弟くんはお兄さまと最良のパートナーには逆らえない(不本意)
弟弟君无法违抗与兄长大人成为最佳搭档的命运(心不甘情不愿)
・今週もよろしくお願いいたします。 ・本周也请多多关照。
アニメ二期まで一ヶ月を切りましたね。待ち遠しいです。
动画二期还有不到一个月就要开始了,真是期待啊。
【お読みいただく前の注意事項】 【阅读前的注意事项】
・冴潔With凛でお送りいたします。 ・由冴洁与凛共同为您呈现。
・冴さんの熱愛報道です。n番煎じの出がらしですが、ご容赦ください。
・关于冴先生的热恋报道。虽是老调重弹,还请见谅。
・ヤマもオチもございませんし、なんなら中身もございません。
・既无高潮也无结局,甚至内容也空空如也。
・タイトルセンスは皆無です。 ・标题感完全为零。
・誤字脱字はサイレント修正を行います。 ・错别字会进行静默修正。
暇すぎてどうしようもない時にご覧ください。 闲得无聊时请随意观看。
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【弟くんはお兄さまと最良のパートナーには逆らえない(不本意)】
【弟弟君无法违抗与兄长大人成为最佳搭档的命运(心不甘情不愿)】
スポーツ新聞からネットニュース、ワイドショーまで。
从体育报纸到网络新闻,再到综艺节目。
その日、話題を独占したのは、日本サッカー界の至宝、若き司令塔、天才MFの糸師冴の熱愛報道だった。
那天,独占话题的是日本足球界的至宝,年轻的指挥官,天才中场糸师冴的恋情报道。
「下らねぇ」 「无聊透顶」
鳴りやまぬ通知に嫌気がさして、糸師凛はスマートフォンの電源をぶっちり切った。
无休止的通知声让人心生厌烦,糸师凛干脆关掉了智能手机的电源。
「なになに…『氷の貴公子も溶けさせる情熱テクニック♡ 美人女優が仕掛けた甘い誘惑♡』ねぇ…」
「什么什么……『冰山贵公子也能融化的热情技巧♡ 美女演员设下的甜蜜诱惑♡』呢……」
凛がうざったそうに髪を掻き上げる横で、ラグの上に直接座り込み、ソファーの足のところを背もたれにして寛いでいるのは凛の宿敵の潔世一だ。
凛不耐烦地撩起头发的旁边,直接坐在地毯上,将沙发的脚部当作靠背放松的,正是凛的宿敌洁世一。
彼は凛の家に来る道中でわざわざコンビニエンスストアによって、件の記事がでかでかと書かれている雑誌を購入してきたらしい。読むならネットニュースぐらいでいいだろうが、と、その手のネットニュースすら見たくもない凛が呟けば、「だって冴の熱愛報道ってレアじゃん。形に残しておきたくねぇ? あ、ハサミある?」なんて切り抜いて保存までやりかねない勢いだ。
他在来凛家的路上特意去了便利店,似乎是为了买那本刊登着醒目报道的杂志。虽然看的话网上新闻就足够了,但连那种网络新闻都不想看的凛嘟囔着,他却气势汹汹地说:‘毕竟冴的热恋报道可是稀罕事啊。不想留个纪念吗?啊,有剪刀吗?’简直是要剪下来保存的架势。
「あーでも、どうしよう…」 「啊——不过,怎么办呢……」
めんどくせぇ、とぼやきながらハサミを探し出して潔に渡してやると、潔は「サンキュ」とハサミを受け取った後にむむむ、と眉根を寄せた。
‘真麻烦’,一边嘟囔着一边找出剪刀爽快地递给他,洁接过剪刀后说了声‘谢谢’,然后皱起了眉头。
「何が」 「什么啊」
「この面を切るとさ、裏の記事がへんなところで切れちゃうんだよなぁ…もう一部買ってくるべき?」
