兄の憂鬱 兄长的忧郁
何をしているのかよく分からない凛と潔の休日を冴目線で。
凛和洁的假日,冴以冷眼旁观。
糸師兄弟がちょっと和解気味の謎時空です。 糸师兄弟在略显和解的谜之时空。
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休みの日、久しぶりに実家に帰ってみたら潔世一がいた。
休息日,难得回了一趟老家,结果发现洁世一也在。
こんなところで一体何をしているんだと思ったが、どうやら弟の凛を訪ねて来たらしかった。
我本以为在这种地方究竟在做什么,但看来似乎是来找弟弟凛的。
話しぶりから、どうやら休日になると頻繁にこの糸師家を訪れているようだが、潔世一と凛は、普段からそんなに仲がいいのかと少し意外だった。
从说话的语气来看,似乎一到休息日就频繁造访糸师家,但洁世一和凛平时关系真的那么好吗?这让我有点意外。
というのも、この二人の性格を考えるとどうやったって一緒にいて楽しくはないだろうとしか思えないから。
毕竟,考虑到这两人的性格,无论如何也想象不出他们在一起会愉快。
そもそも、ひとつしか離れていないとはいえ学年も学校も違うのだし、こいつらの共通の話題と言えばサッカーくらいしかないんじゃないのか。
毕竟,虽然只差一个年级,但学校也不同,要说他们共同的兴趣,除了足球还能有什么呢?
潔のほうは性格的にも明るく愛嬌があり、自然と人を惹きつける親しみやすさみたいなものがあるのに対し、凛はたいして愛想もないし態度もでかく(態度だけじゃねえな、身長もいつの間にか俺よりでかくなってやがる)、「俺に近寄るな」と言わんばかりのオーラを常に放っていて親しみやすさなど皆無。
洁的性格开朗且讨人喜欢,自然而然地吸引人,让人感到亲近;而凛则没什么亲切感,态度也傲慢(不只是态度,不知不觉间身高也超过我了),总是散发着“别靠近我”的气场,毫无亲近感可言。
つまり真逆なのだ。 也就是说,他们完全相反。
まあ、凛がそんな奴になってしまったのは半分、いやそれは言い過ぎだな、さすがに三割くらいは俺のせいかもしれないのだが。
嘛,凛变成那样的人,一半,不,这么说有点夸张,但至少有三成可能是我的错吧。
こんな二人がわざわざ予定を合わせて休日に集まって、一体何をして過ごしているのか俺には不思議で仕方がない。
这两个人特意调整了日程在休息日聚在一起,到底在做什么度过时光,我真是百思不得其解。
だから「俺のことは気にすんな」と言いつつ、こっそりと二人の様子を観察してみることにした。趣味悪いな、俺も。
所以,虽然嘴上说着“别在意我”,但还是忍不住偷偷观察起他们来。我也真是够无聊的。
とはいえ、二人は主に凛の部屋で過ごしているから、何か理由をつけて凛の部屋に行かないと様子を窺い知ることはできない。
虽说如此,两人主要是在凛的房间里度过,若不找个理由去凛的房间,是无法窥探到情况的。
というわけでスペイン土産の菓子を渡すという名目で、凛の部屋を訪れることにした。
于是,我决定以赠送西班牙特产点心的名义,拜访凛的房间。
本当ならノックなんかせずにいきなりドアを開けてしまいたいところだが、一応、友人が遊びに来ているのだからとそこは我慢する。
其实真想不敲门就直接推门而入,但考虑到毕竟是朋友来访,还是忍住了。
ドアを何回か軽くたたいて「おい、凛」と声を掛けると、「はーい」と潔の声がする。お前が返事するのかよと思ったら、部屋のドアを開けたのも潔だった。
轻轻敲了几下门,喊了声“喂,凛”,便听到洁回应道“来了”。还以为是你回话呢,结果开门的人也是洁。
凛は何してんだと中を覗くと、テーブルに頬杖をついて偉そうに胡坐をかいている。なんとなく不機嫌そうな顔をしているように見えるが、それはいつもか。友達といるときもそんな顔してんのかよ。もう少し楽しそうにしてやれ。
往里一看,凛正撑着脸颊,傲慢地盘腿坐在桌前。看起来似乎有些不悦,难道平时也这样吗?和朋友在一起时也摆出这副表情吗?稍微表现得开心点吧。
「凛、これ土産。一緒に食え」 “凛,这是特产。一起吃吧。”
何の菓子が入っているのかよくわからずに買った、派手な色合いのでかい缶を潔に手渡した。
不知里面装了什么点心,买了一个色彩艳丽的大罐头,干净利落地递了过去。
奥から「うん」と凛の短い返事が聞こえる。 从里面传来凛简短的回应:“嗯。”
「なあ、二人で何して遊んでんだ?」 “喂,你们俩在玩什么呢?”
