什么啊,好像投影了某个星兵团的影像,完全搞不明白呢,总之天外技术真是厉害啊」"

 ゆっくりと見つめられて、再会してから感じていた高揚感が抜けていく。そのかわりに身の内に宿る熱が、自分の存在を忘れることなぞ許さないとばかりに威力を上げる。
被缓缓凝视着,重逢以来一直萦绕的亢奋感逐渐消退。取而代之的是体内升腾的热度,仿佛在宣告绝不允许我遗忘自身存在般愈发强烈。

 相も変わらずお綺麗な面が、モーディスの目の前でくしゃりと歪む。伸ばされた手が頬に触れて、頬骨のあたりをそっと撫でられたかと思えば「少し痩せた?」と小さな声が悔しそうに囁く。慈しみを優に湛えた指先がそっと顎を掬い、何か反応する前にちゅ、と音を立てて唇が触れた。
 那张依旧美丽的面容,在万敌眼前皱成一团。伸来的手触到脸颊,刚感觉指腹轻轻抚过颧骨位置,就听见带着懊恼的细语「是不是瘦了点?」。盈满怜爱的指尖温柔托起下巴,还未等对方反应,便听见「啾」的一声轻响,双唇相触。

「ねえモーディス。……君、どうして連絡くれなかったの」
"「我说万敌……你为什么不联系我?」"

 


 目を見開いたモーディスの前で、ファイノンはつらそうに目を伏せる。
 在瞪大眼睛的万敌面前,白厄痛苦地垂下眼帘。

「僕……ずっと待ってたのに。オクヘイマに雷鳴が轟くのを」
"「我……明明一直等待着。等待着奥赫玛雷鸣轰响的那一刻」"

 言葉だけをなぞれば、まるで離れ離れの熱烈な恋人同士のようだ。そんなものではないというのに。事実、ファイノンの言葉自体にも甘さは皆無だ。中身の無い入れ物、その形だけでも信じられなくて輪郭を呆然となぞる。
 单从字面来看,简直就像被迫分离的狂热恋人。可事实并非如此。实际上,白厄的话语里根本不存在任何甜蜜。空无一物的容器,连其外形都无法相信,只能茫然描摹着轮廓。

「待っていた、だと」  "「你说,一直在等」"
「そうだよ。……君だってあの時、体が楽になったんだろ? だったら君のやるべきことは、もういちどオクヘイマに赴くかこうして僕をここに呼び出すことだった。一人で長い間、ずっと耐えることじゃなくて」
"「没错。……那时候,你的身体不也轻松了许多吗?既然如此,你该做的不是独自一人长久忍耐,而是再次前往奥赫玛,或者像这样把我叫来这里。」"

 纏っている鎧がひとつずつ丁寧に脱がされていく。勢いよく腕を掴む。
身上披挂的铠甲被一件件仔细卸下。他猛地抓住我的手腕。

「やめろ」  "「住手」"
「やめない」  "「不会停的」"
 互いの腕に力がこもって筋肉が盛り上がる。同等の強さを宿した橙と蒼の瞳が交錯して絡む。先に折れたのはモーディスの方だった。
 双方手臂肌肉因发力而隆起。蕴藏同等力量的橙与苍之瞳相互纠缠。先败下阵来的是万敌。

「っ、だったら、この間のように指で」  "「呜、那就像上次那样用手指——」"
「何を今更。あれは一時的なものだって君も分かっているくせに。今、そんなにちんたらしてたら治るものも治らないだろう」
"「事到如今还说什么。你明明也知道那只是暂时的。现在这样磨磨蹭蹭的话,能治好的伤也好不了了」"

 意図して考えないようにしていたけれど限りなく真実に近いところを見抜かれて一瞬思考が停止しかける。今の自分の頭の回転の鈍さで、混乱に陥りかけた頭でなんとかもうひとつの選択肢を思い出せたことは奇跡に近い。すぐに口を開いた。
虽然刻意不去思考,但被看穿无限接近真相的瞬间,思维几乎停滞。以现在迟钝的头脑,能在陷入混乱前想起另一个选项简直是奇迹。我立刻开口。

「ではあの異邦人を……開拓者を呼べ。あいつの……」
"「那就叫那个异乡人……开拓者来吧。那家伙的……」"

 技術ならなんとか、と続けることはできなかった。ファイノンの手の平がものすごい早さで迫ってきて、口を塞がれる。
技术方面或许还能想办法,但话没能继续说下去。白厄的手掌以惊人的速度逼近,堵住了他的嘴。

「ごめん。いま……その名前、呼ばないで」  “抱歉。现在……别叫那个名字。”
「……」  "“……”"
「はは……僕だって、いろいろと振り絞ってここにいるんだよ」
"「哈哈……我也是拼尽全力才站在这里的啊」"

 立ち上がる為じゃない自嘲なんてお前には似合わない。いつからは分からないのにそう思っている。いつからは分からないのにずっとずっと。いずれはその運命に従うことになるとしても、もし可能であるならばケファレの赦す限り、オンパロスの続く限りは、できるだけ。「分かってたけどなかなかに辛いな」と呟いたファイノンの声からはいつもの威勢や朗らかさなど消えてしまっている。
不是为了站起来的自嘲根本不适合你。不知从何时起就这么觉得。不知从何时起就一直一直这么想。即便终将顺从那个命运,只要凯法勒还允许,只要昂帕洛斯还在延续,就尽可能——「虽然早就知道但还真是难受啊」白厄喃喃低语的声音里已不复往日的威风与爽朗。

「僕じゃ、だめなの」  "「我,就不行吗」"
 今まで決して譲らなかったファイノンの語気が、モーディスに凭れるように掠れる。きゅうと細くなった瞳、痛みを耐えるように強く握られたもう片方の手の平。
 向来寸步不让的白厄语气,此刻却像倚靠着万敌般飘忽。骤然收缩的瞳孔,另一只紧握成拳的手掌仿佛在忍耐痛楚。

お前だからだ、と言えもしない本音は吐息となってファイノンの手に遮られ、全て消えた。
那句「因为是妳」的真心话终究未能出口,化作叹息被白厄的手掌截断,消散于无形。

 相対する男の動揺をその嗅覚で嗅ぎ取ったのか、深く息を吐いて瞬きをひとつ。それだけでいつも通り、ファイノンは自らを取り戻す。その瞳に強い光を湛えたまま、世界の救世主は亡国の王子に囁いた。
 或许是嗅到了对面男人的动摇,她深深吐息,轻轻眨眼。仅此一瞬,白厄便恢复了常态。那双盛满锐光的眼眸凝视着亡国王子,世界的救世主低声呢喃。

「僕を使ってくれ」  "「请使用我吧」"
 ひゅっと鳴った喉は間違いなく、モーディス自身のものだった。
喉咙里发出的嘶鸣声,毫无疑问正是万敌自己的。


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