正夢 | Privatter+ nightrain
预知梦 | Privatter+ 夜雨
正夢
预知梦
2024年8月25日発行 パスワードは頒布済「正夢」の2ページ目に記載しています。
2024 年 8 月 25 日发行 密码已随刊分发,详见《预知梦》第二页。
第一章
重く鈍いグレーの雲間に、目の眩むような閃光が走った。ビクンッと肩先を跳ねた後、窓から身を乗り出すように、降りしきる雨の間隙へと目を凝らす。暗雲立ち込める空が二度光り、青白い稲妻が爆音を上げ山の裾を叩いた。触れるものすべての命を奪い、地に恵をもたらす力強さ。そんなエネルギーの塊を息を呑むほど間近に見て、オレは無意識の間に、ゴクリ、と喉を鳴らしていた。ゴロゴロと低く唸る雷鳴が、太鼓の打音のように腹の底へ響いてくる。今、また一閃が落ちた。猛獣の咆哮を思わせる轟音に身を竦ませつつも、肌の下で爆ぜる興奮に息が上がり、全身がパチパチと粟立っていく。
厚重灰暗的云层间划过一道令人目眩的闪光。肩膀猛地一颤后,我几乎将半个身子探出窗外,在倾盆大雨的间隙中凝神望去。阴云密布的天空两次亮起,青白色的闪电伴着轰鸣击中山麓。那股能夺走一切生灵又赐予大地恩惠的磅礴力量。如此近距离目睹这团令人屏息的能量块,我不自觉地咽了口唾沫。低沉的雷声如擂鼓般在腹腔内震荡。此刻又一道电光劈落。在野兽咆哮般的轰响中瑟缩身体的同时,皮肤下炸开的兴奋感却让呼吸急促,全身泛起细密的鸡皮疙瘩。
都会の真ん中じゃあ、雷雨なんてただの不幸の極みだった。だが、そこらに生息する猿よりも人口の少ない山奥では、爆音が空を割る夜ですら、さして特別じゃないらしい。海から吹く湿った風が山の斜面へとぶつかって、上昇した空気はあっという間に膨らみ、分厚い雨雲を生む。だからここは余所よりも雷が多いのだと、おばあはゆるゆると茶を傾けつつ教えてくれた。
在都市中心,雷暴雨不过是场极致的不幸。但在这比栖息山野的猿猴数量还稀少的人烟深处,连响彻夜空的霹雳似乎也稀松平常。从海上吹来的潮湿气流撞向山坡,上升的空气瞬间膨胀形成厚重雨云。所以这里的雷暴比别处更频繁——奶奶慢悠悠啜着茶这样告诉我。
おばあ。詳しく言えば、父方のばあちゃん。オレが赤ん坊の頃に何度か会ったらしいけれど、その頃の記憶はさすがに何ひとつ残っていなかった。小ぢんまりとした身体は成長期真っ只中のオレより小さくて、真っ白な髪をひっつめ、穏やかな顔でニコニコしている。辛うじて電気が通っているようなこの場所で生活を続ける小柄な老女を、オレは初め、少なからず馬鹿にしていた。けれどそんな自分こそ馬鹿だったのだと、彼女と顔を合わせてすぐ身に染みた。当時確かにクソガキだったオレでも、明哲な師を軽んじ続けるような、そんな愚か者ではなかった。
奶奶。准确地说,是父亲的母亲。据说在我还是婴儿时曾见过几次,但那段记忆自然早已荡然无存。她那娇小的身躯比正值青春期的我还要矮小,雪白的头发扎成发髻,总是面带温和笑容。在这个勉强通电的地方生活着的瘦小老妇人,最初我多少有些轻视。但很快我就痛切地意识到,愚蠢的正是我自己。即便当时确实是个混账小鬼的我,也不至于持续轻视这样一位睿智的师长。
怖いなら手を握っててあげようか、なんてことは、おばあは一度も言わなかった。もちろんオレだってそんな言葉を求めてたワケじゃねえ、ただでさえ生意気盛りの反抗期だ。だからこそ、おばあのその放任が心地よかった。ひとりの大人になれた気がした。屋根を叩く雨音に負けぬようおやすみと声を出して、元は物置だったという自室に戻る。真っ暗闇を透かすガラス板には絶え間なく雨粒が打ちつけられ、耳が潰れそうな程に喧しいのに、空間はシンと静まり返っていた。じっとりと忍び込んでくる湿気でベタつく腕を摩りながら、時折青白く光る夜空を、じっと見上げ続ける。
害怕的话要牵手吗——奶奶从未说过这样的话。当然我也并非渴求这种话语,毕竟正值桀骜不驯的叛逆期。正因如此,奶奶的放任让我感到舒适。仿佛自己真正成为了大人。道晚安的声音几乎要被敲打屋顶的雨声淹没,我回到原本是储藏室的卧室。穿透黑暗的玻璃窗上不断砸下雨滴,喧嚣得几乎震破耳膜,整个空间却陷入死寂。摩挲着因渗入的湿气而黏腻的手臂,我持续凝视着偶尔泛出青白色光芒的夜空。
そんな幼い日の記憶が、それこそ雷光のように脳裏を駆け巡った。それはアイツの
那些幼时的记忆,此刻正如雷光般在脑海中奔窜。那是那家伙的――ルーク・サリバンのファイトを初めて目の当たりにした瞬間だった。
那是我第一次亲眼目睹卢克·沙利文战斗的瞬间。
ここメトロシティへ赴くことになったのが、今からおよそ二年前のこと。香港の双龍と呼ばれるユン哥・ヤン哥の下で街を守る術を学んだオレは、『お前の助けを必要としている人々がいる』と送り出され、この街に根を下ろすと決めた。アメリカの地は親に連れられ幾度か訪れていたが、本格的に居を構えると決めたのは、この時が初めてだった。
来到这座大都会,已是大约两年前的事了。曾在香港被称为双龙的云哥与扬哥门下学习守护城市之道的我,被一句『有人需要你的帮助』送出了师门,于是决定在这座城市扎根。虽然幼时曾随父母多次造访美国土地,但真正下定决心在此定居,这还是头一回。
この街へ降り立ったその日は丁度、格闘トーナメントが開催される日取りだった。ウキウキと頬を紅潮させた人々が皆、街外れのスタジアムへと足早に向かって行く。みるみる内に会場へと吸い込まれていく人々を見て、オレもフと足を止めた。元・超犯罪都市として悪を討った歴史の残るここメトロシティでは、その血脈が今も色濃く残っている。つまり、この街にはストリートファイト好きが大勢集っている、ということだ。その証拠に、この街に降り立ってからというもの、数え切れないほどファイトを吹っ掛けられた。オレ自身無益な争いは好まないが、そうは言っても、強さってものには人一倍興味がある。今日こうやってトーナメントが開催されているのも、きっと何かの縁だろう。受付でチケットを一枚購入すると、ドリンクを片手に指定の座席へ腰を落ち着けた。
踏上这座城市的当天,恰逢格斗锦标赛开幕。双颊兴奋泛红的人们都步履匆匆地赶往城郊的体育场。望着如潮水般涌入会场的人群,我也不由自主停下了脚步。这座曾以超级犯罪都市闻名、留有惩恶历史的地铁城,至今仍流淌着浓厚的血脉——换言之,街头格斗爱好者在此大量聚集。证据就是,自从踏入这座城市,我已数不清遭遇了多少次挑衅。虽然我本人不爱无谓争斗,但对'强大'这件事却比常人加倍好奇。今天能赶上锦标赛召开,想必也是某种缘分吧。在售票处买了一张门票后,我握着饮料在指定座位安坐下来。
ド派手な演出と共に、ファイターたちが次々とリングへ登上していく。性別や年齢、体格やファイトスタイルなど、そのどれをとっても個性豊かだ。そんな中で共通して言えるのは、誰もが手抜かりなく自らを鍛え上げ、その腕に力を込め振るっているということ。活き活きとした表情で汗を散らすファイターたちを前に、深く腰掛けていた身が知らず知らずに前のめりになっていく。
伴随着华丽的舞台效果,格斗者们接连登上擂台。无论性别、年龄、体格还是战斗风格都各具特色。而他们唯一的共同点,就是每个人都经过千锤百炼,全力以赴地挥洒着力量。面对那些神采飞扬挥洒汗水的斗士,原本深陷座椅的我不知不觉已探出了身子。
「次の挑戦者は、ルーク・サリバンッ!! 身長六フィート一インチ、体重一九八ポンド! 図太い腕から放たれる重量級パンチが見ものだぜェッ!!」
"『下一位挑战者是——卢克·沙利文!!身高六英尺一英寸,体重一百九十八磅!那双粗壮手臂挥出的重量级拳击绝对不容错过!!』"
ハキハキと歯切れのいい解説と共に姿を現したのが、ギラッギラの闘志を剥き出しにする金髪碧眼のヤンキーだった。大きく手を振りあちこちにファンサービスを送ると、その視線の先からは割れんばかりの歓声が沸き起こる。なるほど、この男が今日の花形らしい。
伴随着干脆利落的解说登场的,是一位金发碧眼、斗志昂扬的暴走族。他大幅度挥手向四周粉丝致意,视线所及之处爆发出震耳欲聋的欢呼声。原来如此,看来这男人就是今天的主角了。
シュッシュッ、と拳で空を切り、ルーク、と呼ばれたファイターは対戦相手と向かい合った。相手は山のように大きな身体の持ち主で、動きは遅いが一発一発の攻撃が重い。鎧のように鍛え上げられた筋肉にはダメージも通り辛そうで、なかなかに骨の折れる相手だと見た。これだと、ヤツには分が悪そうだ。
被称为卢克的拳手唰唰地挥拳破空,与对手对峙。对方拥有山岳般庞大的身躯,动作虽迟缓但每一击都势大力沉。那如铠甲般锻炼出的肌肉似乎难以造成有效伤害,看来是个相当难缠的对手。照这样下去,那家伙的处境可不妙啊。
――
——なんて、オレの読みは完璧に外れちまった。ぽかん、と口を開いている間に巨体が宙に舞い、リング端に叩きつけられる。ドンッ、と跳ね返ったところを、間髪を入れず凶暴な笑顔が向かい打つ。血管を浮かび上がらせる太い腕が空気を摩擦して、チリチリッ、と音を立て火花が弾け散った。
我的预判彻底落空了。在愕然张口的瞬间,巨躯已腾空而起,重重砸在擂台边缘。伴随着砰然回弹的声响,凶暴笑容毫不停歇地迎面痛击。青筋暴起的粗壮手臂摩擦空气,发出噼啪声响,火花四溅。
雷光だ。と、オレはその時確かに思った。地面を深く抉り森を焼くような、畏怖を覚える苛烈さ。真っ直ぐと相手を射抜く青い眼光は、今この為に生きているんだと叫ばんばかりに輝いている。闘える喜びを剥き出しにする笑顔は、膝をつく対戦相手だけでなく、この場所にいるすべての人間を圧倒する。
那是雷光。在那一刻我确实这么想着。足以撕裂大地焚毁森林的、令人战栗的暴烈。笔直贯穿对手的青色目光,仿佛在呐喊此生就为此刻而活。那份赤裸裸展现战斗欢愉的笑容,不仅令跪地的对手,更让在场所有人为之震慑。
この瞬間オレはきっと、あの正体を見た。山を揺るがす咆号を上げ、雲の隙間でバチバチッと音を立てる、目が眩むような光の正体。雷公、雷の神。心の中で空を見上げ続ける幼いオレを、身体の芯から震え上がらせ、深く胸を打ちそして、全身を粟立たせる存在。血が逆流するような驚きと興奮の入り混じる、憧憬。これこそが、オレがルーク・サリバンを知った、初めての瞬間だった。
这一瞬间我必定窥见了那本质——撼动山岳的咆哮,云隙间噼啪作响的炫目之光。雷公,司雷之神。那个让幼时仰望苍穹的我从骨髓深处战栗,直击胸膛令全身起栗的存在。血液倒流般的惊愕与亢奋交织的憧憬。这正是我初识卢克·沙利文时,最初的瞬间。
「――そんなコト言うならルークがやってみなよ! そしたら悪いのはオレのセンスじゃないって、すぐに分かるはずだもんッ」
既然你这么说,那卢克你自己来试试啊!这样马上就能明白,错的不是我的品味了吧!」
毛深い褐色の腕を組み、むう、とわざとらしく頬を膨らませて立腹を示す甘いマスク。不機嫌なその横顔を後目に、残り少なくなった茶を啜った。甘ったるいものはあまり好まないが、このジャスミン茶をゼリーにして沈めたデザートティーは、なかなかオレの口に合う。
毛茸茸的褐色手臂交叉在胸前,故意夸张地鼓起脸颊佯装生气的甜美面容。余光瞥见那张不悦的侧脸,我啜饮着所剩无几的茶。虽然不太喜欢甜腻的东西,但这款用茉莉花茶做成冻状沉底的甜点茶,意外地很对我的胃口。
「へえ、そんなコト言っちゃうんだぁ?」
"「诶,你居然会说这种话啊?」"
ラシードの隣りに腰掛けるソイツは、ケンカを吹っ掛けて遊ぶ子どものように、ニンマリと片頬を釣り上げ友人を煽り続けている。羽根のように広がる逞しい眉を互い違いにして、目元を縦に走る傷跡を歪めて笑うその顔は、傍目から見ているだけでも腹が立つ。コイツ、人の神経を逆撫でするのが生まれつき上手いんだろうな。それって全くもって褒められたモンじゃねえよ。目の前で繰り広げられる口喧嘩をBGMにしつつ、すっかり空になったグラスをテーブルの真ん中へと押しやった。
坐在拉希德旁边的那个家伙,像挑衅打架玩耍的孩子般,咧着嘴单边脸颊上扬,不断煽动着朋友。他那如羽毛般张扬的粗眉高低错落,纵贯眼角的伤疤因笑容而扭曲,这副模样光是旁观就让人火大。这家伙,天生就擅长刺激别人的神经吧。这可不是什么值得夸奖的事。将眼前上演的争吵当作背景音乐,我把彻底空了的玻璃杯推到桌子正中央。
いつだって手の中のカメラに向かいウインクを飛ばしているから、ラシードが動画配信にご熱心なことはオレだって重々承知だ。しかし、その配信が頻度と著名度に見合わぬほど低視聴率だと知ったのは、ついさっきルークから聞かされてからだ。そのことをネタにして、ルークがラシードの肩を小突き始めたのが数分前のこと。気付けばあの温厚なラシードが眉を吊り上げて、そう言うならルークがやってみたらいい! 動画投稿の世界は厳しいんだ! と肩を怒らせていた。
因为总对着手里的摄像头抛媚眼,拉希德热衷视频直播这事儿我也心知肚明。但直到刚才听卢克说起,我才知道他的直播观看量低得与更新频率和名气完全不符。几分钟前,卢克开始用这事当梗戳拉希德的肩膀。回过神来,那个温厚的拉希德已经竖起眉毛,怒气冲冲地说"那卢克你自己试试看啊!视频投稿的世界可是很残酷的!"
「へえ、いいのお? あっと言う間にラシードのリスナー数抜いちまうかも知れないぜえ?」
"「哇哦,真的可以吗?说不定转眼间就能超过拉希德的听众数量呢!」"
「どうせ口だけだろ! あーもうほら、今すぐチャンネル立ち上げて!」
"「反正就是嘴上说说吧!啊真是的,你看,现在就立刻开个频道!」"
「オーケーオーケー、目にモノ見せてやるから。ああそうだ! ジェイミー、俺と一緒に配信しようぜ。ひとりでやってもつまんねえしさぁ」
"「好啦好啦,我会让你大开眼界的。对了!杰米,和我一起直播吧。一个人做也挺无聊的嘛」"
「……はあ?」
哈啊?
完全に外野だと話半分以下にしか聞いていなかったが、垂れがちな青い目がこちらを射貫くので、一体何事かと口を開いたまま聞き返した。何言ってんだお前、さっきからゴチャゴチャ言い合ってたのはお前とラシードの問題で、オレはなにひとつ関係ねえだろ。
虽然完全置身事外只当耳旁风听了个大概,但那对总是耷拉的蓝眼睛突然锐利地刺过来,让我张着嘴下意识反问出了什么事。你胡说什么呢,刚才吵得不可开交的是你和拉希德的问题,跟我半毛钱关系都没有好吧。
「あああー!! ズルい!! ジェイミー使うのは反則ッ!! 彼と一緒なら何もしなくたってリスナー増えるでしょ! ルークとオレの人気を比べるんだから、他のヤツ出すの絶対禁止ッ!」
"「啊啊啊——!!太狡猾了!!用杰米是犯规的!!只要和他在一起什么都不做听众也会增加吧!要比就比我和卢克的人气,绝对禁止带其他人出场!!」"
「な~に言ってんだよ、そっちこそ世界中のファイターと『闘ってみた』配信がメインだろ。だったら、俺はジェイミーを選ぶってだけだぜ。さーて、どうしよっかなぁ。ファイト中に回すカメラなんか持ってねえし、手始めにゲーム配信でもやろっかな? っつーことで、ジェイミー、いいだろ? 一緒にやろうぜ」
"「胡~说什么呢,你那边不也是以和全世界格斗家『试试对战』的直播为主嘛。所以,我只是选了杰米而已。好啦~该怎么办呢。打架时又没带旋转摄像机,要不先试试游戏直播?就这么说定了,杰米,没问题吧?一起玩呗」"
ニカッ、と白く納まりのいい歯を剥き出しにする満面の笑みが、オレの顔を無遠慮に覗き込む。オレは脳筋クンの胡散臭い笑顔と、その隣りに並ぶ髭面の渋い表情を見比べ、ううん、と腕を組んだまま空を見上げた。青空にはモコモコと白い雲がくっ付き合い、山のようにうず高く盛り上がっている。
他咧开嘴露出整齐洁白的牙齿,满脸堆笑地毫不客气凑近我的脸。我对比着肌肉笨蛋可疑的笑容和旁边那张蓄着胡须的严肃面孔,抱着胳膊仰头望天。湛蓝天空里蓬松的白云相互依偎,像山峦般高高堆叠。
配信、なんてものには、正直なところ全くもって興味がない。ブレイキンの配信をしてほしいと声をかけられたこともあるが、オレがしているコレは表現のひとつであって、誰かに認められる為のものじゃない。しかし他者の目があってこそ初めて表現というものが完成する、のは確かでもあって
说实话,我对直播这种东西毫无兴趣。虽然也有人提议让我直播霹雳舞表演,但我所做的这一切只是自我表达的一种方式,并非为了博取他人认可。不过确实,唯有通过他人的目光,表达才算真正完成。――
——って、ちょっとばかり脱線しちまった。
啊,稍微跑题了。
オレは今まで、自分が興味ない物事には、興味ない、の一言ではっきりと断ってきた。今回のゲーム配信とやらにも同じく興味は湧かない。それでも、今こんなにも迷っているのは何故だろう。強い日差しの下で目を刺すように主張する、くすんだブロンドを見やる。
迄今为止,我对不感兴趣的事物向来直截了当回绝。这次所谓的游戏直播同样提不起兴致。可为何此刻竟如此犹豫不决。灼目烈日下,那缕褪色金发刺眼地晃动着。
「……なんだよ。オレとお前が組めば、ラシードなんて目じゃねえって言いてえの?」
搞什么。你是想说只要咱俩联手,拉希德根本不够看?
ぷくぷくと膨れる好奇心に身を委ねてみれば、オレを見詰めていた水色が幾度か瞬き、ぱぁ、と顔中を明るくした。更には、そうそうそうそう、とかさばる身を乗り出して、丸いテーブルを覆うかのように腕を伸ばし、オレの肩をグンと引き寄せた。
将身体交给噗噗膨胀的好奇心后,那双凝视着我的水蓝色眼睛眨了几下,突然整张脸都亮了起来。不仅如此,还一边说着对对对、一边挪动笨重的身体探过来,手臂几乎要覆盖住圆桌似地伸展开,一把将我拉近。
「その通り! ラシードどころか、エターニティだって目じゃねえよ!」
"“没错!别说拉希德了,永恒之塔都算个屁!”"
額が触れ合いそうなほどに寄せられたスカーフェイスへと、にんまり、と口角を上げたまま目を細める。へえ、あのエターニティよりも、か。それなら、面白そうじゃん。
对着几乎要额头相贴的骷髅脸,我咧开嘴角眯起眼睛。嚯,比那个永恒之塔还厉害吗?那可就有意思了。
「……ジェイミー、本当にいいの? それに、キミたちふたりが喧嘩もなしに、無事配信を続けられるとは思わないんだけど~」
杰米,真的可以吗?而且,我觉得你们两个不吵架就能顺利继续直播什么的,不太可能啦~
じっとり、と目を据わらせこちらに目配せするラシードが、ぽってりと厚みある唇を突き出して言う。どこか不服そうなその言葉尻には、オレたちの仲を心配するというよりも、チャンネルの登録者数が抜かれたら、と自らを案じる気持ちの方が多分に含まれてそうだ。そんなラシードへと、脳筋クンは馬鹿デカい手をひらひらと振ってみせる。
拉希德那双湿漉漉的眼睛直勾勾地盯着这边,努了努丰厚的嘴唇说道。那带着几分不满的尾音里,与其说是担心我们的关系,倒不如说更多是忧虑自己频道的订阅量会被超越吧。面对这样的拉希德,肌肉笨蛋晃了晃他那双大手。
「ずっと続けるとは言ってねえよ。一旦のコラボ、って感じだろ? ダラダラやってもしょうがねえし
"“我可没说会一直继续下去。就是一次临时合作的感觉吧?拖拖拉拉的也没意思"……よし! ラシード、期限決めてくれよ」
好!拉希德,你来定个期限吧」
「ん~
"「嗯~"……それじゃあ、今日から二カ月後、そっちとオレのリスナー数で競うってのはどう? もちろんオレだって、色んなことに挑戦して万バズ狙ってくからね!」
那这样,从今天起两个月后,用你我的听众数量来比一场如何?当然我也会全力以赴挑战各种事情,争取引爆全网!」
「お~いいぜ。ま、頑張りが裏目に出て、数少ないファンがごっそり減らなければイイな!」
"「哦~不错嘛。不过,可别努力过头适得其反,把仅有的几个粉丝都给吓跑咯!」"
「ああもう! ルークは自分のことだけ心配してろよ!」
"「啊啊真是的!卢克你管好自己就行啦!」"
制汗剤のにおいを残し、ついと離れた脳筋クンを見送り、再びワアギャアと騒ぎ始めたふたりを眺める。何故コイツらの諍いに巻き込まれてしまったのかサッパリ分かんねえままだが、言いようのないワクワクで胸が高鳴っているのは、確かだ。
目送那个浑身散发着止汗剂味道的肌肉男匆匆离去,我再次看向那两个又开始吵吵嚷嚷的家伙。完全搞不懂自己为何会被卷入他们的争执,但胸口确实因难以名状的兴奋而怦怦直跳。
ふふっ、と鼻先で息をついて、子どものような喧嘩を続ける王子サマと脳筋クンを見る。ルークはチラリと視線を寄越すと、青い瞳をバチン、と瞑ってウインクを飛ばした。暑苦しいハートマークがふよふよと飛んでくる心地がして、空中をシッシッと切るように指先で払った。
噗嗤——从鼻尖呼出一口气,看着王子大人和肌肉笨蛋像小孩子一样继续争吵。卢克瞥来一眼,啪地闭上蓝眼睛,抛来个 wink。仿佛能感受到黏糊糊的爱心符号轻飘飘飞过来,我像驱赶蚊虫般用指尖在空中唰唰划了两下。
「ジェイミーは、ゲーム歴どんくらい?」
"「杰米玩过多少年游戏?」"
「んー? ほとんどしたことねえな。パソコンもゲーム機も持ってねえし」
"「嗯——?几乎没玩过。既没有电脑也没有游戏机」"
「は!? マジかよ! はぁ~、つくづくお前とは違う人生歩んできたなって思うぜ。俺がガキの頃は、ゲームするか、喧嘩するか、ダチとつるんで遊び回るかの三択だったもんな!」
"「哈!?真的假的!唉~我真是打心底觉得和你过着完全不同的人生啊。我小时候的选项只有打游戏、打架或者跟哥们儿到处鬼混这三样!」"
「遊びばっかかよ」
"「就知道玩」"
何やら操作するルークの隣りに、ちょこん、と添えられた椅子を引き腰を下ろす。コイツの部屋に入ってからはどこもかしこも散らかってやがると眉を顰めていたが、ここパソコン部屋だけは比較的片付いていた。ギラギラと七色に光るキーボードを見守っている間に、意外なまでに器用に動く太い指が配信環境を整えていく。手渡されたヘッドセットを装着し、カメラの位置やコメントの表示位置などを聞いた。
我在正操作设备的卢克身旁轻轻拉过椅子坐下。虽然刚进这家伙房间时对满屋狼藉直皱眉,但唯独这间电脑房还算整洁。在盯着那闪着七彩炫光的键盘时,意外灵巧的粗手指已迅速调试好直播设备。我戴好他递来的耳麦,询问摄像头位置和弹幕显示区域等细节。
「なあ」
"「喂」"
「ん?」
"「嗯?」"
「ホントにオレで良かったのかよ。さっきも言った通り、オレはゲームも配信も守備範囲外だぜ」
"「选我真的没问题吗?刚才也说了,游戏实况什么的完全不在我的守备范围内啊」"
ちゃぷり、と薬湯で唇を湿らせながらそう言うと、ルークは何やらキーボードを叩きながらニッと笑みを作る。
“噗哈——”湿润的嘴唇离开药汤发出声响,正在敲键盘的卢克闻声咧嘴一笑。
「なーに言っちゃってんの、お前とやりたいから声掛けたんだって。ラシードには感謝してんだよ。だってホラ、こうやってお前をウチに招く口実ができたんだし」
"“胡说什么呢,正因为想和你搭档才邀请的啊。还得感谢拉希德呢——你看,这不就有借口把你请来我家了吗?”"
機嫌良く歌うかのように口にするその横顔を見やりながら、ふうん、と鼻先を鳴らし答える。どうやら、誰でもイイ、というワケではなく、このオレ様でなきゃならない、というご指名によりこの場所へ召喚されたようだ。遅れて湧き上がる照れ臭い感情に口を尖らせながら、ちらり、と四角い顔を横目に見る。同時に、こちらへと視線を寄越す碧眼とばっちりと視線が絡んで、目が覚めるような驚きと共に、ゴク、と喉が鳴った。
望着他哼歌般说话的侧脸,我轻哼着用鼻音回应。看来并非随便谁都行,而是非本大爷不可的特邀召唤。迟来的羞赧感让我撅起嘴,偷瞄了一眼那张方正的侧颜。恰巧撞上他投来的碧蓝目光,触电般的惊醒感让喉咙“咕咚”一响。
「よっしゃ! んじゃそろそろ始めるか!」
"「好嘞!那咱们差不多该开始了吧!」"
「……何すんの」
要干嘛?」
「まずは小手調べに、このフリーゲームはどうかなって。簡単に言や間違いさがしだな。スタート時と違うところがないか探して、間違いがあれば道を戻る、なければ先に進む。そんだけ」
"「先来个热身小游戏如何?简单来说就是找不同。看看和开始时有没有不一样的地方,有错就退回原路,没错就继续前进。就这么简单」"
「ふーん、簡単そうじゃん」
"「哼,看起来挺简单的嘛」"
「でも単純じゃねえからな? あっちこっち丁寧に見て回んねえと、またイチからやり直しになるぜ~」
"「可别想得太简单了?要是不仔细检查每个角落,又得从头再来一遍哦~」"
ひとつのカメラの画角に納まるよう、ズズズと椅子を近付けヤツと顔を寄せる。カウントダウンがゼロになると同時に配信が始まり、ルークに促され虚空に向かい名を名乗った。
为了确保两人能同时出现在一个摄像头的画面里,他吱呀吱呀地把椅子拖近,与对方脸贴着脸。倒计时归零的瞬间直播开始了,在卢克的催促下,他对着虚空报上了自己的名字。
「さーて! 始まったぜ、期間限定でお届けするゲーム配信! 俺がルーク・サリバンで」
"「好嘞!限时游戏直播正式开始!我是卢克·沙利文」"
「あー、ジェイミー・ショウだ。
"「啊,我是杰米·肖。"……なあ、これマジで配信されてんの?」
喂,这真的在直播吗?」
「されてるされてる。ホラ、見ろよここの数字。今観てくれてる人数がリアルタイムで表示されんの」
"「被关注了被关注了。快看这里的数字,现在实时显示着观看人数呢」"
そう太い指が示す数字は、みるみる内に増加しあっと言う間に驚くような人数となった。全く予想だにしなかった人気に目を瞬かせている間に、ルークは先程言ってた間違い探しとやらを起動する。
粗壮手指指向的数字急速攀升,转眼间就达到了惊人的数值。正当他为这完全出乎意料的人气眨眼发愣时,卢克启动了刚才提到的找茬游戏。
そのゲームは、ここメトロシティにある地下鉄を舞台にしたものだった。構内を歩き回り、何かしら変化があれば、それを変異とみなし改札まで引き返す。ルール自体は単純だが、その変異とやらが馬鹿馬鹿しいものからジャンプスケアまで、多種多様に用意されている。さっきまでウロウロと歩き回っていただけのキャラクターが猛然と追いかけてきた時には驚いたが、隣りに並ぶ脳筋クンが野太く叫ぶ声量にこそ度肝を抜かれた。耳元でぎゃあぎゃあ叫ぶんじゃねえよと小突けば、情けない泣きっ面がこちらへと突き付けられた。
这个游戏以地铁城的地下铁为舞台。玩家需在站内四处走动,发现任何异常变化就视为变异,必须返回检票口。规则虽然简单,但那些所谓的变异从滑稽可笑到跳跃惊吓应有尽有。当原本只是闲逛的角色突然猛追过来时,着实让人吓了一跳,但更令人震惊的是身旁肌肉男爆发出的粗犷吼声。用手肘捅他抱怨「别在耳边叽叽喳喳乱叫」,结果对方面露可怜巴巴的哭相凑了过来。
「い、今のは反則だろどう考えてもッ!!」
"「这、这怎么看都是犯规吧!!」"
「だからって耳元で叫ぶ必要はねえだろッ!!」
"「就算这样也没必要在耳边吼吧!!」"
初めは肌を刺すような緊張を覚えていたが、そんなものはコイツと騒いでいる内に、あっさりと消え去ってしまった。なんなら多くの目がオレたちへと注がれていることも忘れ、あーだこーだと言い合ったり、喉の奥まで見えちまっても構わぬまま大口を開けて笑った。すべての変異を見つけ出す頃にはリスナー数も安定して、送られてくるコメントのひとつひとつに目を通せるほどリラックスしていた。
起初还感到如芒在背的紧张,但和这家伙闹腾的过程中,那种感觉轻易就消散了。甚至忘记了有许多目光正聚焦在我们身上,只顾着互相抬杠,哪怕喉咙深处都看得一清二楚也毫不在意地放声大笑。等到发现所有变异时,听众数量已经稳定下来,我也放松到能逐条阅读每一条发来的评论了。
「『意外。ふたりって仲が良いんだ』はは! だってよ。随分と勘違いされてんな」
"「『没想到。你们俩关系挺好的嘛』哈哈!他们这么说。可真是天大的误会啊」"
「あ~そうだよ、俺とジェイミーはマブダチってやつだからな!」
"「啊~没错,我和杰米可是铁哥们儿那种关系!」"
「にゃッははは! コイツの言うこと間に受けんなよぉ。このオレ様が合わせてやってるだけだからなぁ」
"「喵哈哈哈!别把这小子的话当真啦。不过是本大爷陪他玩玩而已~」"
気分よく薬湯を呷って、隣りに座るデカい身体を見やる。脳筋クンは分かりやすく不貞腐れた表情を作って、ンなツレねえこと言うなよう、と猫なで声を披露した。うええ、やめろっつーの気色悪い。
心情舒畅地啜饮着药汤,瞥向身旁那个高大的身躯。肌肉笨蛋正毫不掩饰地摆出闹别扭的表情,用甜得发腻的声音说着'少说这种不靠谱的话啦'。呜哇快住口,恶心死了。
和気あいあいとした空気のまま、第一回の配信は無事幕を下ろした。気付けば三時間近く経過している。配信開始時には夏色の空が広がり、セミの声も力強かったが、さすがに外はもう真っ暗闇だろう。夜が更けると、オレの一日が始まる。半分ほどに中身の減った瓢箪を携え直していると、パソコンに向かっていたルークがひょいと顔を上げた。
在和睦融洽的氛围中,第一次直播顺利落下帷幕。回过神来已过去近三小时。开播时还是夏空万里蝉鸣鼎沸,此刻外面想必早已漆黑一片。当夜色渐深,我的一天才正要开始。正重新系好只剩半壶酒的葫芦时,对着电脑的卢克突然抬起了头。
「これから中華街?」
"「现在去唐人街?」"
「おう、見回りしねえとな」
"「喂,得去巡逻了啊」"
「俺も一緒行っていいか? 腹減ったけど家に食うモン何もなくってさぁ。久々に、なんだっけ、シャオピン? あの甘辛い肉が入ってるヤツ。アレ食いたいなーって思ってるんだけど」
"「我能跟你一起去吗?虽然肚子饿了但家里啥吃的都没有。突然想吃那个叫啥来着,小笼包?就是里面塞满甜辣肉馅的那个。超想吃啊——」"
「ああ、ならオススメの店があるぜ。どうせだし、オレも腹ごしらえして行くか」
"「啊,那我推荐家店。反正顺路,我也先填饱肚子再走吧」"
そう返すと、薄暗い室内でモニターに照らされる顔が一気に明るさを増した。準備する、と言い置きドタバタと席を立ったかと思うと、レッグポーチを装着しキャップを被ったいつもの恰好で戻ってきた。ほら、行こうぜ。背を叩く力強い手に押されて、ゆっくりと玄関を出る。知らぬ間に延長戦に入ったな。そう気付くと同時に、心の縁がちょっぴりとむず痒くなった。
这样回应后,昏暗房间里被屏幕照亮的脸庞骤然明亮起来。'我去准备',丢下这句话就慌慌张张离席的他,转眼便以系好腿包、戴好鸭舌帽的惯常装扮回来了。'喏,走吧'。被那只拍在背上强有力的手推着,我慢慢走出玄关。不知不觉间竟进入了加时赛呢。意识到这点的同时,心弦被轻轻拨动了一下。
「いっつも何時くらいまでやってんの」
"‘你们平时都营业到几点啊’"
「ん?」
"「嗯?」"
「見回り」
"‘巡逻’"
広く紅虎路を見回せるこの麻雀店の屋上に立ち、のんびりと見下ろしていた大通りから、声のする方へと視線を移した。ルークは紙袋いっぱい買い込んだ焼餅をムシャムシャと頬張りながら、赤いランタンの灯りにぼんやりと照らされている。薄暗い景色の中で、水色の瞳が発光しているようにも見える。
站在能俯瞰整条红虎路的麻将馆屋顶,我正悠闲地眺望着下方的大道,忽然循声转移了视线。路克正大口嚼着纸袋里买来的烧饼,被红色灯笼的光晕朦胧地笼罩着。在昏暗的景色中,他那水蓝色的眼眸仿佛在发光。
「そうだな、日によってマチマチだけど、大抵は日の出と共に店仕舞いだ。五時を回れば豆乳や粥を出す店が開き出すだろ? 街が目覚めて人の流れが生まれれば、オレの仕事は一段落ってワケだ」
"「是啊,每天情况不同,但一般日出就打烊了。过了五点,卖豆浆和粥的铺子就该开门了吧?等街道苏醒、人潮开始流动,我的工作也就告一段落了。」"
「ふうん。そう考えると、俺とお前の生活ってホントに正反対だよなー。こっちはお前が寝る時間帯に起きて、シャワーと朝飯まで済ませてっから」
"「嗯哼。这么一想,咱俩的生活还真是完全相反啊——我总在你睡觉的时间点起床,连淋浴和早饭都搞定了。」"
「ははっ、確かに。つってもオレも不規則だし、要請がありゃ昼間も顔出してるぜ。お前だって、夜勤の日もあるんだろ?」
"「哈哈,确实。不过我也作息不规律,有任务的话白天也会露脸。你也有上夜班的日子吧?」"
「まあな。そうじゃなくとも、FPSのやりすぎで寝不足のまま出勤、なんてこともザラだし」
"「算是吧。就算不是这样,因为打 FPS 太多睡眠不足就去上班也是常有的事」"
「お前
"「你这家伙"……そんなんで教官業が務まってんのかよ」
就凭这样也能当教官吗?
じっとり、と呆れるままに見返すと、ヤツは分厚い背を欄干に預けたままカラカラと笑った。そして口の中を満たしていた夕飯をゴクリと呑み込むと、光る目を細めてニッと微笑む。
我呆愣地回望过去,只见那家伙将厚实的后背倚在栏杆上,发出干巴巴的笑声。随后他咕咚咽下塞满口腔的晚饭,眯起发亮的眼睛,冲我咧嘴一笑。
「ま、そんなだから、それなりに忙しい俺だけど、それなりに融通は利くぜ」
"「嘛,就是这样,虽然我算是挺忙的,但也还算灵活啦」"
「……ンン?」
嗯?
「配信の話。ある程度なら、お前に合わせてやれるって言ってんだよ。で、次の配信いつやろっか?」
"「直播的事。某种程度上,我说过可以配合你的时间。所以下次直播什么时候开始?」"
中華街の温かな光に縁どられたまま、ニコーッ、と笑むその姿に瞬きを返す。あの配信の盛り上がり方なら、オレがいてもいなくても変わんねえんじゃねーの。なんて疑念は、呷った薬湯と共に胃の腑へと流し込んだ。くるり、くるりと目の前に垂れる前髪を指先に巻き、頭の中のスケジュール帳へと手をかける。
在中华街温暖灯光的勾勒下,他眯眼笑着的模样让我眨了眨眼。那种直播的热闹程度,有没有我都不会改变吧。这样的疑虑,连同啜饮的药汤一起咽进了胃里。我用指尖卷着垂落在眼前的刘海转啊转,开始翻动脑内的日程表。
「次、お前のオフいつなんだよ」
"「下次,你什么时候休息?」"
「明後日」
"「后天」"
「んじゃそこで。お前がオレの予定に合わせるとか意味分かんねえだろ」
"「那就这样吧。让你来配合我的行程安排什么的,根本说不通吧」"
「へへ、そう?」
"「嘿嘿,是吗?」"
「そーだよ。言っとくけど、夜はこっちに戻るからな。相手してやれるのは昼間の間だけだ、分かったか?」
"「没错。先说好,晚上我可是要回这边的。白天才有空陪你,明白了吗?」"
「アイアイサー、ジェイミー師父」
"「遵命,杰米师父」"
ピッ、と指先まで伸ばした分厚い手で敬礼を披露するハンサムが、一拍を置いた後に、一気に相好を崩した。大きな身体に対しアンバランスにも思えるベビーフェイスへ舌を突き出すと、四角い顔がニヤリと笑みを深めた。
英俊男子用粗厚的手掌行了个标准军礼,指尖绷得笔直。稍作停顿后,他突然卸下严肃表情。在那与魁梧身材反差鲜明的娃娃脸上吐出舌头,方正的面庞随即绽开促狭的笑容。
二度三度付き合ってやれば充分だろう、と初めは思ってたんだが。気付けば週に一度のヤツの休みに合わせ、明るい時間から配信を始めるのが恒例となっていた。平日に関わらず視聴率も好調らしく、その後のアーカイブもどんどんと再生回数が伸びている、らしい。オレなんて何をするワケでもなく、ゲームをするアイツの隣りに座って、ああでもないこうでもないとゲラゲラ笑っているだけなのにな。わざわざ時間を確保してまで観に来るヤツらは、一体何が楽しいんだろう。この世の中には、理解しがたいことが度々巻き起こる。
起初我觉得偶尔交往两三次就足够了。回过神来,每周配合那家伙的休息日,从白天就开始直播已成惯例。即便在工作日收视率也相当不错,之后的录播点击量更是节节攀升——据说如此。明明我什么都没做,只是坐在打游戏的家伙旁边,嘻嘻哈哈地挑三拣四而已。那些特意抽空来看的家伙,到底觉得哪里有趣呢?这世上总有些难以理解的事情频频发生。
「なあなあ。今朝方、俺たち宛に荷物が届いてさ」
"「喂喂,今天凌晨有寄给我们的包裹哦」"
「荷物?」
"「包裹?」"
「そう、ラシードから」
"「没错,是拉希德让我来的」"
そう頷いて、ルークはむんずと掴んでいた小包を豪快に開いた。覗き込むその内側には、腕時計型のデバイスがふたつ転がっている。
卢克这样点着头,豪迈地拆开了紧紧攥着的小包裹。往里窥探,里面滚落出两只手表型设备。
「コレ付けてホラーゲーム配信してくれ、だってさ。PCと接続すると心拍数が表示されるガジェット、ってのは知ってるんだけど」
"「说是让你戴上这个直播恐怖游戏呢。虽然我知道这是连接电脑后能显示心率的玩意儿啦」"
「ふうん? ラシードの野郎、こんなの送ってどうするつもりだよ。オレたちの有利になるんじゃねーの」
"「哦?拉希德那家伙寄这个来想干嘛。该不会是对我们有利吧」"
「こうすりゃ俺が逃げらんねえって思ってんだよ
"「这样搞的话,我不就逃不掉了吗」"……ああ~マジで? マジでやんなきゃなんねえ? この前また教え子が怖いって有名なホラゲ渡してきてよぉ
啊~真的假的?非得玩不可吗?前几天又有学生塞给我那个以恐怖出名的游戏……ったく、アイツ絶対わざとだろ、今回で三作目だぜ⁈」
真是的,那家伙绝对是故意的吧,这都第三部了诶⁈」
グシャグシャグシャ、とブロンドを掻き混ぜ眉を落とすその表情は、今までに類を見ない情けなさだ。チラリ、とこちらを伺う水っぽい瞳がまた笑えて、くくくっ、と肩先が揺れる。黙って仕舞い込んでりゃ分かんねえっつーのに、律儀にオレに見せたってことは、もうやるって決めてんだろ? バチンッ、と音を立て分厚い背中を叩くと、ルークは、いってぇ!! とわざとらしく声を張り上げた。
他胡乱揉搓着那头金发,眉头紧锁的表情前所未有地狼狈。偷偷瞥来的湿润眼神又让人忍俊不禁,肩膀随着'咯咯'笑声抖动。明明闷不吭声就没人会发觉,偏要老实巴交地给我看,这不就摆明已经决定要干了吗?'啪'地拍打在那厚实背脊上,卢克立刻夸张地大叫'疼死了!!'
「こうやって受け取っちまってるんだ、やるしかねえだろ。ほら、さっさと設定しろよ。早くしねえと日が暮れちまうぜぇ」
"「既然都用这种方式收下了,不干也不行吧。喂,赶紧设置好。再磨蹭天都要黑透了」"
薄いシャツの下に手形が残っているのだろう、分厚い背中をボリボリと搔きながら、恨めし気な顔付きがオレを見る。突き出した下唇と言い、上目に睨むその瞳と言い、まるで拗ねきったゴリラみてえだなと思った。
薄衬衫下大概还留着掌印,他边挠着厚实的后背边用怨怼的眼神瞪我。那撅起的下唇和向上翻的白眼,活像只闹脾气的猩猩。
手首に真新しいデバイスを巻き付けて、いつものように配信がスタートする。今日は新たな試みがあるぜ、と紹介する脳筋クンの表情は相変わらず微妙だ。テンションを上げるべきか下げるべきか定まらず、ふよふよと視線が泳ぎっぱなしだ。ったく、たかがゲームだろ? 何をそこまで怯える必要があるんだよ。
手腕上缠着崭新的设备,直播如常开始。'今天有个新尝试哦',介绍时肌肉笨蛋的表情依旧微妙。该提高情绪还是降低完全拿不定主意,视线始终飘忽不定。真是的,不过是个游戏吧?有必要怕成这样吗。
暗さ際立つ画面から始まったのが、ひと昔前のジャパンを舞台にした作品だった。知らないはずの、しかし妙に郷愁を誘う家々や小物の描写に目が止まる。錆び付いた看板、妙に鮮やかなプラスチック製のボトル、風を受けて細く鳴る風鈴。今のところただただ散歩するだけのゲームだな、と隣りに目をやると、びっしりと脂汗を浮かべ歯を食いしばる横顔があった。まだ何も怖くねえだろ、と太い腕を突けば、この雰囲気が既に怖いんだと、厚みある肩をぎゅうぎゅうと縮こまらせた。
从色调阴郁的画面开始的,是以旧时日本为舞台的作品。目光不自觉地停留在那些本应陌生、却莫名勾起乡愁的房屋与小物件描写上——生锈的招牌、鲜艳得扎眼的塑料瓶、迎风细响的风铃。'目前看来只是个散步游戏嘛',侧目望去时,发现身旁那张侧脸正渗出黏腻冷汗,死死咬着牙关。'还没出现可怕的东西吧',用粗壮胳膊肘捅了捅对方,却得到'这种氛围本身就很恐怖'的回答,厚实的肩膀顿时缩成紧绷的一团。
日本らしさ溢れる和室の片隅には、木製の鏡台が据えられている。細々とした化粧品が並ぶそれを見ていると、胸の中にくっきりとした懐かしさが広がっていった。母さんの家にも、こんな風に色とりどりのコスメが揃っていた。その甘くて粉っぽいにおいが昔から好きで、母さんにねだって化粧をしてもらったことが何度もある。ビッとメイクをして仕事に向かう母さんの姿は、それはそれは綺麗だった。その頃の思い出と憧れがあるから、オレは今でもメイクを続けているんだと思う。
充满日式风情的和室角落里,摆放着木质梳妆台。凝视着上面排列的零星化妆品,鲜明的怀念感在胸腔扩散开来。妈妈家里也曾这样摆满五颜六色的化妆品。从小就喜欢那种甜腻的粉香,不知多少次缠着妈妈给我化妆。涂着艳丽妆容去上班的妈妈,真的是漂亮极了。正因为怀着那时的回忆与憧憬,我想这就是直到现在我仍坚持化妆的原因。
「お前もいっぱい持ってんの?」
"「你也带了很多吗?」"
「ん? 何を」
"「嗯?什么东西?」"
「化粧品。いつも綺麗にしてっからさ」
"「化妆品。因为你总是打扮得很漂亮嘛」"
カチッカチッ、とマウスを操作しながら、ルークは言う。
咔嗒咔嗒地操作着鼠标,卢克说道。
「そりゃあ、オレ様はいつだってビッとしてっからな。っつっても、コスメ自体はそんな持ってねえよ」
"“那当然,本大爷可是随时都精神抖擞的。不过话说回来,化妆品什么的倒是没怎么用过啦。”"
「コメント。『ジェイミーのメイク配信が観たい』だって」
"“留言说:‘想看看杰米的化妆直播’。”"
「ん~? メイクも何も、下地塗ってアイライン引いてリップ塗る、くらいだぜ」
"「嗯~?化妆什么的,也就是涂个底妆、画个眼线、抹点口红而已啦」"
画面を滑るひとつのコメントに答えれば、絶叫ともとれる短いコメントが濁流のように押し寄せた。嘘だなんだ言われても嘘じゃねーし、マジだし。その勢いに呆気に取られている隣りで、脳筋クンはビックリポイントに遭遇したらしい。ギャアだかグワアだか大声を上げて、椅子から転げ落ちんばかりに騒ぎ立てた。
刚回应完屏幕上闪过的一条评论,如浊流般涌来的便是近乎尖叫的简短回复。管他们说是假的还是什么,反正我没撒谎,是真的。就在我被这股势头惊呆的当口,旁边的肌肉笨蛋似乎撞上了惊吓点,发出不知是「呀啊」还是「呱啊」的怪叫,闹腾得差点从椅子上滚下来。
配信画面にも表示されているという心拍数は、ルークは一一〇超え、オレは八〇前後だ。このままだとコイツの心臓破裂しちまうんじゃねえの。そう忍び笑いを漏らしていると、半べそをかく顔がグルンとこちらを向き、オレの両肩をむんずと掴まえた。
直播画面上显示的心率数值,卢克已经飙到 110 以上,而我维持在 80 左右。照这样下去这家伙的心脏怕不是要爆炸。正偷笑着,那张快哭出来的脸突然转过来,一把死死抓住了我的双肩。
「ジェイミー!」
"「杰米!」"
「なんだよ」
"「干嘛啊」"
「……休憩」
休息
「おーおー、オレ様の顔見て落ち着くんだな」
"「哦哦,看着本大爷的脸就冷静下来了吧」"
呻きながら水を飲む姿を見守りながら、メイク談義一色になったコメント欄を流し読みしていく。
一边守望着他呻吟着喝水的样子,一边快速浏览着被化妆讨论占满的评论区。
「美肌の秘訣ぅ? あれこれ塗り込むより、口に入れるものに気を配る方がオレには合ってるな。興味があるなら、医食同源の本を探すといいぜ。薬湯のレシピ? そりゃ教えらんねェな。ま、本気でオレに弟子入りするって言うなら、考えてやってもイイぜ」
"「美肤的秘诀?比起往脸上涂这涂那,我更注重吃进嘴里的东西。有兴趣的话,可以找找医食同源的书看看。药膳汤的配方?那个可不能说啊。不过嘛,要是你真心想拜我为师,我倒是可以考虑教教你」"
「あーその、よく分かってねえんだけど、メイクってそんな色々流儀? みたいなモンがあんの?」
"「啊—那个,虽然不太懂,化妆还有那么多流派?之类的说法吗?」"
「はは、流儀、とは言わねえけど
"「哈哈,倒不至于说是流派"……一回コスメ売り場覗いてみろよ。種類の多さに目ェ回るぜ」
去化妆品柜台转一圈你就知道了。种类多到能让你眼花缭乱」
ふうん、と唇を尖らせるその青い目が、オレの目元や頬、口先を視線でなぞっていく。そして頬杖を突くと、まじまじと顔を覗き込まれた。
「嗯哼」那双蓝眼睛撅起嘴唇,用视线描摹着我的眼角、脸颊和嘴角。然后他支着下巴,直勾勾地窥探着我的脸。
「なに、お前もメイク興味あんの」
"“怎么,你也对化妆感兴趣吗”"
「いやないけど、そう言やジェイミーのスッピン見たことねえなと思って」
"“不感兴趣,但这么说来我好像从没见过杰米的素颜”"
澄んだ瞳で呆気らかんと言うルークの顔を、いくらか瞬きを挟みながら見詰め返す。
卢克用清澈的眼睛呆呆地说着,我微微眨着眼回望他的脸。
「そりゃ
"「那个"……外に出る時はメイクしてっからな」
出门的时候可是会化妆的啊」
「だよなー」
"「就是说啊——」"
どこか残念そうに呟く脳筋クンから視線を外して、画面に向き合いながら首を傾げる。うん? この違和感は、一体なんだ。それってつまり、オレのスッピンを見たいってことか? なんでだよ、必要ねえだろ。瓢箪の口を咥えたまま考え込んでいると、ゲームに戻ったルークが何となしに言葉を続けた。
我将视线从某个遗憾般嘟囔着的肌肉笨蛋身上移开,面对屏幕歪了歪头。嗯?这种违和感到底是什么。难道说,是想看我的素颜吗?为什么啊,没必要吧。含着葫芦嘴陷入沉思时,回到游戏中的卢克若无其事地继续说了下去。
「素顔も変わらず、綺麗なんだろうなぁ」
"「素颜肯定也一如既往地漂亮吧」"
「……は?」
哈?
「お前。だって、目元と唇に紅引いてるだけなんだろ?」
"“你啊。不就是描了眉眼和涂了口红而已吗?”"
「…………それなりに変わるとは思うぜ」
我觉得会变得相当不一样吧」
「そうか? ちょっと赤くしてるだけだろ?」
"「是吗?只是稍微弄红了一点吧?」"
「……アイラインは黒と赤引いてるし」
眼线可是画了黑色和红色哦」
「へー、なんで二色にすんの?」
"「诶——为什么要分成两种颜色?」"
「そりゃ
"「那个"……そっちの方が凛々しくなんだろ」
那样不是更英姿飒爽嘛」
「ふうーん」
"「嗯——」"
気のないような返事をしながら、矢継ぎ早に重なる質問に幾度も瞠目した。それになんだコイツ、さっき何て言った? 『素顔も変わらず、綺麗なんだろうなぁ』ってなんだよ。思いがけない言葉に細かく瞬きを繰り返し、頭の中でその真意を咀嚼していく。そうしている間にもヤツはワアギャアと冴えない叫び声を上げているが、オレとしちゃ構ってやれる余裕もねえ。じんわり、と頬が熱くなった気がして、その温度を誤魔化す為に、握り締めた薬湯をガブガブと呷った。
一边敷衍地应着声,一边对连珠炮似的问题频频瞪大眼睛。这家伙怎么回事,刚才说什么来着?『素颜也一定和以前一样漂亮吧』——搞什么啊。面对突如其来的话语,我不停地眨着眼睛,在脑海中咀嚼其真意。就在这当口,那家伙还在发出些不痛不痒的怪叫,但我可没闲工夫搭理他。脸颊渐渐发烫,为了掩饰这份热度,我咕咚咕咚灌下手里攥着的药汤。
盛大な悲鳴交じりにちょこまかと進めるんじゃあ、一度や二度の配信でクリアできるワケがねえよな。遂には約束の二カ月、その最終日を迎えてしまった。ラシードも手堅く登録者数を伸ばしてはいるようだが、今ひとつ爆発的な人気は出ないと嘆いていた。オレとしてはそんな勝敗の行方にさして興味はないのだが、それでも確かに、いささかの寂しさを覚えていた。
伴随着夸张的惨叫还东躲西藏的,怎么可能一两次直播就通关啊。终于到了约定的两个月期限,迎来了最后一天。拉希德虽然稳步增加了订阅人数,但还在哀叹始终没能迎来爆发性的人气。我对这种胜负走向倒不怎么关心,但确实也感到了一丝寂寞。
華々しい最終回を迎えたいと、準備を進めるルークはいつもに増して気合いが入っていた。フンフンと鼻息荒く画面に向かう横顔を見ながら、手渡されたウォッチ型デバイスを装着する。これを付けるのも、今日で最後だ。カチャカチャ、とキーボードを叩いていた大きな手が、フッと動きを止めた。
为了迎来华丽的最终回,积极准备的卢克比平时更加干劲十足。看着他哼哧哼哧地面朝屏幕的侧脸,我戴上了递给我的手表型设备。这也是最后一次佩戴它了。咔嗒咔嗒敲着键盘的大手,突然停下了动作。
「今日で配信は終わっちまうけど、さ。今後も一緒に遊べたらいいなーって思ってて。どうだ?」
"「虽然今天直播就要结束了。不过啊,我在想以后要是还能一起玩就好了。你觉得呢?」"
くるん、と鮮やかな瞳と笑顔がこちらを見やって、にんまりと懐っこい笑顔を顔中に広げる。そんなヤツを見ていると、ざわめいていた胸の内がストンと落ち着いた。ついさっきまで抱えていた小さな寂しさは、配信を終えることではなく、コイツとふたりきりで過ごす時間の終わりを惜しんでいたのだと気付いた。
他滴溜溜转着明亮的眼睛,笑容灿烂地望向我,整张脸上都绽放出惹人喜爱的笑容。看着这样的家伙,我躁动不安的内心突然平静下来。我意识到,刚才一直萦绕在心头的淡淡寂寞,并非因为直播即将结束,而是惋惜与这家伙独处时光的终结。
「まあ、暇な時にでも」
"「嘛,等有空的时候吧」"
「よっしゃあ! ホラーがリクエストに多かったけどさ、お前と一緒にやりてえゲームが他にも山ほどあんだよ」
"「太好啦!虽然恐怖游戏被点播得最多,但老子想和你一起玩的游戏可还有一大堆呢」"
「へえ」
"「嘿」"
釣り上がる口角を指先で揉みながら、パチパチとキーボードを叩く丸い背を眺める。オレは今まで、コイツのことを、闘うことでしかコミュニケーションの取れない野生動物の一種だと思い込んでいた。だって、超が付くほどの脳筋だろ? しかし蓋を開けてみると、ファイトだけではない、年相応の男なんだとよく分かった。友人と遊ぶことが好きで、盛り上げ上手な、強引さが嫌味にならない、ヤンチャな笑顔の似合う若人。そんなコイツと、並んで飯を食って、馬鹿話をして、ゲームをして。それこそガキの時分を取り戻すような時を共有できて、オレははっきりと、喜ばしい、と感じている。
我用指尖揉搓着他高高扬起的嘴角,望着那圆润背影啪嗒啪嗒敲击键盘的模样。曾几何时,我总以为这家伙是只能用战斗来沟通的野生动物——毕竟是个彻头彻尾的肌肉笨蛋吧?但揭开表象才发现,他不仅是格斗家,更是个符合年龄的普通青年。喜欢和朋友嬉闹,擅长活跃气氛,强势却不惹人厌,与顽皮笑容相得益彰的年轻人。和这样的他并肩吃饭,胡侃瞎聊,打打游戏。仿佛找回童年时光的共处时刻,让我真切感受到——何其快意。
配信は順調に進み、最後の謎解きパートへと突入した。ああでもないこうでもない、と腕を組みながら、大の大人がふたりがかりでウンウンと唸っている。ゲーム慣れしているコイツですら難航してるんだ、きっとかなり難しい仕掛けなんだろう。頭をひねり続けていたその刹那、脳裏を駆け巡った閃きのままに、隣りにある太い腕をグンと引っ張った。
直播顺利进行着,终于来到最后的解谜环节。两个大男人抱臂苦思,嘴里念叨着这样不对那样不行。连游戏高手的他都陷入苦战,机关想必相当棘手。正当我们绞尽脑汁时,灵光突然掠过脑海,我猛地拽住身旁粗壮的手臂。
「ルーク! 最初の謎解きがあっただろ、あの絵の
"「卢克!记得最初的谜题吗,那幅画"――
——」
そう勢いづいた言葉をつい呑み込んでしまうほどに、ルークの瞳が丸々と見開かれている。先程までぐしゃぐしゃと掻き混ぜられていた髪は乱れに乱れ、長い前髪の隙間から、零れんばかりの水色が覗いている。え、なんだよ。驚きのまま口を噤んでいると、期待に満ちた顔が一気に距離を詰めた。
卢克的眼睛瞪得圆圆的,让我差点把刚才那句气势十足的话给咽了回去。之前还乱糟糟被抓挠的头发此刻更是凌乱不堪,从长长的刘海缝隙间,几乎要溢出来的水蓝色若隐若现。啊、什么啊。我因惊讶而哑然失声时,那张充满期待的脸突然逼近。
「は、ハハッ!! 呼んだ!」
"“哈、哈哈!!叫我了!”"
「……は?」
「啥?」
「遂に俺の名前呼びやがった!」
"“终于肯叫我的名字了!”"
