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糸師凛のほえほえ大作戦/ふあか的小说

糸師凛のほえほえ大作戦 糸师凛的汪汪大作战

20,606字41分钟

あらすじ 概要
 潔に絶賛片想い中の糸師凛。友人としても恋人候補(仮)としても良好な関係を築いていると思っていた。しかしある日、偉大なるお兄様にその自分本意な付き合いを咎められてしまう。これを機に相手のことをちゃんと考えることを決意した凛だったが、潔の好きなタイプが自分とは正反対であることを知ってしまい──?!
洁正在热烈单恋着糸师凛。他原本以为自己与凛无论是作为朋友还是潜在的恋人,都建立了良好的关系。然而某天,他伟大的哥哥却指责他这段并非出于真心的交往。借此机会,凛决心要认真考虑对方的事情,却意外得知洁喜欢的类型与自己完全相反——?!

頭ぽやぽや凛ちゃんによる世紀の大作戦が今、始まる!
头脑有些迷糊的凛,即将展开一场世纪大作战!


※ギャグ寄り ※偏向搞笑
※凛ちゃんがピュア&乙女 ※凛酱纯真且少女
※つまりキャラ崩壊 ※也就是说角色崩坏
※糸師凛がコミュ力ワーストの実力を遺憾なく発揮しております
※糸师凛毫无保留地发挥了他沟通能力最差的实力。

※甘々
※蛇足も蛇足。序盤から何を書いているのか分からなくなって字数が膨大になりました
※多余的话也是多余的。从一开始就不知道自己在写什么,导致字数变得非常庞大。

※何日かにかけて書いているので、おかしいところ、矛盾点あるかもしれませんが、どうかなにも考えず読んでください。
※因为分几天写,可能会有奇怪的地方或矛盾点,请不要多想,直接阅读就好。


※読後の苦情は受け付けません ※阅读后的投诉不予受理

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 ──ある日、糸師凛は悩んでいた。 ──某天,糸师凛陷入了烦恼。
普段なら決して来ることのないであろう、人通りの多い大都会の一角。憂い気な横顔を目の当たりにして黄色い声をあげる女性たちを尻目に、堂々とした出で立ちのまま、彼はただ一点を見つめている。これは片想いというにはいささか拗れすぎた感情を向けているあの男に、一矢報いてやるための作戦なのだ。
平日里绝不会来到的、人潮涌动的大都市的一角。他无视那些看到他忧郁侧脸而发出惊叹声的女士们,依旧保持着威严的姿态,只是凝视着一点。这是为了向那个将过于扭曲的情感倾注于单相思中的男人,予以反击的策略。

…そう、糸師凛は悩んでいた。目の前に並ぶスキンケア用品の中で、もっとも自身の肌をやわやわのもちもちに戻すことが出来る品は、一体どれなのかと──
…没错,糸师凛在烦恼。眼前排列的护肤品中,究竟哪一款能最有效地让自己的肌肤恢复柔软弹润呢——

糸師凛のほえほえ大作戦 糸师凛的汪汪大作战


ことの発端は数週間前。この作戦のターゲット、ひいては片想いの相手である潔世一が、近々凛の住むフランスに遊びに行くと連絡してきた。これまでも潔がこちらに遊びに来ることは少なくなかったので、凛は今回もすっかり行きつけになってしまった店をまわり、凛が気になっていた映画を観に行くつもりだった。そのあとは、凛のオススメの飲食店でご飯を食べるなどして、互いの近況やサッカーについて話すことが出来れば、凛はいつもそれで満足なのだ。
事情的起因在几周前。这次作战的目标,同时也是凛单恋的对象洁世一,联系说近期要来凛居住的法国游玩。虽然洁之前也常来这里玩,凛本打算这次也带他去自己常去的店转转,然后去看凛感兴趣的电影。之后,在凛推荐的餐馆吃饭,聊聊彼此的近况和足球,凛通常对这样的安排感到满足。

ただ、このことに一人苦言を呈した人物がいた。それが、凛の実の兄、糸師冴である。
不过,有一个人对此提出了异议。那就是凛的亲哥哥,糸师冴。

彼は、持ち前の観察眼で弟の初々しくもどかしい初恋にいち早く勘づき、密かに応援し続けていた。潔との接触を積極的に図り、激重感情持ちの筆頭である監獄メンバーを牽制し、厄介なスポンサーを追い払い、さらに面倒なファンには盛大な匂わせ…否、嗅がせをしてわからせる。
他凭借天生的观察力,很快察觉到弟弟那青涩而笨拙的初恋,并暗中持续支持。他积极寻求与洁的接触,牵制着情感极为沉重的监狱成员,赶走麻烦的赞助商,对于麻烦的粉丝则大肆渲染...不,是让他们察觉到。

すっかり成人を迎えた筈の弟に対する応援の仕方としては甚だ方向性が違う気もするが、たった一人の可愛い弟のためだ。冴は冴なりに気を遣い、持てる力を使って面倒な役回りを引き受けた。彼も大概ブラコンである。
虽然对于已经成年的弟弟来说,这种支持方式似乎方向性有些不对,但为了唯一的可爱弟弟,冴也尽力照顾,用尽全力承担起麻烦的角色。他也是个相当的重度兄控。

しかし、そんな兄の心弟知らず。やっと、潔とある程度打ち解けたという頃、凛に潔への恋心を疑われたときには、流石の日本の至宝も発狂しかけた。ナイトスノウの再来もかくや、それを間一髪と制止した潔に、冴は今も感謝している。まあ、あとはさっさとくっついてくれさえすれば、何も言うことはない。
然而,弟弟并不了解哥哥的这份心意。当终于与洁关系有所融洽时,却被凛怀疑对洁有恋慕之情,连日本的至宝也差点发狂。幸亏洁及时制止了这场如同“夜雪”再来的风波,冴至今仍心存感激。总之,只要他们能尽快在一起,他也没什么可说的了。

