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ナツキ・スバルが周りの人を褒めちぎるだけの話 - 酢酸ヨウ素液の小説 - pixiv
ナツキ・スバルが周りの人を褒めちぎるだけの話 - 酢酸ヨウ素液の小説 - pixiv
14,154字
ナツキ・スバルが周りの人を褒めちぎるだけの話 这只是一个关于斯巴鲁夏树赞美周围人的故事
※web最新話(6章79話)までのネタバレを含みます。
*包含最新一集(第 6 章、第 79 集)的剧透。

※モブが出ます。 * 生物将出现。
タイトル通りです。みんなスバル君が大好き。 顾名思义。 每个人都喜欢斯巴鲁。
Re:ゼロから始める異世界生活リゼロナツキ・スバルスバル愛されリゼロ小説1000users入り
回复:零在另一个世界开始生活 Rezero Natsuki 斯巴鲁斯巴鲁深受 Rezero Novel 1000users 的喜爱
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2020年9月27日下午4点17分

 おっす、僕の名前はオブモ。  哦,我叫奥莫。
この度晴れて近衛騎士団に入ることができた新人騎士だぜ!
这一次,他是一个能够加入帝国近卫骑士团的菜鸟骑士!

まだ入ってたったの一週間! 我才来这里一个星期!
 憧れは「最優の騎士」のユリウス様と、「剣聖」ラインハルト様!
 我钦佩“最好的骑士”朱利叶斯大人和“剑圣”莱因哈特大人!

嫌いな奴は「英雄」ナツキ・スバル! 不喜欢的就是“英雄”夏树斯巴鲁!

 みんなに英雄って呼ばれてるからって僕はあいつを認めちゃいない!
 就因为大家都叫他英雄,我就认不出他来了!

なんでって?そりゃ、僕の憧れの人たちをたぶらかしてるって話だからだ!
为什么? 那是因为我和我钦佩的人一起出去玩!

エミリア様の騎士であるはずのナツキ・スバルは、メイドであるレムさんや大精霊であるベアトリス様、それ以外にもいろんな人たちをたぶらかしてるって噂だ!なのに、それに加えて憧れのあの二人まで!
据传,本应是艾米莉亚大人的骑士的夏树·斯巴鲁(Natsuki Subaru)与她的女仆雷姆先生/女士、伟大的精神比阿特丽斯·萨玛(Beatrice-sama)和许多其他人一起出去玩! - 但除此之外,我钦佩的那两个人!

ほんと、嫌な奴だ!英雄だからって、僕は容赦しねえぜ!
真的,他是个讨厌的家伙! 仅仅因为你是英雄并不意味着我会原谅你!



+++



「……ってわけなんだ。わかるだろ?」 「…… 这就是原因。 你知道吗?
「あー……なるほどなぁ」 “呃...... 我明白了。
「なんだよその気がぬけた返事は!お前もこの間ナツキ・スバルはダメな奴だって言ってたじゃないか!」
你前几天还说斯巴鲁夏树是个坏人!

 オブモが声をかけた相手は、この国では珍しい、黒目黒髪の少年だ。
 奥莫与之交谈的人是一个有着黑眼睛和黑头发的男孩,这在这个国家是罕见的。

どうやらエミリア様の陣営の下っ端らしい。らしい、というのは、この少年について深く聞いたわけじゃないからだ。
这似乎是艾米莉亚阵营的下端。 显然,因为我没有听说过这个男孩。

王城の一角の、陰鬱としたような、物置小屋。 皇家城堡一角的一个阴暗的储藏室。
そこが、この男と会って話をするようになった場所だ。
在那里,我遇到了这个人,并与他交谈。

近衛騎士団の下っ端、入って間もない僕は、休憩時間にここへ来ていた。
在帝国近卫骑士团的下端,我刚刚加入,我是在休息时来到这里的。

理由は簡単だ。騎士のみんなと、馴染めなかった。 原因很简单。 我不适合所有的骑士。

「話変わるけど。お前、女装が趣味なの?」 你喜欢变装吗?
「な、まだあの話を引っ張んのか!みんなにちょっとウケるかな、と思って歓迎会で見せただけって言ったろ!」
“嘿,你还在扯那个故事吗,我跟你说过,我只是在欢迎会上展示的,因为我觉得大家会有点好笑!”

 そう、原因はこれだ。  是的,这就是原因。
僕は、近衛騎士団の下っ端、つまり僕と同じ新人の歓迎会で、一発芸や見世物をやる中で、女装を披露した。
在帝国近卫骑士团低端的欢迎会上,也就是和我一样的新人,我一边做着一次性的把戏和眼镜,一边炫耀着我的变装。

披露したと言っても、ウケ狙いでの女装だ。だが、見事にスベって、僕の輝かしい騎士団デビューは失敗に終わった。いっそ笑い者にしてくれればよかったのに、騎士団の連中は僕を避けて、そして、僕も騎士団の奴らを避けた。スベッた理由はおそらくカマ口調で「一人も残らずアタシが食べちゃうわよ♡」と言ってしまったからだと思う。そんな中で、このあまり使われることのない、使われるとしても騎士団の下っ端連中だけしか寄り付かない物置小屋を見つけた。これ幸いと、僕はここで休憩時間を過ごしていたのだ。
就算你说你炫耀了,也是为了uke而变装。 然而,它滑落得很厉害,我在骑士团的光荣处女作以失败告终。 我希望他们能把我当成笑柄,但骑士团避开了我,我也避开了他们。 我想他语气滑溜溜的原因可能是因为他用笨拙的语气说:“我要把他们每一个都吃掉♡。 在这一切之中,我发现了这个不常使用的储藏室,只有骑士团的低级成员才能进入。 幸运的是,我在这里休息了一下。

 そんな僕に、馴れ馴れしく話しかけて来たのがこいつだ。
 这是用熟悉的方式与我交谈的那个人。

休憩時間が被っただけだからと言いつつ隣に腰を下ろし、「またどこか行くのも面倒だろ」と言って笑って居座ったのがこの男である。
就是这个人坐在我旁边说,“我不想再去任何地方了”,说这只是因为休息。

「お前こそ、なんで僕に声かけたんだよ。こう言っちゃなんだけど、僕、嫌な奴だぞ」
“你为什么跟我说话,我不想说这个,但我是。”

「はッ!それを俺に言えるのは俺を超えた嫌な奴だけですぅー!声かけたのだって、お前がたまたまここにいたからだし?俺も休憩したいの。でも一人だと寂しいの。わかる?」
唯一能对我这么说的人,就是一个超越我的混蛋! 我喊了一声,因为你碰巧在这里,对吧? 我也想休息一下。 但是当我独自一人时,我会感到孤独。 你明白吗?

