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凛が潔を追い詰めてしまった話/ゆくえ的小说

凛が潔を追い詰めてしまった話 凛将洁逼入绝境的故事

12,356字24分钟

ちょっと潔をいじめてやろ〜と思った凛だったが…、 想着稍微欺负一下洁的凛,
Xで話していたネタを文章でまとめました。 把在 X 上聊的内容整理成了文章。
凛はコミュ障を極めていたので、いざ仲良くなりたい相手を見つけてもうまくいかないんじゃないかと。
因为凛极度不擅长社交,所以即使找到了想要变得亲近的对象,也担心会不会不顺利。

また調子に乗った凛ネタ。 又在得意忘形地讲凛的段子了。

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8月のウェブオンリーに合わせて、本を出そうと思っています。
我打算在 8 月的网络限定版中推出一本书。

シブにあげている作品も再録予定。 正在精心提升的作品也计划重新收录。
通販のみです。 仅限邮购。
原稿をするので更新が遅くなるかと思います。 因为要处理稿件,更新可能会延迟。

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凛が渡仏して1ヶ月が経った頃、潔が初めて凛の家にやって来た。
凛去法国一个月后,洁第一次来到凛的家。

一学年上の潔は、凛より先にフランスチームに加入していて、一年だけ潔の方がフランス生活が長い。
高一年级的洁比凛先加入法国团队,因此洁在法国生活的时间比凛多一年。

潔は先輩風を吹かせたがって、立地やら間取りやら家賃やらに口を出した。
洁想要摆出前辈的架子,对地理位置、户型布局、租金等方面都插嘴发表意见。

潔は当分引っ越すつもりはないらしいが、自分の反省点を踏まえて選んで欲しいとあれこれアドバイスをした。
洁似乎暂时没有搬家的打算,但他还是根据自己的反省点,给出了各种建议,希望对方能慎重选择。

凛は潔を家に招く気満々だったので、潔の意見もそこそこ取り入れた。
凛满心想要邀请洁到家里来,所以也适当地采纳了洁的意见。

まず治安の良い区画から探す。 首先从治安良好的区域开始寻找。
自炊をするならコンロの火口は二つ以上あった方がいいし、日本人だから贅沢だけどやっぱりバスタブも欲しい。
如果自己做饭的话,炉灶的火口有两个以上会更好,而且因为是日本人,虽然有点奢侈,但还是想要一个浴缸。

ロードワークするのにちょうど良い運動公園が近くにあって、日常の買い物をするマーケットにも歩いて行ける距離だ。
附近有一个非常适合散步的运动公园,而且步行就能到达日常购物的超市。

なるべくまわりに飲食店があった方が、潔を食事に誘いやすい。
周围有餐饮店的话,邀请洁去吃饭会更容易。

凛には友人と呼べる存在はいないし、身内でさえ家に来ることはないだろうが、潔を泊めることを想定してゲストルームも確保した。
凛没有可以称为朋友的存在,就连家人也不会来家里,但考虑到可能会让洁留宿,还是准备了一间客房。

日本から炊飯器などの必要な家電を送り、落ち着いた色合いの家具を揃える。
从日本寄送电饭煲等必需家电,并配备沉稳色调的家具。

自分には必要ないとは思っていたが、意外と風情を気にする潔を意識して、観葉植物を置いたりもした。
虽然自己觉得不需要,但意外地在意氛围,也摆放了观叶植物。

そうしてチームに合流する前に凛の城は完成し、潔を招く運びとなった。
于是,在凛的城堡完工后,团队尚未汇合之前,便决定邀请洁前来。

「わぁ、いいじゃん!凛らしい。シンプルで大人っぽい。凛センスいいなぁ」
哇,真不错!帅气凛然。简约又成熟。凛的品味真好啊。

せっせと作った自分の城を褒められて、凛はご満悦だった。
凛对自己辛勤建造的城堡受到表扬感到非常满意。

日本で高校生をしていた頃は、こうはいかなかった。 在日本读高中的时候,并不是这样的。
凛も潔も実家暮らしだったし、神奈川と埼玉で距離もあった。
凛和洁也都曾住在父母家,而且神奈川和埼玉之间也有距离。

十八歳になって凛はようやく一人暮らしを始める。 十八岁那年,凛终于开始了一个人的生活。
同じパリ市内には潔も住んでいるのだ。 在同一个巴黎市内,洁也居住着。
サッカーでは喰らい合う仲とは言え、青い監獄にいた頃よりずっと関係は改善している。
虽然踢足球时是互相较劲的关系,但比起在蓝色监狱时,关系已经改善了很多。

元々穏やかな性格の潔が相手なのだから、凛がつんけんしなければ、プライベートでも上手くいくはずだ。
既然原本性格温和的洁是对方,那么凛如果不那么倔强,私下里应该也能相处得很好。

「どのリーグから観る?冴もいるし、ラ・リーガにしようか」
“看哪个联赛?冴也在,不如看西甲吧。”

潔が凛の家に来たのは、引越し祝い兼海外リーグ分析のためだった。
潔来到凛的家,是为了庆祝搬家兼分析海外联赛。

大量に録画されたDVDを、重要なものから一試合ずつ観て、お互いに分析しながら意見を交換しようという試みだ。
他们计划从大量录制的 DVD 中,从重要的比赛开始逐一观看,边分析边交换意见。

凛は潔をソファに座らせて、テレビの電源を入れた。 凛让洁坐在沙发上,打开了电视。
「凛のテレビでかいなぁ。いろんな機械あるし、映画館みたい」
"凛的电视真大啊。还有各种设备,简直像电影院一样。"

「お前は機械音痴だからな」 "你就是因为对机械一窍不通嘛。"
凛はオーディオにも拘りがあった。 凛对音响也有讲究。
実家にはなかったAVアンプとスピーカーを設置し、音響に拘った。
他在家里安装了原本没有的 AV 功放和扬声器,对音响设备非常讲究。

サッカーを抜きにすると、凛の趣味は映画鑑賞だ。 如果抛开足球不谈,凛的兴趣就是看电影。
音質が良いと没入感がより深くなる。 音质好,沉浸感会更深。

「すげー、音質がいいと言語も聴き取りやすい」 “太厉害了,音质好连语言也容易听清楚。”
テレビの前方に外部スピーカーを配置しているため、声が聴き取りやすくなっている。
因为电视前方放置了外部扬声器,所以声音更容易听清楚。

二人ともさすがにスペイン語の解説を理解することは出来なかったが、はっきりとした音声で言語が流れていくのは快適だった。
两人都听不懂西班牙语的解说,但清晰流畅的语言听起来很舒服。

潔は持参したノートに、フォーメーションやら気づいたポイントやらを書き込んでいる。
洁在带来的笔记本上记录着阵型和注意到的地方。

「あ!そこのパス、もう一回見たい。10番の動きがさぁ……、」
“啊!那个传球,我想再看一遍。10 号的动作啊……”

「相手の5番が左に出ると読んだんだろ。3番はスタミナが切れてる。こっちの方が通りやすいだろ」
“我猜对方 5 号会往左边走。3 号体力已经耗尽了。这边更容易通过吧。”

「そっか。そこに突っ込めるのはスピードのある9番の脚だと思うけど、今フリーの7番が取りに行った方がいけそうかな?」
“这样啊。我觉得能冲过去的只有 9 号那双有速度的腿,不过现在空闲的 7 号去抢球是不是更有可能成功呢?”

