短編集(晩夏) 短篇集(晚夏)
X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2023年8月分)をまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的 One-Rai 投稿作品(2023 年 8 月)的汇总。
各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000~3000 字。目录请查看第 1 页。
素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
illust/88897034 插画/88897034
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混沌の坩堝 混沌的坩埚
急遽入った取材で参加が遅れ、店員に案内されて合流した席の奥の方にその顔を見つけた瞬間、潔世一はしまった、と思った。
因突如其来的采访而迟到,在店员的引导下汇合时,洁世一在座位深处看到那张脸的瞬间,心想糟了。
案の定、相手の側もこちらの存在に気付いたらしく露骨に顔を顰める。普段から柔和とはいいがたい顔つきをしている男だが、その普段の険しさの遥か上をいく、苦虫を嚙み潰したような表情だった。
果然,对方似乎也察觉到了他的存在,明显地皱起了眉头。虽然平时就有着不易亲近的面容,但此刻的表情远比平时的严肃更甚,仿佛咬碎了苦虫一般。
その顔を見るだけで、潔としてはくるりと背を向けて逃げ出したくなる。やっぱり用事を思い出したから、などという言い訳を並べ立てればどうにかならないだろうか。
光是看到那张脸,洁就忍不住想转身逃跑。或许可以编造一些借口,比如突然想起有急事之类的,这样能蒙混过去吗?
潔は手前の席に座った本日の幹事である蜂楽にちらりと目をやり、その顔に浮かぶ満面の笑みにならないよな、と観念して大人しく席に着いた。
洁看了一眼坐在前排的今日干事蜂乐,看到他满脸笑容,心想自己也不能不配合,于是乖乖坐下了。
潔世一と糸師凛との不仲はある程度のサッカーファンであれば誰もが知るところだった。凛は元より人嫌いとして知られているが、潔についてはより顕著にその傾向が現れていたからだ。インタビュアーから潔について尋ねられると人を一人殺してきたような表情で回答を拒否し、それでもしつこく回答を求められれば放送倫理規定スレスレの暴言を吐いて放送がお蔵入りする。
洁世一和糸师凛之间的不和,只要是一定程度的足球迷,谁都知道。凛本来就以讨厌人著称,但对洁的厌恶表现得更为明显。被采访者问到洁时,他会露出像杀了一个人似的表情拒绝回答,即使被反复追问,也会说出接近广播伦理规定的暴言,导致节目被封存。
同じく犬猿の仲として知られる士道龍聖にしてもプレイ内容についての分析を求められればある程度は口にするため、そういった話題についてすらも口を噤む潔との関係は一種のタブーとさえ見做されている。
同样以水火不容著称的士道龙圣,如果被问到比赛内容的分析,他还是会开口的,但连这种话题都闭口不谈的洁,他们之间的关系甚至被视为一种禁忌。
自然、潔に対しても凛についてのコメントを求められることは減っていき、潔としてもそういった状況でわざわざ地雷原に足を踏み入れるような真似をしたくはないので凛について自分から言及することはなく、二人の仲がどうやら険悪らしい、という噂はサッカー界で公然の事実として扱われるようになった。
自然、对洁的询问也逐渐减少,洁也不想在这种状况下特意踏入雷区,所以自己不会主动提及凛,两人的关系似乎变得险恶,这一传闻在足球界被视为公开的事实。
かつてブルーロックで抜群のコンビネーションを発揮したことを記憶に残すファンからはなぜこのような関係に、と頻りに不思議がられるが、それは当事者である潔にとっても大いなる謎だ。