「……お前は何しちゃったんだ?」 「…… 你做了什么?
「なんでそんな憐れむような視線向けられてんの俺!?何もしてねぇよ!ただちょっと……その、息苦しいっつうか」
“为什么我被这样盯着看?! 只是一点点...... 是不是窒息了?

 そう言ってふい、と顔をそらす。  说着,他突然移开了视线。
つまり、僕のように、みんなに避けられたり、もしくはこちらが避けたい状況というわけだ。
换句话说,像我一样,每个人都在回避它,或者我们想避免它。

なんとなく状況的に同じようなものを感じ、勝手に親近感が湧いてくる。
不知何故,我在这种情况下也有同样的感觉,我对它有一种熟悉感。

「まぁ、詳しくは聞かないけどさ。僕もその、似たようなものだし」
“好吧,我不会问你的,但我有点像那样。”

「あー……そうだお前、ユリウスとラインハルトが好きなんだよな」
“呃...... 是的,你喜欢朱利叶斯和莱因哈特。

「好きっていうか、憧れなんだよ。だからこそナツキ・スバルが許せないわけだが!」
“我喜欢它,我很欣赏它,这就是为什么我不能原谅斯巴鲁夏树!”

「……じゃあ俺が新人騎士のお前のためにラインハルトについて教えてやろう」
「…… 那我就替你讲讲莱因哈特的事,菜鸟骑士。

「本当か!?」 “真的吗!?”
「おう、マジで。えっと、ラインハルトは剣聖っていう肩書きに縛られてるとこあるけど、顔は良いし才色兼備っつーか、騎士の中の騎士って言われてる通り、嫌味なこと言ってもさらっと流しちまうし、すげぇ力持ってんのにそれで終わらずに努力する奴だ」
“呵呵,说真的,好吧,莱因哈特被剑圣的称号束缚住了,不过他面子不错,既有才华又有才华,正如他们所说,是骑士中的骑士,就算说了些讽刺的话,也会轻易脱落,他是一个实力雄厚却不止于此的家伙。”

「やっぱり凄い人だ……」 “他是一个很棒的人......

 僕が感嘆すると、黒髪は指を立てて続ける。  当我惊呼时,黑发举起一根手指继续说。

「でも、そんなラインハルトでも割と人見知りだったり、寂しがりやっつうか、愛に飢えてるとこあるんだよ。あと甘えたがりだし甘やかすと調子に乗るし放っておくと拗ねるしそれで構えばすげぇ嬉しそうにするし犬かよって思う。フェルトにやたら厳しいと思ったら、やっぱり他にも容赦ねぇ。見どころあるからって言ってトンチンカンがヒィヒィ言ってんの見たことある。限界を見極めてるから体力的には大丈夫なんだけどな」
“但即使是莱因哈特也相当害羞、孤独、渴望爱情,他想被宠坏,如果你宠坏了他,他会继续下去,如果你让他一个人呆着,他会不高兴,如果你让他一个人呆着,他会很开心,我认为他是一条狗。 如果你认为它对毛毡太苛刻,那就是对别人的不宽容。 我见过童振康打招呼,因为有东西要看。 我知道自己的局限性,所以我的身体很好。

「そんな一面が……」 “这是......方面。”

 全然知らない話に、僕は目を丸くする。  我对这个我完全不知道的故事翻了个白眼。
なんだか、聞いたことのある話と違って、人間味を感じさせる性格だと思った。
不知何故,与我听过的故事不同,我认为他有一种让我感到人性化的个性。

「フェルトの騎士として色々頑張ってるの知ってるし、それ以外でもみてないところで努力してるの知ってる。本人はそれを自慢しねぇけど、そういうとこも俺は凄いって思ってる。周りの奴らは、剣聖っていう肩書きと、剣の腕と、加護。それから、騎士として振舞ってるあいつの姿しか見てねぇんだと思う。あいつは子供みたいな奴だから、もっと他に頼ったり、甘えたりしてもいいと思うんだよな。いっぱい頼っちまってる俺が言えたことじゃないけどさ。でも、すごい奴だし、素直にかっこいいと思う。本人には恥ずかしいから言わねぇけどな」
“我知道你作为毛毡骑士在努力工作,我知道你正在以我从未见过的其他方式努力工作。 他不吹嘘,但我认为这很神奇。 我身边的家伙都有健生的称号,剑术,保护。 我想我只见过他扮演骑士的角色。 他就像个孩子,所以我认为他可以更多地依赖别人并宠坏他。 这不是我能说的,因为我问了很多。 但他是个好人,老实说,我觉得他很酷。 我不好意思告诉他,所以我不会告诉他。

 黒髪は照れたようにそういうと、休憩がそろそろ終わるということで立ち上がった。
 黑发羞涩的说道,站起身来,知道休息快要结束了。

「お前いつもこの時間にここに来るんだろ?その、お前が良ければ、また話を聞かせて欲しい」
“你总是在这个时候来这里,不是吗?