「这页剪下来后,背面的文章会在奇怪的地方断掉啊……要不要再去买一本?」
「………」
まだ売ってるかなぁ、なんて何の衒いもなく呟く潔。切り取らずに雑誌ごと保管しときゃいいだろうが。凛は呆れ果てて天井を仰いだ。あ、あんなところにシミがある。
还在卖吗,洁毫无炫耀之意地喃喃自语。不剪下来直接把杂志保存起来不就好了。凛无奈地仰望天花板。啊,那里有块污渍。
「ま、いっか」 「嘛,算了」
こっちの記事は写真もないし…と、潔の中では結論が出たらしい。妙に切れ味よくしゃきんしゃきんと紙が裁断されていく。
这边的新闻连照片都没有……看来在洁的心里已经有了结论。他异常利落地咔嚓咔嚓裁剪着纸张。
「お前な」 「你这家伙」
「ん?」 「嗯?」
「怒ってんなら、それらしく怒れよ」 「要是生气了,就表现得像样点吧」
怖ぇーんだよ、と凛は心の中で付け足した。まかり間違っても潔に恐怖を抱いたことは悟られたくない。
好可怕啊,凛在心里补充道。无论如何也不想被人察觉到自己内心的恐惧。
「怒る? 誰が?」 「生气?谁会?」
潔の平坦な声に凛の背筋がぞくりと震えた。下手なホラーよりずっと恐ろしい。
洁那平淡的声音让凛的背脊一阵发凉。比拙劣的恐怖故事更令人毛骨悚然。
サッカーの強化合宿、通称『青い監獄』で出逢って早六年。出逢った当初から最良のパートナーだのなんだのと言われ、生涯の宿敵として殺し殺され、理解不可能なのに理解できる、という余人には全く測り知れない関係性を築いていくであろう相手が、初めて怪物のようにみえた。
在足球强化集训,俗称『蓝色监狱』中相遇已六年。从初遇起就被称为最佳搭档,作为一生的宿敌互相厮杀,彼此间虽难以理解却又心有灵犀,这种外人完全无法揣测的关系,如今第一次让他看起来像是个怪物。
「凛は俺が怒っているように見える?」 「凛,我看起来很生气吗?」
「あぁ。ブチ切れ過ぎてヤベェやつ」 「啊,气得过头了,这家伙真糟糕。」
「ふぅん。そう」 「嗯,是吗。」
(ふぅん。そう。……じゃねぇーっての) (嗯,这样啊。……才不是呢)
なんでこんな導火線に火がついたような爆発物を家に上げてしまったのか。凛は数十分前の自分の行動を後悔した。
为什么会把这种像导火线一样一触即发的爆炸物带回家呢。凛后悔了几分钟前的自己的行为。
先述の通り、凛はネットニュースもワイドショーにも全く興味がない。故にオフシーズン、日本に帰ってきているタイミングで、同じく帰国していた潔に『遊びに行ってもいい?』と尋ねられれば、いつも通りに『勝手にしろ』とだけ返事をしたのが運の尽き。兄である冴の熱愛報道を一瞬でも目にしていれば、面倒なことに巻き込まれる前にどこぞのホテルにとんずらしただろう。だって多分、仮に凛が『来るな』と言ったところで、凛に対しては遠慮だとか配慮だとかを放り投げる癖のある潔は『来ちゃった♡』とかいってマンションに押しかけてくるので。居留守使っても無駄だ。凛はたびたび潔に合鍵を渡してしまった過去の自分を殺したくなる衝動に襲われる。そのくせ鍵を返せとも言わないし、付け替えたりもしないので、とどのつまりはまぁ、そういうことだ。凛も凛で、潔のマンションの合鍵を持ってるわけだし。