話が逸れたが、つまりは『凛潔早くくっつけ』精神のお兄様より、凛は悪意のないありがたいお言葉を賜ったのだ。「お前、そろそろ潔に飽きられるぞ」と。
话题跑偏了,但总之,凛从那位秉持“凛洁快点在一起”精神的哥哥那里,得到了一句没有恶意却令人感激的话。“你啊,差不多该对洁感到厌倦了吧。”

「………………は?」 “………………哈?”
「お前ら、まだ付き合ってないんだろ。」 “你们俩,还没开始交往吧。”
「…………………は、え」 「…………………啊,什么?」

言われた凛は案の定、見事なぽかん顔を晒した。当然である。兄に自分の恋心に気付かれていたからというのもそうだが、凛は潔と自分との交流が完全に自分本意になっていることに気づいていなかったのだから。
听到这话的凛果然露出了惊讶的表情。这很正常。一方面是因为哥哥察觉到了自己的恋慕之情,另一方面,凛并没有意识到自己和洁的交往已经完全违背了自己的本意。

凛は潔と二人きりで交流するときでも、基本的に潔の要望をわざわざ尋ねたりはしない。潔はどこへ行っても楽しそうにするし、何を食べても美味しそうにする。おそらく誰に対しても同じような顔を晒すのだろうが、それでも凛は自分の領域のなかで馬鹿みたいにはしゃぐ潔といるだけで、心がぽかぽかしてしまう呪いにかけられていたのだ。こればっかりは仕方がない。
即使在和洁单独相处的时候,凛基本上也不会特意询问洁的愿望。无论去哪里,洁总是显得很开心;无论吃什么,洁总是显得很美味。或许对谁都是同样的表情,但即便如此,只要看到在自己领域中像傻瓜一样欢闹的洁,凛的心就会被一种温暖的感觉所笼罩,仿佛中了咒语一般。这一点,实在是无可奈何。

要するに、凛は相手(好きな子)に合わせてあげるというコミュニケーションにおける基礎中の基礎がごっそり抜け落ちた状態で、潔とデート(仮)をしていたのだ。
简而言之,凛在与洁(假)约会时,完全忽略了沟通中最基本的要素,即迎合对方(喜欢的人)。

それでは、続くものも続かない。潔がいくらお人好しで面倒見が良くとも、限界はあるはずだ。もし、何かのきっかけで、潔がカウンターを食らわせたりなんてしたら、順調に交流を深めていたと思っている凛はひとたまりもないだろう。最悪の場合、ただでさえ稀薄な人間関係が、もはや無に等しいものになってしまうかもしれない。
这样一来,关系自然无法持续。即使洁再怎么善良、照顾周到,也总有极限。如果因为某个契机,洁反击了凛,那么自以为交流顺利的凛恐怕会不堪一击。最糟糕的情况下,原本就稀薄的人际关系可能会变得几乎等于无。

まあ、最後の一文はともかくとして、凛はそんな悲劇を避けるために、兄の助言を踏まえ、デート(仮)に備えて好きな子の好きなものを探ることにした。
不过,撇开最后一句话不谈,为了避免这样的悲剧,凛决定听取哥哥的建议,为下一次(假)约会做准备,探寻喜欢的人的喜好。

まずは甘いもの。特にきんつばが好きらしい。これは直接聞いたわけではないが、ファンの間ではかなり有名な話なので、凛もすでに知っている情報だった。
首先是甜食。特别是喜欢金锷烧。这并不是直接听说的,但在粉丝之间是相当有名的故事,凛也已经知道这个信息了。

しかし、ここはフランス。海外ではあまり有名でないきんつばは、そう簡単に手には入らない。おそらく、ドイツでも入手状況はそう変わらないため、なおさら、潔にプレゼントしてやれば両手もろてをあげて喜び、感謝を示すことだろう。もしかしたら「凛大好き♡」と潔の方から好意を告げてくれるきっかけになるかもしれない。もしそうなれば、それはそれで、やぶさかではないのだが、凛は潔と恋人になりたい感じで彼のことが好きなのだ。ただきんつばをくれる友人、というなんとも言えないポジションに収まるつもりは毛頭ないし、ペットのように餌付けをするつもりもない。サッカーを続ける為にも、そういう新しい扉は、このドロドロでピュアピュアな想いが報われてから開けるのでも、きっと遅くはないだろう。
然而,这里是法国。在海外不太有名的金锷烧,并不容易轻易入手。恐怕在德国情况也差不多,因此如果能慷慨地送给她,她一定会双手合十地高兴并表示感谢。或许这还能成为洁主动表达好意的机会。如果真是那样,那也不错,但凛是喜欢洁并希望成为他恋人的人。她并不打算只停留在送金锷烧的朋友这种说不清道不明的位置上,也没有打算像养宠物一样去讨好他。为了继续踢足球,那些新的大门,等到这份纯粹的感情得到回报后再打开,也一定不会太迟。

とにかく、きんつばに関しては、オフシーズンに日本で調達するか、親に頼んで送ってもらうかのどちらかにするとしても、それだけでは潔を振り向かせる材料としては全く足りないと凛は思っている。
总之,关于金锷烧,要么在休赛期在日本采购,要么请父母寄过来,但凛认为仅凭这些是远远不足以让洁回心转意的。