その場に飛び上がり喜びを露わにするその瞳は、三日月を描き、目尻には笑い皺が刻まれている。頬や鼻先だけでなく傷跡まで赤らめ喜ぶ表情に釘付けになって、ドキ、ドキ、と全身を揺さぶる鼓動が指先にまで広がっていった。瞬間、ピーッ、と甲高い電子音が鳴り響いて、その音源へと吸い寄せられるように視線を落とす。手首に巻かれた小さな画面には、異常心拍の検知と明々と示されていた。
他当场雀跃而起,那双眼睛弯成新月形状,眼角笑纹深深。不仅脸颊和鼻尖,连伤疤都因喜悦而泛红的表情令人目不转睛,咚咚——震颤全身的悸动一直蔓延到指尖。刹那间,哔——尖锐的电子音响起,视线如被声源吸引般垂下。缠绕在手腕的小小屏幕上,正明晃晃显示着『心率异常检测中』。
「俺の名前、ちゃんと覚えてたんだな」
"「你倒是好好记住了我的名字啊」"
「……馬鹿にすんじゃねえぞ」
「别小瞧人啊」
ドッドッドッドッ。心臓の音が耳を塞いで、こんなにもうるさい。そりゃあ、お前の名を呼んだのは今日が初めてかもしれねえよ。それでもオレは、お前が思うよりもずっと、ずっと前から。お前のことを。
咚咚咚咚。心跳声震耳欲聋,竟如此喧嚣。或许今天确实是第一次呼唤你的名字。即便如此,我也早在你想象之外的久远之前。就已将你。
『ジェイミー、調子はどう?』
『杰米,最近怎么样?』
「…………」
『あっはははは! 大丈夫だって、ネットの流行り廃りなんて思ってる以上に速いものだよ。周りもすぐに忘れて、あっという間に次の話題に移っていくって』
『啊哈哈哈!没问题的啦,网络的热潮退去可比你想象中快多了。大家转眼就会忘记,立马又追逐起下一个话题了』
端末から響く軽い声に耳を傾けながら、額を押さえていた片腕をパタリと放り出した。ベッドに寝転んだまま見上げる先、格子のかかる小さな窓からは、憎たらしいまでに晴れ渡る空が見える。網膜を焼くようなその眩しさに、眉根を寄せ目を細めた。
侧耳倾听着终端传来的轻柔声音,原本按着额头的手臂突然垂落。仰躺在床上的视线前方,装有铁栅的小窗外是晴朗到令人恼火的天空。那灼烧视网膜的刺目光芒,让我皱起眉头眯起了眼睛。
あの脳筋野郎との配信最終日を迎えたあの後、とあるショート動画が大バズりしたらしい。その内容はオレたちの配信を抜き出し編集したもので、複数あるSNS上でも広く拡散されていると聞いた。ンなの勝手に切り貼りして事実を歪めたモノだ、気にする必要なんてサラサラない。
和那个肌肉笨蛋结束最后一场直播后,听说某个短视频突然爆火。内容是从我们直播里截取剪辑的片段,听说在多个社交平台都广泛传播着。那种擅自拼接扭曲事实的东西,根本没必要在意。――
——とは、分かっているんだが。何処へ行こうと何をしようと、若いヤツらに限らず漢方店のばあちゃんにまで言及されちまうと、いつだってビッとしているジェイミー様のイメージが崩れてしまう。これがなんとも、身に堪えた。
虽然心里明白。但无论走到哪里做什么,不仅年轻人连中药店的老婆婆都在议论,这让永远保持完美形象的杰米大人形象崩塌。实在是,难以忍受。
素直過ぎる反応。なんてふざけたタイトルがつけられたそのショート動画では、先に述べた通り、オレとアイツの配信中の様子が編集されていた。特にメインとなっていたのが、あの心拍数を表示した時の配信だ。例えば、脳筋が画面に齧りつき、今か今かと化け物の出現を恐れている場面よりも、画面の真下からぐちゃぐちゃに崩れた顔が現れた瞬間の方が、目に見えて心拍数は上昇していた。その間オレの脈拍には乱れはなく、薬湯の効果で僅かに速まっている程度だった。
太过直白的反应。这个被冠以荒唐标题的短视频,正如前文所述,剪辑了我和那家伙直播时的画面。尤其着重呈现的是显示心率数值的那场直播。比如,比起肌肉笨蛋紧贴屏幕、战战兢兢等待怪物出现的场景,当屏幕正下方突然冒出一张扭曲溃烂的脸时,心率数值明显飙升。而在此期间我的脉搏始终平稳,仅因药浴效果略微加速。
場面は変わり、オレと脳筋野郎がお互いの目を覗き込むかのごとく、じぃっと見詰め合っていた。これは、オレがアイツの名を呼んだ直後の様子らしい。画面の真ん中には数字が追加され、一、二、三
场景切换,我和肌肉笨蛋如同要窥探彼此眼底般长久对视。这似乎是我喊出他名字后的情景。画面中央追加了数字,一、二、三……とカウントアップされていく。それに合わせオレの脈拍は速まっていき、鳴り響く電子音と共に動画は終了する。
逐秒递增。与之同步的是我逐渐加速的脉搏,随着电子音的轰鸣,视频戛然而止。
ゲームクリエイターがプレイヤーたちを驚かせようとどれだけ躍起になろうと、画面に映るすべては、結局のところ作り物に過ぎない。だからオレは心落ち着けたまま、ヤツのプレイを見守ることができた。しかしオレの心で沸き起こった動揺は、余すことなくこの身に表れ、あのちっぽけなデバイスによって数値化されてしまった。それだけにとどまらず、八秒見詰め合えば恋が始まる、なんて噂もまことしやかに囁かれている。あの馬鹿げた動画で表示されたカウントアップは、八秒なんてゆうに超え、十数秒に達していた。
无论游戏创作者如何绞尽脑汁想让玩家们惊讶,屏幕上显示的一切终究不过是人造之物。所以我才能保持内心平静,注视着他的游戏过程。然而我心中翻涌的动摇,毫无保留地体现在这具身体上,还被那个小小的设备数值化了。不仅如此,甚至还有煞有介事的传闻说对视八秒就会开始恋爱。那个愚蠢视频里显示的计时器,早就超过了八秒,达到了十几秒。
平たく言えば、あのショート動画を編集したどっかの誰かは、オレがアイツに恋してると言いたいんだ。ジャンプスケアに震えることもないこの胸が、アイツと見つめ合うだけでこんなにも狼狽するのだと、そう意地悪く示したいんだ。
说白了,剪辑那个短视频的某个人是想说我爱上那家伙了吧。明明连跳杀惊吓都不会让这颗心颤抖,却偏偏想恶意证明只要和那家伙对视就会如此狼狈。
ぐうぅ、と食いしばる歯列から漏れた唸り声は、端末の向こうのラシードにも届いてしまったらしい、ハハハッ、と弾けるような笑い声を遠くに聞く。
从紧咬的牙关中漏出的呜咽声似乎传到了终端那头的拉希德耳中,远处传来他哈哈哈的爽朗笑声。
『あの後は? ルークと連絡はとったの?』
『后来呢?和卢克联系了吗?』
「とるワケねーだろ。アイツと話すことなんて何ひとつねェよ」
"「怎么可能联系。我和那家伙根本无话可说」"
『ルークはそう思ってないみたいだけどな~。ねえ、一回でいいから連絡してやってよ』
『卢克可不这么想哦~。呐,就一次也好,联系他试试嘛』
「…………」
『ね?』
『呐?』
モゴモゴと言葉を濁し、ラシードとの通話を終え目を閉じる。夏の夕暮れは、遠い。目蓋の裏側まで白ませるほど照りつける太陽を感じながら、今頃汗を流している真っ最中だろう、あのずんぐりむっくりしたシルエットを思い浮かべる。
含糊不清地嘟囔着结束了与拉希德的通话,我闭上眼睛。夏日的黄昏,遥远得仿佛能感受到灼烧着眼睑的白炽阳光。此刻脑海中浮现出那个矮胖身影,想必正大汗淋漓吧。
あの一件の直後、妙にしっとりとした雰囲気を作りたがる脳筋を蹴り飛ばして、オレはアイツの部屋から命からがら逃げ出した。それから三日間、送られてくるメッセージも、かかってくる電話も、ことごとく無視を続けなんとか自分を保っている。配信を終え、空調の効いた狭い部屋の中で、ヤツの息遣いとパソコンのファンの回転音を聞いていたあの時間が、頭にこびりつけて離れない。
那件事发生后,我踹开了那个总想营造暧昧氛围的肌肉笨蛋,从他房间落荒而逃。之后三天,无论是收到的消息还是来电,我都统统无视才勉强维持住理智。直播结束后,空调房里仿佛还残留着他的呼吸声和电脑风扇的嗡鸣,这些记忆顽固地黏在脑海里挥之不去。
オレは、別に。アイツのことなんて、何とも思っちゃいねえし。この街を訪れ、偶然ヤツのファイトを目の当たりにして、あんなヤツと闘えたら楽しいだろうな、と思ったまでだ。会場で耳にしたあの名前を忘れぬよう反芻し、充電の減った端末でポチポチと検索をして。名前だけでなく、性格や、好きなもの、どんな仕事をしているのか少し知って。なんだオレの二個上かよ、若く見えたのは顔の作りのせいだろうか。そんな薄っぺらい感想を思うだけで、オレは充分、だったはず。なのに。
我本来,对那家伙根本没什么特别的想法。只是偶然来到这座城市,亲眼目睹了他的战斗,觉得能和这样的家伙交手一定很有趣罢了。为了不忘却在会场听到的那个名字,我反复默念着,用快没电的手机点点戳戳地搜索。不仅知道了名字,还稍微了解了他的性格、喜好、从事什么工作。什么啊居然比我大两岁,看起来年轻是因为长相显小吧。光是产生这种肤浅的感想,对我来说就已经足够了。可是。
アイツに出会うつもりなんて毛頭なかった。いやもしかしたら、このメトロシティで暮らしていれば、なんて期待はどこかにあったかもしれない。けれどオレは目立たず人々に溶け込んで、この街を守っていく、それだけが使命だった。アイツと出会う必要は、決してなかったはずだ。
我压根没打算遇见那家伙。不,或许内心深处也曾暗暗期待过,只要生活在这座大都会总有机会相遇。但我本该低调地融入人群,守护这座城市,这才是我的使命。我原本绝不需要与那家伙相遇的。
しかし気付けばあの大きな身体に吸い寄せられるかのように近付いて、拳だけでなく言葉を交わし、夢見ていた以上に、ヤツとのファイトに夢中になった。更にはオレが求める以上のスピードで、アイツはオレとの距離を詰め、ありとあらゆる表情を見せつけた。大声を上げ馬鹿笑いしているかと思えば、キリリと口を結び真面目腐って。猛獣のように瞳をギラつかせたかと思えば、池に落ちた子犬のように情けなく眉を落とす。そして、明け透けなまでの期待を込め、汗ばむ手でオレの肩に触れた。
回过神来时,却像被那具高大身躯吸引般不断靠近,不仅用拳头更用语言交流,比梦中想象的更加沉迷于与他的战斗。更以超出我预期的速度,那家伙缩短了与我的距离,向我展示了千般表情。时而放声傻笑,时而绷紧嘴角故作严肃。时而如猛兽般目光灼灼,时而又像落水小狗般可怜巴巴地耷拉眉毛。最后,他带着毫不掩饰的期待,用汗湿的手掌搭上了我的肩膀。
「はあ
"「哈啊"――
——~ッ
~啊……」
前髪を掻き上げるまま目元を手で覆い、天井を吹き飛ばさんばかりに息をつく。ダメだダメだ、修行中の身だってのに、こんなことで浮ついていられねえ。それにまだ、オレはこの想いを自覚したくない。
他随手将刘海撩起,用手遮住眉眼,长叹一声仿佛要把天花板掀翻。不行不行,明明还在修行中,怎么能为这种事心神不宁。更何况,我还不想承认这份心意。
グン、と両脚を天へと掲げ、振り下ろす反動でベッドから立ち上がる。手櫛で髪をまとめながら、ガラリと音を立てクローゼットを開いた。今日は頭を空っぽにして、思いっきり汗を流そう。手に取ったのは、トレードマークのつもりで誂えた、いつものカンフージャージだ。腰元を飾り付けるように組紐を結び付け、今日ばかりは薬湯ではなく水を携えた。玄関から一歩外へ踏み出すと、ジリジリと照りつける暑さが、剥き出しの肌を焼いていく。
双腿猛地朝天一蹬,借着反作用力从床上弹起。他边用梳子拢着头发,边哗啦一声拉开衣柜。今天要放空脑袋,好好出一身汗。随手抓起那件特意定做的、当作标志性装扮的功夫运动服。在腰间装饰性地系上编织绳结,破天荒地没带药汤只拎了壶清水。刚跨出玄关,灼热的阳光便火辣辣地炙烤着裸露的肌肤。
なあ、ジェイミー・ショウ。今日この場所まで足を運んだ理由は、一体なんなんだ? お前はただ純粋に、海を見てリフレッシュしたかっただけ、だよな? 目の前に広がる海原がキラキラと晩夏の日差しを返し、汗に濡れた肌をチリチリと燻ぶらせていく。瓢箪の中を満たす水をゴクゴクと呷って、潮風で荒れた鉄柵へと腕をかけた。空はまだ明るいが、陽はすでに大きく傾いている。低い高度から射すオレンジ色の光が周囲の影を消し去り、のっぺりと現実離れした景色に仕立て上げていた。セミの声が響いている。
喂,杰米·肖。你大老远跑到这儿来究竟图什么?不就是想看看海放松下吗?眼前波光粼粼的海面反射着夏末阳光,把汗湿的皮肤晒得刺痒。他咕咚咕咚灌着葫芦里的水,胳膊搭上被海风侵蚀的铁栏杆。天色尚明,夕阳却已西沉。低角度的橙光抹去了所有阴影,将周遭景物压成扁平超现实的画卷。蝉鸣声声。
生きてきた中で好きだと告げられたことは、それこそ数え切れないほどにある。その気持ちたちを受け入れたことは二、三度あるが、しっくりとくる人物に出会えたことは一度もなかった。別れる寸前には、どうして自分だけを大事にしてくれないのか、となじられることがお決まりになっていた。ンなこと言ったって、オレにとってはこの街のすべてが守るべき存在だ。そんな、仕事とワタシどっちが大事なの、なんて使い古された言葉を投げかけられても、オレは本心を呑み込み黙るしかない。
在我活过的岁月里,被告白的次数多到数不清。虽然也曾两三次接受过那些心意,却从未遇到过真正契合的人。临分手时,总会被质问为什么不能只珍视对方一人。可就算这么说,对我而言整座城市都是必须守护的存在。面对那种'工作和到底哪个更重要'的陈词滥调,我只能咽下真心保持沉默。
そんなオレだったけれど。アイツにだけは、今までの人生で抱いたことのない、激しい感情が向かうのを感じていた。いや、正しく言えば、全部だ。守らねばならない人々への慈しみや、自分が持ち合わせていない才能への憧れ、悔しさや嫉妬を含む尊敬の念。大きな身体を縮こませ、情けなく音を上げる時は笑い飛ばしてやりたいし、透き通る色で見詰められれば、真っすぐと視線を返したい。今までの人生で、ダチや、大哥たち、そしておばあへ向けていた感情をひとつひとつ掬い上げて、大きな何かで包んだ分厚い想いが、アイツひとりへ向かっている。上でもなく、下でもなく、隣りに在ると喜ばしい、そんな存在だと。オレはあの男に対し、そう感じてしまっている。
这样的我啊。唯独对那家伙,感受到了人生中从未有过的强烈情感。不,准确地说,是全部。既有对必须守护之人的怜爱,也有对自身所缺才能的向往;夹杂着不甘与嫉妒的敬意。想在他蜷缩高大身躯示弱时嘲笑他,又在他用通透眼眸凝视时想回以坦率目光。将过往对兄弟、大哥们和奶奶怀有的情感逐一舀起,用某种宏大事物包裹成厚重情愫——全都只倾注于那家伙一人。不是居高临下,也不是仰望,而是欣喜于能并肩而立的存在。我对那个男人,怀抱着这样的感情。
つるりと視線を動かした向こうに、薄く蒸気に煙るアイツの勤め先がある。何故こんな場所まで来てしまったのかと自身に問いかけても、望むような答えは得られなかった。チャプチャプと水音を立て堤防を打つ波を見下ろしながら、空っぽだったはずの頭の中で、考えっぱなしだったアイツのことをまた思い描く。
视线滑向远处,薄雾蒸腾中浮现出那家伙工作的地方。即便自问为何会来到这种地方,也得不到想要的答案。俯瞰着拍打堤防发出哗啦水声的浪花,本该空荡荡的脑海里,又浮现出那个始终挥之不去的身影。
好きなんだろうか、逃げを打つほどに。気の向くままに顔を合わせお互いに青痣を作り合い、オレの方が強い、いいや俺の方が、なんて言い合うだけで、オレたちの関係は充分すぎたはずだ。それ以上なんて要らないはずなのに、射貫くように向けられた水色の輝きが、オレの胸の真ん中にカッチリと当て嵌まってしまった。
这算是喜欢吗,喜欢到要落荒而逃的程度。随心所欲地碰面,互相在对方身上留下淤青,争论着谁更强,明明这样的关系对我们而言已经足够。本不该再奢求更多,但那道如箭般射来的水色光芒,却严丝合缝地嵌进了我胸膛正中央。
「あれ、雨降りそうじゃない?」
"「哎呀,是不是要下雨了?」"
「ホントだ、あっちの雲真っ黒。もう帰ろっか」
"「真的耶,那边的云好黑。我们回去吧」"
周囲の声と共に、生ぬるく湿度を含んだ風を感じて、沈み込んでいた意識をようやっと引き上げられた。潮風に交じって、微かに雨のにおいがする。セミの声もピタリと止んだ。帰ろ。帰って、ぬるいシャワーで汗を流し、適当にメシ済ませて、天気予報と睨めっこしながら今夜の予定を立てよう。雨が止むのならいつもの通り見回りをして、大雨になるのならデバイスを目の前に置いて電話番だ。
随着周围的声音,感受到带着湿气的温热微风,终于将沉沦的意识勉强拉回现实。海风中夹杂着微弱的雨的气息。蝉鸣也戛然而止。回去吧。回去冲个温水澡洗去汗水,随便解决晚饭,边盯着天气预报边安排今晚的计划。如果雨停了就照常巡逻,要是下大雨就守着面前的设备值班。
グン、と背伸びをしながら雨雲の位置を捉える。ぐるりと海沿いを行けば、そう濡れずに帰れるはずだ。きっとあの馬鹿が仕事を終える頃には、この辺りも落ち着いているだろう。そう思い、振り返った先にあったのが。
伸了个懒腰的同时确认着雨云的位置。沿着海边绕行的话,应该不会淋得太湿就能回去。等那个笨蛋完成工作的时候,这一带大概也恢复平静了吧。正这么想着,回头却看见——
「あ」
"「啊」"
「あ?」
"「啊?」"
目の底を突くような、金と青。どっしりとした、立ち姿。
刺入眼底的金与蓝。巍然屹立的身影。
「……! っ待て、動くな」
!喂、别动」
「ッ、ば、馬鹿、こっちくんなッ」
"「呜、笨、笨蛋、别过来啊」"
「動くなって言ってんだ、ちょっとは俺の話を聞けッ!!」
"「说了别动,好歹听我把话说完啊!!」"
ビビビビビッ、と背筋が毛羽立って、その勢いが頭の先まで伝わりブワッと毛が逆立った。何がなくとも絆されそうになっちまってるんだ、こんな野郎と顔突き合わせて、マトモに話なんて出来るワケねえだろ!!
脊背唰地炸起一片鸡皮疙瘩,那股战栗直窜头顶,头发轰然倒竖。和这种混蛋面对面,怎么可能正常交流!!光是待着不动都快要被绑住了!!
地を蹴ったのは、アイツが先だった。ヨーガマスターのごとく眼前へと伸ばされた太い腕を寸でのところで避け、ゴロゴロと低く轟き始めた黒い雲を目掛けて突っ走る。馬鹿! 来るなッつってんだろ! そう叫ぶ声を無視して、ルークは目を血走らせたまま全速力で追いかけてくる。
那家伙先蹬地冲了过来。我堪堪避开瑜伽大师般粗壮的手臂,朝着开始隆隆低吼的黑云狂奔。白痴!不是叫你别过来吗!无视我的吼声,卢克双目充血地全速追来。
どんなホラーゲームよりも、今のお前こそが恐怖だからな!? そう叫びたくなるも、懸命に足を動かしている間は裏返るような息しか吐き出せない。レースカーテンのように目の前で降りしきる雨粒へと頭から突入して、ざあざあと水音に打たれながら、バシャンッ、と水溜まりを踏んだ。濡れちまうぞ、もう諦めろっての! そう胸の内で叫ぶ一方で、あっという間に水分を含んだズボンが脚へと絡みつく。速度が落ちたのを見計らって、分厚く大きな手がまた、オレの肩を強く掴んだ。
现在的你比任何恐怖游戏都吓人懂吗!?虽然想这样大喊,但拼命奔跑时只能吐出支离破碎的喘息。我埋头冲进如赛车终点线般倾泻的雨幕中,哗啦啦承受着水声洗礼,啪嚓踩进水洼。会湿透的啊,快放弃吧!内心呐喊的同时,吸饱水分的裤子已迅速缠上双腿。趁我速度稍减,那只厚实巨掌又一次狠狠扣住了我的肩膀。
「うわッ」
"「哇啊」"
「ほおぉぉら、捕まえた
"「嘿——瞧,抓到了"……ッ」
グイ、と引き込まれた先はガランとした高架下で、あるのは濡れて溶けかけた段ボールや潰れた空き缶、そして、頭の天辺から爪先までぐっしょりと濡れたオレたちだけだった。ルークは青い目をギンギンに開いて、大きな身体でオレを囲い込み、絶対に逃がさないという意思を剥き出しにしている。三つ編みの芯まで染み込んだ水分をぎゅうと絞りながら、仕方なく目の前の居たたまれなさと対峙する。ヤツはびっしょりと濡れて伸びた前髪をフーッと吹き上げて、頑丈な顎先からポタポタと滴を落としていた。
被猛地拽进去的地方是空荡荡的高架桥下,只有湿透快烂掉的纸箱、压扁的空罐子,以及从头到脚都湿透的我们。卢克睁大那双发亮的蓝眼睛,用高大的身躯将我围住,毫不掩饰绝不让我逃走的决心。我一边拧着浸透辫子芯的水分,一边无奈地直面眼前这令人坐立难安的场面。那家伙呼地吹开湿漉漉贴在额前的刘海,结实下巴正啪嗒啪嗒地滴着水。
「なんだよ。あんだけ無視しておいて、わざわざ俺に会いに来たってワケ?」
"「搞什么啊。之前那么无视我,现在特意跑来见我的意思?」"
「自惚れんじゃねえ、走り込みしてただけだっつーの。テメエこそ、勤務中にオレと追いかけっこしてていーのかよ」
"少在那自恋了,我只是在跑步训练而已。倒是你,执勤期间跟我玩追逐战真的没问题吗?"
「今日は定時で上がったんだよ。今日こそお前に返事もらおうって、今から中華街に行くところだった」
"今天我可是准时下班的。想着今天一定要得到你的答复,正打算去中华街呢。"
「……チェッ」
切
黙りこくると静寂が強まって、空気中に満ちる湿度で息が詰まりそうになる。ドシャドシャとアスファルトを打つ雨音が周囲を切り取って、オレとコイツを包む空間はより窮屈になった。
沉默一旦持续,寂静便愈发浓重,空气中弥漫的湿气几乎令人窒息。哗啦啦敲打着沥青路面的雨声将周遭一切隔绝,包裹着我和这家伙的空间变得更加逼仄。
冷えた空気のすぐ先から、ぼんわりと灯るような熱が伝わってくる。ルークはオレの両肩に手を置いたまま、言葉もなく、じぃっとオレを見下ろし続けている。なんだよ、なんか言えよ。いや、言われたところでどうとも返さねえけどさ。じっとりとした空気の中、水滴交じりの汗が流れて、目尻をちょんと濡らし頬へと伝い落ちていく。この手を跳ねのけて走り出そうとも、どうせすぐに捕まっちまうんだろうな。ム、と唇を噛んで考えていると、そっと太い指先がオレの頬を拭った。
从冰冷的空气彼端,隐约传来如灯火般朦胧的热度。卢克双手搭在我肩上,一言不发地俯视着我。搞什么啊,说点什么啊。不,就算说了我也不会回应的。在黏腻的空气中,混着水珠的汗水滑落,沾湿眼角又顺着脸颊流下。就算甩开这双手逃跑,反正很快又会被抓住吧。我咬着嘴唇正想着,粗粝的指腹轻轻拭过我的脸颊。
「ほら、やっぱ綺麗じゃん」
"「看吧,果然很漂亮吧」"
「……あ?」
啊?」
「メイク落ちてる。思ってた通り、そんな変わんねえと思うぜ」
"「妆都花了。我就说嘛,根本没什么变化」"
メイク? ああ、ランニング中の発汗とこの大雨で、何もかもが流れ去ってしまったんだろう。にしてもその、綺麗、という言葉が引っ掛かる。一体なんなんだよ、どういう意味なんだよ。頬に触れ続けるこの指先の熱さも合わせて、オレはもう何もかも分かんねえ。
化妆?啊,跑步时的汗水加上这场大雨,大概什么都冲掉了吧。即便如此,那句‘漂亮’还是让我耿耿于怀。到底什么意思啊,想表达什么啊。再加上一直触碰脸颊的指尖温度,我完全搞不懂了。
「……そういう小っ恥ずかしいセリフ、やめろ」
这种让人害臊的台词,快住口」
「そう言われてもなあ、俺としては口説いてるつもりだし」
"「就算你这么说,我可是在认真追求你啊」"
「……はあ? 何言ってんだお前」
哈?你在说什么啊
水滴光るドッグタグから視線を上げて、真っ直ぐとあの水色の瞳を見た。しんなりと濡れて色濃さを増したブロンドと同じ、短い睫毛がその周りを縁取っている。
从挂着水珠的狗牌上抬起视线,直直望进那双天蓝色的眼眸。与湿漉漉加深了色泽的金发一样,短短的睫毛在那周围勾勒出轮廓。
「勝機があるから告ってる、なんて思うなよ。もともと、最後の配信の後に伝えるつもりだったんだ」
"别以为我是看到有胜算才告白的。本来打算在最后一次直播后告诉你的"
「は」
"哈"
パク、パクパク。喉の奥が締まって言葉が詰まり、ヤツの言葉をなぞるかのように唇を開け閉めすることしかできない。あっという間に駆け足の速度になった脈拍のせいで、生きのいい心臓をオエッと吐き出してしまいそうだ。待て、待ってくれ。寄せられた鼻先が吐息を感じる距離まで迫り、さっきまで染み入るようだった肌寒さは、今やじっとりと、熱い。
嘴巴开合,喉头紧缩得说不出话,只能像复读机般机械地翕动嘴唇。因骤然加速的脉搏,鲜活的心脏几乎要呕出来。等等、先别——逼近鼻尖的吐息近在咫尺,方才沁入骨髓的寒意此刻已化作黏腻燥热。
「初めて会った時から、ずっと気になってた。そっから仲良くなれて嬉しかったし、ファイト以外のことも知りたいと思った」
"「从初次相遇那刻起,就一直惦记着你。能和你变得亲近我很开心,也想了解赛场之外的你」"
「い、ッ」
"「呜、呃」"
「男相手にこんなこと思うの初めてでさ。でも、性別なんて些細な問題だろ? 好きって気持ちに、細かいことは関係ない。そう思うようになった」
"「第一次对男性产生这样的感情。但性别这种小事根本无所谓吧?喜欢的心情,与这些细枝末节无关——我逐渐这样认为了」"
なんか、言ってる。ずっとアイツが、オレの目の前で何か話してる。その言葉のつぶてに、身が縮こまるほど緊張が増して、頬が燃えるように熱くなっていく。
不知为何,他在说着什么。那家伙一直在我面前絮絮叨叨。那些话语的碎片让我紧张得浑身蜷缩,脸颊如火烧般发烫。
「好きだ、ジェイミー。お前と一緒に色んなこと楽しみたいし、お前のことを、もっと知りたい。だからさ、俺の恋人になってくれねえかな?」
"“我喜欢你,杰米。想和你一起体验各种快乐的事,也想更了解你。所以啊,要不要当我的恋人?”"
触れ合ってしまいそうな口先の距離に、避けられないこの熱に、オレは視線を泳がせ時間を稼ぐしかない。嬉しくないと言えば、嘘になる。けれど、コイツの言う通りにするのが正しいのか、それは分からない。くっきりと傷跡が刻まれた、それでいて端正な顔が、すぐそこにある。
在几乎要碰触到的唇间距离里,面对这无法逃避的炽热,我只能游移视线拖延时间。若说不开心那是假话。但按这家伙说的做是否正确,我不得而知。那张轮廓分明刻着伤痕却依然端正的脸,近在咫尺。
「つ、付き合わねえと、いけねえの」
"「不、不交往的话,就不行吗」"
なんとか絞り出した言葉は、必死にかき集めた精一杯の抵抗だ。
好不容易挤出来的话语,是拼尽全力搜刮出的最后抵抗。
「付き合わなくても、お互いに好き合ってる、それだけでいいんじゃねえの」
"「就算不交往,只要互相喜欢,这样不也挺好吗」"
これがコイツへの好意を認めるセリフになっちまってることはもう、この際目を瞑る。そうまでしても、オレは抗わないといけないと思った。文字通り墓まで持って行くつもりだったこの想いを、どうして引っ張り出して絡め合わせて、大きなひとつにしなくちゃならねえの。お互いにこっそりと懐に抱えたまま生きていく、それだけでいいんじゃねえの。
事到如今,我只能对这番等同于承认对他有好感的台词睁一只眼闭一只眼了。即便如此,我仍觉得自己必须抵抗。为什么非得把这本该带进坟墓的感情拽出来,纠缠在一起,硬要拼凑成完整的模样?各自怀揣着秘密活下去,这样不也挺好吗。
グルグルと目が回るほどの恥じらいに汗を浮かべていると、ルークはううん、と唸って頬の傷跡を摩った。
当卢克因天旋地转般的羞赧而渗出汗水时,他嗯地低吟着,摸了摸脸颊上的伤疤。
「そりゃあ、今のままでも充分楽しいのかも知れねえよ。でも俺としては、恋人同士じゃねえとできないことも、お前と一緒にやっていきたいんだよ」
"「或许维持现状就已经足够快乐了。但作为我来说,想和你一起做些只有恋人间才能做的事啊」"
「……」
「例えば、今すぐ、キスしたい。お前と。だからどうか、YESって言ってくれないか。
"「比如说,现在立刻,就想接吻。和你。所以求你了,能对我说YES吗。"……ジェイミー」
杰米
蕩けるような言葉が、腰が抜けそうなほどに甘ったるい声で紡がれる。頬を撫でる手の平はもう、遠慮の欠片もなくやわやわと揉み込むように動いている。穏やかに笑んでいた表情が途端に引き締まり、絶対に逃さないと告げる眼光が、逞し過ぎる腕が、コイツのすべてが今、オレにだけ向いている。そんな事実に、舌がもつれ、顎が軋み、体中の細胞がひとつひとつ浮き立つかのように。
融化般的甜言蜜语,用令人腰肢发软的甜腻嗓音编织而成。抚过脸颊的手掌早已毫无顾忌,像揉捏棉花般轻柔游移。原本温和含笑的表情骤然紧绷,那宣告绝不放过的锐利眼神、过分强健的手臂,此刻他的一切都只为我而存在。这个事实让舌尖打结,下颌颤抖,全身细胞仿佛一个个雀跃起来。
興奮、していた。
我,兴奋不已。
第二章
恋のはじまりはいつだって、コイツと恋愛できるかな? と嗅ぎ分けることから始まっていた。それはどちらと言わずとも本能的で、なんなら直感と言っても違いないはずだ。とは言え、特段恋愛体質でもねえから、そんなアンテナの存在を気にしたこともなかった。しかしよくよく考えてみれば、歴代の彼女には似通った部分が多くあった。顔のつくりや、背の高さ、体つき、趣味や性格。それらにある意味一貫性があって、それこそが俺のオンナノコの好み、だと信じてやまなかった。
恋爱的开端总是始于揣测——和这家伙能谈恋爱吗?这种本能反应,说是直觉也不为过。虽说我并非特别热衷于恋爱,也从没在意过这种天线的存在。但仔细想来,历任女友确实有许多相似之处。面容轮廓、身高体型、兴趣爱好乃至性格。某种意义上这种一贯性,正是我深信不疑的择偶标准。
しかし、だ。世の中に絶対という言葉はないらしい。出会ったその日から胸の真ん中に居座り続けるアイツは、俺の好みとは全くもって違っていた。顔つきは勇ましいし、挑発的な恰好は正直言って目のやり場に困る。ワケの分かんねえ言い掛かりしてくるところも、自分自身に対し自信満々なのも鼻につく。そして何より、アイツは男だ。俺の目がついあの野郎を追ってしまうのはきっと、酔拳という珍しいファイトスタイルと、痺れるような強さがあるからだ。それ以外、興味を抱く理由なんてない。そう頭を振って否定を重ねるごとに、ヤツの凛とした魅力に釘付けになっていった。
然而世间从无绝对。自从相遇那天就盘踞在我心口的那个家伙,彻底颠覆了我的审美。他眉眼凌厉,挑衅的装扮让人不知该往哪儿看;莫名其妙的刁难和过剩的自信都令人火大。最要命的是——他是个男人。我的视线总追着那混蛋跑,肯定只是因为他罕见的醉拳打法与令人战栗的强悍实力。除此之外绝无可能。可越是摇头否认,就越被他凛然的气场钉在原地。
勇ましいとだけ思っていた顔つきは、美しく気高い、と言い変えることができた。ただの派手好きの目立ちたがり屋かと思えば、それは街を守る為のポーズで、根は真っ直ぐとした思慮深い青年だと知った。俺にばかり突っかかってくるクセして、ふたりきりになると目を真ん丸くしてこちらを伺う、その表情を可愛いと思った。あの艶やかな唇できちんと微笑みかけられちまったら、そんなの、好きになるなと言う方が無理な話だ。
曾以为那只是张英勇无畏的面容,如今才懂得用美丽高贵来形容更为贴切。原以为不过是个爱出风头的浮夸之徒,却发现那是守护城市的姿态,骨子里是个正直深思的青年。明明总爱跟我针锋相对,独处时却睁圆了眼睛偷偷打量我,那副表情可爱得紧。若被那丰润的唇瓣正经八百地展露微笑,任谁都会沦陷其中,不动心才怪。
ジェイミーと、仲良くなりたい、友達になりたい。そんな気持ちが、俺の中で順調に大きく育っていく。気付けば彼の唯一になりたいという欲望が、この胸の内で鮮やかな大輪の花を咲かせていた。
想和杰米变得更亲密,成为朋友。这份心情在我心中茁壮成长。不知不觉间,想成为他唯一挚爱的渴望,已在胸腔里绽放出绚烂的花朵。
だから今の俺ははっきりとこう言える。浮かれている。あの中華街のトラブルバスター、ジェイミー・ショウと付き合えることになって、踊り出してしまいそうなほど浮かれ切っている。実際、発散しきれない喜びにそそのかされ、夜中のうちに何度もステップを踏んだ。更には今日なんて、今週に入って二個目のサンドバッグをぶっ飛ばしちまった。ああ、舞い上がってると言ってももちろん、自分の仕事はきちんとこなしてるぜ? それでも、気を抜けば口元はにんまりと綻んでいって、物知り顔の同僚にツンツンと肩先を小突かれることになる。
所以现在的我可以明确地说出这句话——我飘了。能和唐人街那个麻烦终结者杰米·肖交往,让我高兴得几乎要跳起舞来。实际上,无法宣泄的喜悦驱使我在深夜里反复练习舞步。更夸张的是今天,这周第二个沙袋又被我打飞了。啊,虽说得意忘形,但该做的工作我可都好好完成了哦?即便如此,稍不注意嘴角就会咧开傻笑,结果被那个万事通同事用指节咚咚地戳肩膀。
帰宅後、シャワーを浴び軽く汗を流して、ベッドへとダイブしバタバタとシーツの海を泳いだ。今頃アイツは、中華街を彩るランタンに照らし出されているのだろう。どんな顔をしてるんだろうか。思慮深く頬を引き締めているのか、それとも、あの小さな口を開きフンワリとあくびでも漏らしているだろうか。俺に並ぶくらいの強さだ、何も心配はしてないがそれでも、彼が平和に過ごしていればいいと思う。もっと言えば、俺のことを一瞬でも思い出してくれてたらいい。引き寄せた枕を胸に抱いて、口笛を吹くように天井に向かって息をつく。
回家后冲了个澡,冲掉一身薄汗,然后一头栽进床铺,在凌乱的被单海洋里扑腾。那家伙此刻大概正被中华街的灯笼映照着吧。会是什么表情呢?是绷紧脸颊陷入深思,还是微微张开那张小嘴慵懒地打着哈欠呢。他有着与我比肩的强悍,我倒不担心什么,但依然希望他能平安度日。更贪心点说,哪怕只有一瞬间想起我也好。把拽过来的枕头搂在胸前,像吹口哨般朝天花板轻轻呼出一口气。
あの日。全身をくまなく雨に打たれながら、追いかけた広い背を捕まえて。絶対に告げると心に決めていた言葉を、まるで一滴も残らず注ぎ込むかのように彼へと訴えかけた。ジェイミーはメイクが落ちても艶々とした肌のまま、その高い頬骨の辺りをほんのりと赤く染めて、俺の懸命な告白に小さく頷きを返してくれた。湯気で身体ごと浮かび上がってしまいそうな興奮のままぶつけ合った唇は、少し冷たくて、でもその奥にしっかりと温かな熱が灯っているのが分かった。柔らかく弾力のある唇を食み、ちゅ、ちゅ、と音を立てる。するとすぐに彼は俺の胸を押し返して、ふるふると震えながら頬の紅潮を深めた。
那天。我淋着浸透全身的雨,抓住那个追逐的宽阔背影。将心底决意要传达的话语,如同倾尽最后一滴水般向他倾诉。杰米即使脱去妆容肌肤仍泛着光泽,高耸的颧骨附近泛起淡淡红晕,对我拼尽全力的告白轻轻点头回应。在蒸汽般快要漂浮起来的亢奋中相触的嘴唇有些凉,却能清晰感受到深处点燃的灼热温度。我含住那柔软有弹性的唇瓣,啾、啾地发出声响。他立刻抵住我的胸膛推开,浑身发颤地加深了脸颊的红潮。
「充分だろ」
"「够了吧」"
「え、まだ」
"「诶,还早呢」"
「今日はここまでだっつの、
"今天就到这里吧,"……ばーか」
笨蛋」
舌先すら触れられなかったが、それでも、彼のその表情に胸がつかえるほどの感動を覚えた。初めは鼻につく、だなんて思っていた美しい姿に、愛らしい、いじらしい、とジャムのように煮詰めた感情が増していく。世界から俺たちだけを隔絶していた大雨が降り止むと、彼は何もなかったと言わんばかりにすまし顔を作って、それでも丸っこい耳を隅々まで赤くしていた。
虽然连舌尖都未能触及,但即便如此,他那种表情仍让我心头一紧,感动不已。最初只觉得那美丽姿态令人厌烦,如今却愈发觉得可爱又惹人怜惜,这份感情如同熬煮果酱般愈发浓稠。当隔绝我们与世界的倾盆大雨停歇后,他摆出一副若无其事的表情,可那圆润的耳朵却红透了耳尖。
「はああああ~~
"「哈啊啊啊~~"……キスしてぇ」
好想接吻」
何度思い返してみても、あの時間は熟れきったフルーツのように甘美だった。顔面へと押し当てる綿の柔らかさを吸い上げて、彼の名を声に出して吹き込む。ああ、恋しい。ちょっとだけ電話をかけてみようか。いや、取り込み中だったら悪いもんな。走ってチャイナタウンまで行こうにも、今の時間に出ては明日の仕事に響いてしまいそうだ。バックラーでの仕事はやりがいもあって気に入ってるが、こんな時ばかりは、社会人であることを憎む。俺とアイツの生活は、こんなにも噛み合う時間が少ない。せっかく両想いになれたんだ、会いたいと焦がれ歯がみする時間は、最小限に留めるべきだろう。
无论回味多少次,那段时光都如同熟透的果实般甜美。将棉花般的柔软紧贴面颊,轻唤他的名字。啊,好想念。要不试着打个电话吧?不,如果他在忙就不好了。就算想跑去唐人街见他,这个点出门恐怕会影响明天的工作。在巴克勒的工作既有意义又让人喜欢,唯独这种时候,我憎恨自己是个社会人。我和那家伙的生活,能契合的时间竟如此之少。好不容易两情相悦,应该把因思念而焦躁咬牙的时间压缩到最低限度才对。
よし、次のオフの前日は絶対に、定時で上がって真っ直ぐと紅虎門を目指そう。そしてアイツと軽く飯を食って、そのまま見回りの手伝いをする。強い人間がふたりも闊歩してりゃあ抑止力にもなるだろうし、俺を怒らせたらどうなるか、っていちいち説明して回る手間も省ける。アイツが嫌がらないのなら、それを毎週のルーティーンにしてしまいたい。恋人と過ごせる時間を少しでも確保できるのなら、これくらいの努力、いくらだってできちまうぜ。
好,下次休假前一天一定要准时下班直奔红虎门。然后和那家伙简单吃个饭,顺便帮忙巡逻。有两个强者大摇大摆走着也能起到威慑作用,省得挨个解释惹怒我的后果。如果他不反对的话,真想把这变成每周固定节目。只要能多争取一点和恋人相处的时间,这点努力根本不算什么。
クシャクシャに丸まっていたタオルケットをグンと伸ばして、腕の中に抱き締める。そのまま、充電ケーブルを挿した端末を手繰り寄せ、どっかの誰かさん作のあのショート動画を再生した。動画内の俺の心臓が常時張り裂けそうなのは、ゲームの影響だけではなく、ジェイミーが隣りに居たことの方が大きい。自分のテリトリーに、好きなヤツとふたりきり。絶対にモノにしてみせると意気込むせいで空回りする俺に、目を細めて竹を割ったように笑う、甘い花の香を纏うアイツ。そんなの、緊張しない方が嘘になっちまう。
把皱成一团的毛巾被用力抖开,紧紧搂进臂弯。顺势拽过插着充电线的终端设备,点开某个家伙制作的那条短视频。视频里我的心跳始终濒临爆裂,不仅是游戏效果使然,更因为杰米就坐在身旁。在自己的领地里,和喜欢的家伙独处。我因暗自较劲要拿下对方而手足无措时,那家伙眯起眼睛爽朗大笑,周身萦绕着甜蜜花香。这种场面,不紧张才怪。
小さな画面の中で、穏やかだったジェイミーの心音が、俺と視線を絡ませる度に、跳ね上がるのが可視化されている。逃れようのない素直な愛情表現を目にする度に、ぎゅう、と胸が苦しくなるほどに嬉しくなって、まるでレモンを丸齧りしたかのようにこめかみが痛み、唾液が溢れてしまう。ああ、ジェイミー。早く会いたい、この腕に抱きたい、キスしたい。煌々と光る画面を額に寄せて、くうぅ、と呻き声交じりの溜息をつく。
小小的屏幕里,杰米平稳的心跳声每次与我的视线交汇时,都会剧烈跃动得肉眼可见。每当目睹这种无法掩饰的直率爱意表达,我的胸口就欢喜得发紧发疼,太阳穴像生啃了柠檬般刺痛,唾液止不住上涌。啊啊,杰米。好想快点见到你,好想把你拥入怀中,好想亲吻你。我把发着刺目光亮的屏幕抵在额头,发出混杂着呜咽的沉重叹息。
「ええ? 恋愛の仕方が分からない、って
"「诶?你说不懂怎么谈恋爱」"……もしかしてジェイミーと上手くいってないの?」
难道你和杰米相处得不太顺利?
目の前では、さっきまで焼き立てだったピザが冷え固まりつつあるが、俺の両手は自分の頭を支えるのに忙しい。ラシードのその問いかけに対しては、ウンウンと唸り声を挟みながら、上手くいってない、ワケじゃねえと思う、多分、と重ねるごとに不明瞭になる答えを返した。
眼前那块刚出炉时还热气腾腾的披萨正逐渐冷却变硬,而我的双手正忙着支撑自己低垂的头。面对拉希德那个问题,我只能边发出含糊的呜嗯声,边叠加上越来越语无伦次的回答:'不算顺利吧'、'也不是那个意思'、'大概吧'。
「この前会った時はあんなに意気揚々としてたのに。なに、喧嘩でもしたの?」
"上次见面时你还那么意气风发。怎么,吵架了吗?"
ズズーッ、と髭面が吸い上げるそれは、フレッシュなマンゴースムージーだ。赤みがかった黄色がジェイミーを思い出させて、それだけで胸がキュンと切なくなる。くそお、俺としたことがこんなことで悩むだなんて。固くなり始めたピザを手に取ると、溶け固まったチーズが塊になってミョンとくっ付いてきた。
胡子拉碴的男人滋溜吸着新鲜芒果冰沙,泛红的黄色液体让我想起杰米,光是这个念头就让我胸口一阵刺痛。可恶,我居然会为这种事烦恼。抓起开始变硬的披萨时,凝固的芝士结成块状黏糊糊地拉出长丝。
「してねえ。そりゃちょっとした小競り合いはあるぜ? それでも意見の食い違いは話し合えば大抵解決するし、育った環境があまりにも違うせいか、お互いの違いをすんなり認め合えるんだよな。自分の考えを押し付ける気も起きねえっていうか」
"没吵。小摩擦当然有啦?不过意见不合时只要好好沟通基本都能解决,或许是因为成长环境差异太大,我们反而能坦然接受彼此的不同。根本不会想强行让对方接受自己的观点。"
「へえ、そりゃいいね。それにジェイミーもアメリカでの暮らしも長いし、ルークのことをちゃんと理解してくれてるんだろうね」
"「嘿,那真不错。而且杰米在美国生活了那么久,应该能很好地理解卢克吧」"
「あ~、そうなんだろうな。だから一緒に居て居心地がいいし、日々新たな発見があって楽しくて
"「啊~,大概是这样吧。所以和他在一起很舒服,每天都有新发现,非常开心"……だからなんの不満もない
所以没有任何不满……はずなんだけど」
本应如此才对」
ペパロニで一面が覆われたピザにガブリと噛み付いて、もぐ、もぐ、と咀嚼するも、沈み込む気分のせいで上手く飲み込めない。ガックリと項垂れ溜息を漏らすと、ラシードの困ったような笑い声がトンと肩先を叩いた。
我大口咬下铺满意大利辣香肠的披萨,嚼啊嚼,却因心情低落而难以下咽。垂头丧气地叹了口气,拉希德带着困扰的笑声轻轻拍了拍我的肩膀。
「ほらほら、話してみなって。一緒に考えれば解決するかもしれないじゃん?」
"「喂喂,说出来听听嘛。一起想办法说不定就能解决呢?」"
「ラシード
"「拉希德"……っ!」
啊!」
白い歯の美しさが際立つ笑顔に、ありがとうと心の底から告げる。食べかけのピザを皿に戻すと、汗をかくコーラを引き寄せゴクリと喉を鳴らした。
对着那口洁白牙齿格外耀眼的笑容,我从心底道出感谢。将吃了一半的披萨放回盘中,拉过沁出汗珠的可乐罐咕咚灌下一大口。
「そのさあ
"「那个啊"……俺たち男同士、だろ? 俺、女の子としか付き合ったことないからさ。この先どうやって進めば良いのか
我们都是男人,对吧?我从来没和女孩子交往过。接下来该怎么走下去才好……わっかんねえんだよ」
完全搞不懂啊
テーブルの木目を視線でなぞりながら、胸の内側でつかえていた悩みを少しずつ言葉へ変換していく。
视线描摹着餐桌的木纹,将堵在胸口的烦恼一点点转化为语言。
ジェイミーと過ごす時間は不思議と穏やかで、学びも多く、いつだって楽しい。隣りに座っているだけでいい匂いがするし、大口を開けて笑っていようと、酔っ払ってだらしなく寝落ちしようと、何をしていたってその姿は美しい。一緒に居るだけで満足、なのは確かだが、その先を求めてしまうのもきっと自然なことだ。
与杰米共度的时光总是莫名安宁,充满收获且无比愉快。光是并肩而坐就能闻到他身上的好闻气息,无论开怀大笑还是醉醺醺地邋遢睡去,他每个模样都令人心动。虽然确信只要相伴便已满足,但渴望更进一步想必也是人之常情。
「で? それを簡潔に言うと?」
"「那么?简单来说就是?」"
「………ジェイミーと、エッチしたい、です」
「想和杰米做爱,就是这样」
「はっははは! 一気に分かりやすくなったじゃん! それ、ジェイミー本人には言ったの?」
"「哈哈哈!这不是一下子变得超好懂了吗!这话你跟杰米本人说了没?」"
にっこりと細められるアンバーアイに、下唇を突き出しながら答える。
琥珀色的眼睛弯成月牙,她撅起下唇回答道。
「言えるワケねーじゃん。キスひとつで逃げ回るようなヤツだぜ」
"「怎么可能说啊。那家伙可是连一个吻都能吓得逃跑的类型」"
「それはルークがせっかち過ぎるせいじゃないの~? ジェイミーって奥手そうだし、ちゃんと彼からの返答を待ってあげないと」
"「那还不是因为卢克你太性急啦~?杰米看着就是慢热型,得好好等他主动回应才行哦」"
「そりゃ分かってっけどさあ
"「这个我当然明白"……」
もぐもぐと空気を噛むしかない俺に、恋のキューピッドを買って出てくれた親友は楽し気に笑う。
我只能闷闷地咬着空气,自告奋勇充当恋爱丘比特的好友却笑得格外开心。
「男同士、なんて言ってたけど、そこは関係ないだろ? ジェイミーが男であろうと女であろうと、ルークが見せるべき誠意ってものは変わらないよ。それはルークだって分かってるでしょ?」
"「说什么男人之间,但那根本没关系吧?无论杰米是男是女,卢克该展现的诚意都不会改变。这点卢克你也心知肚明吧?」"
「……はい」
好的」
「あっはは! にしても、あのルーク教官に説教できるなんて思わなかったな~。後でアザムに報告しよっと」
"「啊哈哈!不过真没想到能有机会教训那个卢克教官呢~。待会儿要向阿扎姆报告一下」"
「う、ゔう~
"「呜、呜~"……」
分かってる。ラシードの言うことはすべて正しい、何ひとつ間違ってない。しかし、そこには今一つ想像力が欠けていると思う。考えてもみろ、大好きで、甘くていい匂いのする、俺のことが大好きな恋人とふたりきりの空間。体温が感じられるほどに近くに居ながら、そろりと顔を寄せられれば、ツイと距離を取られる哀しみ。駄目? と尋ねれば駄目じゃねえ、と彼は唇を尖らせる。その言葉を信じてその身を引き寄せれば、まるで無理やり抱き上げた野良猫のように一瞬で距離を稼がれてしまう。
我明白。拉希德说的每句话都正确,毫无差错。但我认为这其中还欠缺一点想象力。试想一下,与心爱的、散发着甜蜜气息、深爱着我的恋人独处的空间。近到能感受到彼此的体温,当我悄悄凑近脸庞时,却被倏地拉开距离的悲哀。问「不行吗?」,他便撅起嘴唇说「也不是不行」。若相信这话而将他拉近,他却又像被强行抱起的野猫般瞬间挣开距离。
「ちょっとだけ強引にいく、ってのは
"「稍微强硬一点的做法"……ナシ?」
不行吗?」
「う~ん
"「嗯~"……ある程度は積極的にならないと、だろうけど
虽说需要一定程度上的主动才行……。ジェイミーの様子を見ながらにするんだよ? 無理やりは絶対に駄目だからね」
。要观察杰米的状况再行动哦?绝对不可以勉强他」
嫌ではないと言うのだから、無理やり、にはならない、と思う、けど。ううん、分からない。アイツにどこまで近付いていいのか、触れていいのか、俺にはサッパリ見当もつかない。
既然说了不讨厌,应该就不算强迫吧,大概。不,我也说不准。完全不知道能靠近那家伙到什么程度,能触碰哪里。
食べ差しのピザを口へと放り込んで、ガムガムと力強く噛み締めていく。俺の身も心も、アイツを追い求めている。ジェイミー・ショウというあの美しい男を、この腕いっぱいに抱き締めたいと、ずっとずうっと願い続けている。
将吃剩的披萨扔进嘴里,用力地大嚼特嚼。我的身心都在追寻着那个家伙。一直、一直渴望着能将那个美丽的男人——杰米·肖,紧紧拥入怀中。
「いっつも酔っ払ってるからって、酒が強いワケじゃねえんだなあ」
"「明明总是喝得烂醉,其实酒量根本不行嘛」"
「あ~? アレは酔ってんじゃねえ、キマってんの!」
"「啊~?那可不是喝醉了,是嗨过头啦!」"
そう言うと、ジェイミーは黒目がちな瞳をクンと細めて、ソファに凭れたまま俺を見上げた。冷えた水を手渡すと、彼は喉元を無防備に晒して、ゴクゴクと美味しそうに飲み干した。時計の針が天辺を指すこの時間、しとしとと降り出した雨に追いやられた俺たちは、無事彼の住処へと辿り着けた。そのまま暑気払いだと引っ張り出した彼の秘蔵酒に、ふたりでのんびりと舌鼓を打っている。
说完这话,杰米眯起乌黑的大眼睛,倚在沙发上仰头看我。递过冰水时,他毫无防备地露出脖颈,咕咚咕咚喝得香甜。时针指向午夜的这个钟点,被淅淅沥沥的雨赶进屋的我们,总算平安抵达他的住处。就这样被他以消暑为由拽出来,两人悠闲地品尝着他珍藏的美酒。
中華料理にはビール、のイメージが強かったが、他にも白酒や紹興酒などの本場の酒と、めでたい色味として赤ワインもよく飲むのだと言う。ジェイミーの家にもそれらがストックされていて、こんな蒸し暑い日には冷めたいワインがいいと、なで肩のボトルが選び出された。氷と共にグラスを満たしたピノ・ノワールに合わせ、ツマミはナッツとドライフルーツ。飲みやすい口当たりにスイスイと杯が進み、ジェイミーはあっという間に酔っぱらってしまった。
中华料理配啤酒的印象根深蒂固,但据说当地人还会饮用白酒、绍兴酒等传统酒类,而象征喜庆的葡萄酒也颇受欢迎。杰米家中也常备这些酒水,在这般闷热的日子里,冰镇葡萄酒最是适宜,于是选了一瓶溜肩造型的红酒。斟满冰镇黑皮诺的酒杯旁,佐酒小食是坚果与果脯。顺滑易饮的口感让人一杯接一杯,转眼间杰米便醉意朦胧。
肩へと流すように髪をひとつにまとめ、ゆるりとしたチャイナシャツを身につけたその姿は、この街で俺しか知り得ないものだろう。アイメイクを落としたその顔は尖りがなくなり、アルコールに火照る肌は満遍なく赤味を透かしている。つるり、と潤んだ大きな瞳と視線が絡んだ。これくらい飲んだ内に入らないはずだが、ドキリ、と跳ね上がった心臓は、確かに脈を速めていく。ジェイミーも俺と同じく、そしてあの配信の時のように、ドキドキと胸が弾んでいないかと期待した。
长发如瀑垂落肩头,宽松唐装加身的模样,想必这城里只有我见识过吧。卸去眼妆的面容褪去锋芒,酒精熏染的肌肤透出均匀红晕。湿漉漉的大眼睛与我的视线倏然交缠。按理说这点酒量不至于醉人,可胸腔里怦然躁动的心跳,确实正逐渐加速。我暗自期待杰米是否也同我一样,像那次直播时般心如鹿撞。
キスしたい。抱き締めたい。そう思っても、ラシードのアドバイスがぐわんぐわんと頭の中をかき乱す。性別は関係ない、無理にしては駄目。ああもう、分かってるって。でもさ、俺から動かねえと、その先に進むなんて永久に無理なんだよ。中途半端に浮遊する気持ちのまま見詰め返していると、ニッ、とジェイミーが笑った。酔いに蕩け幼さが増した笑顔に見惚れている間に、ぽかぽかと温まった身体が、とすん、と俺の膝の上に乗った。
想亲吻。想拥抱。即便这么想着,拉希德的忠告仍在脑中嗡嗡作响。性别无关紧要,强求不得。啊真是的,我都明白。可要是我按兵不动,这段关系永远都不会有进展啊。正当我带着悬浮不定的心情回望时,杰米突然噗嗤一笑。沉醉于那张被酒精柔化了的稚气笑脸时,暖烘烘的身体突然——咚地坐上了我的膝盖。
どっしりとした重さと、パツパツと張った筋肉の感触を、太腿に感じる。艶やかな黒髪からオリエンタルな花の香りが漂って、触れ合いそうなほどに近付いた小麦色の肌に、ビビビッと全身が逆立つ。
大腿感受到沉甸甸的重量与紧绷肌肉的触感。艳丽的黑发飘来东方花朵的芬芳,当接近到几乎相触的小麦色肌肤时,全身如过电般战栗起来。
「ジェ
"「杰"――
——」
「ふふ、汗臭ェ」
"「呵呵,汗臭味好重」"
擦り寄る額が首筋をくすぐって、ゴグッ、と大きく喉が鳴る。
蹭过来的额头轻搔着后颈,咕咚,喉咙发出大声响动。
「あ、ごめ」
"「啊,抱歉」"
「ああ悪ィ、言葉の綾だ。臭くはねえよ。
"「啊不好意思,用词不当。并不难闻。"……お前の、汗のにおいがする」
是你汗水的味道」
するりと寄せられる頬が、艶々と滑らかで、温かい。彼が瞬きをするごとに、長い睫毛がパサパサと音を立て俺の肌をくすぐる。視界がぼやけるほどの近さでこちらを覗き込む涼やかな瞳が、そっと静かに伏せられた。同時に、唇に触れる瑞々しい柔らかさに、ぐっ、と息が止まる。目を見開くままに口先を突き出すと、彼の張りのある柔らかさへ、ふにり、と沈み込んでいく。
轻轻贴过来的脸颊,光滑润泽又温暖。他每次眨眼,长长的睫毛便沙沙作响,搔痒我的肌肤。在近得视线模糊的距离凝视我的清凉眼眸,悄然低垂。与此同时,触及唇瓣的鲜嫩柔软让我呼吸为之一窒。睁大双眼撅起嘴唇,便深深陷入他那富有弹性的柔软之中。
両頬を広い手の平が覆い、チュ、チュ、チュ、と音を立てキスを繰り返していく。舌先で感じられる甘い風味は、さっきまで楽しんでいたワインやフルーツだけでなく、ピタピタとくっ付くリップの味なのかもしれない。その愛らしい感触に対し緊張で身を固めながら、引き締まった身体をぎゅうぎゅうと抱き締めた。ふふふ、と鼻先から漏れる機嫌の良い微笑みが、胸を締め上げ痛んでしまうほど、こんなにも愛しい。わしゃわしゃと髪を掻き混ぜるように撫でられて、その心地良さに眉根を寄せ目を閉じた。
宽大的手掌覆上双颊,啾、啾、啾地反复亲吻着。舌尖尝到的甜美风味,或许不只是方才享用的红酒与水果,还有那紧密相贴的唇膏味道。面对这般可爱的触感,我紧张得浑身僵硬,却仍用力抱紧了他结实的身体。从鼻尖漏出的愉快轻笑,让胸口发紧到疼痛的程度,竟是如此惹人怜爱。被他像揉乱头发般抚摸着,舒适得我不由皱起眉头闭上眼睛。
どうして、なんで、今日はこうやってキスしてくれるんだろう。酒に酔っているから? 彼の家にいてリラックスしているから? それでも、今までだって同じような機会はごまんとあった。俺がどれだけアピールしようと頑として首を縦に振らなかったってのに、これは一体どうしてなんだ?
