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短編集(初秋)/あきづき的小说

短編集(初秋) 短篇集(初秋)

13,766字27分钟

X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2023年9月分)をまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的 One-Rai 投稿作品(2023 年 9 月)的汇总。

各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000~3000 字。目录请查看第 1 页。


素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
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一年前なら遥か前 一年前的话,那是很久以前了

 糸師凛は廊下を歩いていた。左手には一枚の紙切れ。
糸师凛走在走廊上。左手握着一张纸片。

 その紙の右上に刻まれた一桁の数字を、凛は剣呑な目つきで睨みつける。
他以凶狠的眼神盯着纸片右上角刻着的一位数数字。

 脳裏に蘇るのは、帝襟アンリが申し訳なさそうな顔で告げた「ボーダーを下回った者は赤点として再試験実施、再度赤点を取った場合は強制的に補習に参加」との通達だった。
脑海中浮现的是帝襟安理带着歉意的表情宣布的通知:“低于分数线的学生将被标记为不及格,需参加补考,若再次不及格则强制参加补习。”

 一桁しかない凛の点数は勿論立派な赤点である。 凛的分数只有一列,当然是显眼的零分。
 元々超実践的な必要最低限の教育として英語とサッカーに関連する一連の学習しか実施されていなかったブルーロックで、なぜ基礎五教科のみとはいえ通常の高校教育に該当する試験が実施されることになったのか。
原本在 Blue Lock 中,只实施了作为超实用性的最低限度教育,即与英语和足球相关的一系列学习,为何会进行即使是基础五科,也相当于普通高中教育的考试呢?

 そこにはブルーロックTVという形で全世界に施設内の様子を配信した結果、さる機関から苦情を受けたという経緯がある。さしもの絵心も国家権力をないがしろにすることはできなかった。大人の事情というやつだ。
这其中有着以 Blue Lock TV 的形式向全世界直播设施内情况后,遭到某机构投诉的经过。即便是绘心,也无法轻视国家权力。这就是所谓的大人的事情。

 あくまで対外的に体面を取り繕うためのものなので、ボーダーはかなり緩めに設定されていた。しかしそのゆるゆるのボーダーを容易く下回る者がブルーロックには一握り、存在していたのである。
这毕竟只是为了对外维持体面而设的,所以门槛设得相当宽松。然而,在 Blue Lock 中,却有极少数人轻易地低于这个宽松的门槛。

 その一握りに該当する凛はひとまず問題用紙をぐしゃぐしゃに丸めてポケットに突っ込む。
凛属于那极少数之一,他暂时将问题试卷揉成一团,塞进了口袋。

 と、目下の問題に心を奪われて注意散漫になっていたのか、凛は角を曲がってきた相手とどん、と肩をぶつけてしまった。自分が悪いという自覚はあったので、素直に謝罪を口にする。
或许是心思被眼前的问题所占据,注意力分散了,凛在拐角处与迎面而来的人猛地撞上了肩膀。他自知理亏,便坦率地开口道歉。

「悪ぃ、」 「抱歉,」
「いやこっちこそ、…って凛じゃん」 「不,是我该说抱歉,…咦,这不是凛吗?」
「…潔かよ」 「…洁啊。」
 ぶつかった相手を凛は半眼で見つめた。  凛用半睁的眼睛盯着撞到的对方。
 舌打ちを一つして、その場を後にしようとする。  咂了咂舌,准备离开现场。
「あ、ちょっと待て、これお前のだ、ろ…」 「啊,等等,这是你的吧…」
 その足元に丸めた紙が転がっているのに気付き、潔は声を上げて凛を引き止める。
注意到脚边滚落的纸团,洁大声叫住凛。

 拾い上げ、ついでに手癖で皺を伸ばし、凛に渡そうとした。
捡起来,顺手抚平皱褶,正要递给凛。

 そして見てしまった。丸のついた回答が一つしか存在しない、誰がどう見ても赤点間違いなしの解答用紙を。
然后看到了。只有一处画着圈的答案,任谁看都是不及格的答题纸。

 凛はその紙を凄まじい勢いでひったくる。  凛以惊人的气势夺过那张纸。
 信じられないという顔で言葉を失っている潔をじろりと睨み、言った。
她瞪了一眼因难以置信而失语的洁,说道。

「文句あんのかコラ」 「你有意见吗,混蛋」
「…はい、うん。いやおっまえ、その顔でこの点数は嘘だろ…?」
「…是啊,嗯。不对,你那表情,这分数是假的吧…?」

「顔は関係ねーだろ、アホか」 「长相无关紧要吧,笨蛋吗」
「そーだけど、えー…英語はあんなにできんのに…」 「是那样没错,可是,诶…英语明明那么好…」
「うっせぇな。こんなもん俺の今後の人生には必要ねーんだよ」
「吵死了。这种东西对我的未来人生根本不需要。」