曾经在蓝色监狱中展现出卓越配合的粉丝们,频繁地对这种关系感到不解,但对于当事人洁来说,这也是一个巨大的谜团。
心当たりはない。一切ない。 没有头绪。完全没有。
思い返してみればU二〇戦後に凛から宣戦布告を受けたことが転機といえば転機だったかもしれないが、しかしその後も今の様に会話の一切が儘ならない状態というわけではなかった。
回想起来,或许在 U-20 战后收到凛的宣战布告是一个转折点,但之后也并非像现在这样完全无法进行对话。
互いにブルーロックを出てプロ選手として別々の国に拠点を置き、疎遠になっている間にいつのまにか、というのが潔の認識である。
彼此离开 Blue Lock,作为职业选手在不同的国家建立据点,逐渐疏远,不知不觉间,这就是洁的认知。
流石に隣に座るようなことにはならずほっとしつつ、潔は先に注文されていたビールをやけくそ気味に呷る。独特の苦味が喉を滑り落ちていく。
幸好没有坐到旁边,洁松了口气,同时带着几分自暴自弃地喝起先前点好的啤酒。独特的苦味滑过喉咙。
やろうぜブルーロック同窓会、という趣旨で催された飲み会だったので、そこに凛がいるのは決して不自然なことではない。ないのだが、人をあまり寄せ付けない凛がまさか頭数に入っているとは思わなかった。
这是一场以“来吧,蓝色监狱同学会”为主题的聚会,所以凛在场并不奇怪。不过,凛平时不太与人亲近,没想到他也会参加。
潔はプロになって以降、凛については時折蜂楽から噂を聞くのみだったので知らなかったが、飲み会に参加する程度には丸くなっていたということなのかもしれない。気軽に参加の返事をした身としては痛恨の極みである。
洁成为职业选手后,关于凛的消息只是偶尔从蜂乐那里听到,所以并不清楚。或许凛已经变得圆滑到可以轻松参加聚会了吧。对于轻易答应参加的我来说,真是悔恨至极。
せめて返事をする前、同窓会の誘いを持ち掛けられた時点で誰が来るのかくらい聞いておくべきだった。自分が先であれば凛が参加したとは思えないので、恐らく凛の方が先に蜂楽に返事をしていたのだろう。
至少在回复邀请之前,应该问清楚谁会来。如果是我先回复,就不会想到凛会参加,恐怕是凛先回复了蜂乐。
思わず溜息をつくと、隣の千切がどうしたどうした、と肩を組んできた。
不禁叹了口气,旁边的千切凑过来,搭着肩膀问:“怎么了怎么了?”
「辛気臭いな、どうした潔」 “一脸苦相啊,洁,怎么了?”
「あー、うん、まあちょっと…」 “啊,嗯,那个,稍微有点……”
言葉を濁しつつ、ちらりと凛に目を向ける。 含糊其辞地,瞥了一眼凛。
千切は目を瞬かせて首を傾げた。 千切眨了眨眼,歪着头。
「…へぇ。例の噂、マジだったわけ。監獄にいたときはそんなことなかっただろ、ガセだと思ってた。何がどうしてそんな感じになってんだよ?」
「…哦。那个传闻,原来是真的啊。在监狱的时候可没这种事,我还以为是假的。到底是怎么变成那样的?」
「俺だってわかんねーよ…」 「我也不知道啊…」
「ふーん…」 「嗯…」
潔はぐったりと項垂れる。 洁无力地垂下了头。
千切はそんな潔と少し離れたところにいる凛とを交互に見比べる。しばらく考え込んだ後、一転してからりと笑顔を浮かべ、空になっていた潔のジョッキに酒を注いだ。注ぐ手つきは慣れたもので、白い泡がジョッキの縁ギリギリで停止する。
千切来回打量着稍远处的凛和洁。沉思片刻后,他忽然展颜一笑,拿起空着的洁的酒杯倒满了酒。倒酒的动作娴熟,白色的泡沫恰好停在杯沿。
「ま、いいか。この面子で集まるチャンスなんてそうそうねーんだし、あんまり気にすんなよ。ほら飲め飲め」
「嘛,算了。能凑齐我们这帮人的机会也不多,别太在意了。来,喝吧喝吧」
「そーだな…うん、そーする」 「是啊……嗯,就这么办吧」
