短編集(晩夏) 短篇集(晚夏)
X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2023年8月分)をまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的 One-Rai 投稿作品(2023 年 8 月)的汇总。
各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000~3000 字。目录请查看第 1 页。
素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
illust/88897034 插画/88897034
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撤回不可
生きたいように生きなさい。 按你想活的方式活下去。
それが、両親から貰った言葉だった。その言葉に甘えて、潔は今の今まで自分のやりたいこと、すなわちサッカーに専心して人生を送ってきた。
那是父母给予的话语。依赖着这句话,洁至今为止一直专注于自己想做的事情,也就是足球,全心全意地度过人生。
脇目も振らず一筋で打ち込んできたので、当然のように結婚などできない。恋人はいたこともあったが、いつもあまり長続きしなかった。
他一心一意地投入其中,从未分心,因此理所当然地无法结婚。虽然有过恋人,但总是无法长久。
仕事のことが大事なのはわかるけれど、やっぱりもう少し恋人のことを優先してほしい。別れ際の言葉はそのような内容だった。
虽然明白工作很重要,但还是希望你能多关心一下恋人。分手时的话语就是这样的内容。
残念だが、そればかりは仕方ないことだと思う。潔が潔として生きていくためには、サッカーについて妥協することはどうあっても許容できない。唯一といっていい譲れない一線なので、それが原因であるならば改善のしようがない。
虽然遗憾,但我认为这是无可奈何的事。为了作为洁而活下去,对足球的妥协无论如何都是无法容忍的。可以说这是唯一不可退让的底线,如果这是原因,那就无法改善。
相手の不満を解消するのが不可能だとわかっているのに繋ぎ止めようとするのはあまりに不誠実だ。そう思えば、すっぱり諦めるよりほかにない。
明知无法消除对方的不满却还要勉强维持,这未免太不诚实了。这样一想,除了干脆放弃别无他法。
大体お決まりのそのパターンで、潔は歴代の恋人たちと別れを繰り返してきた。
大致上都是那个固定的模式,洁与历代恋人们一次次分手。
そのこと自体には、後悔など一片たりとも存在しない。しないけれども、ふとした瞬間に思ってしまったのだ。
对于那件事本身,没有一丝一毫的后悔。虽然不后悔,但偶尔还是会突然想起。
家に帰ってきたとき、誰かにおかえりと言ってほしい、なんて。
回到家时,希望有人对我说声‘欢迎回来’之类的。
と、いうようなことを、酔った潔はこの話題に何の関係もない糸師凛にぶちまけた。
醉醺醺的洁,把这种与话题无关的想法一股脑儿地倾诉给了丝师凛。
場所は潔の自宅である。同じクラブの所属になってから月に一、二回の頻度で行っている宅飲みの場だった。
地点在洁的家中。自从加入同一个社团后,每月一两次的频率会在这里举行宅饮聚会。
「はー、やっぱり歳喰った所為かねぇ。前はこんなこと思わなかったんだけどなー」
「啊——果然是年纪大了的缘故吧。以前可没这么想过啊——」
ちまちまとチー鱈を齧りながら、ぐびりと日本酒を呷る。度数が高いわりに口当たりがよく、するすると飲めてしまう。意識して自制し、一口に抑えた。
一边细细地啃着鳕鱼干,一边咕噜咕噜地喝着日本酒。虽然度数高,但口感顺滑,不知不觉就喝下去了。意识到后,自制地只喝了一口。