たまらず潔に訊いてみた。 忍不住直接问了。
「えっと、今は俺がゲームしてる。サッカーのやつ」 「呃,现在是我正在玩游戏。足球的那个」
「凛は?」 「凛呢?」
「え? 見てるだけ。いつもそうだし」 「诶?只是看着而已。一直都是这样啊」
「……楽しいのか? それ」 「……这样开心吗?那件事」
「俺は別に普通」 「我倒是觉得挺平常的」
大丈夫かこいつら。 这些家伙没问题吧。
心配なような呆れのような複雑な気分になっていたら、ふと凛の「いつまでそこでコソコソやってんだ」という視線を感じた。
心里既担心又无奈,复杂的心情交织时,突然感受到了凛那句“你在那儿鬼鬼祟祟地干什么呢”的视线。
なので「邪魔したな」と一旦ドアを閉め、数秒間を置いてから不意打ちでもう一度部屋のドアを開けてやった。
于是我先说了声“打扰了”,然后关上门,停顿几秒后,冷不丁地再次打开房间的门。
俺の前だから二人ともあんなだっただけで、実は見ていないところでは普通の男子高校生らしくワイワイ楽しそうにやってるんじゃないかという淡い期待を込めて。
因为是在我面前,所以他们俩才那样,实际上在看不见的地方,他们会不会像普通男高中生一样,欢声笑语地玩得很开心呢?我怀着这样淡淡的期待。
――凛が楽しそうにしているところなんて、ここしばらくはめっきり見ていないが。
——凛看起来很开心的样子,最近已经很久没见到了。
ドアを開けると、驚いたのか潔の小さな悲鳴と、コントローラーが床に落ちる音が聞こえた。凛は俺のほうに視線をやり、軽く睨んでいるようにも見える。
打开门时,听到了洁的惊呼声和控制器掉在地上的声音。凛朝我这边看过来,似乎还轻轻瞪了我一眼。
「兄ちゃん、勝手に開けんなよ」 「哥哥,别随便打开啊。」
文句を言われた。 被抱怨了。
「ああ、悪い……」 「啊,抱歉……」
それだけ言ってドアを閉め、ぼんやりと自室へと向かう。
说完便关上门,茫然地走向自己的房间。
なあ、見間違いか気のせいじゃなければ、さっき潔世一が凛の膝の上に座ってなかったか?
喂,如果不是我看错或错觉的话,刚才洁世一不是坐在凛的膝盖上吗?
友達ってそんなことするもんだっけか? 少なくとも俺はしたことがないし、そもそも野郎の膝に座ろうとか座らせたいとか思わない。
朋友之间会做这种事吗?至少我从来没做过,也根本不想坐在或让别人坐在男人的膝盖上。
もしかするとあの二人は友達ではなく、そういう関係だったりするんだろうか。それならまあ、さっきの光景も別におかしいものではないのかもしれない。
或许那两人并非朋友,而是那种关系吧。那样的话,刚才的情景也就没什么奇怪的了。
そう考え始めると、隣の凛の部屋から聞こえてくる物音や話し声が気になって仕方がなくなってしまった。
一旦开始这么想,隔壁凛房间传来的声响和说话声就变得格外在意,无法忽视。
一体何して過ごしてんだ、二人きりのときはどんな会話をしてんだとか、ベッドが軋むような音が一瞬でも聞こえれば、気を遣って外出でもしてやったほうがいいのかとか悶々と考えてしまう。
他们到底在做什么,两人独处时会聊些什么,甚至只要听到一丝床铺吱嘎的声音,就会纠结是否该体贴地出去避一避。
しばらく部屋の中をそわそわと歩き回った後、このままここにいたら俺も落ち着いて過ごせないと思い、やはり外に出ることにした。
在房间里不安地来回踱步了一会儿后,我觉得这样待下去自己也无法平静,于是决定还是出去走走。
着替えて部屋を出ると、ちょうど同じタイミングで隣の部屋から出てきた二人と鉢合わせてしまった。俺の勝手な想像のせいなのだが、なんとなく気まずさを感じる。
换好衣服走出房间时,正好与隔壁房间出来的两人撞了个正着。虽然只是我一厢情愿的想象,但总觉得气氛有些尴尬。
「どっか行くのか?」 “要去哪儿吗?”