为什么,到底为什么今天会这样亲吻我呢?是因为喝醉了吗?还是因为在他家里很放松?可明明以前也有过无数次类似的机会。无论我怎么暗示他都坚决不肯点头,这究竟是怎么回事?
グ、と顔を傾け、キスを深めようと舌先を伸ばす。ちらり、と形良い唇を舐めると、途端に温もりは離れて行った。きょとん、と瞬きを繰り返す先、ジェイミーは渋い顔で俺を睨みつけている。
他微微偏头,试图加深这个吻,舌尖探出。当轻轻舔过那形状优美的唇瓣时,温暖却骤然抽离。我茫然地眨着眼,只见杰米正皱着眉头瞪我。
「……ステイ」
留下」
「え、うん」
"「诶、嗯」"
傾げた頭が引き寄せられ、再び触れるだけのキスが繰り返される。クシャクシャと髪を掻き混ぜられ、背を撫でられ、子どものように甘やかされる愛撫に、いやらしさよりもホッと温まる気持ちが大きくなっていく。真似るように滑らかな黒髪を撫でると、ジェイミーは気持ち良さそうに目を細めた。ぎゅ、と抱き返してくる身体がぴったりと腕に納まって、飼い猫のように大人しくなる。
歪斜的脑袋被拉近,反复落下蜻蜓点水般的吻。发丝被揉得窸窣作响,脊背被温柔抚触,如同宠溺孩童般的爱抚让人心头涌起暖意更甚于情欲。当我模仿着轻抚他柔顺的黑发时,杰米舒服地眯起眼睛。他回抱住我的身躯严丝合缝地嵌进臂弯,像家猫般温顺地安静下来。
「ルーク」
"「卢克」"
「っうん」
"「嗯」"
「眠ぃぜえ」
"「好困啊~」"
「っ、ああ~
"「啊、嗯~"……!」
なるほど、そういうことか。眠くて甘えてたんだ。トロトロと今にも眠りに落ちそうな身体を抱き起こして、なんとか寝る準備を済まさせる。寝室へと運ぶ先、ごろりと寝転んだジェイミーが、ベッドの余白を叩き俺を呼んでいる。
原来如此,是这样啊。是因为困了在撒娇呢。我把摇摇欲坠、眼看就要睡过去的身体抱起来,勉强让他做好了睡觉的准备。在把他运往卧室的途中,躺倒的杰米拍了拍床的空位叫我过去。
「俺が乗って、ベッド壊れねえかな」
"「我要是坐上去,床不会塌吧」"
「ん~? 大丈夫だろ。変なコトしなきゃなんとかなる」
"「嗯~? 没问题的啦。只要别做奇怪的事就没事」"
「……へ、変なコト」
「奇、奇怪的事?」
「ほら、こっち来いよ」
"「喂,到这边来」"
無邪気な笑みに吸い寄せられるかのように、狭いベッドの中へと潜り込む。ジェイミーは俺の顔を胸に抱き寄せると、おやすみ、と呟いた。しとしとと降り続く雨で室内もじっとりと蒸し暑いはずなのに、そんなものが気にならないくらい、ドキドキと鼓動がうるさい。固くも柔らかなジェイミーの胸が、俺の額にぴったりと添えられ、呼吸の度に滑らかに上下していく。
仿佛被天真无邪的笑容吸引般,我钻进狭窄的床铺。杰米将我的脸搂进怀里,轻声道了晚安。本该因连绵细雨而闷热潮湿的室内,此刻却因震耳欲聋的心跳声变得无关紧要。杰米紧实又柔软的胸脯贴着我的前额,随着呼吸平缓起伏。
すう、すう、と頭上から落ちてくる健やかな寝息を聞きながら、俺はドッグタグを握り締め、何度も親父の顔を思い描いた。親父、今日ばかりは力を貸してくれ。コイツのベッドをぶっ壊すようなことだけは、どうしても避けたいんだ。もしもコイツに嫌われちまったら、俺は一生立ち直れない。すんすん、とジェイミーの香りを肺の奥深くまで吸い込む。オレはそのまま、朝日が昇るまでまんじりともせず祈り続けた。
听着头顶传来均匀健康的呼吸声,我紧攥狗牌,反复描摹父亲的面容。老爹,就今天帮帮我。我无论如何都不想弄坏这家伙的床。要是被这家伙讨厌的话,我这辈子都振作不起来了。我深深吸气,让杰米的气息沁入肺腑。就这样,我彻夜未眠地祈祷直至朝阳升起。
地獄にも思えた甘く温かな同衾は、それはそれはレアな体験だったのだと後になって知った。秋の気配が深まる空気を感じながらも、俺たちの関係は一向に進む様子はない。時間が合えばこうやって紅虎門に顔を出し、ジェイミーと共に街を見下ろしているが、誰も居ないのを見計らって唇を寄せられたら御の字、日によってはその手にすら触れられない。
那场恍如地狱却又甜蜜温暖的同衾,后来才知竟是如此稀有的体验。尽管能感受到秋意渐浓的空气,我们的关系却毫无进展。时间凑巧时就这样在红虎门露个脸,和杰米一起俯瞰城市,若能趁四下无人时偷得一个吻便谢天谢地,有些日子甚至连他的手都碰不到。
そんなフラストレーションの溜まる日々ではあるが、ジェイミーへの想いが変わるワケではない。むしろ、どんどんと深化しているなと感じた出来事があった。その日は仕事で随分と遅くなって、着替えついでにプロテインバーを腹に納め、大急ぎで大きな赤い門を潜っていた。
虽然日日累积着这样的挫败感,但对杰米的心意丝毫未变。反倒有件事让我感觉这份感情正不断深化。那天工作到很晚,匆匆换上衣服往肚子里塞了根蛋白棒,就急急忙忙穿过那座大红门。
街灯の少なくなったこの時間帯。前を行く親子連れが目に付いて、こんな遅くに珍しい、妙だな、と思った瞬間だった。目の端に月明かりを返す金色が輝いて、闇夜の中でも目立つ、逆三角形のシルエットが浮き彫りになった。
这个时段路灯已稀疏。前方一对亲子组合闯入视线,正想着这么晚还真少见、真奇怪呢,忽然余光里月辉映出金色的闪光——暗夜中格外醒目的倒三角轮廓骤然浮现。
「よお、爸爸。お子さん可愛いね、名前は何て言うの?」
"“哟,爸爸。你家孩子真可爱,叫什么名字?”"
にっこり、と微笑みを浮かべるジェイミーを前に、男はしどろもどろになりながら言葉を返す。
面对杰米脸上浮现的微笑,男人结结巴巴地回应。
「め、メイだ」
"“叫、叫梅。”"
「へえ、メイちゃん。こんな遅くに出歩いてちゃ危ないぜ。ジェイミーさんが送ってくよ」
"“嘿,小梅。这么晚还在外面走可危险啊。杰米叔叔送你回去吧”"
差し伸べられる手の平へと、女の子は大きく一歩踏み出した。しかしがっしりと捕まえる男がそれを許さず、細い腕を乱暴に手繰り寄せる。
女孩朝着伸来的手掌迈出一大步。但壮硕男人不容分说地钳制住她,粗暴地将纤细手腕拽了过来。
「余計なことすんじゃねえよ、この子はウチの子だ、構うんじゃねえ」
"「少他妈多管闲事,这孩子是我家的,别碰她」"
吐き捨てるようなその言葉に、ギラリ、と黒い瞳が光る。ジェイミーは怒りを孕んだ目で男を睨めつけると、冷静さを繕いながら、よく通るあの声で宣言した。
面对那唾弃般的话语,漆黑瞳孔骤然闪过寒光。杰米用盛怒的眼神瞪视着男子,一边强装冷静,以那清亮的声音宣告道。
「その手をさっさと離しやがれ。その子の名前はメイなんかじゃねえ、ルォシーだ。オレの言うことが聞けねえなら
"「赶紧把你那脏手拿开。这丫头不叫梅,是罗茜。要是听不懂人话"――
——泣かしちゃうよ?」
老子现在就让你哭出来?」
トッ、と闇夜を駆ける黄金色が瞬く間に男へと詰め寄り、その喉元にドスンと手刀を突き入れる。よろめき呻くその隙に、彼は目の前で藻掻く腕を掴み、ギチギチと高く捻り上げた。自由を得た子どもはジェイミーの足元へ抱き着くと、彼はその小さな身体を抱き留め、庇うように男へと背を向けた。逆上した男が何やら喚き散らしながら腕を振り上げたが、そんなダセェ暴力を許すような俺じゃない。
倏地,一道金色残影划破夜幕直逼男子咽喉,手刀重重劈在对方喉结处。趁着对方踉跄呻吟的空档,他抓住眼前胡乱挥舞的手臂,嘎吱一声反拧到高处。重获自由的孩子扑向杰米脚边,他一把搂住那小小的身躯,转身将后背朝向男子作为屏障。暴怒男子叫嚷着高举手臂,但老子可不会放任这种三流暴力得逞。
ジェイミーが顔を上げるより先に、男の脇腹を抉るように拳を打ち込む。吹き飛んだ身体は砂埃を立て地面に叩きつけられ、痛みを訴えゴロゴロと転げ回っている。女の子を抱き締め続けるジェイミーは俺の顔を見上げると、く、と唇を噛み締め、整えられた眉根をキツく寄せた。
在杰米抬起头之前,我的拳头已如利刃般捅进男人的侧腹。被击飞的身体扬起尘土重重砸向地面,对方痛苦呻吟着翻滚挣扎。仍紧搂着女孩的杰米抬头看向我时,死死咬住嘴唇,修剪精致的眉峰紧紧拧成一团。
「……そこの脳筋クン。オレの街の問題に手ェ出すなっつったよな」
那边的肌肉男。我不是说过别插手我地盘上的事吗?
「分かってるって。でもお前は警察に顔出しにくいだろ? コイツは俺が連れていく。お前はその子を家まで送り届けてくれ。安心しろよ、これはただの役割分担。お前の仕事に手出しはしてねえよ」
"「我明白。但你不方便在警察面前露面吧?这家伙由我带走。你负责把那孩子送回家。放心,这只是分工合作。我可没想抢你的活儿」"
逃げ出そうと地を這う悪漢の首根っこを捕まえて、ズリズリと引き摺りながら警察署を目指す。一度振り返ったその場所では、服が汚れるのも構わず、泣きじゃくる子どもを抱き締め続けるジェイミーの後ろ姿が見えた。広い胸は小さな女の子の身体を余すことなく受け止めて、優しく、落ち着かせるように黒い髪を撫で続けている。
我揪住那个企图爬地逃窜的恶棍后颈,拖着他刺啦刺啦地往警察局走去。回头望去,只见杰米不顾制服被弄脏,始终紧紧搂着抽泣的小女孩。他宽阔的胸膛完全容纳着女孩娇小的身躯,一边轻抚她乌黑的头发,温柔地安抚着。
アイツはああやって、ずっとこの街を守ってきたんだ。たったひとりで。
那家伙就是这样,一直独自守护着这条街道。
パチン、と膨らみきった風船が割れるかのように、胸の中に切なさが弾け、呼吸がほんの少しだけ不確かになった。アイツがこの紅虎門を『オレの街』と呼ぶその意味を、俺はしっかりと理解しているつもりだった。しかし、実際の彼の活動を目の当たりにしたのは今日が初めてで、あんなにも優しさの溢れる、脆く危うげなものだと知ったのも、今日が初めてだった。もしあの瞬間、俺がいなければ、アイツは暴漢の攻撃をすべて受け、女の子を庇っただろう。そんな攻撃で怯むような男じゃないってことは、俺が世界で一番分かってる。けれどあんな闘い方を続けていては、他者を護れようとも、彼自身を守る者は何処にもいやしない。俺はそのことに、気付いてしまった。
啪的一声,仿佛膨胀到极限的气球突然爆裂,胸中苦涩的情绪猛然炸开,呼吸也随之变得略微不稳。我原以为自己完全理解那家伙将这座红虎门称为『我的街道』的含义。但今天却是第一次亲眼目睹他实际的活动,也是第一次知道那份温柔竟如此满溢而脆弱易碎。若那一刻我不在场,那家伙定会承受所有暴徒的攻击,护住那个女孩吧。我比世上任何人都清楚,他绝不是会在那种攻击前退缩的男人。但若继续那种战斗方式,纵使能保护他人,却无人能守护他自己。我终究还是察觉到了这一点。
喚き立てるのも疲れたらしい犯罪者を国家権力へと引き渡し、再び中華街へと足を進めながら思う。アイツは強い、だから大丈夫だ。分かってる。それでも、俺はアイツを大切にしたい。もしもアイツひとりの手に負えないようなことがこの街に起きたとして、アイツは一体どうするんだろうか。俺が把握していないだけで、相談をする相手や、力を貸してくれる人間が居るのだろうか。たったひとりで、すべてを抱え込もうとするのではないか。その時、この俺を頼ってくれるだろうか。
将喊得筋疲力尽的罪犯移交给国家权力机关后,我再次迈向中华街,心中暗想。那家伙很强,所以没问题的。我明白。即便如此,我还是想好好珍惜他。倘若这座城里发生了连他都无法独自应对的事态,他究竟会怎么做呢?是否只是我不知道而已,其实他有可以商量的对象、或是愿意伸出援手的人呢?会不会又打算独自扛下所有?到那时,他愿意依靠这样的我吗?
アイツが自らの仕事に首を突っ込まれたくないことも、アイツひとりで解決できるだろうことも、俺はちゃんと分かってる。分かってる! それでも、俺は勝手に心配してしまう。あの背が他者の命を一身に背負い、悪から守る楯になろうとするんじゃないかって。たったひとりでヒーローになろうとして、そして消えてなくなるんじゃないかって。
我明明很清楚那家伙不愿他人插手自己的工作,也清楚他独自就能解决问题。很清楚!即便如此,我还是会不由自主地担心。担心那道背影会独自扛起他人性命,成为抵御恶意的盾牌。担心他会试图孤身成为英雄,然后消失不见。
「そんなの
"「那种事"……絶対に、
绝对、……ッ許さねえ」
绝不饶恕」
ギリ、と奥歯を噛み両の手を握り締める。この怒り狂う感情は、この街の翳りの中に潜む者たちへと向かうだけでなく、愛する人にすら向かってしまう。なんでひとりでやっちまうんだよ全部。ここに俺が居るじゃねえか。どんな些細なことでもいい、この俺を頼ってくれよ。俺、お前が好きなんだよ。お前が居なくなるかもなんて、ほんの僅かにも考えたくねえんだよ。
他咬紧臼齿发出咯吱声,双拳紧握。这股狂怒的情绪不仅指向藏在这座城市阴影中的家伙们,甚至波及了所爱之人。为什么所有事都要独自扛下来啊。我不是就在这里吗?无论多琐碎的事都好,依靠一下我行不行。我啊,可是喜欢着你的。光是想到可能会失去你,哪怕只有一瞬间的念头,都让我难受得要命。
昼間は春麗さんが功夫教室を開いている東屋の下で、ジェイミーはポツンと椅子に腰かけていた。俺に気付くと軽く手を上げて、何か言いたげな表情で見詰めてくる。暗がりの中のその姿さえも美しく、どこか儚げに思えるのは、きっと俺の欲目だけじゃない。
白天在春丽开设功夫教室的凉亭下,杰米孤零零地坐在椅子上。发现我后他轻轻抬手,用欲言又止的表情凝视过来。就连暗处中的身影也美得惊心,那份易碎感想必并非只是我的偏爱滤镜。
「見ろよ、派手に濡らしてくれたぜ。おチビちゃんが泣き止むまで、ずーっと抱いてやってたからな」
"「看啊,搞得这么湿。因为一直抱着这小不点直到他停止哭泣呢」"
困ったように笑んで指す上着は、涙やら鼻水やらをしっかりと吸い込んで、目鼻口を写し取ったかのように変色していた。彼のことだ、きっと優しく、根気よく声を掛け続け、彼女を落ち着かせてから家まで送り届けたのだろう。ジェイミーは猫のような瞳を細めると、助かった、とひとつ呟いた。
他苦笑着指向的外套,早已被眼泪鼻涕浸透,颜色斑驳得像是拓印下了整张面孔。以他的性子,定是温柔又耐心地不断安抚,待她平静后才将人送回家吧。杰米眯起猫一般的眼睛,轻声说了句'得救了'。
「お前の言う通り、オレは警察に顔出しにくいからな。この活動を黙認してもらう代わりに、オレもアチラさんへ近付かない。それが暗黙の了解ってやつだ」
"「正如你所说,我确实不方便在警方露面。作为默许我活动的交换条件,我也不会主动接近那边的人。这就是所谓的默契吧」"
ニッ、と上がるその口角の形を見た瞬間、ついに我慢の限界が訪れた。俺は子どものように泣き出しそうな気持ちをなんとか堪えて、ジェイミーの目の前で膝を折った。
看见他嘴角扬起的那抹弧度时,我的忍耐终于到了极限。强忍着快要像孩子般哭出来的冲动,我在杰米面前重重跪了下去。
「ジェイミー」
"「杰米」"
震える手で、逞しくも優しいその手を取る。ジェイミーは大きな瞳を丸くして、なんだよ改まって、と怪訝な表情のままこちらを見やった。
用颤抖的手握住那只强壮而温柔的手。杰米睁大了圆溜溜的眼睛,一脸困惑地看着这边,像是在说“干嘛这么正经”。
「一緒に暮らそう」
"「一起生活吧」"
「……え? は? なんで」
诶?啊?为什么啊」
「お前の仕事は、これからも絶対に邪魔しねえ。約束する。でも、俺はお前の恋人なんだ。俺にだって、お前を心配する権利はあるだろ? お前の顔が見れない時間が長すぎて、俺は時々どうにかなりそうになる。お前が弱いとか、頼りないとか、そんなことは一ミリたりとも思ってねえ。むしろ強いからこそ、俺はお前が心配だし、頼ってほしいって思ってる。だから」
"「我发誓,从今往后绝对不再妨碍你的工作。但我可是你的恋人啊。难道我就没有担心你的权利吗?每次太久见不到你的脸,我都快疯掉了。我压根没觉得你软弱或靠不住,连一毫米这种念头都没有。正因为你太要强,我才更担心,更想让你依赖我。所以——」"
ぎゅう、と握りしめる手の平はじんわりと温かく、ほんのりと湿り気を帯びている。
紧握的掌心传来阵阵温热,渗出微微潮湿的触感。
「……話が見えねえ」
根本看不见话
ウロウロと視線を彷徨わせながらも、彼は決してこの手を振り払わない。お前はいっつも急なんだよ、と呟く声は弱弱しく、俺を許してくれたのだと、その声色でよく分かった。
他目光游移不定,却始终没有甩开这只手。'你总是这么急性子啊',那声低语虚弱无力,从语调里我分明听出了'原谅我了'的意味。
「悪ィ、急なのはこれからも変わらねえと思う。こう見えて、色々と考えてんだよ、俺も」
"「抱歉,我这急性子怕是改不了了。别看这样,我也在考虑很多事情啊」"
「ったく、お前はもうちょっとタイミングってモンを考えてだな」
"「真是的,你这家伙也该多考虑下时机啊」"
「愛してる、ジェイミー。俺に、お前をもっと大切にさせてくれ」
"「我爱你,杰米。让我更加珍惜你吧」"
ピシャリ、と言葉を被せ、自らの思いを言葉にする。ジェイミーは驚きに目を見開くと、俺の指を握り返しながら、もう一方の手で赤らんだ顔を隠そうと苦心し始めた。
啪地打断对方话语,将心中所想诉诸言语。杰米惊讶地瞪大眼睛,回握住我的手指,同时开始慌乱地用另一只手试图遮掩泛红的脸颊。
「……夜に動くから、お前の安眠邪魔しちまうぞ、きっと」
我晚上会活动,肯定会打扰你安眠的
「前も言っただろ? 俺も大概不規則。軍の頃のアレコレでいつでもどこでも寝れるスキル身に着けてるし、お前が気にするようなことは何ひとつねえよ」
"之前不是说过了吗?我也经常作息不规律。在军队那会儿练就了随时随地都能睡的本事,你完全不用在意"
「荷物も多いぞ、今のお前の部屋だと絶対無理だ」
"行李也很多,以你现在房间的大小绝对放不下"
「上に言って新しい部屋探してもらうから安心しろって。紅虎門に比較的近い、収納の多い部屋がいいな。きっとすぐに見つかるぜ。なんたって、あのバックラー社だからな!」
"「上面说了会帮你找新房间的,放心吧。最好是离红虎门比较近、储物空间多的屋子。肯定很快就能找到的。毕竟那可是巴克拉公司啊!」"
ポツポツと口にする彼の不安をぶった切って、全力の笑顔を剥き出しにする。胸の内ではダクダクと汗をかくほどに焦っているけれど、この必死さだけは悟られたくない。ジェイミー、頼む、一緒に居てくれ。それだけできっと、俺はお前の力になれる。名もなき路地裏で、誰にも知られずひっそり息絶えるなんて、絶対に、絶対に、絶対にこの俺が許さない。
我斩钉截铁地打断他零碎的担忧,挤出全力的笑容。虽然内心急得冷汗涔涔,但唯独这份拼命不想被他察觉。杰米,求你了,留在我身边。只要这样,我一定能成为你的力量。我绝对、绝对、绝对不会允许你无声无息地死在无人知晓的小巷里。
「……すぐに引っ越す、とかは無理かも知れねえけど
虽然可能没法马上搬家……」
「荷造り、俺も手伝う。ふたりでやればあっと言う間だぜ」
"「打包行李,我也来帮忙。两个人一起的话转眼就能搞定啦」"
「……だろうな」
「大概吧」
汚れた服のまま、暗闇の中座る彼が困ったように笑う。煌びやかな夜景が見守るワケでもない、なんの変哲もない中華街の片隅。そんなシチュエーションだからこそ、この気持ちが伝わったんだと信じている。ジェイミーの両手が俺の手を握り、そしてくしゃりと笑顔を作った。
他穿着脏衣服坐在黑暗中,露出困扰的笑容。这里既没有璀璨的夜景作伴,也不过是唐人街一个再普通不过的角落。但正因如此,我相信这份心意才能传达到。杰米的双手握住我的手,然后噗嗤一声笑了出来。
そろりと寄せた唇に、触れるだけのたおやかなキスが与えられる。
轻轻贴近的唇瓣,落下一个仅止于触碰的轻柔之吻。
樹々が赤や黄に色付き始める頃、ジェイミーとの共同生活が本格的に始まった。共に暮らしていても顔を合わせられる時間は相変わらず短いが、毎日数時間、いや数十分でも彼の姿が見れるというのは、喜ばしい。全く異なる文化や習慣をもつジェイミーとの生活は想像していた以上に新鮮で、俺の視野や考え方もグンと柔軟になったのを感じている。
当树木开始染上红黄色彩时,与杰米共同生活正式拉开了序幕。即便同住一个屋檐下,能碰面的时间依旧短暂,但每天能见到他几小时,甚至只是几十分钟的身影,都令我欢欣不已。与拥有全然不同文化和习惯的杰米生活,比想象中更为新鲜,我明显感觉到自己的视野和思维方式都变得更加灵活开阔。
彼との生活で知るお互いの違いは、数えきれないほどあった。その中のひとつが、入浴時間の違いだ。俺は朝一番に髭剃りや整髪などを兼ね短時間でシャワーを済ますが、ジェイミーはわざわざ湯船にぬるま湯を溜め、長い入浴時間をとる。あの長い髪を整えるにはそれなりに時間が必要だろうが、それにしても湯に溶けてしまうのではないかと心配を覚えるほど、浴室に篭りっきりだ。俺が知らないだけで、この家の風呂にはゲーム機でも備え付けられているんだろうか。オフの日、何となしにそのことを尋ねると、ジェイミーは何かを思いついたとでも言うように凛々しい両眉をピンと跳ね上げた。
在同居生活中,我们发现了彼此数不清的差异。其中之一便是沐浴时间的差别。我习惯清晨快速冲澡,顺便刮胡子整理发型;而杰米则特意在浴缸放满温水,享受漫长的泡澡时光。那头长发确实需要时间打理,但他泡在浴室里的时长总让我担心他会不会融化在水里——莫非这间浴室暗藏了游戏机?某个休息日,我随口问起这件事,杰米突然像是灵光乍现般,英气的双眉高高扬起。
「お前は根っからの脳筋だな。仕方ねえ、オレ様が風呂の嗜み方を教えてやるよ」
"「你真是个天生的肌肉笨蛋啊。没办法,就让本大爷来教你泡澡的规矩吧」"
そう言うと、ジェイミーはソファから跳ねるように立ち上がり、そのままバスルームへと消えた。ざあざあと湯を張る水音が小さく響き、戻ってきた彼は鼻歌交じりに俺の背を押した。そのまま脱衣所まで誘導され、彼は俺の背を叩いて、にゃはは! と笑った。
说完这话,杰米从沙发上一跃而起,径直消失在浴室方向。哗啦啦的放水声隐约传来,当他哼着小曲回来时,推了推我的后背。就这样被引导至更衣室,他拍了拍我的背,发出「喵哈哈!」的笑声。
「湯船に浸かって、イイコにしてな?」
"「乖乖泡在浴缸里,要当个好孩子哦?」"
「お、おう。分かった」
"「哦、哦。知道了」"
脱衣所を出るジェイミーを見送り、言い付け通り服を脱いで浴室へ踏み入れた。湯船の中には、クリームのような真っ白な泡がたっぷりと膨らんでいる。ガキの頃からシャワーで汗を流してばかりだったから、泡風呂なんて片手で数えるほどしか入ったことがない。
目送杰米离开更衣室后,我按照吩咐脱下衣服踏入浴室。浴缸里堆满了如奶油般雪白蓬松的泡沫。从小我就习惯用淋浴冲澡,泡泡沫浴的次数屈指可数。
泡の中へと腰を下ろすと、ぶわり、と嵩を増した花の香が胸元までせり上がる。パチパチと弾けるそれを掬って、ふうと吹いたり手で潰して遊ぶ。綺麗好きな彼のおかげで、この場所に越してからずっと、部屋の隅々まで清潔が保たれている。それはここバスルームでも同じだ。ありがたいな、と白くツルツルとした室内を見回していると、ガチャリ、と浴室のドアが開いた。ジェイミーは黒のタンクトップにハーフパンツという出で立ちでニンマリと笑うと、湯船の真横にしゃがみ込み、ちょいちょい、と俺を呼んだ。
当我在泡沫中坐下时,馥郁的花香突然膨胀漫至胸口。我掬起噼啪作响的泡沫,时而轻轻吹散,时而用手捏碎玩耍。多亏了爱干净的他,自从搬来这里,房间每个角落都保持着整洁。浴室也不例外。正感激地环顾着光洁锃亮的四周,咔嗒一声,浴室门被推开了。杰米穿着黑色背心和运动短裤,蹲在浴缸旁咧嘴一笑,朝我「喂喂」地招手。
「んじゃルーク君、こっちに背を向けて座りたまえ」
"「那么卢克君,请背对着我坐下吧」"
言われるまま脚を縮こませ、なんとか彼に背を向ける。ジェイミーは戸棚から取り出した何やらいい香りのするオイルを手に取ると、俺の頭に垂らし、ゆっくりと揉み込み始めた。ほどよい強さで刺激をされるマッサージは、頭皮の緊張がほぐれ、トロンと蕩けるように心地良い。
依言蜷起双腿,勉强转过身去背对他。杰米从橱柜里取出某种散发着怡人香气的精油,倒在我头上,开始缓缓揉搓。力道恰到好处的按摩让紧绷的头皮逐渐放松,酥麻快感如潮水般漫开。
「うあ~~~
"「呜啊~~~"……溶けるぅ
要融化了啦……」
「へへっ、気持ちいいだろ? 頭皮も髪もケアできるし、いい香りでリラックスできるんだぜ」
"“嘿嘿,舒服吧?不仅能护理头皮和头发,还能在好闻的香气里放松哦”"
「やばい、眠い
"“糟了,好困"……」
「いいぜえ? 寝ちまいなぁ」
"「可以啊?睡吧睡吧」"
ざあ、とぬるい湯で濯がれて、次はふくふくと泡立たせたシャンプーで髪が洗われていく。普段頭から爪先までボディソープで丸洗いしてるから、こんなにも労わられるなんて、と髪たちもビックリしているだろう。
哗啦——被温水冲洗过后,接着是用蓬松起泡的洗发水揉搓头发。平时从头顶到脚尖都用沐浴露草草了事,如今竟受到这般细致对待,发丝们想必也大吃一惊吧。
「んっひひ、デケェ犬洗ってるみてえ」
"「唔嘻嘻,简直像在洗巨型犬呢」"
クスクスと冗談めいて笑うその一方で、頭皮を掻くその指先は穏やかで丁寧だ。ざあざあと洗い流されると、次はトリートメントがぺたぺたと塗り込まれていく。
他一边咯咯笑着打趣,一边用指尖温柔细致地挠着头皮。哗啦啦冲洗干净后,接着又啪嗒啪嗒地抹上护发素。
「毎日やってんの? トリートメントとか、マッサージとか」
"‘你每天都这样吗?护发素啊按摩啊什么的’"
「ま、大抵はな」
"‘嘛,差不多吧’"
「そりゃバスルームから帰って来ないワケだ。遊んでるのか、でなきゃ人魚にでもなってんのかと思ってたぜ」
"「难怪从浴室回不来呢。我还以为你是在玩,要么就是变成人鱼了」"
「ハッ、なんだそりゃ」
"「哈,什么啊」"
グン、と背を反るようにして彼の顔を見上げると、視線の先で長い睫毛がパチパチと上下した。三つ編みではなく、団子のようにクルクルとまとめたラフなその髪型も、とてもよく似合っている。
他猛地后仰身子抬头看她,视线所及之处,长长的睫毛扑闪扑闪。不是编成辫子,而是随意盘成团子的发型,也格外适合她。
と、その時初めて、ジェイミーの服がしっとりと濡れているのに気付いた。水分を含んだ布地が引き絞られた身体に張り付き、筋肉の凹凸をひとつひとつ浮かび上がらせている。その繊細な仕事はもちろん、彼の胸元にも事細かに施されている。つまり、ぽっちりと膨らんだ胸先の大きさすら、不透明な生地越しでも明確に読み取れてしまう。
就在那时,我才第一次注意到杰米的衣服已经湿透了。吸饱水分的布料紧贴在他绷紧的身体上,将肌肉的每一处起伏都勾勒得淋漓尽致。这精细的做工自然也没放过他的胸口——就连那微微隆起的乳尖轮廓,都能透过不透明的衣料看得一清二楚。
分かりやすく甘やかされ、湯にたゆたうままリラックスしていたところで、突如目に飛び込んできた衝撃が正中線を駆け抜ける。俺はゆっくりと時間をかけて壁に並ぶタイルへ視点を戻すと、背にじっとり汗が浮かぶのを感じていた。
正当我沉浸在显而易见的宠溺中,放松地泡在热水里时,突如其来的视觉冲击沿着中线直冲脑海。我缓缓将视线移向墙面的瓷砖,感到后背渗出了黏腻的汗珠。
ジェイミーと付き合い始めておよそ二カ月、そして共に暮らし始めて一週間。これほどに関係が深まっても、俺たちはキス以上のことをしたことがない。彼のラフな姿を目の当たりにする度に、その身に齧り付きそうになる自分を必死に抑えてきた。それはきっと、一度でも手を伸ばしてしまったら、この俺に搭載されているはずのブレーキが遥か彼方に吹っ飛んじまうから。
和杰米交往约两个月,同居一周。即便关系已如此亲密,我们也从未越过接吻的界限。每次目睹他随性的模样,我都拼命压抑着想扑上去撕咬的冲动。因为我很清楚,只要伸手触碰一次,我这具身体里本该存在的刹车系统就会彻底崩坏。
しかし、だ。今俺の背後にあるその姿はあまりにも扇情的で、無防備で、しかも俺はこのように素っ裸だ。水面に浮かぶ泡の塊が覆い隠してくれるとは言え、彼がこの場所に留まり続ける限り、俺の股間は血流を良くしたままでいるだろう。ゆるゆると柔らかな湯が流れていき、髪はすっきりさっぱりと綺麗になってしまった。ジェイミーは一仕事終えたとでも言うようにグンと背伸びをすると、後は自分でやるんだぜえ、とこの場を後にしようと立ち上がった。
然而,此刻我身后那具躯体实在太过撩人,毫无防备,更何况我现在这样一丝不挂。虽说水面漂浮的泡沫能稍作遮掩,但只要他继续停留在此,我的下半身恐怕会一直保持充血状态。温热的浴汤缓缓流淌,发丝已被彻底洗净清爽。杰米像完成某项工作似地猛然伸了个懒腰,说了句'剩下的你自己搞定吧'便起身准备离开。
「ッ、ジェイミー」
"「呃、杰米」"
「ん~?」
"「嗯~?」"
振り返る、その身へと手を伸ばす。
转身,朝那个身影伸出手去。
「ジェイミーも、一緒に入ろうぜ」
"「杰米也一起来吧」"
「ああ? オレまだ髪濡らしたくねえんだけど」
"「啊?我头发还不想弄湿啊」"
「そんままでいいからっ
"「就这样直接来吧」"……キス、したい」
想接吻
胸を詰まらせそう口にすると、ジェイミーはパチリと目を見張った。そして不貞腐れたかのように唇を尖らせると、胸元に貼り付く布地を引っ張りながら目を泳がせる。
当这句哽在胸口的话语脱口而出时,杰米瞪大了眼睛。随后他像是闹别扭似地撅起嘴唇,一边拉扯紧贴胸前的衣料,一边游移着视线。
「……仕方ねえ野郎だな」
真是个没救的家伙
そうひとつ呟くと、ジェイミーは着の身着のまま、俺が浸かる湯船へと足を踏み入れた。ざああ、と泡を浮かべた湯が外へと流れ出し、狭いバスタブの中で身が密着する。
轻声呢喃完这句,杰米就穿着身上的衣服踏进了我泡着的浴缸。哗啦——浮着泡沫的热水向外溢出,在狭窄的浴缸里身体紧密相贴。
「これで満足かよ。ったく、下着までビショビショになっちまった」
"“这下满意了吧。真是的,连内衣都湿透了。”"
「許せって」
"“原谅我。”"
ぶつくさと文句を言うワリに、伸ばした手へは素直な頬が擦り付けられる。立てた膝に手が添えられ、ジェイミーは目蓋を閉じたまま端正な顔を差し出した。ちゅぷ、と小さな水音と共にぶつかり合う唇は、今日もまた柔らかく、弾力があって、小さくまとまり、たった一息で呑み込めてしまいそうなほどプリティーだ。ちゅうちゅうちゅう、と唇のど真ん中に吸い付いて、上唇が描く小山をはむはむと食む。ねろり、と差し入れた舌先で歯列をなぞると、引き寄せる肩先がくすぐったさを訴えフルフルと震えた。
虽然嘴上嘟嘟囔囔抱怨着,脸颊却老实蹭上了伸来的手掌。当手扶上屈起的膝盖时,杰米闭着眼眸献上了端正的面庞。伴随着啾噗的细小水声,相触的唇瓣今日依旧柔软、富有弹性,小巧得仿佛只需一口气就能整个吞下。啾啾啾地吮吸着唇心,又啊呜啊呜啃咬上唇勾勒的小山丘。用探入的舌尖懒洋洋描摹齿列时,被揽住的肩头因发痒而簌簌颤抖起来。
「ジェイミー
"「杰米"……口開けて、」
张开嘴,」
「ふっ、ふっ、
"「哈、哈、"……はあ、っ」
哈啊、っ」
細い鼻先で息を逃すばかりだったジェイミーが、そろり、と小さく口を開く。差し出された舌先をひと舐めすれば、その粘膜の薄さに、ゾワリ、と体中の細胞が色めき立った。舌を伸ばし、裏側から絡め取るかのように、甘やかな柔器官を舐る。更には上顎や頬の内側の隅々まで味わって、彼の口内を余すことなく愛撫した。
仅能从纤细鼻尖泄出微弱气息的杰米,缓缓地、微微张开了嘴。若用舌尖轻舔那递来的舌,其黏膜之薄嫩,令全身细胞都为之战栗沸腾。伸出舌头,仿佛要从内侧缠绕般舔舐那甜美的柔软器官。更进一步品尝上颚与脸颊内侧每个角落,将他口腔每一寸都爱抚殆尽。
一時すら逃したくはなくて、薄っすらと目蓋を開いたまま口づけを深くしていく。照れ臭そうに顰められていた眉根も今や緩んで、柔らかな舌先が積極的に絡み返してくる。ちゅうぅ、と舌全体を吸い上げるそのやり方は、彼が夢中になっている証拠だ。ジェイミーはハアハアと荒い息を逃しながら、くったりと身を預けてきた。ぎゅう、と頭を抱き締められて、俺も負けじと片手に納まる後頭部を強く引き寄せる。
连一瞬都不愿浪费,在微启的眼睑下加深这个吻。原本羞赧紧蹙的眉间已然舒展,柔软的舌尖正主动纠缠上来。啾——地吮吸整条舌头的做法,正是他沉迷的证明。杰米一边漏出粗重喘息,一边瘫软地倚靠过来。当被紧紧搂住脑袋时,我也不甘示弱地将他单手可握的后脑用力按向自己。
身体を揺らす度に、股の間でそそり立つ、興奮の証が彼にぶつかる。ゆるりと唇を離すと、彼はゴクリと喉を鳴らして、そおっと色づく目蓋を伏せた。
每次身体晃动,股间昂然挺立的兴奋证明都会撞上他。缓缓分离双唇后,他喉结滚动着咽下唾液,染上绯红的眼睑轻轻垂下。
「なあ、その
"「喂,那个"……お前」
你这家伙」
綺麗に整えられた眉を困らせ、言葉を詰まらせるその姿に、更なる欲の炎が燃え上がる。ガコン、と風呂の栓を抜くと、ゴボゴボと音を立てあっという間に湯が抜けていった。
看着那对精心修剪的眉毛因困扰而蹙起,言语哽塞的模样,欲望的火焰愈发炽烈。随着浴缸塞子被猛地拔起,咕噜咕噜的水声里,热水转眼间便流尽了。
「ジェイミー、俺さ、
"「杰米,我啊,"……お前とのキスで、こんななっちまった」
和你接吻后,就变成这副模样了」
壁に掛けたシャワーを捻って、身体に付いた泡を落としていく。真っ白なまとわりがなくなると、ギチギチと青筋を立てる自分自身が、彼の目の前で剥き出しになった。目の縁を赤らめる彼が、俺の顔と股間を交互に見やる。パク、と口を開き何かを言いかけて、口紅のよれた唇が再度閉じられた。
拧开挂在墙上的花洒,冲掉身上的泡沫。当白色泡沫彻底消失后,青筋暴起的躯体赤裸裸暴露在他眼前。他眼眶泛红,目光在我脸庞与胯间来回游移。双唇微启似要说什么,口红晕染的唇瓣又缓缓合上。
「なに」
"「什么」"
「ん」
"「嗯」"
「言いかけて止めんなよ」
"「话说到一半别停啊」"
「…………あんま、他の野郎の
别太、其他男人的……見たことねえから」
没见过啊」
「AVとか観ねえ?」
"「没看过AV之类的吗?」"
「観ねェ。だからその
"「没看。所以那个"……ちょっとだけ、ビックリしてる」
稍微有点,被吓到了」
つう、と細い顎先から水滴を落としながら、狼狽えるように呟くその微かな声量に、またドッと血流が増す。ウロウロと彷徨っては、じぃ、と昂りを見詰める茶色の瞳には、俺への興味がありありと浮かんでいる。
「呜」地一声,细瘦下巴滴落水珠的同时,那微弱音量里透出狼狈的嘟囔,又让血液轰然上涌。那双茶色眼眸游移不定地逡巡着,直勾勾凝视兴奋状态的我,里面分明晃动着对我的浓厚兴趣。
「なあ、俺の好きなところ触っていいから。俺もお前の身体、触っていい?」
"「呐,你可以碰我喜欢的地方。我也可以碰你的身体吧?」"
「……ん」
そろり、と伸ばされる両腕に、胸の内側で大きなガッツポーズを決める。触れたくて、味わいたくて、感じたくて。何度も夢にまでみたその身体に、ついに触れられる時が訪れた。ぎゅう、と愛おしい身体を抱き締め唇を吸いながら、筋肉の形を浮かび上がらせて張り付くタンクトップを、ペリペリと剥ぎ取るように手を挿し込む。美しいカーブを描く腰をゆっくりと撫で、するりするりと肩甲骨をなぞる。じっとりと濡れた素肌はほんのりと冷たく、触れる先々で俺の体温が馴染んでいく。
当那双臂膀缓缓伸来时,我在心底比了个大大的胜利手势。渴望触碰、渴望品尝、渴望感受。无数次魂牵梦萦的身躯,终于得以触碰的瞬间来临了。我紧紧搂住那令人怜爱的身体吮吸着唇瓣,手指如剥开紧贴肌肤的背心般探入,勾勒出肌肉的轮廓。缓缓抚过描绘出优美弧线的腰肢,顺着肩胛骨上下游移。微微湿润的肌肤透着凉意,指尖所及之处渐渐染上我的体温。
俺へと身を預ける恋人は、キスの心地良さに蕩け、鼻にかかった吐息を大きくしていく。ちゅぱ、と音を立て唇を離すと、どうして止めてしまうのかと咎めるように、眉を顰め唇をぶつけてくる。キスを求め甘える彼を宥めながら、ずっとずっと触れたいと願っていたその場所へ、親指の腹で触れる。濡れた布地を押し返す、ぷっくりとした肉厚の乳嘴。くるくるとくすぐるように撫でていると、まるでのぼせたかのように顔を赤らめる彼が、不思議だと言わんばかりに首を傾げた。
依偎在我怀中的恋人被亲吻的舒适感融化,带着鼻音的喘息逐渐粗重。啵地一声分开唇瓣后,他蹙眉撞上我的嘴唇,像在责问为何停下。我一边安抚着索吻撒娇的他,一边用拇指指腹触碰那个朝思暮想的位置——被濡湿布料顶起的丰盈乳尖。打着圈轻挠般的抚弄时,他整张脸涨得通红仿佛中了暑,偏着头露出不可思议的表情。
「ンだよ、そんなトコ触りたかったのか?」
"“嗯?原来你想碰的是那种地方啊?”"
「うん」
"「嗯」"
「マジか。ったく、いっつも見てんだろぉ? 珍しくもなんともねえっつーのに」
"「真的假的。真是的,你不是一直都在看吗?明明一点都不稀奇好不好」"
そう言うと、ジェイミーは自ら裾を捲り上げ、引き締まった腹から盛り上がる胸元まで、すべてを曝け出してくれた。テラテラと水に濡れ、寒気と興奮にピンピンと勃ち上がる胸先の色と形に、ガツン、と頭を殴られたかのような心地になる。触れるだけじゃ足りない、この舌で味わいたい。ガブリ、と噛み付くように吸い上げると、ツンと尖る感触をヌルヌルと舌先で舐った。
说完这话,杰米自己撩起衣摆,从紧实的腹部到隆起的胸膛,全都袒露在我面前。那被水光润泽得发亮、因寒意与兴奋而挺立的乳尖色泽与形状,让我感觉像被当头棒喝般眩晕。光是触碰还不够,我想用舌头品尝。我如啃咬般猛地含住,又用湿滑的舌尖舔舐那翘立的触感。
「んっはは、バカじゃねえの。なぁんで
"「噗哈哈,你傻啊。为啥」"……そんな、とこ、
那种、地方、……ん、っ」
嗯、啊」
なんで、と尋ねられてしまったらそりゃもう、魅力的だから、と答える他ない。俺は特別胸が好きというワケでもないし、彼の胸をしゃぶったところで、ふくよかな柔らかさを楽しめるワケでもない。でもそんなことどうでもよくなるくらい、ジェイミーの乳首はプリプリとおいしそうで、コイツを性的な目で見る前からずっとずっと気になっていた。こんな乳首ほっぽり出したまま往来を闊歩してきて、よくこれまで無事でいられたなと思う。それほどに扇情的な乳嘴を今や、俺は好きに舐り吸い上げている。ぢゅ、ぢゅ、ぢゅう、と音を立てむしゃぶりついていると、ジェイミーの反応は熱っぽさを増していった。
若被问及缘由,除了回答"因为太诱人"之外别无他解。我并非特别钟情胸部,吸吮他的胸膛也享受不到丰腴的柔软。但杰米的乳首水灵得令人垂涎,早在用情欲眼光看待之前就让我魂牵梦萦。顶着这样裸露的乳首招摇过市,能平安无事活到现在真是奇迹。此刻我正肆意舔弄着这对堪称淫靡的乳珠,啾、啾、啾地吮出声响,杰米的反应愈发燥热起来。
「はあ、っ
"「哈啊、"……んん、
嗯、……ん、ちょっと待て、ルーク
等等、卢克……」
「んー」
"「嗯——」"
「お前
"「你这家伙"……っなんか、変なコトしてねえか、?」
喂,你没做什么奇怪的事吧?
「ん~? ちゅぱっ、舐めてるだけだぜ」
"嗯~?只是舔舔而已啦"
「っはあ、マジ、かよ
"哈啊,真的假的"……っ」
力の抜けきった彼は、今や俺の顔面に覆い被さるように抱き着いている。彼の乳首を舐ると、筋肉質な背がビクビクッと跳ねるのがよく分かる。くしゃ、と髪が握り締められる度にフローラルな香りが漂い、身じろげば濡れた肌がバスタブに擦れギュギュッ、と音を鳴らす。はあー、はあー、と感情昂るままに息をつけば、狭い浴室内に劣情の息遣いがボワワンボワワンと木霊した。
他浑身脱力,此刻正像要盖住我的脸一般紧抱着我。舔舐他的乳头时,能清晰感受到那肌肉结实的背部一颤一颤地跳动。每次攥紧他湿漉漉的头发,花香便飘散开来,稍一动弹,湿润的肌肤便与浴缸摩擦发出咕啾咕啾的声响。随着高涨的情绪喘息着哈啊——哈啊——,狭小的浴室里回荡着情欲的呼吸声,如同涟漪般一圈圈荡漾开去。
「もう、お前
"「真是的,你这家伙"……大人しく、してろ、っ」
给我老实、待着、啊」
初心な恋人は、深い口づけと胸元の刺激だけで、視線がと覚束なくなるほど感じ切っていた。唾液を塗り込めた胸元を光らせながら、ジェイミーがそろりと身を離す。そしてその場にへたり込むと、俺の股間へと指を伸ばした。彼の胸先を味わい、その愛らしい反応を堪能したおかげで、俺のペニスはつるつると先走りを垂らしている。ジェイミーの手の平が屹立へとしっとりと重なり、きゅう、と包むように握り込んだ。
青涩的恋人仅凭深吻与胸前的刺激,就已然让视线飘忽得难以聚焦。杰米将涂满唾液的胸膛泛着水光缓缓退开,随后瘫软在地,伸手探向我的腿间。品尝过他胸前的滋味,享受完那可爱反应后,我的阴茎早已湿漉漉地渗出前液。杰米的手掌稳稳覆上昂立的欲望,湿润而紧密地包裹住,倏地收拢握紧。
「はあ、っそりゃ
"「哈啊,果然"……分かっ、てたけど
虽然早就、知道……ははっ。やっぱ、デケェ、な
哈哈。果然、超大的、啊……」
うっとりと泣き出しそうな瞳が俺を見上げ、恐る恐ると言わんばかりに手を上下に動かしていく。どれほど力を込めれば分からないのだろう、拙い手付きは心地良いと言うよりも、モゾモゾとくすぐったい。そっと上から握り込んで、ジェイミーの手の平を使い自慰を始める。
那双令人心醉得几乎要哭出来的眼眸仰望着我,战战兢兢的手上下摆动,仿佛在无声诉说着什么。他大概不知道该如何用力,生涩的手法与其说是舒服,不如说是令人酥痒难耐。我轻轻覆上他的手背,引导杰米的手掌开始自渎。
「ジェイミー」
"「杰米」"
名を呼び顔を寄せて、ちゅるり、と差し出された舌を口内へと誘い入れた。ちゅくちゅくと絡ませ唾液を垂らしながら、速まる手の動きを堪能する。
我唤着他的名字凑近脸庞,将探出的舌尖诱入唇齿之间。我们啾啾地交缠着唾液,同时享受着逐渐加快的手部动作。
「ジェイミーのも、見たい、触らせて」
"「杰米的,也想看,让我摸摸」"
射精感の高まるペニスから、そっと手を放す。コクリ、と喉を鳴らしたジェイミーは、俺の顔を見詰めながら自らのボトムに手を掛けた。前を寛げ、ゆっくりと下ろそうとするも、濡れた固い布地が貼り付いて動かない。ジェイミーはフラフラと立ち上がると、滑りやすい床で転ばぬよう俺の肩を掴みながら、水を多分に含んだハーフパンツを下ろしていった。
从即将达到高潮的阴茎上轻轻松开手。杰米喉间发出一声轻响,凝视着我的脸,把手搭在了自己的裤腰上。本想放松前襟慢慢褪下,却被湿透发硬的布料黏住动弹不得。杰米摇摇晃晃站起来,为避免在湿滑的地板上摔倒而抓住我的肩膀,将吸饱水分的运动短裤缓缓褪下。
面積の少ない下着は、ジェイミーの性器をぎりぎり包み込みそこにあった。興奮に勃ち上がりかけた三角形の布地が浮かび上がって、ぷっくりと前へ突き出している。横から覗けば、艶々とした陰茎が垣間見えてしまう。その隙間に鼻先を突っ込んで、ねろり、と舌を伸ばした。こら、と咎める声に尖りがないことを確認して、幹の根元を更にねぶねぶと舐っていく。
窄小的内裤勉强包裹着杰米的性器。因兴奋而勃起的三角布料隆起,前端鼓胀着向前突出。从侧面窥视时,能瞥见湿漉发亮的阴茎。我将鼻尖探入那道缝隙,伸出舌头缓缓舔舐。听到他毫无威慑力的「喂」的制止声后,便变本加厉地沿着茎干根部啧啧吮吸起来。
「はあ、んんっ、このスケベ野郎め」
"「哈啊、嗯嗯、这个色鬼混蛋」"
「あれぇ、知らなかった? 俺は相当なスケベだぜ」
"「哎呀,不知道吗?我可是相当下流的哦」"
「んっふふ、そうだろうな」
"「嗯呵呵,果然是这样呢」"
細いサイド部分を引き伸ばしながら、ぬるりと下着を引き下ろしてやる。支えを失くしたペニスはプルンと弾みながら飛び出し、先端からはトロリと透明な糸を引いた。条件反射のスピードで、半ばまで包皮が隠す亀頭を口に含む。皮の隙間に舌を差し込み、滲むしょっぱさを吸い上げて、ちゅるん、コクン、と喉を鳴らした。
我一边拉伸纤细的侧边部分,一边缓缓将内裤褪下。失去支撑的阴茎猛地弹跳而出,前端牵拉出黏稠的透明丝线。以条件反射般的速度,我将半掩在包皮下的龟头含入口中。舌尖探入皮肤褶皱,汲取渗出的咸涩液体,喉咙发出咕啾、咕咚的吞咽声。
初めて触れる、他人の男性器。それでも、抵抗なんて何ひとつ感じなかった。ジェイミーのペニスは俺の半分ほどのサイズで、脱毛しているのだろう、子どものようにツルツルと滑らかで綺麗だった。むちゃむちゃと食むように、ペニスの全体を吸い上げぬるい塩味を味わっていく。ジェイミーは小さく吐息を零しながら、ぎゅ、ぎゅ、と俺の頭を引き寄せる。
初次触碰他人的男性器官。然而竟未感到丝毫抗拒。杰米的阴茎尺寸仅有我的一半,或许做过除毛处理,如孩童般光滑细腻。我像咀嚼美食般吮吸整根阴茎,品尝着温热的咸味。杰米轻声喘息着,一次次将我的头颅按向自己。
「ルーク、はあ、はあっ」
"「卢克,哈啊、哈啊」"
「ん~?」
"「嗯~?」"
「キスがいい、キス、したい、っ」
"「接吻、接吻、好想接吻」"
性器への刺激よりも、熱を分け合う口づけが欲しいのだと、この美しい男は訴える。ちゅぽりと水音を立てペニスを解放すると、ジェイミーは崩れ落ちるようにして、俺の上半身に身を重ねた。ちゅう、ちゅう、と甘えるように唇を吸いながら、薄い目蓋がうっとりと閉じられていく。濡れた胸と胸がぴったりと重なり合い、ツンツンと尖る乳首が俺の胸筋をくすぐっている。丸く引き締まる形良い尻を両手で揉みしだくと、剥き出しのペニスが、ぐにゅり、とぶつかり合った。
这位美男子诉说着,比起性器的刺激,他更渴望分享体温的亲吻。随着啵的一声水响解放阴茎后,杰米像垮塌般将身体压在我的上半身。啾、啾地撒娇般吸吮着嘴唇,薄薄的眼睑陶醉地缓缓闭合。湿润的胸膛紧密相贴,挺立的乳头轻轻蹭着我的胸肌。当我用双手揉捏那浑圆紧致的翘臀时,裸露的阴茎便黏腻地相互碰撞。
「はあ、あ、
"「哈啊、啊、"……っあ、んっ」
啊、嗯♡
「はあ、はあ、はあ、ジェイミー
"「哈啊、哈啊、哈啊、杰米"……っ」
ジェイミーの陰茎と下腹を刺激するように、グヂュグヂュと音を立てて屹立を擦り付けていく。皮膚の薄い敏感な箇所が擦れ合い、絡み合う舌の動きも派手さを増していく。ジェイミーも心地良いのだろう、きゅう、と括れた美しい腰をくねらせながら、自ら濡れた音を立て続けている。キスの合間に繰り返される呼び声に、いちいち胸が跳ね上がってしまう。
为了刺激杰米的阴茎和下腹,湿漉漉的摩擦声不断响起,坚挺的部位来回蹭动。皮肤最薄弱的敏感带相互厮磨,纠缠的舌吻动作也愈发激烈。杰米显然也很享受,纤细优美的腰肢不断扭动,持续发出黏腻水声。每一声在接吻间隙漏出的呼唤,都让人心跳加速。
「ルーク、
"「卢克、"……はあ、っルーク
哈啊、卢克……ッ」
「きもちいい?」
"「舒服吗?」"
「んっ、ん、きもちいい、っもう、イきそう」
"「嗯♡、嗯、好舒服、已经、快要去了♡」"
「イっていいぜ、ほら、ジェイミー、っ」
"「可以去了哦,来嘛,杰米,啊」"
ニッ、と笑いかけると、ジェイミーがぽわん、と頬を赤らめた。とぷっ、と温い感触が俺の腹を濡らし、抱え込む細い腰がカクカクと揺れ動く。イったんだ。ねちゃ、と唾液を引きながら唇を離すと、滑る唇を開いたまま、放出の余韻を味わう彼の顔が見えた。薄く開かれた瞳、赤らんだ頬、血色を透かす丸っこい耳。ハッ、ハッ、ハッ、と鋭い呼気を吐き出すその感じ切った表情は初めて見るもので、そのあまりの艶めかしさに、下半身には更なる苛立ちが募った。
他咧嘴一笑,杰米的脸颊顿时泛起红晕。噗嗤,温热的触感浸湿了我的腹部,环抱中的纤细腰肢不住颤抖。他去了。啵地一声分开黏连的唇瓣,他微张着湿润的嘴唇,沉浸在释放的余韵中。半阖的眸子、绯红的脸颊、透出血色的圆润耳垂。哈、哈、哈地吐出急促喘息,这副濒临崩溃的表情是我初次得见,那过分艳冶的模样让下半身愈发躁动难耐。
「ジェイミー、
"「杰米,"……エッロ、っ可愛い
色情,啊好可爱……!」
腹の間に放出された生ぬるさを泡立てるように、グヂュッグヂュッグヂュッ、と激しく腰を振っていく。揺さぶりに合わせ、目の前で長い前髪がふるんふるんと揺れる。快感と興奮に任せ腰を振るごとに、彼の甘い吐息が漏れ出ていった。
在腹部间释放出的温热被搅动得咕啾咕啾作响,激烈地扭动着腰肢。随着晃动,眼前的长刘海也跟着轻轻摇曳。每次随着快感与兴奋摆动腰身,他甜美的喘息便泄露而出。
「は、っはあ、っはあ、あ、ッあ、ぅんっ」
"「哈、哈啊、哈啊、啊、啊、嗯呜」"
狭い浴室に反響する嬌声が、頭の芯にまで沁み込んでいく。揺さぶられる度に裏返るその声がいやらしく、擦り付ける快感も相まって、まるで彼を抱いているかのように錯覚してしまう。
狭窄浴室里回荡的娇声,直渗入脑髓深处。每次被顶弄时发出的变调嗓音如此淫靡,混合着摩擦带来的快感,让人恍惚间产生正拥抱着他的错觉。
はあ、はあ、と息つく赤い舌先と狭い口内に釘付けになったまま、ドブッ、ドブッ、と二度に分け射精した。彼との生活が始まってからはヌくタイミングを掴めず、長らく溜めていたせいだろう、噴き出した精液はドロリと濃くにおいも強かった。心地良いばかりだったバスルーム内には、むんわりとした男のにおいが一気に立ち込める。青臭い空気の中、ジェイミーはずるずると伸び上がり、俺の口先にチュッ、と唇を寄せた。
我死死盯着那随着喘息而颤动的猩红舌尖与狭窄口腔,噗咻、噗咻地分两次射了出来。自从开始和他同居后总是抓不准自慰时机,积攒许久的精液浓稠地喷涌而出,散发着强烈腥气。原本令人惬意的浴室瞬间被浓烈的雄性气息填满。在青涩的空气里,杰米慢吞吞地支起身子,啾地亲了亲我的嘴角。
「……へへ、汗かいちまった」
嘿嘿,都出汗了呢」
照れ臭さを隠そうと、首筋へとジェイミーの額が寄せられる。ふう、ふう、と余韻を滲ませる呼吸がまだ確かに荒くて、それがとても嬉しい。これからもっと、もっともっと色んなことをしていきたい。お前の、色んな部分に触れたい。ぬるぬると濡れたままの身体で、くっ付く身体を強く抱き締める。
他试图掩饰害羞般把额头抵上我的后颈。呼、呼的喘息里还带着未散的情欲,这让我无比欣喜。往后还想和你尝试更多、更多花样。想触碰你身体的每个角落。我用仍湿漉漉的身体,紧紧缠住他发烫的躯体。
ジェイミーとの生活は、こんなにも刺激的で、明るい幸せに満ちている。
和杰米一起的生活,是如此充满刺激,洋溢着明亮的幸福。
「教官、青痣だらけじゃないですか。またファイトしてたんですか?」
"“教官,您身上全是淤青,又去打架了吗?”"