「7番は前回のシーズンで靭帯やってて復帰戦だから、無茶な加速は出来ねぇぞ」
“7 号在上个赛季韧带受伤,这是复出赛,他没法进行过激的加速。”

「え、そうなの?」 “诶,真的吗?”

あれこれと討論しているうちに、一試合はあっという間に終わってしまった。
在各种讨论中,一场比赛转眼间就结束了。

潔のノートに凛も書き込んで、あらゆるページが黒と赤の文字で交錯してごちゃごちゃとしている。
凛也在洁的笔记本上写写画画,所有的页面都被黑色和红色的文字交织得乱七八糟。

潔は満足したのか、走り書きのメモを忘れないうちにまとめると言って、そのまま帰って行った。
潔似乎感到满意,他说要在忘记潦草的笔记之前整理好,然后就直接回去了。

潔の滞在は4時間ほどだった。 潔的停留时间大约是四个小时。
次は泊まらないかなぁ、と凛は思った。 凛心想,下次他会不会留宿呢。



その後も凛と潔は、お互いの部屋へ行ったり来たりした。
之后,凛和洁也经常互相去对方的房间。

ほとんどがサッカー関連の話題だったが、交流を深めるうち徐々にパーソナルな部分にも触れるようになった。
虽然大部分是关于足球的话题,但随着交流的深入,逐渐也开始触及个人的部分。

「へー、凛の学校ってそんな感じだったんだぁ。凛は選択科目何にしてた?」
“哎呀,凛的学校原来是这种风格的啊。凛选了什么选修课?”

「音楽」
「あ、なんかわかるかも。凛意外と音楽に詳しいし。ロードワーク中何聴いてんの?」
“啊,或许能明白。凛意外地对音乐很了解呢。在路途中都听些什么呢?”

「…プレイリスト見た方が早いだろ。これ」 “…看播放列表更快吧。这个”
「わかんねー、洋楽?ロック?」 “不懂啊,西洋音乐?摇滚?”
潔は流行りに疎い。日本のドラマのタイアップ曲や、CMソングしか耳馴染みがない。
洁对流行不太了解。只熟悉日本电视剧的插曲和广告歌曲。

今でも練習が終わると、ロッカールームではちみつきんかんのど飴の歌を歌っていたりするのを、凛はしっかりと聴いている。
即使到了现在,每当练习结束,凛都会认真聆听在更衣室里唱起的“蜂蜜金嗓子喉糖”的歌曲。

日本ではまだあのCMは流れているのだろうか。 在日本,那个广告还在播放吗?

「お前はロードワーク中何聴いてんだ?」 “你在巡逻时都听些什么?”
凛は潔に訊ね返した。 凛直截了当地反问道。
潔は「うーん」と考える素振りを見せる。 洁则表现出在思考的样子,“嗯——”了一声。
「あんまり激しい曲は聴かないかな。まわりが騒がしい場所だと、無音でイヤホンだけつけてる」
「不太听太激烈的曲子。在周围很吵的地方,我会戴着耳机但保持静音。」

スポーツ選手は、試合前や軽い運動中に音楽を聴くことが多い。
运动员在比赛前或进行轻度运动时,经常听音乐。

特に気分を高めるような、軽快な曲が好まれがちだ。 尤其喜欢能提振心情的轻快曲调。
自分の勝負曲を持っている者も少なくないし、試合前のルーティーンとして、毎回同じ曲を聴いて集中力を高める選手も多い。
有不少人拥有自己的决胜曲,也有很多选手在比赛前作为例行程序,每次都听同一首曲子来提高集中力。

「外走ってるとき、川のせせらぎとか鳥の声とか聞こえるのが好きかも」
“在外面跑步时,可能喜欢听到河流的潺潺声或鸟儿的叫声。”

「ジジイかよ」 “像个老头子似的。”
変わってるな、と思いながらも、凛はそれほど気に留めていなかった。
虽然觉得有点特别,但凛并没有太在意。





✴︎




潔が初めて凛の家に泊まることになった。 洁第一次要在凛家过夜。
フランスに来てから、親交を深めた成果だと凛は思う。
凛认为,这是来到法国后加深友谊的成果。

夕飯は凛の部屋で、潔がトレトゥールで買ってきた惣菜を食べた。
晚饭在凛的房间里,吃了洁从特雷图尔买回来的熟食。

キャロットラペ、ほうれん草とサーモンのキッシュ、きのことトマトソースのミートボール、その他いろいろ。
胡萝卜拉贝、菠菜与三文鱼的蛋奶酥、蘑菇番茄酱肉丸,以及其他各种美食。

食事をしながらサッカーの話をしたり、フランスでの生活について話し合ったりした。
边吃饭边聊足球,还讨论了在法国的生活。

凛と潔は、以前に比べてかなり打ち解けている。 凛和洁比以前要亲近许多。
潔は凛の家のソファに転がって寛ぐようになったし、家主に変わってお茶を淹れたりするようになった。
洁开始像在自己家一样,躺在凛家的沙发上放松,还开始代替主人泡茶。

良い兆候だと凛は思う。 凛认为这是个好兆头。
そこで凛はひとつ、調子に乗った。 于是凛开始得意忘形了。

「映画でも観るか」 “去看电影吧。”
二人とも入浴を済ませたところで、ソファでアイスバーをかじりながら凛は言った。
两人都洗完澡后,凛一边坐在沙发上啃着冰棒一边说道。

「映画?いいねー。なんかおすすめあるの?」 “电影?好啊。有什么推荐的吗?”
潔もアイスを食べながら、リラックスした様子で賛同した。
洁一边吃着冰淇淋,一边以放松的样子表示赞同。

時刻はそろそろ10時を回る頃。 时间差不多快到 10 点了。
早寝早起きが基本のスポーツマンだが、たまの休日くらいハメを外しても良いだろう。
早睡早起是基本原则的运动员,偶尔的休息日稍微放松一下也无妨吧。

凛が取り出したのは、ホラー映画のブルーレイだった。
凛拿出来的是恐怖电影的蓝光光盘。

サブスクに入っていないからと、わざわざ日本の自宅から送ってもらったものだ。
因为没有订阅,特意从日本的家里寄过来的。

映像は薄暗い森の中から始まる。 影像从昏暗的森林中开始。
鬱蒼とした雑木林の中を歩く足元だけが映し出され、そのあと場面が切り替わって、ニューヨークの街並みに変わる。
只映出在郁郁葱葱的杂木林中行走的脚步,随后场景切换,变成了纽约的街景。

家族で誕生日パーティーをしている賑やかで微笑ましい光景が映し出され、そこに似つかわしくない不穏な不協和音が鳴る。
映出一家人热闹地庆祝生日的温馨画面,那里响起了不合时宜的不安不和谐音。

そしてタイトルが、おどろおどろしい文字で表示された。
标题以令人毛骨悚然的文字显示出来。

『殺人鬼はそこにいる』 『杀人鬼就在那里』

「ひぇっ、殺人鬼?」 “咦,杀人鬼?”
潔は仰け反った。 洁仰头反问道:
「ホラー?ホラーなの?」 “恐怖片?是恐怖片吗?”
画面と凛の顔を交互に見て、あわあわと焦っている。 他来回看着画面和凛的脸,显得十分焦急。
凛の見立て通り、潔はホラーが苦手なようだった。 正如凛所料,洁似乎不太擅长恐怖片。
それとは逆に、凛は映画の中でも特にホラーが好きだ。
相反,凛特别喜欢恐怖电影。

