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リアン
Eine liebeshungrige Bestie【期間限定Web再録】 - リアンの小説 - pixiv
Eine liebeshungrige Bestie【期間限定Web再録】 - リアンの小説 - pixiv
100,621字
Eine liebeshungrige Bestie【期間限定Web再録】
『あの子と繋がる魔法のオナホ』の再録と書き下ろし五話を収録した同人誌になります。再販予定がないため、期間限定でWeb再録します。
昨年3/17の春コミにて頒布した本でした。お手に取ってくださった皆様、ありがとうございました!
カイザーの誕生日、アニメ登場を記念し、1月末まで掲載します。良ければお楽しみください。

あらすじ:
ブルーロックからの支給品に紛れた魔法のオナホを手に入れたカイザーは、『恋するあの子のナカを完全再現♡ ※感覚共有あり』という謳い文句を疑いながらも、最悪な関係性から進展の望めない世一を堕とすため、そのオナホを利用することに決める。本人を堕とせないなら、まずは身体から。感覚共有という文言に惹かれるままに連日オナホでひとり遊びをするようになっていく。

以下含みます
無理矢理/♡喘ぎ/結腸責め/濁点喘ぎ/潮吹き/中出し

今年もよろしくお願いいたします!

この作品以外でも感想などいただけたら嬉しいです!
https://marshmallow-qa.com/rian2370?t=7ZlRrN&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
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52373310,818
2025年1月1日晚上6点35分

傲慢の理由は  傲慢的原因


『ドイツへ来い。そうでなければ──分かっているな?』
去德国。否则——你明白吗?

 
 日本での最後の夜、ちらりとスマホを掲げ、悪どく笑う皇帝を前に出たのは溜め息だけだった。
日本最后的夜晚,我举起手机,在恶狠狠大笑的皇帝面前,只能叹了口气。

 そうしてほぼ脅される形で──カイザーには言わないが、そういった理由がなくともドイツを選ぶつもりではあった──満を持してドイツに渡った潔は、カイザーが家に来いと誘うのをどうにかこうにか振り切り選手寮の契約に成功した。毎日でも抱きたいし、これを機に本格的に潔を囲い込む気満々だったカイザーは一緒に住むためにとあれこれ手を尽くしたが、結局『新人は一年間寮に住む』というチームの決まりを盾に取った潔の作戦勝ちだったと言える。
于是,在几乎被胁迫的情况下——虽然对凯撒不说,但即使没有那些理由,也打算选择德国——满怀信心地前往德国的洁,好不容易拒绝了凯撒的来家邀请,成功签订了球员宿舍的合同。每天都想抱着洁,借此机会认真地想要将洁围住的凯撒,为了住在一起想尽了一切办法,但最终还是被洁以“新人一年必须住在宿舍”的球队规定为盾牌,取得了胜利。

 しかし、当然カイザーがこの程度でめげるわけもない。
但是,当然凯撒不会因为这点就气馁。

 少々話は変わるが、遠距離中、カイザーと潔にはとある取り決めがあった。それは、「毎日二十二時には自室にいる」というもの。万が一にもカイザーが耳にすれば確実にキレるだろうが、潔は新英雄大戦が終わり、カイザーが日本を離れドイツへ帰国した際、もはや閉鎖空間にいるわけでもなく、相手も選び放題であろうカイザーはすぐ自分に飽きるだろうと考えていた。その認識が誤りだと分かったのは、帰国日の二日後だった。
话虽另提,远距离期间,凯撒和洁有着一项约定。那就是,“每天晚上十一点必须待在自己的房间里”。万一凯撒听到,肯定会发怒,但洁认为新英雄大战结束,凯撒离开日本回德国后,她也不再处于封闭的空间,凯撒可以选择的对象很多,很快就会厌倦自己。她意识到自己的想法是错误的,是在回国后的第二天。

 最終日に無理矢理交換させられた連絡先にメッセージが来ること自体はその日が初めてでは無かった。それどころか、搭乗前もドイツに到着した時もこまめに連絡が届いており、存外マメな男だなと感心していたほど。さすがにその内容はドイツ語で書かれているためそのまま読むことは出来なかったが、今時翻訳アプリなど世に溢れているので読むことも返信することもそれほど難しくはなかったのは幸いだった。勉強を始めたとはいえ、英語すら覚束ない潔が一朝一夕でドイツ語なんて習得できるわけもない。律儀にも『ドイツへ誘うからにはドイツ語の練習も付き合ってやる』という約束を覚えていて、有言実行してくれているのだなとぼんやり思っていた。
最终日被强行换了联系方式,对方发来消息并非那天第一次。事实上,登机前和到达德国时也频繁收到消息,着实让我挺惊讶,这人还挺勤快的。不过消息内容都是德语,我当然看不懂,好在现在翻译软件满天飞,阅读和回复都不算太难,这真是幸运。虽然开始学习了,但连英语都掌握得不太好,洁子怎么可能在一朝一夕之间学会德语呢?他竟然还记得“邀请你去德国,自然要一起练习德语”的承诺,并且言出必行,这让我不禁有些感慨。

 朝も夜も投げられる挨拶のメッセージに早くも慣れた手つきで時差により異なる挨拶を返しつつ、今日から練習が再開するという近況報告を羨ましく思いながら画面を眺めていると、ポンッとさらに続けてメッセージが飛んできた。
朝也夜也不断收到问候信息,我已习惯性地根据时差回复不同的问候,看着屏幕,羡慕着今天开始练习的近况报告,这时又一条信息发了过来。

 
『今日から、二十二時には自室にいろ』  今天晚上十一点后,回房间待着
『なんで?』  为什么?
『今は時間がない。理由は夜に話す』  现在没时间。晚上再说。
 
 やけに早い返信に、文字通り急いでいるのだろうとそれ以上は問い詰めなかった。いずれ説明されるなら今急く必要もない。
回复速度很快,想必是真的很着急,我就不再追问了。如果以后会解释,现在也没必要急。