顔を上げた潔は若干虚ろな目つきをしながらジョッキを掴み、追加のビールをぐびぐびと一気に呷る。
抬起头的洁,眼神略显空洞,抓起酒杯,咕咚咕咚一口气喝下追加的啤酒。
その飲みっぷりを見届けた千切が、いいぞその調子だ、よしよししてやるよ、と潔の丸い頭を強引に手元に引き寄せてぐりぐりと撫でた。潔は少し懐かしい気持ちになった。
千切看着他这副喝法,满意地说道:“好样的,就这样继续,不错不错。”说着,强行把洁那圆圆的脑袋拉到手边,用力揉了揉。洁感到一丝怀念。
首の据わりが悪い。頭がぐらぐらする。 脖子不太舒服。头摇摇晃晃的。
目の前のテーブルには酒がある。透明な液体で満たされたロックグラスだ。
眼前的桌上摆着一杯酒。装满透明液体的洛克杯。
これジンかなんかだっけ、俺が頼んだかどうかも覚えてねーな、まあ酒ならなんでもいいか。そんな思考で潔がそのグラスに手を伸ばすと、それを阻むものがあった。
这是琴酒还是什么来着,我点没点都不记得了,反正只要是酒就行吧。带着这样的想法,洁伸手去拿那杯酒,却被什么东西挡住了。
「…人のもんとってんじゃねーよ」 「…别拿别人的东西啊」
相変わらず冷え冷えとした表情の凛が、潔の手を掴んでいた。
凛依旧是一副冷冰冰的表情,紧紧抓住了洁的手。
適当に移動を繰り返すうちにいつの間にか隣席になっていたらしい。珍しいこともあるものだ。潔の方はともかく凛がそれに甘んじるとは。
在随意地移动过程中,不知何时竟然变成了邻座。真是难得一见的事情。洁暂且不论,凛居然对此甘之如饴。
ちなみに最初に隣にいた筈の千切は少し離れた席で國神と玲王の首根っこを両脇に抱えて爆笑していた。掲げた右手に一升瓶を掴んでいる。楽しそうだ。
顺便一提,原本应该坐在旁边的千切,却在稍远的座位上,将国神和玲王的脖子夹在两腋下,放声大笑。他高举的右手还握着一升瓶。看起来很开心。
「あー、凛だー」 「啊,是凛啊——」
潔はへらりと笑う。 洁轻松地笑了。
こうして正面から凛の顔を捉えるのは随分と久しぶりだった。折角の機会なのでじろじろと不躾に拝む。
这样正面直视凛的脸,已经是很久没有的事了。难得的机会,便毫不客气地细细打量。
「全然変わんねーのなお前。ところで髪切った?」 「你还是一点都没变啊。话说,你剪头发了吗?」
「髪くらい切るに決まってんだろ」 「当然会剪头发啊」
凛はすげなく答える。 凛毫不犹豫地回答。
その様子はまるきり平常であるように見えた。潔の手首を掴んだままであることと、その耳の赤さを除けば。
那样子看起来完全和平常无异。除了依然抓着洁的手腕,以及那耳尖的绯红。
よく見れば目じりも僅かに赤らんでいる。それなりに酒が入っているのだろう。この手の熱さもそういうことか、と潔は納得した。
仔细一看,眼角也微微泛红。大概是喝了不少酒吧。洁心想,这手的温度也是因为这个吧,于是他释然了。
「なー、なんで俺のこと避けんの」 「呐,为什么躲着我啊」
「…別に」 「…没什么」
「うっそだぁ。俺についてのインタビュー拒否するし、たまになんかのパーティで出席被っても絶対顔合わせねーし。あと、冴との飲みで俺がいるときだけ同席拒否ってスルーしてんの、知ってんだからな」
「骗人吧。你连关于我的采访都拒绝,偶尔参加什么派对也绝对不露面。还有,和冴喝酒时只有我在场才拒绝同席,这些我都知道的」
「…」
「おれ、お前になんかした?」 「我,对你做了什么吗?」
いい加減煩わしくて切り込む。 不耐烦地切入话题。
凛の目が揺れて、どろりと濁った。掴んでいた手をパッと離し、ロックグラスを呷る。その後、据わった目つきで吹っ切れたように口を開いた。
凛的眼神动摇,变得浑浊。突然松开抓住的手,拿起洛克杯喝了一口。随后,用坚定的眼神,像是豁出去般开口。