今回選んだのは、じめじめとした日本の幽霊が出てくるジャパニーズホラーではなく、ニューヨークを舞台に殺人が繰り広げられるスプラッタ系。
这次选择的不是以潮湿阴森的日本幽灵为特色的日本恐怖片,而是以纽约为背景,展开连环杀戮的溅血系恐怖片。

緩急のある展開で、平和な日常パートから血まみれパートが交互に繰り返される。
故事情节跌宕起伏,和平的日常生活部分与血腥部分交替出现。

殺人鬼から隠れて息を潜めたり、殺人鬼が背後から突然現れて絶叫、という感じだ。
有时需要躲避杀人魔,屏息藏匿,有时杀人魔会突然从背后出现,引发尖叫。

驚かせる画面の演出と効果音で、視聴者をハラハラさせる。
通过惊悚的画面呈现和音效,让观众紧张不已。

凛は驚いたり悲鳴を上げたりする潔の反応が見たかった。
凛想看到洁惊慌失措或尖叫的反应。

自分は余裕をもっていられる場面で、潔が取り乱したり怖がったりしたら、なんだか気分がいいような気がしたから。
因为在自己能保持从容的场合,如果洁慌乱或害怕,总觉得心情会变得很好。

「えっえっ、この家族が狙われてる感じ?やだ、やだよー!」
“诶诶,这个家族被盯上了的感觉?不要,不要啊!”

凛は繰り返し観ている映画だが、潔は初見だ。 凛反复观看的电影,对洁来说却是初次观看。
どうなるかわからないストーリーに、ハラハラしている。
面对一个未知结局的故事,洁紧张得心跳加速。

なんの前触れもなく、ピエロの格好をした殺人鬼の顔がアップになると、潔は「ヒッ」と悲鳴を上げた。
没有任何预兆,当小丑装扮的杀人魔的脸突然放大出现在屏幕上时,洁不禁“咻”地发出了一声惊叫。

刃物を擦り合わせるような、不快な音が鳴る。 刀刃摩擦般的刺耳声音响起。
潔は体育座りになって、その音に顔を顰めた。 洁盘腿坐着,皱起了眉头。
「なぁ、これやめようぜ」 “喂,我们别这样了吧。”
潔は耳に手を当てながら言った。 洁一边把手放在耳朵上一边说:
「これからだろ」 “应该是现在吧。”
「いや、無理だって、無理」 “不,不可能的,不可能。”
潔がリモコンを取ろうとしたので、凛は潔を背後から取り押さえるように潔を捕まえた。
洁试图去拿遥控器,凛从背后抓住洁,像是要压制住他。

呆気なく捕まった潔は凛の腕の中でもがいたが、力で凛に敵うはずがない。
洁毫无反抗之力地被抓住,在凛的臂弯中挣扎,但他的力量根本无法与凛抗衡。

金切り声を上げた女性が斬りつけられる。 发出尖锐叫声的女性被砍中。
潔はその悲鳴に驚き、ぎゅっと目を瞑った。 洁被那声尖叫吓了一跳,紧紧地闭上了眼睛。
ドアを強く叩きつけるような、ドン!バン!という派手な音が鳴る。
像是要用力敲打门一样,发出了“咚!嘭!”这样响亮的声音。

潔は音が鳴るたびに、びくびくと大袈裟なほど震えた。
每次声音响起,洁都会夸张地颤抖不已。

二台のスピーカーから鳴る音声は立体的で、臨場感があった。
两台扬声器发出的声音立体感十足,临场感强烈。

この場所が事件現場と勘違いするほどに、部屋のあちこちから音が聞こえてくる。
这个地方几乎让人误以为是事件现场,房间的各个角落都能听到声音。

最初は文句の多かった潔だが、すっかり黙りこんでいしまった。
最初抱怨很多的洁,现在已经完全沉默不语了。

「潔?」 「洁?」
「……やだ」 “……不要”
「まだ序盤だろ。そんなにビビりか?」 “还只是刚开始吧。你这么害怕吗?”
凛が煽っても、潔は反論して来なかった。 凛再怎么煽动,洁也没有反驳过来。
「もぉむり、帰る」 “已经关门了,要回去了。”
潔は自分の胴にがっしりと回った凛の腕を振り解こうと、凛の腕を掴んだ。
洁试图挣脱紧紧缠绕在自己身上的凛的手臂,抓住了凛的手腕。

が、なかなか外れない。 但是,就是很难离开。
凛の腕を掴む潔の手のひらは湿っていたが、凛はたいして気にも留めなかった。
凛抓住洁的手腕,洁的手掌湿漉漉的,但凛并没有太在意。

言い訳をするならば、凛はそこまで力を込めているつもりはなかったのだ。
如果要找借口的话,凛并没有打算用那么大的力气。

絶対に離すものかと捕らえているつもりもなく、ただのじゃれあいの一環として。
只是当作嬉闹的一部分,并没有打算紧紧抓住不放。

怖い、怖くない、というプロレスみたいなものだと思っていた。
我觉得那就像是“害怕、不害怕”的摔跤比赛一样。

だから凛は、潔の必死さに気づかなかった。 所以凛没有察觉到洁的拼命。

ピカっと画面がホワイトアウトする。 屏幕突然一闪,变成了全白。
その直後、スピーカーから轟音のような雷鳴が響いた。
就在那之后,扬声器中传来了如轰鸣般的雷声。

潔の身体が固まる。 洁的身体僵住了。
「ッ」 「唔」
潔は声にならない悲鳴を上げた。 洁发出了无声的悲鸣。

また画面に稲妻が走る。 画面上再次闪过闪电。
ちらつくピエロの顔。 小丑的脸忽隐忽现。
チカチカと光る画面。 闪烁的画面。
斧を引き摺る音。 拖动斧头的声音。
雷鳴、轟音。 雷鸣,轰响。

「いさぎ?」
様子のおかしい潔に、凛が訝しむ。 凛对神情异常的洁感到疑惑。
しかしもう既に遅かった。 但已经太迟了。
潔の身体はぶるぶると震えている。 洁的身体在颤抖。
ガシャン!と窓ガラスが割れる音がスピーカーから鳴り響く。
"咔嚓!" 窗户玻璃破碎的声音从扬声器中响起。

それを合図に、潔の硬直して震えていた身体が突然もがきだした。
以此为信号,洁那僵硬颤抖的身体突然开始挣扎。

潔の突然の変貌に、凛はぎょっとした。 洁的突然变化让凛吓了一跳。

溺れている人間が必死でもがくような暴れ方だった。 他像溺水的人拼命挣扎一样狂乱地反抗。
先程の比ではない力を込め、潔は全力で凛の腕から逃れようと暴れている。
与刚才相比,洁用尽全力,试图从凛的手臂中挣脱出来。

「ッ」 「………」
己のキャパシティを超えた刺激に、潔は我を忘れてパニックになっていた。
面对超过自身承受能力的刺激,洁完全忘记了自我,陷入了恐慌。

「………ッ」 「………」
「おい、潔……っ」 「喂,洁……」
これはただ事ではないと流石の凛でもわかる。 就连冷静的凛也明白,这并非寻常之事。
凛の力が緩めると、潔はパシンとその手を振り払った。
当凛的力量稍稍放松时,洁便猛地甩开了那只手。