 だけど、遠く離れているのに、わざわざ時間指定するなんて何があるのだろう? 時差を考えれば決してカイザーにとって暇な時間ではないと思うが、それ以上は何もわからなかった。
但是,明明相隔遥远,却特意指定时间,究竟是为了什么?考虑到时差,这肯定不是凯撒的空闲时间,但除此之外,我什么也不知道。

 新英雄対戦は終われども、次はU-20W杯があり、その先はオファーを得たチームを選んでそれぞれ海外へ飛び立っていくことになるのだろう。立ち止まっている暇はない。今は少しの休養期間で、また再びあの青の監獄へ戻り本格的に次に向けて準備が始まる。昨日も今日も、誰からともなく声を掛け合い近場のブルーロックの面々とフットボールをして、ようやく帰宅した今はもうまもなく夕食の時間だった。サマータイムではないため時差が八時間もある今は特にドイツが遠く感じる。まだカイザーの方は昼だろう。
新英雄对抗赛结束了,但接下来是 U-20 世界杯,之后则是选择获得报价的球队分别飞往海外。时间不容浪费。现在是短暂的休养期,然后又要回到那座青色的牢笼,为下一阶段做准备。昨天和今天,不知是谁开始,和附近蓝染的队员们踢足球,现在终于回家,马上就要吃晚饭了。由于不是夏令时,时差有八个小时,现在尤其觉得德国很遥远。现在凯撒那边应该还是白天吧。

 シャワーを浴びた後だからか、蓄積した疲れからか、寝転んだ身体は瞼を閉じようとしている。もうすぐ母さんがご飯で呼びにくるだろうと頭では思いながらも、抗えずに意識を手放した。
洗完澡之后,可能是积攒的疲惫,躺着的身体想要闭上眼。虽然心里想着马上妈妈就会来叫吃饭,却还是无力地放空了意识。

 

 ◇ ◇ ◇  ◇ ◇ ◇


 
 次に起きた時は二十一時を過ぎていて、時計を見た瞬間思わず飛び起きた。自覚していなかったけれど、ずっと張り詰めていた糸がようやく切れたのだろう。
再次醒来时已经过了 21 点,看到时间的那一刻,我忍不住跳了起来。虽然自己没有意识到,但一直绷紧的弦终于断了。

 
「ああ、起きたか」  啊,起来了?
「ご飯は? 食べる?」  饭呢?吃吗?
「うん……食べる」  嗯……吃
 
 リビングへ足を進めればテーブルには世一のための食器が並んだままで、深く眠る姿を見てあえて起こさないでいてくれたようだった。
走进起居室,桌子上摆着为世一准备好的餐具,看来是特意没有叫醒熟睡的他。

 
「疲れていたのね。あんまり無理しちゃ駄目よ」  累了吧。别太勉强了
「無理してるつもりはなかったけど、疲れが溜まってたみたい」
感觉自己并没有勉强,但好像累积了不少疲劳

「まだ少し休みはあるんだろう? 練習も良いけど、ちゃんと休養も取るんだぞ」
还有点休息时间吧?练习固然好,但也要好好休息啊

「うん、そうする」  嗯,就这么办
 
 よく考えれば、新英雄大戦の終盤は昼間には練習、夜はあの皇帝に好き勝手される日々で、疲れるのも当然だった。カイザーが帰った今、ようやく邪魔も入らずゆっくり休める。もはやアレでこちらの体力を削る作戦だったと言われても納得するほどあの男は絶倫だったのだから。そこまで考えて、頭に浮かんだ想像をかき消した。ふとした瞬間に今はいない、考えなくてもいい男のことを考えてしまう。うっかり思い返して疼きそうになる身体を誤魔化すために、目の前の食事を掻き込んだ。
仔细想想,新英雄大战的后期,白天练习,晚上被那个皇帝为所欲为,疲惫也是理所当然的。凯撒走了,现在终于可以不受打扰地好好休息了。那个男人简直是绝世高手,现在想想,他那样的行为,简直就是一种削弱我们体力的策略,我都能理解了。想到这里,我赶紧把脑海中浮现的画面驱散。不经意间,我又想起那个现在不在,不必再想的男人。为了掩饰自己突然想起而疼痛的身体,我狼吞虎咽地吃起了眼前的饭菜。

 

「十時から海外の友達と電話するから、部屋戻るね」  十点钟和海外朋友打电话,就回房间了
 
 食事の片付けまで終えれば、丁度あと五分ほどで二十二時という時間になっていた。
吃完饭收拾完,正好还有五分钟就到 22 点了。

いつものルーティンの中で食事の時間が遅くなったことは反省点だが、今日くらいは許して欲しい、と誰に向けてでもない言い訳をしながら二人に声をかけた。
在日常的例行公事中,吃饭时间延误是一点需要反省的地方,但今天就请原谅我吧,我一边这样为自己找着理由,一边对两个人说道。

 
「海外の? そんなお友達まで出来たのね」  海外的? 这么好的朋友都交到了啊
「世一も英語が話せるようになったのか?」  「世一也学会说英语了吗?」
 
 少し驚いたような様子の母と、感心した様子の父。余りに素直なその反応に騙しているかのような罪悪感が湧き上がり、思わず言い募った。
母亲略带惊讶的神情,父亲则满是赞叹。如此单纯的反应让我感到一阵莫名的罪恶感,忍不住脱口而出。

 
「あー、いや、翻訳イヤホンっていうのがあって……言葉はまだ勉強中」
啊,不,有个翻译耳机……语言还在学习中

「そうか。サッカー選手としてやっていくならきっと言葉も重要だろう。その友達に教えてもらうのか?」
原来如此。如果要当足球运动员,语言肯定很重要。你要让你的朋友教你吗?

