
5
『あ、寝てる』 『啊,睡着了』
珍しい。そう思いながら、ピカチュウは大切な相棒と相棒の従者が寄り添う後ろ姿を見遣った。
真是罕见。皮卡丘一边这么想着,一边望着自己重要的搭档与搭档的从者相依而眠的背影。
その日はとても、天気が良かった。 那天天气格外晴朗。
晴れ渡る空に眩しい太陽、頬をそよぐ心地良い風は、甘い草花の香りを運んで来た。訪れた見晴らしの良い高原で昼食にしようとなり、皆んなでサンドウィッチと暖かいスープを作りながら、賑やかでありつつも穏やかな時間を過ごす。お腹がいっぱいなったのか、ヤンチャムやハリマロンは元気に遊び出し、面倒見の良いルチャブルは、弟のように見守るオンバットの相手をしている。ファイアローは日向ぼっこで自慢の羽根の毛繕い、テールナーとニンフィアはセレナにブラッシングをされ心地良さ気に微睡み、レントラーはホルビーと共にシトロンの発明の手伝いをし、ユリーカはプニちゃん、デデンネと花畑で二匹の為に花冠を作っていた。
碧空如洗的苍穹挂着耀眼的太阳,拂过脸颊的微风送来花草甜香。众人决定在视野开阔的高原上午餐,热热闹闹地制作三明治与热汤,度过喧嚣中带着宁静的时光。或许是吃饱了的缘故,顽皮熊猫和针栗鼠开始活蹦乱跳地玩耍,像兄长般的路卡利欧则照顾着圆陆鲨。烈箭鹰在阳光下梳理引以为傲的羽毛,长尾火狐与仙子伊布享受着瑟蕾娜的刷毛服务舒服得直打盹,伦琴猫和掘掘兔一起帮希特隆搞发明,柚丽嘉正为咚咚鼠和小软在花田里编织花冠。
ピカチュウはと言うと、サトシから離れ珍しく一匹で寛ぎながら、居眠りをしていた。ぽかぽかとした午後の暖かな日差しと、頬を撫でる風はお昼寝をするのに丁度良い。
皮卡丘难得离开小智独自打盹,暖融融的午后阳光与轻抚面颊的微风,正是小憩的最佳伴奏。
どれくらい時間が経ったのだろうか。もしかしたら、それ程経っていないのかも知れない。ピカチュウは眠た気な瞳をぱちっと開くと、大きく可愛らしい欠伸を一つし、凝り固まった躰を解すように背伸びをした。頭がまだぽやっとしていて、落ちそうになる目蓋を擦る。辺りをきょろきょろと見渡せば、思い思いに過ごす仲間達の姿が映った、のだけれど。
不知过了多久。或许其实并没有那么久。皮卡丘眨巴着惺忪睡眼,打了个大大的可爱哈欠,像要舒展僵硬身体般伸了个懒腰。脑袋还晕乎乎的,它揉了揉快要耷拉下来的眼皮。环顾四周,映现出各自悠闲度日的伙伴们身影,可是——
サトシ、何処だろう? 小智,去哪儿了呢?