そのまま勢いよく立ち上がり、ふらついた足で走り出した。
他猛地站起来,踉跄着脚步开始奔跑。

足をもつれさせて一度転び、慌てて立ち上がるとまた走った。
脚绊了一下摔倒了,慌忙起身又继续跑。

リビングのドアを強く開け、廊下を抜けて一目散に玄関へ向かう。
用力打开客厅的门,穿过走廊,直奔向玄关。

突然のことに呆気にとられた凛だったが、慌ててその後を追った。
凛被这突如其来的情况惊呆了,但她急忙追了上去。

既に潔の姿はないのに、玄関には潔の靴が残っている。
虽然洁的身影已经不见了,但玄关处还留着洁的鞋子。

「あいつ裸足で……!」 “那家伙光着脚……!”
潔は部屋着のまま、靴も履かずに裸足で飛び出して行ったらしい。
洁似乎穿着睡衣,连鞋子都没穿,赤脚就冲了出去。

フットボーラーでありながら、怪我の危険を顧みずに裸足で外へ駆け出したのだ。
尽管是足球运动员,却毫不顾及受伤的危险,赤脚跑到了外面。

いつも落ち着いていて、どんな戦況でも冷静さを失うことのなかった潔が、我を忘れて。
平时总是沉着冷静,无论战况如何都不会失去冷静的洁,竟然忘我地冲了出去。

それほどまでに潔がホラーを苦手としていたことを、凛は知らなかった。
凛不知道洁竟然如此害怕恐怖片。

思い返せば、何度も嫌だと言っていたし、止めようとしていたのに。
回想起来,明明已经多次说过不愿意,也试图阻止过。

それなのに、凛はまともに取り合わずに、むしろ潔を拘束するような真似をしてあの場に留まらせた。
尽管如此,凛并没有认真对待,反而采取了类似束缚洁的行为,使他留在那个地方。

いくら後悔しても遅い。 无论怎么后悔也来不及了。
まずは逃げ出した潔を捕まえなくてはならない。 首先必须抓住逃走的洁。
あの様子だと、車道に飛び出して事故に遭う可能性だって十分にある。
看那样子,完全有可能冲到车道上发生事故。

最悪の想像をして、凛は肝を冷やした。 凛做了最坏的设想,感到胆战心惊。
背中に冷や汗が伝う。 背上冷汗直流。


潔は暗い道の隅でしゃがみこみ、丸くなっていた。 洁蜷缩在昏暗的小巷角落,蹲坐着。
どこか痛むのか、怪我をしたのか。 哪里疼吗,是受伤了吗?
凛は潔に駆け寄って、潔の前に膝をついた。 凛迅速跑过来,在洁面前跪下。
「どっか痛ぇか!?」 “哪里疼吗?!”
潔は答えない。 洁没有回答。
潔の顔色は紙のように真っ白だった。 洁的脸色苍白如纸。
凛と目を合わせることもなく、ぶるぶると震え、両手で耳を覆っている。
他没有与凛对视,而是颤抖着,用双手捂住耳朵。

「潔!」 「洁!」
凛が強く呼びかけると、潔の肩がビクッと大きく震えた。
凛强烈地呼唤后,洁的肩膀猛地一震。

ますます縮こまってしまった潔に、凛は舌打ちが出そうになって慌てて止めた。
越来越缩成一团的洁,凛差点发出啧声,慌忙忍住了。

これ以上怖がらせてはいけない。 不能再吓唬她了。

「いさぎ、悪かった。大丈夫だから」 “勇希,对不起。没事的。”
凛の口からは、およそ自分のものとは思えないような声が出た。
凛的嘴里发出了仿佛不属于她自己的声音。

努めてゆっくり、優しく。 努力地慢慢来,温柔地。
自分らしくないと思いながらも、背に腹はかえられない。
虽然觉得不像自己,但也是无可奈何的事。

「いさ……、」 “伊萨……”
潔の目には、涙が溜まっていた。 洁的眼中积满了泪水。
凛は潔が泣くところを初めて見た。 凛第一次看到洁哭泣的样子。
鬼の目にも涙というが、試合で負けても決して泣くことはなかった潔が泣くなんて、凛は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
虽说鬼也有落泪时,但洁在比赛中从未因失败而哭泣,这次竟然哭了,这让凛感到如同被钝器击中头部般的冲击。

潔はじっとしている。 洁静静地待着。
暴れ出すことも、凛を拒否することもないから、先程よりは落ち着きを取り戻しつつあるのかもしれない。
可能是因为既没有发作,也没有拒绝凛,或许比刚才稍微恢复了平静。

凛がそっと潔の肩に手を伸ばそうとしたときだった。 就在凛想要轻轻伸出手去触碰洁的肩膀的时候。

「ーーーーーー!」

隣の通りから、聞き取れないような巻き舌のフランス語の怒声と、ガッシャン!とガラス瓶が割れるような音が響いた。
隔壁街道传来了难以听清的卷舌法语怒吼声,以及“咔嚓!”一声玻璃瓶破碎的响声。

悪酔いした男が、苛立ちに任せて酒瓶を割ったのだろう。
醉酒的男子可能因为烦躁而摔碎了酒瓶。

途端、潔の様子がまたおかしくなった。 就在那一瞬间,洁的样子又变得奇怪了。
「ひっ、ひっく」 「咻、咻咻」
ガラスの割れた音が、先程の映画のシーンと重なったのだろう。
玻璃破碎的声音,可能是与刚才电影的场景重叠了吧。

恐怖を刺激されたことで、潔は声も出さずに喉を震わせている。
因为受到了惊吓,洁连声音都发不出来,喉咙在颤抖。

呼吸が荒くなってきた。 呼吸变得急促起来。
「ひぐ、ひ、っ、ふ」 「唏、唏、呼」
潔は目に涙を溜め、過呼吸を起こしていた。 洁眼中含着泪水,正在经历呼吸困难。
苦しそうにはくはくと呼吸を繰り返している。 痛苦地喘息着,重复着呼吸。
「潔、大丈夫だから」 “洁,没事的。”
凛は潔の手を取った。 凛握住了洁的手。
潔の指先は氷のように冷えていた。 洁的指尖冰冷如冰。
凛は地面に膝をついたまま、潔の腕を引き、そのまま自分の胸に抱き込んだ。
凛跪在地上,拉过洁的手腕,紧紧抱在自己胸前。

ホラー映画を見せつけるために無理矢理抱き込んでいたのとは違う、壊れ物を扱うようにそっと、優しい力で。
为了展示恐怖电影而强行拉入的方式不同,像对待易碎品一样轻轻地,用温柔的力量。

抱きしめても潔が抵抗しなかったことに、凛は内心ホッとしていた。
凛内心感到安心,因为洁在被拥抱时并没有反抗。

潔は凛の腕の中で荒い呼吸を繰り返している。 洁在凛的臂弯中反复急促地呼吸着。
凛は左手で潔の肩を支え、右手でゆっくりと背中を撫でた。
凛用左手撑住洁的肩膀,右手缓缓地抚摸着他的背。

「はぁっ、は、…っは、は…ぁ」 「哈啊,哈,…哈,哈…啊」
「俺の呼吸に合わせろ。吸いすぎだから。吐いて、そう、ゆっくりでいい」
「配合我的呼吸。你吸得太多了。吐气,对,慢慢来就好」

「は、はっ、はぁ…」 「哈,哈啊,哈…」


凛の努力の甲斐あってか、潔は徐々に落ち着きを取り戻した。
由于凛的努力,洁逐渐恢复了平静。

過呼吸も治り、先程より顔色がましになっている。 过度呼吸也好了,脸色比刚才好了一些。
これからどうしよう、と凛は考えた。 凛在想,接下来该怎么办。
潔を相当怖がらせたトラウマの現場である自宅に、もう一度連れ帰っても良いものか。
在洁相当害怕的创伤现场——他的家中,再次带他回去是否合适。