そうなると次に思い付くのは、趣味だ。凛の記憶の限りでは、潔はサッカーとノエル・ノアの話以外、特別熱を持って主張してきたことはない(ちなみに、サッカーは趣味程度のものではないので好きなものからは除外する)。そんなやつに趣味らしい趣味などあるのだろうか。そう思いながらも、インターネットを漁っていると、数年前のブルーロックTVのインタビュー動画の切り抜きが流れてきた。その時、凛はピタリと手を止める。
这样一来,接下来想到的就是兴趣了。根据凛的记忆,洁除了足球和诺埃尔·诺亚的话题之外,并没有特别热衷于主张过什么(顺便说一下,足球不仅仅是兴趣,所以不包括在喜欢的东西里)。那样的家伙会有像样的兴趣吗?尽管这么想,但在浏览互联网时,凛看到了几年前蓝锁 TV 采访视频的剪辑片段。那时,凛突然停下了手。

これには、一応覚えがあった。 对此,他隐约有些印象。
自分達がまだブルーロックにいた頃、くだらない質問に、定期的に答えさせられていたことがある。おそらく、これはその一問一答とやらの潔バージョンといったところだろう。そして確か趣味に関する質問もされたはずだ。
在他们还在蓝锁的时候,曾经定期被迫回答一些无聊的问题。这大概就是那种一问一答的洁版本吧。而且确实应该也被问到了关于兴趣的问题。

つまりこれを観れば、潔の好きなものを知る、という目的は無事果たされることになる。
也就是说,通过观看这个,了解洁喜欢的东西这一目的能够顺利达成。

しかし、問題はそこではないのだ。凛が手を止めたのは、ここで謎の記憶力の良さを発揮していたからであった。そう、記憶が正しければ確かあったはずだ。
然而,问题并不在于此。凛之所以停下手来,是因为在这里展现了谜一般的记忆力。没错,如果记忆无误的话,确实有过这样的提问——

「好きなタイプは?」という質問が── “喜欢的类型是?”

凛自身が聞かれた時は、くだらなすぎてサブイボがたち、同時に浮かんできた潔の顔を必死に散らしながら、全力で記者を睨み付けた覚えがある。その顔が凶悪すぎた結果、インタビュー動画でその場面はカットされ、世の女性たちからブーイングがあったそうなのだが、そんなどうでもいいことは凛は知らない。知りたくもない。
凛在被问到时,觉得问题太无聊以至于起了鸡皮疙瘩,同时拼命地驱散浮现在脑海中的洁的面孔,全力瞪着记者。因为那表情太过凶狠,结果在采访视频中那个场面被剪掉了,听说世间女性对此发出了嘘声,但凛并不知道这些,也不想知道。

の、だが、好きな相手のことであれば当然話は変わってくる。
但是,如果是关于喜欢的人,情况当然就不同了。

…気になる。 …很在意。
好きな人の、好きなタイプ。 喜欢的人的喜欢的类型。

ちなみにこの動画が出た当初、すでに潔への恋心が芽生えていた凛だが、殺意や嫉妬、その他諸々でぐちゃぐちゃドロドロだったはずの心の中に、突如現れたピンク色の感情に困惑していたため、それが恋であるとは絶っっっっ対に認められなかった。なので、フランスとドイツで棟が別れてしまい、逢いたくて逢いたくてふるえていても、凛はこの動画を観ることは出来ていない。
顺便一提,在这个视频刚发布时,凛已经对洁产生了恋慕之情,但原本应该因为杀意、嫉妒和其他种种情绪而变得一团糟的内心,突然出现的粉红色感情让她感到困惑,因此她绝对无法承认那是恋爱。所以,法国和德国的剧情线分开了,尽管凛渴望相见,甚至颤抖,但她从未看过这个视频。

しかし、あのよくまわる口を塞いでやりたい衝動も、自分以外を見る目を潰してしまいたい激情も何もかも、恋という感情に由来するものだと理解した今、どうしても知りたいと思ってしまう。潔の好きなタイプを。
然而,现在她理解了那种想要堵住他那张能言善辩的嘴的冲动,以及那种想要毁掉他看向其他人的眼睛的激情,都是源于恋爱的感情。因此,她无论如何都想知道洁的喜欢的类型。

もしその好きなタイプがとても具体的なものであれば、他のブルーロックメンツが大いに騒ぎ立て、きっと内容も凛の耳に届く。そうなっていないのだから、どうせ平々凡々とした回答だったのだろう。
如果那个喜欢的类型非常具体的话,其他 Blue Lock 成员肯定会大肆喧哗,内容也一定会传到凛的耳朵里。既然没有发生这种情况,那么答案大概也就是平平无奇的吧。

凛は、言い表し難い不安を無視して動画の再生ボタンを押した。
凛无视了难以言表的不安,按下了视频的播放按钮。

──── 请提供具体的日语原文,以便进行翻译
動画が終わり、凛はスマホをベッドに投げ捨てた。 视频结束后,凛将手机扔到了床上。
結果として、まず潔の趣味は散歩であることが分かった。確かに、目的地に向かって一緒に街を歩いている時も、キョロキョロと景色を見たり、フランスや店の雰囲気を楽しんでいたりしていたので、それに関しては納得である。
结果发现,洁的兴趣是散步。确实,当我们一起朝着目的地走在街上时,他也会四处张望欣赏景色,或是享受法国和店铺的氛围,这一点是可以理解的。

しかし、問題は、やはり潔の好きなタイプだ。 然而,问题仍然在于洁喜欢的类型。
インタビュー内で明かされた好きなタイプは、──よく笑う人、笑顔が素敵な人、だった。
在采访中透露出的他喜欢的类型是——经常笑的人,笑容很美的人。

…まぁ、そんなところだろうな。凛は思った。 …嗯,大概就是这样吧。凛想道。
そもそも潔の恋愛対象は女である可能性が高い。むしろ、自分より背が低くて華奢な人だとか、胸の大きい人のようなどう頑張っても覆せない、身体的特徴でなかっただけ、幾分かましだといえる。
毕竟洁的恋爱对象很可能是女性。与其说是比自己矮小纤细的人,或是胸部丰满的人那种无论怎么努力都无法掩盖的身体特征,不如说这是可以接受的。

