短編集(初夏) 短篇集(初夏)
twitter上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2023年5月分)をまとめたものです。
这是在 Twitter 上参与 One-Rai 活动时提交的作品合集(2023 年 5 月)。
各話2000~3000文字程度。全体的に甘口でお送りします。
每话约 2000 至 3000 字,整体风格偏甜。
目次は1ページ目をご覧ください。 目录请查看第 1 页。
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twitter/naranashitori 推特/鸣鸟不飞
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仲良くないけどそれはそれ 虽然关系不亲密,但也就那样了
夕食は済んだ。ヨガも終わった。シャワーも浴びた。
晚餐已用毕。瑜伽也结束了。淋浴也洗过了。
一日の終わり、リビングのソファで糸師凛はスマホを開く。
一天的尾声,糸师凛坐在客厅的沙发上,打开了手机。
そして気になっていた他リーグの試合結果を確認しようと立ち上げたニュースアプリのトップ画面、それを見た瞬間、思わず舌打ちを漏らした。
他本想查看其他联赛的比赛结果,却在启动新闻应用时,看到首页的瞬间,不禁咂了咂舌。
原因は目当ての試合結果ではなく、その脇のおすすめ欄に表示されたトピックにある。低俗なゴシップ記事の類だ。
原因并非在于所关注的比赛结果,而是在其旁边的推荐栏中显示的话题。那是些低俗的八卦新闻。
タイトルは「潔世一、糸師凛との不仲認める!? 『これが僕らの距離感』」。
标题是「洁世一,承认与糸师凛关系不和!? 『这就是我们的距离感』」。
くだらない。実にくだらない。そう思いながらも凛の親指は勝手に動いてそのリンクをタップし、記事を開いてしまった。
无聊至极。实在是无聊至极。尽管如此,凛的拇指还是不由自主地动了,点击了那个链接,打开了文章。
開いてしまったものは仕方ない。仕方ないので目を通す。潔への罵倒のネタにしてやろう、と邪な意気込みを新たにして。
既然已经打开了,也没办法。没办法,只好浏览一下。带着邪恶的念头,打算用它来当作骂洁的素材。
【潔世一、糸師凛との不仲認める!? 『これが僕らの距離感』】
【洁世一承认与糸师凛不和!? 『这就是我们的距离感』】
来季のフランスリーグへの移籍を発表したプロサッカー選手・潔世一への独占インタビューが先日、XXXテレビにて放送された。そこでの彼の発言が今、大きな話題を呼んでいる。
近日,XXX 电视台独家播出了对即将转会至下赛季法国联赛的职业足球运动员洁世一的专访。他在采访中发表的言论如今引起了广泛关注。
インタビューを受けた潔選手は移籍にあたっての心境・新天地での抱負などを述べたのち、移籍先に所属する糸師凛選手について質問を受け「今から戦々恐々って感じですね。彼と会うといつも舌打ちされる」と糸師選手からの厳しい対応を告白した。
接受采访的洁选手在谈到转会时的心情和新环境的抱负后,被问及关于转会后所属的糸师凛选手时,坦言道:“现在感觉真是战战兢兢啊。每次见到他,总是被他咂舌。”
加えて「まあ僕もブルーロック(※)ではよく彼に対して『なにクソ!』と思っていたので、おあいこだと思います。これが僕らの距離感なんでしょうね」と発言。
此外,他还说道:“我在蓝色监狱(※)时也经常对他想‘什么鬼!’,所以我觉得我们彼此彼此。这大概就是我们之间的距离感吧。”
最後は「彼のサッカーは本当に素晴らしいものですから、僕の方としては尊敬しています。一緒にプレイできるのが今から楽しみです」と笑顔で締め括った。
最后,他笑着总结道:“他的足球真的很出色,我非常尊敬他。能和他一起踢球,我现在就已经很期待了。”
以前から二人の間で不仲説が囁かれていたネット上では、これに対し「あの噂ガチだったんw」「移籍先大丈夫かよ」「会うたび舌打ちはキツイわー」「潔選手、凛選手の人格面についてはフォローしてなくて草」との声が上がっている。
网络上一直流传着两人不和的传闻,对此有人评论道:“那个传闻居然是真的 w”“转会去的地方没问题吧”“每次见面都咂舌真是受不了”“洁选手、凛选手的人格方面完全没有维护,笑死”。