いや、潔はもうあんな場所には戻りたくないだろう。 不,洁大概再也不想回到那种地方了吧。
慌てて飛び出してきたせいで、テレビはつけっぱなしだ。
因为慌忙跑了出来,电视还开着。

「か、帰る、か?」 “回,还是不回?”
凛は恐る恐る訊ねた。 凛小心翼翼地问道:
「帰るっ、て、どこ、に?」 “回去,是,回哪里?”
潔はしゃくりあげて、途切れ途切れの声で質問を返した。
洁哽咽着,用断断续续的声音反问道。

凛は眉間に皺を寄せる。 凛皱起了眉头。
「俺んちはやだろ……」 “我家那边挺好的吧……”
「それは……、こわいぃ……」 “那个……,好可怕……”
潔は眉を下げて、ぽろりと涙を溢した。 洁垂下眉,泪水悄然滑落。
その顔に、凛の胸がずきんと痛んだ。 看到那张脸,凛的心猛地一痛。
あの強気な潔に「こわい」と言わせて泣かせたのだ。 竟然让那个坚强的洁说出“害怕”并哭泣了。
いたずら心でビビらせたかったのは本当だけれど、心底怯えさせてパニックになるほど追い詰めたかったわけではないのだ。
虽然确实出于恶作剧心理想吓唬他,但并非真的想让他从心底感到恐惧,以至于陷入恐慌的地步。

潔を招くために整えた家が、潔にとってトラウマを与える場所となってしまった。
为了邀请洁而精心布置的家,却成了给洁带来创伤的地方。

潔しか泊める予定のないゲストルームは、結局一度も使われることなく無駄になった。
预定接待客人的房间最终一次也没被使用,白白浪费了。

潔は今後一切凛の家に寄りつくことはないだろう。 洁今后大概再也不会去凛家了吧。

凛の家で、凛と潔は何度も一緒にサッカーを観て、反省会をして、食事をとった。
在凛的家里,凛和洁多次一起观看足球比赛,进行反思讨论,并一起用餐。

それが、今後は、なくなる。 今后,那将不复存在。
口の中に苦味が広がっていくのを感じて、凛は顔を顰めた。
凛感觉到苦味在口中蔓延开来,皱起了眉头。

思春期からコミュニケーションを拒絶していた弊害は、今になって現れる。
从思春期开始拒绝沟通的弊害,如今显现出来。

距離を縮めたかった相手なのに、自分の不手際で傷つけ、関係を悪化させてしまった。
虽然想要缩短与对方的距离,却因自己的失误而伤害了对方,导致关系恶化了。

「……おまえんち」 “……你家”
「り、んは、泊まる?」 “里,嗯,要住下吗?”
「泊まるわけねぇだろ」 “不可能住下的吧”
怖がらせた張本人が押しかけてどうする。 吓唬人的罪魁祸首找上门来想干什么。
が、この状態で潔をひとりで帰すわけにもいくまい。 但是,在这种状态下,也不能让洁一个人回去。
「タクシー呼ぶから、送る」 “我叫出租车,送你。”
とりあえず凛は潔が自宅に入るまで見届けなければならないのだ。
总之,凛必须等到洁进入自己家才能离开。

裸足で走った足を明るい場所で確認したいが、潔が凛を家に入れるとも思えない。
我想在明亮的地方看看赤脚奔跑后的脚,但也不觉得洁会允许凛进家门。

ポケットに入っていたスマホでタクシーを呼び、凛は潔を送って行くことにした。
凛决定用放在口袋里的手机叫出租车,送洁去。

「歩けるよ」と潔は言ったが、凛は頑として譲らず、潔をおぶって部屋の前まで運んだ。
“我能走”,洁说道,但凛坚决不让步,背着洁一直走到房间前。

「鍵閉め忘れんなよ」 “别忘了锁门”
「………?」
自宅なら安心できるだろう。 在家的话应该会感到安心吧。
凛が玄関の前で立ち去ろうとすると、潔は不思議そうな顔をした。
凛正要离开玄关前,洁露出了奇怪的表情。

「凛は?」 "凛呢?"
「は?帰るよ。外にタクシー待たせてんだろ」 “啊?我要回去了。外面不是还等着出租车吗?”
凛がそう言うと、途端に潔の目からだばっと涙が溢れた。
凛说完这话,洁的眼中立刻涌出了大滴的泪水。

「は?は?」 “哈?哈?”
何を間違えたのか。 我做错了什么吗?
「な、何泣いて…、」 “你、你为什么哭了…”
凛が慌てると、潔は目を擦りながら言った。 凛慌张起来,洁一边擦着眼睛一边说道。
「なんでひとりにすんのぉ……!?」 “为什么要把我一个人留下……!?”
「え?いや、……わかった、しないしない」 “诶?不,……知道了,不会的不会的。”
凛は潔の部屋に入ることにした。 凛决定进入洁的房间。
潔が怖くて眠れないというなら、一晩中付き合ってやらなければならない責任が凛にはあるのだ。
如果洁因为害怕而无法入睡,那么凛就有责任整晚陪着他。

タクシーには料金を支払って、そのまま帰ってもらった。
我支付了出租车费,让他直接回去了。


映画ではシャワールームで殺人シーンが起きたこともあって、凛はひとりじゃ怖いという潔を風呂場に連れて行き、足を湯で流した。
电影中曾有在淋浴间发生杀人场景的情节,因此凛因为一个人害怕,带着洁去了浴室,并用热水冲洗了脚。

軽く拭いて、リビングで潔の足をまじまじと見分する。
轻轻擦拭后,在客厅里仔细观察洁的脚。

「傷はねぇな」 “没有受伤啊。”
「ないよ、痛くもない。大丈夫」 “没有,不疼。没事的。”
幸い潔に怪我はなかった。 幸好伤得不严重。
凛の家の近くでは、酔っぱらいが酒瓶を割っていたようだし、タイミングが悪ければ潔がガラスを踏みつけていた可能性もあるのだ。
凛家附近,似乎有醉汉打破了酒瓶,如果时机不好,洁可能踩到了玻璃碎片。

凛は心底安堵した。 凛感到由衷的安心。


「眠れそうか」 “看起来能睡着吗?”
時計は十二時を過ぎている。 时钟已经过了十二点。
「眠れないならテレビでもつけとくか。バラエティなら気が紛れるか」
“要是睡不着的话,我给你开电视吧。看看综艺节目或许能分散注意力。”

思春期の娘の機嫌を取る、父親のような口調で凛が訊ねた。
思春期的女儿心情不好,凛用一种父亲般的口吻问道。

潔は力なくふるふると首を横に振る。 洁无力地颤抖着,摇了摇头。
「今はなんも見たり聞いたりしたくない……」 “现在什么都不想看,也不想听……”
「……じゃあ横になっとけ」 “……那就躺下吧”
「うん、寝る」 嗯,睡觉
潔はベッドルームに向かおうとして、立ち止まったままの凛を振り返った。
洁正要走向卧室,回头看了一眼仍然站在原地的凛。

「凛も」 「凛也」
「俺?」
「一緒に来て」 “一起来吧”
「なん…、」 “什么…、”
「せきにん、せきにんとって」 「责任、责任承担起来」
潔の目がまた潤み始めたので、凛は慌ててその後をついて行った。
洁的眼中又泛起了泪光,凛急忙跟了上去。