なるべく平静に声を掛ける。 尽量平静地开口。
「こいつ帰るから、駅まで送ってく」 「这家伙要回去了,送他到车站。」
普段通り無愛想に答える凛の後ろで、「お邪魔しました」と潔が軽く頭を下げている。
凛一如既往冷淡地回答后,洁轻轻低下头说:「打扰了。」
「兄ちゃんは?」 「哥哥呢?」
「適当に……散歩してくる」 「随便……去散个步。」
三人で一緒に玄関を出て、凛たちとは反対方向に歩き出した。
三人一起走出玄关,朝着与凛她们相反的方向走去。
少し歩いて振り返ってみると、凛が潔の横にぴったりとくっ付いてつまらなそうに歩いている小さな後姿が見えた。
稍微走了一段路,回头一看,凛正紧紧贴在洁的身旁,无精打采地迈着小步的背影映入眼帘。
いや、近すぎるだろう。距離感バグってんのか? 不,这也太近了吧。距离感出问题了吗?
小さくため息をついて、二人から目を逸らした。 我轻轻叹了口气,移开了视线,不再看向他们两人。
適当にコンビニに寄って帰ってくると、タイミングがいいのか悪いのか、潔を駅まで送り届けて来た凛とまたもや玄関で鉢合わせになった。
随意去便利店逛了一圈回来,不知是巧合还是不巧,在玄关处又与送洁到车站的凛撞了个正着。
もやもやとしたまま過ごすのも性に合わねえと、単刀直入に訊いてみた。
心里还闷闷不乐,但觉得这样拖着也不合我性格,便直截了当地问了。
「お前ら、付き合ってんのか?」 「你们,是在交往吗?」
凛は少しだけ目を丸くして、どうしてそんなことを訊いてくるんだという顔をしている。
凛微微瞪大了眼睛,露出“你怎么会问这种问题”的表情。
「そんなわけないだろ」 「怎么可能」
「は? 違うのか?」 「啊?不是吗?」
「当たり前だろ。どうしてそうなるんだよ」 「这不是理所当然的吗。为什么会变成那样啊」
「潔のことを好きとか、そういう気持ちもないのか……?」
「你对洁没有喜欢之类的感情吗……?」
「あるわけないだろ。気持ち悪いこと言うなよ」 「怎么可能会有。别说恶心的话了」
凛は不貞腐れた様子でポケットに手を突っ込んだまま靴を脱ぎ、リビングへと入って行った。
凛一脸不爽地把手插在口袋里,脱下鞋子走进了客厅。
まさか無意識であれをやっているのか? 难道是无意识中做了那件事?
潔のほうはどうなんだろうか。少なくともある程度の好意を持っていなければ、男の膝の上に座ったりなんかはしないだろう。
洁那边又是怎么回事呢。至少如果没有一定程度的好感,是不会坐在男人膝盖上的吧。
お互いに相手に対する自分の気持ちに気が付いていないとしたら、無自覚片想いと無自覚片想いが一緒にいるということになるわけで、相当に面倒だ。
如果双方都没有察觉到自己对对方的心意,那就成了无自觉单相思与无自觉单相思的组合,相当麻烦。
何も進展がないまま十年経ってもおかしくない。 十年毫无进展也不奇怪。
兄として背中を押してやるべきだろうか。いや、さすがにお節介が過ぎるか?
作为哥哥,应该推他们一把吗?不,会不会有点多管闲事了?
どちらにせよ、俺がこの二人の進まない関係性にヤキモキさせられることになるのは間違いないだろうという予感はする。
不管怎样,我预感到自己肯定会为这两人停滞不前的关系而感到焦躁不安。
勘弁してくれねえかな。 能不能饶了我啊。
「凛、アイス食うか?」 「凛,吃冰淇淋吗?」
コンビニで買った棒アイスをちらちらさせてみると、凛の表情がわずかに明るくなったような気がした。
试着在便利店买的棒冰上轻轻晃动,感觉凛的表情似乎微微明亮了一些。
「……食べる」 「……吃」
「ほらよ」 「给」
わざわざ袋からアイスを取り出してやり、手渡した。
特意从袋子里拿出冰淇淋递给他。
こんなにでかくなりやがったのに、中身はガキの頃からたいして変わってねえ。
明明已经长这么大了,内心却和小时候没什么两样。
面倒くさい弟だぜ、本当に。 真是麻烦的弟弟啊,真的。