世間一般的に笑顔が素敵と言われているであろう人間が、潔の周りに数えきれないほどいるという事実を除けば、凛としてはギリギリ許せる範囲の回答だった。
除了洁周围有无数被世人认为笑容美好的人这一事实外,对凛来说,这是勉强能接受的回答。

とはいえ、自分がその潔の好きなタイプに当てはまるかと聞かれれば、答えはNoである。
即便如此,如果问我是否符合他喜欢的类型,答案是否定的。

ヒローインタビュー、雑誌メディア等に出演する際に愛想や笑顔を求められることはあるが、それはサッカーをプレーするのに必要はないし、なにより、兄を規範として過ごしている生粋のブラコン凛にとって、ヘラヘラした面持ちで人に媚びるなど、反吐が出る行為だとすら思っていた。
在参加英雄访谈、杂志媒体等节目时,有时会被要求展现亲切和笑容,但这对于踢足球来说并不必要,而且,对于以哥哥为榜样、纯粹的兄控凛来说,那种装模作样、讨好他人的行为,甚至觉得令人作呕。

また、糸師凛という人間を知っている者であれば、1000人中999人が揃って口にすることだろう。「そもそも笑うという概念が彼にあるのか」と。もちろん、凛も人間であるからには口角を上げるための表情筋が存在しているはずなのだが、そう言わしめるほどに、糸師凛の笑顔というのは貴重なものなのだ。「あいつは案外分かりやすいぞ」などと真顔で語れるのは、1000分の1の存在である糸師冴その人くらいだろう。
如果了解糸师凛这个人,那么一千个人中可能有九百九十九个人都会提到:“他到底有没有笑这个概念?”当然,既然凛也是人类,他应该有能够上扬嘴角的脸部肌肉,但正因为如此,糸师凛的笑容显得非常珍贵。能够一脸认真地说“那家伙其实挺好懂的”的人,恐怕只有千分之一的存在——糸师冴本人了。

つまり、自他共に笑顔という概念を消し去っているという認識がある糸師凛という男は、現段階では全くといっていいほどに、潔の好きなタイプには当てはまらない。
也就是说,那个名叫糸师凛的男人,有着消除自己和他人笑容概念的认识,现阶段可以说完全不符合洁喜欢的类型。

これは由々しき事態である。 这是一个严重的事态。

カレンダーに目を向けると、次に潔と会うと約束した日は、もう2週間後に迫っている。それまでに、多少なりとも潔の好みに近づき、潔に合わせたデート(仮)プランを考えなければいけない。
看向日历,与洁约定下次见面的日子已经迫在眉睫,只剩下两周时间。在那之前,必须多少接近洁的喜好,制定出符合洁的约会(暂定)计划。

だがしかし、たった1人の人間のために、自分を変える行為に抵抗がないといえば嘘になる。潔世一という男を手に入れるためとはいえ、他人に媚びるという凛の中で許容し難い行いを実行しなければいけないのだ。一時離別していたとしても、長年染み付いた兄への尊敬の念と、そこから来る媚びというものへの抵抗が、ここまで自分を悩ませるときが来るとは、流石の凛も想像していなかった。というか、普通はこうはならない。
但即便如此,如果说为了一个人而改变自己没有丝毫抵触,那是在撒谎。虽说为了得到洁世一这个男人,但不得不执行在凛看来难以接受的讨好他人的行为。即使暂时分开了,多年来对哥哥的尊敬之情以及对由此而来的讨好行为的抵触,竟然会让自己如此烦恼,连凛自己也没想到。或者说,正常情况下不会这样。

凛は目を向けたままだったカレンダーを、これでもかと睨み付けた。当然、なにも変化はなかった。
凛一直盯着日历,狠狠地瞪着它,当然,什么变化也没有。

しばらくそうしていると、未だベッドの上でうつ伏せになっていたスマホが、メッセージの受信を知らせた。
过了一会儿,还躺在床上的手机收到了一条消息。

先程までの自分の思考から、潔を思い浮かべたが、メッセージの送り主は母親だった。
刚才从自己的思考中浮现出洁的身影,但消息的发送者是母亲。

『今日、あなた達の部屋を掃除していたら、小さい頃のアルバムを見つけました☺️今年の正月は帰って来れないって言ってたけど、親戚にこのアルバム見せてもいい?』
“今天在打扫你们的房间时,找到了小时候的相册☺️你说过今年过年不能回来,我可以把这个相册给亲戚们看看吗?”

「…小さい頃の、アルバム…」 “…小时候的,相册…”

正直、親戚なんて年に数回顔を合わせる人達程度の認識のため、アルバムを見られようが、思い出を語られようが好きにすればいいと思うが、この時、凛はひらめいてしまった。幼少期の自分は、今より表情豊かだったのではないか…?と。
老实说,因为对亲戚的认知不过是每年见几次面的人,所以就算被看相册,被谈论回忆,随他们喜欢就好。但这时,凛突然想到:幼年时期的自己,是不是比现在表情更丰富呢…?

