
脳内で理想が崩れる音がする。自分が入れてしまったヒビを自覚した途端、すぐさまヒビは広がっていって、ボクの頭を蝕んでいく。
脑海中响起理想崩塌的声音。一旦意识到自己造成的裂痕,那裂痕便迅速蔓延,侵蚀着我的头脑。
ボクはずっと、ずっと、絵名が好きだった。そして、そんなボクが嫌いだった。友達としてずっと傍にいてくれる絵名に、持ってはいけない感情を持ってしまった。恋情だけじゃない。愛情だとか、劣情だとか。それらは、届かないはずだった絵名という名の偶像を一つ一つ汚していくようで、どうしようもなく腹立たしい。そんな緑青を振り撒くボクが幸せになってはならないと、心の底で思い込んでいたんだろう。だから、全てを壊してしまった。
我一直、一直喜欢着绘名。而这样的自己,我却厌恶至极。对始终以朋友身份陪伴在旁的绘名,我怀揣了不该有的情感。不仅仅是恋慕之情,还有爱意、劣等感。这些情感仿佛一步步玷污着那本应遥不可及的偶像——绘名,令人无比懊恼。心底里,我深信不疑,这样散发着铜绿气息的自己,不配得到幸福。于是,我亲手毁掉了一切。
驚いたよ。ボクが絵名のことを好きなだけじゃなくて、絵名もボクのことを好きだったなんて。ずっと友達だって、話し合ったじゃんね。二人とも、嘘つきだね。――でも、ボクの方が酷い嘘つきだ。キミの「好き」の言葉に対して「嫌いだ」って返したんだから。嫌いなのは自分自身のはずなのに。切り替え忘れたアカウントみたいに、違う相手に言葉を放ってしまった。
真是让我惊讶。不仅是我喜欢绘名,原来绘名也喜欢我。我们不是一直说好只是朋友吗?看来我们俩都是骗子呢。——不过,我才是更恶劣的那个。面对你的“喜欢”,我却回以“讨厌”。本该讨厌的是我自己才对。就像忘记切换的账号一样,把话错发给了别人。
「……あーあ」 “……唉”
どうしようもないな。ベッドの上。家に直帰することで、真面目くんにでもなったつもり? 布切れを踏みにじることで、強者にでもなったつもり? 告白を断ることで、人気者にでもなったつもり? 「嫌いだ」って言うことで、「好き」をアピールしたつもり? 本当に、どうしようもない。
真是无可救药。躺在床上。以为直接回家就能装成个乖孩子?以为践踏布片就能变成强者?以为拒绝告白就能成为受欢迎的人?以为说“讨厌”就能表达“喜欢”?真的,无可救药。
どうすればよかったのだろうか。帰り道から今に至るまで、ずっと、ずっと、考えている。そもそも、どうなればよかったのだろうか。ボクが幸せになればよかった? 絵名が幸せになればよかった? 二人で幸せになればよかった? この答えを知らない限りは、明日への眠りも、新しい恋も、生きる資格も得られない気がする。
我到底该怎么做才好呢?从回家的路上到现在,我一直在思考这个问题。究竟,怎样才算好呢?是我幸福就好吗?还是绘名幸福就好?又或者是我们两个人都幸福才好?在不知道这个答案之前,我觉得自己无法安心入睡,无法开始新的恋情,甚至没有资格继续活下去。
というか、どうして「嫌いだ」なんて言ってしまったのだろうか。これに、適当な理由を付けるのは不可能だろう。絵名がボクのことを好いている、という現実が気持ち悪くなった、なんて言ったら蛙さんもびっくりだろうし。そのまま
或者说,我为什么会说出“讨厌”这样的话呢?要为此找个合适的理由,恐怕是不可能的吧。如果说是因为绘名喜欢我这件事让我感到不舒服,连青蛙先生都会大吃一惊吧。就这样
打破寂静的,是水花四溅的声音。那么,果然只能归结为是我为了让自己得不到回报而将其破坏了吧。但这并不能成为伤害绘名的理由。“讨厌”这个词,如同恶魔一般,将我和绘名都推向了不幸。至少,希望名为绘名的天使能够得救。