先日実家に帰省したらしい千切からお土産にもらったものだ。頭の隅で水も飲んだほうがよさそうだな、と理性が囁いた。飲みなれていない酒なのでアルコールの回りが早い。
前几天回老家时,千切送的土特产。理智在脑海一角低语,似乎还是喝点水比较好。因为是不常喝的酒,酒精上头很快。
口が軽くなっている自覚はあったが、まあ凛ならいいか、とも思う。
自己知道话变得轻浮了,但如果是凛的话,应该没关系吧。
コイツなら興味のない話題は適当に聞き流してくれるだろう。後日わざわざ揚げ足取りをするような真似もするまい。
这家伙的话,对不感兴趣的话题会随便听听就过去吧。事后也不会特意来挑刺。
向かいに座った凛は、卓上の同じ酒を豪快に呷る。いい飲みっぷりだった。潔と違ってこの酒も飲みなれているのだろうか。
对面坐着的凛豪爽地喝着桌上的同一种酒。喝得真痛快。和洁不同,她对这种酒也很习惯吧。
軽く目を伏せ、口を開く。 轻轻垂下眼帘,开口说道。
「わからねー、でもない」 「不是不明白」
潔はおや、と目を見張る。 洁惊讶地睁大了眼睛。
意外なところから共感を得られたものだ。 没想到在意外的地方得到了共鸣。
「へぇ…。お前もそうなの? 意外」 「哦…。你也这样?真意外」
「うっせぇな」 「吵死了」
「浮いた話の一つも聞かないし、てっきりそんなの端からどうでもいいのかと。でもまあ、そっか。俺だけじゃねーんだな、そういう気持ちになるの。なんか安心した」
「我以为你根本不会听这些闲话,还以为你根本不在乎呢。不过嘛,原来如此。不只是我一个人有这种感觉啊,有点安心了」
ふー、と息を吐いて、今度は水を口に含む。 呼——地吐了口气,这次含了口水。
氷が程よく溶けていて、冷たくて美味い。気持ちよさに潔の丸い目が細まる。
冰块恰到好处地融化,冰凉可口。舒适的感觉让洁的圆眼睛眯了起来。
凛は先ほど空にしたコップに酒を注ぎながら、冷めた視線を潔に向けた。
凛一边往刚才空了的杯子里倒酒,一边用冷冷的目光看向洁。
「お前みてぇに節操のない真似をする気がないだけだ。どうせ駄目になるのがわかってんのに付き合うとかアホだろ、お前」
「我只是不想像你这样没有节操地胡闹。反正知道会失败还去迎合,你真是傻啊。」
「いや、その辺は人によるかもしれねーじゃん…。でもまあ、当分はやめとこうかな、うん」
「不,那方面可能因人而异吧……不过嘛,暂时还是算了吧,嗯」
潔はぐぅ、と眉根を寄せて、一旦酒に逃避することにした。
洁皱起眉头,咕哝了一声,决定暂时用酒来逃避现实。
コップをきつめの角度で傾けて、中身を勢いよく喉に流し込む。ぐびぐびと飲むと、いい感じに酔いが回って頭がふわふわする。
他将杯子倾斜到近乎垂直的角度,猛地将里面的液体灌入喉咙。咕噜咕噜地喝下去后,醉意恰到好处地涌上来,脑袋开始轻飘飘的。
「なんつーか、恋人がほしいっていうより、もっとこう、家族っていうか…」
「怎么说呢,比起想要恋人,更像是想要一个……家人那样的存在吧……」
ちょうどいい言葉を探しあぐねて、手元のチー鱈を無闇に割く。
洁在寻找合适的词语时,无意识地摆弄着手边的鳕鱼子。
凛はそんな潔の様子を見ながら、なみなみと注がれたコップを傾ける。喉を滑り落ちていく感覚は滑らかで、初めて飲む酒だが悪くない。後で銘柄を控えておこう。そう考えた。
凛一边看着洁的样子,一边倾斜着注满的杯子。酒液滑过喉咙的感觉很顺畅,虽然是第一次喝的酒,但感觉不错。待会儿记下酒的牌子吧。他这么想着。
しばしの沈黙が挟まる。 沉默片刻。
チー鱈をこれ以上できない極限の細さまで分解し終え、潔は溜息をつく。
将鳕鱼丝分解到极致的细度,洁叹了口气。
「や、そこまでいかなくてよくて、ほんとにただ、ふとした瞬間にいてくれるだけでいいんだけど」
「不,不用到那种程度,真的,只要在某个瞬间陪在我身边就足够了。」