ロッカールームで着替えていると、シャワーを浴びたばかりの教え子にそう声を掛けられた。鏡に映る己の姿を確認すると、腕や肘、背中など至るところに痣が浮かんでいる。
在更衣室换衣服时,刚冲完澡的学生这样对我说道。我望向镜中的自己,发现手臂、手肘、后背等各处都浮现着淤痕。
「あ~、ジェイミーとちょっとな」
"“啊~,和杰米稍微切磋了一下”"
「またですか、ホント仲良いですね」
"「又来了啊,你们感情真好啊」"
そう、ジェイミーと何やかんやした痕が、これである。狭いバスタブの中、圧し掛かる体重を受け止めゴソゴソと動き回れば、知らぬ間にあちこち打ち付けていても不思議ではない。押すとじんわりと響く痛みにニヤリと口角が上がって、溢れ出る悦びをモグモグと噛み砕いていく。
没错,这就是和杰米纠缠后留下的痕迹。在狭窄的浴缸里,承受着压过来的体重,窸窸窣窣地动来动去,不知不觉间撞到各处也不奇怪。按压时隐隐作痛的触感让嘴角扬起一抹坏笑,将满溢的欢愉细细咀嚼吞咽下去。
俺へと擦り寄り甘える濡れた身体は、艶々とハリがあり、しなやかで美しかった。ジューシィな肌が酔いではなく興奮に赤らむ姿がひどく淫らで、他の者には絶対に見せられないと思った。あの美しさを決して逃さぬよう、誰の目にも触れさせないよう仕舞い込んでしまおうか。なんて思い至った自分に驚きを隠せず、シャツを脱ぐ手をハタと止める。
那具向我依偎而来的湿润身躯,泛着诱人光泽,紧致而柔美。多汁的肌肤因兴奋而非醉意泛起红潮的模样,淫靡得令人心惊,我暗想绝不能让他人窥见此景。不如将这绝美囚禁起来,永不让世人得见。这念头乍现时,我不禁愕然停下解衬衫的手。
自分に、そんな執着心があるなんて、思いもしなかった。しかしアイツの生き方を見ていると、他者を守る為なら己を犠牲にすることも厭わない、なんて言い出しそうな気もする。だからこそ彼のそんな姿は目にしたくなくて、ムカムカと胃の底がザワめくような苛立ちを覚えてしまう。あの生き方を曲げることなんて誰にもできないのなら、この手で無理やりにでも閉じ込め、自分だけのものにしてしまいたい。そんな黒い感情に身を任せたいと願ってしまうのも、致し方ないことかもしれない。
从未想过自己竟怀有这般执念。可看着他活着的姿态——仿佛随时会说出'为守护他人甘愿牺牲自己'这样的话,就让我胃底翻涌起烦躁的灼热。既然无人能改变他的生存之道,不如用这双手强行禁锢,据为己有。纵容自己沉溺于这般漆黑情感,或许也是无可奈何。
これはある意味、彼への嫉妬心なんだろう。ヒーローへの憧れを捨てきれない俺に対し、ヤツはたったひとりで、ひとつの街を守りきろうと孤軍奮闘している。ジェイミーが居るから安心だと、警察のヤツらですら、彼ひとりに治安維持の仕事を丸投げにしている。そんなことがあって良いのだろうか、良いはずがないだろう。だから俺は、あらゆる悪から街を守る、ジェイミー・ショウを守ってやりたい。アイツの傘となり、アイツの楯となり、アイツを包む毛布になりたい。そう願ってしまう。
这某种意义上是对他的嫉妒吧。无法舍弃英雄憧憬的我,眼睁睁看着他独自为守护整座城市孤军奋战。连警方都因杰米的存在而懈怠,将治安维护全盘推给他。这岂是应有之理?所以我想守护杰米·肖——这个守护城市免遭一切恶意的男人。愿成为他的伞,他的盾,包裹他的毛毯。这般祈愿着。
もしそうなれないのなら。そう擡げる黒く暗い考えを、必死に頭の隅へと追いやる。彼に頼ってもらえるように、少しでも長く共に居られるように、俺ももっともっと努力を重ねよう。そう心に誓い、ぎゅっと拳を握り締めた。
若无法如愿。我将那些抬头的阴暗念头拼命赶至脑海角落。为了能让他依赖我,为了能相伴更久些,我也要加倍努力。如此暗自立誓,紧紧攥住了拳头。
ぐるりと見回りを済ませたジェイミーがいつもより早く帰宅したのは、しとしとと降る雨が邪魔をするせいだった。人気のない中華街では何かしらを企てる者ですら店じまいのようで、どこもかしこも静かに雨に打たれるばかり、人っ子一人見かけなかったと彼は語った。窓を叩くドローンから夕食を受け取って、茶を淹れるジェイミーを見ながらソファへと腰掛ける。今日はフリッターの盛り合わせを注文してみた。一口大の大きさに具材をカットして、ふわふわの衣にくぐらせた揚げ物たちは思っていた以上に量がある。ジェイミーは何かあればすぐに対応できるようにと目の前に端末を据えて、プラスチック製のフォークを手に取った。
杰米匆匆巡视完便提早归家,全因淅淅沥沥的雨扰了行程。他描述说,冷清的中国城里连图谋不轨之徒都似已打烊歇业,四下唯有雨声寂寥敲打,不见半个人影。接过无人机送来的晚餐,我望着沏茶的杰米在沙发落座。今日点了什锦炸物拼盘——切成一口大小的食材裹着蓬松面衣,分量比预想中还多。杰米把终端摆在面前以便随时处理事务,手里捏着塑料叉子。
「中なんだこれ」
"「这是什么鬼」"
「さあ、適当に注文したからな」
"「哎呀,随便点的啦」"
パク、と口へと放り込んだそれを噛むと、カリッカリの衣からじゅわりとまろやかな甘みが溢れ出した。塩気の効いたそれは、アボカドのフリッターだ。レモンを掛けるとより旨くなるだろう。
啪嗒一声扔进嘴里,咬下去的瞬间,酥脆外衣下涌出醇厚的甜味。这道咸鲜适口的料理,正是鳄梨天妇罗。淋上柠檬汁会更加美味吧。
「ジェイミー、これ
"「杰米,这个"――
——」
旨いな、と覗き込んだ先で、ジェイミーは天敵を前にした小動物のように顔を顰め、ぴったりと動きを止めていた。どうした? そう尋ねるも、口元を押さえムウムウと唸るばかりだ。変なモノでも食っちまったか? 首を傾げた瞬間、もしや、と山盛りの揚げ物たちを指差して尋ねた。
“真香啊。”探头望去时,杰米像面对天敌的小动物般皱着脸,动作完全僵住了。怎么了?虽这么问,他却只是捂着嘴发出呜呜的呻吟。难道是吃了什么奇怪的东西?歪头疑惑的瞬间,突然灵光一闪,指着那堆成小山的炸物问道。
「魚、当たっちまった?」
"“鱼,吃坏肚子了?”"
コクコク、と頷く彼は、大の魚嫌いだ。なんでも、幼い頃食べた川魚のにおいが強烈で、それから魚全般が苦手になってしまったらしい。飲むに飲み込めず、しかし吐き出すこともできないまま、ジェイミーは涙目を保っている。ちょいちょい、と彼を呼んで、近付く唇にカプリと噛み付いた。
他小鸡啄米似的点头——这人最讨厌鱼了。据说是因为小时候吃的河鱼腥味太重,从此就对所有鱼类都敬而远之。咽不下去又吐不出来,杰米含着泪光僵在原地。我轻唤着“喂喂”,凑近的嘴唇突然“咔嚓”咬住了他的下唇。
「んっ!?」
"“嗯!?”"
驚き身を引く、その肩を捕まえる。
他惊得向后一缩,被我一把扣住肩膀。
「いーから口開けろ。食ってやるから」
"「来,张嘴。我喂你吃」"
恐々と開かれた口内から、形の崩れたフリッターを吸い上げてやる。魚の臭みなど全く感じられないが、ジェイミーの舌は敏感に感じ取ってしまうようだ。それじゃあ、俺のものは、どうなんだろう。生臭いのが嫌だからと、その弾力のある唇で触れてはくれないのだろうか。赤らむ瞳をじっと見下ろしながら、狭い口内から吸い上げた彼の天敵を、ゴクン、と嚥下した。
从那战战兢兢张开的唇齿间,我吸走了形状扭曲的炸鱼条。虽然完全尝不出鱼腥味,但杰米的舌头似乎敏感地察觉到了。那么,我的东西又如何呢?难道因为讨厌生腥味,那双富有弹性的嘴唇就不肯触碰了吗?我凝视着他泛红的眼眸,将从他狭窄口腔中吸出的天敌咕咚一声咽了下去。
「……っ恥ずかしいヤツ」
「羞死人了这家伙」
「あっれ~? こういう時こそ、ありがとうって言うべきじゃねえかなぁ?」
"「啊咧~?这种时候不是该说声谢谢才对吗?」"
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、照れる細面をじっくりと観察する。ふっ、と視線を逸らした先で、彼は一体何を思っているのだろう。ひとつ彼へと距離を詰め、短いシャツから覗く腰の曲線に触れる。
嘴角扬起狡黠的笑容,细细端详那张泛红的清瘦脸庞。当视线忽而游移时,他究竟在想着什么呢。我向他靠近一步,指尖抚过短衫下若隐若现的腰际曲线。
「ジェイミー」
"「杰米」"
「ンだよ
"「是啦"……」
「もっと恥ずかしいコトしてえな、お前と」
"「真想和你做些更羞耻的事啊」"
「……昨日もヤっただろ」
昨天不是才做过吗」
「そうだな。でも、もっとヤりてえ」
"「是啊。不过,我还想要更多」"
艶やかなその唇に触れ、舐め合い、褐色の肌を強く吸い上げたい。均一に鍛え上げられた筋肉のひとつひとつを味わって、ファイトでは決して見ることのできない表情を、この目に焼き付けたい。甘い声で呼ばれる名に背を粟立てて、負けじとその丸い耳へ愛を囁きたい。お前を、愛したい。今のお前は、俺だけのものだろ。
触碰那艳丽的唇瓣,彼此舔舐,渴望在那褐色肌肤上留下深红的印记。细细品味每一块匀称锻炼出的肌肉,将擂台上永远无法得见的神情,深深烙进眼底。当被那甜美的声音呼唤名字时,脊背窜过一阵战栗,不甘示弱地向那圆润的耳垂倾诉爱意。想要,爱你。此刻的你,只属于我对吧。
コツン、と額を彼の頭へと寄せて、ジェイミー、と怖がらせないよう優しく呼ぶ。
轻轻将额头抵上他的脑袋,用不会惊扰的温柔声线唤道:杰米。
「……ヤるって、どうやるんだよ」
「要做的话,到底该怎么做啊」
「ん?」
"「嗯?」"
「男同士のヤり方なんて知らねえからな。それに
"「男人之间的做法我可不知道啊。再说了"……どっちがどうとか、そういう
哪边怎样之类的,这种话……」
視線を合わせぬまま頬を赤らめる彼は、セックスの役割分担のことを言っているようだ。その言葉を聞いて初めて、彼に抱かれる気はあるのか気になった。申し訳ないが、俺は彼を抱きたいという気持ちしかない。その魅惑的な身体の隅々まで俺の色に染めて、誰も触れたことのないその場所へと、深く深く侵入を果たしたいと願っている。
他避开视线涨红着脸,似乎是在谈论性爱中的角色分工。听到那句话我才第一次思考,自己是否愿意被他拥抱。很抱歉,但我只想占有他。我渴望用我的色彩浸染他魅惑身躯的每一寸,向无人触及的深处长驱直入。
「ジェイミーは、俺を抱きたい? それとも、抱かれたい?」
"「杰米是想抱我?还是想被我抱?」"
わざと歯に衣着せぬまま問う言葉に、ジェイミーは真ん丸に見開いた目で俺を見据える。じわじわと深まる赤面がゆっくりと俯いていき、分かんねえよ、と俺を責めるようにポツリと呟いた。
面对我故意不加掩饰的直白提问,杰米睁圆了眼睛瞪着我。逐渐加深的红晕让他慢慢低下头,用责备般的语气轻声嘟囔道:『我怎么知道啊』
「そっか。俺は、お前を抱きたい。お前のその細い腹ン中を俺でいっぱいにして、思い切り掻き回したい」
"「这样啊。我啊,想把你拥入怀中。用我填满你那纤细的腹腔,尽情搅动」"
夢見るかのように囁くと、ジェイミーはボンッ、と噴火するかのように紅潮し、すっかりと言葉を失くしてしまった。刈り上げを摩るようにこめかみへと唇を押し当て、ジェイミー、と小さく名を呼び答えを催促する。恥ずかしがり屋な恋人は唇を尖らせたまま、ぐぐぐ、と眉間に皺を寄せ、眉を高く怒らせた。
如同梦呓般低语时,杰米像火山喷发般砰地涨红了脸,彻底丧失了语言能力。他沿着剃短的鬓角将嘴唇贴至太阳穴,轻声呼唤着杰米的名字索求回应。害羞的恋人依旧噘着嘴,发出咕哝声,在眉心挤出皱纹,高高挑起愤怒的眉毛。
「お前の、
"「你的,"……すげえデカい、じゃん
这也太大了吧……ンなこと、本当にできんのかよ」
这种事,真的能做到吗」
「ジェイミー器用だし、身体柔らけえじゃん。イケるって」
"「杰米手巧得很,身体又那么柔软。肯定能行的啦」"
「そういう問題かぁ
"「是这种问题吗"……?」
「へへ、大丈夫だーって、ルーク先生に任せろよ」
"「嘿嘿,没问题的啦——交给卢克老师就好」"
よしよし、と肩を引き寄せ撫でると、ジロリと尖った瞳がこちらを睨み上げる。
好好好,一边说着一边将肩膀揽过来轻抚,那双锐利的眼睛便狠狠瞪了过来。
「ンだよ、妙に手慣れてやがるな。男は初めてだっつってたのは嘘だったのかよ」
"“搞什么啊,手法意外地熟练嘛。说什么第一次和男人做,原来是骗人的?”"
「嘘じゃねーよ、お前を抱けるんなら何だってやるっつーの。
"“没骗你,只要能抱你让我做什么都行。”"……なあ」
喂」
「ン」
"「嗯」"
「勃っちまった」
"「硬起来了」"
シャツを捲り上げ、ぽっこりとボトムを押し上げ主張をする股間を見せ付ける。ジェイミーは咎めるように俺を見ると、テーブルにちょこんと鎮座するディナーへと視線を移した。
他掀起衬衫,将鼓胀的裤裆刻意顶起展示。杰米责备地瞪了我一眼,目光转向静静摆在餐桌上的晚餐。
「お前なあ
"「你啊"……メシ、途中だろ」
饭才吃到一半吧」
「後で温め直すから」
"「待会儿我会重新热一下的」"
「……ったく、昨日の今日で元気良すぎだって」
真是的,昨天才那样今天就精神过头了」
そろり、と伸ばされた指先が、俺の昂りを優しく辿る。こちらを見上げるツンとした唇に口づけると、ちゅ、ちゅ、くちゅくちゅ、と音を立て舌が絡み合う。テーブルが邪魔にならない場所に腰を下ろすと、ジェイミーは俺の脚元にしゃがみ込み、勃ち上がる陰茎をフニフニと握った。ゆっくりと下ろされるボトムに合わせ腰を上げて、ブルン、と飛び出したそれに、彼は息を呑む。鈴口から滲む先走りを塗り広げるように、握り込む手の平がゆっくりと上下していく。
悄然伸来的指尖,温柔地抚过我高涨的情欲。当我低头吻上那傲然微翘的唇瓣时,啾、啾、啧啧的水声交织着彼此的舌。在餐桌不碍事的位置坐下后,杰米蹲伏在我腿间,用温热掌心包裹住昂然挺立的性器。随着他缓缓下沉的臀部,我配合着抬腰,那猛然弹跳的巨物令他倒抽一口气。他用手心慢慢上下撸动,将铃口渗出的前液涂抹开来。
「ジェイミー
"「杰米"……舐めてくれる?」
「要舔舔看吗?」
そうねだると、長い睫毛がうっとりと瞬いた。そろそろと屹立へ近付く引き締まった顔が、赤い舌先を差し出しにゅるりと俺の先端を撫でる。誰もが見惚れる美しいその顔が、俺の青筋立ったペニスに寄せられ、アイスキャンディを味わうかのようにヌルヌルと舐め回している。まさに、絶景だ。浮かぶ汁を舌にまとわせて、彼はゴクリと喉を鳴らした。
听到请求后,他长长的睫毛陶醉地轻颤。那张轮廓分明的脸庞缓缓贴近昂然挺立的下身,吐出红润舌尖湿漉漉地掠过我的顶端。那张令所有人着迷的美丽面容,此刻正贴在我青筋暴起的阴茎上,如同品尝冰棒般黏腻地舔弄着。简直是绝景。他将渗出的汁液卷入口中,咕咚一声咽下。
「はは、まっじぃ
"「哈哈,真是的"……」
「生臭い?」
"「有腥味?」"
「そうだな、でも
"「是啊,不过"……嫌いじゃ、ねえよ」
倒也不讨厌啦」
くちゅ、くちゅ、くちゅ。昨日の行為でコツを掴んだのか、キュッと握り込み尿道を絞り上げるようにして、興奮の証が強く擦り上げられていく。ジェイミーはぴったりと鈴口に舌先を押し当てたまま、はあ、はあ、と熱い吐息を繰り返している。気持ちいいのは俺の方なのに、ぽわぽわと薄い目蓋を赤らめ、トロリと顔を蕩けさせる彼の方こそ、心地良さそうだ。ちゅう、と吸い付く形良い唇が、カプッと亀頭すべてを迎え入れた。チュパッチュパッ、と音を立てながら、薄い頬を凹ませ美味そうに吸い上げていく。
啾、啾、啾。或许是昨日的实践掌握了诀窍,他紧紧箍住尿道挤压着,让兴奋的证明被强烈摩擦上涌。杰米将舌尖牢牢抵在马眼上,一边反复吐出灼热的喘息。明明舒服的是我,他却泛着薄薄眼睑的粉红,让脸庞融化般松弛,看起来反而更享受。形状优美的嘴唇啾地一声吸吮,将整个龟头都容纳进去。伴随着啵啾啵啾的声响,凹陷的薄颊贪婪地吞咽着,仿佛在品尝美味。
「はあ、ジェイミー、気持ちいい
"「哈啊、杰米、好舒服"……っ」
ちゅぱっ、ちゅう、くちゅくちゅ、ちゅっちゅっ。シコシコと根本を激しく扱かれ、裏筋をくすぐるように舐られると、強い快感で腰が抜け落ちそうになる。大きく顎を開いたままの顔が前後して、ふうーっふうーっと鼻先から息を逃す。勃ち上がるペニスに、彼のリップの色がところどころ移っている。ちゅうちゅうと先走りを吸い上げると、ちゅぽん、と唇が離れた。ぐちゅぐちゅと扱く手は休めぬまま、蕩けた瞳が俺の顔を見据えている。
啾啪、啾呜、咕啾咕啾、啾啾。根部被激烈撸动时发出黏腻水声,当舌苔刮过敏感背筋时,强烈的快感几乎让我腰肢瘫软。他张大的下颌前后摆动,呼——呼——地从鼻尖吐出炙热喘息。勃起的阴茎上零星沾染着他唇釉的色泽。啾呜啾呜地吮净前端溢出的液体后,啵地一声双唇分离。黏稠的撸动声持续不断,他迷蒙的瞳孔牢牢锁定我的脸庞。
「はあ、はあ、
"「哈啊、哈啊、"……ジェイミー? どうした」
「杰米?怎么了」
「……恰好いい」
刚刚好
「ん?」
"“嗯?”"
「お前の身体、格好いい、
"「你的身体,真棒,"……好きだ」
我喜欢」
「えっ」
"「诶」"
まさかの言葉に心臓が爆ぜるように跳ね上がり、増した血流がドッと海綿体を膨らませる。更に大きさと固さをましたソレに、ジェイミーはゾクゾクと肩先を揺らした。そのまま、ちゅう、ちゅう、と幹に吸い付き、表面に凸凹を作る血管を舌先でなぞっていく。
意料之外的言语让心脏如同炸裂般狂跳,激增的血流轰然涌入海绵体使其膨胀。面对那变得更加粗硬灼热的巨物,杰米浑身颤抖着耸动肩膀。随即啾、啾地吮吸起柱身,用舌尖勾勒着表面凸起的血管纹路。
「か、カッコいい?
"「好、好帅?"……俺のこと、好き?」
你喜欢我吗?
「ぢゅっ、ちゅう
"啾、啾"……ん」
コクリ、と上目のまま頷かれると、もう我慢できなかった。はあっ、はあっ、と息を上擦らせながら、持ち前の負けず嫌いを全面に押し出して言う。
对方就这样抬着眼轻轻点头,我已经无法再忍耐了。一边「哈啊、哈啊」地喘着粗气,一边将天生的好胜心全盘托出。
「俺だって、お前に負けないくらい、お前のことが好きだ。ずっとずっと
"「我也一样,对你的喜欢绝不输给你。一直一直"……好きだった。俺が先に、お前のことを好きになった」
我喜欢你。是我先,先喜欢上你的。
唾液が零れるのも構わずそう告げると、ジェイミーはニッ、と瞳を細めて笑った。口回りをヌラヌラと光らせながらも、その表情は底抜けに無邪気だ。
毫不在意唾液滴落般如此宣告后,杰米眯起眼睛露出嘿嘿的笑容。虽然嘴角湿漉漉地泛着水光,那表情却天真得无可救药。
「いーや、オレの方が先だぜ。オレが先に、お前を見付けたんだ」
"「才不是,明明是我先的。是我先发现你的」"
その言葉の真意を尋ねる前に、ジェイミーは大きく口を開き、たっぷりと俺の肉竿を口内へ押し込んだ。喉奥まで迫るその温かさと狭さに、ぐぐぅ、と睾丸がせり上がる。ごぶっごぶっ、ぐぷっぐぷっ、とくぐもる音を立てて、前後に動く彼の恍惚とした表情。口の端からテラテラと光る唾液が零れ落ち、彼のシャツの胸元を濡らしていく。
还没来得及询问这句话的真意,杰米就张大嘴巴,将我灼热的肉刃深深吞入口中。喉腔深处的温热紧致感让睾丸咕噜噜地向上收缩。咕噗咕噗、啾噜啾噜,随着他前后摆动发出淫靡水声,恍惚的表情间,晶莹唾液不断从嘴角滴落,将他衬衫前襟浸得一片濡湿。
「はあッ、はあッ、ジェイミーッ、出る、出る
"「哈啊、哈啊、杰米、要去了、要去了」"……ッ!!」
呃!!」
「ん、んっん、ッ」
"「嗯、嗯嗯、呃」"
「ジェイミー、!!」
"「杰米,!!」"
「ン、ぐぅッ」
"「嗯、呜——」"
前後を続ける頭をグッと押さえつけて、彼の喉奥へと叩きつけるように精を放つ。力を込めた下腹から込み上げるままに、ドクッドクッ、と注ぎ込むこの心地良さ。見下ろす先、ジェイミーは眉根に皺を寄せながらも、懸命に俺の迸りを受け止めてくれていた。
我用力按住他前后摇晃的脑袋,将精液狠狠射进他的喉咙深处。随着紧绷的小腹一阵阵收缩,噗嗤噗嗤地注入这快感之中。俯视之下,杰米虽然紧蹙眉头,却仍竭力承受着我喷发的冲击。
ヌルヌルと温かな口内を何度か往復して、にゅぽり、とペニスを抜き出した。ジェイミーはゴクッ、ゴクッ、と数回に分けて、俺の吐き出したものを時間をかけ呑み干していく。
在湿滑温暖的口腔中来回抽送数次后,噗嗤一声拔出了阴茎。杰米咕咚、咕咚地分几次,慢慢将我射出的东西全部咽了下去。
「んは、まっずぅ
"「嗯哈、糟透了"……どんだけ出すんだよ」
你到底要出多少啊
はっきりと盛りを見せる表情のまま、ジェイミーはふにゃりと笑う。力の抜けたその身体を抱き上げ、ふらつく身を目の前に立たせた。細い腰に引っかかるゴムを伸ばすように、ボトムをずり下ろしていく。下着と共に下ろしきると、しっかりと兆しを見せる無毛の陰部が、プルン、と顔を出した。明々とした電光の下、真っ直ぐと形良いペニスがツンと胸を張っている。小ぶりなそれはピンク色に色づき、唾液が滲むほどに美味しそうだ。
杰米保持着明显情动的表情,软绵绵地笑了。他抱起那具脱力的身体,让摇晃的身影站在自己面前。像拉伸缠绕在纤细腰间的橡皮筋般,将底裤缓缓褪下。当内裤被完全剥落时,光洁无毛的私处便「啵」地弹了出来。在明亮的灯光下,形状优美的阴茎直挺挺地昂首挺胸。那小巧的物件泛着粉红色泽,沾满唾液的模样看起来美味至极。
「ジェイミーも、興奮してんの」
"「杰米也很兴奋呢」"
「するだろ、そりゃ
"「当然会啊,那还用说"……」
「可愛い」
"「好可爱」"
ぱくん、と口に含むと、ジェイミーは両手で俺の頭を掴んだ。舌と上顎で挟むように吸い上げながら、ぢゅぷぢゅぷと顔を動かし、一口サイズの固さを転がしていく。あっという間に漏れ出す苦しょっぱさを味わいながら、カクカクと震える腰を強く引き寄せた。頭上から降り積もる愛らしい嬌声に、出したばかりの股間がじわじわと固さを取り戻していく。
随着“啪”的一声含入口中,杰米用双手捧住了我的头。他的舌头与上颚像夹住般吮吸着,发出“啾噗啾噗”的声音转动着脸,将一口大小的硬块在口中滚动。在品尝瞬间溢出的咸涩苦味时,我把颤抖不已的腰肢用力拉近。听着头顶洒落的可爱娇喘,刚刚释放过的胯间又渐渐重新变得坚硬。
「あっ、あっあ、ン、ぅん、ルーク
"「啊、啊啊、嗯、唔、卢克」"……ん、んっ」
嗯、嗯♡
見上げた先、ジェイミーは目を閉じて俺のフェラに感じ入っている。小さく寄る整えられた眉、強く閉じられた目蓋、くるんと天を向く長い睫毛。さっきまで俺を咥え込んでいた唇は白濁に濡れたまま、小さく開いて甘い吐息を逃がしている。カクカクと前後する腰の動きは、少年のように素直で、とても愛おしいと思った。もっともっと、気持ち良くしてやりたい。次こそはその薄い腹の内に触れて、お前の知らない驚きを、この俺が教えてやりたい。
仰头望去,杰米闭着眼睛沉浸在我的口交中。微微蹙起的整齐眉毛,紧闭的眼睑,朝天翘起的长睫毛。方才还含住我的双唇沾着白浊液体微微张开,漏出甜美的喘息。他腰部前后摆动的动作像少年般率真,让我觉得无比怜爱。好想让他更舒服些。下次一定要触碰到那片单薄的腹部内侧,由我来教你从未体验过的惊喜。
「っあ、ルーク、イ、く
"啊、卢克、要、去了"……イくっ」
要去了
助けを求めるかのごとく、きゅ、と髪が握り込まれる。さっき彼がしてくれたかのように、ぢゅう、と吸い上げ頬を凹ませた。強く吸い上げる真空感に、ジェイミーは悶えるままトプッ、と噴き上げた。昨日出したせいだろうか、口内に吐き出しされたそれは水っぽく、量も少なかった。ゴクッ、と一息に呑み込んで、尿道に残るしょっぱさも余すことなく吸い上げていく。
仿佛在求救般,发丝被紧紧攥住发出吱呀声。就像他刚才所做的那样,啾地一声吸吮起来,让脸颊凹陷。在强烈抽吸的真空感中,杰米无法自持地噗嗤射了出来。或许是昨天已经释放过的缘故,吐在口腔里的液体稀薄且量少。咕咚一口咽下后,又将残留在尿道里的咸涩滋味毫不遗漏地吮吸干净。
「はっ、あ、もう、もういい、あ、バカっ、もう、チンコ取れちまうって
"“哈啊、啊、够了、已经够了、啊、笨蛋、再这样、鸡巴都要被吸掉了...”"……ッ」
萎びた陰茎をちゅぱちゅぱと吸い続けていると、ジェイミーは慌てたように音を上げた。ふっ、ふっ、と息を切らすその姿はしっとりと汗ばみ、気怠げな表情が魅惑的だ。
当我继续啾啾地吮吸着他那萎缩的阴茎时,杰米慌张地发出了声音。他气喘吁吁的样子汗津津的,慵懒的表情显得格外诱人。
ぎゅう、と抱き締めるままに唇を合わせて、お互いの精液が染み込んだ口内をねちねちと舐め回していく。コイツに名を呼ばれると、愛していると囁かれているような気持ちになる。もっともっと、俺の名を呼んでほしい。好きだと言ってくれ。
一边紧紧拥抱,一边将嘴唇相贴,互相舔舐着沾染彼此精液的口腔。每当这家伙呼唤我的名字时,就仿佛在耳边低语着爱我。再多叫几次我的名字吧。对我说你喜欢我。
そんなことを考えながら吸い合った唇は、どちらも赤くぽってりと腫れ上がっていた。
如此思忖间交缠的唇瓣,双双红肿得水润透亮。
第三章
街のヤツらからの頼まれ事は、それはそれは多岐にわたる。店の給仕を手伝ってくれ、なんて一日バイトのような要請から、姿を消した友人を探し出してくれ、という重大な事件まで。どんな内容であれ、オレができることはすべてやり遂げてきた。それこそが、この街を守る、ってことだと思っている。助けてくれと声を上げる全員に、オレはこの手を差し伸べたい。オレの両手が届く範囲は限られている、だからこそ、オレはオレができることを全力でやり遂げたい。
城里人委托的事务可谓五花八门。从帮忙端盘子这种一日临时工般的请求,到寻找失踪友人这类重大事件。无论内容如何,凡是我能办到的事都会全力以赴。守护这座城市的真谛,我想正在于此。我要向所有发出求助的人伸出这双手。虽然我的臂展有限,正因如此,我才要竭尽所能完成每一件力所能及之事。
そうやってひとり踏ん張って生きていくんだと信じてたのに、オレは今、ルークとの生活をこんなにも楽しんでいる。一目で惚れて、無意識に姿を追っていたあの男から、身も心も愛されて、求められて。こんなことがあるのかと、もしや白昼夢の真っ只中にいるのではないのかと、明け方の空を思わせる水色の瞳を見詰める度に、つい疑ってしまう。
明明曾坚信要独自咬牙活下去,如今我却如此享受与卢克共度的时光。被那个一见钟情、不自觉追逐身影的男人从身心深爱着、渴求着。每当凝视他那宛如黎明天空的淡蓝色眼眸时,总忍不住怀疑——这般好事当真存在吗?该不会正身处白日梦的中央吧?
すう、すう、と寝息を立てる大きな身体に身を寄せて、丸太のように太い腕を枕に、健やかな寝顔を眺める。ベビーフェイスは、目を閉じると途端に年齢を感じさせる。カサカサの唇に、薄っすらと皺の残る額、深く刻まれた傷跡。そのどれもが、コイツらしい、とオレは思う。
依偎在那发出轻微鼾声的庞大身躯旁,把粗如圆木的手臂当作枕头,凝视着那张安详的睡颜。那张娃娃脸一旦闭上眼睛,就立刻显露出岁月的痕迹。干裂的嘴唇、隐约残留皱纹的额头、深深烙印的伤疤。每一样都让我觉得,这就是他啊。
ルーク。オレさ、お前のこと、思っていた以上に好き、みたいだ。愛してる。そう手放しに思えてしまう存在に、人生で初めて出会ってしまった。何よりも大切に思うからこそ、オレはお前を守りたいと思う。何だってしてやりたいし、何よりも優先したい。そう思う気持ちは本物だ。しかしそう思うと同時に、どんよりと淀む黒い影が忍び寄ってくる。
卢克。我啊,好像比想象中还要喜欢你。我爱你。这是我人生中第一次遇到能让我如此毫无保留去爱的人。正因视你为最重要,我才想要守护你。想为你做任何事,想把你放在第一位。这份心意千真万确。但与此同时,一团浑浊的黑影正悄然逼近。
『愛する者とずっと一緒に居られる、だぁ? ンなことが実現するワケねえじゃん』
『能和心爱之人永远在一起?开什么玩笑,这种好事怎么可能实现』
黒い塊はそうオレをせせら笑いながら、胸の真ん中を深々と突き刺してくる。ドッと痛みが広がって、冷たい汗が噴き出していく。
黑色块状物就这样嘲笑着我,深深刺入胸膛正中央。剧痛猛然扩散,冷汗涔涔涌出。
幼い頃から、ひとつの場所に留まることがなかった。所が変われば何もかもが変わり、触れ合える人間もクルクルと入れ替わった。大切で、大好きで、尊敬する人たちとは、永遠を願う傍から離れ離れになった。別れを選ぶのは、いつだってオレではなく相手の方だ。気付けばオレはまたひとりになって、知らない街を彷徨い歩くことになる。
自幼时起,便未曾在一个地方长久停留。地域变迁则万物皆变,能接触到的人也如走马灯般轮换。那些珍贵、深爱且敬重的人们,往往在许愿永恒的瞬间就已离散。选择离别的,从来都不是我而是对方。回过神来我又孑然一身,在陌生的街道上徘徊游荡。
ってことは、いつの日かコイツとも離れることがくるってことだ。まるで澄んだ水底に沈むかのごとく、静かに朝日が射し込むこの部屋で、こうやって抱き締め合い眠る時間は、あっという間に遠い過去となる。手に握る温度や、口先を滑る柔らかさ、逞しい眉を下げて笑うあの甘やかな声も忘れて、あの頃は良かったなと色褪せたページを捲るだけになる。
也就是说,终有一日与这家伙也会分离吧。在这朝阳如澄澈水底般静谧倾泻的房间里,相拥而眠的时光转瞬就会成为遥远的过去。掌心相握的温度、唇间流连的柔软、低垂英挺眉峰时那宠溺的笑声终将被遗忘,只剩翻阅褪色书页时喃喃自语'那时候真好啊'。
そう、他人の心を変えることも、変化を止めることも不可能だ。たった今永遠の愛を誓ったとしても、身軽なお前は明日にも新天地へ旅立つかもしれない。そんな時が訪れたら、オレは笑顔で送り出すことができるだろうか。ビッと両の足で踏み締め、この場所に真っ直ぐと立っていられるのだろうか。
是啊,改变他人的心也好,阻止变化也罢,都是不可能的。即便此刻立下永恒的誓言,轻率的你说不定明天就会启程前往新天地。若那一刻真的来临,我能否笑着目送你离开?能否用双脚牢牢扎根,笔直地站立在这片土地上?
分厚い胸元に顔を埋めて、すうう、と深く息を吸い込む。コイツのにおいが、肺の内側をしっかりと満たしていく。目が覚めたのだろう、身じろぎをするルークがオレをぎゅうと抱き締め、髪の生え際を選んでちゅうと唇を寄せた。ざりざりと擦れるヒゲがくすぐったくて、鼻先からは小さく笑みが零れる。
把脸埋进他厚实的胸膛,深深吸一口气。他的气息彻底填满了我的肺叶。卢克似乎醒了,他动了动身子,紧紧抱住我,在发际线处落下一个轻吻。胡茬蹭得皮肤发痒,我不禁从鼻尖漏出细碎的笑声。
好きだ。好きだなあ。涙が滲むほどに、オレはコイツに恋し続けている。だからこそ、コイツが願う時がくれば、この手をしっかりと離さなきゃならねえ。できるだろうか。でも、そうしなきゃならねえんだよなあ。離したくなんて決してないのに。でも、その瞬間みっともなく泣き喚くことがないように、オレはオレの居場所をしっかり作り上げねえと。
好喜欢你。喜欢到眼眶发热,这份爱意从未停止。正因如此,当这家伙想要离开时,我必须好好松开这双手。做得到吗?但非这么做不可啊。明明千万个不愿意放手。可为了不在分别时刻哭得狼狈不堪,我必须先筑好自己的归处。
中華街に見ない顔が出入りしているという噂は、当然オレの耳にも届いていた。春麗大姐の目のある明るい時間帯は動きづらいのだろう、ソイツらが現れるのは決まって深夜から明け方にかけてだ。カラフルな段ボールを被り顔を隠すアイツらでも、大きな顔してチンピラを取り纏めるあの輩たちとも違う、暗がりに身を隠しゴソゴソしているヤツら。何をしてるのかと声を掛ければ蜘蛛の子を散らすように背を向け、一瞬にして闇に紛れてしまう。
关于中华街出现陌生面孔的传闻,自然传到了我的耳中。大概是因为白天有春丽大姐坐镇不便行动,那些家伙总在深夜至黎明时分出没。即便用彩色纸箱遮脸藏形,他们与那些大摇大摆统领小混混的家伙也截然不同——总是潜伏在暗处鬼鬼祟祟。若上前质问便如惊弓之鸟转身就逃,转瞬便消融于夜色之中。
何があろうと、オレの街で騒ぎは起こさせない。あらゆるツテを使って集めた情報によると、アメリカのあらゆる都市で『神隠し』と呼ばれる子どもの失踪事件が起きているらしい。そう言えばあの日、ルークと共に捕らえた男も、子どもを連れ去ろうとしていた。この街には他にも多くのチビたちが暮らしている。そこに目を付けられたとしたら、厄介だ。
无论发生什么,我都不会允许有人在我的街区闹事。通过各方渠道搜集的情报显示,美国各城市正频发被称为'神隐'的儿童失踪案。说起来那天和卢克一起抓住的男人,也是企图拐走孩子。这条街上还生活着许多小鬼。若被他们盯上就麻烦了。
昼間は聞き込み、日が暮れれば街の見回りに時間をかける。合間に睡眠と食事をとって、オレは可能な限り紅虎門に貼り付いた。留守がちなオレにルークは不服そうにしているが、これはオレの街の問題だ。悪いが、お前に首を突っ込ませるワケにはいかねえ。
白天四处走访调查,夜幕降临后便花时间巡视街道。在间隙中补充睡眠与进食,我尽可能将自己钉死在红虎门。对于经常不在家的我,卢克显得很不满,但这是我所在街区的问题。抱歉,可不能让你插手进来。
夜の訪れと共に立ち上がったオレに、ジェイミー、と固い声が手を伸ばす。顰め面でこちらを睨む恋人へと手を振って、行ってくるぜ、と玄関へと向かった。背中に突き刺さるその視線に余計な心配が含まれていることこそが、オレの心を頑なにしていた。安心しろよ、オレ様は強ェからな。必ず、この街を守り抜いてみせる。
随着夜色降临而起身的我,被杰米用僵硬的声音叫住。我对皱着眉瞪视这边的恋人挥挥手,说了句'我走了'便朝门口走去。正是那刺在背上的目光里包含的过度担忧,让我的心愈发顽固。放心吧,本大爷可是很强的。我一定会守护好这条街。
夏の頃に比べて、随分と日の出が遅くなった。まだまだ陽射しの届かない早朝に、そっと玄関を開くと同時に感じられる、アイツの気配。ホッと息が吐けるこの空間に感謝しながら、なるべく物音を立てないようシャワーを浴びて、髪を乾かし身なりを整えた。
比起盛夏时节,日出时间明显推迟了许多。在阳光尚未触及的清晨,轻轻推开大门的瞬间便感知到那家伙的气息。我怀着对这个能让人安心吐息的空间的感激,尽量不发出声响地冲澡、吹干头发、整理衣着。
静かに寝室を開けば、星空を朝日で薄めたような、透明な青で満ちる空間が待っていた。その真ん中で小山を築く背に沿う様寝転んで、ふうぅ、と深呼吸を繰り返す。今日は、何日だっけ。ここ数日の間、昼も夜も紅虎門に入り浸っていたから、どうにも曜日感覚が狂っちまっている。
轻轻推开卧室门,映入眼帘的是被晨光稀释成透明蓝色的星空般空间。我沿着中央那座小山般隆起的背脊躺下,反复做着深呼吸。今天...是几号来着?最近几天昼夜都泡在红虎门里,连星期几都搞不清楚了。
あと一時間もしない内に、ルークは寝床を抜け出しシャワーを浴びて、真っ直ぐと職場へ向かうんだろう。新入生がドッと増える秋の頃は、大好きなゲームをする暇もないほど忙しいのだと聞いた。イケメン教官さんは今年もまた、男女問わず多くのファンを生み出すはずだ。
不出一个小时,卢克就会溜下床冲个澡,直奔工作单位。听说新生如潮水般涌来的秋季,他忙得连最爱的游戏都没空碰。那位英俊教官今年想必又会收获大批不分性别的粉丝。
このタイミングで、他に好きなヤツができた、なんて言い出しやしないだろうか。目新しい出会いってモンは、古いものを塗り替える大きな力がある。そんなコトあるワケねえだろ、と笑い飛ばせないことが、オレは少し、いやかなり悔しかった。ああきっと、オレは今とても疲れている。頭の奥が、ズン、と重い。
这种时候,他该不会突然说「我喜欢上别人了」吧?新鲜邂逅这种东西,往往具有覆盖旧情的强大力量。虽然嘴上笑着「怎么可能」,但心里那股不甘——不,应该说是相当不甘的情绪,让我此刻疲惫不堪。后脑勺沉甸甸地发闷。
すう、すう、と規則正しく上下する背中に、額を押し付け深く息を吸い込む。ルークのにおいは少し苦味があって、どっしりと根を張る大木を思わせる。すやすやと眠るその体温と、嗅ぎ慣れた体臭、隅々まで鍛え上げられた分厚い身体が、目の前にある。こんなにも落ち着ける場所なのに、オレの脳裏では、コイツから別れを告げられる場面があらゆる角度から再生される。どうすればこの男を引き留められるのだろう。オレは強く目を閉じたまま、ぐるぐると物思いに耽った。
我将额头抵在那规律起伏的背脊上,深深吸气。卢克的气息带着些许苦涩,令人联想到扎根深厚的参天大树。眼前是他安睡的体温、熟悉体味以及锻炼得结实厚重的身躯。明明是如此令人安心的所在,我的脑海中却不断从各个角度重播着被他告别的场景。究竟怎样才能留住这个男人?我紧闭双眼,陷入纷乱的思绪漩涡。
気分が沈みきり、考えることがなくなって、フと別のことに思考が向いた。そういやコイツ、オレを抱きたい、って言ってたよな。オレを抱いて、この腹の中をあの質量で満たしたいんだって、そう言ってた。そんな明け透けな告白をされて、驚かなかったと言えば嘘になる。でもオレはそれ以上に、足先から震えるほど、強い欲情を覚えていた。
当情绪跌至谷底,思绪空白之际,注意力突然转向另一件事。说起来这家伙,说过想抱我来着。他说要用那具身体的重量填满我的腹腔。听到如此露骨的告白,说不惊讶是假的。但更甚于此的是,我从脚尖开始颤抖地体会到了强烈的欲望。
この重い身体に抑え込まれて、呼吸すら覚束なくなるほどに抱き締められ、あの野太いものをねじ入れられる。それが、ルークに抱かれるってことだ。想像だけで胸が跳ね上がって、全身に広がったネガティブな疲労感が押し流されていく。誰かに抱かれるなんて、そんなこと、人生でたったの一度も考えたことがなかった。それでも、コイツに言われて初めて、この身体に未知の可能性が残されていると知った。男同士だって、身を繋げることができる。
被这沉重的身躯压制,紧拥到几乎无法呼吸,再被那粗壮之物侵入——这就是被卢克拥抱的意味。光是想象就让我心跳如雷,冲刷走遍布全身的负面疲惫感。被人拥抱这种事,我此生从未想过。可听他这么说才第一次知道,这具身体还存在着未知的可能性。原来男人之间,也能如此紧密相连。
もし、ルークと、セックスしたら。どんなことに、なるんだろう。コイツはその時どんな顔を見せて、どんな声を上げるんだろう。キスをする時のあの穏やかで甘やかな表情が脳裏を過ぎり、続けざまにペニスを口に含んだ時の、あの息苦しさを思い描いた。ギラギラと目を光らせながら、オレの頭を引き寄せ喉奥へと切っ先を擦り付けた、あの雄の顔。殴り合いの時にだけ見せる、あの獣の瞳によく似ていた。
如果和卢克做爱的话。会变成什么样呢。这家伙那时会露出怎样的表情,发出怎样的声音呢。接吻时那温柔甜腻的神情掠过脑海,紧接着又想象到将阴茎含入口中时的窒息感。那双闪闪发亮的眼睛紧盯着我,把我的头拉向深处,用尖端摩擦喉咙的雄性面孔。和打架时才会显露的野兽般的眼神极为相似。
ドッドッドッドッ、と胸の真ん中が早鐘を打ち始める。疲労の滲む頭は極端なことばかり思い付く。コイツが起き出す前に眠りにつきたいのに、今だけは瞳を閉じることすら困難だ。
咚咚咚咚,心脏正中央开始急促跳动。疲惫不堪的头脑尽冒出些极端的念头。明明想在这家伙醒来前入睡,此刻却连闭上眼睛都无比困难。
「……ルーク」
卢克」
小さく、小さく名を呼んで、息を詰める。ンなことしても何もならないと分かっている、けれど、ついポロリと口から零れてしまった。目を閉じて呼吸を整えて、無理やりに眠りの体勢をとる。グッ、と唇を噛み締めたその瞬間、隣りに横たわる温もりが、ゴソゴソと身じろいだ。
轻声地、再轻声地呼唤着名字,屏住呼吸。明明知道这样做也无济于事,却还是不经意间从唇边漏了出来。闭上眼睛调整呼吸,强迫自己摆出入睡的姿势。就在狠狠咬住嘴唇的瞬间,身旁那团温暖动了动,发出窸窸窣窣的声响。
「ジェイミー?」
"「杰米?」"
「……あ」
啊」
「寝れねえの?」
"「睡不着吗?」"
大きな背中がぐるん、と寝返りを打ち、水色の目が真っ直ぐとオレを認めた。なんだよ、起きてんのかよ。こちらを見詰める瞳は薄っすらと眠気を纏ったまま、パチパチと瞬いている。一晩経てばボソボソと伸びるヒゲは相変わらずで、随分と久方振りな気のする端正な顔が、ズイ、と惜しみなく寄せられた。
宽阔的后背咕噜翻了个身,湛蓝的眼睛直直认出了我。搞什么啊,原来醒着吗。凝视着我的双眸还蒙着淡淡睡意,忽闪忽闪地眨动着。过夜就会乱糟糟冒出的胡茬依然如故,那张久违的端正脸庞倏地毫不吝啬地凑了过来。
「寝て、なかったのかよ」
"「你压根没睡啊」"
「んー、ジェイミーが玄関開けた瞬間、毎回目が覚めるんだよな」
"「嗯——每次杰米打开玄关门的瞬间,我都会被吵醒啊」"
「そりゃ
"「那个"……悪かったな、煩くしちまって」
抱歉啊,吵到你了」
「いーや? クセみたいなモンだから気にすんな。それよりどうしたんだよ、いつもならすぐ寝付くだろ? なのに今日はなかなか眠れねえみたいだし」
"「没——事?就像习惯一样别在意啦。倒是你怎么了,平时不是倒头就睡吗?今天却好像怎么也睡不着的样子」"
するすると髪を梳くように撫でられて、その心地良さについ目を細めてしまう。黙ったまま見詰めていると、ルークは小さく眉を顰めた。
被轻柔地梳理着头发,那份舒适让我不由得眯起了眼睛。当我沉默地凝视时,卢克微微皱起了眉头。
「なあ、ここ最近ずっと忙しくしてるだろ。全然顔見れなくて寂しかったんだぜ?」
"“喂,最近一直很忙吧?都见不到你,我可寂寞了。”"
それは、オレも同じだ。だからこそ勝手に落ち込んで、一方的に膨らみ行く不安に呑まれかけていた。でも今は、そんな気持ち以上に、ドキドキと脈打つ鼓動が下腹へと移ってしまった。もっと、もっと、この手で触れられたい。
我也一样。正因如此才会擅自消沉,几乎被单方面膨胀的不安所吞噬。但现在,比起那种心情,怦怦跳动的脉搏更向下腹转移。想要更多、更多地被这双手触碰。
「……ルーク。オレ、っ」
卢克。我、」
「うん」
"「嗯」"
「…………お前に、抱かれたい、かも」
或许、想被你拥抱」
「……え!?」
诶!?
ガバッ、と跳ね起きたルークがオレの肩を押さえつけ、零れんばかりに目を大きく見開く。目の前にある分厚い胸板が強い鼓動に打たれて、ドンドンと跳ね上がっているのが目に見えた。コイツとキスをし扱き合ったあの日から、気付けば十日以上もの月日が経っている。
卢克猛地弹坐起来,双手压住我的肩膀,瞪大的眼睛里盈满难以置信。眼前那堵厚实的胸膛正随着剧烈心跳砰砰震动,清晰可见。自从那日与他唇齿交缠后,不知不觉竟已过去十多天。
「本当に、いいのか
"「真的可以吗"……!? あれからそういう話してなかったし、やっぱり興味ねえのかなって思ってたんだけど
!?从那之后就没再提过这事,我还以为你果然没兴趣呢……ッ」
「興味がないワケじゃねえよ。ただ、
"「倒也不是没兴趣。只是,"……どんなものか想像がつかなかっただけで」
只是之前无法想象会是怎样的东西罢了
「でも今は、そうやって
"但现在,就这样"……やる気になってくれた、んだよな?」
你终于愿意振作起来了,对吧?
「……まあ、な」
嘛,算了」
コクリ、と小さく頷くと、ルークは星色の散る瞳を輝かせ、ぐうぅ、と頭を振って悶絶した。カサカサと乾いた唇がオレの頬へとくっ付き、ちゅ、ちゅ、ちゅ、と至る所にキスを落としていく。
路克轻轻点了点头,星辉散落的眼眸闪闪发亮,呜咽着摇头陷入狂乱。干燥的唇瓣贴上我的脸颊,啾、啾、啾地四处落下亲吻。
「ジェイミー、抱きたい。お前と、セックスしたい」
"「杰米,我想抱你。想和你做爱」"
「んっ、
"「嗯、"……オレも、やりたい」
我也想试试」
「はあ、どうしよう、ッ今すぐ挿れてえのに、さすがにすぐは無理だよなぁ
"「哈啊、怎么办、好想现在就插进去啊,但果然还是不行吧"……はあ、ジェイミー、はあ、はあぁ
哈啊、杰米、哈啊、哈啊……っ」
ルークはオレの身に覆い被さりながら、ちゅ、ちゅ、ちゅ、と唇を合わせ合い、オレのシャツを捲り上げた。強烈なパンチを繰り出すその手の平は、大きく、分厚く、そして頑丈だ。グローブ越しとは言え日々あらゆるものを殴りつけてきたそれは、ゴワゴワと固いマメが至るところにできている。そのガサガサと荒れた手の平がオレの腹を摩り、興奮に汗ばんでいくのがはっきりと伝わってきた。
卢克压在我身上,啾、啾、啾地与我唇齿交缠,同时掀起我的衬衫。那双能打出强力拳击的手掌宽大厚实且坚硬。尽管隔着拳击手套,日复一日击打沙袋的痕迹仍让粗糙的老茧遍布掌心。当那粗糙的手掌摩挲着我的腹部时,我能清晰感受到他因兴奋而渗出的汗意。
「お前の腹、なんでこんなにエロいんだよ
"「你的肚子...怎么会这么色气啊」"……」
筋肉の凸凹がひとつひとつ辿られ、脇腹をスリスリと指の腹で撫でられる。そのくすぐったさに身じろぎしながら、発情の眼差しで見下ろす想い人を見詰め返す。
他的指腹逐一描摹着我腹肌的沟壑,又在侧腰处流连轻蹭。我在酥痒中轻轻扭动,却仍用同样情动的目光凝视着俯视我的恋人。
「エロい?」
"「色情吗?」"
「エロい。めっちゃくちゃ、エロい」
"「色情。简直太色情了」"
「っはは、マジか。お前にそう言われると
"「哈哈哈,真的假的。被你这么说"……気分がイイぜ」
感觉超棒啊」
ああ、この感じだ。ニヤッと口角を上げて、コイツのこの野性味溢れる顔を見上げる時の、この胸の高鳴り。世の中には様々な娯楽が溢れてるが、オレにとっちゃあコイツとじゃれ合える時間こそが、何よりの楽しみらしい。今後、身体を繋げられる、その時がきたら。コイツへ向かう喜びは太く丈夫に伸び上がって、もっともっとと欲深くなってしまうのだろうか。
啊啊,就是这种感觉。当嘴角扬起坏笑,抬头望向这家伙充满野性的脸庞时,胸口这份悸动。世上虽有形形色色的娱乐,但对我来说,能和这家伙嬉闹的时光才是无上的快乐。待到将来,当我们的身体真正结合之时。这份涌向他的喜悦,定会愈发粗壮坚韧地向上生长,变得贪得无厌吧。
「……ジェイミー」
杰米
「ん」
"「嗯」"
「お前が疲れてるのはよく分かってんだけど
"「我很清楚你现在很疲惫"……これから、その、試してみねえか。できるところまででいいからさ」
那啥,要不咱们试试看?能做到哪一步算哪步吧
「そりゃ
"「那个"……いい、けど。お前仕事は?」
行啊。不过你工作呢?
「今日は休み。お前が起きたら、一緒に中華街へ行こうと思ってた」
"今天休息。本来想着等你醒了,一起去唐人街的"
ああ、そうだったか。日にち感覚が麻痺していたせいで、全く頭になかった。血走る瞳がギラギラとこちらを睨みつけ、ゴクッ、と喉を鳴らす。獣じみたその表情に、ぎゅう、と腹の底が引き絞られたかのように疼いた。頬を撫でる手に手を重ねて、汗ばんだ体温を堪能する。言葉ないまま見詰め合い、すう、すう、と幾つかの呼吸を重ね合わせた。
啊,原来是这样。因为对日期的感觉已经麻木,完全没想起来。充血的眼睛闪闪发亮地瞪视着这边,喉咙里发出咕噜一声。那野兽般的表情让胃底像被揪紧般绞痛。将手叠放在抚摸脸颊的手上,享受汗湿的体温。无言对视间,呼、呼,交织了几重呼吸。
これで、本当にイイ、のだろうか。調べた通りに準備を済ませたが、これで充分なのかどうか自信はない。本日二度目のバスルームから出て、いつも寝間着代わりにしているシャツとハーフパンツを身につける。もっと色気のある恰好をした方が良かったか? まあでもきっと、さっさと脱ぐことになるのだろう。何事も大味なあの男に、雰囲気づくりなんて期待しちゃいない。
这样真的可以吗?虽然按照调查准备好了,但不确定是否足够。今天第二次走出浴室,穿上平时当睡衣的 T 恤和短裤。或许该穿得更性感些?不过反正,大概很快就会被脱掉吧。对那个粗线条的男人,根本不指望他能营造什么氛围。
そう思うと同時に、全身の体温が高まっていくのがよく分かった。出口としか考えたこともなかった場所を洗浄して、オレは自らの足であの男の元へと歩んでいる。アイツに、抱かれる為に。首を縮こめるような気恥ずかしさと、胃が重くなるような緊張感そして、ゾクゾクと毛が逆立つような、興奮。それらすべてを胸の中で一緒くたにして、ギィ、と蝶番を軋ませドアを開いた。
这样想着的同时,我清楚地感觉到全身的体温在升高。清洗着那个只被视为出口的地方,我用自己的双脚走向那个男人。为了被他拥抱。那种令人缩起脖子的羞耻感、胃部沉甸甸的紧张感,以及令人毛骨悚然的兴奋,我把所有这些情绪都混杂在胸口,嘎吱一声,铰链作响地推开了门。
昇りきった陽の光がカーテンの隙間から射し込んで、寝室は随分と明るくなっていた。ルークはどっしりとベッドに腰掛け、おう、と照れ臭そうに片手を上げる。ランニングシャツの隙間から覗く、くっきりとしたタトゥーがいやにセクシーに思えた。
升起的阳光从窗帘的缝隙中照射进来,卧室变得相当明亮。卢克重重地坐在床上,有些不好意思地举起一只手。从运动衫的缝隙中露出的清晰纹身,显得异常性感。
ヤツの重みに歪むマットレスの表面には、何やら青色のシーツが新たにかけられていた。他にも、バスタオルやローションのボトル、その他諸々のグッズが傍らに並んでいる。全力で行為へと向かうその姿勢を目の当たりにして、様々と抱えていた感情を取り落としてしまうほどに、ポカン、と呆気にとられた。
在他重量下凹陷的床垫表面,新铺了一层蓝色的床单。旁边还摆放着浴巾、乳液瓶以及其他各种用品。目睹他全力以赴投入行为的姿态,我惊讶得目瞪口呆,以至于抛开了所有复杂的情绪。
「……気合入ってんな」
干劲十足啊
「お前といつでもできるように、買い揃えてた」
"为了能随时和你一起,我都备齐了"
「へえ。
"嘿。"……なあ、そのシーツは?」
喂,那条床单呢?
