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短編集(冬)/あきづき的小说

短編集(冬) 短篇集(冬)

10,585字21分钟

X(twitter)上で参加させていただいた新ワンライへの投稿作品(2024年2月分)を主にまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的新一期投稿作品(2024 年 2 月分)的主要汇总。

各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000~3000 字。目录请参阅第 1 页。


素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
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春遠からじ 春意渐远

 時刻は日付が変わる少し前、窓の外では雪が降っていた。
 时间已近午夜,窗外飘着雪花。

 部屋の中央には大きなこたつが一基。卓上に先刻まで催されていた鍋の痕跡はない。代わりに綺麗に皮を剥かれたみかんが、全体の半分以上の割合の房を残したまま放置されていた。
 房间中央摆着一张大被炉。桌上原本盛放的火锅痕迹已无,取而代之的是剥好皮的橘子,留下超过一半的果肉被随意放置。

 すう、すう、と呼吸の音が静かに室内に響く。  呼、呼,呼吸声静静地在室内回响。
 その発生源をじっと眺め、凛は瞬きをひとつ落とす。
 凛凝视着那发生源,轻轻眨了一下眼。

 家主である潔がこたつに埋もれ、至極穏やかな様子で眠りについていた。角度の関係で顔は見えないが、凛の足音に反応がないことから意識が沈んでいるのは明らかだ。
 家主洁埋在暖桌里,极其安详地进入了梦乡。虽然角度关系看不到脸,但从凛的脚步声中没有反应来看,显然意识已经沉入深处。

 舌打ちが漏れる。  咂舌声不经意间漏出。
 風呂、先に入ってこいよ。俺はまだいいから。ほんの少し前、この男はそう言って凛を見送った。その時点で眠たげに目をしょぼつかせていることには気付いていた。薄々そんな予感はしていたが、風呂を出て戻ってみれば案の定これである。
 去洗澡吧,你先去。我还不急。就在刚才,这个男人这么说着目送凛离开。那时他已经困得眼睛半睁半闭了。虽然隐约有所预感,但走出浴室回来一看,果然如此。

 風邪を引く。おかしな姿勢で寝たせいで節々を痛める。そういった諸々の不利益が目に見えているのに、何故こんな愚かな真似ができるのだろう。自己管理の杜撰さに苛立ちが募る。自然、視線が棘を持つ。
 感冒了。因为睡姿不正导致关节疼痛。明明这些不利因素显而易见,为什么还会做出如此愚蠢的行为。对自己管理的松懈感到焦躁。自然而然,视线变得尖锐。

「おい」 「喂」

 尖った声で呼び掛ける。  尖锐的声音呼唤着。
 反応はない。潔の眠りは深い。この程度では起きない。
 没有反应。洁的睡眠很深。这种程度是醒不来的。

 だがそんなことは分かっている。これは実力行使に出る前の、いわば準備運動のようなものだ。一応穏便な手段も試してはやったのだという大義名分を得るための張りぼてに過ぎない。
 但这些我早已知晓。这不过是采取实际行动前的,可以说是准备运动一样的东西。只是为了获得一个名义,即在采取强硬手段之前,已经尝试过和平手段的幌子罢了。

 起きる気配がないのを確かめて、凛は大股で潔の側に歩み寄る。
 确认到没有起床的迹象,凛大步走向洁的身边。

 いつもの通り叩き起こしてやろうと手を伸ばす。その瞬間、ふと魔が差した。伸ばした手が勢いを失い、寸前で停止する。
 正要像往常一样伸手叫醒他。就在那一瞬间,突然心生一念。伸出的手失去了势头,在即将触碰的瞬间停了下来。

 なんとなく。  不知为何。
 なんとなく、コイツがどんなアホ面をして寝ているのか拝んでやろうか、という気になったのだ。
 不知为何,突然想看看这家伙睡着时是什么傻样。

 同じような状況になったことはこれまでにも何度かあり、凛はその度に情け容赦なく潔を眠りの淵から引っ張り上げてきた。したがって寝ているときの顔くらいどこかのタイミングで目にしているはずだが、不思議と記憶にない。おそらく興味を抱くより先に行動に移っていたためだろう。今このときは、隠れていたからこそ敢えて見ようという気が湧いたのかもしれない。
 类似的情景以前也发生过几次,凛每次都会毫不留情地把洁从睡梦中拽起来。因此,按理说应该有机会看到他睡觉时的样子,但奇怪的是,记忆中却没有。大概是因为每次都还没来得及产生兴趣就先行动了吧。或许正因为现在躲起来了,才反而产生了想看的念头。

 好奇心のまま、部屋の奥の方を向いていた潔の胴体を転がす。そこで起きたならそれはそれで構わなかったが、潔は一度僅かに唸ったきりでその後はうんともすんとも言わない。こんな場所でよくもここまで熟睡できるものだと思った。
 出于好奇,把面向房间深处的洁的身体翻了过来。如果他醒了也无所谓,但洁只是微微呻吟了一声,之后就再无动静。在这种地方居然能睡得这么熟,真是佩服。