 僕は出て行こうとする黒髪の背中にそういうと、黒髪はキョトンとした顔をした後、すぐに破顔した。
 我对着即将离开的黑发说了这句话,黑发吱吱作响,然后迅速破了脸。

「俺の話でよけりゃ、また聞かせてやるよ」 “如果你不介意谈论我,我会再告诉你的。”

 そう言って出て言った黒髪を見て、友達ってこんな感じなのかなという想いを抱いた。
 当我看到从房间里冒出来的黑发时,我想知道我的朋友是不是这样。

今日は憧れの人の話が聞けて良かった。 我很高兴我今天能够听到我钦佩的人的故事。
明日は誰の話を聞けるだろうか。 明天我能听谁的歌?



+++



「今日はユリウス様の話を聞かせてくれ!」 “今天跟我说说朱利叶斯大人吧!”

 次の日、なんとなくげんなりとした黒髪がまた同じ時間にやってきた。
 第二天,莫名其妙的黑发又来了。

「なんか昨日より元気なくないか?」 “你不是比昨天更有活力吗?”
「赤い毛髪の犬がな……ちょっとなんかわけわからんぐらいテンション高くてな……相手してたら疲れた」
“红毛狗...... 我太兴奋了,我不知道为什么...... 我厌倦了和他们比赛。

「そうか。体力はつけるべきだと思うぞ、お前ヒョロいしな。で、ユリウス様の話だ!」
“嗯,我觉得你应该变得更强壮,你。 那就是朱利叶斯!

「お前グイグイくるなぁ、別にいいけど。……あいつは最優の騎士って言われてる通り、剣の腕も精霊たちとの連携プレイもそこらへんの騎士より断然上だと思う。俺にないものを持ってて、強いくせにさらに努力して、優雅が服を着て歩いてるようなやつだ。あーなんか嫌だなこれ!気持ちわる!背中かゆっ!」
“我不在乎你是不是疯了...... 正如他们所说,他是最好的骑士,我认为他的剑术和与精灵的协调比那些骑士要好得多。 他有一些我没有的东西,他很强壮,他更努力,他穿着衣服优雅地走来走去。 啊,这太恶心了! 我感觉到了! 后背痒痒的!

 黒髪がぞわぞわとしたように背中を掻く。  黑色的头发以一种可怕的方式挠着他的背。

「本人にはぜっっっってぇ言ってやんねぇけど、俺はあいつを認めてる。努力家なとこも、キザな振る舞いも、優雅でいようとしてるとこも、癪だしムカつくけど認めてる!そのくせあいつは自分にも他人にも厳しくて、歴史オタで、本の虫で、俺にだけやたらムカつくこと言ってきて、そんななのに俺のこと好きとか言いやがるし、ほんとあいつわけわかんねぇ。アナスタシアさんの騎士として、最優の騎士として振舞って、それで終わらずにさらに高みを目指してて。……自分が辛い時にそれを表に出さないように振る舞うのは、俺にできない強さだと思う。でも、あいつがそんな弱いとこも超えられる強さを持ってんのは、俺の恥が知ってる。だけど、いつか超える。超えてみせる。絶対負けたくねぇ相手だと思ってるからだ。俺はあいつ嫌いだ。嫌いだけど……好きじゃないわけじゃ、ない」
“我根本不会告诉他,但我赞成他。 - 勤劳的表弟,吱吱作响的行为,以及他试图变得优雅的事实也是发脾气和烦人,但我承认! 他是他自己,也是别人,他是一个历史书,他是一个书,他只是对我说难听的话,他喜欢我,即使他那样,我真的不知道他在做什么。 作为先生/女士的骑士,我扮演了最好的骑士,我没有止步于此,我的目标是更高的高度。 …… 我认为这是一种力量,我无法表现得像我正在经历一段艰难的时期。 但我知道,他有实力超越这样一个弱者。 但总有一天它会被超越。 我会超越这一点。 我不想输给他。 我恨他。 我不喜欢。。。。。。 不是我不喜欢它。

 認めたくないけど、認めざるを得ない人、ということなのか。
 是不想承认,却又别无选择只能承认的人吗?

黒髪の素直じゃない言い方に、僕は笑った。 我嘲笑黑发说这句话的不真诚。
僕が笑ったのを見て、黒髪が拗ねた顔をした。だがこれは拗ねているのではなく、照れ隠しだろう。
见我笑了,我的黑发变成了一张凌乱的脸。 但这不是害羞,而是尴尬。

「お前がユリウスのこと知りたいとか言うから、普段なら絶対言わない事言っちゃったじゃねぇか。本人に会っても絶対言うなよ、絶対だぞ」
“你说你想知道朱利叶斯,所以你说了一些你通常不会说的话,即使你见到他,也不要告诉他,永远不要。

念を押してくる黒髪に、呆れた声で返事をする。 他用震惊的声音回答提醒他的黑发。

「僕が言うのもなんだけど、お前がユリウス様の事どう思ってるか言う機会なんてあるわけないだろ」
“我不知道该说什么,但我想我永远没有机会告诉你你对朱利叶斯大师的看法。

「あー、それもそうか」 “啊,这也是真的。”
「なんか腹たつな」 “我有点。”

 だが事実なので言い返せないのがまたムカつくところだ。
 但是,既然是事实,我不能说出来也很烦人。

この黒髪は気安い上に図々しいのだ。 这头黑发既随意又朴实无华。
これが僕でなかったらいい加減キレられていると思う。
如果不是我,我会的。

「ま、お前の知りたがってた情報はこんなもんだし、もういいだろ?そろそろオットーに怒られるし、もどんねぇと」
“嗯,这是你想知道的信息,是时候了,奥托会生你的气,你也会生他的气。”

 照れたように黒髪がそう言うと、僕は自分でもよくわからないうちに言葉が出た。
 黑发男子羞涩的说道,我还没来得及听懂自己,就说不出话来。

きっと、もう話題が尽きてしまったこの友人とは喋れないと思ったから、引き止めてしまったのだろう。
我敢肯定,他认为他不能和这位朋友交谈,因为他已经没有话题可谈了,所以他忍住了。