「うん、教えてくれるって言ってた。でも今日の用事がそれかはわからない」
嗯,他说会教我。但是不知道今天的事情是不是那件事。

「そう。じゃあお友達を待たせないようにね」  对。那别让朋友等太久。
「あっ、本当だ! もう十時になる! おやすみ!」  啊,真的! 已经十点了! 晚安!
「おやすみ」  晚安
「おやすみなさい」  晚安
 
 バッと急いでリビングを後にする。習慣で口にした挨拶に背後から返事が返されるのを耳にしながら急いで部屋へと滑り込めば、図ったようにスマホが音を立てた。
猛地冲出客厅。习惯性地说了句问候,听到身后传来回应,我匆匆滑进房间,手机恰如其分地响了起来。

 
「……やば、イヤホン……」  ……糟糕,耳机……
 
 勉強は始めているけれど、まだ翻訳イヤホン無しではほとんど何も聞き取ることができない。焦りながら机の上のイヤホンケースごと引っ掴み、両耳に装着した。鳴り続けるスマホを取り上げ、満を持して通話ボタンを押す。
努力已经开始了,但是没有翻译耳机,我几乎听不懂任何东西。焦急地抓住桌子上的耳机盒,戴上两只耳朵。拿起响个不停的手机,满怀信心地按下通话键。

 
『……遅い』  ……慢
 
 開口一番に聞こえてきたのは、そんな不機嫌を煮詰めたような低い唸り声だった。
听到的第一个声音,是那种将不快情绪压抑到极致的低沉的咆哮声。

 
「ごめん……イヤホン探してて」  对不起……找耳机
『二十二時にって言っただろ』  “22 点说的吧”
「ちょっと昼寝してたら……ご飯食べるの遅くなっちゃって」
“午睡了一会儿……饭吃晚了”

『……それなら、まあ、いい』  ……那么,好吧
 
 内心では遅刻ってほど遅れてないだろと思いながら、少し不機嫌が和らいだらしいカイザーの様子に安堵の息を吐いた。
内心觉得没迟到那么多,看到凯撒的不悦稍微缓和的样子,松了一口气。

 
「それで? 何の用事だったの?」  那么?有什么事?
 もしかして父さんの言う通り、ドイツ語のレッスンでもしてくれるんだろうか。そう思いながら訊ねれば、はあ、と呆れたような溜め息の音が耳をくすぐった。
或许爸爸说的对,德国语课也会上吧?这么想着问,她“啊”地叹了口气,听起来有点无奈。

『……決まってんだろ』  ……决定了吧
「決まってるって何が」  “决まってるって何が”
 
 意図が分からず、そのまま聞き返した。仮に潔とカイザーの間に暗黙の了解というものが存在するとすれば、それはフットボールに関してだけだ。他なんて知らない。続く言葉を待てば、静寂の中でごく、と喉を鳴らす音が鼓膜を揺らした。
意图不明,我直接反问了。如果洁和凯撒之间存在默契,那只限于足球。其他的我都不清楚。等待着接下来的言语,寂静中,喉咙发出“咕”的一声,震动着我的耳膜。

 
『──ヤるぞ』  ──干了!
「は?」  「什么?」
『ドイツに帰ったくらいで逃すわけねえだろ。お前の時間に合わせてやる優しさに感謝しろ』
德国都回去了,怎么可能放过你?应该感谢我的宽容,配合你的时间。

「は……はあっ?!」  啊……啊?!
 
 先程まで地を這っていた声が少し弾んでいた。
 でも、何言ってんだコイツ?! そもそもドイツと日本でヤると言ったって──
 
『久しぶりにオナホ越しで挿れてやるよ。世一……お前も身体疼いてんだろ?』
「……ッ、まだ持ってたのかよクソ野郎!」
 
 何度も捨てろと言い、時に奪って代わりに捨ててやろうと画策したが、結局一度も潔の手に収まることはなかった全ての原因。こんなことなら、ドイツへ帰る際に流石に手放すだろうなんて甘いことは考えず、どうにかして処分すべきだった。そんな後悔に打ちひしがれる潔に対しても一切の容赦なく、カイザーは続ける。
 
『毎日、二十二時だ。人前で触られたくないなら、ちゃんと家にいろよ?』
「……おま、俺は実家にいるんだぞ?!」
『ああ。だからちゃんと声は抑えろよ。お前が情けなく喘ぐ声は聞きたいが、他に聞かせてやるつもりはないからな。相手が誰だろうと』
 
 ほんの一瞬、本当にドイツ語を教えてくれる気があったんだと見直した気持ちを返して欲しい。やっぱりクソ野郎はクソなまま変わることはなかったようだ。
 
「……ひぅッ……この、カイザー……!」
『しー……ダメだろう、声を出したら』
 
 叫びそうになるのを既の所で堪えた。不意打ちで中に指を突っ込んでおいて、俺のせいみたいに言うな。潔家の壁は残念ながら遮音性に優れていたりはしない。声を抑えるため、手近なところにあった枕を掴んで抱き込んだ。
 
『ほら……ローションを入れてやろうな』
「んっ……ふ、くぅっ……」
 
 ぬるぬるとした感触が中に入り込んでくる。ローションボトルから直接ではなく、指で流し込んで内壁に塗り込むように動かしていく。カイザーの指の動きをすっかり覚えてしまった中はもっともっとと催促するように収縮するが、理性の残る潔にはそれが恥ずかしくてたまらなかった。
 
『お前の中は欲しがって吸い付いてくるなァ』
「は……うぅ、ぁっ……」
 
 酷く楽しそうな声が耳を犯す。囁くかの如き吐息混じりの言葉が耳を擽り、身体が勝手に波打ってびくびくと反応してしまう。情事の際に耳元で囁くカイザーの姿が頭に浮かんではパブロフの犬のように胎が疼くのをどうにかしたくて、せめて通話を切ってやれば声を聞かれることも、恥ずかしいことばかり言う男の声も聞かなくてよくなる、とスマホに手を伸ばそうとするけれど。
『切るなよ。通話切ったら、酷くするからな』
 潔の動きがまるで見えているかのようにカイザーに咎められ、結局手は空を切った。この男の言う『酷く』が半端な行為ではなく、際限も無いと知っているから素直に引くことしかできない。
 