 一息挟んでから、改めて仰向けになった顔を覗き込む。
 深吸一口气后,再次俯视仰躺的脸庞。

 刹那、凛の目が微かに揺らいだ。  刹那间,凛的目光微微动摇。
 その寝顔が、あまりにも静かだったからだ。  那睡颜,太过宁静了。
 乱れた前髪が重力に従って横に流れ、その隙間から閉ざされた瞼が覗く。眉は緩やかな弧を描き、鼻筋まで自然なラインで続く。口元は引き結ばれて開きがないが、唇の合わさり方はあくまで柔らかい。
 凌乱的前发顺着重力流向一侧,缝隙间露出紧闭的眼睑。眉头轻柔地勾勒出弧线,自然地延伸至鼻梁。嘴角紧闭,但唇间的相触依旧柔和。

 総じて力んだところのない、けれど緩んでいるのとも違う、生まれ持った顔立ちそのままの形状。
 整体上没有用力的痕迹,却也不显得松弛,天生如此的面容轮廓。

 普段の潔の表情は豊かだ。起伏が激しいわけではないが、何かしらの感情が浮かんでいることが多い。その一切が抜け落ちて無機質にさえ感じられる様は、凛を酷く戸惑わせた。何よりも雄弁な眼差しが隠されている、それが最も印象を異にしている要因だろう。こうしてみるとよく分かる。潔という人間の印象を形作る最も大きな特徴はその目だ。サッカーでは鋭く、それ以外ではやや柔らかく、常によどみなく真っ直ぐに凛を見据える視線。猛禽類のそれにも似た眼。
 平日里洁的表情丰富。虽不至于波澜壮阔,但常常带着某种情感。如今这一切都消失殆尽,甚至显得无机质,令凛深感困惑。最雄辩的眼神被隐藏,这无疑是印象大变的主要原因。如此看来,洁这个人的印象主要由那双眼睛塑造。在足球场上锐利,其他时候则稍显柔和,总是毫不犹豫地直视凛的目光。如同猛禽般的眼睛。

 だからそれを微塵も窺わせないフラットな潔の顔を前にすると、どうあっても違和感が拭えない。その違和感を追って、それまで止まっていた凛の指先が動く。
 所以,面对那张丝毫不露痕迹的平静洁的脸,无论如何都无法抹去那股违和感。追寻着这违和感,凛那原本静止的指尖开始动了。

 ゆっくりと、しかし躊躇いなく。  缓缓地,毫不犹豫地。

 中指と薬指のふたつが、潔の肌に触れる。  中指和无名指,轻轻触碰到了洁的肌肤。

 伝わる体温は、少しだけぬるく感じた。自分が風呂から出たばかりだからだろうか。
 传递过来的体温,感觉稍微有些温热。是因为自己刚从浴室出来吧。

 相変わらず潔の反応はない。それをいいことに、凛はその顔の上で指を滑らせた。頬骨の辺りから少し上へ進み、目尻をスタート地点として降ろされた瞼の縁をなぞる。
 洁依然没有反应。凛趁机在那张脸上滑动手指。从颧骨附近向上移动,以眼角为起点,描绘着垂下的眼睑边缘。

 捉えるのは隔てられた眼球の感触。隠れていようとも、確かに変わらずそこにあるもの。
 捕捉到的是被隔开的眼球触感。即使隐藏起来,那里确实依旧存在的东西。

 引かれるように、凛は首を前に傾ける。長い前髪がその動きに追随して垂れる。潔の額を、未だ僅かな湿り気を帯びた毛先が撫ぜた。
 凛不由自主地向前倾了倾头。长长的刘海随之垂落,湿润的末梢轻抚过洁的额头。

 それがくすぐったかったのだろうか。初めて潔の様子に変化が生じた。
 或许是觉得痒了吧。洁的表情第一次有了变化。

 ぴく、と瞼の端が引き攣る。触れたままの指先にぐるりと眼球の動く感覚が伝わる。妨げにならないよう指を離した。
 眼角微微抽动。指尖仍能感受到眼球转动的感觉。为了不妨碍他,手指松开了。

 閉ざされていた瞼が緩やかに持ち上がっていく。その動きは最後まで辿り着かず中途で停止する。
 紧闭的眼睑缓缓抬起。那动作最终未能到达终点,中途便停滞了。

 半分ほど隠されたままの如何にも眠たげな、ぼんやりとした瞳が凛の視線の先に姿を現した。
 半掩着的、明显带着睡意的、朦胧的眼睛出现在凛的视线前方。

 目覚めた当初、潔は目の前にあるものが人の顔だと気付かなかった。まだ微睡みに片足を突っ込んでいたのと、あまりにも距離が近過ぎたのがその理由だ。
 刚醒来时,洁并未意识到眼前的是人的脸。一方面是因为他仍半梦半醒,另一方面则是距离实在太近了。