「そういえば、そのオットーってやつ。あの冴えないやつも、エミリア様陣営でナツキ・スバルに絆されたって噂だよな。冴えないやつはやっぱり見る目ないんだな」
“说到这里,有传言说这个沉闷的家伙在艾米莉亚大人的营地里与夏树·斯巴鲁结下了不解之缘。 毕竟,迟钝的人没有眼睛看。

 別にオットーという人物を貶める意図はなかったが、結果的にそういう言い方になってしまった。
 我无意贬低奥托,但这就是我最终说出来的方式。

そんな言葉を聞いた黒髪が、出て行こうとした足を止める。
听到这句话,黑发在他准备离开时停下了脚步。

「その言い方、カチンときた。ナツキ・スバルの悪口は許すけど、オットーの悪口は認めねぇ」
我原谅夏树斯巴鲁说他的坏话,但我不赞成奥托的坏话。

そう言って、振り向いてビシリと指を突きつけられる。
说着,他转过身来,把手指伸向我。

「あーもういい!お前にそう言われて引き退っちゃ俺が許せねぇ!」
我不能原谅你这么说并退出!

ズカズカと僕の前に来て、黒髪は僕に説教のように、オットーという人物のことを話し始めた。
黑头发的男人走到我面前,开始向我讲述那个名叫奥托的人,好像他在讲道。

「オットーは、俺を俺でいさせてくれるすげぇやつだ。俺の甘っちょろいところも、弱いとこもわかっててくれる。その上で、俺を支えてくれる奴なんだよ。確かに不幸体質だしツッコミ役だしいじりやすいし、気弱そうなのは認めるけど、だ!あれで結構強かだし、俺やエミリアたんの足りないとこ補ってくれる。パッと見ただけの成果とか、すげぇ力を持ってるとかじゃないけど、それでもオットーがいないと、俺は寂しいし、困る。正直生きてけねぇと思う。俺に初めてできた友達だし、大好きだ。本人には恥ずかしすぎて言えないから、お前にしか言わねぇけど!俺の大好きなオットーを、けなすのはゆるさねぇ!」
“奥托是一个很棒的人,他让我成为我自己。 他了解我的甜蜜和软弱。 最重要的是,他是支持我的人。 当然,他不开心,他很容易惹,我承认他很胆小,但是! 它非常强大,它弥补了我和艾米莉亚的不足。 这并不是说我只是一瞥成就,或者我有很大的权力,但如果没有奥托,我仍然感到孤独和烦恼。 老实说,我认为我活不下去了。 他是我交到的第一个朋友,我爱他。 我不好意思告诉他,所以我只告诉你! 我不能原谅你贬低我最喜欢的奥托!

 ふんす、と鼻息を荒げて、友達だというオットーの話をした黒髪に、目を丸くする。
 他哼了一声,对着告诉他奥托的黑发翻了个白眼,奥托是他的朋友。

それから、それだけ怒るほど、大切な存在をバカにしてしまったという己の失態を謝罪する。
然后,他越生气,就越为自己愚弄重要人物的错误道歉。

「ご、ごめん。そんなにすごい人だと思ってなかった。謝るよ」
“对不起,我没想到你有那么好。 我道歉。

「おーおー、謝れ。そんで、次からはオットーの悪口は言うんじゃねぇぞ。あ、でもオットーのいいとこ話したら、他のエミリア陣営のみんなのいいところとかも話したくなって来たし、お前他の陣営の話も聞きたいだろ。と言うか聞け。ヴィルヘルムさんだって、お前絶対かっこいいから憧れること間違いないぞ。クルシュさんたちや、アナスタシアさん、それからフェルトたちのことも。プリシラ陣営は、本人たちに聞け。お前がどれだけすごい人たちの近くに配属されてんのか、俺が直々に教えてやる!」
“哦,道歉。 下次不要说奥托的坏话。 哦,但是如果你谈论奥托的优点,你会想谈论其他艾米莉亚阵营中每个人的优点,你会想听听其他阵营的优点。 我的意思是,听着。 我相信威廉先生/女士会钦佩你,因为你绝对很酷。 克鲁什先生/女士、阿纳斯塔西娅先生/女士和费尔特。 普莉希拉的阵营问他们。 我会直接向你展示你与这些了不起的人有多亲近!

そんなふうに言われて、僕は目を丸くした。 他说这话的时候,我翻了个白眼。

「え、ってことは」 “什么,我是说。”
「おう、明日からまたここにきて、お前に全部教えてやる!先輩としての務めだ。あと、ナツキ・スバルについての悪口も、聞いてやる。だからお前も代わりに俺の尊敬する人たちの話を聞くこと、いいな!」
“哦,我明天会回来教你一切! 另外,我会听听你说的关于斯巴鲁夏树的坏话。 所以我希望你能听我钦佩的人!

 願っても無い話に、コクコクと僕は首を縦に振った。
 我沮丧地摇了摇头。

そもそも、さっきのオットーさんの話だって、彼がいなくなってしまうからと思って思わず発した一言だったのだ。
首先,即使是之前先生/女士的故事,也是我不由自主地说出来的一个词,因为我认为他会走了。

また明日からも来てくれるなら、それでいい。 如果你明天再来,那也没关系。

「じゃあ、俺はもう行く!」 “那我走了!”

 そう言って、少し長引いてしまった休憩時間を思い出し、慌てて小屋を抜け出した黒髪が見えなくなった頃、僕も小屋を抜け出し、ようやく息を吐いた。
 说着,我想起了拖了一会儿的休息时间,等看不见从小屋里冲出来的黑发,我也溜出了小屋,终于呼出了一口气。

チューチューとネズミが一匹、近くで鳴いていたので、少し居心地が悪かったのだ。
Choo-choo和一只老鼠在附近唧唧喳喳,所以我有点不舒服。

そういえば、あいつは精霊使いなのだろうか。黒色と白色の準精霊が浮いていた。
仔细想想,他是灵器吗? 黑白相间的准精灵飘浮着。

だが、すぐに離れて行ったので、きっとあいつのものではないだろう。
但他马上就走了,所以我敢肯定那不是他的。



+++



「よう、黒髪。……って、なんかやつれてないか」 “嘿,黑头发...... 这难道没有问题吗?