凛はすぐさまトーク画面を開くと母親にメッセージを返した。
凛立刻打开聊天界面,给母亲回复了消息。

『いい。でもちょっとその中の写真何枚か送ってほしい。出来れば笑ってるやつ』
好的。不过希望能发几张里面的照片给我,最好是笑着的那些。

了承の返事が来てから少しすると、数枚の画像が送られてきた。そこには、兄の横でサッカーボールを追いかけて笑う凛、バースデーケーキを前に笑顔でプレゼントを開ける凛、ユニフォームを着て誇らしげに微笑む凛と、ソーダアイスを地面に落とし半べそをかいている凛が写っている。
收到同意的回复后不久,几张照片被发送了过来。照片中,凛在哥哥旁边追逐足球笑着,面前是生日蛋糕,她笑着打开礼物,穿着制服自豪地微笑,还有一张是她把苏打冰掉在地上,噘着嘴。

最後の一枚をなぜ送ってきたのか疑問が残るが、とりあえずありがとうとだけ返信して、凛は3枚の画像をそのまま潔へ転送した。
虽然对最后一张照片为何被发送过来存有疑问,但凛暂时只回复了谢谢,然后将这三张图片直接转发给了洁。

『どうだ』という一言を添えて。 加上一句“怎么样”。

あまりに無愛想だが、これが糸師凛である。許してあげてほしい。
他实在是太过冷淡,但这就是糸师凛。请原谅他。

余談だが、凛のトークアプリの家族を除いた連絡先は3つ。マネージャーと監督、そして潔。その中で凛の方からメッセージを送っているのは実質潔だけなので、これで潔とは最大限のコミュニケーションがとれていると、凛は本気で思っている。
顺便一提,凛的通讯应用中,除了家人之外的联系人有三个:经理、教练和洁。实际上,只有洁是凛主动发消息的,因此凛真心认为,这样就已经和洁进行了最大程度的沟通。

その数分後、既読が付いたかと思うと、潔から返事が来た。
几分钟后,我刚想着已读标记出现了,洁的回复就来了。

『えっなにこれ凛!?すげー可愛いじゃん!』 “哎?这是什么,凛!?太可爱了吧!”
『てか凛の方から急にメッセージ送ってくるとか珍しい。何かあった?』
『话说凛突然发消息过来真是少见。发生什么事了吗?』

文面から伝わってくる程の興奮と純粋な驚き。画面越しの潔はきっと、これでもかとでかいサファイアをとろけさせ、こんな文を送ってきているに違いない。もはや凛には、メッセージの語尾にハートすら付いて見えた。
从文字中能感受到的兴奋和纯粹的惊讶。屏幕那边的洁肯定是在用那颗大大的蓝宝石融化着,毫无疑问是在发送这样的信息。凛的短信末尾甚至都像是附上了心形符号。

そしてこの時、凛は天啓を得た。 就在这时,凛得到了天启。

凛が潔の好みに合わせて変わるのではない。潔が変化した凛に惚れれば良いのだ、と。
凛并不是为了迎合洁的喜好而改变自己。如果洁能爱上改变了的凛,那就好了。

メッセージの反応を見るに、潔には小さい頃の凛が好意的に見えているといって良いだろう。いや、潔は小さい自分にメロメロだとも言えるかもしれない。そう、メロメロなのだ。それならば、道は一つ。今の凛が小さい頃の凛に戻って、潔の前に現れれば良いだけだ。そうすれば、あいつは今の凛にだってメロメロになることは間違いない。
从消息的反应来看,可以说洁对小时候的凛抱有好感。不,或许可以说洁对小时候的自己非常着迷。没错,就是非常着迷。这样的话,方法只有一个。只要现在的凛变回小时候的凛,出现在洁面前就可以了。这样一来,那家伙对现在的凛也一定会非常着迷,这是毫无疑问的。

決して、潔の為に自分を変えるのではない。昔の姿だろうと自分は自分。凛は昔の自分に少し戻るだけで、またそこに勝手に潔が惚れてくるだけなのだ。
绝不是为了洁而改变自己。无论是以前的样子,我还是我。凛只是稍微回到过去的自己,洁又会擅自喜欢上她。

これならば、凛の媚びセンサーに触れることはないので、なんとか実行可能である。
这样的话,就不会触及凛的媚态传感器,总算是可以执行的。

つまりは自分のため。凛は自身のエゴイズムにしたがって、この笑顔が素敵な凛を我がものにするのだと心に誓った。
也就是说为了自己。凛遵从自己的利己主义,在心中发誓要将这个笑容迷人的凛据为己有。

そしてこんなとき、ブラコン凛が頼るのはいつだってかつて自身の規範となっていた冴だった。
而在这种时候,凛所依赖的总是曾经作为自己行为准则的冴。

助言を求めて兄に連絡後、ほどなくしてメッセージに既読がついた。兄にしては珍しいなどと考えていると、『鏡を見ながら口角を上げてみろ』という返信が来た。
向哥哥寻求建议后,不久消息显示已读。心想哥哥这次回复得挺快,结果收到了一条回复:“对着镜子试着上扬嘴角。”

手元に鏡が無かったため、凛はスマホの画面を消して、自分の顔を反射させた。もしやわざわざ確認する必要がある程に、自分の笑顔は醜いのだろうか、とおそるおそる口角を上げてみる。しかし、画面の中の凛は変わらず無表情のままだ。不思議に思いながらも、さらに頬にくっと力を入れてみる。すると、頬骨の辺りに突っ張るような痛みが走った。これは、ヨガを始めたばかりの頃に経験したことがある、筋肉がつったときの痛みだ。
因为手边没有镜子,凛关掉了手机屏幕,利用屏幕反射自己的脸。她小心翼翼地扬起嘴角,心想难道自己的笑容真的那么难看,需要特意确认吗?然而,屏幕中的凛依旧面无表情。她感到奇怪,于是更加用力地收紧脸颊。这时,脸颊骨附近传来一阵刺痛,这是她刚开始练习瑜伽时体验过的肌肉紧绷的疼痛感。

なかなか感じることのないタイプの痛みに、困惑しながら悶絶していると、スマホの画面に冴からの『つったか』という一言が写し出された。
在困惑中苦闷地感受着一种罕见的疼痛时,手机屏幕上突然显示出一行字:“你顶嘴了”。