「防水のやつ。ガサガサ音がして気が散るかもしれねえけど、汚すかもとか濡らすかもとか、そっちが気になると集中できねえだろ?」
"「防水款的。虽然可能会发出沙沙声让你分心,但要是总担心弄脏或弄湿什么的,反而没法集中注意力吧?」"
ニッ、と笑むその顔は一見爽やかだが、こちらを見やる瞳には高い熱が灯ったままだ。差し伸べられる腕に応え、一歩一歩と歩を進めていく。
他咧嘴一笑的表情乍看清爽,可那双凝视我的眼眸里仍燃着灼热高温。我回应他伸来的手臂,一步一步向前走去。
「なあ、あのさ。
"「那个,我说啊。"……今日だけは、全部俺にさせてくれねえか」
今天就让我全权负责吧
「……なんで」
为什么
「そりゃどう考えても、お前の負担がデカすぎるから。俺は、その
"「这怎么想都是因为你的负担太重了。我啊,那个"……自分で言うのもなんだけどさ、すぐ頭に血が上るタチだろ? お前に触られちまったら
虽然自己这么说有点那个,但我就是容易上头的性格吧?要是被你碰了的话……きっと、歯止めが利かなくなる。お前のナカに無理やり捻じ込んで、もし怪我でもさせちまったら、俺は一生自分を許せねえ」
一定会失控的。如果强行塞进你里面,让你受伤的话,我这辈子都无法原谅自己。
そっと掬い上げられた両手が握られ、傷跡の走る頑丈な顔が困ったように笑みを作る。ギチギチと強い力で圧縮された性欲は、こんなにも色っぽく、鋭く尖り、ギラつく光を返すものなのか。オレのことが大事だからだと、無理やりシたくないんだと、雄の瞳が血走ったままにオレを睨んでいる。構わねえ、無茶苦茶にしてくれよ。そう叫びたくなる気持ちを抑えて、オレはひとつ頷き了承した。
被轻轻捧起的双手被他握住,那张刻满伤痕的坚毅脸庞露出困扰的笑容。被强力压缩的性欲竟能如此性感、尖锐地闪烁着光芒。那双充血的眼睛瞪着我,说着因为珍惜我才不想勉强。无所谓啊,尽管粗暴地对待我吧。强忍着想要这样喊出来的冲动,我点了点头表示同意。
ガサガサと音を立てる固いシーツの上に横たわると、すぐさま重い身体がどっしりと圧し掛かってきた。シーツに突き立てられた両腕には、派手な防御創がいくつも刻まれている。このひとつひとつに、どんな物語があるのか、オレは知らない。きっと他者を庇いこさえた傷跡なんだろうと、そうボンヤリと推測するまでだ。そんなコイツを、オレは誇らしく思う。格好いい男だよ、お前は。
躺在沙沙作响的硬质床单上,沉重的身躯立刻压了下来。撑在床单上的双臂刻满了显眼的防御伤。我不知道每一道伤痕背后有什么故事,只能模糊地猜测这些大概都是保护他人留下的。这样的他让我感到骄傲。真是个帅气的男人啊,你这家伙。
ねち、と上空から伸ばされた舌を大きく開いた口で受け止め、ちゅうちゅうと吸い上げながら絡めていく。うなじがチリチリと焼けるような興奮に身が震えて、じっとりと汗ばんだ分厚い背へと腕を回す。コイツとのキスが、好きだ。緊張と緩和が混在して、そのすべてをじっとりと湿る性欲が包み込んでいく。
从上方垂落的舌头被大张的嘴接住,啾啾地吮吸缠绕着。后颈因灼烧般的兴奋而颤抖,手臂环抱住汗津津的厚实后背。我喜欢和这家伙接吻。紧张与松弛交织,所有一切都被湿漉漉的性欲包裹。
疲労の溶けた全身を、じんわりと押すように重い身体が重なってくる。触れ合うぬくもりが嬉しくて、口づけの合間から、うん、うん、と確かめるような声が漏れ出てしまう。
疲惫溶解的全身,被沉重身躯缓缓覆盖般压上来。触碰间的温暖令人欢喜,在亲吻间隙里,漏出嗯、嗯的确认般声音。
「なあ、
"「呐,"……もし俺がプッツンしちまったら、鼻の骨へし折ってもいい、全力でぶん殴って止めてくれ」
要是我突然发疯的话,就算打断鼻梁骨也行,用全力揍醒我啊」
「へえ、なに。お前鼻へし折られてえの?」
"“哦?怎么,你想被揍扁鼻子吗?”"
「ああ!? ンなワケあるか、俺をマゾ野郎に仕立て上げるんじゃねえ。俺はお前の為に、理性を保ちたいって言ってんだ」
"「啊!?开什么玩笑,别把老子当成受虐狂。我可是为了你才拼命保持理智的啊」"
熱い呼気を逃がしながら、ぐぢゅ、ぐぢゅ、と抜き差しを繰り返すような口づけは、きっとコイツの挿れたいって願望そのものなんだろう。質量ある舌を押し込まれる度に息苦しさが膨れ上がって、どっしりと重いペニスが喉奥を突いた、あの瞬間をありありと思い出させる。涙が滲む圧迫感と苦み走った味は、オレの内側へと向いた、大振りの肉欲だった。
在灼热吐息交织间,那反复抽插般的黏腻亲吻,定然是这家伙渴望进入的具象化。每当那条沉甸甸的舌头抵进来,窒息感便汹涌膨胀,让人清晰忆起那根粗重阴茎捅进喉底的瞬间。催生泪水的压迫感与苦涩滋味,正是朝我体内长驱直入的、硕大肉欲本身。
「腕上げて」
"「把手举起来」"
「ん」
"「嗯」"
やっぱり思った通りだ、脱ぎやすいだろうと選んだオーバーサイズのシャツはさっさとひん剥かれ、ルークは裸になったこの上半身を落ち着きない視線で辿っている。オレは何もしちゃいけないんだろ? 緩くまとめた髪を邪魔にならないようかき上げながら、両脇を開いて頭上へと腕を伸ばす。
果然如我所料,特意挑选的宽松衬衫被轻易剥落,卢克用躁动不安的目光巡视着我赤裸的上半身。我什么都不能做对吧?将松散束起的头发撩到脑后以免碍事,双手向两侧张开举过头顶。
「ルーク先生は、教えるのが上手いんだよな?」
"「卢克老师很擅长教学对吧?」"
ニッ、と笑いかけると、ルークはゴクリと盛大に喉を鳴らした。そのあまりの音量にクククッと笑いが漏れて、すべてを投げ出しヤツの愛撫を待つ。脇腹からスルスルと胸元まで大きな手の平が滑り、むに、むに、と胸板が揉み込まれていく。
我咧嘴一笑,卢克顿时咕咚咽下好大一口唾沫。那夸张的声响让我噗嗤笑出声来,索性放弃抵抗等待他的爱抚。温热的大手从侧腹滑溜溜地游走到胸口,揉捏着胸膛发出黏腻的声响。
「前から思ってっけど、オレのない胸揉んで楽しいか?」
"「我一直想问了,揉我这没料的胸就那么有意思吗?」"
そう尋ねると、ヤツはムッと眉根を寄せながら、モミモミと手を休めずに口を尖らせる。
这么一问,那家伙皱着眉梢,手上揉捏的动作不停,嘴巴却撅了起来。
「……その自覚のなさが怖ェんだよ、お前いつか痛い目見るぜ」
「就是你这没自觉的样子才可怕啊,早晚有你吃苦头的时候」
「へえ? 痛い目ってなんだよ」
"「哦?所谓的吃苦头是指什么啊」"
「変なヤツに触られたりとか」
"「被奇怪的家伙碰了之类的」"
「ハッ、ンな不埒な野郎がいたら即伸してやるよ。このオレ様の強さは、お前だってちゃあんと知ってんだろ?」
"「哈,要是有那种不知天高地厚的混蛋,老子立马就收拾掉。本大爷的实力,你小子可是清楚得很吧?」"
「そうだけどさあ
"「话是这么说啦"……そうじゃねえんだって」
不是这样的啦」
薄く尖る唇が子どものようで、ふふっ、と鼻先から笑みが抜けていく。近付いてくる柔らかな嘴を口先で受け止めると、むちゅ、ぢゅう、と音を上げ啄まれた。ぬるぬると口づけが深まる間にも、胸や腹、二の腕の筋肉がくにくにと揉みしだかれていく。
薄而尖的嘴唇像孩子般稚嫩,噗嗤——笑意从鼻尖溜走。当那柔软的喙靠近时,他用唇尖接住,发出啾、啾的啄吻声。在湿滑的深吻间隙,胸膛、腹部与上臂的肌肉被反复揉捏得发烫。
しゅうしゅうと興奮が噴き上がる全身を、目の端や指先に滲む眠気がほどよく解いていく。くったりと力を抜いて明け渡した上半身を、ルークは湿った舌と唇で確かめていく。くすぐったい、という感覚はあっという間に熱を帯びて、はあ、はあ、と零れる呼吸を裏返していく。抱き起こすように掬い上げられた胸元に、ルークはぢゅうと吸い付いて赤い痕を残した。
从眼角与指尖渗出的睡意恰到好处地化解了全身滋滋作响的兴奋。路克用湿润的舌与唇确认着那具彻底放松的上半身。酥痒感转瞬间化为灼热,将凌乱的喘息搅得愈发急促。当胸膛被托起时,路克用力吮吸着留下绯红印记。
痛くて、くすぐったくて、気持ちいい。カプ、と歯を立てられたその真ん中にある、乳首が今強く吸い上げられた。そんなところ何とも思わないはずなのに、やはりコイツの手に掛かると、こんなにも心地良くなってしまう。
疼痛中带着酥痒,舒服得令人发颤。当犬齿精准叼住乳尖中央狠狠吮吸时,本该毫无感觉的部位,落入这家伙手中却总能变得如此愉悦。
「胸、気持ちいい?」
"「胸口舒服吗?」"
ああそうだな、お前限定で。曖昧に頷くと、金髪頭は嬉しそうに右胸にも齧りついた。ねぶねぶ、ねろねろと舌を這わす姿は、無邪気という言葉だけではどうにも納まりきれない。デカすぎる獣に好き勝手舐られているような、パクリと呑み込まれても文句を言えないような、そんな恐ろしさと興奮を孕んだ愛撫を一身に受ける。気付けば下着を押し上げるようにして、オレの下半身ははっきりとした劣情を表していた。
啊是啊,仅限于你。当我含糊点头时,金发脑袋又欢快地啃咬起右胸。湿漉漉的舔舐声里,那副天真模样已无法用单纯来形容。仿佛正被巨兽肆意玩弄,随时会被囫囵吞下也不敢反抗——我承受着这种糅合战栗与亢奋的爱抚。不知不觉间,内裤已被勃起的下半身顶出明显轮廓。
「腰、上げて」
"「腰,抬起来」"
「……ん」
促されるままに腰を上げ、下着と共にボトムが摺り下ろされる。スポンと引っこ抜かれ丸裸にされて、上も下も着込んだルークとの対比が恥ずかしい。そんなオレにお構いなく、ルークはオレの股を大きく開くように押さえつけた。
被催促着抬起腰,内裤连同外裤一起被褪下。噗嗤一声被剥得精光,与上下都穿戴整齐的卢克形成鲜明对比,羞耻得不行。卢克却毫不在意我的窘态,用力按住我的大腿向两侧掰开。
「お前、っなんでこんなトコまで、綺麗、なんだよ」
"「你这家伙...为什么连这种地方...都这么漂亮啊」"
唇を唾液でヌラヌラと濡らしたまま、オレの股座を覗き込むスケベ脳筋が悔し気に呟いてる。ったく何言ってんだよ、そんなコト言うのはお前だけだぜ。ふっふっ、と吹きかけられる熱い息が勃ち上がる先端をくすぐって、そのこそばゆさにピクンと腰が跳ねてしまう。ちゅう、と柔らかな唇が亀頭を包んで、ズプププ、と一息に呑み込まれた。
这个满脑子色情的肌肉男用唾液濡湿嘴唇,窥探着我的腿间不甘心地嘟囔着。真是的胡说什么呢,会说这种话的只有你吧。呼哧呼哧喷吐的热气搔弄着挺立的顶端,酥痒感让腰肢猛地弹跳起来。啾——柔软的嘴唇包裹住龟头,滋噗噗地一口气吞了进去。
「んあ、あっ、あ、ルーク、んんっ」
"「嗯啊、啊、啊、卢克、嗯嗯」"
ちゅう、ちゅう、とストローのように吸い上げられると、根元の内側から刺激されるようで、空恐ろしさすら感じてしまう。ぐしゃり、と飴色の髪を握って、ふっふっふっ、と腹式呼吸を繰り返す。このいやらしい唇を引き寄せたいのか、それとも引き剥がしたいのか、自分自身でもよく分からない。分かるのは、刺激される度に高鳴る鼓動、汗ばんでいく素肌、身を任せる喜び。ヌラヌラと舐られ、吸い上げられるその快感に悶絶している内に、大きな手の平が脇に揃えていたグッズを乱暴に手繰り寄せた。
被啾啾地像吸管般吮吸时,仿佛从根部内侧受到刺激,甚至感到毛骨悚然。他胡乱抓住琥珀色的头发,呼呼呼地反复进行腹式呼吸。究竟是想拉近这令人不快的嘴唇,还是想将其扯开,连他自己也弄不清楚。唯一能确定的,是每次被刺激时加速的心跳、逐渐汗湿的肌肤,以及委身于人的欢愉。当他在黏腻舔舐与吮吸的快感中几近昏厥时,一只大手粗暴地拽过了放在身旁的情趣用品。
「ジェイミー、
"「杰米,"……そんまま、脚開いとけよ」
就这样,把腿张开别动」
「……ん」
ドクンッドクンッ、と脈打つ心地良さを下半身に携えたまま、ぎゅ、と身体を折り畳むようにして、股を開く。ルークはクッションを掴むと、くるりとタオルで包んでオレの腰下にギュギュッと詰め込んだ。
下半身仍带着脉动般的快感,他弓起身体似地,将双腿分开。卢克抓起靠垫,用毛巾裹住后,使劲塞进了我的腰下。
「体勢キツいかもだけど、顔見ながらしたいから。ちょっとの間、我慢してくれ」
"「姿势可能有点难受,但我想看着你的脸做。稍微忍耐一下」"
「……おう」
「好」
これくらいちっとも苦じゃねえってのに、こんな時だけは妙に甘くなるの、なんなんだよ。目蓋が熱くなるような照れ臭さに何度も瞬きながら、眼前に掲げられたチューブボトルを見た。トローリ、と絞り出されたローションがぽってりとルークの手の平に溜まり、ぬちゅぬちゅと水音を立て指先に塗り広げられていく。
明明这种程度根本不觉得辛苦,偏偏这种时候会莫名变得娇气起来,真是搞不懂。在眼皮发烫般的羞赧中频频眨眼时,看见了眼前举着的软管瓶。黏稠的乳液被咕啾一声挤出来,啪嗒落在卢克掌心,随着湿漉漉的水声被指尖涂抹开来。
「……お前の指」
你的手指」
「ん?」
"「嗯?」"
「太ェな」
"「太大了」"
「そ。
"「是啊。"……そう、なんだよ、
是啊,就是这样,……すげえ気を付けるから」
我会超级小心的」
オレの言葉にバチンッ、と目を開き切ったルークが、申し訳なさそうにシオシオを身を縮ませた。はは、違ェんだよ、嫌だとか、怖いって意味で言ったんじゃねえ。その太い指がこのナカに入り込んじまうことに、オレはオレなりに、めっちゃくちゃ興奮してんの。何も隠すものがなくなった尻の肉を両手で掴んで、ぎゅう、と大きく割り開く。コイツの視界では、オレの孔が丸見えになってるはずだ。すうすうと空気の流れを感じて、股の裏側がキュウッと引き締まる。ルークがまた、ゴキュッ、と喉を鳴らした。
随着我的话语啪地一声,瞪圆眼睛的卢克愧疚地缩了缩身子。哈哈,不是啦,我说的不是讨厌或者害怕的意思。想到那粗壮手指会插进这里面,我整个人都兴奋得不行。双手抓住毫无遮掩的臀肉,用力向两边掰开。在这家伙的视野里,我的小穴应该一览无余了吧。能感觉到空气流动的触感,大腿内侧猛地绷紧。卢克又咕嘟地咽了下口水。
「おら、早くしろよ。ルークせんせ」
"「喂,快点啊。卢克老师」"
「……あんまり煽るんじゃねえ、ブレーキ利かなくなっても知らねえからな
别他妈催太狠,刹车失灵了可别怪我……っ」
額に青筋を立てながら、ルークはヌルリと濡れた中指でオレの肛門を押さえつけ始めた。固く閉じた口を開こうと、あの指先がグニグニとマッサージを続けている。セックスがしたくて、オレのナカに入り込みたくて、フウフウと鼻息を荒くしながら、こんなせせこましいことをやっている。
卢克额角暴起青筋,用湿漉漉的中指缓缓压上我的肛门。那指尖不断揉按着试图撬开紧闭的入口。他喘着粗气,明明渴望着性交、想进入我体内,却还在做这种小家子气的把戏。
充血した目を大きく見開いて、はあ、はあ、と口呼吸を繰り返す、その顔。オレはコイツに大事にされているし、ヒリつくほど求められていると分かる。あの、ルークに。感動が入り混じる喜びに、ぎゅうん、と胸の奥が苦しくなった。一日でも早く、コイツのすべてを受け入れられるといいな。グニグニと揉まれる違和感に小さく笑いながら、大きなその身体へと両腕を差し伸べる。額に汗を浮かべるアイツが、グンと身を伸ばしオレの上へと重なった。
那双充血的眼睛瞪得大大的,伴随着急促的喘息声,那张脸。我知道自己被这家伙珍视着,也明白他如灼烧般渴求着我。就是那个卢克。混杂着感动的喜悦让胸口深处阵阵发紧。真希望能早日接纳这家伙的全部啊。一边因被揉捏的异样感轻声笑着,一边向那具高大的身躯伸出双臂。额间沁出汗珠的那家伙猛然伸长身子覆了上来。
ちゅう、ちゅう、ちゅっ、ちゅう。塩味交じりの唾液を吸い上げて、飽きもせずに舌を絡ませ合う。はあっ、と零れる呼吸が熱くて、オレはゆっくりと目蓋を下ろした。どっしりとした体重を感じながら尻の孔を解されて、唇ごと喰われてしまいそうなキスを受ける。身体の芯に居座ったままの疲れがじわっと染み出て、口内の隅々を舐め取られる間に、ウトウトと意識が遠のいていく。
啾、啾、啾、啾。不知厌倦地交缠着舌尖,汲取带着咸味的唾液。溢出的灼热喘息声中,我缓缓阖上眼睑。感受着沉甸甸的体重,后穴被开拓的同时,承受着仿佛连嘴唇都要被吞吃殆尽的深吻。盘踞在身体深处的疲惫渐渐渗出,当口腔每个角落都被舔舐时,意识开始朦胧远去。
ぢゅ、と舌全体を強く吸い上げられると同時に、ズポン、と下半身を突き上げる衝動に目を覚ました。
当整条舌头被用力吸吮的瞬间,伴随着噗嗤一声,下半身被顶弄的冲动使我猛然清醒。
「んぁ
"「嗯啊"……?」
?"
「指、挿った」
"「手指、插进来了」"
ごくっ、と唾液を呑むルークが、剣呑な目でこちらを睨んでいる。同時に、尻の内部をグニグニと動き回る太さを感じて、オレは小さな感動を覚えた。すぽ、すぽ、と何度も確かめるように出入りを繰り返し、グニュリと奥へと捻じ込まれていく圧。違和感は相変わらずあるが、それ以上に、コイツの指が挿りきったことが嬉しかった。
卢克咕咚一声咽下唾液,用危险的眼神瞪视着这边。与此同时,感受到臀部内侧被粗壮物体搅动的触感,我涌起一阵微妙的感动。噗嗤、噗嗤,仿佛为了确认般反复抽插,随后被咕啾一声扭动着向深处顶入的压力。虽然异物感依旧存在,但更令人欣喜的是这家伙的手指终于完全插了进来。
「記念すべき第一歩、ってやつ?」
"「值得纪念的第一步,对吧?」"
「ん」
"「嗯」"
鼻先に汗の玉を作りながら、ルークが頷く。ぎゅう、と腹に力を込めると、水色の瞳がパチンと弾かれるように大きく開いた。
卢克鼻尖沁着汗珠点头应道。他腹部猛然发力时,那双蓝眼睛如同弹开般倏然睁大。
「うわ!」
"「哇!」"
「ンだよ」
"「是啦」"
「動いたっ」
"「动了!」"
「ちょっと力入れただけだぜ」
"「只是稍微用了点力而已」"
「~~~ッ、それだけでもエロいんだよっ」
"「唔~~~,光是那样就已经够色情了啦」"
ぐにゅう、と寄せられた唇を再び受け止めて、ちゅ、ちゅ、ちゅう、と吸い上げ合う。ねろねろと蠢く舌の動きに合わせ、挿入の深まった指先が何かを探し求めている。ぐっぐっ、と腰を揺すり奥をぶつけてやると、閉じた目蓋の向こう側で、パチパチ、と水色が瞬くのが分かった。
咕啾,再度迎上贴近的双唇,啾、啾、啾呜,彼此吮吸纠缠。随着黏腻蠕动的舌头的节奏,深入探索的指尖在寻找着什么。咕呜咕呜地扭动腰肢撞击深处时,能看见紧闭的眼睑另一端,有淡蓝色的光芒啪嗒啪嗒地闪烁。
「……ジェイミー、ここ、どんな感じ?」
杰米,这里感觉怎么样?
「んん~? 挿ってんなぁ、って感じるだけだな。痛くもねえし、そこまで変な感じもねえ」
"“嗯~?就只是觉得插在里面而已。不痛,也没什么奇怪的感觉”"
「そっか。なあ、このままオナニーしてくんね?」
"“这样啊。呐,就这样继续自慰好不好?”"
そんな一言に、ほんの一瞬だけ、息を呑んだ。いやこんな格好して指まで突っ込まれてんだ、今更驚くこともねえんだろうけど。真っ直ぐと口にされた単語にポワッと頬が温まって、オレは思わず口籠った。
仅仅因为那句话,我瞬间屏住了呼吸。不,都已经被这样摆弄着连手指都插进来了,事到如今也没什么好惊讶的吧。但听到那直白的词汇时,脸颊还是腾地烧了起来,我不由得语塞了。
「前が勃つと、前立腺も膨れて分かりやすくなるらしいんだよ。ちゃんとした位置把握したいからさ、その体勢のままやってみてくれねえか?」
"『据说当前面勃起时,前列腺也会膨胀得更容易找到呢。我想确认准确位置,就保持这个姿势继续可以吗?』"
眠気と共にくにゃりと頭を垂れるペニスに、トロリとローションがかけられる。ヒンヤリとしたトロミと共に握り込むと、手の温度がじんわりと溶け移っていった。あの綺麗な瞳に見守られながら、ちゅく、くちゅり、と自身を握り締める。ぐちゅっ、と大きく音を立てると、眼前の瞳孔が大きく開いた。
随着睡意垂下的阴茎被缓缓浇上润滑液。带着冰凉黏稠的触感握上去时,掌心的温度渐渐渗透交融。在那双漂亮眼眸的注视下,啾、咕啾地攥紧自己。当发出咕啾的大声水响时,眼前的瞳孔骤然放大。
「は、あ、ぁ
"「啊、哈、啊"……ぅん」
嗯」
見られている。その恥じらいがスパイスとなって、ぐぢゅぐぢゅと擦り上げる手の動きが大きくなっていく。根元から擦り上げては裏筋を擦って、鈴口へと絞るようにキュウキュウと力を込める。ひとりでする時よりも、射精感があっという間に大きくなっていく。開いたままの股が大きく広がっていって、足先にピンと力が籠った。
被注视着。那份羞赧化作催化剂,使得上下撸动的手势越发激烈。从根部推挤到沟壑,再狠狠碾过铃口,榨取般用力挤压。比独自发泄时更快地,射精感瞬间汹涌而至。大张的双腿越分越开,脚尖绷得笔直。
ハアッ、ハアッ、ハアッ。空を切るような荒い息の出どころへと視線を上げる。ルークは内部のあれこれを探るのも忘れ、オレの手の動きに釘付けになっていた。なあ、オレの自慰だけで、そんな興奮してくれんの? やっぱお前、変わってるぜ。ヘラリ、と笑みが沸き上がって、漏れる吐息をほんの少しだけ大きくする。
哈啊、哈啊、哈啊。视线循着那仿佛要划破天际的粗重喘息声向上望去。卢克连探查内部状况都忘了,只顾死死盯着我手的动作。喂,光是看我自慰就能让你这么兴奋?你这家伙果然够变态。嘴角扬起戏谑的笑,故意将漏出的喘息声放大了些许。
「っあ、ア、
"「啊、啊、"……んん、ん、っ
嗯、嗯、呜……なあ、ルーク」
喂,卢克
「……え!?」
诶!?
「分かったか? 場所
"「明白了吗?地点"……」
「っあ、ああ、悪ィ見入ってた」
"「啊、啊啊,抱歉看入神了」"
再開された指の出し入れが、先ほどとは比べ物にならないくらい甘く響く。痒いところをガシガシと掻かれるような心地良さに似た、不足分が満たされるような感覚。くねり、と腰を突き出すと、その甘ったるさのド真ん中をコツンと押し上げられた。
重新开始的手指抽送,发出比方才甜美得无法比拟的声响。如同瘙痒处被狠狠抓挠般的畅快感,仿佛欠缺的部分正被填满。当腰肢扭动着向前挺出时,那甜腻的中心被轻轻顶了一下。
「っあ」
"「啊」"
「……ここか? どうだ、ジェイミー」
是这里吗?怎么样,杰米
「……ん、多分、ソコ」
嗯,大概,是那里
グググと押されると、腰奥の一点に温もりが集結する。射精前のムズムズとする感覚が、ペニスからではなく内臓から引き起こされている。噛み砕いて言えば、とても、気持ちがいい。扱くよりも先に先走りが溢れ出し、ビクッビクッと太腿の内側が痙攣する。太くて固い指先が、ゴリュ、ゴリュ、と突き上げてくる。いい。ルークの指、気持ちいい。
被咕啾咕啾地按压时,温暖感在腰窝深处一点汇聚。射精前那种酥痒感并非来自阴茎,而是从内脏深处被勾起。直白地说,舒服得不得了。还没开始撸动,前端就渗出先走液,大腿内侧一抽一抽地痉挛。粗硬指尖咕噜咕噜地向上顶弄。好舒服。卢克的手指,太舒服了。
「ルーク、そこ、きもちいい、っ」
"「卢克,那里、好舒服、啊」"
「ナカが、気持ちいい、?」
"「里面、很舒服吗、?」"
「ん、イイ、
"「嗯、好舒服、"……は、あっ」
哈、啊」
込み上げる射精感を堪えて、そそり立つペニスから両手を離す。キチキチと胸を張る屹立は、ナカを押し上げられる度にダラダラと涎を垂らし、ビクッ、ビクッ、と物欲しげに揺れている。
强忍着汹涌的射精快感,双手从那根昂然挺立的阴茎上松开。紧绷到极致的勃起物随着每次内壁挤压都会滴落黏稠液体,还一抖一抖地饥渴摇晃着。
「ルークの、指、
"「卢克的手指、"……きもち、い、んぁッ」
好、舒服、啊嗯——」
惚けてしまうような快感に腰を揺らめかしていると、大きな口がパクッとオレの中心へ食らい付いた。先ほど啜り上げていた時と比べ物にならないほどに強く、ぢゅう、ぢゅうと性急に吸い上げられる。
在令人晕眩的快感中扭动腰肢时,一张大嘴突然咬住了我的中心。与方才轻吮的力度截然不同,此刻正饥渴地激烈吸吮着,发出啾、啾的声响。
あ、イく、イっちまう。もっともっと味わっていたいのに。グンと背を反った瞬間、ドプッ、と心地良さが弾けた。腹に力を込めずとも飛び出した快感に、構える間もなくビクッビクッと身が跳ね上がる。
啊、要去了、要去了。明明还想再多享受一会儿的。当背部猛然反弓的瞬间,噗嗤——舒适感骤然炸裂。无需腹部用力,快感便自行喷涌而出,身体来不及反应便痉挛着弹跳起来。
ゴクッ、ゴクッ。ルークは喉を鳴らしオレの精液を飲み干して、それでも満足せずヌルヌルと舐め回しては吸い続けた。ナカを突き上げる指の動きも激しくなって、前立腺、と呼ばれたその場所が一心に刺激されていく。出したのに、出したはずなのに、射精後の気怠さの中で再び膨れ上がる性感に、オレは咄嗟に息を呑んだ。ルークの口内に囚われる分身は、もう既に固さを取り戻しているようだった。
咕咚、咕咚。卢克喉结滚动吞咽着我的精液,却仍不满足地继续用湿滑的舌头舔舐吸吮。体内抽插的手指动作愈发激烈,那个被称为前列腺的部位正被集中刺激着。明明已经射了、明明应该结束了,却在射精后的慵懒中再度膨胀的性快感,让我倒抽一口气。被困在卢克口腔里的分身,似乎早已重新硬挺起来。
「る、く! 待てって、ちょ、オレさっきイったのに、ッあ、ハアッ、う、ぅん~~っ!」
"「卢、克!等一下、我刚刚才射过、啊啊、哈啊、呜、嗯~~!」"
ぢゅくぢゅくぢゅく、と猛りを舐り乱され、抜き差しを速める太い指は、心地良いナカを掻く手を緩めない。前後から与えられる止まない快感に腰が引けて、必死にかかとでシーツを掻く。逃げ出そうと力を込めようと、この馬鹿力はオレの腰を一向に離さない。
滋滋滋,被狂暴舔舐搅乱,粗壮手指加速抽插的动作丝毫未放松对舒适内里的搔刮。前后夹击的快感令腰肢发软,脚跟拼命蹭着床单。无论怎样挣扎使力,这蛮横力道都死死钳制着我的腰身不放。
「る、ぅくッ!! ルークッ!! ま、たイっちまう、オレこんなの知らな、ッあ、待っ、あっ、ああぁ、ッ!!」
"「呜、呜咕!!卢克!!又、又要去了,我根本不知道会这样、啊、等、啊啊、哈啊!!」"
トプッ、と放出した感覚は確かにしたが、それよりも腹の底から湧き上がる、痺れるような恍惚に気を取られた。じんじんじん、と甘い余韻が長く響いて、不随意に孔が開閉を繰り返す。くらぁん、と目を回す眩暈に空を噛んでいると、のっそりと起き上がった身体が圧し掛かってきた。ちゅぷ、と重なった唇は、くっきりと青い味に染まっている。ぬるり、と苦い塩味で濡れた舌に掻き混ぜられて、目の前がチカチカッ、と白く明滅した。
噗咻——释放的实感确实存在,但更令人恍惚的是从腹腔涌上的麻痹般狂喜。甜美的余韵久久震颤着,穴口不自主地反复开合。在啃咬虚空的天旋地转中,笨重起身的躯体再度压来。啾噗,相叠的唇瓣分明浸透了青涩气息。滑腻的苦咸舌头搅弄着,眼前噼啪闪烁出雪白光芒。
「っジェイミー、オレの指、気持ちいい
"「杰米,我的手指,好舒服"……?」
「きもち、よすぎる、からっ
"「太、太舒服了、所以…"……! もうこれくらいにッ」
! 就到这儿吧!」
「ンなこと言って、抱き着いてきてんのはお前だろぉ? これじゃ離れらんねえなぁ」
"「说这种话,扑上来抱住我的不是你吗?这样可没法分开啊」"
気付けばオレの脚はコイツの腰に回って、ぎゅうぎゅうと力の限り縋りついていた。無意識に甘えてしまう己を指摘され、燃えるように頬が熱くなる。なんだよ、ズルいヤツ。意地の悪い恋人は、飽きることなく苦み走るキスを繰り返している。オレは小さく喘ぎながら、ぼやける距離にある星空色を見詰めた。
回过神来时,我的双腿已经环上他的腰际,用尽全力紧紧缠住。被指出无意识撒娇的自己,脸颊顿时烧得滚烫。可恶,太狡猾了。这个坏心眼的恋人正乐此不疲地重复着苦涩的亲吻。我微微喘息着,望向模糊距离外那片星空色的眼眸。
「ルーク」
"「卢克」"
「ん?」
"「嗯?」"
「お前も、
"「你也,"……出せよ」
拿出来啊」
「えッ! いやっ今日はいいって、お前もう相当眠いだろ?」
"「诶!不、不用了今天真的,你不是已经困得不行了吗?」"
「やられっぱなしは性に合わねえんだよ。どうして欲しい? 口でやるか?」
"「光挨打可不符合老子的性格。想让我怎么伺候你?用嘴吗?」"
れろっ、と舌を突き出してみせると、ルークはふかふかと目元を赤らめ、ツンと唇を突き出した。そのままいくらか視線を彷徨わせると、ポソッ、と小さく、か細く呟く。
我故意'略'地吐出舌头,卢克顿时眼眶泛红,气鼓鼓地撅起嘴唇。他眼神游移了片刻,才小小声、细若蚊呐地嘟囔了一句。
「お前の、尻、さぁ」
"「你的屁股啊」"
「ああ、なに」
"「啊,怎么了」"
「さすがにまだ挿れらんねえけど。その
"「虽然现在还插不进去。那个"……挟んでいいか?」
可以夹着吗?」
「挟む?」
"「夹着?」"
「うん、こう
"「嗯,这样"……ホットドッグみたいに」
像热狗一样」
「ははっ、な~んかよく分かんねえけど、
"「哈哈,虽然~有点搞不太懂,"……お前のやりたいように、好きにしろよ」
随你便,爱怎么干就怎么干吧
ルークの身体の下で、ぐるん、と寝返りを打ち尻を差し出す。枕を抱き込み脚を伸ばすと、背後でゴソゴソと大きなものを取り出している気配が伝わってきた。にゅぶ、と尻の谷間に押し付けられた温度と質量には、確かに覚えがある。ドシン、と体重がかけられて、熱く重い太さが、にゅる、にゅる、と前後を始めた。
在卢克身下翻了个身,撅起臀部。抱住枕头伸直双腿时,背后传来窸窸窣窣掏出大家伙的动静。抵在臀缝间那湿黏的温度与分量,确实似曾相识。随着体重沉沉压下,那根灼热粗硬的家伙开始前后滑动,发出黏腻的水声。
「ジェイミー
"「杰米"……っ」
あむ、と耳の縁を食まれながら吹き込まれるその声は、音叉を叩いたかのようにクワァンと脳髄に響く。この重い身体が好きだ、湿度の高いにおいが好きだ、息切らす吐息が好きだ。ぐっぐっ、と擦り付けられる重い陰茎が、小さく開いたアナルをうずうずと疼かせる。
当耳垂被轻咬时传入的『啊呜』声,如同音叉敲击般在脑髓里轰然回荡。我喜欢这具沉重的躯体,喜欢潮湿的气味,喜欢喘息时凌乱的吐息。咕啾咕啾,粗重的性器摩擦着微微张开的肛门,激起阵阵酥麻的瘙痒。
「あっ、あ、ん、んん、ぅん」
"「啊、啊、嗯、嗯嗯、呜嗯」"
揺さぶられる度に吐息が押し出されて、正に行為の真っ最中のようだ。ううぅん、と鼻にかかる吐息を枕に預けて、セックスの真似事に興じていく。
每次晃动都会挤出喘息声,简直就像正在交媾一般。呜呜嗯——将带着鼻音的吐息埋进枕头,继续沉醉于这场性事模仿游戏。
ふっ、ふっ、ふっ、ふっ。頭上から降ってくる吐息が、炎のように熱い。指で触れられ、擦り付けられるだけでこんなにも愛おしいなら、真に繋がったその瞬間、オレたちはどうなるんだろう。枕を握り締める手の甲が分厚く固い手で覆われ、強く握り込まれる。ユサユサと全身を揺さぶる突き上げが強まって、零れ落ちる獣じみた吐息が、どんどんと大きくなっていく。
哈、哈、哈、哈。从头顶倾泻而下的吐息,如火焰般灼热。仅仅是被手指触碰、摩挲就如此令人爱怜,若真正结合的那瞬间来临,我们又会变成怎样呢。攥紧枕头的指节被厚实坚硬的手掌覆盖,用力扣紧。随着摇晃全身的顶弄愈发激烈,野兽般的喘息不断溢出,逐渐变得粗重。
「ぐ、っう、出る
"「呜、嗯、要去了"……ッ、ジェイミー、ッ」
杰、杰米、
「あ
"「啊"……、あっ」
“啊、啊——”
ドブッ、ビュウッ、とぬるい温度が噴き出して、あのにおいが寝室内に一気に充満した。ドクッドクッと早鐘を打つ胸を抱え振り仰ぐと、そこにはポタポタと唾液を垂らしながら、ゼエハアと肩を上下するルークの姿があった。瞬きもなくギラギラと荒んだ目でこちらを睨み付け、全身の筋肉は膨れ上がり、腕や首筋、こめかみまで、あらゆる場所に太い血管が浮き上がっている。出したばかりの今すぐでも、オレを抱き潰しそうなその姿に、トキメキが止まらない。
“噗嗤、咻——”温热的液体喷涌而出,那股气味瞬间充斥了整个寝室。我抱着如擂鼓般狂跳的胸膛仰头望去,只见卢克正滴着口水,肩膀剧烈起伏地喘息着。他瞪大的双眼布满血丝一眨不眨地死死盯着我,全身肌肉贲张,手臂、脖颈乃至太阳穴都暴起狰狞的青筋。明明才刚发泄过,那副仿佛下一秒就要将我揉碎的模样却让我的心跳怎么也停不下来。
格好いい。ルーク、お前格好いいよ。唾液と汗に塗れた枕に顔を埋めて、声の限り叫ぼうとする身体を必死に抑え込む。どうか早く、今すぐオレを抱いてくれ。
太帅了。卢克,你简直帅疯了。我把脸埋进沾满唾液与汗水的枕头里,拼命压制住想要放声尖叫的身体。求你快些、现在就拥抱我吧。
オレ、お前のことが好きなんだ。
我啊,是喜欢你的。
あの言いようのない焦燥感は、もしや寂しさからくるものだったんだろうか。ルークとセックス、とはまだ言えないがその真似事をするようになって、息を詰める不安はサラリと姿を消した。
那份难以名状的焦躁感,莫非是源于寂寞吗?虽然还称不上是与卢克做爱,但自从开始模仿那种行为后,令人窒息的焦虑便悄然消散了。
あの日からというもの、僅かでも時間を見付ければ、ルークの太い指を受け入れ、口づけを交わし合い、大きすぎるペニスを頬張って、お互いのにおいを擦り付け合っている。なんだこれ、動物のマーキングみてえだな。そう冗談めかして言えば、ルークはさも当然と言わんばかりに頷いた。
自那日起,只要稍有空闲,我就会接纳卢克粗壮的手指,与他交换亲吻,含住他那过于硕大的阴茎,互相蹭满彼此的气味。这算什么啊,简直像动物在标记地盘嘛。当我这样半开玩笑地说时,卢克竟理所当然般点了点头。
毎日この場所へと帰ってくるその存在に、心の平静が保たれ、今まで以上に落ち着きを身につけた自覚はある。そうやって満たされる一方で、オレの中には新たな懸念が生じていた。
每天回到这个有他存在的地方,心灵便得以平静,我自觉比从前更加沉稳。然而就在这份满足感充盈的同时,新的忧虑却在我心中悄然滋生。
守るべきものに、ブレが出てはいやしないか。ルーク・サリバンという男の存在がオレの中で大きく育ち、その他に対する警戒が疎かになってはいないか。
该守护之物,岂容有半分动摇。卢克·萨利文这个男人的存在在我心中愈发膨胀,是否因此疏忽了对其他威胁的警惕。
ここ紅虎門のすべてに目を配って、穏やかな一日を見守る、そんな役目がオレにはあるはずだ。しかし今のオレはこんなにも、逞しい腕の温かさに溶かされ、甘やかされ、あちこちに跳ねる髪を撫でつけてやったり、腹が減ったと声を上げるソイツの為に鍋を振るったりしている。このままでは、駄目だ。こんな情けない体たらくを大哥たちに見られたら、きっと心底呆れられちまうだろう。そうでなくとも、怪しい輩たちの正体は不明なままだ。
本应统览红虎门全局,守护这平静日常——这才是我职责所在。可如今我却沉溺于那双强壮臂膀的温暖,任他抚平我四处翘起的乱发,为那个嚷着肚子饿的家伙颠勺煮饭。再这样下去可不行。若让大哥们看见这副没出息的模样,定会被狠狠嫌弃吧。更何况,那些可疑分子的身份至今仍未查明。
「ジェイミー、今日も仕事終わったらチャイナタウンに顔出すから。一緒に飯食おうぜ」
"「杰米,今天下班后我也去唐人街露个脸。一起吃顿饭吧」"
ちゅ、と頬に落とされた温かさに、微睡ながら目蓋を押し上げる。出勤の準備を終えたルークはニカッと白い歯を見せると、トントン、とランニングシューズの爪先を床に打ちつけた。これが毎日の決まりになってしまっていて、とても心落ち着く一方、だからと言ってこの男に甘えて良い理由にはならない。いくらコイツがオレの恋人であろうとも、紅虎門の問題はオレひとりが抱えるべきだ。
啾,脸颊上落下的温热触感让我在朦胧中撑开眼皮。已做好上班准备的卢克露出闪亮白牙笑了笑,咚咚,用跑鞋尖轻叩地板。这已成为每日固定仪式,虽令人心安,却也不能成为纵容这家伙的理由。即便他是我的恋人,红虎门的问题也该由我独自承担。
「……お前、ここ最近毎日来てんだろ。今日は来なくていい」
你这家伙,最近每天都来吧。今天不用来了」
「え。なんでだよ」
"「诶。为什么啊」"
「お前が来ると目立つんだよ」
"「你一来就太显眼了」"
「あ~? 分っかんねえかな、俺はその為に行ってんの。俺とお前が居りゃそれだけで抑止力になんだろ? 俺はお前と一緒に居れて楽しいし、紅虎門のメシはどれも全部旨いしそれに
"「啊~?不明白吗,我就是为了这个才去的啊。只要有我和你两个人在,本身就是一种威慑力吧?我和你在一起很开心,红虎门的饭菜每道都超好吃,而且"――
——」
ツラツラと喋るその喉元に、トンと指を突き立てる。ルークは目を丸くし言葉を呑むと、なんだよ、と不機嫌を露わにこちらを睨み付けた。
对着他喋喋不休的喉头,轻轻戳了一指。卢克瞪圆眼睛咽下话语,不高兴地瞪过来:搞什么啊。
「その派手さが邪魔だって言ってんだよ。お前はイッペン黙ってろ」
"「你那花里胡哨的样子太碍眼了。给我闭嘴一边待着去」"
「……」
ズン、と重く不穏になる空気の中、ギラリと尖る瞳から目を逸らさず睨み続ける。カチ、カチ、カチ、と時を刻む秒針の音をいくらか聞いたところで、ヤツは黙って腰を上げた。ガシガシと頭を掻きながら、行ってくる、と背中越しに手を振る。
在骤然凝重的不安空气中,他始终直视着那双锐利如刀的眼睛。咔、咔、咔,听着秒针走了几响后,那家伙默默站起身。一边胡乱挠着头,背对着挥挥手说了句“走了”。
バタン、と扉が閉じ切って、オレはようやく息をつけた。アイツが、オレのことを心配してくれているのはよく分かっている。そして、セックスの第一歩を経て、触れ合う時間が確保できたことに、千切れんばかりに尾を振って喜んでいることも。それでも、オレはこの街に必要な存在だ。この街を守り抜かなきゃならねえ。耳をそばだて、夜を駆け、有用な情報を得る為には、ひとりで行動する方が理に適っている。
随着房门砰然关闭,我终于能喘口气了。我很清楚那家伙是在担心我。而且,在跨过亲密接触的第一步后,能确保彼此相处的时间,他高兴得几乎要摇断尾巴。即便如此,我仍是这座城镇不可或缺的存在。我必须守护好这里。竖起耳朵,穿梭夜色,为了获取有用情报,独自行动才更合乎情理。
アイツと居ると、自分が腑抜けになっているように思える。アイツに甘えて、その背に寄りかかってもいいんじゃないかと錯覚してしまう。これは、良くねえなあ。全くもって、良くない。フウーッ、と天井に向かって溜息をつく。ぐしゃり、と乱れたままの髪を掻き上げて、そしてまた深く息をついた。
和那家伙在一起时,总觉得自己变得没出息。甚至会错觉自己可以撒娇,倚靠在他背上也没关系。这样可不行啊。完全不行。呼——我仰头对着天花板长叹一声,胡乱抓了抓本就凌乱的头发,又深深吸了口气。
「ジェイミー、根詰めすぎだ。暫く休め」
"「杰米,你太拼命了。先休息会儿吧」"
玄関に向かうその途中、腕を握り潰さんばかりの馬鹿力に捕らわれ、ドンと壁へと背を叩きつけられた。目の前には隠し切れない怒りに毛を逆立てる男が立っていて、オレが首を縦に振らなければ、今すぐ力づくでベッドへ縫い付けるとでも言い出しかねない顔つきだ。
走向玄关的半途,被一股几乎要捏碎手腕的蛮力拽住,后背重重撞上墙壁。眼前站着个怒发冲冠的男人,那副表情仿佛在说,若我不点头答应,他立刻就要动粗将我钉死在床上。
「何でお前に口出しされなきゃなンねえんだよ。テメエは教え子の心配でもしてな」
"“老子的事轮得到你插嘴?管好你学生去吧。”"
一発触発の空気の中、一〇センチ上で怒りに燃える目を睨む。コイツに黙ってろと伝えたあの朝から、オレは自分に喝を入れ、紅虎門へ貼り付く日々を再開させた。その中で、有力な情報をいくつか得ることができた。やはりこの男が居ては駄目なんだと、日を重ねるごとにその確信は大きくなっていた。
在剑拔弩张的气氛里,我直视着十公分上方那双燃着怒火的眼眸。自从那天早晨让他闭嘴后,我便重新开始日日钉在红虎门。期间获得了若干重要情报——果然不能让这家伙继续待下去,这个念头随着时日推移愈发强烈。
ビキッ、と傷の走る額に青筋が走ったのを見逃さず、オレはすぐさま身を低くした。振り上げられた拳がぶつかるその前に分厚い足を払いのけ、バチンと派手な音を立て巨体を床へと投げ捨てる。リーチの有利差が、こんな狭い廊下じゃ逆転するって知ってたか? じゃあな、と言い捨て玄関へ向かう足が、がしり、と汗に湿る手に捕らえられた。
我敏锐捕捉到他青筋暴起的额头上闪过一道伤痕,立刻压低身形。在对方高举的拳头落下前,我扫开那双粗壮的腿,随着啪嚓的响亮声响将巨躯摔向地板。在这么狭窄的走廊里,攻击距离的优势可是会逆转的——知道吗?丢下句『再见』正要迈向玄关的脚踝,突然被汗湿的手掌死死钳住。
「行くな」
"「别走」"
「そろそろしつけえぞ」
"「烦不烦啊」"
「俺と居ろ」
"「跟我待着」"
「嫌だって言ったら?」
"「要是说不愿意呢?」"
「無理やりにでも、この部屋に閉じ込める」
"「就算用强,也要把你关在这个房间里」"
「ハハッ! そんな監禁趣味があったのかよ? とんだ変態野郎だったんだなぁ」
"「哈哈!原来你有这种监禁癖好啊?真是个不得了的变态家伙呢」"
掴む手を蹴るように弾いて、オレは順当に玄関のドアノブへと手を掛けた。
我踢开试图抓住我的手,顺势将手搭在了玄关的门把上。
「ルーク。世話になったな」
"「卢克。承蒙关照了」"
「……あ? ッ待てよ!」
啊?等等!」
「お前との生活、それなりに楽しかったぜ。でもやっぱ、オレはあの街から離れらんねえ。お前との日々を通して、一番に優先すべきはオレの街だって、よく分かったぜ」
"「和你一起生活,还算挺开心的。但我果然还是离不开那座城市。通过和你共度的日子,我彻底明白了最该优先考虑的是我的城市」"
「待てっつってんだろ、!!」
"「不是叫你等等了吗!!」"
「達者でな」
"「保重啊」"
ニッ、と笑顔をしっかりと作って、オレは玄関を出た。そのままエレベーターで降りる、かのように見せかけ屋上へと出る。トットットッ、と連なるビルの上を渡って、一歩一歩あの部屋から、あの男から離れるごとに、胸の内が抜け落ちてスカスカになっていくのを感じた。立ち止まったその場所からは滞りなく回りゆく、いつものメトロシティが一望できる。ストームシーズンも終盤を迎え、朝晩も冷え込むようになったこの季節、カラリと晴れ渡った秋空は、どこか希薄に思えるほどに、遠い。
我硬是挤出一个“嘿嘿”的笑容,走出玄关。假装要乘电梯下楼,实则拐向了天台。哒哒哒地踩着连排楼顶前进,每远离那个房间、那个男人一步,就感觉胸腔里的东西不断流失,变得空空荡荡。驻足之处,运转如常的都市全景尽收眼底。风暴季已近尾声,早晚开始转凉的时节,万里无云的秋日晴空显得格外稀薄而遥远。
オレは今日生まれて初めて、別れを告げる側になった。置いていかれるばかりのオレは、ずっとずっと、悲しいのはオレひとりなのだと思っていた。しかしどうやらそれは、オレの思い違いだったらしい。勢いのまま吐き捨てた己の言葉が、今になって胸を貫きズブズブと傷を広げていく。
今天是我有生以来第一次成为告别的一方。总被抛下的我,一直一直以为悲伤的只有自己。但看来,那似乎是我的误解。冲动之下脱口而出的话语,此刻却贯穿胸膛,将伤口撕扯得愈发深重。
寂しい。頭がぎゅうぎゅうと締め付けられて、内臓は岩のように重くなり、巡る血液は冷え切って、鼻の奥がツンと痛む。ヒュウヒュウと天高く吹く風を感じながら、オレはその場にしゃがみ込んだ。
好寂寞。脑袋被紧紧箍住,内脏像岩石般沉重,循环的血液彻底冰冷,鼻尖阵阵刺痛。感受着呼啸掠过高天的风,我蹲坐在原地。
ルーク。お前に会わなければ、こんな気持ちにならなかったのにな。恋だなんて厄介な気持ちを知らぬまま、憧れの存在であり続けたらよかったのにな。お前を好きになんかならなきゃ良かった。お前になんか、出会わなけりゃ良かった。この気持ちの捨て方をまだ、オレは知らない。だからこの先の人生も、ずっと胸に抱き続けるしかないんだろ。凍り付く血を吐くような痛みと共に、オレはこの先も生きていく。
卢克。如果没遇见你,就不会有这种心情了吧。要是永远不知道恋爱这种麻烦的感情,一直保持着憧憬的姿态就好了。要是不曾喜欢上你就好了。要是没遇见你就好了。我还不知道该如何舍弃这份心情。所以余生也只能永远怀抱着它活下去吧。带着仿佛要呕出冻结血液般的痛楚,我将继续活下去。
俯いた先のコンクリートの床をいくらか濡らして、よし、と顔を上げ頬を叩いた。一番に考えなきゃならないのはオレの街のことだが、その為には拠点の確保が必要だ。前に住んでた部屋は引き払っちまったし、私物の多くもアイツとの部屋に置き放したままだ。今の持ち物と言えば、ポケットに突っ込んだままの財布と、あの部屋の鍵だけ。中華街のヤツらに声を掛けりゃ暫くは生きていけるだろうが、守るべき住人たちに助けられているんじゃあ、あまりにも体裁が悪すぎる。
低头时混凝土地面已被泪水打湿了一片,我拍拍脸颊振作起来。首要考虑的是守护我的街区,为此必须确保据点安全。之前租住的房子早已退掉,大部分私人物品还散落在和那家伙同住的房间里。现在随身物品只有塞在口袋里的钱包和那间房的钥匙。若向唐人街那帮家伙求助或许能暂时维生,但若被本该保护的居民们接济,实在有失体面。
どうすっかなあ。まるで家出少年のような寄る辺ない心地のまま、ビルの天辺から周辺を見回す。この感じ、いやに懐かしい。悪さばかりしてたガキの頃を思い出す。西の方角には赤色の門がドンと構え、オレの帰りを待っている。
该怎么办呢。怀着无家可归少年般彷徨的心情,我从大厦顶层环视四周。这种莫名熟悉的感受,令我想起总在闯祸的孩提时代。西方矗立着朱红色门楼,正静候我的归来。
こりゃもっかい部屋借りるしかねえな、前のトコまだ空いてっかなあ。腫れぼったい目蓋のまま深呼吸をしていると、目の前に一筋のつむじ風が舞い上がった。高く回転する風の塊はあっという間に大きくなり、ズバッ、と層を切り裂くと共に陽気な笑顔が顔を出す。
看来只能重新租房了,不知原先那间还空着吗。我顶着浮肿的眼皮深呼吸时,一道小旋风突然在眼前腾起。高速旋转的风团骤然扩大,唰地劈开云层,露出张明媚笑脸。
「あれ! ジェイミーじゃん! こんな所でどうしたの?」
"「哎呀!这不是杰米嘛!你怎么会在这儿?」"
「ようラシード。ちょっと黄昏てた」
"「哟,拉希德。我有点黄昏情绪」"
名も知らぬビルの屋上でしゃがみ込むオレに並び、ラシードはどっかりと腰を下ろした。久々にメトロシティに来たよ、と笑うその毒気のない顔を見ていると、ほんの少しだけ気持ちが紛れた。元恋人の友人は、オレの友人って言っていいよな。くるくると放たれる軽やかな言葉に相槌を打って、せかせかと動き回る人や車の動きを見下ろした。
在无名大厦的屋顶蹲着的我身旁,拉希德一屁股坐了下来。他笑着说好久没来地铁城了,看着那张毫无恶意的脸,我的心情稍微分散了些。前恋人的朋友,应该也能算是我的朋友吧。我应和着他轻快的话语,俯瞰着下面匆匆忙忙走动的人群和车辆。
「ラシードは暫く滞在すんのか?」
"「拉希德要住上一阵子吗?」"
「うん、そのつもり。茶色いビル見える? あのホテルに部屋取ってるんだ」
"「嗯,计划是这样。看见那栋棕色大楼没?我在那家酒店订了房间」"
「へえ」
"「嘿」"
ホテル、か。紅虎門の中で宿を探すつもりだったが、あまりにべったりだと、探しに来たアイツと顔を合わせかねない。この辺りで適当な宿を探すのも、いい案かもしれない。
酒店吗。原本打算在红虎门内找住处,但若太过显眼,难免会撞上前来搜寻的家伙。在这附近随便找个落脚处,或许也是个不错的主意。
「ジェイミーさ、顔色悪いけど
"「杰米啊,你脸色很差"……大丈夫?」
没事吧?」
「ん、そう見えるか?」
"“嗯,看起来是这样吗?”"