『いい子だな、世一』
「ふぅっ……ぁ、くそ……まて、お前さっき、毎日って言ってたか……?」
『そうだ。毎日、同じ時間にお前を抱いてやる』
「お前ッ……そもそも、そっちは夜じゃないだろ! 何してんだよ!」
『自主練の時間を少し調整しただけだ。練習時間を減らすような真似はしていない』
「……っ、だとしても」
 
 八時間の時差ということは、まだ昼間のはず。こんな時間に中抜けするカイザーを周囲はどう見るのか。ぐちゅぐちゅと中を掻き回されながら、どうにか回らない頭を動かして考え直してくれることを願い言葉を探した。フットボール第一の潔には、それがこんなことをしでかすカイザーが相手でも、いやあれほど潔を魅了するシュートを放つカイザーだからこそ、こんなことのせいでこの男が奇異な目で見られるなんて許せなかった。それに。
 ──ようやく安眠出来ると思ったのに、また振り回されるのか。
 
『それとも、お前は夜十時以降に出かける予定でもあるのか?』
「それは、」
『日本がクソ平和ボケした国だってことは知ってるが、ガキが出かける時間じゃねえだろ』
「ガキじゃねえよ! それに、外に出かけたりはしないけど、でも……泊まりに行ったりすることはあるかもしれないし……」
『断れよ。必要無いだろ』
 
 また一段声が低くなった。声質だけでなく、その声音の違いすらも再現する御影のイヤホンの優秀さが今は憎い。苛立ちのまま中を弄られないだけ、まだ理性がある方なのかもしれないけれど。
 
「必要ないってお前……遠征とかも、あるかもしれないし」
『それは事前に言え。配慮はしてやる』
「なんで偉そうなんだよ」
『とにかく。毎日二十二時だ、忘れるな』
「……」
 
 強い口調で告げられた言葉をどうしても受け入れたくなくて口を噤んだ。カイザーの手にそれがある以上、潔に拒否権はないけれど、受け入れたと思われるのだけは癪だった。チッ、と耳に翻訳機を通さない舌打ちの音が響く。
 
『もういいな? 続きやるぞ』
「はぁッ……ふ、急に、触んな……っ」
『こっちは三日もお預けさせられてたんだ。んな悠長に待てなんて出来るわけないだろ』
 
 焦れたカイザーが中に埋めたままだった指を性急にバラバラと再び動かし始めた。ともすれば雑とすら言える愛撫にもことごとく反応する自分が悔しくてたまらないのに、身体は従順にカイザーを求めてしまう。
 
「あ、ふぅっ……んぅ……」
 
 枕を抱き込み顔を埋めて、声を押し殺した。膝立ちのままうつ伏せにベッドに倒れ込んだせいで、まるで本当に後ろにカイザーがいて、その手で直接触れられているかのように錯覚してしまう。後背位のような姿勢をどうにかしたくて身体を起こそうとするも、結局足に力が入らず枕に縋るしかできなかった。
 
『……世一』
「ぁッ……ふぅぅ、……ンっ」
 
 脳に直接叩き込まれる低い声に、思わず背中をぶるると震わせる。同時に中をぎゅうう、と締め付けてしまったせいで、それに気付いた男がくつくつと笑った。
 
『ははっ……俺の声で感じたのか?』
「んっ……も、喋んなぁっ……」
『可愛いなァ、世一』
「……ぁ、ふぅ……ッ」
 
 くちゅくちゅと響く水音が外に聞こえてしまわないか不安で、近くの布団を引っ掴んで被る。服を着たままの股間は、もう誤魔化しようもないほど反応して色を変えていた。
 
『……前はどうなってる? もう反応してるだろ? 服は着たままか?』
 
 潔の思考を読んだかのように、絶妙なタイミングで熱っぽい声が口に出せと急かしてくる。その言葉にいちいち反応してとぷりと先走りが溢れてしまうのが恥ずかしくて、服を脱がず枕に顔を埋めた。
 
『……世一?』
 
 反応が無くなったことに不信感を覚えたカイザーが唸る。興奮の滲み出た声が脳天を揺らし、また布団の中に籠った水音が聴覚を犯した。
 
『なあ、世一』
 
 何度も何度も名前を呼ばれて、どろどろとまた脳が溶けていく。
 
『お前のトロトロのここに、俺のをぶち込んで奥までめちゃくちゃに突いて欲しいだろ?』
「ひぁっ……ぅう、」
『ははっ、中締まったなァ。想像だけで感じたか? それとも、そんなに俺の声が好き?』
 
 じくじくと胎が疼く。もうきゅうきゅうと絶え間なく指を締め付ける動きを止めようがなくて、ズボンの中で窮屈だと訴える陰茎のせいで前もぐちゃぐちゃだった。
 
『こんな簡単に指を三本も飲み込んで……もう女なんて抱けないだろ』
「ふぅぅっ……はぁ……ッ」
 
 執拗に前立腺を擦り上げられるせいで、溢れそうな声を枕に投げかけることしかできない。にゅぷにゅぷと指が出入りするたびにローションが溢れ落ちて、前も後ろもきっと悲惨なことになっている。自身から尻を突き出してもっともっとと刺激を求めていることすら潔は気付いていなかった。熱っぽい吐息が電話越しでも耳を刺激して、中に熱いモノが欲しくて堪らない。
 
『あークソッ、もう我慢ならない』
「ぁうッ……」
 
 ぷちゅ、と後孔に熱いモノが押し付けられる感覚がする。そこにいないのに、耳に響く声とその熱さが脳を勘違いさせてしまう。けれど足りない腰を掴む手の力強さと温度がここにいないのだと自覚させて、切なさでぎゅっと枕を抱きしめた。
 