この時凛の心に湧いたのは兄への純粋な殺意だった。 此时,凛心中涌起的是对哥哥纯粹的杀意。
しかし、感情のままに言葉をぶつけるのではなく、相手と会話をするというスキルを身に付けかけている凛は、いたって冷静に『だったらなんだクソ兄貴』と返事をすることができた。後のメッセージ三往復程は語尾に『殺す』とついていたが、まあ立派な成長であるといえる。
然而,凛并没有任由情绪驱使而说出伤人的话,而是开始掌握与人对话的技巧,她异常冷静地回应道:“那又怎样,混蛋哥哥。”尽管之后的几轮消息中,她的语气词里还带着“杀”字,但可以说,这已经是相当了不起的进步了。

何はともあれ、こうして冴は遠回しに「お前に素敵な笑顔は無理だ」と伝えてきた訳だが、そこは天下の糸師冴。勿論ノープランで弟のSOSに既読を付けたのではない。
总之,凛就这样委婉地传达了“你不可能有迷人的笑容”的意思,但那可是天下闻名的糸师冴。当然,他不会对弟弟的求救信号视而不见,毫无计划。

冴は、一に素敵な笑顔は諦めること。二に、幼少期の凛は確かに今より表情豊かだったが、通常はどちらかというとポケっとしていたという事実を送った。
冴认为,首先不能放弃迷人的笑容。其次,尽管幼年时期的凛确实比现在表情更丰富,但通常来说,她更多的是显得有些呆呆的。

だがしかし、いくら兄の言葉とはいえ、素敵な笑顔を手に入れると心に誓った凛にとって、簡単にそれを諦めるというのは、許されざることである。加えて、幼少期の自分が常に笑顔ではなくポケっとしていたとすれば、凛の作戦はまるまる破綻してしまう。あくまで、潔の好みに…ではなく、たまたまちょっと幼少期に戻っていた凛に、潔が惚れてしまわなければ、なんの意味もないのだ…
然而,尽管是哥哥的话,对于在心中发誓要找回美好笑容的凛来说,轻易放弃这件事是不可原谅的。而且,如果自己幼年时期总是不笑而是呆呆的样子,那么凛的计划就会完全失败。毕竟,这不仅仅是为了迎合洁的喜好,如果洁没有对偶然回到幼年时期的凛产生好感,那么这一切都没有任何意义……

──しかし、そんな凛に対し、冴は三に、潔が凛のことをかわいいと思っているという事実を説いた。
——然而,面对这样的凛,冴却三次向洁透露,他认为凛很可爱。

そうして、先ほどの決意はどこへやら。凛は潔に可愛いの一言をもらい、あわよくば自分と同じ気持ちになってもらうための《ほえほえ大作戦(兄命名)》を開始したのであった──
于是,刚才的决心不知跑哪儿去了。凛干脆地接受了“可爱”的评价,并启动了名为《萌萌大作战(哥哥命名)》的计划,希望能借此让对方与自己产生同样的情感——

冴のアドバイスを加味し、凛が立てた作戦はこうである。
冴的建议被采纳后,凛制定的策略是这样的。

フェーズ1 阶段 1
まず、肌をモチモチにして少しでも見た目に幼さをプラスする。
首先,让肌肤显得饱满,稍微增加一些视觉上的幼嫩感。

これは凛が潔のやわもちな頬っぺたを見て、いつもガキ臭い(意:かわいい)と感じることから得た発想である。本人から時々「もっとちゃんとケアすれば、絶対俺より肌モチモチになるよ」と進言されるからというのもあるが、別に「ちゃんとケアして偉いな~!モチモチだな~凛♡」とか褒めてもらえるかもしれないとは、ほんのちょっとも思っていない。思っていないのだが、まあ褒めたければ別に褒めてもいい。
这是凛看到洁那柔软的脸颊时,总是觉得他像个孩子(意:可爱)而产生的想法。洁有时会建议说:“如果更认真地护理,绝对会比我的皮肤更光滑。”虽然并没有想过会因此得到“护理得真好!皮肤真光滑啊~凛♡”之类的夸奖,但也没关系,如果想要夸奖的话,尽管夸奖就好。

フェーズ2 阶段 2
次に、お兄様のありがたい言葉。たった二言「弟感を活かせ。甘え殺せ。」とアドバイスをもらったので、凛はできる限り猫の本を読んだ。
接下来,哥哥的宝贵建议。只得到了两句话的忠告:“发挥弟弟的感觉,不要撒娇。”因此,凛尽可能地阅读了关于猫的书籍。

なぜ猫なのかというと、単純に、たまに甘えてくる可愛い生き物=猫という謎の固定観念が彼のなかにあったからである。異論は認める。
为什么是猫呢?简单来说,因为他心中有一种谜之固定观念,认为偶尔会撒娇的可爱生物就是猫。我承认有异议。

ただ、サッカーのみで生きてきた凛には、読解力というものが著しくかけていたために、とりあえず恥を捨て、潔にくっつきたい時にくっつくというお勉強するまでもない結論に至った。が、それもきっと立派な作戦である。兄ちゃんは納得したし(激甘)
只是,因为凛一直以来只专注于足球,导致他的阅读理解能力明显不足,所以他决定放下羞耻心,干脆在想要接近的时候就去接近,得出了一个无需学习的简单结论。但那也一定是个了不起的策略。哥哥对此表示认同(非常宽容)。

フェーズ3 阶段 3
そうして作戦には、自分の好きを知ってもらうことが、大切である。
在制定策略时,让别人了解自己的喜好是非常重要的。

それは食べ物や趣味だけではない。潔自身のことを好きなのだと知ってもらい、意識させる。
那不仅仅是关于食物或兴趣的。要让洁自己知道并意识到,他喜欢自己。

その上でフェーズ2とのコンボ技。甘え殺しておねだりすると、あら不思議。潔はでろでろのメロメロで「俺と付き合って…♡…凛」と真っ赤な顔で言うようになるのである───
在这个基础上,结合第二阶段的组合技。当你撒娇并恳求时,真是不可思议。洁会变得黏黏糊糊、完全迷恋上你,满脸通红地说:“和我交往吧…♡…凛”。

