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短編集(初夏)/あきづき的小说

短編集(初夏) 短篇集(初夏)

10,971字21分钟

twitter上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2023年5月分)をまとめたものです。
这是在 Twitter 上参与 One-Rai 活动时提交的作品合集(2023 年 5 月)。

各話2000~3000文字程度。全体的に甘口でお送りします。
每话约 2000 至 3000 字,整体风格偏甜。

目次は1ページ目をご覧ください。 目录请查看第 1 页。

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出来心と下心 表里不一

 切れ長の目が、窓の外を眺めている。  细长的眼睛,凝视着窗外。
 その視線の先が気になってこっそりと辿ってみたが、特筆に値するものは何も見当たらない。ただ、しとしとと雨に濡れる緑が広がるばかりだ。ついでに窓ガラスに反射した自分と、テーブルを挟んでその向かいに座る糸師凛の姿。ガラス越しにはたと目が合って、気のせいとは思いながらも慌てて視線を逸らした。
 好奇心驱使下,偷偷地顺着那视线望去,却未见任何值得注意的事物。只有绵绵细雨中,一片绿意蔓延。顺便瞥见窗玻璃上反射的自己,以及隔着桌子对面坐着的糸师凛的身影。透过玻璃,不经意间目光相接,尽管心里觉得是错觉,还是慌忙移开了视线。

 しばらく続いた会話の切れ目、潔世一は手持ち無沙汰に店内を見渡す。
 短暂的对话间隙,洁世一无聊地环顾店内。

 凛と一緒にやってきたのはそこそこ名の知れた鎌倉の古民家カフェで、平日の今日でも大繁盛とまではいかない程度に席が埋まっている。どの客もゆったりとした雰囲気で、思い思いの時間を楽しんでいた。
 和凛一起来的这家镰仓古民家咖啡馆颇有名气,虽然今天是平日,但座位也差不多坐满了,虽然没有到爆满的程度。每位客人都在悠闲的氛围中,享受着属于自己的时光。

 立派な梁の木目をぼんやりと数えていると、茶髪の店員が皿の乗った盆を手にこちらに向かってくる様子が視界の隅に留まった。
当我茫然地数着那根漂亮的梁木纹理时,一位茶色头发的店员手持托盘,朝这边走来的身影映入了视野的角落。

 やってきた彼女は、潔たちのテーブルの前で止まる。
她走到跟前,停在了洁他们的桌子前。

「お待たせしました。こちら、本日の抹茶セットと、クリームあんみつになります」
「让您久等了。这是今日的抹茶套餐和奶油馅蜜。」

「ありがとうございます」 「谢谢。」
「ご注文の品、以上でよろしかったでしょうか?」 「您点的餐品,以上是否齐全?」
「はい」 「是」
「では、ごゆっくりどうぞ」 「那么,请慢慢享用」
 全く喋らない凛のことは意に介さず、笑顔で伝票を置いて店員は去っていく。
店员毫不介意凛一言不发,微笑着放下账单便离开了。

 それを見送って、潔は卓上に向き直った。 目送着那身影,洁转身面向桌台。
 彼の前には本日の抹茶セットが、そして向かいの凛の前にはクリームあんみつがそれぞれ並んでいる。
他面前摆放着今日的抹茶套餐,而对面的凛面前则是奶油馅蜜。

 本日の抹茶セットの甘味はきんつばだ。 今日抹茶套餐的甜点是金锷烧。
 凛と一緒にいただきますと手を合わせて、まずはお目当てのきんつばを一口。
与凛一起合掌,首先咬一口心仪的豆沙包。

「んま…」 「嗯嘛…」
 口の中に広がる柔らかな甘さに頬が緩む。  口中蔓延的柔软甜味让脸颊不禁放松。
 歴としたスポーツ選手である潔にとって、こういった甘味の類は普段おいそれと摂取することができない。食事制限、それは兎にも角にも辛いものだ。しかし避けては通れない。
对于身为正统运动员的洁来说,这类甜食平时是轻易不能摄入的。饮食限制,无论如何都是痛苦的。但这是无法回避的。

 よりよいパフォーマンスのためと思えばなんのその。食物繊維。タンパク質。ビタミン。身体のもととなる栄養素を過不足なくきっちりと。
为了更好的表现,这些都不算什么。膳食纤维。蛋白质。维生素。身体所需的营养素要恰到好处地摄入。