『くっ……吸い付いてくるな……』
「は……っ、は、」
 
 貪欲に欲しがって、奥へ飲み込もうとする身体ときゅんきゅん疼く胎。早く早くとお尻を擦り付けて飲み込もうとするが、当然別の場所にいるカイザーに届くわけもない。だがカイザーももう耐えられないのか、世一が強請るまでもなくゆっくりと亀頭が中へと入り込んできた。
 
『キッツ……は、欲しがりすぎだろ』
「──ッ、ぁ、」
 
 そのままぐっと腰を押し付けられ、中がカイザーで満たされる。枕に顔を埋めていなければ、間違いなく嬌声が漏れていた。
 
『ぅっ……くそ、がっ……』
「ぁっ……アッ……」
 
 扱き上げる中の動きでカイザーが獣のような唸り声を溢すたび、潔が中を締め付けてしまうという悪循環。触れられるまで自覚していなかったが、三日空いただけでカイザーを求めてやまないほど、潔の身体は既に作り替えられていた。ごちゅごちゅと奥を叩く動きは暴力的なまでに激しくて、パンツの中が液体まみれで気持ち悪ささえ感じていたことも頭から飛んで、ただ感じ入ることしかできなかった。
 
『……ふーッ、ふーッ、』
「は……ッ、ぁっ、うぅ……ア──ッッ」
 
 ビクビクと中で陰茎が震えて、カイザーのフィニッシュが近いことを察した潔の背中に電流が走る。もうすぐ中に熱い飛沫がぶっかけられるという想像だけで達し、絶頂に伴いぎゅうううう、と中を締め付けてしまった。
 
『……ぁ、出るッ……』
「はッ、ぅぅ……ッ、ひぁ──ッ」
『クソ、イけよ、奥に射精されてイけ──』
 
 びしゃびしゃと奥で勢いよく白濁がぶちまけられる。その度に身体がしなって、びくんびくんと絶頂した。鈴口から溢れてとろとろとズボンを濡らす白濁はあまりにも勢いがなく、射精というよりはお漏らしのようだった。
 
『はーッ、はぁ、』
「……ッ、まだ、」
『は、一度で終わったことなんて無いだろうが』
 
 既に硬さを取り戻した男根は中を満たしたまま、緩やかに律動を再開する。いつもそうだった。一度目は激しく性急に、二度目は名残惜しそうに執拗かつ緩やかに長く。教え込まれた身体は知っている。
 
『なあ……服を脱ぐ音が聞こえなかったが、今もまだ着たままなのか? ドロドロのぐちゃぐちゃになった世一の姿、見たい』
「は……ぇ……ッ?」
『ズボンもパンツもびしゃびしゃにしてんのか? なあ、濡れて重くなった服、脱ぐとこ見せろよ』
 
 愉しげな声が耳を擽る。服、服を?
 既に服の上からも雫が滴るようになったこの姿を見せろと? 呆然としたままイヤイヤと頭を振る。当然、その姿はカイザーには見えていない。
 
『裸だって何度も見てるんだから、いいだろ?』
「……ふ、ぃやだ……」
『……チッ、次はビデオ電話で掛けるからな』
 
 どうにか絞り出した声に、不機嫌そうな返事。全く納得していない様子で次を強請ってくる傲慢で身勝手な男。回らない頭では、それを拒否する言葉も出てこなかった。
 
『は、きもちいいな?』
「ぁっ……ふぅぅ──ッ、ひぁ、」
『奥までぶち抜いてやりたいが……今日は勘弁してやる』
 
 どちゅどちゅと最奥の入り口を捏ねては熱っぽい吐息を電話越しに吹き込んでくる。
まんまと身体を震わせる潔に嬉しそうに笑う声があまりにも扇情的で、ビリビリと電流が走ったような快感に襲われて、大袈裟なほどに身体を震わせ絶頂した。
 枕は吸収しきれない唾液でぐちゃぐちゃに濡れて、きっともう使い物にならない。大事にしているイセエビのぬいぐるみを使わなくて本当によかった。
 
『声が漏れてるぞ。そんなにイイのか?』
「……アッ、……ぅう……っ」
 
 揶揄いの声が脳に響く。聞かれたくない。聞かせたくない。もはや意地だけで枕を抱き締めていた。
 どうせなら、口を塞いでくれれば良いのに。一度考えてしまえばもう止まらなくて、口寂しいなんて思わされていることに気づいてしまった。最中にキスをされるようになってからの方が短いのに、まんまと欲しがる自分が本当に嫌だ。
 
『そろそろ、は……出すぞ』
「──ッ?! ぁう……ッ」
『またイッたなァ、世一……そんなに、奥に欲しいか……ッ』
 
 ごちゅん、と奥を穿って、自分も余裕なんてないくせに煽りの言葉を忘れない。本当に最悪な奴。それなのに身体はカイザーを求めてやまないアンバランスさに頭がおかしくなりそうだった。
 
『あ゙ー……出る、クる、』
「ひぅ……ッ、ぁン──ッ……」
『はー……、うねる、搾り取られる……ッ』
 
 にゅぐにゅぐと絶頂する中がカイザーの男根に絡み付き、最後の一滴まで搾り取ろうと蠢く。またしても中に出される感覚に、何度も繰り返し潔はイッた。
 
「ぁっ……ぁあ……」
『治り、つかねえ……』
「も、もう……やめ、」
『チッ……分かってる……』
 
 不満そうな声の後に、まだ硬いままの陰茎がずるりと引き抜かれる。埋めるものがなくなった後孔からごぽ、と液体が滴るのが分かった。そんな小さな刺激にすら震える身体を自身の手で抱き締めて抑え込む。
 