といった具合である。 情况就是这样。
…完璧だ。と凛は思った。大前提として、潔は凛を可愛いと思っているのだ。そこに、あの幼少期の凛の要素をプラスすれば、1日と経たず落ちてくるに違いない。凛は無表情のままウキウキと飛行機に飛び乗った。
…完美无缺。凛这样想。首先,洁认为凛很可爱。再加上她幼年时期的那些特质,不用一天,他肯定会沦陷。凛面无表情地兴奋地登上了飞机。


そして、場面は冒頭へと戻る。 然后,场景回到了开头。

昔の自分になるため、とりあえず形から入ることを決めた凛は、地元の隣の県にある某スキンケア用品店を訪れていた。
右を見ても左を見ても女性だらけで、正直浮いているのは確実だが、ひそひそと声を掛けられそうな気配があっても、写真を撮られそうでも、一切気にはならない。お兄様にアドバイスをもらった凛は、もはや無敵状態だった。
无论往右看还是往左看,周围全是女性,说实话自己显得格格不入是肯定的,但即便有人窃窃私语或似乎要拍照,也完全不在意。接受了哥哥建议的凛,已经进入了无敌状态。

そんなとき、腕押し足踏み。誰があの美青年に声をかけるかと彼のまわりに耳をそばだて、牽制し合う店員の中から、一人の女性店員が凛に声をかけた。少し上ずった猫なで声が凛の耳に届く。
那时,推手踏步。在那些竖起耳朵、围绕着那位美青年互相牵制的店员中,一位女性店员向凛搭话了。她略带娇媚的轻柔声音传到了凛的耳中。

「いらっしゃいませぇ。何かお探しでしょうか?」 「欢迎光临。您在找什么吗?」
「……スキンケア用品を。」 「……护肤品。」

女性店員は、上目遣いのままぱしんと手を合わせた。 女店员低垂着眼帘,轻轻地合上了双手。

「なるほどぉ。化粧水などでしょうか。でしたら、この右手側のお品物はいかがでしょう?こちら今季の新作でして、12種類の美容成分が配合されているんですよぉ。全ての成分がオーガニックのものから抽出されているので、お肌が弱い方におすすめさせていただいている商品なんですぅ。…ちなみに、こちらはご自身で使用されるご予定ですか…?」
“原来如此。是化妆水之类的吗?那么,这右手边的商品如何呢?这是本季的新品,含有 12 种美容成分哦。所有成分都是从有机物中提取的,所以是推荐给肌肤较弱的人使用的商品。……顺便问一下,您是自己使用吗?”

「ああ。はい。」 “啊,是的。”
「そうなんですね…!…お客様、大変お肌がお綺麗ですが、もしかしてご愛用のスキンケア用品などをお探しでしたかぁ?よろしければそちらのブースへご案内もできますよ。」
「原来如此…!…客人,您的肌肤真是非常美丽,请问您是否在寻找您常用的护肤品之类的呢?如果需要的话,我可以带您去那边的展位。」

「いや。いいです。この、肌が若返る?ってやつこれであってますか?」
「不用了。谢谢。这个,是能让肌肤恢复年轻的吗?我找的是这个,对吗?」

「えっあ、はい…!そちらの商品でお間違いございませんが…」
“啊,是的……!您选的商品没有错……”

凛はそれを聞くと、自信がずっと睨んでいた商品を手に取りレジへと足を向けた。スキンケアの新商品など、微塵も興味はない。〖赤ちゃんにも安心!!〗のキャッチコピーがオーガニック商品であることに由来していたことが確定した今、凛は迷うことなく〖まるで若返り…!?肌年齢-5〗とのキャッチコピーが目を惹く商品を手に取った。
凛听到那话后,便拿起一直盯着的商品,走向收银台。对那些护肤新商品,她丝毫没有兴趣。既然已经确定“对婴儿也安心!!”的广告语源自有机商品,凛便毫不犹豫地拿起了一款吸引眼球的商品,其广告语是“仿佛重返青春…!?肌肤年龄-5”。

しかしまだ話し途中だった女性店員が、それを逃がすまいと凛の顔を覗き込んだ。
但那位话还没说完的女店员,似乎不想让她逃走,探头窥视着凛的脸。

「ぉお、お客様っ…!実は!そちらの商品をお買い求めでしたら、こちらのお品物との併用もおすすめなんですよぉ。モデルさんでしたら、お化粧もされますでしょうし…」
「哦,客人…!其实!如果您购买了那边的商品,我们也推荐您搭配使用这款产品哦。如果是模特的话,应该也会化妆吧…」

「……」 “……”
「あの、こちらのコンシーラーなども…っあ、イラナイデスネ。えとぉ…」
“那个,这款遮瑕膏之类的也……啊,不感兴趣呢。呃……”

「…」
「あっ!こ、こちらの新色グロスなどはご入り用ではないですか?!思わずキスしたくなるぷるつや唇を作り出せると今大変人気な商品なんですけど…」
「啊!这款新出的光泽色号您不需要吗?!它能打造出让人忍不住想亲吻的 Q 弹水润唇,现在可是非常受欢迎的产品呢…」

なんとかこの美青年との会話を続けようと、半ばやけくそで話していた女性店員の声が、フル無視されたことによって萎んできた頃、凛はピタリと足を止めた。
女性店员为了设法继续与这位美青年的对话,半是自暴自弃地开口,却在遭到完全无视后声音渐渐萎靡下去。就在这时,凛突然停下了脚步。

「グロス?」 “总额?”
「エッ、はい…あっグロスとは口紅の事です。今私の手元にあるのはオレンジみの強いお色ですが、肌の白い方には、あちらの赤みが強いものもお似合いになるかと…」
“诶,是的……啊,‘グロス’是指口红。现在我手边的是偏橙色的,不过对于皮肤白皙的人来说,那边偏红色的或许也很适合……”