 いつも通りの時間帯に休憩場所へと赴くと、すでにそこには黒髪がいた。
なぜかいつもより心なしかやつれていた。

「あー……うん……寝不足でな」
「なんかあったのか」
「いや、その。オットーと、紫色の猫が。すごい構ってきて、それで」
「犬やら猫やらよく好かれるな」
「いつもなら俺にそっけないっつうか機嫌悪い猫がなぜかやたら上機嫌で俺にすり寄ってきてさ。オットーはオットーで優しすぎるぐらい優しかったし、遅刻したのに怒られなくて、逆になんかしちまったのかって怖くてさ」
「大変だな、お前も。僕も何かしらないけど、あからさまに他の奴らに避けられててさ、特に変わったこととかしてないはずなんだけど……」
「お互い、何が地雷かわかんないからな。気をつけようぜ」
「そうだな。で、今日は誰の話を聞かせてくれるんだ?」
「そうそう!考えたんだけどさ、やっぱエミリアたんたちの話は一番最後に持っていくのがいいと思ってさ!だからその代わりに、俺が男として一番尊敬してるヴィルヘルムさんの話と、クルシュさん、それからフェリスの話をしてやろうと思って!」

黒髪がキラキラとした目でそういうので、よっぽどその人たちのことが好きなんだなということがわかった。

「でも、いいのか?そんなに喋る時間ないだろ」
「それがさ、オットーが休憩時間をもうちょっと長めにしてくれたんだ。俺のために業務内容を調節してくれたらしい。せっかくこうやって説明、っつうか自慢できる機会があるんだから甘えようと思ってよ」

嬉しそうに話す黒髪は、ピンと指を立てて、話し始める。

「ヴィルヘルムさんについては知ってるな?そう、クルシュさんとこの超絶渋くて格好いい執事さんだ。
ん、そう。白鯨討伐で、ナツキ・スバルの支えになってくれた人だ。……月光が、似合う人。ここだけの話、すごい愛妻家でさ。奥さんのこと、すごく好きで。俺、奥さんの話をしてる時のヴィルヘルムさんが、すごく好きなんだ。プリステラで話を聞いてた時、何でかわかんないけど、すごく胸が苦しくなってた。恋してる顔が、誇らしそうな顔が、見ていて、あぁ、この人は恋をしてるんだ、ってわかる顔だったから」
「……すごいな」
「うん。すごい人だ。何年も、何年も、奥さんのために必死に頑張ってて、努力なんて言葉じゃ足りないぐらい、いっぱい自分を捧げてきたんだと思う。だから、そんなヴィルヘルムさんを尊敬するし、ああなりたいな、って思う」

 柔らかく笑った黒髪は、憧れの人物に対して想いを馳せていた。

「俺も、好きな人のために、できることがしたいから。俺にできることなんかちっぽけで、役に立てることも少ないかもしれねぇけど、それでも」

──────あぁ、これか。

 これが、恋をしている顔か。
オブモは、黒髪の表情を見て、息を飲んだ。
好きな人のために頑張りたいと思う彼を、どうして馬鹿にできようか。
僕は、心の中で、彼に向かって頑張れ、と呟いた。

「で、だ!そんなヴィルヘルムさんの仕えてる人が、クルシュさんだ。誠実で、まっすぐな人だと思う。正直俺も、エミリアたんがいなきゃクルシュさんについてったかもしんない。それぐらいかっこよくて、綺麗で美人で、可愛い人だ。政治能力にも長けてて、交渉もこなせて、しかも剣の腕前もすごいんだよ。白鯨戦の時に見たことあるんだけど、ほんとすごいんだって!嘘も通じないしな。いや別に嘘吐こうとか考えてるわけじゃねぇって。クルシュさんの演説、聞いたことあるか?ああ、なら話は早いな。国民の事を考えてくれる人だ。俺はエミリアたん一筋だけど、あの演説は本当に格好いいと思ったぜ」

頷きながら話す黒髪は、よほどクルシュ様のことが好きらしい。

「そして、そんなクルシュさんを支えてるのがフェリスだ。俺が知ってるフェリスは、プリステラと白鯨戦と、魔女教と戦った時だけだからな。騎士団の中のフェリスは俺よりお前の方が詳しそうじゃねぇか」
「いや、正直下っ端の僕が知ってることなんて、一般に知られてることぐらいだよ」
「そうか?基本的にはフェリスは頼りになる回復系キャラって立ち位置だよな。それ以外で、俺が見てきたフェリスは、クルシュさんのためなら何でもやる、何でもしたいって奴だ。あいつは嫌がるかもしんないけど、そういうとこは俺と一緒かもな。クルシュさんを支えるために、見せないところで努力してると思う。それに意外とすごい冷静で、理性的だ。俺が熱くなってる時は、クルシュさんが絡んでなけりゃ比較的しっかり軌道修正してくれるとこもある。まぁ、あいつ自体が爆弾発言かますこともあるけど、あと語尾のにゃんはあざとすぎるけど、あと女装が似合いすぎて最初女かと思ってめちゃくちゃびっくりしたけど!それはそれだ」
「最後の方悪口だったぞ」
「いいんだよ!とりあえず、クルシュさんの陣営は、ヴィルヘルムさんとフェリスっていう、頼もしい人たちが揃ってる。そして何を隠そう俺の愛竜をプレゼントしてくれた人でもある!」

 へぇ、と頷いた。クルシュ陣営の話はなんども聞いたし、近衛騎士団として、王族に現在最も近い存在を改めて知ることができたのはいいことだった。
黒髪はクルシュ陣営に並並ならぬ恩があるらしい。