罪滅ぼしじゃないけどさ。償いとして、ボクは絵名に幸福を与えたいよ。ボクの「嫌い」で不幸にしてしまったお詫びに、一生かけても使い切れないくらいの幸せを。だけど「嫌い」の言葉で断ち切れてしまった関係では、親指と人差し指を交差させた愛のシンボルですら贈ることができない。どうしたらいいんだろうね。ボクが今まで絵名に与えてきた幸せと、ボクが今まで絵名に与えられてきた幸せを掛け合わせても足りないくらいの幸せを、あげたいのに。こんな歪んだ愛の形じゃ、届かない。
虽非赎罪之举,但作为补偿,我想给予绘名幸福。为了弥补因我的“讨厌”而带给她的不幸,我愿意用一生去换取她享用不尽的幸福。然而,在“讨厌”一词斩断的关系中,即便是象征爱的交叉拇指与食指的手势也无法送出。我该怎么办呢?即便将至今为止我给予绘名的幸福与我从绘名那里获得的幸福相乘,也远远不够。在这扭曲的爱之形态下,这份心意无法传达。
でも、結局のところは。ボクが与えてきた幸せなんてほぼゼロに等しくて。ゼロにどれだけ大きい幸せを掛けてもゼロで。じゃあ、ボクがどうこう施そうたって意味がないか。それでも絵名には幸せになってほしいよ。ボクの「嫌い」で傷ついた分、今日の夜はご馳走を食べていてほしいよ。そんな、ボクの枠に取って代われる幸せとか、新しい出会いみたいな果てしないドラマチックとか、そういうものを絵名には得ていてほしい。そのためにボクができることなんて、祈ることしかないんだ。
可是,说到底。我能给予的幸福几乎等同于零。无论多大的幸福乘以零,结果还是零。那么,我无论做什么都无济于事吧。即便如此,我还是希望绘名能够幸福。因我的“讨厌”而受伤的部分,希望今晚她能享用美食。希望绘名能获得那种能取代我位置的幸福,或是新的邂逅,那种无尽的戏剧性。为此,我能做的只有祈祷。
どうか、絵名が幸せになりますように。 愿绘名能够幸福。
どうか、心の傷がすぐに癒えますように。 愿心灵的创伤能迅速愈合。
どうか、ボクのことを忘れてくれますように。 请务必,将我遗忘。
どうか、どうか、どうか。 求求你,求求你,求求你。
季節に不相応な布団に潜り込んで、頭を抱えながら泣き喚いてみる。こんなに苦しいのに、と被害者ヅラをしながら。ふと、絵名の今の頭の中を覗きたくなる。
钻进与季节不符的厚重被褥中,抱头痛哭,仿佛自己才是受害者般,心中满是难以言喻的苦楚。突然间,我竟萌生出窥探绘名此刻脑海的念头。
ボクの言葉で、どれほど傷ついただろうか。今、何を思っているだろうか。ボクが気にしすぎているだけで、実はなんとも思っていないかもしれない。そうだとしたら、嬉しいかもしれない。嬉しいけど、嬉しいんだけど、だからといってそこに付け入る気にはなれない。だってボクは、また絵名に「嫌いだ」と言ってしまうかもしれないから。そもそも、嫌いなのにまた傍にいようなんて支離滅裂だ。だけど、お互い好き同士だったのに離れてしまうのも意味不明だ。じゃあもう、ボクは絵名のことが嫌いだって、それは事実でいいからさ。絵名もボクのことを嫌ってよ。それでいい。そうしたらもう、普通のお別れじゃないか。ボクの胸の奥にまだ沈んでいる「好き」の成分は、ボクが将来閻魔様の前で罪状を説明する時に使えるからさ。
我的话,究竟让她受了多大的伤害呢?现在,她在想些什么呢?或许只是我过于在意,实际上她并未放在心上。若是如此,我或许会感到高兴。高兴归高兴,但即便如此,我也无法趁机而入。因为,我可能又会说出“讨厌”这样的话来伤害绘名。本来,既然讨厌,却又想再次靠近,这本身就是自相矛盾。可是,我们曾经彼此喜欢,却要分离,这也让人费解。那么,就让我承认吧,我确实讨厌绘名。绘名也讨厌我吧。这样就好。这样一来,不就是普通的分别了吗?我心底深处还残留的那份“喜欢”,将来在阎王面前陈述罪状时,或许还能派上用场。