「…何もしてねーよ、別に。俺がお前のことを反吐が出るほど嫌いってだけだ。お前の顔を見るだけでムカついて吐き気がする。お前の名前を聞くだけでその能天気な面が頭に浮かぶ。それだけで最悪な気分にさせられる。だから顔も見たくねーし名前も聞きたくねぇ。直接顔合わせて話すなんて論外だろ。それだけだ」
「…什么也没做,真的。只是我对你厌恶至极。看到你的脸就恶心得想吐。听到你的名字,那张无忧无虑的脸就会浮现在脑海。光是这样就让我心情糟透了。所以不想看到你的脸,也不想听到你的名字。直接见面说话更是想都别想。仅此而已。」
「ふーん。それって、ブルーロックにいたときから?」
「嗯。那是从在 Blue Lock 的时候就开始的吗?」
「…それは。いつからかなんて、俺も覚えてねぇ」 「…那个啊。从什么时候开始什么的,我也不记得了」
声の揺らぎに嘘だな、と直感する。 声音的动摇让人直觉那是谎言。
コイツは嘘をついている。 这家伙在撒谎。
なにかきっかけはあったのだろう。しかし、それは少なくともブルーロックにいた時点での話ではないらしい。それ以降のなにかなのだ。
一定有什么契机吧。但那似乎至少不是在 Blue Lock 时期的事情。是那之后发生的什么。
考えを巡らせながら、潔はおざなりに相槌を打った。
思考着,洁随意地附和了一声。
「へぇ」 「哦」
「わかったらさっさと俺の視界から消えろ。うぜぇ」 「知道了就赶紧从我视线里消失。烦死了」
揺らぎが消え、凛の目に精彩が戻る。 摇曳消失,凛的眼中恢复了光彩。
射貫くような鋭い眼差しは、かつてのブルーロックで飽きるほど見慣れたそれと何一つ変わらないように見えた。しかし、その奥にはぐらぐらと煮え滾るような情念が潜んでいる。
那锐利如箭的目光,仿佛与曾经在 Blue Lock 中司空见惯的毫无二致。然而,其深处却潜藏着翻滚沸腾的情感。
潔はその目を正面から見つめ返して言った。 洁从正面迎上那目光,开口说道。
「なぁ。おれ、来季お前んとこのリーグのクラブに移る予定なんだけど」
「喂,我下赛季打算转会到你所在的联赛俱乐部。」
「…は、」 「…是、」
凛の目が、零れ落ちそうなほど見開かれる。 凛的眼睛,几乎要瞪得掉出来。
その瞳に様々な感情がマーブル模様に渦巻いて混沌を成す。
那双眼中,各种情感如大理石纹般交织成混沌。
「やめといたほうがいい?」 「还是放弃比较好吧?」
「……クソが。俺がやめろっつったらやめんのか? んなぬりぃ真似、てめぇがするわけねーだろ。死ね。殺す。殺す。殺す…! 絶対に、俺が、」
「……混蛋。我说了让你停手,你会停吗?你他妈的不会做那种事吧。去死。杀了你。杀了你。杀了你…!我绝对要,」
言葉がぶつりと途切れる。 话语戛然而止。
凛の頭はそこでテーブルに沈んだ。ついに限界が来たらしい。むにゃむにゃとなにか呟いているが、その言葉はもはや意味を持っていなかった。
凛的头就这样沉到了桌子上。似乎终于到了极限。他咕哝着什么,但那些话已经失去了意义。
その様に潔はケタケタと笑う。いつの間にか向かいに来ていた蜂楽も、同じように腹を抱えて爆笑していた。
洁见状哈哈大笑。不知何时来到对面的蜂乐也抱着肚子爆笑起来。
笑いが収まったところで、潔はしばらく考える。 笑声平息后,洁沉思了一会儿。
健やかな寝息を立てる凛や、相変わらず笑い転げている蜂楽、吐きそうな顔で口元を抑える國神といった景色を尻目に、考えて、考えて、そして最終的に思考を放棄した。
凛安稳的呼吸声,蜂乐依旧笑得打滚,国神则是一脸要吐的样子捂着嘴,这些景象都被抛在脑后,思考着,思考着,最终放弃了思考。
まあ、いいか。 嘛,算了。
サッカーが出来るなら、なんでも。 只要能踢足球,什么都行。
凛とヤれんの楽しみだなぁ、と朗らかな笑みを浮かべて潔は目の前のグラスに残っていた酒を飲み干し、そして凛の隣に頭を沈めた。
凛和亚伦的乐趣啊,洁带着明朗的笑容,将眼前杯中剩下的酒一饮而尽,然后将头靠在了凛的身旁。