「でも再試験じゃんこれ、どうにかするアテあんの? このままいったら補習間違いなしだと思うけど」
「但这可是补考啊,有什么办法吗?这样下去肯定要补习的。」

「…クソが」 「…可恶。」
 ぐ、と言葉に詰まった凛の様子を見て、潔はしょうがねぇなと声をあげた。
看到凛语塞的样子,洁无奈地叹了口气。

「俺がみてやるよ、お前の勉強」 「我来教你学习吧」
「……」
 凛は暫し考えこむ。  凛沉思片刻。
 認めたくない話だが、潔の提案は渡りに船だった。凛一人で赤点を回避する未来は微塵も見えない。潔から教わるのは癪だが、しかし教わる相手としてかろうじて妥協できるラインではあった。
虽然不愿承认,但洁的提议无疑是救命稻草。凛一个人避免不及格的未来渺茫无望。虽然从洁那里学习令人不快,但作为学习对象,勉强还能接受。

 渋々口を開く。  勉强开口。
「…見返りは」 「…回报是什么」
「ん?」 「嗯?」
 潔が首を傾げる。  洁歪了歪头。
 凛は噛み付くように言い放つ。  凛咬牙切齿地说道。
「お前にタダで借りを作るのは御免だって言ってんだよ」
「我可不想白白欠你人情。」

「あー、なるほど。そうだな…」 「啊,原来如此。确实……」
 律儀な奴だな、と潔は思う。 洁心想,真是个正直的家伙。
 凛が蜂楽や時光にもなんだかんだと言いつつ英語を教えてやっていたのと同じことで、別にこのくらい貸しにするつもりはないのだが。
就像凛一边对蜂乐和时光说三道四,一边教他们英语一样,其实我并没有打算就这么轻易地借给他们。

 しかし、本人が気にするというのならそれはそれでありがたく利用させてもらうか、と割り切ってひとつ頷いた。
不过,既然本人在意的话,那就顺水推舟,心怀感激地利用一下吧,于是我点了点头。

 こんな機会、利用するなら勿論サッカーのことに決まっている。
这样的机会,如果要利用的话,当然是和足球有关的事情了。

「終わったら1on1付き合ってくんない?」 「结束后 1 对 1 来一局怎么样?」
「わかった。ぬりぃプレー見せたら殺すからな」 「知道了。要是看到你放水,我可不会手下留情。」
「上等、目にもの見せてやるよ。じゃ、取引成立ってことで」
「好啊,让你见识见识我的厉害。那么,交易达成。」

「おう」 「哦」
 潔は上機嫌で笑う。しかしそれも束の間、ふと表情を曇らせて凛に問うた。
洁心情愉快地笑了。但那也只是片刻,突然间表情变得阴沉,向凛问道。

「…ちなみに、他の科目は?」 「…顺便问一下,其他科目呢?」
「………」
 凛は黙って目を逸らす。  凛默默地移开了视线。
 察した潔は先程とは打って変わり乾いた笑みを浮かべる。
察觉到的洁露出了与刚才截然不同的干涩笑容。

「…同じかー。……うん。頑張ろうな! 凛!」 「…一样啊。……嗯。一起加油吧!凛!」
「うっせぇ…」 「吵死了……」
 地の底を這うような声で、凛は呻いた。  用仿佛从地底爬上来的声音,凛呻吟道。

 その裏で、潔はちょっと冷や汗をかいていた。  与此同时,洁稍微出了一点冷汗。
 見てやるという言葉に偽りはない。誠心誠意、できる限りのサポートをしてやろうという気はある。
 ‘我会看着你’这句话绝无虚假。我是真心实意地想要尽我所能给予支持。

 しかし正直、潔も別に勉強が得意というわけではないのである。
 但说实话,洁也并非特别擅长学习。

 何せ胸を張って得意科目と言えるのは体育と美術くらいのものだ。今回の試験にはまるきり関係ない。
 毕竟能自豪地称为拿手科目的,也就体育和美术了。这次考试完全无关。

 実際、今回の試験での潔の点数は赤点のラインよりはだいぶ上だが、高得点と言えるかどうかは微妙な範疇だった。
 实际上,这次考试中洁的分数虽然远超及格线,但要说是否算得上高分,却也颇为微妙。

(…まあどうにかなるだろ、俺の方が学年上だし!) (……嘛,总会有办法的,我可是年级更高的!)
 根拠のない自信から潔は胸を張る。  毫无根据的自信让洁挺起了胸膛。
 潔は舐めていた。基礎から全放棄してきた人間に勉強を教えるということの難易度を。
 洁在舔舐着。从基础开始就完全放弃的人,教他们学习的难度。

 それが地獄の幕開けだった。  那正是地狱的序幕。

 そして一週間後。  然后一周后。
 筆舌に尽くしがたい艱難辛苦を乗り越えて、見事凛をボーダーラインスレスレで赤点回避させることに成功した潔は安堵から勢い余って内心をすべて吐いた。
 克服了难以言表的艰难困苦,洁成功地在及格线边缘让凛避免了不及格,因安心而得意忘形地吐露了所有心声。

 祝いの言葉からシームレスに愚痴に移行して得意科目が自分と同じことまで聞かされた凛は目を丸くし、次いで半眼になって潔の脛をげしげしと蹴った。
 从祝贺的话语无缝衔接到了抱怨,甚至听到了得意科目与自己相同的事情,凛瞪大了眼睛,随即半眯着眼狠狠踢了洁的小腿。

 ちなみに1on1も無事行われ、進化した潔の厄介ぶりに凛は特大の舌打ちを漏らした。
 顺便一提,1on1 也顺利进行,面对进化后的洁的麻烦劲儿,凛发出了特大的咂舌声。

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