友達の多い潔のゲストルームの稼働率は高い。 朋友多的洁的客房入住率很高。
泊まるのは主にフランス外から来る青い監獄出身の連中ばかりで、同じ市内に住む凛が潔の家に泊まったことはなかった。
主要住在这里的都是从法国以外来的、有前科的人,而凛从未在同城的洁家里住过。

凛が潔のベッドルームに足を踏み入れるのは、初めてだった。
凛第一次踏进洁的卧室。

「俺、今は暗い方が落ち着くから電気消すけど。でも怖いから、凛は怖くないようにして」
“我现在觉得暗一点比较安心,所以把灯关了。不过我有点害怕,凛你别害怕啊。”

……怖くないように? ……像是不害怕的样子?
曖昧すぎる指示だったが、これ以上潔を刺激したくない凛は黙って頷いた。
指示太过含糊,但凛不想再刺激洁,于是默默地点了点头。

潔のベッドはセミダブルだ。 洁的床是半双人床。
「はい、一緒に寝て」 “好的,一起睡吧。”
潔は布団に潜り込むと、当たり前のように凛をそこに招いた。
洁钻进被窝后,自然而然地邀请凛也进来。

大の男が二人並んで眠るには、スペースにゆとりがない。
两个大男人并排躺下,空间显得有些局促。

それでも今の潔に凛が逆らえるはずがなく、凛は仕方なく潔の横に座った。
尽管如此,凛也无法违抗现在的洁,无奈之下,凛只好坐在了洁的旁边。

「ちゃんと寝て」 “好好睡觉”
潔の語気が強くなる。 洁的语气变得强烈。
今夜の潔は余裕がなくなると怒って泣くのだ。 今夜的洁在感到没有余裕时会生气并哭泣。
凛はまた仕方なく潔の指示に従った。 凛无奈地再次听从了洁的指示。
潔には早く寝てもらおうと、寝かしつけるつもりで潔の腹をぽんぽんと叩く。
为了让洁早点睡觉,我打算哄他入睡,于是轻轻地拍打着洁的肚子。

潔はそれが悪くないようで、満足そうに目を閉じた。 洁似乎觉得不错,满意地闭上了眼睛。

まさかこんなことになるとは思わなかった、と凛は反省した。
凛反省道,没想到会变成这样。

悪ふざけでホラー映画を見せたつもりが、同じベッドで一晩過ごすような拷問を受けるはめになってしまった。
本想开个玩笑给他们看恐怖电影,结果却变成了像在同一张床上度过一整晚那样的折磨。

十分もしないうちに潔は眠りに落ちたようだが、凛はその晩一睡も出来なかった。
不到十分钟,洁似乎就睡着了,但凛那晚一夜未眠。





✴︎





翌朝目を覚ました潔は、すっかり落ち着いて、いつも通りの潔に戻っていた。
次日清晨醒来,洁已经完全平静下来,恢复了平时的洁。

トースターでパンを焼き、インスタントコーヒーを淹れながら「なんかごめんな〜」と謝った。
在烤面包机里烤着面包,冲着速溶咖啡,一边道歉说:“总觉得对不起啊~”

眠れなかった凛の目元には、くっきりとクマが残っている。
凛因失眠而显得疲惫的眼周,清晰地留下了黑眼圈。

「お前がそんなに苦手だったとは、知らなかった」 “没想到你这么不擅长,我之前不知道。”
凛は上手に「ごめんなさい」も言えない。 凛连“对不起”也说不好。
潔は困ったように答えた。 洁以困扰的语气回答了。
「俺さぁ、激しい光とか音とか、ダメなんだ」 “我啊,强烈的光和声音,受不了。”
潔は焼きたてのトーストに齧り付く。 洁咬向刚烤好的吐司。
なんでもない話をするように。 就像聊些无关紧要的事一样。

「五感が鋭いっていうか、感覚が過敏でさ。特に視覚と聴覚が敏感なの。昔は映画館がダメだったし、雷でもパニックになってた。今でもゲーセンは苦手。ホラーが怖いっていうか、演出が苦手だったんだ。昨日のは」
“五感敏锐,或者说感觉过于敏感。尤其是视觉和听觉特别敏感。以前电影院都不行,打雷也会恐慌。现在还是不擅长去游戏中心。不是说害怕恐怖片,而是不擅长那种演出。昨天那个也是。”

「……………」
パンを齧る凛の手が止まる。 凛咬面包的手停了下来。
潔の昨日のアレは、体質によるものだったのだ。 洁昨天的那个,是体质导致的。
そういえば以前、激しい音楽が苦手だと言っていたことを思い出す。
这么说来,我想起你以前说过不喜欢太吵的音乐。

凛の行いは、インフルエンザで高熱を出した人間に、無理矢理サッカーをさせるような真似だったのだ。
凛的行为,就如同强迫一个因流感而发高烧的人去踢足球一样。

凛が本気で落ち込んでいるのを察したのか、潔は慌ててフォローするように言った。
凛似乎察觉到对方真的很难过,洁急忙说了些安慰的话。

「でも、サッカーでメタビジョンが使えるようになったのは、感覚が過敏すぎるおかげでもある。一長一短なんだ」
“不过,足球中能使用 Meta Vision,也是因为感觉过于敏感。真是利弊参半啊。”

潔はいつもより言葉が少なかった。 洁的话比平时少。
潔がいつも通りに戻ったと思ったのは凛の早とちりで、ただの願望だったのかもしれない。
洁以为凛认为他已恢复正常,这可能只是凛的一厢情愿。

それ以上会話が盛り上がることはなく、凛はその場から逃げるようにタクシーで自宅に帰った。
对话没有再热烈起来,凛像逃跑一样乘出租车回到了自己的家。






練習が始まっても、潔はどこかよそよそしかった。 即使练习开始了,洁也显得有些疏远。
なかなか目線は合わないし、潔から話しかけてくることが極端に減った。
视线很难对上,洁主动搭话的次数也极大地减少了。

凛には見えない溝が生まれてしまったように思えた。 感觉凛和我之间似乎产生了一道看不见的隔阂。
しかしそれは、傷つけた側の凛が埋められるものではないこともわかっている。
但我也明白,这道隔阂不是受伤的凛能够轻易填补的。

プレイ中はいつも通り、冷静で負けん気の強い潔世一。
比赛中,洁世一一如既往地冷静、不服输。

しかしあれから潔は、凛の家に行くとは言わなくてなってしまった。
然而,自那以后,洁却变得不再提及去凛家的事了。

もちろん凛から呼べるはずもない。 当然,凛也不可能叫得出来。


練習後のミーティングが終わると、それぞれが自主練をしたり帰宅したりと自由解散となった。
练习后的会议结束后,各自开始自主练习或回家,自由解散了。

潔はミーティングルームで、チームメイトと談笑している。
洁在会议室里,与队友谈笑风生。

こういうとき、潔が真っ先にやって来るのは凛の隣だった。
这种时候,洁总是第一个来到凛的身边。

ミーティングで決まったことを凛と確認しあい、「今から練習しようぜ!」というように。
在会议上确认好决定的事项,然后像是在说:“现在就开始练习吧!”