見たところ、視界の範囲には相棒が居ないみたいだ。気になり、ピカチュウは風に乗る微かなサトシの香りを探そうと立ち上がり、鼻先を動かしくんくんと嗅いでみた。どうやら、この近くには居ないらしい。仲間達からそう遠くに離れた場所にはきっと行かない筈だ。散歩がてら探そうと思い立ち、ピカチュウはふとある事に気付いた。
环视之下,视野范围内似乎不见搭档的踪影。皮卡丘有些在意,便站起身试图捕捉风中飘来的小智微弱气息,翕动鼻尖细细嗅闻。看来他并不在这附近。按理说小智应该不会走得太远。正打算散步时顺便寻找,皮卡丘突然察觉到了什么。
そう言えば、ゲッコウガの姿が見えなかった。 说起来,一直没看到甲贺忍蛙的身影。
ゲッコウガがサトシと一緒に居るならば、何も心配する事はない。もしかしたら、シンクロの練習をしているのかも――――歩みを進め、仲間達から少し遠去かる。小高い丘になっているその場所には、立派な大木が一本、真っ直ぐに根を張り深緑の鮮やかな葉が惜し気なく生い茂っていた。太陽の光が葉や枝の隙間から溢れて、まるで宝石のようにきらきらと影に光を落とす。風に揺れる葉音はまるで鈴の音だ。すると、風に乗り、お日様によく似たサトシの香りが微かに漂ってきた。それから、もう一人……ゲッコウガの、澄んだ水の香りだ。
如果甲贺忍蛙和小智在一起的话,就没什么好担心的。说不定他们正在练习羁绊进化————迈步前行,渐渐远离伙伴们。在那处微微隆起的小丘上,一棵挺拔的大树深深扎根,浓绿的枝叶肆意舒展。阳光从叶隙枝桠间流淌而下,如同碎钻般在树影里洒落璀璨光点。风中摇曳的叶声宛如铃音。这时,随风飘来一缕与小智极为相似的、太阳般温暖的气息。紧接着,还有另一个存在……甲贺忍蛙那清冽如水的味道。
『あ、寝てる』 『啊,睡着了』
そっと近付き周り込めば、サトシの後ろ姿が大木の幹の影から見えた。慎重に、出来るだけ気配を消して、ゆっくりと近づく。覗き込んだ先には、探していたサトシと、矢張り彼の傍に居たゲッコウガの姿。
轻轻靠近并绕过去,从大树的树干阴影中看到了小智的背影。小心翼翼地,尽可能隐藏气息,慢慢接近。窥视的前方,是正在寻找的小智,以及果然在他身边的甲贺忍蛙的身影。
木漏れ日の下で、サトシはゲッコウガの肩に寄り掛かり眠っていた。その安心仕切った寝顔は、10代の少年らしく年相応で。規則正しい寝息と、サトシの髪と頬を撫でるそよ風。草花のほのかにかおる甘い香りは、此処も変わらずだ。そして何より珍しく、ゲッコウガが寝ているのだ。
树影斑驳下,小智倚在甲贺忍蛙的肩头沉沉睡去。那张毫无防备的睡颜,恰如十几岁少年应有的模样。规律的呼吸声,轻抚小智发丝与脸颊的微风。花草隐约散发的甜香,此地依旧如常。而最令人惊奇的是,甲贺忍蛙竟也罕见地睡着了。
サトシに肩を貸しながら、ゲッコウガも警戒心がないのかその表情は何時もの気の抜けた……と言うよりは、何処か穏やかで。けれど、彼ご自慢の長い舌は、ちゃっかりサトシの腰に巻かれていて。
小智让甲贺忍蛙搭着肩膀,而它似乎也放下了戒备,表情不像往常那样松懈……或者说,显得格外安详。不过,它那引以为傲的长舌,却悄悄缠在小智的腰间。
意外とゲッコウガにも独占欲があるって知ったら、サトシはびっくりするのかな?
要是知道甲贺忍蛙其实也有独占欲的话,小智会不会很惊讶呢?
なんて、無粋な事を考えて、ピカチュウはくすくす笑うと踵を返した。
想着这种不解风情的事,皮卡丘哧哧笑着转身离去。
『なんだ。あいつ、サトシと昼寝してるのか?』 "什么啊。那家伙,和小智一起午睡吗?"