「かなりね。何かあった? オレでよければ話聞かせてよ」
"“相当明显呢。发生什么了吗?如果不介意的话,可以跟我说说。”"
つい先ほどとは打って変わって、ゆるりとした風を纏うその男に、ああ、と思う。良いヤツだ。粗方目途はつけているだろうに、コイツはただただ黙ってオレの言葉を待ってくれている。
与方才判若两人,此刻周身萦绕着舒缓气息的男子让我恍然。真是个好人啊。明明心里大致有数了,这家伙却只是默默等着我开口。
「……帰る家、なくなっちまってさぁ。今日は何処で寝ようかなー、なぁんて考えてた」
已经无家可归了啊。今天该睡哪儿呢——正这么想着呢」
そう言うと、ラシードは厚い唇をムニッと突き出して、バチバチッと数回瞬きを繰り返した。そして放り出していた脚を引き寄せ座り直すと、人好きする笑みをニッカリとこちらへ向けた。
说完,拉希德撅起厚嘴唇,吧嗒吧嗒眨了好几下眼睛。接着把伸开的腿收回来重新坐好,朝这边露出讨人喜欢的笑容。
「それじゃあ、オレのトコ来なよ。実は最上階貸し切りにしててさ、部屋が有り余ってて勿体ないんだよね~」
"「那不如来我这儿吧。其实我包下了顶层,房间多得浪费,感觉好可惜啊~」"
「ははっ、なんだそりゃ。王子サマはそんな贅沢な遊びすんのかよ」
"「哈哈,搞什么啊。王子殿下还玩这种奢侈把戏吗」"
「まあね~! そんな感じだから、ジェイミーは一旦部屋で休んでいきなよ。いつも頑張ってるんだからさ、ちょっとばかし休んでも罰は当たんないよ」
"「算是吧~!所以杰米你先在房间里休息会儿。平时那么努力,稍微偷个懒也不会遭报应的啦」"
その木漏れ日のような優しい笑顔に、フッと胸が軽くなる。
那如林间阳光般温柔的笑容,让胸口忽地一轻。
「……確かに、この時間帯は大姐が守ってくれてるしな。夕方まで休んでから動き始めるか」
确实,这个时间段有大姐头守着。先休息到傍晚再开始行动吧」
「そうしなよ。フロントには話通しておくから、ゆっくり休んで」
"「就这么办吧。前台那边我会打好招呼,你好好休息」"
それじゃ! と風を巻き上げ、フワリと浮かび上がる王子サマを見送る。傷心した今日ばかりは、彼の好意に甘えることに決めた。
「那再见啦!」目送卷起轻风、翩然浮空的王子殿下。唯独今天这颗受伤的心,我决定接受他的好意。
踏み入れたホールは広々としていて、磨き上げられた大理石の床は、高く吊り上げられたシャンデリアの光を明々と反射している。大振りの花瓶に見事に活けられた花々が香る先へと進み、フロントに自分の名を告げた。
踏入的大厅宽敞开阔,打磨光洁的大理石地面将高悬枝形吊灯的光芒映照得通明透亮。循着插在大号花瓶中那些娇艳花朵散发的芬芳前行,向前台报上了自己的姓名。
案内された部屋はラシードの言う通り、最上階の見晴らしのいい部屋だった。スイートルームだろうか、品のいい調度品で纏められた部屋は、何処までも続くかのように広く感じる。持て余すしかない部屋の真ん中にポツンと佇んで、テーブルに据えられていた瑞々しいマスカットを何粒か摘まんだ。
被引领进入的房间正如拉希德所说,是顶层视野极佳的一间。或许是套房吧,以典雅家具布置的空间,让人感觉宽敞得仿佛没有尽头。我孤零零站在这个过于空旷的房间中央,从桌上摘了几颗新鲜的马斯卡特葡萄。
大きな窓から射し込む陽射しもそのままに、ゴロリ、とベッドへと横たわる。肌触りの良いシーツからは仄かなフレグランスが漂い、両手足を伸ばしてもまだ余りあるほどに広い。広いな。頭の中を、空っぽにして。無にして。無を念じて、目を閉じる。全身でこの部屋の美しさや快適さを堪能して、その先につい思い浮かべてしまう姿形を、全身全霊で遠く彼方へと押しやる。寂しくなんかない、大丈夫だ。オレはひとりで、やっていける。
任由从大窗户倾泻而入的阳光洒落,我咕咚一声躺倒在床上。触感舒适的床单飘来淡淡香气,即使四肢舒展也仍有富余空间。真宽敞啊。将脑海清空。化为虚无。默念着无,闭上眼睛。用全身心享受这个房间的华美舒适,同时用全部意志力将随之浮现的那个身影推向遥远彼岸。才不寂寞呢,没问题的。我一个人也能好好过下去。
ゴロゴロゴロ。腹の底へと響く轟きを聞いて、フと意識が浮上した。気付かぬ間に寝入ってしまったらしい、見渡した部屋は薄っすらと暗くなっていた。開いたままのカーテンから覗く空には、先ほどの快晴とは打って変わって、分厚い雲がかかっている。雨が、降るのだろう。緩んだ髪を編み直しながら、夕暮れを遮られた灰色の空を見る。この華やかな室内が夢ならば、外の景色こそが現実だ。暗雲立ち込める風景に胸のざわつきを覚えて、オレは急ぎ足でホテルの部屋を後にした。
咕噜咕噜。听见腹中传来的轰鸣声,我猛然清醒过来。似乎不知不觉睡着了,环顾四周房间已微微转暗。敞开的窗帘外,先前晴朗的天空已被厚重云层取代。快要下雨了吧。我一边重新编好松散的头发,一边望着被暮色遮蔽的灰暗天空。如果说这华丽的室内是梦境,那么外面的景色才是现实。面对阴云密布的风景,胸口涌起阵阵躁动,我快步离开了酒店房间。
ポツ、ポツ、と地面を叩き始めた雨粒は瞬く間に大きくなり、闇を隙間なく塗り潰すように雨脚が強まっていく。フロントで借りた傘を開いて、中華街に並ぶ店のひとつひとつを覗き込んでいく。中は大雨を見越して早々に店じまいをしているか、長雨を物ともしない宴が盛り上がっているかのどちらかだった。嫌な影はどこにもない。表通りは、いつもと変わりなく温かなランタンに照らされている。
起初零星敲打地面的雨点转眼间变大,雨势渐强,仿佛要将黑暗彻底吞噬。撑开在前台借来的伞,逐一窥视中华街两侧的店铺。里面要么是因预料到大雨早早打烊,要么正举行着不惧连绵阴雨的喧闹宴席。令人不安的影子无处可寻。主街依旧被温暖的灯笼照亮,与平日并无二致。
突き当りを曲がり、路幅が狭くなっていくその先。ワントーン暗さを増す路地裏は、傘を差したままでは通れないほど狭い。びしょ濡れの傘を近くの飲み屋に預けて、雨の降りしきる細道へと踏み出した。
拐过尽头转角,前方巷道逐渐收窄。色调愈发阴郁的后巷狭窄得撑伞难行。将湿透的雨伞寄放在附近酒馆后,我迈入了烟雨迷蒙的狭径。
左右を壁に囲まれ、砂利を打つ雨音が反響している。ザリ、ザリ、と踏み締め進む先で、先の十字路を小さな影が横切った。
两侧高墙夹道,雨打砂砾之声在巷道间回荡。沙沙踩着碎石前进时,前方十字路口有个矮小身影倏然掠过。――
——子ども? 駆け足で追いかけ覗き込んだその場所には、使われなくなって随分と経つ古い倉庫があった。放置されて一〇年以上は経つのだろう、ぽっかりと空いた空間に、風を受け回転する換気扇がキイ、キイ、と軋んだ音を響かせている。
孩子?快步追赶窥视的那个地方,有一座废弃已久的旧仓库。被遗弃超过十年了吧,在空荡荡的空间里,迎风旋转的排气扇发出吱呀、吱呀的刺耳声响。
静かだ。だがこの空間内には、複数の気配が確かに紛れ込んでいる。崩れた壁の向こうにふたり、薄く開いたドア越しに三人、階段を上った先にも数人。そのどれもが背が低い、背丈はオレの胸元くらいだろうか。口を開いたままハアハアと繰り返すその息遣いを隠そうとしない彼らは、闘う意思など僅かにも感じられぬまま、真っ直ぐとオレを見定め闇の中のかくれんぼを続けている。頭上で、ケホッと咳き込む声が聞こえた。高くか細い、小さなその音。やはり、子どもか。それもひとりふたりじゃない、ここに潜むすべての気配が、小さくか弱い命たちだ。
四周静得出奇。但在这片空间里,确实混杂着多道气息。坍塌的墙壁后方有两人,虚掩的门扉那头有三人,楼梯上方还潜伏着数人。他们全都身材矮小,个头大概只到我胸口位置。那些张着嘴不断发出哈啊哈啊喘息声的家伙,丝毫没有隐藏动静的意图,在毫无战意的情况下,直勾勾地凝视着我继续这场黑暗中的捉迷藏。头顶传来一声轻咳,高亢而微弱,稚嫩的声响。果然是小孩子吗?而且不止一两个,藏匿于此的所有气息,都是些脆弱的小生命。
ハッ、と息を呑んだその瞬間、背後にヌルリと湿った殺意を感じた。ジメジメと重く、周囲の空気をどんよりと冷やすような、ぬかるみの中で目を光らせほくそ笑む存在。ゾッと鳥肌を立て振り向くより先に、ガラ空きだったうなじを、トン、と鋭い爪の先で突かれた。
我倒抽凉气的刹那,背后黏腻地滑过一道潮湿的杀意。那存在阴郁沉重,让周遭空气都变得浑浊冰冷,仿佛在泥沼中眯眼窃笑。还没等我因寒毛倒竖而回头,暴露无遗的后颈就被——咚,尖锐的爪尖轻轻戳中。
「雨の日はお嫌いじゃないんデスか? 駄目ですよう、勝手に覗いちゃ。
"「您莫非不讨厌下雨天吗?不行哟,擅自偷看可不行呢。"——目が潰れちゃっても、知りませんよ?」
眼睛瞎了我可不管哦?
視界を塞いでの鍛錬は、もちろん経験済みだ。視覚を遮ることで聴覚や嗅覚が研ぎ澄まされ、相手が繰り出す技の先を読むことだって可能になる。とは言え、日頃からそんな闘い方をしているワケでは決してない。視覚を奪われることがこんなにも苦痛なのだと、オレは今文字通り痛感している。
遮蔽视野的修炼,我当然经历过。通过阻断视觉,听觉和嗅觉会变得敏锐,甚至能预判对手出招的动向。但即便如此,我平时也绝非采用这种战斗方式。视觉被剥夺竟是如此痛苦,此刻我正字面意义上地痛彻心扉。
「ま~だ動くんデスかぁ? とは言え、その様子だとほとんど見えてないみたいですねぇ」
"「还~能动的吗?不过看那样子,似乎几乎看不见了呢」"
「ハッ! ちょっくら見えなくたって居場所は丸わかりだぜ、お喋りしちまっていいのかよッ!!」
"「哈!就算暂时看不见,位置可是一清二楚啊,还有闲工夫聊天吗!!」"
目蓋はしっかりと上げているはず、けれど月明かりもない大雨の下、視界の狭まる毒を受けてしまっては、地面に落ちるヤツの影すら捉えられない。蛇そのもののようなニョロニョロと動き回る気配に集中する為に、ガブガブと薬湯を呷って頭を振るう。クソッ、厄介だ。ぼうっ、と冷たく灯るように立つ気配に向かって、腰を落として蹴りを放つ。
明明应该睁大了眼睛,但在没有月光的倾盆大雨下,中了使视野变窄的毒后,连落在地面上的家伙的影子都捕捉不到。为了集中注意力于那如蛇般蜿蜒游走的气息,咕咚咕咚灌下药汤甩了甩头。可恶,真麻烦。朝着那朦胧、如冰冷灯火般站立的气息,压低身子踢出一脚。
赤い目を持つ毒蛇のような女は、自らを阿鬼と名乗った。この女が何を考えているのか全くもって不明だが、廃倉庫に子どもたちを集め、良からぬことを企てているのは確かだ。オレたちの闘いを興味深く見守る存在たちから、コソコソ、と漏れ聞こえてくる内緒話はどれもが中国語だ。オレの知る限り、この街で失踪した未成年は居ないはず。ならばこの子らは、別の場所から連れてこられたということだろう。
那个有着毒蛇般赤红眼眸的女人自称阿鬼。虽然完全猜不透她在盘算什么,但将孩子们聚集在废弃仓库里谋划坏事是确凿无疑的。从那些饶有兴致旁观我们战斗的存在们那里,窸窸窣窣漏出的私语全是中文。据我所知,这座城镇应该没有未成年失踪案件。那么这些孩子,恐怕是从别处被带来的吧。
「アメリカ中のチャイナタウンで子どもたちが消えてるってのは
"「全美唐人街都有儿童失踪的传闻——"……アンタの仕業か?」
是你干的吗?」
「にしし死死し、よく分かりましたね。どなたに聞いたんですかぁ?」
"「嘻嘻嘻死吧死吧,您倒是很明白嘛。是从哪位那里听说的呀?」"
「そりゃ内緒だな」
"「那可是秘密啊」"
なるほど、やっぱりだ。国内で頻発している子どもの神隠し。そこにひとつの共通点があると掴めたのは、つい最近だった。神隠しが起こるのは決まってチャイナタウンで、そのいずれでも日常的に中国語が使われていた。中華系の子どもを集めなければならない理由があるのだろう、そこまでは掴めていたのだが
原来如此,果然是这样。国内频发的儿童神隐事件。直到最近才掌握到其中存在一个共同点:神隐发生的地点必定是唐人街,而每个案发地日常都使用中文。想必有必须聚集华裔孩子的理由吧,目前能确定的线索仅止于此――
——阿鬼、と名乗るこの女の仕業と分かり、ようやく点と点が繋がった。確実に言葉が通じる子どもたちを攫い、何やら仕事をさせる気だったんだ。
当得知是自称阿鬼的这个女人所为时,零散的线索终于串联起来。她专挑能正常沟通的孩童下手,显然是想让他们替自己完成某项工作。
「この子たちをどうする気だ?」
"“你打算怎么处置这些孩子?”"
「さーあ? 阿鬼は指示通り動いてるだけですから。お仕事をちゃあんとやり遂げて、先生にいっぱいいっぱい褒めてもらうんデス!」
"「哎呀?阿鬼只是按指示行动而已啦。好好完成工作,让老师狠狠夸奖一番呢!」"
不気味に笑うその声へと拳を突き出すも、ヌルリと避けられズイと白い顔が近付いた。顎の下に添えられたゾッとするような冷たさに動きが止まり、グッ、と固唾を吞む。フラフラと揺れる足元から力が抜けていき、ガリリ、と喉元を鋭い爪が引っ掻いた。
朝那瘆人笑声挥出的拳头被滑溜溜躲开,惨白的脸倏地逼近。下颌处传来令人毛骨悚然的寒意,动作顿时凝固,咕咚咽下一口唾沫。虚浮摇晃的双腿逐渐脱力,喀啦——锐爪划过喉头。
「なんでも、アナタには死なれちゃ困るんですってえ。阿鬼は殺しちゃう方が早いと思うんですけど、この街一体を動かすには、トラブルバスター? の存在が必要らしいんデス。アナタがここで育んだ、人徳、信頼、交友関係、その他諸々。それらを阿鬼と先生の手で、丁寧に摘み取らせてもらいますねえ」
"「据说呀,您要是死了会很麻烦呢。阿鬼觉得直接杀掉比较省事,不过要操纵整座城市的话,好像需要麻烦终结者?的存在呢。您在这里培育的人望、信赖、人际关系,还有杂七杂八的东西——就由阿鬼和老师来一朵朵摘干净吧」"
ぷつっ、と肌が裂けた瞬間、ドロリと悪しきものが体内へ入り込んできた。ドッ、と増した発汗に反して、身体は氷水に沈められたかのように冷えていき、手足は岩へと変化したかのように動かなくなった。ドシャリ、と床に膝を打ち、喉元まで込み上げる吐き気に背を丸める。ドッドッドッ、と速まる鼓動が膨らみ、キーン、と金属音が耳を貫いていく。
噗嗤——皮肤绽裂的刹那,黏稠的邪恶之物渗入体内。咚!汗液反常地大量涌出,身体却如浸冰水般急速冷却,四肢像化作岩石般僵直。啪嗒!膝盖重重砸向地面,翻涌至喉头的恶心感迫使脊背蜷曲。咚咚咚——越来越快的心跳声不断膨胀,金属锐鸣声贯穿耳膜。
「その毒、最初はちょーっとだけキツいデスよねぇ。でも大丈夫、すぐにヨくなりますから。きっと、色んなことお喋りしたくなりますよう」
"「那种毒呢,一开始会有点点难受的说~。不过没关系,很快就会好起来的。肯定,会想和你聊各种各样的事情呢」"
明暗をなんとか見極められる程度だった視界が、時間をかけじわじわと色を取り戻していく。と同時に意識が溶けて、頭の中が霧がかるかのように思考が鈍っていった。腹の内側から気が沸き上がる薬湯とは全く別物の、すべてが空っぽになるような、無気力な酔い。五感すべてがぼんやりとボヤけて、まるで眠気のない睡魔に憑りつかれてしまったかのようだ。グラグラ、ガクガクと揺れる、輪郭のぼやけた世界。身を起こすのもやっとなオレを前にして、阿鬼はパチンと手を叩き嬉し気に声を上げた。
勉强能分辨明暗的视野,随着时间推移逐渐恢复了色彩。与此同时意识开始溶解,头脑如同蒙上雾气般思考变得迟钝。与从腹腔内沸腾而上的药汤截然不同,这是一种令人彻底掏空般的、无力的醉意。五感全都朦胧模糊,仿佛被没有睡意的睡魔附身一般。摇摇晃晃、颠簸起伏的,轮廓模糊的世界。当我勉强撑起身子时,阿鬼啪地拍手发出欢快的声音。
「体重計算もバッチリ、さっすが阿鬼のお仕事デス! さて、沢山質問しないといけないんですよねえ。阿鬼は別にアナタと話したくないんデスけど」
"「体重计算也完美搞定,不愧是阿鬼的工作呢!那么,接下来得问好多问题才行呢。虽然阿鬼其实并不想和你说话啦」"
ガサガサと開いた紙には何やら暗号がズラリと書き込まれている。そのひとつひとつに意味がありそうだが、この不確かな頭では何ひとつ理解できない。キョロキョロ、と唯一自由に動く瞳を動かして、物陰に身を隠す子どもたちの居場所を確認する。
沙沙作响展开的纸上密密麻麻写满了像是密码的东西。每一个符号似乎都有其含义,但以我这混沌的头脑根本无法理解其中任何一条。滴溜溜地转动唯一能自由活动的眼珠,确认那些躲在杂物阴影里的孩子们的位置。
上階から身を乗り出している子を含めて、全部で一〇人。金属製の扉はガレキで封鎖されていて、オレの背後で口を開けている扉が唯一の出入り口だ。この隙に逃げろと合図を送ろうとも、背を向け走り出したこの子たちに、この女が何を仕出かすか分かったもんじゃない。グッ、と力を込めなんとか顔を上げる。こちらを見下ろす白傘蛇女を、オレは力の限り睨み付けた。
包括从上层探出身子的孩子在内,总共十人。金属门被瓦砾封死,我背后敞开的门扉是唯一的出入口。本想趁此机会示意他们快逃,可背对我跑开的这群孩子根本不知道这女人会做出什么事来。我咬紧牙关,拼命抬起脸,用尽全力瞪视着居高临下的白伞蛇女。
「子どもたちが気になりますかぁ? ダメですよ、これからも色々と使うんデスから」
"「很在意那些孩子吗?不行哦,今后还要派上各种用场呢」"
「あの子たちをどうする気だ」
"「你打算把那些孩子怎么样」"
「気付いてませんでしたぁ? もう既に色々使ってるんデスよぉ。小さいのって意外と使い勝手がいいんです、大人と違って経済的だし」
"「没注意到吗?早就已经物尽其用了哦。小家伙们意外地好用呢,和大人不同,很经济实惠」"
「……経済的
经济的……?」
「ええ。なんたって、大人に使う毒の半分以下で済みますし、子どもがウロチョロしてても警戒されないでしょう。アナタにも同じように、この街を住みよくする為に動いてもらいますねえ。だ~い好きな先生の為に!」
"“没错。毕竟只需要不到大人用量一半的毒药就能搞定,而且小孩子四处乱跑也不会引起怀疑。为了让你也同样行动,把这座城市变得更宜居呢。为了最~喜欢的老师!”"
身体をくねらせ激しく笑うその姿を前に、床が抜け落ちるかのような恐怖に身がすくむ。コイツは何を言っている? 年端も行かない子どもたちに、毒を使って何かさせているのか?
面对那个扭动身体狂笑的身影,我因地板仿佛要塌陷般的恐惧而浑身僵硬。这家伙在说什么?难道要对年幼的孩子们下毒并利用他们做什么吗?
「ッ、あの子たちを解放しろ!! その分オレが働いてやる。目的はなんだ!!」
"「喂、放了那些孩子!!我来替他们干活。你们到底有什么目的!!」"
地面に爪を立てながら大きく叫ぶも、冷え切った視線でオレを見下ろす阿鬼は、当然と言わんばかりに言い捨てる。
我在地面抓出爪痕大声嘶吼,而阿鬼用冰冷的目光俯视着我,仿佛理所当然般抛下话语。
「どっちがどう身代わりになる、なんて話はしてないデス。阿鬼たちはどっちも使いますから。にしても、思ったより意識がはっきりしてますね。う~ん、薬湯の効果でしょうか。もう少し、毒足しちゃいますか」
"「可没说过谁要当谁的替身呢。阿鬼你们两边都要用啦。不过话说回来,意识比预想的清醒嘛。嗯~是药浴的效果吗?要不要再加点毒呢」"
薄っぺらく笑う女の手が、真っ直ぐとこちらへ伸びてくる。寒気に似た恐怖に、カチカチカチッ、と歯がぶつかり合う。動け、動け、動け、動けッ! 今動かなくてどうすんだよ!! 鉛のように重い全身に鞭打ち力を込めようと、ブルブルと四肢が震えるばかりで終わってしまう。もしまた同じ毒が打ち込まれたら、オレはきっと、オレじゃいられなくなる。何もかも忘れ、肉体から魂が離れてしまう。ギリギリと唇を噛み締め、血の味を感じた瞬間。
女人浮着浅薄笑意的手,笔直朝这边伸来。在寒意般的恐惧中,牙齿咔嗒咔嗒地相互碰撞。动啊、动啊、动啊、动啊!现在不动起来怎么行!! 试图鞭策铅块般沉重的全身发力,却只是四肢不住颤抖着作罢。要是再被注入同样的毒药,我肯定、就不再是我了。会遗忘一切,灵魂从肉体中抽离。狠狠咬紧嘴唇的刹那,尝到了血的味道。
――
——バァァンッ、と派手な爆発音と共に、天井にかかるガラスが割れバラバラと地上に降り注いだ。キャアーッ! と子どもたちが叫び声を上げ指差すその先には、大きな竜巻が渦巻いている。高度を下げた逆巻く風が切り開かれ、中から姿を現したのは。
伴随着“轰”的夸张爆炸声,悬挂在天花板上的玻璃碎裂,哗啦啦倾泻到地面。孩子们尖叫着“呀啊——!”所指的方向,巨大的龙卷正在盘旋。降低高度的逆卷之风被劈开,从中现出身形的是——
「ッ、ラシード!!」
"「啧、拉希德!!」"
「正義の味方、参上!
"「正义的伙伴,登场!"……なんてね」
才怪呢」
キュ、と靴底を鳴らしポーズを取ったラシードは、オレに向かいバチンとウインクを寄越した。雨に濡れ、毒を盛られ、冷や汗に塗れたオレとの対比が可笑しく思えるほどの、眩いまでに輝くその高貴な姿。ラシードはオマケにニッコリと笑みを深めると、オレを背後に隠すように阿鬼へと向き直った。
拉希德鞋底一拧摆出姿势,朝我啪地抛了个媚眼。那高贵身影耀眼得几乎可笑——与被雨水淋透、遭人下毒、冷汗涔涔的我形成鲜明对比。他最后还加深了笑容,转身面向阿鬼,仿佛要将我护在身后。
「なるほど、キミが絡んでたんだ。この街はオレの友達が大事に守っててさ。悪いけど、このまま真っ直ぐお引き取り願えるかな?」
"“原来如此,是你从中作梗啊。这条街可是我朋友精心守护的地方。不好意思,能请你现在立刻掉头离开吗?”"
「あーあ、煩いのが増えちゃいましたね。これからそのお友達さんに協力してもらう手筈だったんデス。面倒なんで、このまま消えてもらえますぅ?」
"“哎呀呀,麻烦的家伙又增加了呢。本来接下来还打算请那位朋友协助的说。太麻烦了,能不能请你现在就消失呀?”"
スラリ、と両手を擡げ構える阿鬼を前に、ラシードはやれやれと首を振る。一触即発の空気が広い空間を満たし、ビリビリッと張りつめた緊張感に肌が張り裂けてしまいそうだ。
面对阿鬼飒然抬起双手摆出架势,拉希德无奈地摇了摇头。一触即发的紧张氛围弥漫在宽阔空间里,皮肤仿佛要被噼啪作响的紧绷感撕裂开来。
「ジェイミー、動けそう?」
"「杰米,能动吗?」"
コソリ、と振り返らずにラシードが問う。ぐっぐっ、と脚に力を込めてもやはりピクリともせず、自由に動くのは首から上に限定されていた。
拉希德头也不回地低声问道。即便双腿使劲到发出咯吱声,依然纹丝不动,能自由活动的只有脖子以上的部分。
「悪ィ、やっぱ駄目そうだ。オレは良いから、先にあの子たちを逃がしてやってくれ」
"「抱歉,看来还是不行。别管我了,先让那些孩子逃走吧」"
「う~~ん、今すぐは難しいなぁ。彼女の毒に巻き込まれたら厄介だ。オレの風で何とかしたいんだけど
"「嗯~~现在立刻行动有点困难呢。要是被她卷入毒素中就麻烦了。虽然我想用我的风属性想想办法……"……」
そう話すラシードに対し、阿鬼は足をひとつ踏み鳴らした。
面对如此说道的拉希德,阿鬼重重跺了一下脚。
「ゴソゴソ煩いですね。お喋りの時間は、お終いデスよ」
"「窸窸窣窣的真吵啊。闲聊时间到此为止了哟」"
ズァッ、と走り来る阿鬼に向かい、ラシードが滑るように駆け出した。高く舞い上がる砂漠の荒鷲に向かい、蛇は怒りのまま牙を剥き、鋭い毒の刃を飛ばす。阿鬼の猛攻に対しラシードは渦巻く風で牽制を続けているが、充分な殺意がこもっている分、傍目からでも阿鬼が優勢なのが分かる。
面对疾驰而来的阿鬼,拉希德如滑行般冲出。面对高翔的沙漠苍鹰,毒蛇在愤怒中露出獠牙,射出锐利的毒刃。面对阿鬼的猛攻,拉希德持续用盘旋的风进行牵制,但因饱含充分杀意,旁人也能看出阿鬼占据上风。
オレはどうする? どうしたらいい? あらゆる箇所に力を込めて、ガチガチに固まった身体を揺すり動かす。このままでは子どもたちだけじゃなく、ラシードも危ない。オレが何とかしなければ。オレが、オレが! ぐらり、と視界が斜めになり、そのままガチンッ、と頭を打ち付けた。微動だにしない身体を持て余し、チカチカと明滅する視界の中、悶えることもできずに倒れ込む。
我该怎么办?该怎么做?我将力量灌注到全身每个角落,摇晃着僵硬如铁的身体。再这样下去不仅孩子们,连拉希德也会有危险。必须由我来做些什么。我,我来!视野突然倾斜,随即咚地一声撞上了头。我徒劳地挣扎着无法动弹的身体,在明灭闪烁的视线中痛苦倒地。
己の無力さに視界が滲む。この街を守るんじゃなかったのか、助けを求める人々に手を差し伸べるんじゃなかったか、オレができることを全部やるんじゃなかったのかよ!! しかし今のオレの体たらくじゃあ、地面に齧りついたとてひとつとして前に進めやしない。空低く轟いていた雷雲が大きく息を吸い込んで、猛獣の咆哮と共に地面を打った。
视野因自己的无力而模糊。不是说要守护这条街的吗,不是要向求助的人们伸出援手的吗,不是要竭尽所能做到一切的吗!!可如今我这副狼狈模样,就算咬紧牙关贴着地面也寸步难行。低垂的雷云发出巨大轰鸣,如同猛兽咆哮般劈向大地。
ドオオーン、ゴロゴロゴロ
轰隆隆——……。ビカッ、ビカッ、と青白く瞬く稲妻がまた大粒の雨を呼んで、オレの心までも冷やしていく。
惨白的闪电'噼啪、噼啪'地闪烁,又招来豆大的雨点,连我的心也一并浇凉了。
「……ッルーク、」
卢克——
血を吐くように零れ出たのは、目の前で死闘を繰り広げる友の名ではなく、アイツの名前だった。何度も、何度も、しつこいほどにオレへと手を差し伸べ、その度に振りほどいてきた、大きな手の持ち主。そんな存在に、オレは今になって助けを乞うている。情けないよな。でも、思い浮かぶのはアイツしかいない。頼む、助けてくれ。この街を、あの子たちを、お前の友達を。オレのことはもう、もう、いいから。
从口中呕血般倾泻而出的,并非眼前殊死搏斗的挚友之名,而是那家伙的名字。一次又一次,执拗地向我伸出手,又屡屡被我甩开的,那双大手的主人。如今我竟在向这样的存在求救。真是没出息啊。但脑海中浮现的只有那家伙。求你了,救救他们。这条街道,那些孩子,你的朋友们。至于我...已经,已经无所谓了。
「――
——ジェイミー、逃げろッ!!」
杰米,快逃!!
頭を振り乱し叫んだラシードの声と共に、巨大な毒の塊がこの身体目掛け落ちてくる。無様に床に転がるオレは、ゆっくりと落ちてくるソレすら避けようがない。ああ、こりゃあもう、ダメだな。スッ、と冷えきった諦めと共に息を呑む。まあでも、ラシードがいてくれるから、誰にも知られず死ぬワケじゃねえ。お前はしっかりと逃げ延びて、オレのことは、おばあと大哥たちと、お袋にしっかりと伝えてくれ。
随着拉希德披头散发的喊叫声,巨大的毒液块朝这具躯体砸落。狼狈滚倒在地的我,连缓慢坠落的它都无法躲避。啊,这下真的完蛋了。伴着骤然冰冷的绝望感倒吸一口气。不过嘛,有拉希德在,至少不会死得无人知晓。你小子可得好好逃出去,把我的事...告诉奶奶、大哥他们...还有老妈。
瞳を閉じ切ったその瞬間、大きなエネルギーの塊が頭上に放出されるのを感じた。この廃倉庫内に雷が落ちたのかと錯覚するほどの素早さと、空気を震わせる熱量。弾き飛ばされた毒の塊は砕け散って、遠く床をビシャビシャッ、と叩いた。ポタッ、ポタッ、と水滴を落とす存在が、ザリッ、と音を立てガラスの散らばる床を踏みしめた。
在彻底闭眼的瞬间,感受到头顶释放出巨大的能量块。其速度之快令人错觉是雷电劈进了这座废弃仓库,热量震动着空气。被弹飞的毒块碎裂四散,啪嗒啪嗒地砸在远处的地面上。滴答、滴答,滴落水珠的存在者,沙沙地踩着散落玻璃的地板。
「ラシード。退け、ソイツは俺が相手する」
"「拉希德。退下,那家伙由我来对付」"
バチバチバチッ。鮮やかな火花が湿った空気の中弾け、地の底から響くような怒りの声が唸る。驚きに目を見開いている間に、泥水に塗れ冷え切ったこの身体が、熱い腕に掬い上げられた。あの目が、あの顔が、この視界の真ん中に映し出されている。びっしょりと濡れた飴色の髪から伝う滴が目蓋を濡らそうと、水色に輝く瞳は、真っ直ぐとオレを見詰めている。
噼啪噼啪。绚丽的火花在潮湿的空气中迸裂,仿佛从地底传来的愤怒咆哮震耳欲聋。在惊愕瞪大的双眼前,这具沾满泥水冰冷的身躯被炽热臂弯捞起。那双眼睛,那张脸,此刻正占据我视野中央。从湿透的琥珀色发梢滑落的水珠即将浸染我的眼睑,而那双泛着水色光芒的瞳孔,正直直凝视着我。
「悪ィな、遅くなっちまった。でも、俺が来たからにはもう安心だぜ。あとは俺の格好いいところ見て、ばっちりと惚れ直してくれよ」
"“抱歉啊,来得太迟了。不过既然我来了就放心吧。接下来就好好看着我的帅气表现,重新爱上我吧。”"
――
——ンなこと、言われなくたって。
这种事...就算不说我也知道。
壁へ凭れるように座らされ、するりと固い手がオレの頬を撫でた。ニッ、と慈愛のこもった笑みを浮かべたその顔は、阿鬼へと向き直った途端、苛烈な怒りの色へと染まった。全身の筋肉を膨らませ、力を込めた四肢の隅々まで、ビキビキビキッ、と太い血管が浮かび上がる。前のめりに拳を握り締めるその姿はまさに、今にも飛びかからんとする獣そのものだった。
被安置在墙边倚坐着,一只坚硬的手滑过我的脸颊。那张浮现出慈爱笑容的脸,转向阿鬼的瞬间便染上了暴烈的怒色。全身肌肉膨胀,充满力量的四肢各处,粗大血管毕剥毕剥地凸起。前倾紧握拳头的姿态,正是一头即将扑袭的野兽。
ビュウ、と重い風切音と共に繰り出された巨大な拳が、首を擡げ牙を剥く毒蛇へと向かう。そう言や、地へと舞い降りた雷の神様は、その手に掴んだ蛇を噛むって言い伝えがある。ドドドッ、と唸りを上げ繰り出された一撃が、阿鬼のにょろりと薄い身体を壁際まで吹っ飛ばす。再び身を立て鱗を逆立てる毒蛇を、宙を焦がす怒りの化身が、あの瞳で鋭く睨み付ける。ルークは煙を上げる拳を振り上げると、荒ぶるまま突き進んだ。
伴随着沉重的破风声,巨大的拳头朝着昂首吐信的毒蛇挥去。说起来,有传说称降临大地的雷神会用手中擒获的蛇来噬咬敌人。咚、咚、咚,咆哮着挥出的一击将阿鬼那细长柔软的身体狠狠砸向墙壁。当毒蛇再度竖起鳞片昂起身躯时,那具灼烧天空的愤怒化身正用锐利的目光从那双瞳孔中死死盯住它。路克扬起冒着烟的拳头,任凭狂暴驱使向前突进。
「ジェイミー、調子はどう?」
"“杰米,感觉怎么样?”"
ぐったりとソファに身を預け嘆息していると、ラシードがオレの隣りに腰を下ろした。琥珀を思わせる瞳が優しい光を湛え、下目蓋を持ち上げるようにニッコリとこちらを覗き込んでいる。黒いヒゲの先にまでたっぷりと満ちる気遣いに苦笑して、ありがとな、とその優しきヒーローの肩を叩いた。
正当我瘫在沙发上疲惫叹息时,拉希德在我身旁坐下。他那琥珀般的眼眸漾着温柔的光,像掀起下眼睑般笑眯眯地望过来。看着连黑色胡须末梢都浸满关怀的神情,我苦笑着拍了拍那位温柔英雄的肩膀说:谢啦。
「うん、顔色もすっかり良くなったね。ドクターの言ってた通り、毒の分解が随分と早いみたいだよ。それってやっぱり、薬湯の効果なのかねえ」
"“嗯,脸色完全好转了呢。正如医生所说,毒素分解似乎快了很多。这果然还是药浴的效果吧。”"
トントン、と指先で叩かれた瓢箪へと目を落とす。おばあ直伝の薬湯は気を充足させるだけでなく、新陳代謝も活発にしてくれる。化学物質だなんだの効果はよく知らないが、ただ単純にオレの身が丈夫なだけとも考えづらい。ここは素直に頷いて、おばあへの感謝をそっと胸の内で呟いた。
视线落向被指尖咚咚轻叩的葫芦。祖母亲传的药汤不仅能补足元气,还能促进新陈代谢。虽然不清楚具体是什么化学成分在起作用,但单纯归因于自己体质强健也未免牵强。此刻我选择老实点头,在心底轻声对祖母道了句感谢。
「あの子たちは?」
"“那些孩子们呢?”"
「うん、軽い中毒症状が出てる子もいるけど、命には別状ないって。治療したらすぐに元気になるよ。ジェイミーの言う通り、どの子もアメリカ中のチャイナタウン出身の子たちで、みんな捜索願が出されてたよ。行く先の見つからない子もいるかもしれない、ってことでこの階全部を借りてたんだけど、どうやら使わずに済むみたい」
"「嗯,虽然有些孩子出现了轻微中毒症状,但都没有生命危险。治疗后很快就能恢复健康。正如杰米所说,这些孩子都来自全美各地的唐人街,家里都报了失踪。考虑到可能有孩子找不到去处,我们租下了整层楼,不过现在看来似乎用不上了」"
「そうか、
"「这样啊,"……安心した」
我就放心了」
文字通り日頃から世界を飛び回っている王子サマの耳には、様々な噂話が飛び込んでくるようだ。中でも、今回の神隠し事件が阿鬼たちの組織に繋がるのではないかと睨み、ここメトロシティを訪れていたらしい。
据说这位终日周游世界的王子殿下,总能听到各种流言蜚语。尤其是这次的神隐事件,他怀疑与阿鬼他们的组织有关,所以才来到了这座大都会。
「っとまあ、話したいことは山ほどあるんだけど、疲れてるだろうからまた今度にするよ。部屋は自由に使ってくれていいから、ゆっくり身体を休めてね。それから、これ」
"「嘛,虽然想说的话堆积如山,但看你很累的样子还是改天吧。房间可以随意使用,好好休息吧。还有,这个」"
差し出されたのは、オレのモバイル端末だった。短時間の内に色んなことが起こり過ぎてすっかり忘れていたが、あの家を出た際、そのまま置き忘れていたらしい。
递过来的正是我的移动终端。短时间内发生了太多事让我完全忘记了,离开那栋房子时,似乎就这样把它落下了。
「何から何まで悪いな、次会う時に埋め合わせさせてくれ」
"「真是给你添了不少麻烦,下次见面时让我补偿你吧」"
「へへ、気にしないで。それより今度三人で配信しない? ファイトでもゲームでもいいからさ。最近リスナーから君たちについての質問がよく届くんだよ~。キミたちの配信が恋しくて堪らないんだって!」
"「嘿嘿,别在意。不如说下次我们三个一起直播怎么样?打拳击或者玩游戏都行。最近听众们经常发来关于你们的问题呢~都说超级想念你们的直播!」"
ポンポン、と優しく背を叩き立ち上がったラシードを見上げる。丘を駆ける風がすべての者の頬を撫でるように、彼は誰にだって優しい。でも、今の言葉にはそれ以上の心を感じた。オレとアイツの仲を誰よりも想い、理解を示してくれるラシード。そんな彼は、彼にしか立てない場所から、オレたちを見守ってくれている。
抬头望着轻拍自己后背站起身的拉希德。如同山丘上拂过所有人脸颊的风,他对谁都这般温柔。但方才的话语里,我感受到了更深的情谊。比任何人都挂念着我和那家伙的关系,并给予理解的拉希德。他正站在只有他能立足的位置,默默守护着我们。
「……考えとく」
考虑一下
「やったね~! オレも色々企画考えとくからさ、楽しみにしといて!」
"「太棒啦~!我也会策划各种活动的,你就好好期待吧!」"
それじゃ! と部屋を出ようとドアノブに手を掛ける、砂漠の国の王子サマを見やる。ラシードはくるりと振り向くと、悪戯っ子のようにニッコリと目を細めて言った。
那么!正要将手搭上门把手离开房间的沙漠国王子殿下映入眼帘。拉希德突然转过身来,像个顽皮孩子般眯起眼睛笑着说道。
「仲直り、ちゃんとするんだよ?」
"「要好好和好哦?」"
「……分かってるって」
我知道啦
バタン、とドアが閉じ切るのを見送って、久しぶりに手にした端末を立ち上げた。充電が残り僅かだと示すその画面に、いくつものメッセージの受信通知や着信履歴が浮かび上がる。ざっと目を通す限り、そのほとんどが、ルークからのものだった。
目送着门砰地一声彻底关上后,我启动了久违拿在手中的终端。电量所剩无几的屏幕上,浮现出多条消息接收通知和来电记录。粗略浏览之下,其中大部分都来自卢克。
怒りや混乱、そして哀しみ。次々と短い言葉が連なって、時間を経るごとにルークの本心が剥き出しになっていく。あーあー、端末忘れちまって悪かったな、まさか今になって見られるなんて思わないだろ。申し訳ないと思いながらも、愉快な心地でメッセージを目で追っていく。何度目かの着信履歴の後に、こんな一文が続いていた。
愤怒、困惑,还有悲伤。接连不断的简短词句串联起来,随着时间的流逝,卢克的真心逐渐暴露无遗。哎呀呀,忘记带终端真是抱歉,没想到现在会被看到吧。虽然心怀歉意,却仍以愉快的心情追看着这些消息。在数次来电记录之后,紧跟着这样一段文字。
『オレがお前を助けたいと思うのは、お前のことが大切だからだ』
『我想救你,是因为你对我很重要』
その文字列に手が止まり、オレはようやっとその言葉を真に理解できた。きっと、アイツもオレと同じ生き物なんだ。宝物を失うことを恐れている、誰よりも打たれ弱い、儚い生き物。それは、神様でも獣でもない、
手指悬停在那串字符上,我终于真正理解了那句话。想必那家伙和我是一样的生物。比谁都害怕失去珍宝、比谁都脆弱的、虚幻的生物。既非神明也非野兽,——人間だ。
是人类啊。
オレとアイツは全くもって違うのに、辿り着く場所はどうやっても同じになるらしい。大切なものはこの手で守り抜きたいんだと、地団駄を踏む子どものように主張を続けてる。負けず嫌い、って言えば聞こえはいいかもしれねえが、結局はガキのまんまってこと。自分の思い通りにコトを運びたくて、ぎいぎいと声を上げ喚きたてて手を掴む。そう、ガキなんだよ、オレたちは。ただただ、そんだけ。はあぁ、と全身から力が抜けて、髪が床につくのも気にせず項垂れる。
明明我和那家伙截然不同,最终抵达的场所却无论如何都会相同。像个跺脚耍赖的孩子般不断强调着,想用这双手守护到底。若说是争强好胜,听起来或许还算顺耳,但归根结底不过是小鬼的把戏。为了事事遂心而尖声叫嚷着抓住不放。没错,我们都是小鬼啊。仅此而已。哈啊——全身脱力地垂下头,连发梢蹭到地板也毫不在意。
ルークの親父さんは幼かったルークを逃がし、テロリストの自爆に巻き込まれ亡くなったと聞いた。その話をするヤツは噛みきれない肉のスジを噛み続けるような、釈然としないと言わんばかりの表情を浮かべていた。親父の行動の意味は分かる、分かるがしかし、納得はできない。そんな表情を浮かべるのはきっと、置いて行かれた立場の人間だけだ。その感覚は、痛いほどによく分かる。
听说卢克的父亲在年幼的卢克逃脱后,被卷入恐怖分子的自杀式袭击中丧生。讲述这件事的家伙脸上挂着一种难以释怀的表情,就像嚼着咬不断的肉筋般不甘心。我明白他父亲行为的意义,明白归明白,却无法接受。会露出那种表情的,肯定只有被留下的人。那种感受,我痛彻心扉地理解。
それと同時に、オレが彼の親父さんの立場だったら、とも考える。オレだってきっと、生意気で、可愛げもない、でも何よりも大切な命を最優先で守っただろう。それに並んで、周囲の人たちのことも。このひとつの身で守れるなら、なんて大層なことは思わずとも、足は自ずと動き出すはずだ。
与此同时,我也设身处地想过,若我是他父亲会如何。想必我也会优先保护那个傲慢不讨喜、却比什么都重要的生命吧。连带周遭的人们也是。若能以这副身躯守护他们,无需豪言壮语,双腿自然会行动起来。
守るべきものとして真っ先に挙げるべきこの街と、並んで思い描く姿がある。憧れから始まって、今確かに恋をする、あの四角くてでっかい立ち姿。オレは死の覚悟と共に、大切なソイツへ、すべてを託したいと思った。オレの背負うものを、手渡せれば、それでいい。そう、確かに思った。
作为首要守护对象的这座城市旁,还浮现着另一个身影。从憧憬开始,到如今真切恋慕着的,那个方正魁梧的轮廓。我怀着赴死的觉悟,想把一切都托付给重要的他。只要能亲手交付我背负的东西,便已足够。是的,我曾如此确信。
ルーク。声に出さずに呼ぶだけで、目頭が熱くなり、喉の奥が引き攣れる。ツゥン、と鼻の奥を刺す痛みは涙の気配を教えて、ぐしぐしと目蓋を摩った。すう、はあ、と息を整え窓の外を見やる。長く降り続いていた雨は小休止に入り、水滴に滲んだ夜景が不定形に輝いている。
卢克。仅是无声呼唤这个名字,眼眶就阵阵发热,喉头深处阵阵痉挛。酸楚的刺痛感从鼻腔窜上,催出泪意,我用力揉搓着眼皮。深呼吸平复情绪后望向窗外,连绵的雨势暂歇,浸在水滴里的夜景正闪烁着不规则的微光。
ブルルッ、と手の中に握っていた端末が震えた。残り僅かとなった充電は懸命に明かりを灯し、オレの元へと届いたメッセージを浮かび上がらせる。
掌心里的终端突然嗡嗡震动。所剩无几的电量拼命亮起微光,将送达我这里的消息映照出来。
『警察の事情聴取が終わった。今からそっち行くから』
『警方问讯结束了。现在过去找你』
ブルッ、と身体の芯から震えが走り、頬だけでなく顔中がぼうぼうと温度を上げていく。軽くシャワーを浴びて、揃えてもらった着替えに袖を通したとは言え、アイツを迎える準備は十分じゃない。現金なまでに高鳴り始めた胸を押さえて、長く深く息をつく。
浑身从骨髓深处打了个寒颤,不仅是脸颊,整张脸都火烧般发烫。虽说冲过澡换上了准备好的衣服,但迎接那家伙的准备还远远不够。我按住突然诚实狂跳的胸口,深深吸了口气。
ルークが来る。来てしまう。立ち尽くしていた窓際から、そっと足早に離れた。
卢克要来了。就要来了。我从伫立许久的窗边悄悄快步离开。
第四章
中敷きまでぐっしょりと濡れた靴で踏み出す度に、ギュポッギュポッ、と間の抜けた音が響く。掃除の行き届いた広い廊下に足跡を残しながら、俺はその真ん中を真っ直ぐと歩いた。巨大なメトロシティの中でも一番にデカいこのホテルの最上階を貸し切るなんて、ラシードのヤツ、俺が思ってた以上のお坊ちゃんだったようだ。
每次迈出被浸透到鞋垫的湿鞋时,都会响起咕啾咕啾的滑稽声响。我在打扫得一尘不染的宽阔走廊上留下脚印,径直朝正中央走去。拉希德那家伙,居然包下了这座巨型都市中最大酒店的最顶层,看来比我想象中还要纨绔啊。
自由に使って、と手渡されたカードキーを手にしたまま、奥まった場所にある部屋の前に立った。薄いプラスチック製のカードを手の中で弄んで、ほんの少しだけ逡巡した後、そっと胸元に仕舞った。んん、と咳払いをして心を落ち着かせ、壁に取り付けられたチャイムへと指を伸ばす。
手握被递来的门卡,站在走廊深处的房门前。我摩挲着那张薄塑料卡片,稍作犹豫后,轻轻将它收进胸前口袋。嗯哼——清了清嗓子平复心情,伸手按向墙上的门铃。
ビーッ、とブザー音が鳴ってしばらく、トタタ、と軽い足音がドア越しに聞こえた。ドクドクと胸を打つ鼓動を抱えたまま、濡れた前髪をかき上げ深呼吸をする。すう、はあ、すう、はあ。数拍を置いた後、キィ、と小さな音と共に、厚みある扉が開いた。
哔——门铃响过片刻,嗒嗒的轻快脚步声隔着门传来。怀揣着咚咚作响的心跳,我将湿漉漉的刘海捋上去深呼吸。呼——哈——呼——哈。几拍心跳过后,随着吱呀轻响,厚重的门扉开启了。
「……よぉ」
哟」
洗い立ての髪をゆるゆると三つ編みにして、真っ白なバスローブに腕を通しただけのジェイミーが、そろり、と顔を出した。何と続けるべきか分からず掲げた右手を、飾り気のない深茶色の瞳がなぞり、流れるように俺の顔を見上げた。顔色の戻ったその頬や唇や鼻先は、ふんわりと血色良く色づいている。良かった。言葉をなくしたまま佇む彼は、コクリと小さく喉を鳴らし、ドアを大きく開き俺を迎え入れた。
刚洗过的头发松松地编成三股辫,只披着纯白浴袍的杰米悄然探出脸来。他不知该如何接话而悬在半空的右手,被那双毫无修饰的深棕色眼眸缓缓描摹,随后视线如流水般攀上我的脸庞。恢复血色的脸颊、嘴唇与鼻尖都泛着健康的红晕。太好了。他失语般呆立着,喉间轻轻咕哝一声,将门彻底拉开迎我入内。
明るい色のカーテンが下りた室内は、俺たちふたりには充分すぎるほどに広々としている。漂う香りは花の香りだろうか、いつも彼から香るオリエンタルなにおいとは違う、グリーンを思わせる軽やかなにおいだ。
垂着浅色窗帘的室内对我们两人而言宽敞得过分。空气中漂浮的或许是花香——与往常他身上散发的东方气息不同,这是令人联想到草木的清新香气。
するり、とその手が差し出されて、雨に濡れた頬がそろりと撫でられた。温かく、確かな息吹を感じるそのぬくもりにホッと息をつき、手を重ねてスリスリと顔を擦り付ける。ジェイミーは幾度か瞬きを繰り返すと、込み上げる涙でウルウルと瞳を濡らしたまま、形良い唇をほんの少し震えさせた。
那只手倏地伸来,轻轻抚过被雨水打湿的脸颊。感受到温暖而真实的呼吸温度,他安心地叹了口气,将手叠上去用脸颊蹭了蹭。杰米眨了数次湿润的眼睛,涌出的泪水让双眸显得水汪汪的,形状优美的嘴唇微微颤抖着。
「――
——ルーク」
卢克」
「おう」
"「噢」"
「悪かった」
"「抱歉」"
なんで、そこで俯くんだよ。こういう時こそハグだろって。ぎゅ、と唇を噛み締め視線を外した彼の身体を、俺は全身全霊で抱き締めた。ガッシリと丈夫な骨格に、脂肪のない引き締まった身体、メリハリのある美しいボディライン。その内側を流れる力強い血潮を感じて、俺の身体は今ようやく温まった。生きている。ジェイミーが、生きている。ふぅー、と深い溜息に乗せ彼の名を呼ぶ。こちらを見上げたその虹彩の色を捉えた瞬間、がっちりと力強い腕に後ろ頭を引き寄せられた。
为什么要在这个时候低头啊。这种时候才更应该拥抱吧。我咬紧嘴唇移开视线,用整个身心紧紧抱住了他。结实强壮的骨架,没有一丝赘肉的紧致身躯,优美分明的身体线条。感受着那体内奔涌的热血,我的身体此刻终于温暖起来。活着。杰米还活着。呼——随着一声深长的叹息呼唤他的名字。当捕捉到他抬眸时虹膜色彩的瞬间,后脑勺被那双强健有力的手臂猛然揽了过去。
くしゃくしゃと濡れたままの髪を掻き混ぜながら、ちゅう、ちゅう、と瑞々しい唇が俺の口先に食らい付く。頬が凹むほどに強くその心地良さを吸い返して、しなやか且つ柔らかな温もりを、この舌のすべてを使い貪るように味わっていく。
他胡乱揉着仍湿漉漉的头发,啾、啾地,湿润的唇瓣不断啄咬我的嘴角。我用力回吮那令人酥麻的触感直到脸颊凹陷,用整条舌头贪婪品尝着这份柔韧又绵软的温热。
「ジェイミー、
"「杰米,"……おかえり」
欢迎回来
「……ただいま」
我回来了
この部屋へと足を踏み入れたのはこの俺だけれど、お帰りと迎え入れるべきなのは彼の方だ。胸いっぱいに沸き上がる感情たちは上手く言葉にできないまま、息苦しいほどの彼への想いとして積み重なっていく。ぎゅう、と抱き締めた腕の中で、ジェイミーはまた、ごめん、と小さく謝った。
踏入这个房间的明明只有我,该说欢迎回来的对象却是他。满溢胸口的感情无法好好化作言语,只能堆积成近乎窒息的思念。在紧紧环抱的双臂中,杰米又一次轻声道歉,说着对不起。
「惚れ直した?」
"「重新爱上我了吗?」"
ニヤッ、と口角を上げてその顔を覗き込むと、涼やかな瞳が虚を突かれたかのように見返した。間髪入れず、俺のやり方を真似るように、ニヤリ、とほくそ笑む。ぎゅう、と首裏に回る腕に体重をかけられて、耳の縁へ濡れた唇が押し当てられた。
我咧嘴坏笑着凑近他的脸,那双清冷的眼瞳像是被看穿似地回瞪过来。他立刻有样学样地勾起嘴角,露出狡黠的笑容。随着环绕后颈的手臂猛然发力,湿润的唇瓣重重压上了我的耳廓。
「今日だけは素直になってやる。
"「今天就老实给你看吧。"……恰好良かったぜ」
帅呆了」
キラキラと電光を返す澄んだ瞳が、俺だけを見上げて笑っている。この美しい男から混じりけのない好意を向けられると、欲したこちらこそ照れ臭くなるから不思議だ。しかしそれ以上の喜びが溢れて、頬はだらしないまでに綻んでいく。ちゅう、ちゅ、ちゅう、と艶めく唇を吸い上げて、ぐりぐりと額を押し付け、彼のにおいを肺の奥深くまで吸い込んだ。
那双清澈眼眸反射着璀璨电光,只仰望着我微笑。当这个美男子向我投来毫无杂质的爱意时,反倒是渴望着的我羞赧起来,真是不可思议。但更多的喜悦满溢而出,让脸颊绽开傻气的笑容。啾、啾、啾,我吮吸着他水润的唇瓣,将额头紧紧抵住磨蹭,把他的气息深深吸入肺腑。
隙間なくくっ付き合っていると、お互いの心音がはっきりと伝わって、何を求めているのか手に取るように分かってしまう。コツン、と額を合わせ見詰め合っていると、ハタハタと上下する長い睫毛からそよ風を感じた。ジェイミーは俺の目から視線を逸らさないまま、こくん、と小さく喉を鳴らす。
当我们严丝合缝地相拥时,彼此的心跳清晰可闻,连对方渴求什么都了然于心。轻轻咚地额头相抵对视时,从他扑簌簌颤动的长睫毛间拂来微风。杰米始终没有移开与我交汇的视线,喉间发出咕咚的细小吞咽声。
「泊まんの」
"「不留宿吗」"
「もちろん。でもお前が帰るって言うなら、一緒に帰る」
"「当然。但如果你说要回去,我就一起回去」"
「……そんなにオレが恋しかったのかよ」
你就这么想我吗」
「当たり前だろ。俺の熱烈なメッセージ見なかった?」
"「这不是明摆着的吗。没看到我发的热情留言?」"
「ははっ、暑苦しくてどうにかなるかと思ったぜ。お前は
"「哈哈,热得我都快受不了了。你这家伙"……もう、キレてねえの?」
喂,还没消气吗?
こちらを覗き込むその表情には、大人の機嫌を伺う子どもによく似た色が含まれている。許してくれないかなと甘えを含んだその顔は、薄っすらと開いた唇から覗く前歯も相まって、怒るに怒れない愛らしさで飾られている。ったく、説教が無理なら、この目に、この唇に、この身体に、俺の執念深さを教え込むしかなくなっちまう。
那张凑近窥探的脸庞上,带着几分孩童揣摩大人心情般的神色。含着撒娇意味的"不会原谅我吗"表情,配上微微张开的唇间若隐若现的门牙,更显出让人无法真正生气的可爱模样。可恶,要是说教行不通的话,就只能用这双眼睛、这张嘴唇、这副身体来让你领教我的执着了。
「許すかどうかは、色男クンの振舞いによるかなァ。
"「原不原谅,就要看帅哥你的表现咯——"……なあジェイミー」
对吧杰米
「ん」
"嗯"
ツンと上向く顔が、見開かれた大きな瞳が、ほんのりと赤らむ薄い頬が、可愛い。
微微上扬的脸蛋,睁大的明亮双眸,泛着淡淡红晕的薄薄脸颊,可爱极了。
「今夜は寝かせたくねえ。
"「今晚可不想让你睡。"……って意味、分かる? 俺の気持ちは、そんな感じなんだけど」
明白这是什么意思吗?我的心情,大概就是这样的感觉」
緊張と期待に満ち溢れ、カラカラと乾いていく喉をなんとか稼働させ、祈りを込め告げる。ジェイミーは俺に密着したまま言葉を呑むと、ふうーっ、と強く息をつきそして、覚悟を決めた勇ましい笑みを見せた。
在紧张与期待的充斥下,我竭力运转干渴得快要冒烟的喉咙,带着祈祷般的心情开口。杰米紧贴着我咽下话语后,重重呼出一口气,然后露出了下定决心的英勇笑容。
「これ以上、オレ様を待たせるんじゃねえよ」
"「别让本大爷等得更久了」"
「え」
"「诶」"
「……だから、準備済みだって言ってんだよ!」
所以我不是说了已经准备好了吗!