しかし考えてみれば、凛があとから入ってきただけで、潔は一年間凛のいないチームで過ごしてきたのだ。
但仔细想想,凛只是后来加入的,洁已经在一个没有凛的团队里度过了一年。

凛と潔がチームメイトとして過ごしてきた期間は、ほんの少しだけ。
凛和洁作为队友共度的时光,仅是短暂一瞬。

それでも潔はいつも自分の隣にいるものだと、勘違いしてしまっていた。
尽管如此,洁还是误以为他总是会在自己身边。

潔は誰とでも仲良くなれるような人間だ。 洁是一个能和任何人都能友好相处的人。
青い監獄時代にカイザーとは反りが合わなかったようだが、お互い無視するなんてことはなく、悪口を言い合いながら、ヒートアップするとたまに取っ組み合いをするような関係だった。
在青色监狱时代,凯撒似乎与对方合不来,但他们并没有互相忽视,而是边互骂边升温,偶尔还会扭打在一起。

潔は気になる相手には、ぐいぐいと距離を詰めていく。
洁对在意的人会主动拉近距离。

それが、凛と同じように取っ付きにくい馬狼であろうと、潔は構わず話しかけていたらしい。
似乎无论对方是像凛一样难以接近的马狼,洁都会毫不介意地搭话。

そんな潔が特定の人間を避けているなんて話は、聞いたことがない。
我从没听说过她会特意避开某个人。

完全に嫌われたな、と凛は半ば諦めたような気持ちで思った。
凛心想,看来是完全被讨厌了,心里半是放弃了。

兄も、潔も、凛が離れてほしくない人ほど、凛の側から去っていく。
哥哥也好,洁也罢,越是希望凛不要离开的人,越是会从凛的身边离去。

なんだか自分がバカバカしくなって、凛は潔を置いてミーティングルームをあとにした。
总觉得有些愚蠢,凛放下洁,离开了会议室。



凛は荷物をとって帰ろうとロッカールームに向かった。
凛走向更衣室,打算取了行李回家。

もうほとんど選手は残っていない。 几乎已经没有选手留下了。
廊下の窓から見た空は、どんよりと曇っていた。 从走廊的窗户望出去,天空阴沉沉的。
そういえば、予報だと雷雨になるはずだ。 这么说来,天气预报说会有雷雨。
そんなことを考えていると、ピカッと空が光った。 正想着这些,天空突然闪了一下。
ゴロゴロ、と低い雷鳴が聞こえてくる。 低沉的雷声隆隆作响。
かなり近そうだ。 看起来相当近。
凛は一瞬潔を心配したが、それは自分のすることではないと思い直した。
凛一瞬间担心起洁,但随即想到那不是自己该操心的事。

潔はあの夜わざと怖い思いをさせた自分より、気のいいチームメイトを頼るだろうから。
洁应该会依赖那个夜晚故意吓唬自己的自己,而不是依赖那些友好的队友。

そう思いながらスポーツバッグを肩にかけると、血相を変えた潔が勢いよくロッカールームに飛び込んできた。
这样想着,我把运动包挎在肩上,突然,脸色大变的洁气势汹汹地冲进了更衣室。

「凛!」
「おわっ」 “完了”
潔に勢いよく飛びつかれて、凛は体勢を崩しかける。 洁猛地扑了上来,凛差点失去平衡。
「危ねえな」と文句を言いかけて、口をつぐむ。 "真危险啊。"凛刚想抱怨,却又闭上了嘴。
潔がぎゅうぎゅうと凛に抱きついてきているのだ。 因为洁正紧紧地抱着凛。
「お前……何……、」 “你……怎么……”
最近やたらそっけなかったくせに。 最近明明一直那么冷淡。
凛の胸に顔を強く押し当てていた潔が、ばっと顔だけ離して凛を見上げた。
洁将脸猛地从凛的胸前移开,抬头望向凛。

「雷!」
「……そうだな」 “……是啊”
「ちゃんと!ちゃんと凛もぎゅってしててよ!」 “要好好地!好好地凛也要紧紧抱住!”
「はぁ?」 “哈?”
「もっとしっかり!」 「再认真一点!」
凛はおずおずと潔の背中に腕を回した。 凛小心翼翼地环住了洁的背。
なぜこんなことに? 为什么会变成这样?

しかし潔は本当に怖がっているようで、凛に抱きついたまま必死で何かに耐えてるように身体を硬直させている。
然而洁似乎真的害怕,紧紧抱住凛,身体僵硬,仿佛在拼命忍受着什么。

凛はポケットからワイヤレスのイヤホンを取り出すと、無言で潔の耳に押し込んだ。
凛从口袋里拿出无线耳机,默默地塞进了洁的耳朵里。

スマホから、以前ダウンロードしていたヒーリングミュージックを再生させる。
从手机上播放之前下载的治愈音乐。

雷の音よりはずっとましだろう。 比起雷声来要好得多吧。
急に何かを耳に突っ込まれ、何事かと一瞬驚いた潔だが、そこから音楽が流れてくると、少しだけホッとしたように肩の力を抜いた。
突然有什么东西塞进耳朵,洁一时惊讶不知发生了什么,但当音乐开始流淌时,他似乎稍微松了一口气,放松了肩膀的力量。

それでも凛の胸に顔を埋めたままだ。 尽管如此,凛还是把脸埋在胸前。
凛の背中に回された腕に、力が込められる。 凛的背上,环绕的手臂中注入了力量。
凛は宥めるように、潔の背中をゆっくりと撫でた。 凛温柔地,缓缓抚摸着洁的背。
雷と雨が止むまで、二人はずっとそうしていた。 直到雷雨停歇,两人一直这样。








「助かったぁ、ありがとな、凛」 “太好了,谢谢你,凛。”
15分もしないうちに、雷雨は去って行った。 不到 15 分钟,雷雨就过去了。
潔は凛を解放し、ホッとため息をついた。 洁放开了凛,松了一口气。
イヤホンを外して凛に返し、大きく伸びをする。 他摘下耳机还给凛,伸了个大懒腰。
振り回されているのは凛の方だ。 被耍得团团转的是凛那边。
「なんで俺……、ミーティングルームに他の奴いただろ」
“为什么我……,会议室里还有其他人吧”

今の凛には、潔の信頼がないはずだ。 现在的凛,应该是不信任洁的。
だから避けられていたのではないのか。 所以是不是在避开我呢。
凛がむすっとした顔で訊ねる。 凛带着不高兴的表情问道。
「俺がこういうの苦手だって知ってるの、凛だけだし」
“知道我不擅长这种事的,只有凛你啊。”

潔はもごもごと答えた。 洁含糊地回答道:
「俺のこと避けてただろ」 “你之前不是在避开我吗?”
「あー、それは……」 “啊,那个……”
その自覚はあるようで、凛から目線を外しながら潔は恥ずかしそうに頬を掻いた。
他似乎有所自觉,一边避开凛的视线,洁一边羞涩地挠了挠脸颊。

「一晩経って冷静になったら恥ずかしくなったというか。あんな取り乱して…泣いたりして」
“过了一夜冷静下来后,感觉有点害羞。那样慌乱……还哭了。”

「…………」
「さっき雷が鳴って、頭真っ白になったんだ。でも一瞬で凛の顔が浮かんで、助けて貰おうと思って気づいたらここにいた」
“刚才打雷的时候,我脑子一片空白。但一瞬间浮现出凛的脸,想着要寻求帮助,回过神来就已经在这里了。”