 そして、糖分は大敵。  而糖分,则是大敌。
 その制限について、潔としては普段それほど思うところはないのだが、時折無性に甘いものが食べたくなるタイミングがある。それが困りものだ。
对于这个限制,洁平时并不怎么在意,但偶尔会有特别想吃甜食的时候。这真是令人困扰。

 チートデイなどでたまにならとその欲求を許しても、好物であるきんつばは日本国外ではなかなかお目にかかれない。だからこれは、二重の意味で貴重な機会だった。
即使偶尔允许在作弊日满足一下这种欲望,作为最爱吃的金锷烧在日本国外却很难遇到。所以这次,是双重意义上的珍贵机会。

 久々のきんつばをじっくり味わって飲み込んだのち、抹茶を啜る。まろやかな苦味が喉を通過していく。これこそがマリアージュというやつだ、多分。
细细品味并吞下久违的金锷烧后,啜饮一口抹茶。那柔和的苦味滑过喉咙。这大概就是所谓的绝配吧。

「はー、さいこー…。付き合ってくれてサンキュな、凛」
「哈,太棒了……谢谢你陪我,凛。」

「おう」 「哦。」
「母さんから教えてもらってさ。前から気になってたんだけど、なんだかんだタイミングがなくて」
「是妈妈告诉我的。其实我之前就一直很在意,但总是找不到合适的时机。」

 潔は笑顔で礼を告げた。  洁微笑着鞠了一躬。

 数日前のことだ。  几天前的事。
 今回はたまたま凛と帰省の時期が重なり、そういえば母の伊世が友人と行って美味しかったのだと楽しそうに話していたカフェは凛の実家の近くだったな、と思い出して試しに誘ってみた。
 这次恰巧和凛的返乡时间重叠,想起母亲伊世曾开心地说起和朋友一起去过的一家很好吃的咖啡馆就在凛家附近,于是试着邀请了一下。

 凛とは昨年から所属クラブは違うが同じリーグでプレイするようになったこともあり、時折食事を共にするようになった。とはいえ、それは専ら凛が用事か何かで潔の拠点近くに来たときに美味い店に連れて行けと言われて案内する、という形だったので、考えてみれば潔の方から誘うのはこれが初めてだったかもしれない。凛からの返事を待つ間にそのことに気づいて、潔は意外な気持ちになった。
凛和洁去年虽然所属俱乐部不同,但因为开始在同一联赛中比赛,偶尔也会一起吃饭。不过,那基本上都是凛因为事情或什么来到洁的据点附近,说带我去好吃的店吧,然后洁带他去的那种形式。仔细想想,这可能是洁第一次主动邀请凛。在等待凛回复的期间,洁意识到了这一点,感到有些意外。

 そんななか、スマホで送ったメッセージにはいつもの通り既読だけついて、数時間たっても一向に返事がない。これは駄目かもと半ば諦めていたところ、翌日になって了承する旨の返答があったので潔は驚いた次第である。
在这期间,通过手机发送的消息一如既往地只显示已读,几个小时过去了也没有任何回复。洁已经半放弃地认为可能不行了,结果第二天收到了同意的回复,这让洁感到惊讶。

「そっちのやつはどうよ」 「那边的家伙怎么样了?」
 凛の頼んだクリームあんみつを指して尋ねる。  指着凛点的奶油馅蜜问道。
 ガラスの器に盛られたあんみつは、サクランボの赤とドライフルーツらしいアンズのオレンジ色が目に鮮やかだった。潔が最初の一口を丹念にじっくりと味わっている間に、既に三分の一ほど嵩を減らしている。
玻璃容器中的馅蜜,樱桃的红色与干果般的杏子的橙色在眼前显得鲜艳夺目。在洁细细品味第一口的时候,已经减少了将近三分之一。

 凛はスプーンを止め、淡々と答えた。  凛停下勺子,淡淡地回答。
「悪くねぇ」 「不错嘛」
「ってことは美味いってことね。んー、気になってきたから一口くれない?」
「那就是很好吃的意思吧。嗯——有点好奇了,能让我尝一口吗?」

