短編まとめ3 短篇合集 3
X(ついったー)に上げていたもののまとめです。 这是在 X(Twitter)上发布的内容汇总。
※seis4本、各話の注意事項は1ページ目にあるので必ずお読みください。
※共四集,每集的注意事项请务必阅读第一页。
5/27追記…入れ忘れていたものを一本増やしました
5/27 追记…增加了一本之前遗漏的内容
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・画面の向こうに ・画面之外
※エピ凪の特典色紙(潔)の表情からの妄想、監獄に入る前
※从凪的特典色纸(洁)的表情中产生的妄想,入狱前
それはある休日の練習終わりのこと。 那是一个假日的练习结束时的事情。
多田をはじめとしたチームメイトに誘われ、潔世一は馴染みのラーメン店に脚を運んでいた。
被以多田为首的队友们邀请,洁世一踏入了熟悉的拉面店。
いつものようにみんなの分の水を用意して、席に着いたら昨日も食べたラーメンをゆっくりと口に運んでいく。別に特別食べたくて来たわけではなかった。けれどラーメンそのものに罪はないし、いつも通り美味しいし。
像往常一样为大家准备好水,坐下后慢慢品尝起昨天也吃过的拉面。并非特别想吃才来的。但拉面本身无罪,一如既往地美味。
友人たちがするアイドルの話にはあまり興味はそそられず、かと言って場の空気を乱すことはしたくなくて。また周りに流されてぎこちない相槌を打ちながら、潔は周りに合わせたスピードで器の中身を減らしていった。
对朋友们谈论的偶像话题兴趣不大,也不想破坏气氛。于是洁再次随波逐流,笨拙地附和着,配合周围的速度将碗里的食物慢慢减少。
そうしてみんなが満足しようやく、さあ帰ろう、という時間になった頃だった。店の隅っこに置かれていた小さなテレビが、ニュースを読み上げるアナウンサーではなく青い芝生を映し出し、気づいた潔はピタリと動きを止めてしまった。
就在大家终于心满意足,准备说“好了,回家吧”的时候,店角落里的小电视突然映出了青翠的草坪,而不是新闻播报员的脸,这让洁瞬间僵住了。
「んー? どうした潔?」 「嗯?怎么了,洁?」
声をかけてきたのは多田だった。潔はバッグを肩にかけながらじっと画面を見つめ続ける。多田は珍しく反応のない潔を視線の先を追い、おっ、と小さく声を上げた。
出声询问的是多田。洁一边把包挂在肩上,一边目不转睛地盯着屏幕。多田罕见地看到洁没有反应,便顺着他的视线看去,不由得轻声“哦”了一声。
「そういや今日、レ・アールと川崎のスペシャルマッチか」
「对了,今天不是雷·阿尔和川崎的特别比赛吗?」
この時期になるとたまに、海外チームが日本のチームと調整目的で試合を組むことがある。レ・アールといえば名門にして世界でも最高峰のチームだ。そんなチームが今日本に来ているんだなと思いながら、潔は映し出される選手たちの姿を見つめる。
每年这个时候,偶尔会有海外球队为了调整状态而与日本球队进行比赛。说到雷·阿尔,那可是名门中的名门,世界顶尖的球队。想到这样的球队现在就在日本,洁凝视着屏幕上显示的球员们。
ゴールキーパー、ディフェンダー。ラ・リーガの試合を見ていると一度は顔を見たことのある選手たちが並んでいた。残念ながらエースフォワードのレオナルド・ルナはベンチ外らしい。
守门员、后卫。看着拉·利加的比赛,这些球员中至少有一面之缘。遗憾的是,似乎王牌前锋莱昂纳多·卢纳并不在场上。
そんな中、満を持したように画面に現れた東洋系の美丈夫に、潔はこくりと息を呑んだ。
就在这时,屏幕上突然出现了一位东方系的美男子,洁不禁倒吸了一口气。
「糸師、冴」 「糸师、冴」
アナウンサーが興奮気味に話している。『日本の至宝』、『天才ミッドフィルダー』、『新世代世界11傑の1人』……。
播音员兴奋地说道:‘日本的至宝’、‘天才中场’、‘新世代世界 11 人之一’……。
「すげぇよなぁ、こいつ。俺らとほぼ歳変わんないのに」
「这家伙真厉害啊,跟我们差不多大。」
多田が呑気な声で言う。その言葉に、潔は不意に頭を殴られたような心地がした。
多田悠闲地说道。听到这话,洁突然有种被当头一棒的感觉。
世界一のストライカーになって、W杯で優勝するのが小さな頃からの夢だった。でも今、自分は小さなラーメン屋で部活終わりにテレビを見ていて、あの天才は、国立競技場のど真ん中で試合開始を待っている。
成为世界第一的射手,赢得世界杯,这是从小以来的梦想。但现在,自己却在一家小拉面店里,部活结束后看着电视,而那位天才,正站在国立竞技场的正中央,等待比赛开始。
彼は満員の会場でサポーターの歓声を無表情で受け止めながら、チームメイトのフォワードと何やら言葉を交わす。その姿に、潔はつい視線をそらした。
他在满座的会场中,面无表情地接受着支持者的欢呼,同时与队友前锋交谈着什么。看到那身影,洁不禁移开了视线。
会計を終えたチームメイトがこちらを呼んでいるのが聞こえる。多田に行こうぜと声をかけられ、流されるままに「おう」と気のない声を発した。