「………俺のこと嫌いになったわけじゃねえの」 “……你并不是讨厌我了吧?”
「え!なるかよ!」 “哎!真的吗!”
潔は目を丸くした。 洁瞪大了眼睛。
そんな潔の態度に、凛も驚いて目を見開いた。 凛对洁的态度感到惊讶,睁大了眼睛。
「だっておまえ」 “可是你”
「恥ずかしかったって言ったじゃん!」 “我不是说了很害羞嘛!”
ゔー、と唸るように潔は言った。 洁发出“呜”的一声,嘟囔道。
「凛にはかっこつけていたかったのにさ」 “明明想在凛面前装酷的。”
「お前がかっこよかったことなんてあるか」 “你有过帅气的时候吗?”
「もお!とにかく、俺が凛のこと嫌いになるわけないだろ?今後あの手の嫌がらせは許さねーけどな」
“哼!总之,我怎么可能讨厌凛呢?以后那种恶作剧我可不会容忍了。”

「……………」
潔は、凛を嫌いになっていなかったらしい。 洁似乎并没有讨厌凛。
失望も、されていなかったようだ。 似乎并没有失望。
とすれば、凛は潔との関係を、諦めずに済むのかもしれない。
那样的话,凛或许可以不用放弃与洁的关系。

凛はホッと息をついて、脱力するようにベンチに座り込んだ。
凛松了一口气,无力地坐到了长椅上。

それを見た潔が凛の向かいに立ち、凛を見下ろしながら凛の髪を撫でた。
看到这一幕的洁站在凛的对面,俯视着凛,并抚摸着她的头发。

数分前と立場が逆転している。 几分钟前的情况完全颠倒了。

「なんだ、嫌われたと思ったの」 “什么嘛,我还以为被讨厌了呢。”
子どもを相手するような声に、凛は潔を睨みあげた。 凛用对待孩子的语气,抬头瞪着洁。
そんな凛の視線に怯むことなく、潔の眦は弧を描いて、凛を優しく見つめている。
面对凛的视线,洁毫不畏惧,眼角弯成弧形,温柔地注视着凛。

「じゃあ今日うちに泊まれよ、潔」 “那今天就在我家住下吧,洁。”
凛は悔しそうな顔をして、潔にわがままを言った。 凛露出懊悔的表情,坦率地说出了自己的任性。
もう潔は来てくれないと思った。 我想他已经不会再来了。
それでも凛は、潔に来て欲しいと思うのをやめられなくて。
尽管如此,凛还是无法停止希望洁能来的想法。

凛の命令のような誘いに、潔はあっさりと頷いた。 凛的命令般的邀请,洁爽快地点头答应了。
「じゃあ今夜はジブリ観ようぜ!トトロ!」 “那今晚就来看吉卜力的电影吧!《龙猫》!”
「仕方ねぇな」 “没办法啊”


その晩、凛は柄にもなく、潔を丁重にもてなした。 那晚,凛破例地隆重款待了洁。
パティスリーに寄って潔の好きなケーキを買ってやったし、脱衣所の棚の奥を引っ掻き回してバスソルトを探し当て、潔に好きな香りを選ばせてやったりもした。
我去了糕点店给洁买了他喜欢的蛋糕,还在更衣室的架子深处翻找,找到了浴盐,让洁挑选了他喜欢的香味。

高校を卒業してから始めた自炊の腕はそれほど高くはないが、今夜は凛がキッチンに立って手料理を振る舞った。
高中毕业后开始自炊的手艺并不算高超,但今晚凛站在厨房里亲自下厨款待了大家。

ただ野菜と肉を焼いただけのような料理を、潔はうまいうまいと言って喜んで食べてくれた。
洁对那道看似只是简单烤了蔬菜和肉的料理赞不绝口,高兴地吃了起来。

一緒に片付けをして、ケーキを食べて、トトロを観る。
一起收拾东西,吃蛋糕,看龙猫。

潔が今度こそ、凛の巣を気に入ってくれるように。 洁这次一定会喜欢上凛的巢。

ゲストルームは、潔のために凛が隅々まで綺麗に掃除してある。
客室是凛为了洁而彻底打扫干净的。

今まで使われてこなかった、潔のためだけに用意した部屋が、ようやく日の目を見ることとなったのだった。
一直以来未曾使用过的、专为洁准备的房间,终于得以重见天日。

しかし潔は、当然のように凛のベッドルームについてきている。
然而洁却理所当然地跟着凛进了她的卧室。

「なんでこっち来んだよ。隣の部屋案内しただろうが」
“干嘛来这儿啊。不是已经带你去过隔壁房间了吗?”

「だって予報によると、今夜も天気が不安定なんだって」
“因为天气预报说,今晚天气也不稳定。”

図々しい潔は、当たり前のように凛のベッドに潜り込んできた。
厚脸皮的洁理所当然似的钻进了凛的床铺。

凛のベッドは余裕をもって眠れるようにダブルだから、潔が入ってきたところで狭くはならない。
凛的床是双人床,足够宽敞,所以即使洁进来也不会觉得挤。

凛が潔に背を向けると、潔は丁度良いと言わんばかりに、後ろから凛に抱きついて凛の腹に腕を回した。
凛转身背对洁,洁便顺势从后面抱住凛,将手臂环绕在凛的腹部。

「あー落ち着くー」 “啊——感觉好平静——”
そう言ったかと思うと、数分も経たないうちに凛の後ろからは健やかな寝息が聞こえてきた。
刚说完那句话,没过几分钟,就从凛的背后传来了平稳的鼾声。

「………クソッ」 “………可恶!”


凛は潔からの揺るぎない信頼を獲得したい。 凛想获得洁的坚定信任。
ここで理性を失ったら元の木阿弥。 在这里失去理性就前功尽弃了。
怯えてもらっちゃ困るが、意識されなさすぎるのも非常に困る。
虽然不想让你害怕,但太过不被注意也非常困扰。

昨日の凛からすれば、贅沢な悩みだった。 对昨天的凛来说,那是奢侈的烦恼。
今は、凛に懐き、凛にだけ弱みを見せて、凛を頼る潔を手放すわけにはいかないのだ。
如今,不能放弃依赖凛,只在凛面前展现弱点,依赖凛的洁。

凛は身動ぎすることも出来ず、悶々とした一晩を過ごすはめになった。
凛无法动弹,只能度过一个闷闷不乐的夜晚。







✴︎






「なぁ、リンってやたらイサギに過保護じゃねぇか?」
“喂,阿林对矶鹬是不是太过度保护了?”

潔を後ろから驚かせようとして、凛に蹴られたチームメイトが腰を摩りながら言った。
队友从后面想吓唬洁,结果被凛踢了一脚,一边揉着腰一边说。

「シッ、今あいつは頑張ってるところなんだ」 “嘘,他现在正努力着呢。”
同じチームメイトが、声を潜めて答える。 队友压低声音回答。
凛や潔に聞こえないように。 听起来不那么凛然和纯洁。
「リンって音にうるさいよな。騒がしいのは嫌いそうだけど」
“林对声音很挑剔啊。看起来不喜欢吵闹。”

そんな噂話に、また別の者が加わった。 又有另一个人加入了这样的传闻。
「ミーティングルームのレーザーポインタで遊んでた奴も、リンにしばかれたらしい」
「在会议室用激光笔玩的那个家伙,好像被凛教训了一顿。」

「それは普通に危険だろ」 “那很危险吧。”
当たり前のように嗜められる。 理所当然地被接受。
レーザーポインタは危険だ。 激光笔很危险。
「でもやっぱ、イサギには過保護だよなぁ」 “不过,对刺猬还是太溺爱了吧。”
その意見だけは、満場一致なのだった。 这个意见,却是全场一致的。




评论

  • のり
    6月20日回信
  • 七宵
    6月20日回信
  • momoo0
    6月19日回信
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