如前所述,凛对网络新闻和综艺节目完全没有兴趣。因此,在非赛季回到日本的时候,同样回国的洁问她『可以来玩吗?』时,她像往常一样只回答了『随你便』,这就是运气用尽的原因。如果她哪怕一瞬间看到了哥哥冴的热恋报道,她就会在卷入麻烦之前逃到某个酒店去吧。因为大概,即使凛说『别来』,对凛从不客气、不考虑的洁也会说『已经来了♡』然后闯进公寓。装作不在家也没用。凛经常会有想杀死过去那个轻易把备用钥匙交给洁的自己的冲动。尽管如此,她既没有要求归还钥匙,也没有更换,所以归根结底,就是这样。凛自己也有洁公寓的备用钥匙。
「兄貴から連絡は?」 「大哥有联系吗?」
「どうだろう? 来ているかもしれないけど見てないや」
「谁知道呢?可能来了但我没看。」
コイツ鬼だ。 这家伙是鬼吧。
凛はドン引きした。 凛感到一阵无语。
サッカー界に煌めく糸師兄弟は、世界級の実力者で、更には玲瓏に整った容姿も相まって非常に女性人気が高い。彼ら自身は面の皮一枚でサッカーの能力が変わるわけがないことを理解しているが、それでも自分たちの容姿が秀でているという自覚はあった。彼らは興味のないものには塩対応がデフォルトなので、『普段はつんつんクールな彼が、私の前だけ甘々スパダリ♡』なんて現実と妄想の区別がついていないリアコ勢が発生する。まぁ大体、『は? 凛には潔きゅんという最良のパートナー(公式)が居るんですけど』『冴選手が潔選手を〝俺の生涯唯一のストライカー〟って公言したアジア杯を知らないのか素人め』なんて、どこからともなく現れる凛潔派、冴潔派がフルボッコするまでが形式美だ。治安が悪い。
在足球界闪耀的糸师兄弟,凭借世界级的实力和玲珑剔透的容貌,深受女性欢迎。他们明白自己的足球能力不会因为长相而改变,但对自己的外貌出众也有自知之明。由于他们对不感兴趣的事物通常冷淡回应,因此产生了‘平时冷酷的他,唯独在我面前甜甜蜜蜜♡’这种分不清现实与幻想的狂热粉丝。大多数情况下,‘什么?凛可是有洁这个最佳搭档(官方认证)的’‘你不知道冴选手在亚洲杯上公开宣称洁选手是‘我一生唯一的射手’吗,真是外行’之类的,不知从哪冒出来的凛洁派、冴洁派会大打出手,直到被彻底击败才算形式美。治安真差。
それはともかく、糸師兄弟とのあわよくばを狙う人間は多いので、ふたりはそういうことに関するリスクマネジメントは超一流だった。冴の熱愛報道が初めてなのもその辺りが起因している。
话说回来,想趁机接近糸师兄弟的人很多,所以两人在这方面的风险管理堪称一流。冴的恋情首次被报道也与此有关。
第一、潔はこの熱愛報道が事実無根であることを一番よく理解している。あることないこと、というが、記事も報道もないことの上にないことを重ねた捏造であると。
首先,洁最清楚这些热恋报道是无中生有。所谓有的事没有的事,就是在没有任何报道的基础上捏造出来的。
にもかかわらず、潔がこれだけ怒っていると、いっそ凛は兄が気の毒に思えてきた。冴だって立派な被害者なのだから。
尽管如此,看到洁如此愤怒,凛反而觉得哥哥有些可怜。冴也是个受害者啊。
(……っつーか、未読スルーってヤバくねぇ?) (……话说,未读不回也太糟糕了吧?)
「このカメラマン、あんまり腕がよくねぇよなー。だって冴ってもっとかっこいいし」なんて雑誌の写真に文句をつけている暢気な潔を前に、凛の顔色がどんどん悪くなっていく。
「这摄影师,技术不咋地啊。明明应该拍得更帅才对」洁一边对着杂志上的照片发牢骚,一边悠闲地站在那里,凛的脸色却越来越难看。
と、その予感は物の見事に的中した。 果然,预感应验了。
ガァンッ!! 咣当!!