听到结完账的队友在叫自己。被多田喊着“走吧”,便随波逐流地应了一声“哦”,声音里透着无精打采。
潔は浮かない顔で財布を手に取る。 洁面带忧色地拿起钱包。
高校に入って少しずつ、幼い頃に抱いたあのアホみたいな夢が遠のいていくのを感じている。本当はもっとゴールを決めたい。今のチームの理念が本当に良いとは思えない。
进入高中后,渐渐感觉到小时候怀揣的那个傻乎乎的梦想正在远去。其实更想设定一个目标。现在的团队理念,真的觉得不太好。
それでも、表立って反抗する気にはなれなくて。それが主張できない自分にも、ずっとモヤモヤしてしまっていて。
尽管如此,还是无法鼓起勇气公开反抗。对于无法主张自己意见的自己,一直感到闷闷不乐。
――俺、このままで良いのかな ――我,这样真的好吗
潔は考えつつ財布から千円札を取り出した、店主からお釣りを受け取って財布に戻す。他のみんなは会計を終わらせて外に出ている。
洁边想边从钱包里取出一张千日元纸币,接过店主找零后放回钱包。其他人已经结完账出去了。
――俺も急がないと。 ――我也得快点了。
そう思った時だった。 就在那时。
テレビから聞こえたのは大歓声。思わずぱっと顔を上げれば、映っているのはフィールドを駆け上がる糸師冴の姿だった。
从电视里传来的是巨大的欢呼声。不由自主地猛然抬头,映入眼帘的是糸师冴在球场上奔跑的身影。
彼はJリーグの選手たちを巧みなドリブルで交わしていく。1つ、2つ。たった1人で戦場を切り裂いて、あっという間に最前線へ。そうしてゴール前の味方へと、正確で無慈悲なパスを送る。
他巧妙地用盘带突破了 J 联赛的选手们。一个、两个。仅凭一人就撕裂了战场,转眼间冲到了最前线。然后向球门前方的队友,送出了一记准确而冷酷的传球。
ボールはフォワードのダイレクトシュートでネットへと突き刺さり、その瞬間に歓声が爆発。喜び互いを讃えあうレ・アールの面々と、悔しそうな顔をする川崎の選手達。
球在前锋的直接射门下刺入网中,欢呼声瞬间爆发。Le Aile 的队员们互相庆祝,而川崎的球员们则面露懊恼。
その時、潔の体に興奮が駆けた。 那时,洁的身体被兴奋所驱使。
――すっげぇ〜!! ――太厉害了!!
試合開始直後。たった数分で生み出された美しいゴールに、潔は目を奪われる。
比赛开始不久。仅仅几分钟内诞生的美丽进球,让洁目不转睛。
久しぶりに感じた。今すぐ走り出したくなるような強い衝動を。胸がゾクゾクと昂ってしまう。
久违地感受到了。那种想要立刻奔跑起来的强烈冲动。胸口激动得颤抖不已。
速く、無駄なく。美しくて、どこまでも残酷なサッカーが、そこにはあった。
快速、毫无浪费。美丽而又无比残酷的足球,就在那里。
流石は世界最高峰のフットボールチーム。シュートを決めたフォワードは勿論凄いし、彼が自由になるようにサポートしていた周りのプレイヤー達も凄い。
不愧是世界顶尖的足球队。进球的前锋当然厉害,而为他创造自由空间的周围球员们也同样出色。
でも潔が見ていたのは、画面の中でチームメイトにもみくちゃにされ鬱陶しそうな顔をしているミッドフィルダー、糸師冴。
但洁所关注的是,在画面中被队友们折腾得一脸不耐烦的中场球员,糸师冴。
間違いなく、攻撃の中心は彼だった。さっきプレーの中にどれだけの技術が詰まっていたのだろう。どれだけのことが、彼には見えていたのだろう。
毫无疑问,他是进攻的核心。刚才的比赛中蕴含了多少技术啊。有多少事情,是他所看到的呢。
俺もあんな風に世界の中で戦いたい。いつか、あんな風に堂々とプレーしてみたい。それで叶うなら、あのパスで、ゴールを……!
我也想像那样在世界上战斗。总有一天,我也想那样堂堂正正地比赛。如果能实现的话,用那记传球,进球……!
「お客さん……?」 「客人……?」
「あっ! すみません!」 「啊! 对不起!」
店員に訝しげな顔をされ、潔は反射的に声を上げた。ご馳走様でしたと頭を下げて、急いで店の外に出る。そこには一難のチームメイト達がたむろしていたが、潔にはもう彼らに構う余裕はなかった。
店员投来诧异的目光,洁反射性地提高了声音。低头说了句“多谢款待”,便急忙走出店外。那里聚集着一难的队员们,但洁已经没有余力去理会他们了。
「おー潔、明日の練習……」 「哦,洁,明天的练习……」
「ごめん多田ちゃん! 俺急ぐから!」 「抱歉,多田!我有急事!」
「えっ、おい!」 「诶,喂!」
引き止める声を交わし自転車に飛び乗る。 互相呼喊着阻止,跳上自行车。
潔は迷わずペダルを漕いだ。早く家に帰りたい。彼のプレーを、この目でもっと見たいと思った。
洁毫不犹豫地踩起了踏板。想快点回家。他想亲眼再看更多他的比赛。
この数ヶ月後、憧れた満員のスタジアムで、潔世一は糸師冴と対戦することとなる。
数月后,憧憬已久的满场观众面前,洁世一将与糸师凛对决。
無名の高校生フォワードが日本の至宝に見つかる日。それは、日本のサッカーに革命の狼煙が上がる日だ。
无名高中前锋被日本至宝发现之日。那是日本足球革命烽火燃起之日。