『明日も二十二時だ。忘れるな』
「……」
『返事は?』
「……わかった」
『良い子だ。じゃあ身体綺麗にしたら寝ろ』
 
 言いたいことだけを言って通話が切れる。静かになった部屋で一人、セックス後の賢者タイムで頭が冷えて、ただただ憂鬱な気分だった。ぐしゃぐしゃになった服も枕も、気付かれないように洗わなければならない。大惨事が起きていると分かっていて、このズボンとパンツを脱ぐのは本当に陰鬱だった。

 
 
 ◇ ◇ ◇


 
 その後も最初に告げた通り、カイザーは毎日二十二時に決まってあのオナホに触れて、潔をオナホ越しに抱いた。ドイツにくる前、潔は実家か青の監獄かで一人暮らしだったことがなかったから、気付かれたくない、やめてくれと何度も訴えたけれど当然聞き入れてくれるわけもなく。それどころか、声を抑えている分、ビデオ電話にして顔を見せろと言ってくる始末で、時折強制的に最中の顔を暴かれた。
 でも潔は、この決まりは遠距離中だけのものだと思っていた。それが誤りだと気づいたのは、バスタード・ミュンヘンへ正式に加入した初日の歓迎会の時だった。
 飲み会には一切参加しないらしいカイザーは、潔がいようと姿を見せることはなかった。その様子を見たチームメイトに、やっぱりBLTVで見た通りお前たち仲悪いんだななんて言われながら、ただ曖昧に笑ってちみちみとビールを飲んだ。
 潔はドイツに来てチームに合流する前、限界値を知っていた方がいいとカイザーに飲まされたことがあったから、自分が酒に強くも弱くもないことを知っていた。だから周りがガバガバ他の水分も取らずにビールを煽る中で、加減して間に食べ物もつまみながら軽く気分が上がるくらいのほろ酔いに留め、まだ覚えきれていないチームメイトの顔と名前を一致させながら話に耳を傾けていた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 飲み会開始から数時間。フラフラになるほど酔ってはいないけれど、少し眠たいなと思いながら開始時より大声で騒ぐ出来上がった面々を見てこれどうしようかなあと頭を捻ったその瞬間、お尻に異物感が走った。
 ──まさか。
 次いで、にゅ、と中に指が入り込む感覚。
 ほぼ反射的に潔は席を立ち、トイレへと向かった。その犯人たる男に苦情を入れるために。
 酔っ払いを掻き分けて滑り込むような勢いでトイレへと駆け込みメッセージアプリを開けば、その一番上に犯人の名前があった。ワンタップでトークルームを開き、腹立たしさから力強くカタカタと上達したドイツ語を打ち込んで送れば、今まさに見ていたのか即座に返信が返ってきた。
 
『今日飲み会だって知ってんだろ!』
『知るか。毎日二十二時にって言っただろ』
『信じらんねえ……ッ!』
『店の外出ろ』
『この状態で?!』
『今から五分。触らないで待っていてやる』
 
 言葉通りにゆっくりと指が引き抜かれる。クソ野郎、と思いつつ潔に選択肢はない。急ぎトイレを出て酔っ払いの縋る手を振り払い、適当にユーロ札を机に置いて鞄を引っ掴んで外に出た。

 

 きょろきょろと見回せば、見覚えのある車が路肩に停められているのが見えた。そのボンネットに寄りかかるように立つ、一人の男。
 
「……遅い」
「なんなんだよ。文句言うならお前も飲み会に来れば良かっただろ」
「仲良しこよしなんて趣味じゃない」
「お前はそうかもしれないけど、俺は違う。強要すんな」
「……」
 
 黙り込んだ男は納得していないのか、顔には青筋が浮いているし眉間に皺も寄っている。
 こんなことばかりするくせに、この男は潔を好きらしい。らしい、というのはあくまで『俺のことが好きなのか』という問いにカイザーが肯定したに過ぎないから。それに好きな相手にこんなことばかりするなんて潔には信じられなかった。
 
「送ってくれるんじゃないの」
「……乗れ」
 
 沈黙を裂くようにそう言えば、カイザーの手で助手席の扉が開かれる。この男はこういうよくわからないところだけ紳士的なのだ。座席へ腰を落ち着ければ、すぐさまカイザーも運転席へと乗り込んでくる。
 
「世一」
「なに、……っ、ふ、」
 
 振り向いたところで顎を掬われ、唇が合わさる。そのまま遠慮なく舌を捩じ込まれ、咥内を蹂躙された。頭を抱え込んで深く口付けられ、くちゅくちゅと唾液の混じり合う音が車内に響く。ぼんやりとする頭で縋るように目の前の男のシャツを握り締めれば、ごくりと喉を鳴らす音が間近で聞こえた。
 
「……は、」
「クソ、」
 
 つー、と唾液が糸を引いて唇が離れたかと思えば悪態を吐かれ、潔は思わずジト目になる。握り締めていた高そうなシャツがぐしゃりと皺になっているが、罪悪感は微塵も湧かなかった。ふと口端を伝う唾液を舐め取れば、目の前の男の雰囲気が変わる。まずいと思った瞬間にはもう手遅れで。
 
「シートベルト締めろ。飛ばすぞ」
「安全運転で頼むよ……」
 
 潔の呆れも無視して、カイザーはシートベルトを締めてハンドルを握る。命が惜しいので潔も急ぎシートベルトを締めれば、すぐさま車は発進した。

 

 ──これ、明らかに寮のある方向とは違う場所に向かってるよな。変わっていく景色に違和感を覚え、意を決して静寂を切り裂いた。
 
「……寮そっちじゃないけど」
「寮に送るとは言っていない」
「お前の家に行くとも聞いてねえよ!」
「お前の意見は必要ない」
「……なんで、そんな不機嫌なの」
 
 いつもより固い声に思わずそう尋ねてしまった。眉間には皺が寄っていて、少なくとも機嫌が良いようには到底思えなかった。
 何かを堪えるように唇を噛み締めた男はしばらく無言で、潔も急かすことなくただ待った。車を走らせる音だけが響き、車内の沈黙が痛くなってきた頃、ようやくカイザーが口を開く。
 