凛の部屋の玄関扉が派手な音を立てた。 凛的房间门发出了响亮的声音。
「!」
凛はインターフォンのカメラを確認し、渋々といった体で立ち上がる。
凛确认了门铃的摄像头,不情愿地站起身来。
ガァンッ!! 咣当!!
「ここ開けろ、凛」 「开门,凛」
「……」
ごっそり感情が抜け落ちた顔で、ヤの付く自由業ばりにガンガンと玄関扉を蹴りつける兄に、凛は自分の寿命の残りを数えた。
兄长以一种情感尽失的表情,像极了自由职业者般猛烈地踢着玄关门,凛默默计算着自己剩余的寿命。
いや、その前に潔を差し出すべきだ。 不,在此之前应该先交出洁。
「開けるから蹴るのをやめろ」 「我开门了,别踢了」
このマンションのセキュリティーはどうなっているんだ。こんな厄介な相手をエントランスで阻めないなんて。引っ越しを検討するべきだろうか。そしたら次は絶対、潔に合鍵は渡さねぇ、と心に決める。
这公寓的安保是怎么回事?连这种麻烦的家伙都挡不住。是不是该考虑搬家了。然后在心里下定决心,下次绝对不干净利落地给备用钥匙了。
冴が蹴るのをやめたため、凛は扉を開けて兄を迎え入れる。
因为冴停止了踢门,凛打开了门,让哥哥进来。
「潔、いるな」 「洁,在吗」
「…挨拶もなしかよ」 「……连招呼都不打吗」
凛が玄関の壁に肩を付けて呆れた声を出すのに構わず、冴は辛うじて靴を脱いで部屋に上がる。もし靴履いたまま上がるようなことがあれば部屋のクリーニング代を請求するところだ。いや、すでに精神的苦痛を受けた慰謝料ぐらい請求してもいいはず。
凛靠在玄关的墙上,发出无奈的声音,但冴毫不在意,勉强脱下鞋子走进房间。如果敢穿着鞋进来的话,一定会索要房间清洁费。不,或许连精神损失费也该索赔。
冴は勝手知ったる弟の家、迷うことなくリビングへと足を踏み入れた。
冴毫不犹豫地踏入了他再熟悉不过的弟弟的家,径直走向客厅。
「あ、噂の氷の貴公子」 「啊,传闻中的冰山贵公子」
「次そのクソッタレな名前で呼んだらベッドに縛り付けるぞ」
「下次再敢用那个混蛋名字叫我,就把你绑在床上」
「そんで情熱テクニックで溶かしてくれんの?」 「然后就用热情技巧把我融化掉?」
「テメーの頭がイカレるぐらいにな」 「你的脑袋简直要疯了」
「あは。じゃあお手並み拝見、ってことで」 「啊哈。那就请让我见识一下你的本事吧。」
「……てめぇら」 「……你们这群家伙」
さっきまでメチャクチャお怒りだった潔と、そんな潔と連絡が取れずに表情がヤバいことになっていた冴のふたりがぽんぽんと会話するのを聞いて、凛の声が低く響く。地獄の底から響いてくるような声だった。
刚才还怒气冲冲的洁,以及因无法联系上那样的洁而表情变得糟糕的冴,两人不停地对话着,凛的声音低沉地响起。那声音仿佛从地狱深处传来。
「痴話喧嘩なら余所でやれ!! 即刻この部屋から消え失せろ殺すぞ!!」
「要吵去别处吵!!立刻从这房间消失,不然杀了你!!」
「凛、落ち着けよ」 「凛,冷静下来」
「落ち着けるか!! 大体何で俺を巻き込むんだよ!」
「冷静点!!为什么要把我卷进来啊!」
「え? だって凛だし」 「诶?可那是凛啊」
「だって俺の弟だし」 「可他是我弟弟啊」
「コロス!」 「科洛斯!」