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短編集:夏/あきづき的小说

短編集:夏 短篇集:夏

13,056字26分钟

X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2024年5~7月分)をまとめたものです。
这是在 X(twitter)上参与的 One Life 投稿作品汇总(2024 年 5~7 月)。

各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
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ゆびきりげんまん、次のこと 拉钩上吊,一百年不许变

 新緑の季節だった。生い茂る街路樹の隙間、向こう側に遠景の鉄塔が覗く。
 新绿的季节。茂盛的行道树缝隙间,远景的铁塔隐约可见。

 息を弾ませながら歩く、隣の男を見遣る。  一边轻快地走着,一边打量着身旁的男子。
 今度行くからと案内役を頼まれて、ではどこに行きたいのかと問えば任せるときた。丸投げとはいい度胸である。それならお望みの通りにしてやろうという次第で、凛は観光地と言える場所をおよそ無視して己の生活圏を回っている。オフの日のランニングコース、朝食を買いに立ち寄るパン屋、休憩に使う公園。ほぼ間違いなく大多数の人間にとって面白みのないプランニングだ。
 这次要去的地方被委托做向导,问他想去哪里,却说随便。真是大胆的甩手掌柜。既然如此,那就如你所愿吧,凛于是绕过了那些所谓的观光地,带着他逛起了自己的生活圈。平日跑步的路线、买早餐的面包店、休息用的公园。这几乎可以肯定对大多数人来说是无趣的计划。

 それでも、凛にとっては見飽きた古都の街並みを眺めるその表情は酷く興味深げだった。丸い目がくるくると動き、周囲の景色を映し出す。時折その動きが止まると、引き金のように緩く口角が持ち上がる。
 尽管如此,凛看着那早已看腻的古都街景,表情却显得极为饶有兴趣。圆圆的眼睛滴溜溜地转动,映照出周围的景色。偶尔那动作一停,便如扣动扳机般,嘴角微微上扬。

 欧州の都市の景観など、どこであれ大した違いなどないように思える。この男の現在の拠点とて観光地としてはそれなりに有名だ。何がそれほど楽しいのか凛にはよく分からない。
 欧洲城市的景观,无论哪里,似乎都没有太大的差别。这个男人现在的据点,作为旅游地也相当有名。凛不明白,究竟有什么如此令人愉快。

 とはいえ、わざわざ付き合ってやっているのにつまらなそうにされるよりは余程マシだろう。そんなことをされた日には間違いなく相手を殺している。
 虽说如此,特意陪着来,总比被一脸无聊要好得多。要是那样,那天绝对会杀了对方。

 そう考えればまあいいか、という気分になった。  这么一想,心情也就释然了。


 そもそも、どうして凛が潔の観光に付き合うことになったのか。
 说起来,凛为什么会陪洁去观光呢?

 それはある日突然凛の元に届いた、一通のメッセージが発端だった。
 那是一天突然送到凛那里的一封信息,成为了这一切的起点。

 今度そっち行くんだけど、という文言からスタートしたそれはおすすめの飲食店についての質問をメインとする内容だった。しかし最後の最後、相手を誘う言葉を締め括りに用いており、それが凛の脳味噌を大いに悩ませた。
 这次要去你那边,这句话拉开了序幕,主要内容是关于推荐餐饮店的提问。然而在最后,用邀请对方的话语作为结尾,这让凛的大脑非常困扰。

 ロッカールームでスマートフォンの画面を睨みつける顔つきの険しさは格別で、普段なら一言くらいは労いの言葉を掛けるチームメイトすら遠巻きにしていたほどである。チーム内では恋人(存在しない)に別れ話でも切り出されたのではないかと現在進行形で噂になっている。勿論凛自身は露ほども知らない。
 在更衣室里盯着智能手机屏幕的脸色异常严峻,平时即使说上一两句安慰话的队友也都远远避开。队内正在流传着她是不是被恋人(不存在)提出了分手的谣言,当然凛自己对此一无所知。

 そして既読の表示だけを付けたまま、数時間置いた後。
 然后只标记了已读,数小时后。

 結局凛は一言、了承の返事を打ち込んだ。  凛最终只回了一句同意的答复。


 普段よりも少しだけ気の抜けた眼差しで、凛は潔の横顔を眺める。
 比平时稍显松懈的眼神,凛注视着洁的侧脸。

 ふと、注がれる視線に気付いたのか、その顔が凛の方へと向き直る。浮かぶのは満面の笑みだった。
 或许是察觉到了投来的视线,那张脸转向了凛的方向。浮现的是满面的笑容。

「今日はありがとな、凛。めっちゃ楽しい!」 「今天真是谢谢你了,凛。超级开心!」
「当然だろ。つまんねーとかふざけたこと抜かしやがったら殺す」
「那是当然的。敢说无聊什么的,我可不会放过你。」

「怖ッ」 「好可怕」

 凛の言葉に潔は少し眉を下げる。それでも目は依然として楽しげなままだ。
 听到凛的话,洁微微皱了皱眉。但他的眼神依旧充满愉悦。

 そういう潔の顔を見ると凛は何か言い表し難い、こそばゆいようなむず痒いような、そんな感覚に陥る。
 看到洁这样的表情,凛心中涌起一种难以言喻的、既羞涩又痒痒的感觉。

 その情動を扱いかねて、ふいと潔から目を逸らす。  无法处理这种情感,凛不由得移开了视线。
 潔は気にした様子もなく言葉を紡ぐ。 洁若无其事地开口。

「正直さ、驚いた。まさかお前が案内してくれるなんて思わなかったから」
「说实话,我挺惊讶的。没想到你会主动带路。」

「あ? 言い出したのはお前だろーが」 「哈?不是你先提出来的吗?」
「そこは駄目元だったっつーか…実は最初、七星に聞いたんだけど」
「那其实是抱着试试看的心态……其实一开始,我问了七星」