「……二十二時には帰れ」
「子供じゃないんだけど。付き合いもあるし」
「ガキにしか見えねえし、事実平和ボケした子供だろ」
「だとして、なんなの? お前に関係ある?」
 
 確かに慣れない国での一人歩きは危険かもしれないが、飲み会や食事で二十二時を過ぎることなんてそう珍しいことじゃないだろう。束縛だけは一丁前で、潔のことなど一切顧みない。ただ振り回されるだけなんて許せなかった。
 カイザーが潔の言葉を聞いて憎々しげに顔を顰める。運転中のカイザーとは視線が交わることはない。ただ、その横顔を見ていた。ぐっ、と男が力任せにハンドルを握り締めて、その手に血管が浮き上がる。
 
「……あるだろ」
「なんで」
「お前は、俺の恋人だろ。みすみす恋人を狼の巣窟に行かせるやつがあるかよ」
 
 ぶっきらぼうに告げたくせして、カイザーの耳は見たこともないほど赤く染まっていた。知らない男の顔に思わずつられて身体の体温が上がっていく。けれど頭は反して冷静だった。
 
「あれ、本気だったんだ」
「……どう言う意味だ」
「お前、好きだとか一言も言わないし。やっぱり嫌がらせか性欲処理で俺を弄んでんのかと思ってた」
「……俺を弄んでんのはお前だろ、世一」
「俺が? いつ?」
「……いつもそうだ。今日だって」
 
 カイザーが黙り込み、静寂が場を包む。タイミング悪く家に到着したことで、それっきり会話もぷつりと途切れた。このまま部屋に上がってしまえば何が起こるかなんて一つでしかなくて、その場で固まってしまう。そのうち、なかなか助手席から出てこない潔に焦れたカイザーの手で引っ張り出された。
 
「……行くぞ」
「……」
 
 無言で促されるまま部屋へ入る。相変わらず殺風景な家を彩る少しの雑貨は、ほとんどが潔によって持ち込まれたものだった。
 
「……さっきの」
「あ?」
「毎日二十二時に帰れって言うのは無理だよ」
「……チッ」
「舌打ちすんな。つーか、お前俺のスマホにGPS仕込んでるんだから、場所も分かるし良いだろ」
「違え」
「なにが」
 
 ギリギリと掴まれた腕が痛かったが、意地でカイザーへと向き合った。
 
「……酔ったお前はクッソエロいから、飲み会なんて行くな」
「ちゃんと自制してるけど。今日もそうだし」
「既に顔が赤いだろうが」
「これくらいで誰も何も思わねえよ!」
「……誰も?」
 
 反射的に叫んだ後で、さらに力を強めた腕と、その血走った目を見て失言を悟る。
 
「あ……その、これは言葉の綾で……」
「ああ、そうだろうなァ」
 
 ぐい、と腕を引っ張られ、思わずつんのめる身体を踏み出した足で支えるも、そんな潔に対し一切配慮なんて無くカイザーは足を止めない。仕方なく手を引かれるままに後を追えば、予想通りその先は寝室だった。
 
「飲み会がダメなの?」
 
 ベッドの前で立ち止まったカイザーに尋ねる。
 
「飲み会だけじゃない。夜に一人で出歩くなっつってんだ」
「そんなの……俺だって遊びに行ったりしたいのに」
「その時は俺が連れて行く。それで文句はないだろ」
「じゃあ、飲み会だってカイザーも来てくれれば良いだろ」
「……」
 
 黙り込んだ男がギリギリと手に力を込める。言葉では言わないくせに、察しろと訴えかける男に呆れてしまった。
 
「……本当にお前、俺のこと好きなわけ?」
 
 そう尋ねれば、苦々しい顔でカイザーが潔をベッドへと押し倒した。
 
「……このクソガキ、言葉にしないと分からないか?」
「分かんねえよ。ピッチにいないお前のことなんて」
「クソッ……」
 
 髪の毛をぐしゃぐしゃに乱して、カイザーが唸る。
 なんでそう素直に人を愛せないんだろう。愛し合う両親を見て育った潔にはそれが不思議で仕方がなかった。
 レイプするようなクソ野郎だしカイザーを好きになるなんてあり得ないが、逃す気が無いと言うならせめて優しくして欲しい。
 
「……一度しか言わねえからな」
「なんでだよ。何度も言えよ」
「情緒死んでんのかお前」
「俺が好きで、俺の愛が欲しいならお前が言え。当然だろ」
「……だからお前は道化なんだ」
 
 呆れたような声では無く、肌に沁みる壊れそうな弱い言葉。この男の口からそんな声が聞こえてきたことに驚き目を瞠れば、カイザーの眉間に皺が寄る。
 
「チッ、見るな」
「うん……」
「見るなっつってんだろ。うんじゃねえ」
「でも……」
「クソ、調子が狂う」
 
 じわじわと再びカイザーのその白い肌に赤が乗っていく。
 
「……だ」
「なんて?」
「好きだっつったんだよ! 一度で聞き取れクソ!」
 
 もはや開き直ったのか、真っ赤な顔で喧嘩腰にカイザーが愛を叫んだ。それをキョトンとした顔で見上げていたが、不本意そうに唇を噛み締める姿に段々と笑いが込み上げてくる。ダメだ、堪えきれない。
 