「えっ!!」
"「诶!!」"
零れ落ちそうになる唾液を慌てて飲み込んで、腕の中に納まる恋人をまじまじと見詰める。ジェイミーは俺の胸元に鼻先を埋めると、モゴモゴとシャツを噛みながら、か細く消え失せそうな声で呟いた。
我慌忙咽下快要滴落的唾液,目不转睛地盯着怀中依偎的恋人。杰米将鼻尖埋进我的胸膛,一边含糊地咬着衬衫布料,一边用细若游丝的声音呢喃。
「あーもうだから、
"「啊真是的,"……早くしろっつーの。馬鹿脳筋」
快点啦笨蛋肌肉男」
「ジェイミー!!」
"「杰米!!」"
「あん?」
"「嗯?」"
リビングと同様に持て余すほど広かったバスルームから飛び出して、バラバラと水滴を落としつつ、ベッドに横たわる恋人の元へ急いだ。ジェイミーは俺の姿を認めると、ほんの少しだけ呆けて、込み上げる笑いにクツクツと肩を揺らしていく。
我从宽敞得几乎显得多余的浴室冲出来,水珠四散滴落,匆忙奔向躺在床上的恋人。杰米一看到我的样子,微微愣了一下,随即憋不住笑意,肩膀轻轻颤抖起来。
「ふっ、くふふふっ
"「呵、呵呵呵"……! お前なあ、バスローブくらい羽織って来いよ」
喂!你倒是披件浴袍再来啊
「どうせすぐ脱ぐんだから、着てても素っ裸でも変わんねえだろ」
"反正马上要脱的,穿不穿和光着有什么区别"
「ったく、身も蓋もねえ脳筋クンだな」
"真是的,你这肌肉脑袋说话也太直白了"
長い三つ編みを白いシーツの上にゆるりと垂らし、腕を枕にしたまま、寝そべるジェイミーが鼻に皺を寄せ笑った。緩んだ襟元からはあの滑らかで健康的な肌色が覗き、あと少しでも身じろげば、赤く膨らんだ胸飾りまで見えそうだ。見えそうで見えないその部分に釘付けになっていると、一気に下半身の血流が活発になった。
杰米将长长的麻花辫松散地垂在白色床单上,手臂枕在脑后斜躺着,皱起鼻子笑了。松开的领口处隐约露出那光滑健康的肌肤色泽,再稍微动一下,仿佛就能瞥见那对饱满泛红的乳尖。视线死死黏在那若隐若现的部位时,下半身的血液顿时沸腾起来。
「ッはは! なんだよ、そこまで溜まってんの?」
"「啊哈!怎么,你憋得这么厉害?」"
ニマ、と笑うその細面が、小悪魔のように愛らしいからこそ腹が立つ。ああそうだよ、お前を前にすると俺はバカになっちまうんだ。ビンッ、と上向く股間が暴れるのも構わず、ブルンブルンと荒ぶる昂りが彼の目に映るよう、大股を広げてベッドへと乗り上げる。ジェイミーはゆっくりと身を起こすと、黒く滑らかな髪をするりとかき上げた。
那张狭长脸庞上浮现的狡黠笑容,正因为像小恶魔般可爱才更令人火大。啊啊没错,一见到你我就变成白痴了。不顾裤裆里勃起的躁动,他故意岔开双腿跨上床铺,让那根昂扬的性器在对方视线里嚣张地跳动。杰米缓缓支起身子,将乌黑柔顺的长发向后一撩。
「気持ち良くしてくれんの?」
"「能让我舒服吗?」"
「当たり前だろ。泣かせまくってやるから、せいぜい覚悟しとけ
"「这不是理所当然的吗。我会让你哭个够的,最好给我做好心理准备"……よッ!」
啊!」
ガバッ、と全体重を放り出し、目の前に差し出されたその身を押し倒す。グララン、と大きくマットレスが揺れて、俺たちはポップコーンのように何度も宙へと弾んだ。腕の中の彼はケラケラと赤ん坊のように笑うと、両腕を伸ばし俺の顔をきつく抱き締めた。筋肉質で敏感な、彼の胸板に顔を擦り付ける。ちゅう、ちゅう、とプリプリの乳首を吸い上げ舐ると、子どもっぽさを浮かべる瞳が色めき始め、気付けば魅惑的な顔つきへと塗り替えられていった。
哗啦——我将全身重量压了上去,把眼前这具躯体推倒在床垫上。弹簧床垫剧烈晃动,我们像爆米花般被弹起好几次。怀里的他发出婴儿般咯咯笑声,突然伸出双臂紧紧搂住我的脸。我把脸埋进他那肌肉结实又敏感的胸膛磨蹭着。啾、啾——吸吮舔弄那对弹性十足的乳头时,他原本孩子气的眼神逐渐迷离,不知不觉已染上诱人的神色。
猫のような大きな瞳がじんわりと赤らんで、幅の広い目蓋は艶々と桃色に染まっている。細い鼻筋に鼻先を寄せて、永遠に飽きることない瑞々しい唇に、ガブリ、と大口を開け齧り付く。
猫儿似的圆润眼眸渐渐泛起红晕,宽厚的眼睑染上湿漉漉的桃色。他皱起高挺鼻梁下的鼻尖,对着永远尝不够的水润唇瓣啊呜一口咬下去。
「ん、っぅん、
"嗯、唔嗯、"……ふっ、ふう
呼、呼……はあっ」
哈啊
角度を変え深度を増しながら、漏れ出る呼吸すら弄り合う。ぐちゃぐちゃと音を立て舌を絡ませて、縺れる指で彼のベルトを解く。分厚いパイル地をくつろげると、所々に傷跡が残る、褐色の素肌が露わになった。打撲と合わさり紫色に変色した傷跡に、ドキッ、と嫌な角度に胸が跳ねる。俺の身体に幾ら傷が残ろうと構わない。だが、彼の玉の肌が傷付くことだけは、どうしても許せない。ジェイミー、と固い声で彼を呼ぶと、トロンと艶味を増した瞳がうっとりと俺を見上げた。
变换角度加深探索,连溢出的喘息都相互纠缠。黏腻水声作响舌尖交缠,用交扣的手指解开他的皮带。拨开厚实毛呢面料后,残留着零星伤痕的褐色肌肤裸露出来。那些淤青发紫的伤疤让心脏在糟糕的角度猛然抽痛。我身上留下多少伤痕都无所谓。但唯独他无瑕肌肤受伤这件事,无论如何都无法原谅。'杰米',用僵硬的声音唤他,那双蒙上水雾愈发湿润的眼眸正痴痴仰望着我。
「ん?」
"「嗯?」"
「傷
"「伤"……、大丈夫か?」
,不要紧吗?」
「……ああ、これ? 薬湯のお蔭で毒も抜けちまってるって。心配いらねえよ」
啊,这个?多亏药浴把毒素都排出来了。别担心啦」
「毒は良くても傷だらけじゃねえか。痕にならねえといいんだけど
"「毒是解了可浑身伤疤不是?但愿别留疤才好"……」
あの時、もう一足早く辿り着けていれば。ラシードの連絡を受けすぐに向かったとは言え、もっとやりようがあったんじゃないか。悔やんでも悔やみきれず唇を噛み締めていると、ジェイミーは身を起こし、よしよしと俺の頭を撫でた。
那时要是能再早一步赶到就好了。虽说接到拉希德的消息就立刻动身,但总该有更好的处理方式吧。正懊恼得紧咬嘴唇时,杰米撑起身子,轻轻揉了揉我的头。
「ハハッ、なんつー顔してんだ! これくらい何ともねえよ、どんだけお前に殴りつけられてきたと思ってんだ」
"「哈哈,你这什么表情啊!这点小伤根本不算什么,你以为我被你揍过多少次了」"
「打撲は長く残らねえじゃん、でも切り傷となれば話は別だ。俺の顔見てみろよ、こんだけ深いと一生モンになっちまう。
"淤青很快就会消失,但刀伤可就不一样了。瞧瞧我脸上这道,深得能跟一辈子。"……俺は別に構わねえけど、でもお前は
我倒无所谓,但你——……」
そう言い淀んでいると、彼は白い歯をニンと見せて可笑しげに笑った。ケラケラと笑うその顔は悪戯を成功させたかのように満足そうで、本気で心配している俺の気持ちをしっかりと逆撫でする。ム、と突き出る唇をそのままに、眼前で目を細めるジェイミーを、ジロリ、と湿っぽく睨めつけた。
正当我支吾着说不出话时,他咧开嘴露出白牙,古怪地笑了。那咯咯的笑脸活像恶作剧得逞般得意,把我真心实意的担忧彻底搅成了烦躁。我噘着嘴不作声,用湿漉漉的眼神狠狠瞪着眼前眯起眼睛的杰米。
「ンだよ、本気で心配してんだぞ」
"「笨蛋,我可是真心在担心你啊」"
「お前こそ背中に派手な傷こさえてただろ、ちゃんと見てンだからな。まずは自分の心配しろ。それにオレは代謝がいいからな、ちょっとやそっとじゃ痕が残んねーの。だから」
"「你背上不也添了道显眼的伤疤吗,我可是看得一清二楚。先操心你自己吧。再说了,我新陈代谢快得很,这种小伤根本留不下疤痕。所以」"
グン、と肩を押し返されて、今度はジェイミーが俺の身体へと馬乗りになった。右肩から垂れる三つ編みが張りのある身体を伝って、ハラハラと落ちるおくれ毛が汗ばんだ肌に貼り付いている。その様子が、彼の怪しい艶めかしさを幾重にも膨らませた。
被他「咚」地反推肩膀,这次杰米直接跨坐到我身上。从右肩垂落的发辫滑过他紧实的躯体,散落的碎发黏在汗湿的皮肤上。这般情态将他危险的冶艳感层层放大。
「手ェ抜くんじゃねえぞ。オレはもう、覚悟決めてんだから」
"「别想偷懒。我可是——已经做好觉悟了」"
ツ、と骨ばった手の平が俺の腹を辿り、揉むように俺の胸元を撫で回す。たったそれだけで全身の神経が高ぶって、ゾクゾクゾクッ、と溢れんばかりに沸き立っていく。
骨节分明的手掌游走在我腹部,又像揉捏般抚过我的胸膛。仅仅如此就令全身神经亢奋起来,战栗感一波接一波地翻涌,几乎要满溢而出。
「ジェ、ッ」
"「啧、」"
名を呼ぼうとした矢先に、ちゅう、と強く首筋が吸い上げられた。間髪入れずに噛み付かれて、痛みではなく、悦びばかりが背骨の内側を駆け登っていく。カツ、カツ、と彼の白い歯が肌へとめり込む度に、ゾワッ、ゾワッ、と肩先が跳ねる。ベロリ、と舌なめずりをするその顔にはヤンチャな子どもっぽさの欠片も残っておらず、交接を期待する大人の色香で満ちていた。
正欲呼唤名字的瞬间,后颈被狠狠嘬吸。紧接着毫不迟疑地咬下,疼痛未至,唯有快感沿着脊椎内侧窜涌而上。每当他那洁白的牙齿深深陷入肌肤,喀嚓、喀嚓,肩膀便随之酥麻震颤。舔舐嘴唇的面容上不见半分顽童稚气,全然浸透着渴求交欢的成人艳色。
「お前の痕、しっかり残してくれよ」
"「可要给我留个深刻的印记啊」"
美しい恋人は俺の手を取り、そして自らの胸に触れるよう誘った。スリスリ、と手の平へ赤い尖りが擦り付けられて、その刺激だけで彼は悩まし気な息をつく。厚みある筋肉を揉みしだくと、茶色の瞳が伏せられ甘く啼き始める。その弾力に夢中になっていると、ぷるん、と勃ち上がった彼のペニスが、ガチガチに昂る俺のものへと擦り付けられた。
美丽的恋人牵起我的手,引导我抚上他的胸膛。掌心被鲜红挺立的乳尖来回磨蹭,仅是这般刺激就让他发出难耐的喘息。当我揉捏那厚实肌肉时,他垂落茶色眼眸开始甜腻呻吟。正沉醉于这弹性触感时,他勃起的阴茎突然弹跳着贴上我已硬得发疼的性器。
「ルーク、あのな、っ」
"「卢克,那个啊——」"
「はあ、はあ、っうん」
"「哈啊、哈啊……嗯」"
ゆさゆさと身体を揺すり性感帯をくすぐり合って、掠れる息のままコクンと頷く。ジェイミーはアアッ、と弾かれたように声を上げると、背を反らしながら身を震わせた。
身体轻轻摇晃互相撩拨敏感带,在紊乱的呼吸中微微点头。杰米“啊”地一声如触电般叫了出来,反弓着背浑身颤抖。
「っ
"「"……あの、な。あの蛇女に打ち込まれた毒って、いわゆる自白剤、らしいんだよ」
那个,我说。那条蛇女注入的毒素,好像是所谓的吐真剂哦」
「ッ
"「"……!? っ大丈夫なのか」
!? 你没事吧」
つい腰を揺すってしまう快感すらも吹き飛ぶ告白に、俺は慌てて身を起こした。細腰を抱き寄せるとぐにゅりとペニスが絡み合って、擦れ合う粘膜にふたり分の息が漏れる。強い性感の波をなんとか乗り越えて、俺は改めて彼を覗き込んだ。
这番告白甚至冲散了因腰部不自觉扭动而生的快感,我慌忙直起身子。搂住那纤细腰肢时阴茎黏腻地纠缠在一起,摩擦的黏膜间漏出两人的喘息。勉强熬过强烈的情欲浪潮后,我重新凝视着他。
「っはは、だから大丈夫だって。もう一回喰らってたらヤバかっただろうけど
"「哈哈,所以都说没事啦。要是再挨一下可就真不妙了"……この通り、オレは無事だ。意識も、記憶もはっきりしてる。敏腕ドクターのお墨付きだぜ」
看吧,我好着呢。意识清醒,记忆也完整。这可是名医盖章认证的」
薄っすらと汗を纏いながらそう言って、彼は小首を傾げニッと笑った。ほお、と安堵の息を吐いて、ガッシリとした肩に額をぶつける。安心、はしたけれどやっぱり、心の内にモヤモヤは残る。滑らかな背を撫で心を落ち着けていると、なあ、と耳の縁を食むように呼ばれた。
他微微沁着汗说出这句话,偏头露出雪白牙齿笑了。我呼出一声"嚯"放下心来,把额头抵上他厚实的肩膀。虽说是安心了,但心底仍残留着些许阴翳。正抚摸着光滑脊背平复心情时,耳畔传来他轻咬耳垂般的低唤。
「話はこれからだっての。その
"「故事才刚要开始呢。那个"……アイツと対峙している時は気合でなんとかなったけど、さ」
和那家伙对峙时还能靠气势撑过去,但」
「ん」
"「嗯」"
「その効果がまだ少し残ってると言うか、
"「该说是那个效果还残留着一点,"……その、つまりだな」
那个,就是说啊
「うん?」
"「嗯?」"
途端に言葉を詰める彼へと、顔を上げ瞳を合わせる。ジェイミーは幾らか視線を彷徨わせた後、照れ臭そうに唇を尖らせ、ポソポソとか細い声で続けた。
就在他话语突然中断的瞬间,我抬起脸与他四目相对。杰米的视线游移了片刻,随后有些难为情地撅起嘴唇,用细若蚊呐的声音继续说了下去。
「変なコト言っても、あんま、
"「就算说了奇怪的话,也别太"……気にすんなよ」
放在心上啊」
「……要するに?」
也就是说?」
「……ちょっとばかし、素直に、なりすぎちまうかも」
可能稍微有点,过于坦率了
自白剤。それは投与された者の意識を朦朧とさせ、質問者のあらゆる問いに答えさせることを可能にする薬物だ。しかしその効果は眉唾物であり、更には投与された者の主観的な答えしか得られない為、諜報機関や警察などで用いられることはない。とは言え、あの女は只者ではなかった。恐らく、いや確実にプロの暗殺者だろう。拳を交えるよりも前、あの赤い瞳を一目見ただけで、そう理解できた。
自白剂。这是一种能令被注射者意识模糊、被迫回答提问者所有问题的药物。但其效果值得怀疑,且只能得到被注射者的主观回答,因此情报机构或警方并不采用。话虽如此,那个女人绝非等闲之辈。恐怕——不,绝对是职业杀手。在拳脚相向之前,仅需瞥见那双赤瞳便能明白。
得体の知れない犯罪組織が用いる、毒薬。あの女の様子からも、その効果は絶大なんだろう。そんな毒素が、彼の体内に僅かながら残っていると言う。肌を上気させ、ウズウズと身体を揺らし、明け透けなまでに股を開いたままコクンと喉を鳴らす、この艶めかしい身体の中に。ドッドッドッ、と鼓動が早駆けを始め、イライラと脈打つ股間が牢固になっていく。ジェイミーは腰を浮かすと、そそり立つ俺のペニスを跨いで、ベッドの上に両膝を突いた。
来历不明的犯罪组织所使用的毒药。从那个女人的状态来看,其效果想必极其强烈。据说,有微量毒素残留在他的体内。在肌肤泛红、身体焦躁不安地扭动、毫无遮掩地张开双腿并发出吞咽声的这副艳丽躯体之中。咚咚咚,心跳开始加速,烦躁悸动的下半身逐渐变得坚硬。杰米抬起腰,跨坐在我勃起的阴茎上,双膝跪在床铺上。
「ルーク、
"「卢克、"……挿れて、くれ」
插进来、给我」
ぐに、と先端へ押し付けられるアナルの締まった感触に、ゾクゾクゾクッ、と全身が総毛立った。この内側へ入り込んだことは未だないが、その熱さには何度もこの指で触れた。狭くて、熱く、柔軟な彼のナカ。ハッ、ハッ、ハッ、と上がる息に腹筋が打ち震えて、小さな孔が宛がわれる肉棒がブルンブルンと上下にブレた。
咕啾、当顶端抵上紧缩的肛门时,全身唰地泛起战栗。虽然从未进入过这内侧,但已多次用手指感受过其中的热度。狭窄、炽热而柔软的他体内。哈、哈、哈,急促的喘息让腹肌阵阵发抖,对准小穴的肉棒随之上下颤动。
発情する身体を押し返し、ドサリとベッドに縫い付けた。両の膝先で引き締まった腿を押し付けて、大きく股を開かせる。裏側から眺める彼のペニスは恥ずかし気にヒクヒクと揺れ、その動きは赤らんだアナルの収縮に連動している。ねろり、と舌先から唾液を垂らして、水蜜桃を思わせる双丘の谷間をじっとりと濡らした。
将发情的身体推倒,重重钉在床上。用膝盖压住紧绷的大腿内侧,迫使双腿大大张开。从后方望去,他的阴茎羞怯地抽搐着,每次收缩都牵动泛红的菊穴。黏稠唾液从舌尖滴落,将蜜桃般的双丘间沟洇得湿漉漉。
口唇をすぼませるその孔をぐにゅりと揉むと、僅かな抵抗と共に慎ましく口を開けた。ずずず、と突き進むその場所は小さすぎる見た目に反し、俺の中指を呑み込めるほどに解れている。触れる腸壁の表面はどこもかしこも、にゅちにゅちとした分厚い滑りで覆われていた。
当我揉捏那微微噘起的唇孔时,它带着些许抵抗羞涩地张开了。滋滋滋,向里推进的部位虽看起来过于狭小,却已松软到能吞没我的中指。触碰到的肠壁表面每一寸都覆盖着黏腻厚重的滑液。
「なあ、ナカ、濡れてる
"「呐,娜卡,已经湿了"……?」
?"
「んふふ。だから、準備してるって言っただろ?」
"「嗯呵呵。所以我不是说了正在准备嘛?」"
まだまだ小さな開きを拡大するように、ちゅこちゅこと指を前後に動かす。僅かな隙間からは水音が立って、腕の下からは甘ったるい吐息が響く。熱を帯びるほどに熟れ、挿入を待つ身体。お前、こんなになるまで、準備、してたんだ。俺と、
如同要将微小的缝隙继续撑开般,手指前后轻轻抽动。从狭窄的间隙里传出水声,臂弯下漏出甜腻的喘息。身体因情热而熟透,正等待着被进入。你这家伙,竟然准备到这种程度。为了和我,——セックスする為に。ぐううん、と昂る感情が空に向かい放たれた矢のように突き上がって、股間の屹立がグングンと太さを増していく。
做爱。呜嗯——高涨的情绪如同射向天空的箭矢般直冲而上,胯间的硬挺迅速膨胀得更加粗壮。
興奮で打ち震える手で、彼の内部を丁寧に解していく。ぬちゅり、ぬちゅぬちゅ。掻き回すごとに粘性のあるローションが流れ出し、俺の指に掻き回されぷくぷくと泡を立てる。その感触に、引き締まった太腿がヒクンッヒクンッ、敏感に跳ねる。眉根を寄せ感じ入る美丈夫を見下ろしながら、前立腺の出っ張りを捏ね回して、どんどんと快感の波を大きくしてやる。俺の指の動きひとつで、腕の下に匿う彼は黒い髪を乱し、長い睫毛を涙で濡らし、とろりと唾液を零していく。その艶めかしい悦びを、俺はうっとりとした心地で見下ろした。
因兴奋而颤抖的手,细致地解开他的内部。黏腻地、咕啾咕啾地搅动着。每翻搅一次,黏稠的润滑液便流淌而出,在我的手指间被搅出咕嘟咕嘟的泡沫。那触感令紧绷的大腿敏感地抽搐着。我俯视着眉头紧蹙沉溺其中的美男子,揉捏着前列腺的凸起,让快感的浪潮愈发汹涌。仅凭我手指的动作,藏在我臂弯下的他便黑发凌乱,长睫毛被泪水沾湿,唾液也滑落下来。我陶醉地俯瞰着他那妖艳的欢愉模样。
「は、っは、っは、る、ぅく、っ」
"「哈、哈、哈、呜、嗯、啊」"
「ん、」
"「嗯、」"
「も、挿れ、ろよぉ
"「再、再插、进来嘛」"……っ」
トロリ、トロリと愛液のようにローションを滴らせ、上擦る声が俺を求めている。しかし、先よりも入口の柔軟性が増したとは言え、俺の太さを受け入れるには時期尚早だ。まだ駄目だって、と形良い鎖骨をあむあむと噛む。刺激を待ち望み主張する乳首を吸い上げてやると、彼は喉を引き攣らせながら、息を切らし心地良さを表現した。
润滑液如爱液般黏腻滴落,高亢的嗓音渴求着我。然而即便入口比先前柔软了些,要容纳我的粗壮仍为时过早。还不行呢,我轻咬着那形状优美的锁骨。当含住他期盼刺激而挺立的乳尖时,他喉头痉挛着发出断断续续的喘息,用身体表达着愉悦。
「んっ、ぅんっ、ルーク、はやく、ルーク、ぅんっ」
"「嗯、嗯呜、卢克、快点、卢克、嗯呜」"
欲しい欲しいと擦り付けられる、アナルからぬるりと指を抜き出す。どうして抜いてしまうんだ。そう不服そうに涙ぐむ彼にキスして、トントンとシーツを叩いた。
他扭动着身子蹭过来索求时,我缓缓从后穴抽出手指。为什么抽出来嘛。我亲吻着泫然欲泣表示不满的他,轻轻拍了拍床单。
「ほら、手ェついて。こっちに尻向けてみな」
"“来,把手放这儿。把屁股朝这边转过来”"
こんな指示出しちまったら、普段のジェイミーなら品がないと一蹴していただろう。しかし芯まで蕩けきった彼は、言う通り四つん這いになり、俺の眼前へと小さく引き締まった尻を突き出した。俺の指を二本吞み込めるまでに緩んだ円環は、ぷっくりと縁を膨らませ、見るからに美味しそうだ。彼のペニスからしとどに零れる先走りを掬い上げて、ぬちゅぬちゅと湿らせた親指を、彼の肉孔へゆっくりと挿入していく。
若是平日里的杰米,定会嫌这指令粗俗而断然拒绝。但此刻他连骨髓都融化般乖顺,依言四肢着地,将紧实小巧的臀部朝我眼前高高翘起。那圈嫩肉已松弛到能吞入两指,翕张的褶皱泛着水光,诱人得紧。我掬起他阴茎前端滴落的清液,将沾湿的拇指缓缓顶进那翕张的肉孔。
「はあ、あ、あ
"「哈、啊、啊"……ああぁ、んんン」
啊啊啊、嗯嗯嗯」
太い指を根本まで呑み込ませると、柔らかなすぼまりがキュウキュウと噛み付いてきた。みっちりと密な肉襞を引き延ばすように、押し入れた指をグリグリと捩じり動かす。わずかによじれた粘膜の色が、今はっきりと見えた。食べ頃のイチジクのような、いやらしい色。その充血した色にムラムラと鼓動が高まって、内部を揉む動きが速まっていく。
当粗壮的手指深深没入根部时,柔软的褶皱便紧紧咬了上来。像是要撑开那紧密的肉褶般,插入的手指开始缓缓转动。此刻能清晰看见微微扭曲的黏膜色泽——如同成熟无花果般淫靡的颜色。那充血的色泽让心跳愈发躁动,揉弄内部的节奏也随之加快。
早く、はやく、このナカに入りたい。俺の形を覚え込ませて、俺以外必要ないってことを教えてやりたい。にゅぶり、と開いた肛門へ左手の親指も潜り込ませると、ジェイミーは嬉しそうに掠れ声を上げた。ぐい、ぐい、と円環をたゆませるように割り開き、腸壁から括約筋までのすべてを拡張していく。無理やりにも思えるこんな刺激でさえ、ジェイミーは快感として感じ取ってくれる。
快点、再快点、好想进入这里面。我要让你记住我的形状,教你明白除了我谁都不需要。当左手大拇指也随着噗嗤声滑入张开的肛门时,杰米发出了愉悦的颤音。咕叽、咕叽地撑开那圈褶皱,从肠壁到括约肌全都扩张开来。即便是这般近乎强硬的刺激,杰米也将其当作快感全盘接受。
挿入の期待に、無意識の内に腰が揺れてしまう。先走る先端を突き出して、キスをねだるかのように薄く開いた円環へ、ピタッ、と鈴口を宛がった。たったそれだけで、ぷちゅ、と湿り気を帯びた音が立って、俺たちはふたり同時に息を詰めた。
在即将被插入的期待中,他的腰肢无意识地摆动起来。前端渗出先走液,像索吻般微微张开的圆环被龟头精准抵住。仅仅这样,就发出噗啾的湿润声响,我们两人同时屏住了呼吸。
「っぐ、う」
"「嗯、呜」"
「ッは、あ、あ
"啊、啊、啊"……ルーク、ッ」
卢克、啊
濡れた粘膜が、快楽神経の集まる先端をぬっとりと包んでくれる。やばい、やばい。鼻血が噴き出しそうなほど、興奮する。むにゅ、むにゅ、と張りのある尻たぶを堪能して、突き入れていた二本の親指をぬぼり、と抜き出した。浅ましいにおいを散らしながらゆっくりと口を閉じゆくアナルを前にして、張りつめた怒張から唾液が滲み、太い糸を引いて落ちていく。その湿り気を手に取って、これから彼の内部に入り込むすべてへと、ヌルヌル、グチュリ、と乱暴に塗り広げた。
湿润的黏膜包裹住聚集着快感神经的顶端。糟糕、太糟糕了。兴奋得几乎要喷出鼻血来。尽情享受着那富有弹性的臀瓣,将插入其中的两根拇指缓缓抽出。面对着正慢慢闭合、散发着淫靡气味的后穴,紧绷的怒张处渗出唾液,拉出黏稠的丝线垂落。我蘸取那些湿滑液体,粗暴地涂抹在即将侵入他内部的每一处,黏腻、咕啾地拓展开来。
「ジェイミー、っ」
"「杰米、啊」"
「うんっ、ん、っ」
"「嗯、唔、啊」"
「これから挿れる、けど」
"「现在要插进去了,不过」"
「んっ、はっ、はあっ、! はやくぅ
"「嗯、哈、啊っ! 快点ぅ」"……ッ」
「見たい? お前のナカ、挿っていく、トコ」
"「想看吗? 你里面,被插进来的,地方」"
「ん、ん、ん、っ」
"「嗯、嗯、嗯、啊」"
コクコクコク、と髪を振り乱し頷く彼を宥め、抱き上げ、フラつく身を支えて、大きな三面鏡の前まで連れて行く。横に避けた椅子の背に掴まらせると、尻を突き出し俺の挿入を待つ彼の姿が、鏡の中に明々と写し出された。
我安抚着不断点头、发丝凌乱的他,将他抱起,支撑着他摇晃的身体,带到大面的三面镜前。让他扶住一旁挪开的椅背时,他翘起臀部等待我插入的姿态,在镜中清晰地映现出来。
「この階、誰もいないから。安心して、声、出せよ」
"「这层楼没人。放心出声吧」"
「ん、ん、っ」
"「嗯、嗯、唔」"
頷くジェイミーの、ぷわぷわと柔らかくほぐれた肉孔へと、ペニスを突き付ける。行く先を定めようと支える手の中で、興奮を露わにした俺自身が、太い血管を浮かび上がらせ、ドクッドクッ、と躍動している。今にも爆発しそうな本能的な怒りを、息を切らし必死に耐える。ぬるり、と腰を進めると、トロリと糸を引き開いた円環が、ちびちびと小さく噛み付いてきた。
对着点头的杰米那蓬松柔软的肉穴,我将阴茎顶了上去。在试图固定方向而支撑的手中,暴露在兴奋中的我自己,粗大的血管凸起,砰砰地跳动着。几乎要爆发的本能愤怒,让我气喘吁吁地拼命忍耐。滑溜溜地推进腰部,那黏糊糊拉开成圆环的入口,开始一点一点地轻轻咬住。
「はっ、あ、あっ、
"「哈、啊、啊、」"……狭、っ
狭、呃……ッ」
「はああぁ、はっ、あ、アァ
"「哈啊、哈、啊、啊"……ああぁぁ
啊啊啊……ッ」
ジリジリとにじり寄るように、ミリ単位で腰を進めていく。亀頭を噛む抵抗が少しずつ強まって、沁みるような痛みにジンワリと汗が滲んでいく。括れた腰を掴まえ直して、小さな尻たぶの付け根、そこに三角を描く凹みを優しく撫で摩った。心地良いのか、それともくすぐったいのだろうか。ジェイミーはヒクヒクヒクッ、と腰を戦慄かせると、縮こまった後孔からクッタリと緊張が消えた。
如同被炙烤般一寸寸地挪动腰部,以毫米为单位缓缓推进。龟头被咬住的阻力逐渐增强,渗出的汗水在隐隐作痛的刺激下渐渐浸湿肌肤。重新握住纤细腰肢,轻柔抚弄那在小巧臀瓣根部形成三角形凹陷的沟壑。不知是舒适还是酥痒,杰米突然发出'嗯嗯嗯'的颤音,紧绷的腰肢一阵战栗,紧缩的后穴顿时瘫软失力。
亀頭の腹部分まで納めると、肉傘部分までツルリと滑るように呑み込みこまれ、ビグンッ、とお互いの身が震えた。ペニスの裏筋をきゅうきゅうと締め付けられ、痛みに似た快感に冷や汗が噴き出していく。ジェイミーも同じく、一段飛ばしの挿入に驚いてしまったのだろう。浅い呼吸を繰り返しながら声にならない呻きを発し、ガリガリと椅子の背に爪を立てている。
当龟头冠状沟完全没入时,整根阳物如丝般滑入湿热甬道,两人同时'嗯啊'震颤。阴茎背筋被层层软肉绞紧,近乎痛楚的快感逼出涔涔冷汗。杰米显然也被这记深顶弄得猝不及防,断断续续的浅喘混着不成调的呜咽,指甲在椅背上刮出咯吱声响。
「ジェ、イミー」
"「杰、杰米」"
「んぁ、はあっ、はあっ、はあっ」
"「嗯啊、哈啊、哈啊、哈啊」"
「見ろよ、ここまで、挿った、ぜ
"「看啊,已经、插到、这么深了」"……っ」
挿入を横方向から写す鏡を指差すと、彼は朦朧としたまま、姿見へと視線を投げた。俺のペニスは、自分で言うのもなんだが、丸々と太くて大きい。まるで甘藷みたいだな、と悪戯に笑われたのは、彼との三度目の戯れの時だった。そんなサツマイモのようにずんぐりむっくりとした陰茎が今、桃のように小さな尻に突き刺さっている。どう見てもアンバランスなその風景は、俺たちふたりの劣情を分かりやすく煽っていく。
当我指向那面从侧面映照交合景象的镜子时,他仍神情恍惚地将目光投向穿衣镜。虽然由自己来说有些奇怪,但我的阴茎确实圆润粗大。'简直像根红薯呢'——这样被戏谑嘲笑,是在我们第三次交欢的时候。此刻这根如番薯般短粗的阳物,正深深刺入蜜桃般小巧的臀瓣里。无论怎么看都失衡的画面,赤裸裸地煽动着我们二人的情欲。
魚の口のようなその小ささで、パク、パク、と収縮を繰り返すアナルが、圧迫感を手繰り寄せるかのように、俺の熱をぐむぐむと頬張っていく。
那如鱼嘴般窄小的后穴不断张合收缩,仿佛要将压迫感尽数吞咽般,贪婪地含吮着我灼热的欲望。
「ッは、あ、あッ、ル、ク」
"「啊、哈、啊、鲁、克」"
「ああ、っはあ、大丈夫か? 苦しい、?」
"「啊、哈啊、没事吧?很难受吗?」"
「ちがっ、あ、アッ、そこ、そこもっと、押して、っ」
"「不、啊、啊、那里、那里再用力点、嗯」"
幹の半ばまで侵入したところで、ジェイミーは背を戦慄かせ、すすり泣くように言った。強い握力で掴まる椅子の脚が床をバタバタと踊り、開いたままの口から落ちる唾液がフローリングを叩く。もっと、強く押す。彼のいやらしい器官を。薄い腹へと右手を回し、乞われる箇所へ重点的に肉傘を押し付けた。
当侵入至茎干中途时,杰米浑身颤抖着发出抽泣般的声音。他紧握的椅腿在地板上咔嗒作响,张开的嘴角滴落的唾液敲击着木地板。再用力些推入。将他那令人作呕的器官。左手绕向单薄的腹部,在乞求的部位重点施压那肉冠状物。
「ッあ! あ、あああぁ、ア、ああァ
"「啊!啊、啊啊啊、啊、啊啊啊——"――
——~~~……っ」
逆三角を描く背がグンと反って、ブルブルブルッ、と細かく痙攣した。美しくカーブを描くその姿を、大きな鏡は余すことなく見せてくれる。乱れた三つ編みがフルン、フルンッと震え、力んだ腕に青筋が立ち、ボリュームのある上半身からしなやかな細腰へと汗が流れていく。
勾勒出倒三角的背部猛然反弓,细细地颤抖着。那优美弯曲的体态,被巨大的镜子毫无保留地映照出来。凌乱的发辫簌簌晃动,绷紧的手臂浮现青筋,汗珠从丰盈的上半身流向柔韧的细腰。
グリグリ、と彼の良い部分をほじるように腰と動かすと、ジェイミーのペニスから、じゅわじゅわじゅわ、と白濁が湧きあがった。ぬるいトロみは上向くペニスをつるつると滑って、トローンと糸を引いて落ちていく。湧き出す薄い色のミルクは、あっという間に足元に水溜まりを作り出した。その景色に、はっ、と息を呑むほどに欲情する。
当他像挖掘珍宝般扭动腰肢时,杰米的阴茎汩汩涌出白浊液体。温热的浓稠顺着翘起的阴茎滑落,拉出黏腻的银丝。不断渗出的淡色蜜液转眼就在脚边积成水洼。目睹这般景象,他倒抽着热气情难自抑。
「ルーク、ルーク、っ、オレ、すっげえ気持ちいい
"「卢克、卢克…我、舒服得要命…」"……ッ」
ぐずぐず、と涙を滲ませて、ジェイミーがか細く啼いている。俺の、チンコで、コイツを、気持ち良くしてるんだ。喜びを噛み締めるごとに、腹の底から野生の欲が湧き上がり、ハアッハアッ、と息が鋭くなる。グリグリと腰を回して擦り付けると、ジェイミーの喘ぎは激しさを増し、バタバタと髪を振り乱した。
杰米抽抽噎噎地渗着泪,发出细弱的呜咽。我的阴茎正让他舒服起来。每尝到一丝欢愉,野性的欲望就从腹底涌上,呼吸变得急促起来。扭动着腰摩擦时,杰米的喘息愈发激烈,头发凌乱地甩动着。
グニュグニュと擂り潰すように押し上げるその部分が、彼の興奮に比例し膨らんで出っ張っていく。まるでここを押してくれと言わんばかりに盛り上がるその場所は、やはり男の急所、前立腺なんだろう。僅かに引いた腰でズンッ、と突き上げると、彼の鈴口からサラサラとした液体が、ビュッ、と一筋噴き上がった。掴む椅子を濡らすほどの勢いに、ジェイミーはあられもない声を上げ悶絶する。
像捣碎般顶弄的部位,随着他的兴奋逐渐膨胀凸起。那处仿佛在央求被按压般鼓胀起来的地方,果然是男人的敏感点——前列腺吧。稍稍后撤腰部再猛地一顶,他铃口便喷出一道滑润液体。飞溅的力道甚至打湿了紧抓的椅面,杰米发出不堪的呻吟昏厥过去。
「っや、あ、あッ、! ルーク、ルークぅ
"「呀、啊、啊嗯……!卢克、卢克……」"……ッ、出ちゃ、んあっ、あっ、あっ
啊、要、要去了、啊、啊、啊……ッ」
トン、トン、トン。扉をノックするような軽さで、身体を揺すりながら細かく突き上げていく。プシュッ、プシュッ、と噴き上げていた精液は次第に勢いを失くし、彼の先端からダラダラとだらしなく溢れるだけになった。ジェイミーは一層強く膝を震わせると、発情期の猫のように声を上げ、ぎゅうぎゅうと括約筋を引き絞った。
咚咚咚。像敲门般轻柔的力道,一边摇晃着身体一边细细顶弄。噗咻、噗咻,喷涌而出的精液逐渐失去力道,最终只能从他前端滴滴答答地狼狈溢出。杰米的双膝颤抖得更加厉害,像发情期的猫一样发出叫声,括约肌紧紧绞缩起来。
「っあ、あぁん、ううぅん
"「啊、啊啊、呜嗯"……っあ、ぅ、あ、ううぅ」
啊、呜、啊、呜呜」
この緩い抽挿で、絶頂を迎えたらしい。ギチギチと引き締まる肉環に締め上げられたペニスが、今度はパクパクと柔く食まれていく。
在这缓慢的抽插中,她似乎达到了高潮。被紧致肉环绞紧的阴茎,此刻又被柔软地吞吐起来。
「あ、あ、あ、
"「啊、啊、啊、"……んんぁ、ああぁ
嗯啊、啊啊……」
ガクン、と俯いた彼は額を椅子の背に擦り付けながら、艶めかしく腰をくねらせる。蠢く腸管は半分まで挿り込んだ屹立を舐り上げ、ゾワゾワと鳥肌の立つような心地良さで包んでいく。その熱に、開いた毛穴からドッと汗が噴き出した。肩で息を繰り返していると、ジェイミーはこちらを振り返り、桃色に充血した目で挑戦的に微笑んだ。
他猛地低头,将额头抵在椅背上磨蹭,腰肢妖娆地扭动着。蠕动的肠壁舔舐着半截没入的坚挺,酥麻快感如鸡皮疙瘩般蔓延全身。在这股灼热中,张开的毛孔骤然涌出大量汗珠。当杰米喘着粗气回头时,那双充血泛红的桃花眼正挑衅地望过来。
「っはあ
"“哈啊"……はあ
哈啊……もっと、動けよ
再动起来啊……お前の、本気、見せろよ」
让我看看...你真正的实力啊」
ジェイミーはツン、と尻を突き出したかと思うと、ぬっとりと時間をかけ腰を引いた。ずる、ずる、ずるるぅ、と引きずり出されると、欲張る粘膜がペニスの表面に貼り付き、肉孔全体がぐにゅりと形を変えた。
杰米突然翘起臀部,又缓缓向后撤腰。伴随着黏腻的抽离声,贪婪的黏膜紧贴着阴茎表面被拖拽而出,整个肉穴都随之扭曲变形。
ヌコ、ヌコ、と前後を続ける細腰を両手で包んで、彼の動きに反するように腰を突き出しては引く。差し出される桃割にはズブリと深く挿入し、腰を引かれるタイミングで抜け落ちないギリギリまで抜去する。そんな動きを数往復すれば、ぎこちなかった抽挿はあっという間に激しくなり、ジェイミーは嬉し気に声を裏返した。
双手包裹着前后摆动的细腰,逆着他的节奏顶送又后撤。每当蜜桃般的臀缝迎来撞击时便深深插入,趁他后撤的瞬间又抽至即将滑脱的临界点。如此往复数次后,生涩的抽插转眼变得激烈,杰米欢愉的声线陡然拔高。
ぎゅぽっ、と音を立てカリまで引き抜かれたチンコが、ぢゅるるっ、と音を立て吞み込まれていく。ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ。どちゅっ、どちゅっ、どちゅっ。本能のままに繰り返すピストン運動は留まることを知らず、俺たちの息遣いを忙しなくしていく。
随着“咕啾”一声,阴茎被从冠状沟处彻底拔出,又伴着“滋噜”声被重新吞入深处。咕啾、咕啾、咕啾。噗哧、噗哧、噗哧。遵循本能的活塞运动不知停歇,让我们的喘息愈发急促凌乱。
「ッは、あッ、ル、ク、っきもちいい、きもちいい、ッ」
"「哈、啊、鲁、克、好舒服、好舒服、啊」"
「ッハ、ッハ、ッハ、俺もッ、止まんね、
"「哈、哈、哈、我也、停不下来、"……!!」
!!」
ミチミチと肉襞の並ぶ内奥へ欲望を擦り付ける快感を、キツく引き絞る肛門が扱いていく。もう何も、考えられない。それほどに、挿入の度に征服欲が満たされ、抜き出す度に心地良さがバチバチッと弾ける。
层层叠叠的肉褶深处,快感随着欲望的摩擦被紧紧收缩的肛门所掌控。已经什么都、无法思考了。每一次插入都让征服欲得到满足,每一次抽出都有愉悦感噼啪迸发。
彼の美しさに釘付けになって、その心根に惚れて。その身を抱きたい、と思ったのはきっと、誰にも渡したくない、自分だけのものにしたいという所有欲からくる願望だった。彼を抱くことでそんな欲が満たされるだけでなく、こんな快感が得られてしまって、いいんだろうか。ああ、嬉しい。俺が先に惚れたんだ。誰よりも先に、コイツを求めて勝ち取った。絶対に絶対に、誰にだって、死神にすらコイツを譲るつもりはねえ。口内に溢れる唾液をゴクリと呑み込んで、前のめりのままだった彼の身体を、ぎゅう、と抱き締めた。
被他惊人的美丽所震慑,又为他纯净的心灵而倾心。想要拥抱这副身躯的念头,必定是源于不愿与任何人分享、只想独占他的占有欲。通过拥抱他不仅满足了这种欲望,还能获得如此快感,这样真的可以吗?啊,多么幸福。是我先爱上他的。比任何人都更早地渴望并赢得了这家伙。绝对、绝对不会把他让给任何人,哪怕是死神也不行。咽下满溢在口腔中的唾液,将前倾着的他紧紧搂入怀中。
「ッジェイミー
"「杰米"……!」
彼との身長差は、およそ一〇センチ。膝を曲げてもその差はすべて埋めきれず、挿入したまま抱き起こすと、彼はツンとつま先立ちをするしかなくなった。ズゥン、と彼の体重が反り繰り返るペニスへと乗って、根元近くまで一気に挿入が進む。
与他之间约有十公分的身高差。即使屈膝也无法完全消弭这个差距,当插入后将他抱起时,他只能被迫踮起脚尖。随着他体重的下沉,阴茎被深深反折,一下子插到了接近根部的位置。
「うっ、ううっ、う、ん゙んぅ
"「呜、呜呜、呜、嗯嗯"……ッ!」
息苦しさに仰け反る彼の、ほのかに汗の香る髪へと鼻先を押し付ける。立ったまま交わる俺たちを見守る鏡には、ぽっこりと下腹を膨らませる彼が写っていた。ごりゅり、ごりゅり、と腰を動かす度に上下するそれは、彼の薄い腹を内部から押し上げる、俺の形を浮き彫りにしている。
因窒息感而后仰的他,发丝间渗出微汗的芬芳,我将鼻尖埋入其中。镜中映照出我们站立交合的身影,他微微隆起的小腹格外醒目。每次腰部抽动时,咕噜咕噜作响的律动都让那薄薄的腹部从内部被顶起,清晰勾勒出我的形状。
「ジェイミー、見えるか? ほら」
"「杰米,能看见吗?看啊」"
細い顎を掬い上げて、鏡のある方角へと顔を向けさせる。深い挿入に膨れる下腹を撫でると、ジェイミーは眉を困らせ、ハフハフと下手くそに笑った。
纤细的下巴被轻轻托起,转向镜子的方向。当手掌抚过因深入而微微隆起的下腹时,杰米困扰地皱起眉头,发出笨拙的喘息与笑声。
「ははっ、ヤバ
"「哈哈,糟"……こんななんのかよ、っ」
这算什么事啊,」
「苦しくねえ?」
"「不难受吗?」"
「そりゃ苦しい、っけどそれ以上に、頭ン中、ワケ、分かんなくって」
"「虽然难受...但更让我脑子乱成一团浆糊」"
ジェイミーが言葉を紡ぐに合わせて、きゅう、きゅう、と根元が引き絞られる。クリクリ、と下腹を潰すように手を動かすと、彼の息遣いが大きくなる。
随着杰米编织话语,根部被紧紧勒住,发出吱吱声。当手揉捏下腹时,他的呼吸变得粗重。
「はっ、あ゙ッ、そこ、そこ弄られると、ッはあ、はあっ、あ、ッルーク、んあぁ
"“哈啊、啊!那里,被碰到那里的话,嗯啊、哈啊、啊、卢克、呜啊”"……!」
「気持ちいいんだ?」
"“舒服吗?”"
「うん、うん
"「嗯、嗯"……ッ」
たっぷりと吐き出しきったジェイミーのペニスが、ピクンッ、ピクンッ、と切なげに跳ねる。出せるものを失っても、挿入による気持ち良さは変わらないらしい。内側と外側の両方から前立腺を圧し潰されて、ジェイミーはガクガクと震えながら目を白黒とさせている。
杰米的阴茎在充分释放后,仍一抽一抽地可怜兮兮地跳动。即便失去了可射之物,被插入的快感似乎并未改变。内外两侧同时挤压着前列腺,杰米浑身颤抖,翻着白眼。
「お、おおぉ
"「哦、哦哦"……ッう、う、るぅ、く
呜、呜、噜、嗯……ルークぅ
卢克……」
甘ったるく煮詰まったような、ドロリドロリと粘性のある嬌声が耳を溶かす。そしてもうさすがに、ブクブクブク、と沸き上がるこの性欲も、我慢の限界に達してしまった。ぎゅっちりと隙間なく俺を咥え込む最奥にたっぷりと注ぎ込んで、そしてまたすぐに、熱いナカを掻き回してやりたい。隅々まで、俺色に染め上げてやる。
甜腻到几乎煮化的、黏稠得拉丝的娇声将耳膜都融化了。而此刻这咕嘟咕嘟沸腾的欲望,也终于到了忍耐的极限。想要在那紧紧包裹不留一丝缝隙的最深处尽情倾注,然后立刻再次搅动那灼热的内部。直到每个角落,都染上我的颜色。
首を伸ばして、ちゅ、と薄い頬に口づけた。ジェイミーはこちらを振り向くと、ちゅるちゅると俺の唇を舐めた。舌を伸ばし絡め合いながら、とちゅ、とちゅ、と水音を立て抽挿を再開する。小さく細やかだった水音はふたり分の吐息と共に、どんどんと激しさを増していく。ぬるぬると濡れた濃密な襞、きつく吸い上げる胎の底、搾り取らんとする筋肉の輪。もっと、もっと味わいたい。この男を全身で味わいたい。ぐにゅう、と奥底まで挿入しきって、フルフルと身を震わす彼を抱き締める。そのままグンと仰け反るようにして、ジェイミーの膝裏を抱え上げた。
伸长脖子,啾,在薄薄的脸颊上落下一吻。杰米转过头来,啾噜啾噜地舔舐我的嘴唇。伸出舌头交缠之际,啾、啾,伴随着水声重新开始抽插。原本细小轻柔的水声随着两人的喘息逐渐变得激烈。滑腻湿润的紧密褶皱,紧紧吸吮的子宫深处,仿佛要榨干一切的肌肉环。更多,还想品尝更多。想用全身来品味这个男人。咕扭,深深插入最深处,紧紧抱住颤抖不已的他。就这样猛地后仰,抱起了杰米的膝窝。
「う、わ⁈ あ、ゥ、んん
"「呜、哇⁈ 啊、嗯、唔唔"……~~~~っ!!」
~~~~!!」
背後から抱え上げた彼の身体を、両腕と、深々と挿入したペニスの三点でしっかりと支える。ジェイミーは舌を突き出しながら、深く咥え込んだ衝撃に、ビュビュッ、と潮を噴き上げた。
从背后将他整个身体托起,双臂与深深插入的阴茎三点支撑得稳稳当当。杰米吐出舌头,在深深吞入的冲击下,“噗咻、噗咻”地喷涌出潮水。
ちぐはぐな感想だという自覚はあるのだが、彼の身体を持ち上げた瞬間、鍛えていて良かったなと思った。がっちりとしたジェイミーの身体ですら軽々と持ち上げられる腕力を備えていて、本当に良かった。
虽然自觉感想有些不合时宜,但在抬起他身体的瞬间,我由衷庆幸自己坚持锻炼。连杰米这样结实的身躯都能轻松托起的臂力,实在是再好不过了。
本能の赴くまま腰を打ち付ける度に、パンッパンッパンッ、と濡れた肉が音を立て、溜まりに溜まった射精欲がはち切れんほどに膨れ上がる。鏡には、俺に揺さぶられ、うっとりと息を上げる彼が写っている。汗に濡れ、顔を赤らめ、天を見上げながら喘ぎ続けるジェイミー。その艶めかしい美しさを睨み付けながら、ググゥ、と張りつめる下腹部に力を込めた。
每次跟随本能重重撞击时,“啪嗒、啪嗒、啪嗒”,湿润的肉体都会发出声响,积蓄已久的射精欲望膨胀到几乎要爆裂。镜中映出他被我摇晃得神魂颠倒、喘息连连的模样——汗湿淋漓、面颊绯红、仰望着天花板不断呻吟的杰米。我凝视着这副淫艳绝伦的美景,在“咕呜”声中向紧绷的下腹狠狠发力。
「はあッ! はあッ! ジェイミー、ジェイミーッ!!」
"「哈啊!哈啊!杰米,杰米!!」"
うねる最奥へ打ち込むように、ビュウッ、ビュウーッ、と精液を噴き上げて、たっぷりと注ぎ込んでいく。吐き出す爽快感と心地良さにカチカチと歯を鳴らしつつ、ぐうんぐうん、と奥底をこね回す。射精しながら柔襞を潰すこの感覚は、雄にしか分からない快感だろう。ぐにゅう、と円を描くように彼の身体を揺すると、ピュピュッ、と胸元まで細い潮が噴き上がった。
如同向扭动的最深处穿刺般,噗咻、噗咻——地喷涌出精液,尽情倾注。在吐出时的畅快与舒适中咔嗒咔嗒地磨着牙,同时咕嗯咕嗯地搅动最深处。一边射精一边碾平柔软皱褶的这种快感,恐怕只有雄性才能体会吧。咕扭——地画着圆摇晃他的身体时,噗咻噗咻——地有细小的潮水喷涌至胸口。
ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ。掠れた呼吸を重ね合わせたまま、鏡の中のジェイミーと視線を絡ませる。俺の胸に凭れ肩を揺らすその顔は、度重なる絶頂で流した涙や鼻水、噴き上げた体液でドロドロになっている。そんな彼を抱え上げたままベッドへと戻り、ぬっぽりとペニスを抜き出して、横たえてやった。小さく身を折ったまま転がる彼の、深くゆっくりとした呼吸に合わせ、緩んだ肛肉がヒクヒクと開閉を繰り返す。余韻に蕩ける頬に口づけて、彼の身体をタオルケットで包んでやった。
哈、哈、哈、哈。交叠着凌乱的呼吸,与镜中的杰米视线纠缠。倚靠在我胸前摇晃肩膀的那张脸,因多次高潮而流下的泪水、鼻涕和喷溅的体液弄得一塌糊涂。就那样抱着他回到床上,啵地一声拔出阴茎,让他躺下。他蜷缩着小小的身子翻滚,随着深沉缓慢的呼吸,松弛的肛肉一抽一抽地开合。我在他荡漾着余韵的脸颊上落下一吻,用毛巾毯裹住了他的身体。
シャワーを浴びた後、フロントへと電話をかけ、軽い食事を注文した。運んできてくれたスタッフになるべく室内を見せたくなくて、廊下に待機し、配膳カートのまま食事を受け取った。ガラガラと押すカートの上では、オレンジが色鮮やかなサラダや、ホカホカと湯気を立てるスープ、こんもりと盛られたローストビーフに、揚げたてのフレンチフライが並んでいる。デザートは、生クリームが零れんばかりに添えられたチョコレートケーキだ。飲み物は彼の好みに合わせ、コーヒーではなく紅茶を選んだ。
冲完澡后,我给前台打了电话,点了一份简餐。为了尽量避免让送餐员看到房间内部,我站在走廊等候,直接从餐车上接过食物。嘎啦作响的推车上,摆放着色彩鲜艳的橙子沙拉、冒着热气的浓汤、堆得高高的烤牛肉,以及刚炸好的薯条。甜点是点缀着几乎要溢出的鲜奶油的巧克力蛋糕。饮料则按照他的喜好,选了红茶而非咖啡。
「ジェイミー、腹減っただろ? 飯持ってきてもらったぜ」
"“杰米,饿了吧?我给你带饭来了。”"
「……ん~~」
“嗯~~”
微睡んでいたのだろう、ジェイミーは気怠げに唸ると、薄っすらと目蓋を押し上げ、パチパチ、と瞬きを繰り返した。
大概是浅眠了片刻吧,杰米慵懒地哼了一声,微微抬起沉重的眼皮,眨巴了几下眼睛。
「何あんの」
"“什么东西”"
ガラガラと掠れる声は、先ほどの情事の激しさを如実に表している。
沙哑的嗓音里还带着方才情事激烈的余韵。
「サラダとスープ、肉とポテト。それにケーキもあるぜ」
"「沙拉和汤,肉和土豆。还有蛋糕哦」"
「んじゃスープ」
"「那我要汤」"
「あいよ」
"「好嘞」"
身を起こした彼へと、取り分けたスープを手渡す。溶けたチーズとベーコンがたっぷりと乗ったベイクドポテトスープを、ジェイミーはちびちびと噛み締めては飲み込んでいく。
将盛好的汤递给坐起身的他。融化的奶酪与培根铺得满满的烤土豆汤,杰米小口小口地咀嚼吞咽着。
「うまい?」
"“好吃吗?”"
「ん」
"「嗯」"
「肉も食えよー」
"“也吃点肉啊—”"
「んー、あんま食えねえんだけど」
"「嗯——,不太吃得下啊」"
「だぁめだって、今日全然食ってねえだろ? ちょっとでいいから。口開けな」
"「不行啦,你今天几乎没吃东西吧?就一点点也好。把嘴张开」"
ぱかっ、と開いた口へと、柔らかくジューシィなローストビーフを押し込んでやる。ぱくっ、と指先に噛み付かれて、そのくすぐったさに思わず頬が緩んだ。セックスの後の時間って、まるで幸せが脇腹をくすぐっているかのように照れ臭い。俺たちは言葉少ないまま、思い思いに口を動かし、じっくりとお互いの瞳を見詰め合った。
啪嗒一声,我将柔软多汁的烤牛肉塞进他张开的嘴里。他咔嚓咬住我的指尖,那股酥麻感让我不由自主地放松了脸颊。性事过后的时光,仿佛幸福在挠着侧腹般令人害羞。我们沉默寡言,各自咀嚼着食物,久久凝视着彼此的眼眸。
「ルーク」
"「卢克」"
「うん?」
"「嗯?」"
「ちょっと前に、オレが先にお前を見つけた、って話しただろ」
"「刚才不是说了吗,是我先找到你的。」"
「あー、そういや言ってたな。でも絶対に、俺が先に惚れたんだぜ?」
"「啊——这么说来确实提过。但绝对是我先动心的!」"
そう、俺はお前と目が合ったあの瞬間に、目を見張る余裕もなく、文字通りストン、と恋の深穴へ落ちてしまった。自分の気持ちに気付くまで時間はかかっちまったけど、絶対に、俺の方が先にお前を好きになった。自信満々に胸を張ると、ジェイミーはクスクスと笑いながら、いいや、絶対オレの方が先、と誇らしげに目を細めた。
没错,就在与你四目相对的瞬间,我连惊讶的功夫都没有,直接扑通一声掉进了爱情的深渊。虽然花了好长时间才意识到自己的心意,但我敢肯定,绝对是我先喜欢上你的。"杰米挺起胸膛自信满满地说道,随即又咯咯笑着眯起眼睛,一脸得意地反驳:"才怪,绝对是我先动心的。
「だってオレ、お前と初めて闘るよりも前から、お前のこと知ってるんだぜ」
"「因为我啊,早在第一次和你交手之前,就已经认识你了」"
「……へ?」
诶?
思わぬ言葉に、ポカン、と口を開いたまま見詰め返す。ジェイミーは真っ新な笑みを深めると、指先に摘まんだオレンジを、ぎゅむ、と俺の口に押し込んだ。
被意外的话语惊得张大嘴愣在原地。杰米加深了崭新的笑容,将指尖捏着的橘子“噗呲”一声塞进我嘴里。
「オレが初めて、この街に来た日。たまたまやってた大会を見に寄ったら、そこにお前が出てた」
"「我第一次来到这座城市那天。偶然去看了正在举办的比赛,结果发现你在场上」"
「……マジで?」
真的假的?