「…おう」 「…哦」
耳の赤くなった凛は、どこかふわふわとした声で同意を示す。問題になっているのはちょっとした寂しさのようなものだ。そうなんだよな、と潔はちょっと嬉しくなった。
耳朵泛红的凛,用一种飘忽的声音表示同意。问题在于那一点点寂寞的感觉。原来如此啊,洁感到一丝欣喜。
そして、閃いた。 然后,灵光一闪。
「そーだ!」 「对啊!」
「…」
「俺、お前と一緒に住めばよくね?」 「我,和你一起住不就好了吗?」
「……悪くねぇな」 「……不错啊」
頻りに瞬きをしながら、凛はその言葉にも肯定を返す。その首は落ち着きなくふらふらと動いていた。
频繁地眨着眼睛,凛对那句话也给予了肯定的回应。她的头不安分地晃动着。
いいじゃん、と潔の気分は俄然浮き立ってくる。 不错嘛,洁的心情突然高涨起来。
「じゃあ、決まりってことで」 「那么,就这么决定了」
「ああ。…住むの、こっちの家でいいか。部屋は余ってる」
「啊。……住在这边家里可以吗?房间还有空余的。」
眠気を堪えながら凛が訊ねる。 凛强忍着睡意问道。
確かに、と潔は頷いた。 洁点了点头,表示确实如此。
「オッケー! じゃあこっちは解約して、と」 「好嘞!那这边就解约吧,然后」
後から頭を抱えることになるのだが、この時の潔は酔った人間に特有の無闇矢鱈な行動力を発揮した。
虽然后来会为此抱头懊恼,但此时的洁发挥出了醉酒之人特有的盲目行动力。
電子化が進む今の時代、賃貸の解約も二十四時間受付可能である。スマホの画面を何度かタップするだけで、あっという間に手続きは済んだ。済んでしまった。
在电子化进程飞速的当今时代,租赁解约也实现了二十四小时受理。只需几次轻触智能手机屏幕,手续便瞬间完成。已经完成了。
これにより、潔は一ヶ月以内にこの住居を出なければいけなくなったのである。
因此,洁必须在一个月内搬离这处住所。
「はー、楽しみだなー。ありがと、凛」 「啊——,真期待啊。谢谢你,凛」
「……」
「ねてる」 「睡着了」
赤い顔で眠りに落ちた凛をしげしげと眺めて、潔はけらけらと笑った。
洁饶有兴致地看着凛红着脸沉入梦乡,咯咯地笑了起来。
そしてこれまた無駄な行動力を発揮して、自分と凛とが映るように画角を調整し、パシャリとスマホで写真を一枚。関係者に送りつけた。
然后又发挥出毫无意义的行动力,调整镜头让自己和凛都入镜,咔嚓一声用手机拍下一张照片。发送给了相关人员。
その夜、一枚の写真が糸師冴の元に届いた。 那晚,一张照片送到了糸师冴的手中。
酒瓶を背景に眠る凛と満面の笑みを浮かべた潔の自撮り、明らかな酔っ払いのそれだ。
酒瓶为背景,凛睡着,洁满面笑容的自拍,显然是醉了的样子。
添えられた文面はこうだった。 附带的文字是这样的。
『同棲することになったから報告。よろしくな、お兄ちゃん!』
『因为要同居了所以报告。请多关照,哥哥!』
冴は少し考えた後、淡々と返信を打ち込む。 冴稍微思考后,淡然地开始回复。
まさか義弟が増えるとは、そしてそれが潔だとは想像したこともなかったが、まあわざわざ報告されたなら祝福するに吝かではない。
没想到义弟会增加,而且还是洁,真是从未想象过,不过既然特意来报告了,祝福一下也不为过。
明らかに正気の様態ではないので撤回されるかもしれないが、それはそれでもの笑いの種になって結構だな、と冴はそこそこ愉快な気分で眠りについた。
显然精神状态不太正常,可能会被撤回,但即便如此,也能成为笑料,冴带着相当愉快的心情入睡了。
『交際おめでとう。仲良くやれよ』 『交往恭喜。好好相处吧』
翌朝起きた潔はそれを見て、頭痛に耐えながら違う、そうじゃない、と呻いた。
次日早晨醒来的洁看到那条消息,强忍头痛呻吟着,不对,不是这样的。
尚、凛はまだ寝ていた。 而凛还在睡着。