「…ハァ」 「…哈啊」
 溜息こそついたものの、特に文句を言うでもなくあんみつの皿を差し出す。
虽然叹了口气,但并没有特别抱怨,而是递出了杏仁豆腐的碟子。

 最近になって気付いたことだが、凛は意外にもこういった距離の近いやり取りに抵抗がない性質のようだった。幼いころにはあの兄とこうやって接していたのだろうか。想像するとなんだか面白い。
最近才意识到,凛似乎意外地对这种近距离的交流没有抵触。小时候,她是否也是这样和哥哥相处的呢?想象一下就觉得挺有趣的。

「ありがと。俺、お前のそういうとこ好き」 「谢谢。我喜欢你这一点」
「俺は嫌いだ」 「我不喜欢」
「はは」 「哈哈」
 むすっとしながらも本気で怒った様子はない凛を前にくすぐったい気持ちになりながら、潔は差し出された器にスプーンを突っ込む。クリーム・蜜豆・白玉をバランスよく掬い、口に運んだ。
虽然有些不悦,但并未真正生气的凛面前,洁感到一种痒痒的心情,他将勺子插入递来的碗中。舀起奶油、蜜豆和白玉,平衡地送入口中。

 白玉をもきゅもきゅと嚙み、ひとつ頷く。  白玉被咬得发出“咔嚓咔嚓”的声音,他点了点头。
「うん、確かにこっちも美味い」 「嗯,确实这边也很好吃」
「そうかよ。…おい、二口目は許してねぇぞ。…おい」
「是吗。…喂,第二口可不许了。…喂」

「よーし、それじゃお礼に俺のきんつばをやろうな」 「好嘞,作为谢礼,我把我的羊羹给你吧」
 黒蜜やフルーツの部分もしっかり味わってからクリームあんみつの皿を向かいに戻し、潔はにっこりと笑みを浮かべる。
细细品味了黑蜜和水果的部分后,将奶油馅蜜的碟子推回对面,洁露出了灿烂的笑容。

 声に出しての返答はないが、凛はいらないとは言わなかった。だからそういうことだ。手元のきんつばを一口大に切り分ける。その作業を、凛は黙って見ている。
虽然凛没有出声回应,但他也没有拒绝。所以就是这样。洁将手边的羊羹切成一口大小。凛默默地看着这个动作。

 ふと、潔の胸に悪戯心が湧いた。  突然,洁心中涌起一股恶作剧的念头。
 切り分け終わったきんつばに黒文字を突き刺し、顔の高さまで持ち上げて、それを直接凛に向かって差し出す。
将切分好的金锷烧上插上黑字,举到脸的高度,直接朝凛递过去。

「はい、あーん」 「来,啊——」
 ぴしり、と凛が固まる。  凛的身体瞬间僵硬。
「喰わねぇの? おーい、凛さーん」 「不吃吗?喂,凛——桑」
「喰う」 「吃」
 とぼけた顔で首を傾げた潔に凛は食い気味で返し、そしてその勢いとは裏腹にためらいがちに口を開いた。
凛装傻般地歪着头,带着些许食欲回应,然后尽管势头如此,却犹豫着开口。

 こいつにも照れとかあるんだな、という感想を抱きながら潔はその口にきんつばを運ぶ。
这家伙也有害羞的时候啊,洁一边想着,一边将金锷烧送到凛的嘴边。

 四角形の白っぽい塊が凛の口に吸い込まれていく。すべてが収まって、ぱくりと口が閉じられる。潔は黒文字を引き抜く。
白色的方形块状物被凛吸入口中。一切归于平静,嘴巴轻轻合上。洁抽出黑字。

 口内に残されたきんつばを、凛はもぐもぐと咀嚼する。
凛嘴里还留着金锷烧,咕噜咕噜地咀嚼着。

「うまいだろ」 「好吃吧」
 その様をご満悦に眺めながら、潔は悪戯っぽく笑う。
洁看着她那副满足的样子,调皮地笑了。

 凛は咀嚼を終えたきんつばを飲み込み、無言で頷いた。その目は潔を見つめている。 
凛咽下最后一口金锷烧,默默点头。她的目光紧盯着洁。

「…抹茶も寄越せよ」 「……也给我来杯抹茶。」
「お、わかってんじゃん」 「哦,挺懂的嘛。」

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