「さて、今日はここまでかなぁ。休憩時間って伸ばしてもらってもあっという間だな。明日はフェルトとロム爺と、あとアナスタシアさんたちの話するか。トンチンカンはまぁいいだろ。あ、お前釘刺しとくけど、フェリスに会っても絶対今日の話すんなよ。ヴィルヘルムさんの自慢話は許されるだろうけど、クルシュさんを褒めた話聞かれたら絶対睨まれるからな」
「だから、俺がそんな話をする日は来ないって」
「だとしても、だ。んじゃな」

 黒髪はひらひらと手を振って立ち去っていった。僕だって、早くフェリス様たちと挨拶したいんだけどなぁ。それにしても、そんなすごい人たちのことを、何であいつはあんなに詳しく知ってるんだろう。
エミリア陣営は本当に謎だなぁ。
ナツキ・スバルは、あんなすごい人たちと肩を並べて戦っているのか。
……本当、何でそんなにすごいのに、不誠実なやつなんだろう。
あぁ、何だか、腹がたつ。


+++



「それじゃ、今日は約束通り、フェルトたちの話するか」

黒髪がそう言って笑った。

「フェルトは貧民街出身っていうのは知ってるよな。俺も、初めてあいつとあったのはあそこだった。日々を必死に生きてて、格好良くて、可愛いやつだよ。ロム爺が好きで、家族って言ってたかな。俺が少し見ただけでも、いい関係だと思う。フェルトを見るときのロム爺の顔も、フェルトの顔も、優しくて好きだ。俺の知ってることはほとんどないから、あんまり知ってる風な口は聞けないけど、ロム爺はお人好しだし優しくて、フェルト想いだけど俺の話もちゃんと聞いてくれる気のいい爺さんだ。フェルトはきっとそんなロム爺に育てられたから、いい子に育ってるし、わんぱくだけど素直に育ってると思う。手グセの悪さは直してほしいけどな。まぁラインハルトが頑張るだろ」

黒髪は苦笑して話を続けた。

「次にアナスタシアさんたちの話な。アナスタシアさんは、プリステラの時、俺に色々と気づかせてくれたって印象が強い。貸し借りはきっちり守ってくれるし、良くも悪くも商売人。ま、俺もそれで助けられたから文句は言わねぇけどな。冷静に物事を見てくれるし、合理主義なとこもあるけど情に熱い。だからあれだけいろんな人から好かれてるんだと思う。リカードやミミたちも、そんなところを見てるから、きっと一緒にいるんだと思う。これもやっぱり詳しくは知らないから、憶測になっちまうけどな。じゃなかったら、エキド……いややっぱなんでもねぇ。ミミの話をしたけど、ミミはガーフィールと仲良くしてくれるし、魔女教の時も、一緒に戦ってくれた心強い女の子だ。優しいし、あれで結構しっかりしてる。もちろんミミだけじゃなくて、ヘータローやティビーも心強いぜ。「鉄の牙」のみんなには世話になったから、いつかちゃんとお礼がしたいと思ってる」

ニッと笑った黒髪がそう言ったので、僕は首をかしげた。

「結構お前って顔広いよな」
「そうか?お前も近衛騎士団なんだからそのうち絡むようになるって」
「そうかなぁ」

全くそんな風になるとは思えないオブモの背中をバッシバッシと叩く。

「さて、もういくわ」

 恒例になった挨拶をして、黒髪は出て行ってしまう。
もうすぐこの休憩時間も終わりかな、とオブモは立ち上がった。
明日は誰の話が聞けるだろうか。



+++



「……おい、大丈夫か?」

昨日と同じく、すでに小屋の中でぐったりしていた黒髪に声をかける。
だが今日は昨日よりも体調が悪そうだ。

「そんなに体調悪いなら今日は別に話してくれなくても」

僕がそう言うと、黒髪は首を振って否定した。

「いや、いや、いい。本当に、大丈夫」
「そうは見えないんだが、何があったんだ」
「……俺、クルシュ陣営と、アナスタシア陣営とフェルトたちに嫌われたかもしんない」
「なっ!?」

黒髪が見るからに落ち込んでいるのは、昨日あれだけ語ってくれたクルシュ陣営が原因だと言う。

「俺を見ると、クルシュさんは俺を避けるし、フェリスはすごいガン飛ばしてきたし、ヴィルヘルムさんもいつも以上に言葉少なかったし、フェルトたちも俺を蹴ったりしてきたし……ミミはいつも通りだったけど、アナスタシアさんにもなんか変なもの見るような目で見られたし俺、なんかしちゃったのかもしんない。どうしよう」

 これは確かに落ち込むだろう。
あれだけ黒髪が語っていた相手から、実は全然相手にされなかったという話だ。
かわいそうに、俺よりもひどい。
俺は、失うものがほとんどないから。

「……じゃあ、今日は話さなくていい。僕の久しぶりのナツキ・スバルの嫌いなところを聞いてくれ」

そういうと、黒髪はさらに顔を俯けた。

「それもそれでなんかな……」
「なんでだよ、いいだろ。まぁ勝手に話すから、聞き流してもいいさ。僕が聞いてきた噂、お前も知っといたほうがいいよ」
「あー、確かに。巷の噂は聞いておきたい。なんでか、オットーとかレムがいつもそう言う話から俺を遠ざけるんだよな」
「そりゃ、仮にもエミリア陣営の下っ端に、エミリア様の騎士の悪口聞かれたらまずいからだろ」
「……そう、かな」

 目に見えて悲しそうになった黒髪に、僕は事実を伝える。
正しくは、流れている噂、だが。

「曰く、ナツキ・スバルは白鯨を一人で真っ二つにして、魔女教って奴らを幹部ごと拳骨で潰して、大兎も焼いて食った奴だとか」
「……まぁ、思うところはあるけど続けて」
「曰く、ナツキ・スバルはプリステラで一言囁いただけで民衆の心を鷲掴みにして離さなかった、とか。敵陣に乗り込んで魔女教最強の奴らを木っ端微塵にしたとか」
「もうそれ人間じゃねぇよ!ナニモンだよナツキ・スバル!」