『うん、サトシと一緒にお昼寝してる』 『嗯,和小智一起午睡呢』
声の主はルチャブルだ。 声音的主人是摔角鹰人。
その隣でパタパタと飛びながらオンバットが、“ピカにぃーどこいってたのー?”と可愛らしく小首を傾げながら尋ねてきた。仲間達の元に戻れば、ピカチュウの姿を見付けたルチャブルが何気なくサトシとゲッコウガの姿が見えず何処に居るのか知らないか?と聞いてきたので、簡単に理由を説明をした。ピカチュウの話を聞いて、ルチャブルは腕を組んだまま軽く溜息を吐き出し、オンバットは僕も一緒にお昼寝したい、ゲコにぃーだけずるい!と頬を膨らませていた。
旁边扑扇着翅膀的音波龙歪着可爱的小脑袋问道:“皮卡哥哥去哪儿啦?”回到伙伴们身边时,发现皮卡丘踪影的摔角鹰人随口问起怎么没看见小智和甲贺忍蛙,知不知道他们去哪儿了?于是皮卡丘简单解释了缘由。听完叙述,摔角鹰人抱着胳膊轻叹一声,音波龙则鼓着腮帮子嚷嚷“我也想一起睡午觉,忍蛙哥哥太狡猾啦!”
『あいつ、忍び失格だな』 “那家伙,真是个不合格的忍者啊。”
『はは、本当だね』 "哈哈,真的呢"
ルチャブルの呆れが混じる苦い言葉にピカチュウは苦笑する……が、彼も内心では彼等の姿を思い微笑ましいのだろう、口角が上がっているのに気付き、ピカチュウも穏やかだ。
面对路卡利欧夹杂着无奈与苦涩的话语,皮卡丘苦笑着……但在他心中,或许也因回想起他们的身影而感到温馨吧。注意到自己嘴角上扬,皮卡丘的心情也随之平静下来。
そして、ふと思う。 然后,忽然想到。
でも、もしかしたらゲッコウガにとって、本当に心休まる場所というのは少なかったのかもしれない。
不过,对甲贺忍蛙来说,真正能让心灵得到安宁的地方或许并不多。
彼は普段、居眠り等しない質だ。ケロマツやゲコガシラの時もだが、ゲッコウガに進化してからというもの、隙や無防備な姿を一切晒さなくなった。そして時々、何処かピリピリとしているのを、ピカチュウは知っている。仲間達には気付かれない程度に、持ち前の忍耐力で抑えられているその苛立ち。けれど、サトシとのシンクロが上手く出来なかった時や強敵と戦い負けた時、ゲッコウガから確かに感じ取ったのだ。
他向来不是会打瞌睡的性子。无论是呱呱泡蛙还是呱头蛙时期都如此,但自从进化成甲贺忍蛙后,就再未显露过任何破绽与毫无防备的姿态。皮卡丘偶尔能察觉到它身上那种紧绷感——那种被与生俱来的忍耐力压制着、不让同伴们察觉到的焦躁。但在与小智同步失败时,或是败给强敌之际,皮卡丘确实从甲贺忍蛙身上感受到了这种情绪。
あの日、ゴジカに見せてもらったゲッコウガの過去。他のケロマツとは違い、己の信念に真っ直ぐな彼は、彼等からすれば異端児だったのかも知れない。お前は仲間じゃないと距離を置かれ、ただひたすら強くなる事だけに執着した。きっと、それは今も変わらず、だろう。
那天,小智让我看到的甲贺忍蛙的过去。与其他呱呱泡蛙不同,他始终坚持自己的信念,或许在他们眼中就是个异类。被同伴疏远说着"你不是我们的一员",只能执着于变强。这份执着,想必至今仍未改变吧。
ゲッコウガは強くて優しくて、兄として立派で。皆んなの頼れる存在で。だったら、そのゲッコウガか頼りにする存在とは?本当の彼を晒せる場所とは?そんな事、聞かずとも、だ。
甲贺忍蛙强大又温柔,是值得信赖的兄长般的存在。那么,能让这样的甲贺忍蛙依赖的存在是谁?能让他展现真实自我的地方又在何处?这种事,无需多问。
『僕も眠たくなってきた』 『我也开始犯困了』
『俺もだ』 『我也是』
ピカチュウとルチャブルは互いに顔を見合わせると、小さく笑ってオンバットへお昼寝しようと提案した。
皮卡丘和路卡利欧相视一笑,小声提议和音波龙一起午睡。
ゲッコウガはピカさまが来た時点でとっくに気付いてる。
甲贺忍蛙早就察觉到皮卡大人的到来了。