 瞬間、凛の眼差しが再び潔に向けられる。先程とは打って変わって剣呑な目つきだった。
 瞬间,凛的目光再次投向洁。与刚才截然不同,眼神变得凌厉。

 潔は街路樹の枝先に停まった、名も知らない鳥に目を向けながら続ける。
 洁一边注视着停在街边树枝上、不知名的鸟儿,一边继续说道。

「その辺りなら凛さんが詳しいっぺ!って言うから、それならって」
「那附近凛酱最清楚了!所以才这么说」

 凛の視線はどんどん棘を帯びていく。突き刺すような、射殺すような鋭さだ。目尻にはうっすらと血管が浮き上がっている。
 凛的视线逐渐带上刺芒。锐利得仿佛要刺穿、射杀一般。眼角隐约浮现出血管。

 それに気付いているのかいないのか、潔は視線を遠くに向けたままだった。その視線の先、鳥は番と羽繕いをしている。
 不知是察觉到了还是没察觉到,洁依然将视线投向远方。视线的前方,鸟儿正在梳理羽毛。

 一呼吸挟んで、口を開く。  一呼吸间,张开了口。

「元々、お前に会いたいと思ってたから」 「原本,我就想见你」

 そうして前を向いたまま、視線だけをこちらに寄越す。
 就这样面向前方,只将视线投向这边。

 凛の片眉がぴくりと跳ねた。 凛的一侧眉毛微微一挑。

「こう、清水の舞台から飛び降りる、みたいな意気込みだったわけ。言ってみたらOKするから、驚いた」
「就像是从清水舞台跳下去的那种决心。没想到说出来后居然被同意了,真是吓了一跳」

 嬉しかった、と噛み締めるように口にする。 「很开心」,她像是在细细品味般地说道。
 その言葉が心底からのものであることは、顔を見ればわかった。
 那句话发自内心,看一眼脸就能明白。

 だから凛は浅く息を吐いて、脛への蹴り一つで勘弁してやることにした。痛ぇなコラ、と抗議の声が上がる。無視する。
 所以凛轻轻吐了口气,决定只用一脚踢在小腿上放过他。“好痛啊,混蛋!”抗议声响起。无视之。

 視界の端、羽繕いを終えた鳥が番とともに空へと飛び立つ。
 视野边缘,梳理完羽毛的鸟儿与同伴一同飞向天空。

「…次」
「ん?」 「嗯?」
「俺がそっちに行った時は、お前が案内しやがれ。クソバカ潔」
「我过去那边的时候,你来带路吧。混蛋洁」

「…勿論! 約束する!」 「……当然!我保证!」

 潔の顔が輝く。  洁的脸庞闪耀着光芒。
 凛はフン、と鼻を鳴らす。  凛哼了一声,鼻子发出声音。
 潔は屈託なく笑う。  洁无忧无虑地笑着。
 そして、思いついたように右手を胸の前まで持ち上げた。凛に向かって小指を差し出す。白けた目で見ていると、催促するようにそれを揺らす。
 然后,像是突然想到似的,将右手举到胸前。向凛伸出小指。用无语的眼神看着,并催促般地摇晃着。

 一蹴するかどうか考え、面倒臭さが勝った。凛はため息をつき、渋々同じように小指を差し出す。潔は満足げな顔をする。
 考虑是否一脚踢开,但嫌麻烦的心情占了上风。凛叹了口气,不情愿地同样伸出小指。洁露出满意的表情。

 差し出した凛の小指に、潔のそれがするりと絡む。  洁的小指轻轻地缠上了凛伸出的小指。
 ゆびきりげんまん、と軽やかな声が紡ぐ。  “拉钩上吊,一百年不许变。”轻快的声音编织着。
 幼少期以来聞いた記憶のないそれは、何の感慨もなく凛の耳に響いた。僅かに冷えた感情が胸を満たす。くだらない、というのが率直な感想だった。
 那是自幼时起便未曾听闻的语句,毫无感慨地传入凛的耳中。些许冰冷的感情充盈胸间。“无聊至极”,这是直率的感想。

 歌の終わり際、伏せられていた潔の瞼が持ち上がる。こちらに向いた眼差しは本当に、何もかもが馬鹿馬鹿しく思えるくらいに楽しげで、どこか子どもじみていた。
 歌声将尽之际,被遮掩的洁的眼睑抬起。投向这边的目光,真的让人感到一切都是那么愚蠢,却又带着几分孩童般的愉悦。

 その他愛のなさに毒気を抜かれ、凛は意識的に渋面を作る。離れていく指を目で追いながら、ぼそりと呟いた。
 因缺乏爱意而感到沮丧,凛有意识地皱起眉头。她一边用目光追随着离去的指尖,一边低声喃喃道。

「ガキくせー」 「小鬼头」
「いいんだよ、こういうのは様式美なんだから」 「没关系,这种事是种风格美嘛」

 そう言って、潔は目を細める。悪巧みでもするような顔つきだった。
 说着,洁眯起了眼睛。一副在打什么坏主意的表情。

「楽しみにしとけ。飛び切りイイトコに連れてってやるよ、凛」
「期待着吧。我会带你去个超棒的地方,凛。」

「ぬるかったらぶっ殺す」 「敢敷衍就宰了你」
「上等!」

 返る言葉は弾んだトーンで紡がれる。それを口にした潔の、その表情。その笑みがやはり、どうしても胸を擽らずにはおかなくて。
 回响的话语以轻快的语调编织而成。洁说出那句话时的表情,那笑容,无论如何都无法不触动心弦。

 忙しない情動に、凛はひとつ舌打ちをした。  面对纷乱的情感,凛发出了一声轻叹。

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