 思わず叫んでしまった黒髪に頷く。

「それはまぁ、英雄って呼ばれてる方の噂だ。僕が最低だと思うのはそんな英雄と呼ばれてるのにも関わらず、エミリア様をはじめ可愛いと思った女性を口説き落とすのが趣味で、手が早くて、最近は幼女狩りに精を出してて、エミリア陣営は全員ナツキ・スバルの虜で、それだけに飽き足らず他の陣営にも手をつけてるって話の方だ」
「クズじゃねぇか!それだけ聞くと最低なやつだな!」
「そしてそれに加えて剣聖や最優を手練手管で口説き落としたって話もある。しかもこれは本当かどうか疑わしいけど、魔女に心を鷲掴みにされたらしい」
「……所々否定できねぇのが辛い……」

黒髪は項垂れながら小声で何か言っていたが、無視をする。

「そんな男が、英雄だって呼ばれてんのが気にくわない。やってきたことと人物像が違うのはな、結構辛いものがあるんだ!」
「そりゃ、そんなバケモンがそんな最低野郎だったら俺だって多分そうなるわ。いやでもレイドとかシャウラの例があるからな……。人の噂は恐ろしいとこんなに実感するとは思わなかったぜ。でもお前に言っとくけど、それ噂の大半間違ってるからな。嘘だからな」
「そりゃ僕だって、全部本当だと信じてるわけじゃないさ。でも、火のないところに煙は立たないだろう。だから、僕の憧れてる人たちが、そんな極悪野郎にたぶらかされて悲しいんだ」
「それナツキ・スバルも風評被害じゃねぇかな!?」
「お前どっちの味方なんだよ。だって、僕は真実を知らないんだ。噂ぐらいでしか、英雄のことを知ることができないんだ。流れてくる話は、みんなそれを真実として話すから、たとえ違ったとしても、それを否定されない限り、どんどん燃え上がっていく」

僕はそういうと、眉尻を下げた。

「……でも、お前の話を聞いてると、すごい人たちがナツキ・スバルに協力してたってことだから、本当は嘘であってほしいと思う」

僕が最近思っていたことを言うと、黒髪は頬を掻いた。

「俺の、個人的な意見だけど。ナツキ・スバルは、とんだ、過大評価されてると思う」

 ポツリ、と。
どうしようもないような声色で、黒髪はそう口に出した。

「思い違いだ。ナツキ・スバルはそんなたいそれたやつじゃない。あの人たちの方がずっと立派で、ずっとずっと努力してる。……俺はそれを一番知ってる」

 黒髪は、消え入りそうな声でそう言った。
僕はなんだかその言葉を止めてはいけない気がして、聞いていた。

「────俺が見てきたナツキ・スバルの話をしよう。聞いてきた噂からでも、愚直で、度し難い青二才なのはわかるな?そうだ、それは間違っちゃいない。弱くて、ちっぽけで、なんの力もない」

 ナツキ・スバルの話をする黒髪の瞳は、今までにないほど淀んでいた。

「何度も膝を屈しそうになった。そのたびに誰かに背中を叩かれた。自分に良くしてくれた人たちに何か少しでも報いたいから、優しくしてもらえたから、返したくて。ああ本当に、超人だったらどれだけよかっただろうと俺でも思う。噂の様な、白鯨を一人で真っ二つにできる力があって。大兎を一瞬で焼き払えるだけの力があってさ。一言で民衆の心を鷲掴みにできる様な話術だっていい。何か一つでも極めていたら……敵陣に乗り込んでカッコよく敵を倒せる様な奴だったら、どれだけよかったか!」

 その叫びは、虚無と懺悔に満ちていた。

「けれど、そうじゃない。そうじゃ、なかった。俺は。だから死なせた。だから悲しませた。俺が、弱いせいで。誰も、救えなかった。理不尽を。不条理を。目を背けたくなる様な運命を。それなのに────」

それなのに、どうして?

 知らず、口から漏れていた言葉を、黒髪は拾った。
そして、その問いを聞いた途端、諦めた様に、けれど清々しい気持ちで笑って、こちらを向いた。

「──────みんなが、大好きだから」

 それだけは、酷く優しく響いた。
僕はその表情に、目を見開く。


「諦めきれなかったんだよ。みっともなく足掻いて。馬鹿なガキのまま、俺は進むしかない。何度でも。そう──────ゼロからでも」


 風が吹いた気がした。
まるで、その男がした決断を、世界が祝福しているかの様な。

「『ナツキ・スバル』は、弱くて、ちっぽけで、救いようのない大馬鹿だ。……でも」

ガチャリと、その黒髪の男──────『ナツキ・スバル』はドアを開けた。


「そんな”俺”はすごい奴だって、カッコいい奴だって、大した奴だって……俺だけは知ってる」


 僕に振り向いて笑ったその瞬間、どたどたどたっ!と慌ただしい音が聞こえた。
目の前の黒髪の男がその何かに押しつぶされているのが見える。

「うおおお!?」

 バタバタともがく黒髪の男を押しつぶした面々が顔を上げる。
その後ろからも、埃の積もった小屋を覗いてくる人影があった。

「スバルくん!」
「スバル!」
「あんたって人は、本当に」
「さっすがッ大将だよなァ!」
「──────スバル」

それがエミリア陣営だと気づくまで、数秒のラグがあった。

「み、みんなっ?!なんでここに」

 黒髪、いやナツキ・スバルも驚きの声を上げる。

「悪いけーぇれど、君の話は最初から最後まで聞かせてもらっていたーぁよ」
「ロズっち!?え、最初からってどっから!?俺の噂からだよな、そうなんだな?!」
「いんや、君がそこの新人騎士に話をするところからだーぁね」
「マジで最初から?!あっ、えっ、じゃあ、あ……待ってくれ、その」