「マジで」
"「真的」"
二年と数か月ほど前、ジェイミーはここメトロシティに初めて降り立ったらしい。今は仕事が忙しくなかなか機会を作れないが、確かにその頃、とある大会で優勝した記憶がある。
大约两年零几个月前,杰米似乎初次踏足这座地铁城。如今工作繁忙难觅良机,但确实记得他曾在某次大赛中夺冠。
「お前の倍はある大男、相手にしてただろ」
"「我可是对付过比你壮一倍的大家伙」"
「……うん」
嗯
「その姿がめちゃくちゃ印象的でな。さっさと生活の諸々を整えなきゃなんねえのに、お前のことをつい色々と調べちまった」
"「你那模样实在令人印象深刻。明明该赶紧把生活琐事都安排妥当,却忍不住查了你一大堆事情」"
「っそれ、マジのマジで?」
"「诶等等,真的假的啊?」"
「ははっ、こんなコト嘘ついてどうすんだよ。マジのマジ、本当の話だ」
"「哈哈,撒这种谎有什么意义嘛。千真万确,我说的都是实话」"
「わ、うわぁ~~
"「哇、呜哇~~"……」
信じられないという驚きが八割、はにかむような嬉しさが二割。胸いっぱいに広がった感情に押し出された感嘆が漏れ、ニコニコと笑む恋人を見返すことしかできない。
难以置信的惊讶占八成,含羞带怯的喜悦占两成。满溢胸口的情绪推挤出一声惊叹,我只能回望着笑得眉眼弯弯的恋人。
「どーだ、分かったか? このジェイミー様がお前を見つけてやったんだ。心から感謝しろよ」
"「怎么样,明白了吗?这可是本杰米大人找到你的。给我心怀感激地谢恩吧」"
にゃはは、と機嫌よく笑うその頬が、目の前でじわじわと上気していく。強がるように恥じらいを押し隠しても、彼の顔には感情が分かりやすく表れる。お前、そんなに俺のこと好きだったのかよ。負けず嫌いで通ったこの俺だけど、今回ばかりは素直に認めざるを得ないみたいだ。
他发出「喵哈哈」的愉快笑声,脸颊在眼前渐渐泛起红晕。即便逞强地试图掩饰羞赧,他的情绪依然明明白白写在脸上。喂,原来你这么喜欢我啊。虽然我一向以不服输著称,但这次看来不得不老实认输了。
「っは~。分かったよ、こりゃ俺の負けだわ」
"「哈~。知道了啦,这次算我输」"
「んひひ! やぁーっと負けを認めたか。オレ様の言うことに間違いなんかねえんだよ、分かったか? 脳筋クン」
"「嘻嘻!终于肯认输了吧。本大爷说的话怎么可能有错,明白了吗?肌肉笨蛋」"
そう言うと、ジェイミーはぽってりとクリームを掬い上げたケーキをむんずと掴み、はむはむと頬張った。嬉しそうに細められた瞳は、ずうっと俺の方を向いている。真っ白なシーツの上、タオルケットで素肌を隠しながら、胡坐を組んで甘味へと噛み付くその無邪気さと愛おしさに、胸の奥がきゅんと高鳴る。
说完,杰米一把抓起沾满奶油的蛋糕,啊呜啊呜地大口吃起来。他眯起开心的眼睛一直望向我。在雪白的床单上,用毛巾被遮住赤裸的身体盘腿而坐,天真无邪地啃着甜点的模样让我的胸口怦然悸动。
「ジェイミー」
"「杰米」"
ギッ、とスプリングを軋ませるように、マットレスに手をつく。グンと近づいた距離に彼は目を瞬き、こくん、と小さく喉を鳴らした。
吱——弹簧发出声响般,我用手撑住床垫。突然缩短的距离让他眨了眨眼,喉咙里发出小小的咕噜声。
「もう一回、シたい、んだけど」
"「想再来一次啊」"
欲張りが過ぎると叱られたら、そうだよなと頷くしかない。それでも、今すぐにその肌に触れたいと思う。汗に濡れ艶々と光るぬくもりを、隅々まで味わい、感じていたい。ジェイミーはふよふよと視線を彷徨わせると、唇を尖らせたまま、モゴモゴと小さく不明瞭に答えた。
若被斥责太过贪心,也只能点头称是。即便如此,此刻仍渴望触碰那肌肤。想要细细品味、感受那被汗水浸湿而闪闪发亮的温暖。杰米飘忽着游移视线,撅起嘴唇含糊不清地小声回答。
「……オレも、
我也是,……シたい」
想死」
ファイトの始まる直前、カチッ、と視線が交じり合うその時と同じく。くるん、と彼の瞳が俺を見た瞬間、電流が走るかのように、全身に興奮が駆け巡った。チョコと生クリームの味に上塗りされた唇に噛み付いて、狭い口内を舐め回し、腫れあがったままの舌先を吸い上げる。じゃれ合いでも絶対に負けないとでも言うように、幾度も上下を入れ替え、はだけた素肌に鬱血を刻み合う。最後には、彼が俺に腹上に馬乗りになった。パラリ、と解かれた長い髪が、メリハリある身体のラインにぴったりと沿う。
如同比赛开始前那瞬间目光交汇时的咔嗒一声。当他咕噜转动的眼眸望向我时,仿佛有电流窜过,兴奋感席卷全身。我咬住那覆满巧克力和鲜奶油滋味的嘴唇,舔舐狭窄的口腔,吮吸仍肿胀的舌尖。仿佛在宣告嬉闹中也绝不认输般,我们多次上下易位,在裸露的肌肤上刻下淤痕。最终他跨坐在我腰腹之上。散落的长发紧贴着那具富有张力的身体曲线。
「今度はオレの番」
"「这次轮到我了」"
ジェイミーは魅惑的に笑むと、ちゅう、ちゅう、と俺の口先を吸い上げ、ぬっとりと口内を舐った。羽織っていたバスローブが解かれ、れる、れる、と首筋が甘い舌先に舐められる。俺のやり方を真似る、その拙さにゾクゾクと肌が粟立つ。彼に触れられれば何だってキモチイイのに、こんな風に舌を這わされちゃあ、あっという間に勃ち上がってしまう。
杰米露出魅惑的笑容,啾、啾地吸吮着我的唇尖,又湿漉漉地舔进口腔。披着的浴袍散开,呃、呃地,颈项被甜蜜的舌尖舔舐。他模仿着我的方式,那份笨拙让我浑身起鸡皮疙瘩。被他触碰哪里都舒服,但像这样被舌头游走,转眼间就硬了起来。
ブルンッ、と勃起する性器へと、あの艶やかな唇が躊躇いもなく吸い寄せられていく。相変わらず元気に膨らむ切っ先がモグモグと含まれて、皮膚の薄い先端を温かな舌が丁寧に愛撫していく。
那对艳丽的唇毫不犹豫地含住勃地跳动的性器。依旧精神饱满的尖端被咕啾咕啾地吞吐,薄嫩的顶端被温暖的舌头细致爱抚着。
ベルベッドのような滑らかさを堪能しながら、ザリザリと触り心地の良い後ろ頭を引き寄せる。小さな唇が賢明に顎を開いて、口腔のすべてを駆使し、いやらしく俺の砲身を愛していく。この男は、恐ろしいまでに、綺麗だ。だからこそ、いきり立つ性器を頬張るこの姿を前にすると、禁忌を目の当たりにしたかのように狼狽え、胸が騒ぎ、血が沸き立っていく。劣情を誘うように、彼はチロチロと赤い舌先を蠢かし、上目遣いのままにっこりと笑った。
享受着如天鹅绒般顺滑的触感,我将毛茸茸手感极佳的后脑勺揽近。小巧的唇瓣灵巧地分开下颌,调动整个口腔,淫靡地疼爱着我的枪管。这个男人,美得令人心惊。正因如此,当目睹他含住昂扬性器的模样时,如同直面禁忌般慌乱,胸口躁动,血液沸腾。他仿佛在引诱邪念般,吐出红舌尖轻轻蠕动,仰着脸露出灿烂笑容。
「動くなよ」
"「别动」"
浮かしかけた身体を押し戻されて、固くそびえる屹立が跨がれた。交わる前に比べ断然に柔軟になった肉門を、彼は見せ付けるように指で割り開いていく。コポッ、と音を立て、奥に注ぎ込んだ種汁が落ちてきた。トロォリ、と塊のまま流れ出た精液は、ケーキに添えられた生クリームのようにぽってりとペニスに乗っかって、そのままゆっくりと垂れ落ちていく。
刚浮起的腰身被按回,坚硬耸立的阳物跨了上来。比起初次交合时明显柔软许多的肉穴,被他炫耀般用手指缓缓撑开。随着噗嗤声响,先前注入深处的浓精流淌下来。黏稠的精液块如同蛋糕裱花奶油般,一坨坨挂在阴茎上,又缓缓垂落。
「ルーク
"「卢克"……ルーク、っ」
卢克、啊」
目を据わらせ、息を上擦らせながら、彼はゆっくりと腰を下ろしていく。下から見上げると、ゆるりと勃ち上がりヒクヒクと震えるペニスや、小さく引き締まる睾丸、ビンビンと膨れ上がる乳首の形そして、開いたままの唇から唾液を零す、発情しきった表情がありありと観察できる。ぐにゅ、ぐにゅ、ぐうぅ。あの柔らかく熱い肛肉が、俺自身を強く噛み、こそぐように動く。ほう、と息をつく間に、ズロロロロ、と喉奥まで咥え込まれた。
他目光凝滞,呼吸急促地缓缓沉下腰。从下方仰视,能清晰观察到那根逐渐挺立、颤动不已的阴茎,紧缩的小巧睾丸,充血肿胀的乳头,以及从微张唇边滑落唾液、完全发情的表情。咕啾、咕啾、呜嗯。那柔软炽热的肛肉紧紧咬住我,如舔舐般蠕动。在发出“呼”的喘息间,滋噜噜噜——被深喉吞没至最深处。
絡み付く肉路に取り込まれて、その勢いに睾丸が痛いほどに縮み上がった。殴打の衝撃なら慣れたモンだが、込み上げる精液を押し戻されるような、過ぎる快感による衝撃には慣れていない。目を白黒させ見上げた先では、美しい恋人がしっとりと汗を浮かべながら、婀娜めく微笑みを見せていた。
被缠绕的肉径吞噬时,睾丸因冲击疼痛得几乎缩成一团。虽已习惯殴打般的冲击,却无法适应这种如倒流精液般、过度快感带来的震颤。翻着白眼向上看去,美丽的恋人正泛着晶莹汗珠,露出妖娆的微笑。
「どう、だよ
"「怎么样,啊"……へへ、っ全部挿った、ぜ」
嘿嘿,全都插进去了哦」
スリスリと撫で示す薄い腹は、やっぱり俺の形をかたどり、ぽっこりと膨らんでいる。彼は笑みを深くすると、艶めかしいダンスを披露するかのように、細腰をくねらせた。丸く形良い尻の真ん中で俺の怒張を頬張りながら、くね、くね、と動く度に腹の膨らみがあちこちへと動く。胎内ではしなやかな肉がくにゅくにゅと纏わりついて、甘やかされる心地良さに仰け反った。
被轻轻抚摸的平坦小腹,果然勾勒出我的形状,微微隆起。他加深笑意,如同献上一段妖娆的舞姿般扭动纤细腰肢。圆润翘臀正中央含着我勃发的欲望,每扭动一次,腹部的隆起便四处游移。内里柔韧的嫩肉缠绵绞紧,被宠溺的快感让我忍不住后仰。
「ジェイミーっ、はあ、きもちい、はあ、イイ、ッ」
"「杰米、哈啊、好舒服、哈啊、太棒了、啊」"
「んふふっ、良い眺めだぜ、
"「嗯呵呵、这景色真不错、"……もっと気持ち良くなろうな」
让我们更舒服些吧」
大きく股を開いたジェイミーがユサユサと身体を揺さぶり始め、乱れた長い髪が左右に揺れた。とちゅ、とちゅ、と腸管に残る精液が俺のペニスで攪拌され、泡立つ水音がはっきりと聞こえてくる。スクワットするように腰を上げ、体重を掛けて腰が落とされる。その度に、力強いアナルが俺を根本から搾り上げ、打ち付けられる最奥が柔らかくぢゅうぢゅうと吸い付いてくる。強烈な快感の反復運動は、グルルと呻き声を上げ泡を吹いても止むことなく続けられる。ドスン、ドスン、と腰が下ろされる度に、ジェイミーの尖る胸先がプルンッ、プルンッ、とシズル感たっぷりに揺れた。
杰米大大张开双腿开始摇晃身体,凌乱的长发左右摆动。咕啾、咕啾,残留在肠道的精液被我的阴茎搅拌,泛起泡沫的水声清晰可闻。他像深蹲般抬起腰肢,又重重落下。每次下沉时,有力的后穴都从根部绞紧我,被撞击的最深处柔软地发出啾啾吸吮声。这强烈的快感往复运动,即使他发出呜咽、吐出白沫也未曾停歇。咚、咚,每当腰肢落下时,杰米挺立的乳尖便噗噜、噗噜地诱人颤动。
「ルぅ、ク
"「卢、呜"……ッ! きもちいい、ルーク、きもちいい、お前のチンコ
!好舒服、卢克、好舒服、你的鸡巴……っきもち、いい
好舒服……ッ!」
「俺もッ、もう、やべえ、出ちまう
"「我也、已经、不行了、要射了"……ッ!!」
呃!!」
「いい、ぜ
"「很棒"……ッ! オレのナカで出しちまえよ
喂!在我里面射出来啊……ッ、ぜんぶ、ッはあ、呑んでやる
哈啊、全部、嗯啊、都给你吞下去……ッ」
ばちゅっ、ばちゅっ、と肉でぬかるみを打つ音が強まり、俺を求める声が甘ったるく上擦る。見上げるその場所には、ぷるぷると汁気を飛ばす小さなペニスと、俺の形をくっきりと浮かべる引き締まった腹、そして、ピンクに尖るいやらしい胸がある。汗のにおいがムンムンと香るその身体も、上品な顔つきを快感に溶かすその表情も、零れる唾液の筋ひとつひとつも、何もかもが蠱惑的に訴えかけてくる。
噗啾、噗啾,肉体拍打泥泞的声响愈发激烈,渴求我的声音甜腻发颤。抬眼望去,那里有颤巍巍甩着汁水的小巧阴茎,紧绷腹部清晰勾勒出我的形状,还有粉嫩挺立的淫荡乳尖。汗湿躯体蒸腾着浓烈气息,高雅面容因快感而融化,每一道垂落的银丝都散发着蛊惑人心的诱惑。
「ああぁ
"啊啊啊"……んん、はあっ、はあっ、ん、うん
嗯嗯、哈啊、哈啊、嗯、唔……んん~
嗯嗯~……ッ」
ズボッズボッズボッ、と激しく繰り返されていた抜き差しがじわじわと勢いを失くし、ジェイミーの鼻にかかった喘ぎばかりが響くようになった。あと少しで達しそうな俺を、熟れた肉襞は蠢きなぞるばかりだ。どうやら飛ばし過ぎたようで、トロントロンに蕩けた内部は甘イキの真っ最中にあるらしい。先端を吸い上げる動きが、むちゅ、ちゅう、ぐにゅぐにゅ、と強まっていく。
噗嗤噗嗤的激烈抽插声逐渐减弱,只剩下杰米带着鼻音的喘息在回荡。即将抵达顶点的我,被熟透的肉壁蠕动着缠绕。看来操之过急了,里面已经化作一滩春水,正沉浸在甜美的高潮中。前端被吮吸的动作愈发强烈,发出啾、啾、咕啾咕啾的淫靡水声。
「んん~~
"“嗯嗯~~"……はあ~~
哈啊~~……っう、うん、っん、ん~~
嗯、嗯、嗯、嗯~~……っ」
「っは、
"「哈、"……があ
啊……ッぐ、う
呃、呜……ッ!」
寸止めされたまま先端だけに与えられる刺激は、生殺しと言っていいほどに苦しい。根本はぎゅうぎゅうと噛み付かれ、いくら腹に力を入れようと射精することはできない。感じ入る彼の姿は愛らしいけれど、もう限界だ。ガシッ、と彼の括れを両手で掴んで、グッ、と握り締める。ぼう、っと瞳を細めたままの彼の身体を、真下から真っ直ぐと突き上げる。
被寸止调教的前端刺激简直如同凌迟般煎熬。根部被死死咬住,无论怎样绷紧腹部都无法射精。他沉溺情动的模样固然可爱,但已到极限了。我猛地用双手掐住他腰窝,狠狠收拢。趁他仍眯着朦胧泪眼时,自下而上笔直贯穿。
「あっ、?」
"「啊、?」"
どちゅっ。思いがけない抽挿に、ジェイミーは呆気にとられたように目を丸くした。惚ける彼の隙をついて、その身体ごと揺さぶるように律動を打ち込んでいく。
噗哧。面对突如其来的插入,杰米瞪圆了眼睛,一副猝不及防的模样。趁着他发愣的空档,对方连人带身体一起摇晃着律动起来。
「あ
"「啊"……あっ、?」
啊,?
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、!!」
"「哈啊、哈啊、哈啊、!!」"
「ッお
"「呜"……お゙えっ、ッは、はあッ!? っはあ、あ゙っ、アァッ、あ゙ああぁッ!!」
啊、哈、哈啊!? 哈啊、啊、啊啊、啊啊啊!!
ドスッ、ドスッ、と細腰を引き寄せては、奥へ奥へと圧と熱を教え込んでいく。途端、静かに吸い付くばかりだった潤肉が、媚びるように蠢き始めた。どうやら、彼の腹筋の動きに内部が連動しているらしい。彼が身もだえると肉路が戦慄き、暴力的な快感が破裂寸前のペニスに襲い掛かる。目が裏返りそうなほどに苛烈な性感に、意識が呑み込まれていく。
他一下又一下地将纤细腰肢拉近,向深处不断灌输压力与热意。霎时,原本只是静静吸附的湿润内壁,开始如献媚般蠕动起来。显然,她内部正随着他腹肌的动作而联动。当他难耐扭动时,肉径便战栗不已,暴烈的快感向濒临爆发的阴茎袭来。在几乎令人翻白眼的激烈性快感中,意识逐渐被吞噬。
「ああぁん、あんっあん、あんッ、!! イく、イく、るぅくッ!! ナカ、イっちゃ、イく、イくっ、ううぅ、ん、あ、ああ
"啊啊、嗯啊、嗯啊、嗯啊!! 要去了、要去了、要去了!! 里面、要去了、要去了、嗯、啊、啊啊"――
——~~~ッ
~~~啊……!!」
!!」
ジェイミーの胸元から下腹までが、痙攣を伴い艶めかしく波打っていく。ビクビクビクッ、と収縮を繰り返す窮屈で柔らかい胎内へと、溜まりに溜まった精を放った。どぐっ、びゅっ、びゅっ、と絶頂液を濡れた肉壁に擦り付け、グウゥと声を絞り出す。ゆさゆさと小さく揺らすと、真空状態になった奥底が、ちゅ、ちゅ、とキスを返してきた。
杰米的胸膛到下腹处,伴随着痉挛泛起诱人的波浪。在反复收缩的紧致柔软内里中,释放出积攒已久的精华。咕嘟、噗咻、噗咻地,将高潮的液体涂抹在湿润的肉壁上,挤出呜咽般的呻吟。轻轻摇晃时,真空状态的深处传来啾、啾的回应之吻。
くったりと倒れ込んできたジェイミーを抱き締めて、はあはあと息を上げる赤い頬へと唇を寄せた。好きだ、ジェイミー。愛してる。ビクンビクンと震える胎内は、収縮を繰り返し、俺を掴んで離さない。ジェイミーはもそりと頭を動かすと、泣き腫らした目蓋を薄く開いた。そして、ふにり、と唇を押し付ける、子どもがするような愛らしい口づけをくれた。
我紧紧抱住筋疲力尽倒下的杰米,将嘴唇贴近他喘息着泛红的脸颊。我喜欢你,杰米。我爱你。颤抖的子宫不断收缩,紧紧抓住我不放。杰米微微晃了晃脑袋,哭肿的眼皮轻轻睁开。然后软软地贴上嘴唇,给了我一个孩子般可爱的吻。
カーテンから差し込む陽の光に目を細め、健やかな寝息を邪魔しないよう、ベッドから抜け出した。部屋の隅に凭れかかり、トントン、と端末をタップする。コール先は、俺の直属の上司だ。昨晩中華街で起こったゴタゴタについて話すと、上司は溜まりに溜まった有給休暇を取るようにと言い置き、さっくりと電話を切った。よし、休みだ。
眯眼适应着从窗帘缝隙透进的阳光,为了不打扰安详的睡息,我悄悄从床上溜下来。倚在房间角落,哒哒地轻敲终端。通话对象是我的直属上司。汇报完昨晚唐人街的骚乱后,上司让我把积压的年假全休完,干脆利落地挂断了电话。好,放假了。
ベッドへと舞い戻り、愛おしい温もりを背後から包み込む。すうー、と華やかな匂いを深く吸うと、胸いっぱいに幸せが込み上げた。
我飘然回到床上,从背后环抱住令人怜爱的温暖。深深吸入一缕华丽芬芳,幸福感顿时盈满胸膛。
もぞもぞ、と彼が身じろぎして、寝ぼけ眼がこちらを見る。今朝方まで溶け合い交じり合い続けたせいだろう、その顔には色濃い疲労が残っていた。しかしその色は決して嫌なものでなく、ふん、と鼻を鳴らすその表情はどこまでも満足気だ。
他窸窸窣窣地翻了个身,睡眼惺忪地望过来。大概是因为直到今早都还彼此交融缠绵的缘故,那张脸上残留着浓重的倦色。但那神色绝非令人不悦,他哼着鼻音的满足表情简直溢于言表。
「仕事、休みもらってきたぜ」
"「我请好假了」"
「ん」
"「嗯」"
「昼までゴロゴロして、それからデートでも行くか」
"「白天先赖会儿床,然后去约会吧」"
「……ん~」
嗯~」
ジェイミーは小さく頷くと、額をぎゅうと俺の胸元に押し付け、深く息をついた。リラックスしきった猫のような彼の、艶々と黒い髪を指で梳いていく。ぱっちりと目覚めてしまった俺は、彼となんてことのない話がしたくて、彼の声が聞きたくて、思いつくまま様々な話題を口にしていった。
杰米轻轻点了点头,将额头紧紧抵在我的胸前,深深吸了一口气。我用手梳理着他那如放松猫咪般柔顺的黑亮发丝。已经完全清醒的我,只想和他聊些无关紧要的话题,想听他的声音,便随心所欲地说起了各种事情。
職場での出来事、最近闘った強いヤツら、教え子の失敗談。時折素肌をくすぐる笑いの気配に、もっともっと笑ってほしいと引き出しに手を掛ける。気付けば、気の向くまま風に吹かれるかのごとく、旅を続けるラシードの話題に流れついた。つい、と涼し気な瞳が俺の顔を見上げる。
工作上的趣事、最近交手过的强敌、学生闹出的笑话。偶尔被他赤裸肌肤上掠过的笑意所撩拨,我便更想逗他发笑,不断从记忆里翻找话题。不知不觉间,话题就像随风飘荡般转向了持续旅行的拉希德。那双清凉的眼眸突然抬起来望向我。
「ん? なーに」
"「嗯?怎么了」"
「……別に。お前も、そろそろどっか行きてェんじゃねえの」
「没什么。你也差不多该想出去走走了吧」
「そうだなー、前に日本に行ったんだけど、面白かったからもう一回行きてえな。格闘家のリュウ、っているだろ? 手合わせしたんだけど負けちまってさ。アイツとはもう一度闘りてえんだよなぁ」
"「是啊——之前去了趟日本,因为太有意思了所以还想再去一次。你知道有个叫隆的格斗家吧?跟他过了招结果输掉了。真想再跟那家伙打一场啊。」"
「ふーん
"「哼——"……」
すとん、と落ち込む雰囲気を感じて、ン? と首を傾げた。さっきまでピカピカと朝日を返していた大きな瞳は、今は伏せられどんな表情を浮かべているか窺い知れない。おいおい、一体どうしたって言うんだよ。頬をポリポリと掻いて、腕に抱く彼の言葉を待つ。ジェイミーはひとつふたつと溜息をつくと、眉根を寄せたままヒョイと顔を上げた。
感受到他扑通一下低落的情绪,我疑惑地歪了歪头。那双刚才还映着朝阳闪闪发亮的大眼睛,此刻低垂着,让人猜不透他脸上是什么表情。喂喂,到底怎么了啊。我挠了挠脸颊,抱着手臂等他的下文。杰米重重叹了两三口气,依旧皱着眉梢,突然抬起了脸。
「土産は要らねえから、次こそはちゃんと勝つんだぜ?」
"「伴手礼就免了,下次可要堂堂正正赢回来啊?」"
ニヤ、と片頬を上げるその笑みは、捨てられる覚悟をしたかのような悲しみを押し隠している。どうしてそんな顔をするのか見当もつかないが、このまま有耶無耶にしてはならない。そう、俺の勘が告げた。
他扯起半边嘴角的笑容里,藏着近乎决绝的哀伤。虽然不明白为何露出这种表情,但绝不能就这样糊弄过去——我的直觉这样警告着。
「土産? 何言ってんだよ、お前も一緒に決まってんだろ」
"「特产?说什么傻话,你当然得和我们一起庆祝啊」"
「……んェ?」
嗯?
きょとん、と瞳を大きく見開く彼へと、にんまりと笑んでやる。
对着瞪圆眼睛满脸困惑的他,我咧嘴露出得意的笑容。
「お前もリュウと闘ってみろよ。なんて言えばいいか分かんねえんだけど、とにかくスゲエんだよ。派手さはないんだけどさ、足の裏に根っこが生えてんじゃねえかってくらいどっしりと構えが重くて、一体何年生きてきたんだって不思議に思うくらい強くってさぁ」
"「你也该和龙打一场试试。虽然不知道该怎么说才好,总之就是超厉害的。虽然没有华丽的招式,但那稳如磐石的架势简直像脚底生根似的,厚重得不可思议,让人不禁怀疑他究竟活了多少年才能强到这种地步。」"
「っ待て待て待て、一緒に行けるワケねえだろ! オレは紅虎門から離れられねえんだぜ」
"「喂等等等等,怎么可能一起走啊!我可是没法离开红虎门的啊!」"
ムクリと起き上がり捲し立てる彼の手を、ぎゅ、と握り締め、そしてゆったりと指を絡めた。なあ、ジェイミー。お前は何もかもをひとりで背負いすぎなんだよ。やっぱり、お前には俺がいなきゃ駄目だ。その固い頭に詰まった思い込みを優しく解きほぐして、もっともっと日々を楽しむべきなんだ。その為に、お前の人生には俺が必要だ。
猛地起身嚷嚷的他被我紧紧攥住手腕,而后缓缓十指相扣。听着,杰米。你总是把一切都独自扛在肩上。果然,没有我在你身边不行啊。让我来温柔地解开你固执脑袋里那些死结,你该好好享受每一天的生活才对。正因如此,你的人生里必须有我。
「なあ、最近お前のトコに弟子入りしたヤツ、いるよな? アイツは俺の教え子でもある」
"「呐,最近不是有个家伙拜入你门下了吗?那小子也是我教过的学生。」"
「あ? ああ、そうだな」
"“啊?哦,是啊”"
「朝も夜も関係なく駆けずり回って、とにかく強くなりたい、闘いたい、って色んなコトに首突っ込みまくってるらしいな。そんなヤツだから、お前が言えばお安い御用だ、って見回りくらい代わってくれる。保証するぜ」
"“听说那家伙不分昼夜地四处奔波,满脑子只想着变强、战斗,什么事都要插一脚。所以只要你开口,替个班巡逻这种小事他肯定一口答应。我打包票。”"
そう言えば、ジェイミーは目を瞬かせたままむっつりと黙り込んだ。そんなことは考えたこともなかったと言わんばかりの表情に、コイツってば見かけによらず真面目すぎるんだよな、と笑みが込み上げる。
说起来,杰米眨了眨眼,闷声不响地沉默了。那副表情仿佛在说从未考虑过这种事,我不禁扬起嘴角——这家伙意外地太过认真了啊。
「そん
"“那"……なつもりで、弟子にしたんじゃねえし。オレがアイツの面倒見てやんねえと
我可不是因为一时兴起才收他当徒弟的。要是我不罩着那家伙――
——」
「なぁに言ってんだ、師匠のお前が弟子を信用しないでどうすんだ。アイツも相当強くなってるし、何でもかんでも守ってやる必要はねえだろ」
"「胡说什么呢,你这当师父的不信任徒弟怎么行。那小子已经变强不少了,没必要事事都护着他吧」"
だからさ、今度時間を取って、ふたりで旅行に行こうぜ。そう続けると、ジェイミーはゆっくりと俺の腕へと頬を付けて、もそもそとシーツを引き上げた。
所以啊,下次抽个时间,就我们俩去旅行吧。这样说着,杰米慢慢把脸颊靠上我的手臂,窸窸窣窣地拉高了被单。
「……考えとく」
考虑一下
ぽかぽかと上がりゆく体温が、枕にされた腕だけでなく、触れ合う足先、吐き出される呼気からも伝わってくる。
逐渐攀升的温暖体温,不仅从被当作枕头的臂弯传来,更透过相触的脚尖、交织的吐息丝丝渗透。
なあジェイミー。俺は、お前と離れる気なんてサラサラないから。お前が俺を見つけたのなら、その手を握り締め、この胸の中まで引き寄せたのは、この俺に違いない。
听着杰米。我啊,压根没想过要和你分开。既然是你找到了我,那么紧握这只手、将你拽入怀中的,必定是我无疑。
ホカホカと湯気を立てんばかりに赤くなった額へと口づける。もう暫くふたりで暖め合って、目が覚めたらブランチに行こう。それまで、お前と旅する時間について考えてみる。
我在你滚烫泛红的额头上落下一吻。让我们再依偎取暖片刻,等睡醒后就去吃早午餐吧。在那之前,我要好好想想与你共度的旅程时光。
きっとそう遠くない未来に、夢の時間は現実になるよ。
在不远的未来,梦想的时光终将成为现实。
あとがき
后记
まめダイルさんの作品が大好きで、いつか表紙を描いて頂けないかなぁ、とずっと夢見ていました。二〇二三年の初冬の頃、勇気を出して、新刊の表紙と挿絵を依頼できないかとお声がけしました。まめダイルさんは快く引き受けてくださり、大変嬉しく、大興奮したのをよく覚えています。
我十分喜爱豆太老师的作品,一直梦想着有朝一日能请老师为我绘制封面。2023 年初冬时节,我鼓起勇气询问老师是否愿意为新书绘制封面和插画。豆太老师欣然应允,那份欣喜若狂的心情至今记忆犹新。
元々は、まめダイルさんのイラストを元にして文字を書かせて頂きたいなと思っていました。ですが結果的に、私の書く文章を元に、挿絵を描いて頂くスタイルとなりました。リクエストする側に回ってしまい恐縮でしたが、自分の文章を元にこんなにも沢山の挿絵を描いて頂け、連絡を頂く度に感動し、「早く皆さんにお見せしたい」と悶え苦しむ日々を送っていました。今回無事発行することができ、皆さんに手に取って頂けて本当に嬉しいです。
最初本是想着以豆太老师的插画为基础来撰写文字。但最终却变成了以我的文章为蓝本,请老师绘制插画的形式。虽然很惭愧自己成了提要求的一方,但能基于自己的文字得到如此大量的插画馈赠,每次收到联络都感动不已,日日饱受'想早点让大家看到'的煎熬。这次能顺利出版并被大家捧在手中,真的非常开心。
今回のお話は、ルークとジェイミーが肩をぶつけファイトを始めるよりも前から、ジェイミーがルークを見知っていた、というところから始まります。公式が我々の口へと嬉々としてねじ込んでくるルクジェミ像があまりにも愛らしく、思っていた以上に仲が良いと分かり、更にジェイミーからルークへ向かうベクトルが大きく強いことがはっきりと示されているので、今回このような設定を思いつきました。憧れと性愛が混ざり合い膨れ上がっていくことで、ジェイミー自身が振り回されている様子を書くことができ、とても楽しかったです。
本次故事始于杰米在因肩膀相撞与卢克打架之前就早已认识卢克的设定。官方塞进我们嘴里的卢杰米形象实在可爱得过分,当发现他们关系比想象中更好,且杰米对卢克有着强烈明确的箭头指向时,便萌生了这个设定。能将憧憬与情欲交织膨胀、让杰米自我迷失的状态写出来,真是无比愉快。
今回は作中に、ラシードと阿鬼を初めて出演させました。ルークとジェイミーのイチャイチャを書きたいが為ふたりきりの世界を書きがちですが、今作は色々とチャレンジをしたい! という思いで突き進みました。阿鬼と対峙するシーンが難しく、すさまじく苦しんだのですが、結果としてスケベだけではない、厚みのある内容に仕上がったかと思います(当社比)。
这次在作品中首次让拉希德与阿鬼登场。虽然常常为了描写卢克和杰米你侬我侬的二人世界而创作,但本次作品我怀着想要挑战各种可能性的念头勇往直前!与阿鬼对峙的场景难度极高,让我饱受折磨,但最终成品不仅有色气,更增添了深度内涵(本社自评)。
私はゲーム実況配信グループの2bro.さんからスト6を知り、今に至ります。その為、今回の作品には彼ら(特に弟者さんとおついちさん)の配信をモチーフにさせてもらいました。ご存知の方は、あの動画に似てるな? など連想されたかもしれません。ルークとジェイミーのゲーム配信も、彼らのように盛り上がるし絶対に楽しいと思います。公式でやってくれないかなぁ。
我通过游戏实况直播团体 2bro.了解到街霸 6,直至今日。因此本次作品借鉴了他们(特别是弟弟君和 Otsuichi 桑)的直播风格。熟悉的朋友可能会联想到'这个视频似曾相识?'之类的既视感。卢克和杰米的游戏直播若能像他们那样热闹,绝对会非常有趣。真希望官方能推出这样的企划啊。
それではここから、まめダイルさんの挿絵について感想を述べていきます。
接下来将针对豆荚龙老师绘制的插画发表感想。
1枚目は、ジェイミーがルークの試合を見て、一目惚れをするシーンです。オマケページに載せておりますが、初めは違うカットを頂いていました。ですが、塗り方など含め新たに描き直したいと連絡を頂き、作中にあるカットを仕上げて頂きました。ルークの試合に夢中になっているジェイミーと、ファイトを楽しんでいるルークが向かい合っていて、これからふたりの運命が交差していくんだな、と感じることができます。
第一张图描绘了杰米观看卢克比赛时一见钟情的场景。虽然最初收录在附录页的是另一个镜头,但后来我们接到通知,希望能重新绘制包括上色方式在内的部分,最终完成了现在作品中呈现的画面。你可以感受到,沉迷于卢克比赛的杰米与享受战斗的卢克彼此相对而立,两人的命运即将在此交汇。
2枚目は、大雨の中、雨宿りをしながら告白をするシーンです。水も滴る良いサリバンのドアップがあまりに格好良すぎて、私は未だに直視することができません。ルークの瞳の色についても、まめダイルさんは私の意見を参考にしてくださいました。私的にルークの瞳はベネディクト・カンバーバッチさんのようなヘテロクロミア(虹彩異色症)だと思っていて、そちらを伝えたところ、挿絵の通り星空が散るような美しい瞳を描き上げてくださいました。また、ジェイミーの瞳は赤みがかった濃い茶色で描いて頂いてます。それぞれの光彩の色味については、オマケページに載せてあるのでじっくり見てみてください。(ウェブページにも同じイラストを掲載しています。拡大して見たい方は、本文2ページにありますQRコードからどうぞ)
第二张图是大雨中避雨告白的场景。萨利文湿漉漉的特写镜头实在太过帅气,我至今仍无法直视。关于卢克瞳孔的颜色,豆荚老师参考了我的意见。我个人认为卢克的眼睛像本尼迪克特·康伯巴奇那样是异色瞳(虹膜异色症),传达后老师便画出了如插图中繁星散落般的美丽眼眸。而杰米的眼睛则被描绘成带红调的深棕色。关于各自虹膜的色彩细节,请仔细查看附录页(网页版也刊登了相同插图,想放大观看的读者可扫描正文第二页的二维码)。
3枚目は、ジェイミーのピンチに駆けつけたラシードです。さらりと軽やかで決めポーズなんかしちゃう、そんなラシードを素敵に描いてくださいました。こんなイケメンな上に友達思いだなんて
第三张是赶来解救杰米危机的拉希德。请将这位潇洒轻盈还摆出决胜姿势的拉希德描绘得魅力十足。不仅这么帅气还如此重视朋友……なんていい男なんだ、ラシード! まめダイルさんのお蔭で、完全にラシード推しになりました。
拉希德真是绝世好男人!多亏了豆代尔老师,我彻底成为拉希德的铁粉了。
4枚目は、バッチバチにキレてるルークです。1枚目のファイトを楽しむ表情とは全く異なる表情に、とても感動しました。穏やかな表情だけでなく、苛烈な怒りも描けるって、本当にすごい
第四张是暴怒中的卢克。与第一张享受战斗的表情截然不同,这种反差让我深受震撼。不仅能画出平和神情,连暴烈的愤怒也能完美呈现,实在太厉害了……! ぴったりと張り付くシャツとそこから透ける筋肉もセクシーで、格好良さと恐ろしさと、パッツパツの肉体美が美しいです。校正中に一番興奮したのが、こちらのイラストでした。
!紧贴肌肤的衬衫下透出肌肉线条,既性感又帅气,还带着几分危险气息,充满张力的肉体美令人赞叹。校对过程中最让我心跳加速的,就是这幅插画了。
5枚目は、助けてくれたルークを風呂上りのジェイミーが迎え、謝るシーンです。ゆるい三つ編み姿の、色っぽいジェイミーをお願いしますとリクエストしました。イラストを頂いた時、本気で呼吸が止まってしまい、そのまましばらく呆然としていました。雨のにおいと甘い香りの混じる空気が感じられます。
第五张图描绘了刚洗完澡的杰米迎接前来相助的卢克并道歉的场景。我特别请求画出扎着松散三股辫、风情万种的杰米。收到插画时,我真的屏住了呼吸,随后呆愣了好一会儿。画面仿佛能让人嗅到雨中混杂着甜香的气息。
最後に、表紙絵です。こちらは2枚目の挿絵の直前、高架下で雨を避けているふたりです。髪を絞るジェイミーを間近に見下ろすルークの視線から、たっぷりの愛情が溢れています。また、ふたりの世界を作り上げている様子が一目で分かります。先にも書きましたが、雨に濡れ張り付く生地の表現が、すごい
最后是封面图。这张描绘的是第二张插画前的情节,两人在高架桥下避雨。卢克低头凝视正在拧干头发的杰米,目光中满溢深情。一眼就能看出他们正构筑着属于彼此的世界。正如前文所述,被雨水浸透紧贴肌肤的衣料质感表现得——太绝了……! 今作のテーマを「雷雨」にして良かった、とつくづく思いました。大好きです。
!我深深庆幸将本次创作主题定为「雷雨」。真的爱极了。
今回、この本を作るにあたり、美しく、生き生きとした作品を多数描き上げてくださったまめダイルさんに、心から感謝しています! 一緒に本を作ることができて光栄です。本当にありがとうございます! また、文字のチェックをしてくださったteriyakiさん、ありがとうございました! 他にも、温かい応援メッセージを頂けて本当に嬉しかったです。
在制作本书的过程中,衷心感谢まめダイル老师绘制了众多精美生动的作品!能与您合作出版深感荣幸。真的非常感谢!同时也感谢负责文字校对的 teriyaki 老师!此外,收到大家温暖的应援留言真的非常开心。
感想は設置しているフォームやウェーブボックスなど、どこからでも受け付けています。頂いた感想はまめダイルさんとも共有いたします。何かひとこと頂けると励みになります!
感想可通过设置的表格或 WaveBox 等任意渠道提交。收到的感想会与まめダイル老师共享。您的一句留言都会成为我们的动力!
これからも色んなルクジェミを書いていきますので、お付き合い頂けると嬉しいです。
今后我也会继续创作各种路杰米的故事,若能承蒙陪伴将不胜欣喜。
2024/08/25 haco
2024 年 8 月 25 日 haco
追加の章
追加章节
俺だけが知っている
只有我知道
この街で俺しか知らない、アイツの顔がある。
在这条街上,只有我见过那家伙的脸。
眠気を残す目蓋に紅色を乗せながら、薄く唇を開く、気怠い表情。ツンと唇を尖らせ物思いに耽っているように見せて、その実何も考えてない、ぼんやりとした横顔。角度のついた眉を穏やかにして、白い前歯を覗かせたまま健やかな寝息を立てる、稚い寝顔。どんな時だって熱視線を注ごうと、ジェイミーは俺を諫めることなく、好きなようにさせてくれる。
睡意未消的眼睑上染着绯红,薄唇轻启,一副慵懒神情。看似撅着嘴陷入沉思,实则什么也没想,恍惚的侧脸。舒展着带角度的眉毛,露出洁白门牙发出健康鼾声,稚气的睡颜。无论何时投来炽热目光,杰米都从不劝阻,任由我肆意妄为。
これこそが、世界にたったひとりだけの、ジェイミーの恋人である特権だと思う。どれだけ気の抜けた表情を浮かべていても、俺だけは自然体の彼を愛することが許されている。もちろん、ベッドの中で見せるしどけない姿も、耳が溶けそうな甘い嬌声も、すべて受け入れてくれる温かな口づけも、どれもこれもが俺だけのものだ。
我想,这就是作为杰米恋人、全世界独一无二的特权。无论他露出多么松懈的表情,唯独我被允许爱着这样自然的他。当然,在床上展现的凌乱姿态也好,甜到仿佛耳朵都要融化的娇声也罢,还有那包容一切的温暖亲吻,全都是只属于我的东西。
誰も知り得ない彼の素顔を目の当たりにする度に、俺の中の優越感が積乱雲のように積み上がっていく。この感動が限界まで膨らみ切ったら、俺はその時どうなっちまうんだろう。どうだ! この俺こそが、誰にも優しいトラブルバスターの唯一無二に選ばれた男なんだぜ! そう大手を振って、あの美しい男に愛されていることを世界中に自慢し始めるかも知れねえ。アイツの視線を独り占めにできるのはこの世界に俺だけなんだと、背筋をグンと伸ばし声高に触れ回りたい。そう、願ってしまう。
每当目睹无人知晓的他真实的一面,我心中的优越感便如积雨云般层层堆叠。当这份感动膨胀到极限时,那时的我会变成什么样子呢?如何!唯有我才是那位对谁都温柔的麻烦终结者独一无二选中的男人啊!或许我会昂首挺胸,向全世界炫耀被那位美男子所爱的事实。能独占他视线的在这世上唯我一人——真想挺直腰杆高声宣扬。没错,我不禁如此祈愿。
ジェイミーと付き合い始めてからというもの、俺が今まで感じ得なかった感情がぐんぐんと育っていっている。例えば、彼の活躍を絶賛するヤツがいたら、見ず知らずでも関係ない、お前見る目あるなぁと渾身の力でその背を叩くだろう。自分のことでなくともこんなにも誇らしく思えるのだと、俺は彼に出会って初めて知った。さらに言えば、広く浅く交流の輪を広げてきた人生では気付かずにいた、自分の執着心の強さをも知ることになった。アイツを抱えて街中自慢して回りたいけれど、その身体には指一本として触れさせたくない。そのどちらも気持ちも、俺の抱く真っ新な気持ちだ。
自从和杰米交往后,我心中萌生了许多前所未有的情感。比如看到有人盛赞他的表现时,哪怕素不相识也会用力拍对方后背说'你小子有眼光'。直到遇见他我才明白,原来不是自己的事也能让人如此骄傲。更甚者,在广结善缘的人生里从未察觉的强烈占有欲也浮出水面。我想抱着他走遍大街小巷炫耀,却不愿让旁人碰他一根手指。这两种心情,都是我崭新萌生的真挚情感。
しかし、そんな嫉妬心を剥き出しにしてちゃあ、俺はただのダセェ野郎になっちまう。アイツだって俺に首ったけだし、何がなくとも尾を振り耳を垂れるような、愛の大安売りはすべきじゃない。なぜなら俺はアイツに見合ういい男だし、アイツ以上に強いし、アイツよりも年上の大人の男だ。あの引き締まった美しい腰に腕を回して、きちんとエスコートできるような恋人であり続けたい。いつだってアイツを惚れ直させる、そんな男であるべきだ。
但要是把这种嫉妒心赤裸裸地暴露出来,我就只是个逊毙了的蠢货罢了。那家伙也对我死心塌地,无论如何都不该像摇尾乞怜的狗那样廉价兜售爱意。因为我可是配得上那家伙的好男人,比那家伙更强,也是比那家伙年长的成熟男性。我想永远成为能搂住那紧实美腰、得体护花的恋人。必须时刻保持让那家伙重新迷上我的魅力才行。
―—
——なんてコトを、そりゃもうしっかりと、強く心に思ってたんだけど。
虽然心里早已深深铭记着这件事。
「見ろよ!! 今の蹴り、めっっちゃ格好いい
"“快看啊!!刚才那记踢腿,简直帅炸了"……!! ッははは! すっげえ煽ってんじゃん、これぞユン哥って感じだなぁ! っえ! ちょっと待てよ今のヤン哥! キレありすぎだろヤバいってえ
!!哈哈哈!这也太会挑衅了吧,不愧是云哥啊!哎!等等刚才那个是阳哥吧!杀气爆表太危险了喂……! あ~~オレも手合わせしてもらいてえ~~!! 大哥カッコイイ~~
!啊~~我也想和大哥过招啊~~!!大哥太帅了~~……ッ!!」
呃!!」
腕を伸ばせば肩を抱き寄せられるこの距離で、ジェイミーはその身をよじっては頬を上気させている。手の中の端末に釘付けになりパタパタと足を踏み鳴らすその仕草は、画面の中の彼らを真似たくて仕方ない子どものようだ。
在伸手就能揽住肩膀的距离里,杰米扭动着身子,脸颊泛起红晕。他目不转睛地盯着手中的终端设备,双脚啪嗒啪嗒地踩着地面,那副模样活像个迫不及待想模仿屏幕里那些人的孩子。
恋人の俺をほったらかしにしたまま彼が夢中になっているのは、ジェイミーの兄貴分であるユン・ヤン兄弟の手合わせ動画だ。彼らと顔を合わせたことは一度もないが、付き合う前から何度も話を聞かされ、写真を突き付けられ、あーだこーだと事細かな解説つきでファイト動画を見せられてきたから、それなりに詳しいつもりだ。
我的恋人此刻完全冷落了我,全神贯注地看着杰米的大哥——云阳兄弟的对战视频。虽然从未与他们谋面,但在交往前就多次听他提起,被塞过照片,还被迫看过附带详尽解说的战斗视频,所以自认为对他们相当了解。
恋人が何かに夢中になり、ふやふやと頬を綻ばせている姿を見るのは、至上の喜びのひとつだと言える。それは確かなことではあるんだが、
看着恋人沉迷某事、脸颊软乎乎绽开笑容的模样,堪称至高喜悦之一。这固然是毋庸置疑的事实————にしても長くないか。この動画が送られてきたのが約一時間前のこと。それからジェイミーは同じ動画を幾度も繰り返し、ジタバタと小さく暴れながら、俺の知らない男たちへの称賛を振りまいている。
话说这视频也太长了吧。收到这条视频大约是一小时前的事。之后杰米就反复播放着同样的画面,一边小幅度扭动挣扎,一边对着我不认识的男人们大加赞美。
はじめはその姿を微笑ましく見守っていたのだが、彼が前のめりになって小さな画面に釘付けになり、悩まし気にすら聞こえる吐息をついてうっとりと頬を染める頃合いになると、心が大海原のように広い俺であっても、さすがに眉根に力がこもり始めた。
起初我还觉得他这副模样挺可爱,但当他整个人都扑在小屏幕前看得入迷,发出近乎苦恼的叹息声,脸颊泛起陶醉的红晕时,就算心胸宽广如我,也不由得皱起了眉头。
さっきから、腕太い、格好いい、なんて言ってるけど、俺の方が確実に太いからな? 渋さが増して最高、っつってもただ年を重ねてるだけだろ。あ? もしかしてコイツ年上好きだったりする? 見るにあの双子は三〇代半ばといったところだ。一〇歳近く年上の兄貴たちに助けられ育ってきたコイツが、その雄姿に憧れ入れ込む気持ちは分からんでもない。だがしかし、許容するとは言っていない。はあはあと息を上げうっとりと目を細め双子に見入るその表情は、酔いに緩んだ着衣も相まって、あまりにも煽情的だ。
从刚才就说什么手臂好粗好帅的,明明我的肌肉更发达好吧?说什么成熟魅力爆表,不就是年纪大了而已嘛。啊?难道这家伙其实喜欢年长的?看那对双胞胎大概三十五岁左右。这个从小被年长近十岁的大哥们照顾着长大的家伙,会憧憬迷恋他们的英姿我倒不是不能理解。但我可没说能接受。看他喘着粗气眯起眼睛痴迷地盯着双胞胎的样子,再加上醉意朦胧衣衫不整的模样,实在太过煽情了。
もしかしてジェイミーは、あの双子に抱かれたいんじゃないだろうか? フと頭を擡げた疑惑は一瞬の内に思考を支配して、俺の気分を撃墜してあっという間に落ち込ませる。いやいやそんなはずはない、コイツは俺のことが大好きで大好きで、行為の最中に幾度もキスをねだってくるような甘えたがりだ。ボロボロと涙を流しながらも俺の太さを受け入れて、形良い脚をこの腰に絡ませ、途切れ途切れに名を呼んでくれる。一昨日だって、身体のあちこちから俺への愛を溢れさせながら、たっぷりと時間をかけて交わったばかりじゃないか。
难道杰米其实渴望被那对双胞胎拥抱吗?这个突然浮现的疑问瞬间占据了我的思绪,击溃了我的心情,让我立刻陷入低落。不不不可能,这家伙明明爱我爱得死去活来,缠绵时总撒娇索吻。就算哭得梨花带雨也会接纳我的粗壮,用匀称的双腿缠住我的腰,断断续续呼唤我的名字。前天不还浑身散发着对我的爱意,和我共度了漫长温存时光吗?
快感に酔うあの表情こそ、俺だけが知り得る彼の顔だ。つまり、俺がジェイミーの唯一無二である証拠。あーもう自信持てよ俺、俺以上のヤツがいるワケねえじゃん。ふっふっ、と息をつきながら、ざわめく胸をなんとか撫で下ろす。こんなことで恋人を疑うだなんて、絶対にあっちゃならねえよ。大丈夫、大丈夫、俺は彼に愛されている。この俺こそが、彼のナンバーワンだ。
那沉醉于快感的表情,唯有我才能得见的他的面容。换言之,这正是我作为杰米独一无二的证明。啊——快给我自信起来啊我,怎么可能存在比我更厉害的家伙嘛。嘿嘿,一边喘着气,一边努力平复躁动的胸口。居然因为这种事怀疑恋人,绝对不可以啊。没事的,没事的,我是被他爱着的。只有我,才是他的 Number One。
「ルーク。悪ィけど、一瞬だけ電話してくるな」
"「卢克。抱歉,我打个电话就一分钟」"
「……あー、席立たなくていいぜ、ここで済ませろよ」
啊—不用起身,就在这儿解决吧」
「お、マジ? あんがと」
"「哇,真的吗?谢啦」"
トントン、と肩を叩かれ顔を上げた先、赤らめた頬をピカピカと光らせる笑顔があった。俺は咄嗟に彼の手を引いて、彼が電話をかける様子をチラチラと横目に見る。
随着咚咚两声轻叩肩膀,我抬头看见一张泛红脸颊闪闪发亮的笑脸。我下意识拽过他的手,用余光偷瞄他拨电话的模样。
骨ばった指が画面をタップし、長い髪をかき上げて端末を耳へと押し当てた。微かに聞こえるコール音はすぐに途切れ、続けざまに溌剌とした声が響いてきた。通話先は双子のどちらかだろう、ジェイミーは瞬く間に大きな瞳を輝かせ、歌うような語り口で何やら話し始めた。
骨节分明的手指轻点屏幕,他将长发向后一捋,把手机贴到耳边。微弱的拨号音很快中断,紧接着传来元气十足的声音。通话对象大概是双胞胎中的某个——杰米瞬间睁大闪亮的眼睛,用唱歌般的语调开始絮絮叨叨。
彼の第一言語は、数えるほどしか理解できない。中華街へ行く時もジェイミーに任せっきりにしているから、今まで一度たりともその言葉を理解する努力をしてこなかった。そのせいで、彼が今何を話しているかは、想像することしかできない。はだけた胸元で右手を握り締め、うっとりと目線を流し通話に耳を傾けるその姿は、息を呑むほどに婀娜めいている。恋する姿と評しても過言でないその振舞いに、ギュッ、と胸奥が踏み潰されたかのように痛んだ。
他的第一语言,我只能听懂寥寥数语。每次去唐人街都全权交给杰米处理,至今从未努力去理解过那种语言。正因如此,此刻他在说什么,我只能靠想象。他敞开的衣领间右手紧握,目光迷离地侧耳倾听电话的模样,美得令人窒息。那副坠入爱河般的姿态毫不夸张,看得我胸口一阵绞痛,仿佛被狠狠践踏。
息苦しい痛みは確固たる怒りへと経ち変わり、ギリギリと奥歯を擂り潰すかのように歯ぎしりした。ケラケラと声を上げ無邪気に笑うその眩しさも羨望のまなざしも何もかも、俺だけのものであるはずなのに。マグマが火口を押し上げるかのように、グググググ、苛立ちが大きく膨らんでいく。あのデバイスを今すぐ取り上げて、コイツは俺の恋人だぞと大声で怒鳴りつけてやろうか。グルン、と顔を上げ目を尖らせたその瞬間、バイバイ、と言い置き、彼は通話を終えた。
窒息的痛楚逐渐化作熊熊怒火,我咬紧后槽牙发出咯吱声响。那银铃般无忧无虑的笑声也好,艳羡的目光也罢,明明都该只属于我一人。如同岩浆翻涌火山口般,烦躁感咕嘟咕嘟不断膨胀。真想立刻夺走那台设备,对着话筒怒吼'这家伙可是我的恋人'。就在我猛地抬头瞪眼的瞬间,他丢下一句'拜拜',挂断了通话。
「っはぁー! 喋れて良かったぜ!
"「哈啊——!能说话真是太好了!"……で? お前はさっきから何にキレてんだよ」
所以?你从刚才开始到底在发什么火啊」
コテン、と背もたれへ頭を預けたジェイミーが、にんまりと笑んでこちらを見やる。その言葉と笑みにピャッ、と肩が跳ねて、沸騰していた気持ちがシュルシュルと小さくなった。ジェイミーは目を細めたまま俺の顎を指先で掻いて、まるで犬を手懐けるかのように撫でていく。そんな彼のやり方に悔しいとも思わず、ただただ嬉しいと感じる自分が、ほんの少し情けなくなった。
杰米将头靠在椅背上,发出“咚”的一声,随后咧嘴笑着望过来。那话语和笑容让我肩膀猛地一颤,沸腾的情绪像泄了气般逐渐缩小。杰米眯着眼睛,用指尖轻挠我的下巴,像驯服小狗似地抚摸着。对他这样的方式,我竟不觉得懊恼,反而满心欢喜,这样的自己让我感到一丝可悲。
「……別に。何話してんのかなって、見てただけだし」
没什么。只是在想你们在聊什么,随便看看而已。
「へえ、本当にそれだけ? 今にもペイルライダーかましそうなツラしてたぜ」
"「哦,真的只是这样?你刚才那表情简直像是要召唤苍白骑士了。」"
つんつん、と頬を突いてくるその指は、このシチュエーションをどう考えたって面白がっている。うるせえな、ヤキモチ妬いて悪ィのかよ。ム、と唇を尖らせるすぐ隣りで、ふふっ、と鼻先で笑う気配を感じた。
戳戳脸颊的手指,怎么看都觉得这情形有趣得很。吵死了,吃醋有错吗?哼,撅起嘴的瞬间,听见身旁传来噗嗤一声鼻腔里的轻笑。
「大哥たちとは、オレがメトロシティに来てから一度も会ってねえ。オレも大哥たちも、なかなか自分の持ち場を離れらんねえからな」
"「自从我来到地铁城后,就再没见过大哥他们。我和大哥们都很难抽身离开自己的岗位。」"
「……ふうん」
哼」
「でも、いつかお前に紹介したいと思ってる。ふたりともめちゃくちゃ格好いいし、オレの倍は強いんだぜ。なんたって、オレの自慢のアニキたちだからな!」
"「不过,总有一天我想介绍给你认识。他们两个都超级帅气,而且比我强上一倍。毕竟,他们可是我引以为豪的大哥啊!」"
ニカッ、と白い歯を見せるその笑顔は混じり気のない眩さで、心の底からあの双子を尊敬し愛しているのだと伝わってくる。そんなジェイミーの顔を見ていると、なんとか収めた嫉妬心が再び膨らみ始めてしまう。フン、と鼻を鳴らし部屋の隅へ視線を投げると、ドシン、と身の詰まった温もりが膝上へと乗った。
他咧嘴露出洁白的牙齿,那毫无阴霾的灿烂笑容让人深切感受到他是打从心底尊敬并爱着那对双胞胎。看着杰米这样的表情,好不容易压下去的嫉妒心又开始膨胀起来。我哼了一声别开视线望向房间角落,突然咚地一下,一团沉甸甸的温暖跳上了我的膝盖。
「ッははは! なんだよ、やっぱり拗ねてんじゃねーか!もう大哥たちの話はしねえから、機嫌直せよ」
"「哈哈哈!怎么啦,果然还是在闹别扭吧!我不再提大哥们的事了,快消消气」"
くらくらと悪戯に笑うその身体を、ぎゅ、と腕の中に抱き締める。素肌を見せる胸にぴったりと顔面を寄せて、眉毛でゴシゴシとくすぐるように顔を擦り動かした。
将那个恶作剧般晕乎乎笑着的身体,紧紧、地搂进臂弯。把脸深深埋进袒露的胸口,用眉毛蹭来蹭去,像挠痒痒似地来回磨蹭着脸庞。
「……なあ」
喂」
「ん~?」
"「嗯~?」"
完全に甘やかしモードに入ったジェイミーが、くしゃくしゃと俺の頭を撫で、優しく喉を鳴らした。剥き出しの腰をスリスリと撫でて、見事に描かれるカーブを堪能する。
完全进入宠溺模式的杰米,胡乱揉着我的脑袋,发出温柔的呼噜声。他摩挲着我裸露的腰际,尽情享受那优美曲线的触感。
「……俺のことも、兄ちゃんって呼んでくれねえの」
「也不肯叫我一声大哥」
「……はあぁ?」
哈啊?」
ガシッ、と顔を掴まれ、持ち上げられた顔に彼の額がゴツンと打ち付けられる。真ん丸に見開かれた瞳は徐々に呆れの色を濃くして、そしてへんにゃりとした笑みに変わっていった。
脸颊被猛地掐住抬起,他的额头重重撞了上来。瞪得滚圆的眼瞳里呆滞之色渐浓,最终化作一滩软绵绵的笑意。
「ったく、何に妬いてんのかと思えば。なに、お前オレの兄ちゃんになりてえの?」
"「真是的,我还以为你在嫉妒什么呢。怎么,你想当我哥哥吗?」"
んひっ、んひひ、と肩を震わせ笑い始めたジェイミーを、俺はただただジロリと睨むことしかできない。うるせえな、これでも相当オブラートに包んで言ってるんだぜ。もし今の俺から常識を取っ払っちまったら、お前、アニキたちとヤりてえのかよ、なんて最低なこと口走りそうだ。
看着杰米肩膀直颤发出「嘻、嘻嘻」的怪笑,我只能恶狠狠瞪着他。吵死了,这已经是很委婉的说法了好吗。要是现在的我彻底抛开常识,说不定会脱口而出「你小子该不会想和我那些大哥们搞吧」这种下流话。
「だってズルいだろ。
"「因为太狡猾了吧。"……俺だって、お前にあそこまで褒められたことねえもん。恋人なのに」
明明我才是你的恋人,却从没被你那样夸奖过。
「にゃっははははは!!」
"「喵哈哈哈!!」"
むっつりと呟いた文句は、無事ジェイミーの笑壺に入ったらしい。俺の膝上から転げ落ちそうになりながら、薄い腹を震わせケラケラと笑っている。
闷闷不乐的嘟囔似乎成功戳中了杰米的笑点。他差点从我膝头滚落,薄薄的肚皮颤动着,发出咯咯的笑声。
「んっひひひ
"「嘻嘻嘻"……! ……なあ」
喂」
「ンだよ」
"「是啦」"
「おにーちゃん」
"「欧尼酱」"
ニカッ、と目を細める美しい笑みが眼前に広がり、ドキッ、と胸が大きく跳ねる。流れる滑らかな黒い髪に、猫のような黒目がちな瞳、メリハリのある美しいボディライン。そんなセクシーの権化のような恋人から、おにいちゃん、だなんて呼びかけられてしまうと、脳のネジがぎゅるりと緩むような、認知がよろしくない方向に捻じ曲がる予感がムズムズと広がっていった。
眼前绽开眯眼微笑的绝美笑颜,胸口顿时怦然剧跳。如瀑的柔顺黑发间,猫儿般圆润的黑瞳,凹凸有致的曼妙身段。被这般性感化身的恋人唤作'哥哥'时,脑内螺丝仿佛被拧松般,认知朝不妙方向扭曲的预感正痒酥酥地蔓延开来。
「おにいちゃんは、そんなにオレに褒めてもらいてえの?」
"「哥哥就这么想被我夸奖吗?」"
「……う、うん」
嗯、嗯」
「へえ。んじゃ褒めてやるよ、何について? ファイト、仕事、日常生活
"「嘿。那我来夸夸你吧,关于哪方面?干劲、工作、日常生活"……は、あんま褒められたもんじゃねえけどな」
哈,不过也没啥值得夸的就是了」
スリスリ、と傷跡を慈しむように腕を撫でられ、膝の上ではちんまりとした尻がくりくりと小さく揺れる。長い睫毛を瞬かせながら、かき上げられた漆黒の髪から白い花の香が漂ってきた。彼が腕を動かす度に、開いたままのチャイナブルゾンから、チラリ、チラリ、と赤い尖りが顔を見せる。自分が求めたことであれど、呼び方ひとつでこうも倒錯的になっちまうのかと目を回した。
手臂被轻轻摩挲着,仿佛在怜惜那些伤痕,膝上圆润的小屁股微微摇晃。长长的睫毛轻颤,从撩起的乌黑发丝间飘来白花的香气。每当他移动手臂,敞开的旗袍领口便若隐若现地透出一点嫣红。虽是自己所求,却没想到仅仅一个称呼就能让气氛变得如此颠倒错乱,令人头晕目眩。
グルグルと渦巻くような心地の中、ツイと顎を持ち上げられる。ジェイミーはニコッ、と笑むと、小首を傾げ、丸っこい耳を飾るピアスをキラリと輝かせた。
在如漩涡般晕眩的恍惚中,下巴被轻轻挑起。杰米咧嘴一笑,歪着小脑袋,圆润耳垂上的耳钉闪闪发亮。
「ああ、でもこれで、できなくなっちまったな。せっかく準備してたのに」
"「啊,但这样一来就做不成了呢。明明好不容易准备好的」"
「……え、何を」
诶,什么?
「セックス。ハニーとはできるけど、おにいちゃんとはできねェからな」
"「做爱。和 honey 可以,但和哥哥可不行啊」"
「あっ、え、
"「啊、诶、"……あ、あぁっ!? 待て、待ってくれジェイミー、俺が悪かった
啊、啊啊!?等等,等一下杰米,是我不好……ッ!!」
呃!!」
おかしくてたまらないと言わんばかりに明け透けに笑いながら、最高峰の魅力を誇る恋人が身体をよじって逃げようとする。俺は慌ててその身を抱き留めると、ぷるぷると水分を湛える唇を、カプリ、と吸い上げた。やめろ、やめろよおにいちゃん、なんて揶揄われると全身から力が抜けかけるが、ここで諦めてしまっては俺の負けだ。
恋人笑得毫无遮掩,仿佛在说'太可笑了',扭动着引以为傲的绝顶魅力身躯试图逃走。我慌忙搂住那具身体,啵地一声吮吸起那水润颤抖的唇瓣。'住手、快住手啊哥哥'——被这样戏弄时全身都快要脱力,但若就此放弃便是我的败北。
れる、と伸ばした舌先へと、温かな柔らかさが応える。ツン、と突くように差し出された唇を更に吸い上げて、滲む唾液をねちねちと合わせ合う。ぎゅ、と押し付けたソファの上には、艶めかしく腹を波打たせ、息を上げる彼の半裸がある。ジェイミー、と込み上げるまま名を呼ぶと、彼は揶揄うのを止め、俺の名をひとつひとつ、確かめるように口ずさんだ。
当舌尖延伸探寻时,温暖的柔软便回应而来。我进一步吸吮那故意'哼'地凑上来的唇瓣,黏腻地交缠着渗出的唾液。在紧贴的沙发之上,是他泛着情欲光泽起伏的腹部与喘息连连的半裸身躯。'杰米'——当我情不自禁唤出这个名字时,他停止了戏弄,像确认般一字一顿呢喃起我的名字。
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