「好き」と「嫌い」を頭の中で繰り返しすぎて、花占いみたいだ。でも実際に、恋の花びらは一枚ずつ散っていっていて。占わなくても順当にわかる結果だけがボクを苦しめている。だから絵名、ボクのことを嫌ってくれ。偶数枚の花びらが報われるようにさ。なんて、この言葉も届かないのにね。
在脑海中反复念叨着“喜欢”与“讨厌”,仿佛在进行花瓣占卜。但实际上,恋爱的花瓣正一片片凋零。即便不去占卜,那顺理成章的结果也足以让我痛苦。所以绘名,请你讨厌我吧。让偶数的花瓣得到应有的回报。可是,这些话终究无法传达给你。
思考を続けて、脳内に鳴り響くうるさいくらいのサウンド。最低で最悪なボクへの、鎮魂歌だろう。このまま鼓膜が破れてしまえばいい。ついでに網膜も。キミの「好き」も「嫌い」も悲しむ表情も、全てを感じ取れなくなったら、こんなに悩むこともないんだから。って考え方がそもそも自分本位で最悪だ。だからその劣悪さすらも、最大音量で壊してしまえ。近所迷惑になるほどの、音量で。
思绪不断,脑海中回响着嘈杂至极的声音。这是对最差劲、最糟糕的我的安魂曲吧。如果鼓膜就此破裂也好,视网膜也是。若无法再感知你的“喜欢”、“讨厌”以及悲伤的表情,我就不会如此烦恼了。这种想法本身就很自私,糟糕透顶。所以,连这份劣根性也要用最大音量摧毁。大到足以扰邻的音量。
「うわあああああああああっ!」 「哇啊啊啊啊啊啊啊啊啊!」
意味を持たない絶叫。身体から何かが抜けていく。もうわかんないや。なーんにも。うるさいでしょ? 意味わかんないよね? よーし、じゃあボクを嫌ってね。そんな理屈をさ、三日月に向かって打ち上げて。絵名に届いたらいいな。届かなくてもいいな。
毫无意义的尖叫。仿佛有什么正从身体中流失。已经搞不懂了。什么都不明白了。很吵吧?不明白什么意思吧?好嘞,那就讨厌我吧。把那样的道理,朝着新月发射出去。能传到绘名那里就好了。传不到也无所谓。
全てを捨てたくなった。だからボクは踊り出すよ。絵名の声がサンプリングされた脳内BGM。「好き」「嫌い」の合いの手。ぐるぐると回っていく度に、視界がどんどん色を変えていく。絶望の色、苦しみの色、微かに異なる色たちが、ボクを取り囲む。こんな万華鏡は抜け出したいね。でも、抜け出せないね。今世紀最大級の罪人だからね。
想要抛弃一切。所以我要开始跳舞了。绘名的声音在脑海中采样成 BGM。“喜欢”“讨厌”的插话。每转一圈,视野的颜色就不断变化。绝望的颜色,痛苦的颜色,微妙不同的色彩,将我包围。这样的万花筒真想逃离啊。但是,逃不掉呢。因为是本世纪最大的罪人嘛。
――嗚呼! 「好き」くらい素直に言えばよかった! 「好き」くらい素直に受け入れればよかった! 絵名の身体を抱き締めればよかった! 無理にでもキスをすればよかった! 単純なことだったんだ! 全部、全部、全部! 多少間違っていても、「嫌いだ」よりも正解に近ければなんでもよかったんだ! こんな醜さを展示した筒の中。ボクはぐるぐる踊るしかないよ。全てが消し飛ぶその日まで、言ってしまった「嫌い」を抱えたまま。それで許してくれやしないかい? ――ああ、無理に決まってるね。ごめんね。
——呜呼!要是能坦率地说出“喜欢”就好了!要是能坦率地接受“喜欢”就好了!要是能紧紧抱住绘奈的身体就好了!就算勉强也要亲吻她一下就好了!其实都是些简单的事啊!全部,全部,全部!即使有些许错误,只要比“讨厌”更接近正确答案,什么都好!在这展示着如此丑陋的筒中,我只能不停地旋转跳舞。直到一切都烟消云散的那一天,我仍将怀抱着那句说出口的“讨厌”。这样,你能原谅我吗?——啊,肯定不行吧。对不起。
这是一部短篇小说集。不幸的集合。适合那些能够包容一切的人阅读。请在阅读前先浏览第一页的目录和概要。共包含四篇作品。
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表紙:パたん 封面:帕坦