 途端、顔に火がついたかと思うほど顔を赤くしたナツキ・スバルに、ロズワール様の後ろから僕の憧れである剣聖、ラインハルト様と最優の騎士ユリウス様が現れた。

「すまない、君があまりにも僕たちを褒めてくれるものだから」
「その調子で全陣営を褒め倒すのだと知ったら、聞かないわけにはいかないだろう?」
「なん、なん……っ」

信じたくない様な顔色で、赤い顔と青い顔を交互にしているナツキ・スバルに僕は同情的な視線を向けた。

「バルス。まだエミリア陣営の話が聞けていないわよ」
「姉様、流石に今ここではむり、ほんと勘弁して」
「あら、ラムは別に聞きたいなんて言ってないわ。そこの新人騎士がどうしてもと頭を床に擦り付けて土下座しているから仕方なくよ」
「そんな事してねえだろうが!?えっ、待ってほんと待って、確かに俺みんなのこと自慢したいって言ったけど、聞かれてるとは思ってなくて、それで」

 目がぐるぐるとなって羞恥心が丸わかりなナツキ・スバルに、クスクスとエミリア様が笑った。

「そうね、その言葉は私たちだけで聴きましょう」
「そうですね、レムもそう思います。スバルくんが私たちを褒めてくれる言葉は、私たちだけで聴きましょう」
「仕方ないかしら。じゃないとスバルがもたないのよ」

水色の髪のメイド……レム様と、大精霊ベアトリス様がそう言ってナツキ・スバルの上から体をどかした。

「僕は先に褒めてもらっちゃいましたから、役得でしたかね?」
「ズリーよなァ、オットー兄。まッ、俺も大将に褒めてもらえるのは嬉しいからいいや」
「ふふ、もちろんパトラッシュも褒めてもらえますよ」

 クルル、とパトラッシュと呼ばれた地竜が鳴いた。

「あーもう、わかった!わかったよ!あとでフレデリカもペトラもフルフーもリューズたちもシャウラもメィリィも、まとめて褒め散らかしてやらあ!お前ら覚悟しとけよ。俺がお前らの事がどれだけ好きなのか、改めて思い知らせてやる!」

 ガバッと起き上がって、ナツキ・スバルは不敵な笑みを浮かべた。
その反応にその場にいた全員は嬉しそうに、そして優しい目をして微笑んだ。

「ね、君」

エミリア様が、こちらを向いた。

「は、はいっ」
「さっきスバルは自分のことああ言ったけど。貴方はもうスバルのいいところ、わかってるでしょう?」

 人のいいところをたくさん褒めて、そして見つけられる。
これだけのすごい人たちから愛され、そして愛している。
何より、自分の欠点を知っていても、自分を尊敬できる。
そんな人間が、僕の知っている噂の様な奴じゃないなんて、当たり前なのだ。
噂なんかあてにならない、それ以上にもっとすごい奴だった。

「……はい。ナツキ・スバルは。貴方様の騎士は、尊敬できるとても素晴らしいお方です」

 僕がそう言うと、もみくちゃにされていた英雄は驚いた顔を見せた。
それがなんだか面白くて、笑ってしまう。

「英雄、ナツキ・スバル様。『私』のためにお時間をありがとうございました」
「な、なんだよいきなり。もっとフランクな感じでいいって……あと英雄はやめてくれ」
「いいえ。貴方様が尊敬すべきお方である以上、敬意は払わせていただきたい」
「……そうかよ。じゃ、俺からもアドバイス。女装するならもっと本気でやるんだな。俺の方が可愛く女装できるぜ」

 そう言ってパチンと目配せされた。最後に送られるアドバイスがそれでいいんだろうか。いいや、最後ではないのかもしれない。
この人の様になりたいと思っているのだから、追いかけなくてはならない。
もう、下を向いて自分を卑下するだけではダメなのだ。何度でもこの人の様に立ち上がればいい。

そう、ゼロから!

 ひらひらと僕に手を振って離れていくエミリア陣営を見届けると、先ほどから入り口に立っていた憧れのお二人に声をかけられた。

「新人くん、君にはもう一つ言っておかなくてはならないことがある」
「はっ、なんでしょうか」
「スバルが僕たちを誑かしているんじゃなくて、僕たちがスバルを気に入っているだけだよ」
「もう説明はいらないだろうが、彼はああ言う手合いだ。彼の言葉を借りるなら、好きになってしまうのも仕方ない、と言う奴だろうさ」

 お二人がスバル様を見送る瞳は暖かい。
それが嘘ではないと理解できるから、僕も笑った。

「はい。存じております。……ありがとうございました」
「ん?お礼を言われる様なことをしたつもりはないけれど」
「いいえ。彼が私に付き合ってくださっている間、他の騎士たちをこちらの小屋に寄せ付けぬ様手配してくださっていたでしょう」
「おや、スバルも気付かなかったのによく気付いたね」
「私も気付いたのは先ほどですよ。理由をお尋ねしても?」

 僕がそう問いかけると、憧れの騎士二人は顔を見合わせ、苦笑した。

「僕たちの主や仲間も褒められたかった、と言ったら君は笑うかい?」
「そのおかげでスバルには少し悪いことをした。フェリスにはあとで言っておこう。フェリスも満更ではなかったのに、照れ隠しで邪険にしてしまった様だ」
「ああ、それを言うならフェルト様にも言っておかなきゃ。スバルに褒められて嬉しかったのに、蹴ってはダメでしょう、と」

 そう言いながら笑い、二人は背を向けて自分の陣営に戻っていった。
憧れのお二人とこうしてお話ができたのも、何もかもナツキ・スバル様のおかげだ。
ああ、あのお方の褒め上手さも見習いたいな。

 僕は薄暗く埃をかぶっている小屋から抜け出すと、明るい空の下にでた。

それから、この話が広がり僕は同じ騎士団の連中と会話をするきっかけができ、とんとん拍子に友達や先輩に囲まれる様になるのだが────それはまだ誰も知らない話だ。




END!

ナツキ・スバルが周りの人を褒めちぎるだけの話
※web最新話(6章79話)までのネタバレを含みます。
※モブが出ます。
タイトル通りです。みんなスバル君が大好き。
1,5501,99929,213
2020年9月27日下午4点17分
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