 しばらく半眼のまま視界いっぱいに広がる何かを眺めているうちに、ようやくそれが焦点を結ぶ。凛の顔だと理解した瞬間、急速に意識が浮上した。
 半睁着眼凝视着视野中逐渐清晰的事物,终于聚焦在她的脸上。意识到那是凛的瞬间,意识迅速苏醒。

 かっと目を見開く。二人の視線が相対する。照明を背にした影のうちにあっても、その眼差しに宿る光は鈍らない。
 猛然睁大眼睛。两人的视线交汇。即便在背光形成的阴影中,那目光中的光芒依旧不减。

 潔は口を開く。寝起きの喉で発する声は掠れている。
 洁开口了。刚睡醒的嗓音有些沙哑。

「…おお、びっくりした。何やってんの…?」 「…哦,吓了一跳。你在干什么…?」

 恐る恐る問うものの、返事はない。  虽然战战兢兢地问了,但并没有得到回答。
 切れ長の目は、瞬きひとつせずひたすら自分を凝視している。何しろ超至近距離なので、瞳孔が拡大している様子がよく見えた。
 那双细长的眼睛,一眨不眨地凝视着自己。毕竟距离极近,所以瞳孔放大的样子看得很清楚。

 潔は迷う。とりあえず一旦距離を取りたい。しかし凛の目は潔が動くことを許容していないように見える。
 洁犹豫了。总之想先拉开距离。但凛的眼神似乎不允许洁移动。

 そうこうしているうちに、凛の方がふっと顔を離す。潔は胸を撫で下ろした。
 正在这样想着,凛突然把脸移开了。洁松了一口气。

 ずるずるとこたつから這い出す。ついうたた寝をしてしまったようだ。立ち上がり、軽く伸びをした。
 他慢慢地从被炉里爬出来。似乎不小心打了个盹。站起来后,轻轻地伸了个懒腰。

 そして改めて凛へと視線を送る。  然后再次将视线投向凛。

「えーと、起こしてくれてありがとな…?」 「呃,谢谢你叫醒我…?」

 半信半疑で礼を口にする。  半信半疑地道谢。
 若干腑に落ちないところはあるが、おそらく過去に何度かあったように寝落ちした潔を凛が起こそうとしてくれていたのだろう。
 虽然有些地方让人难以释怀,但大概就像过去几次那样,凛想要叫醒睡着的洁。

 諸々の不可解に目を瞑り、潔はそう判断した。  对种种不解之处视而不见,洁如此判断。
 凛はふんと鼻を鳴らす。その様子は完全にいつもの通りだった。
 凛哼了一声。那样子完全和平常一样。

「お前プロの自覚あんのか。いい加減学習しろ、んなとこで寝てんじゃねえ」
「你有没有点专业意识啊。赶紧学着点,别在那儿睡觉了」

「はは、仰る通りで」 「哈哈,您说得对」

 実にもっともな指摘だ。耳が痛い。  确实是一针见血的批评。让人耳朵发烫。
 潔はバツの悪い顔をして、誤魔化すように言葉を紡ぐ。
 洁尴尬地别过脸,试图掩饰地说道。

「じゃ、俺も風呂行ってくるわ。そこのみかん食っていいよ、甘かったからおすすめ」
「那我也去洗澡了。那边的橘子可以吃,挺甜的,推荐哦」

 そう言って、潔はそそくさと部屋を出ていった。  说完,洁匆匆离开了房间。
 残された凛はこたつに半身を突っ込み、裸の状態で放置されていたみかんを丸ごとそのまま口に放り込む。酸味はなく、潔の言葉通りに甘い。
 凛蜷缩在被炉里,将裸露状态下被遗忘的橘子整个塞进嘴里。没有酸味,正如洁所说,是甜的。

 もしゃもしゃと咀嚼しながら先程の記憶を反芻する。
 她一边咀嚼着,一边回味着刚才的记忆。

 潔が目を覚ましたとき。瞼が開いて、凛を捉えたとき。そのときに走った感情。喜び。苛立ち。求めていたものはこれだという納得。
 当洁醒来时。睁开眼,捕捉到凛的那一刻。涌上心头的情感。喜悦。烦躁。对所追求之物的确信。

 己が欲するところを理解して、凛は静かに目を伏せた。噛み締める歯に力が籠る。眼光は鋭さを増し、強く輝く。
 理解了自己所渴望的,凛静静地垂下眼帘。咬紧的牙关中力量凝聚。目光愈发锐利,强烈地闪耀。

 咀嚼が終わる。  咀嚼完毕。
 果実を胃の腑に送り込み、ゆっくりと喉が上下した。
 将果实送入胃中,喉咙缓缓上下移动。


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