(※脚注「ブルーロック」とは20XX年日本フットボール連合が立ち上げた、高校生男子を対象としたサッカー選手育成プロジェクト。潔選手・糸師選手含む多くのプロ選手を輩出した。)
(※脚注:“蓝色监狱”是 20XX 年日本足球联盟发起的,以高中男生为目标的足球选手培养项目。包括洁选手、糸师选手在内的许多职业选手都出自该项目。)
全文を読み終わった凛は、苦い顔で記事を閉じる。ネタにできそうなことはなにもなかった。なにも。
凛读完全文后,苦着脸关闭了文章。没有什么可以拿来当梗的东西。什么都没有。
気を取り直し、当初の目的であった試合の結果をチェックする。兄の在籍するクラブチームは今日、三対一で試合に勝利したようだった。当然の結果だろう。相手チームも調子は悪くなさそうだったが、今季のレ・アールの仕上がりは段違いだ。
重新振作,检查最初目的的比赛结果。哥哥所在的俱乐部球队今天似乎以三比一获胜了。这是理所当然的结果吧。对方球队看起来状态也不差,但本赛季的 Le Aile 表现实在是天壤之别。
詳しい試合内容にまで目を通す気にはならず、スマホの画面を落としてテーブルの上に置く。
没有心情去详细查看比赛内容,将手机屏幕关闭,放在桌子上。
そしてその向こう、テーブルの中ほどに置かれたグラスに手を伸ばしたところで、腰を浮かせなければ届かないことに気付いて顔をしかめた。
然后在那对面,伸手去拿放在桌子中间的玻璃杯时,意识到如果不抬起腰就够不到,皱起了眉头。
今は立ち上がるわけにはいかない事情があったからだ。
因为有些情况不能站起来。
「むにゃむにゃ」 「嗯嗯唔唔」
タイミングよく元凶の寝言が上がる。 恰巧这时元凶的梦话响起。
凛は視線を落とし、その寝顔を見つめる。 凛垂下视线,凝视着那张睡颜。
筋肉のつまった、到底寝心地がいいとは思えない太ももに頭を乗せて、潔世一が健やかに寝息を立てていた。
洁世一的头枕在肌肉紧实、无论如何也称不上舒适的粗壮大腿上,安稳地打着鼾。
移籍はまだ先だが、準備のため彼は今日フランスを訪れていた。都合がいい宿泊先として選ばれたのが凛の家だ。明日には現在の拠点であるイングランドに戻る予定である。
虽然转会还在未来,但为了准备,他今天来到了法国。作为方便的落脚点,他选择了凛的家。计划明天返回目前所在的英格兰基地。
寝るならベッドで寝ろという気持ち。そろそろ足が痺れそうだという予感。先程の記事により発生した何とも言い難い感情。
睡觉的话就到床上睡吧,这种心情。感觉脚快要麻了。刚才那篇文章引发的难以言喻的情感。
そんな諸々の葛藤をよそに、潔はきわめて安らかな顔で眠っている。
尽管有这些纷繁复杂的纠葛,洁却极其安详地睡着。
段々と腹が立ってきて、その顔を覗き込む。覗き込んだ寝顔に凛の影が落ちる。
渐渐地火气上来了,探头去看那张脸。凛的影子落在那熟睡的面容上。
そのまろい頬をつつく。こっちの気も知らずにぐーすか寝こけやがって、という鬱憤を目一杯込めた。
轻轻戳了戳那柔软的脸颊。这家伙居然毫无察觉地呼呼大睡,心中郁愤难平。
「…」
寝息が止まる。薄く開いていた口元がきゅっと引き締まり、眉間に皺が寄る。
呼吸声停了下来。原本微微张开的嘴角紧闭,眉间皱起。
起きるだろうか、と凛が身構えたとき、その顔が綻んだ。
凛正准备应对他醒来时,那张脸却绽放了笑容。
「…ふ」 「…呼」
何がおかしいのか、潔は笑う。うっすらと目が開く。
洁笑了,不知何事如此有趣。他的眼睛微微睁开。
ぼんやりとした眼差しが、頭上にある顔を捉える。 朦胧的目光捕捉到了头顶上的那张脸。
「りん、」 「凛,」
返事はしない。凛はただじっと、無言でその顔を見つめる。
没有回应。凛只是静静地,无声地凝视着那张脸。
そうしているうちに、ゆるゆると潔の瞼が下がっていく。やがて、再び寝息が漏れ始める。結局目覚めるには至らず、眠りの淵に戻ったようだ。
在这期间,洁的眼睑缓缓垂下。不久,再次开始发出轻微的鼾声。最终未能醒来,似乎又回到了睡眠的深渊。
夢でも見ているのだろうか。その表情は随分と幸せそうだった。
是在做梦吗?那表情看起来相当幸福。
二人きりのリビングルームに、呼吸の音が静かに響く。
两人独处的客厅里,呼吸声静静回响。
凛は溜息をついて身をかがめ、潔の耳元で囁いた。 凛叹了口气弯下身子,在洁的耳边低语。
「…さっさと起きろ、ばか」 「…快点起来,笨蛋」
起こさないように、そっと。 为了不吵醒你,轻轻地。
小さな小さな声で。 用小小的声音。