「…男がつける用のもありますか。」 “…有男士用的吗?”
「はい…!もちろんです。最近では某国のアイドルの影響もあり、男性がグロスをつけることも珍しくないんですよ。」
“是的……!当然。最近由于某国偶像的影响,男性涂抹口红也不再罕见。”

「それはどこに」 「那是在哪里?」
「こちらですっ!お色味が3パターンございまして、一番人気なのはこのサーモンピンクのお色なのですが、はじめてご使用になられるのであれば、お客様の唇のお色に合わせたものを選ぶと失敗しにくいかと…」
“在这里!我们有三种颜色,最受欢迎的是这种三文鱼粉红色,但如果您是第一次使用,选择与您唇色相配的颜色可能不容易出错……”

女性店員の話を流し聞きしながら、凛は自分が化粧をしている状況を想像してみた。
凛一边听着女店员的谈话,一边想象着自己化妆的情景。

(……きめぇ…) (……好烦……)
当然、自分が鏡に向かっておめかししているところなど、想像するだけで鳥肌ものだ。しかし、今人生最大に究極の恋愛脳になっているであろう、凛の心に引っ掛かったのはやはり〖思わずキスしたくなる唇〗の一言である。
当然,一想到自己正对着镜子打扮的情景,就让人起鸡皮疙瘩。然而,现在正处于人生中最极致的恋爱状态的凛,心中所牵挂的,依然是那句“让人忍不住想亲吻的唇”。

正直、凛は自身の恋心を自覚する前から、潔の唇を噛みちぎってやりたいと思っていた。だが、凛がこのグロスとやらをするだけで、潔にあのときの凛と同じ気持ちを味合わせることができるかもしれないのだ。
老实说,凛在意识到自己的恋心之前,就一直想狠狠地咬住洁的嘴唇。但是,也许只要凛涂上这个唇膏,就能让洁体验到当时凛同样的心情。

しかも、うまく行けば潔と""キス""ができる…? 而且,如果顺利的话,还能得到一个干净的“吻”…?

凛は女性店員が話を終わったことにも気付かず、じっとそのグロスを見つめる。
凛没有察觉到女店员已经结束了对话,只是静静地凝视着那支口红。

潔が凛にキスをしたくなるかもしれない。その1点のみで考えれば、おそらく凛は購入を即決していただろう。しかし、ここで凛を悩ませているのは"子供はグロスを着けない"という点であった。当初の作戦通り、ほえほえな凛とやらを目指すのであれば…グロスはアウトだ。どちらかといえば引き立てるのは大人の色気である。
洁可能会想亲吻凛。如果只考虑这一点,恐怕凛会立即决定购买。然而,让凛感到困扰的是“孩子不涂口红”这一点。按照最初的计划,如果目标是那个天真无邪的凛的话…口红就不行了。相比之下,更能衬托出的是成熟的风情。

子供の可愛げと、大人の色気… 孩子的可爱与大人的风情…

───
「「ありがとうございましたぁ」」 「「非常感谢!」」

なぜか数人の女性店員に見送られ、凛は店をあとにした。もんもんと悩んだ結果、右手のビニール袋の中には、肌年齢-5歳を目指せるオールインワンのクリームとチェリーピンクのリップグロスが入っている。
不知为何,凛在几位女性店员的目送下离开了店铺。经过一番烦恼,她右手提着的塑料袋里装着一款旨在让肌肤年轻五岁的全效面霜和一支樱桃粉色的唇彩。

一つ言い訳をしておくと、別に凛は自分の欲だけを優先したわけではない。今、子供の頃のほえほえ凛を利用して潔と恋人になろうと、実際二人はすでに成人した大人なのだ。いずれはハグもキスも、その先にも進むはずだ。少なくとも凛はその気でいる。
先说一句,凛并不是只把自己的欲望放在首位。现在,她利用小时候的萌凛形象,试图与洁成为恋人,但实际上两人都已经是成年人了。迟早会有拥抱、亲吻,甚至更进一步的发展。至少凛是有这个心思的。

そう、つまりこれは前準備である。童貞でヘタレな潔のために凛が直々にお膳立てしてやるのだ。潔から凛にキスをする口実を作ってやるためにわざわざグロスを買ってやったのだから、感謝して欲しい。
是的,也就是说这是前期的准备工作。为了那个童贞又笨拙的洁,凛亲自为他安排好一切。为了让洁有借口亲吻凛,特意为他买了唇膏,希望他能心存感激。

……凛からキスはしないのかって?それは数年前からずっとしたいので、グロスなんか関係ない。恋人になったら普通にする。
……凛问我为什么不亲吻她?其实从几年前开始我就一直想这么做,跟口红什么的没关系。成为恋人后自然会做的。

とにかく、グロスを使うかどうかは別として、凛は当初の目的であるやわもち肌を作り出す商品の確保には成功した。2週間足らずで効果があるのかは知らないが、何もチャンスは次のデート(仮)だけではないのだ。
总之,不管是否使用格罗斯,凛已经成功确保了最初目的——制作柔嫩肌肤产品的商品。虽然不知道不到两周是否会有效果,但机会并不只限于下一次约会(暂定)。

絶対にやわもちの赤ちゃん肌になり、潔をオトしてやる…!
绝对要变成柔嫩的婴儿肌肤,把洁净夺回来…!

凛は、そう固く拳を握った。 凛紧紧地握住了拳头。

评论

  • くま

    もう可愛すぎてずっとニヤついてました。最高ですありがとうございます

    6月26日回信
  • たい焼き
    6月26日回信
  • さなぴꕤ 

    ぎゃー!好きー‼︎凛ちゃんかわいい

    6月26日回信
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