「……ふっ、はははっ! 告白する奴の態度じゃねえ!」
「最悪だ」
「そう? 俺は最高の気分だけど」
「お前はな! いや……世一、それは、」
 
 一転、その顔が驚きに染まる。期待に揺れる瞳が心地いい。ああ、その顔が見たかった。
 
「俺から渡す愛の言葉はないけど。思ったより良い気分」
「……やっぱりお前は人を弄ぶ悪魔だ、世一」
 
 嫌そうに、それでいて少しだけ清々しさを乗せてカイザーが脱力する。
 
「逆らえない俺を弄ぶお前には負けるよ、カイザー」
「そうさせたのはお前だ、世一」
 
 潔はようやく少しだけ仕返しできたことで満足して柔く微笑んだ。すると眠気が襲ってきて、このまま眠ってしまおうかと目を閉じる。
 
「……寝かすかよ」
「ほんと、自分勝手、」
「……全部、お前のせいだ」
 
 身体を弄る手を払うことが出来ない。カイザーに触れられてしまえばたちまち身体が熱を持ち、心とは乖離したままにカイザーを求めてしまう。それが嫌で仕方がなかったけれど、見上げた瞳は情欲に濡れて潔だけを貪欲に求めているから、今なら少しだけ、素直に受け入れられる気がした。
 
「……な、カイザー」
「やめねえぞ」
「違うって」
 
 毎日求めてこられるのは普通に困るし、どんどん身体が後戻り出来なくなっていることも恐ろしい。
 こんなクソ野郎の気まぐれ一つで俺は作り変えられた身体だけを残して放り出されるのかと思うと腹立たしかった。でもピッチの上と変わらぬ熱を孕んだ瞳で俺を見るカイザーが相手ならば、そんな日は来ないのだろう。
 
「……お前のことは正直好きじゃねえけど、お前とすんのは嫌いじゃない」
「素直じゃねえな」
「それ、お前にだけは言われたくないんだけど」
「ちゃんと言っただろ」
「一度だけな」
 
 そう言うと、カイザーは苦虫を噛み潰したかのような顔で唸った。
 
「……言えばお前に積もっていくなら、考えなくもない」
「積もるかは分かんないけど、積もらせたいなら言うしかないだろ。お前素直に優しくできるような性格してないし」
「……仕方ないだろ」
「恋愛経験豊富そうな顔してんのに、もしかして初恋?」
「調子に乗んな」
 
 ふい、とわざとらしく逸らされた顔。
 髪に隠れた顔で垣間見えた唇が拗ねたように尖っていて。白い肌では耳の赤さも一目瞭然だった。
 
「……マジ?」
 
 揶揄いで口にしたので、まさか図星だなんて思わず、つられるようにじわじわと頬が熱を持つ。
 カイザーの眉間にピキ、と青筋が浮いた。
 
「……ふーん。今日の世一クンは随分と余裕があるのね。
 ──んな軽口叩く余裕があんなら、朝まで付き合ってもらうからな」
「は?! おま、明日はオフじゃないぞ?!」
「昼からだろ。クソ余裕」
「余裕なのはお前だけだこの絶倫……!」
 
 途端に目の前の男が恐ろしくなって身体を引く。
 カイザーが朝までと言えば文字通り朝まで付き合わされるのだと今までの経験から知っている。ほぼ抜かず、休憩もなく、意識を飛ばしても揺さぶって起こされる。しかも、そこまでしても完全に満足し切った様子はないから、無尽蔵すぎて同じ男として恐ろしい。コイツの恋愛遍歴なんて知らないが、俺とこんな関係になる前に何人か女を壊したんじゃないだろうか。
 潔は知らないが、カイザーは潔に出会うまで淡白な方だった。性欲は当然あったし、有望な選手でかつ整った顔があれば女は無限に寄ってくるので適当に見繕って発散していたが、頻度はそう多くなかった。潔のせいでカイザーはおかしくなったのである。
 
「体力つけるにはうってつけだろ」
「嫌だけど?!」
 
 セックスで体力作りなんて絶対にごめんだ。そもそもどう考えても使う体力が違う。受け入れる側の方が負担が多いことくらい配慮して欲しい。
用性爱来锻炼体力绝对不行。根本上说,消耗的体力完全不同。作为接受方的人会承担更大的负担,希望对方能考虑到这一点。

 
「ほんと、無理だって……」  真的,不行……
「……その顔は逆効果だ、世一」  ……那张脸是反效果的,世一
 
 カイザーの息が首筋に掛かり、ぴくりと震えた身体に口付けを落とす。
凯撒的呼吸喷在脖子上,吻落在微微颤抖的身体上。

 
「んっ……」  嗯……
「はー……クソ、」  啊……该死,
「……な、なあ……手加減してくれよ……」  ……啊,手轻点……
 
 ギラギラと欲を滾らせて息を荒くするカイザーに縋るように腕を掴む。一瞬驚いた様子で目を見開いてから、男は悪どく笑った。
カイザー紧紧抓住,呼吸急促,眼中充满了贪婪。男人先是吃了一惊,睁大了眼睛,然后恶狠狠地笑了。

 
「……悪いが、それは聞けないお願いだ」  ……抱歉,那是不可以答应的要求

 

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Eine liebeshungrige Bestie【期間限定Web再録】
『あの子と繋がる魔法のオナホ』の再録と書き下ろし五話を収録した同人誌になります。再販予定がないため、期間限定でWeb再録します。
昨年3/17の春コミにて頒布した本でした。お手に取ってくださった皆様、ありがとうございました!
カイザーの誕生日、アニメ登場を記念し、1月末まで掲載します。良ければお楽しみください。

あらすじ:
ブルーロックからの支給品に紛れた魔法のオナホを手に入れたカイザーは、『恋するあの子のナカを完全再現♡ ※感覚共有あり』という謳い文句を疑いながらも、最悪な関係性から進展の望めない世一を堕とすため、そのオナホを利用することに決める。本人を堕とせないなら、まずは身体から。感覚共有という文言に惹かれるままに連日オナホでひとり遊びをするようになっていく。

以下含みます
無理矢理/♡喘ぎ/結腸責め/濁点喘ぎ/潮吹き/中出し

今年もよろしくお願いいたします!

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52373310,818
2025年1月1日晚上6点35分
リアン
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星野凝
パッキャオ
パッキャオ
1月5日
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トマト
トマト
1月4日
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ローレン (Lauren)
ローレン (Lauren)
1月1日
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