短編集(晩秋) 短篇集(晚秋)
X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2023年11月分)を主にまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的 One-Rai 投稿作品(2023 年 11 月)的主要汇总。
各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000 到 3000 字。目录请查看第 1 页。
素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
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会いたいのは 想见你
キッチンに立っていた潔の耳に、玄関チャイムの音が響いた。
站在厨房的洁耳边,响起了玄关门铃的声音。
お茶でも淹れようかと、ケトルに水を注いでいた時のことだった。レバーを下に引き、水流を止める。全体の三分の一ほどまで満たされたケトルは一旦流しの脇に置いた。
正想着要不要泡点茶,往水壶里倒水的时候。拉下把手,止住水流。水壶装了大约三分之一的水,暂时放在水槽旁边。
廊下を歩きながら考える。来客の予定はなかった筈だが、宅配でも頼んでいただろうか。
一边走在走廊上一边思考。应该没有客人来访的预定,难道是叫了快递吗?
首を捻りつつ玄関に辿り着き、ドアスコープを覗き込む。するとそこには見慣れた仏頂面の男が立っていた。
一边歪着头,一边走到玄关,透过门镜窥视。只见那里站着一个面无表情的熟悉男子。
「…あー」 「…啊」
納得の声が漏れる。潔は施錠を外し、ドアを開けた。冷えた空気が流れ込む。上着なしでは寒さを感じる温度に、思わず身震いをした。
一声理解的声音漏了出来。洁解开锁,打开了门。冷空气涌入。在没有外套的情况下,感受到了寒冷的温度,不由得打了个寒颤。
そんな潔に一瞥をくれると、コート姿の凛は開口一番文句を浴びせかける。
凛以那般干脆的态度瞥了一眼,便开始抱怨起来。
「遅ぇ」 「太慢了」
「いや、先に連絡の一つくらい寄越せっての。…とりあえず、上がれよ」
「不是,至少先联系一下吧。…总之,先进来吧」
剣呑極まりない。 剑拔弩张至极。
潔はぼやき、呆れ顔で溜息を吐く。そしてドアを支えたまま、顎の先で部屋の中を示した。凛は当然と言わんばかりの顔で潔の家に足を踏み入れる。
洁嘟囔着,无奈地叹了口气。然后他依旧扶着门,用下巴示意房间里面。凛理所当然似的表情,踏入了洁的家。
潔はドアを閉め、鍵をかけ、ほっと息を吐いた。振り向くと、凛はとっくにコートを脱いでハンガーに掛けている。潔が案内するより先に奥へと進んでいく足取りにも迷いは一切ない。
洁关上门,上了锁,松了口气。转身一看,凛早已脱下外套挂在衣架上。在洁带路之前,他毫不犹豫地向内室走去。
勝手知ったる人の家というか、もはやコイツの方がこの家の主人では、と思わせるような堂に入った振る舞いだった。
仿佛是熟悉得不能再熟悉的人的家,甚至让人觉得他才是这个家的主人,那种堂而皇之的举止。
日本人の平均身長をやや上回る程度の潔の身長では日々持て余している天井の高さも、凛にはしっくりきている。たかだか十センチでこれほど印象が変わるものか。
对于洁来说,略高于日本人平均身高的他,每天都在为过高的天花板感到困扰,但凛却觉得恰到好处。仅仅十厘米的差距,竟能带来如此不同的印象。
自分の家でそんな風に振る舞う凛の姿を見るたびに、潔は酷く落ち着かない感覚に陥る。
每次看到凛在自己家里那样随意的举止,洁总会陷入一种极度不安的感觉。
潔世一と糸師凛は特別仲がいいというわけではない。少なくとも潔はそう認識している。一応連絡先は知っているが、履歴に残る最後のメッセージの日付は数年前だ。
洁世一和糸师凛的关系并不特别亲密。至少洁是这么认为的。虽然知道联系方式,但聊天记录里最后一条消息的日期已经是几年前了。
所属クラブどころか、そもそも戦場とするリーグからして違う。すなわち住んでいる国すら異なっている。地続きの位置関係にあるとはいえ、気軽に来られる距離ではないはずだ。であるというのに凛は時折、何の前触れもなくふらりと潔を訪ねてくる。
别说所属俱乐部了,就连所在的联赛都不同。也就是说,连居住的国家都不同。虽然地理位置相连,但并不是可以随意来访的距离。尽管如此,凛还是会时不时毫无预兆地突然造访洁。
最初の訪れの際、潔は驚きつつ、ブルーロックを出る際に新居の住所を聞かれたのはこのためだったのか、と遅ればせながら納得したものだった。
第一次来访时,洁虽然感到惊讶,但后来才意识到,当初离开蓝色监狱时被问到新居地址,原来是为了这个。
気になって来訪理由を問うたこともあるが、別に、という一言で切って捨てるばかりで答える気がなさそうだったので諦めた。毎度驚きはするが、潔にとって然程不都合があるわけでもない。
曾好奇地询问来访理由,但对方只是冷淡地以“没什么”打发,似乎毫无回答之意,便放弃了。每次虽感惊讶,但对洁来说,这并不构成什么不便。
というのも、どういった気の持ちようか知らないが、凛は尋ねたタイミングで潔が留守にしていた場合、特に文句をぶつけてくることはしない。毎回無言で引き返しているらしい。
这是因为,尽管不知凛是出于何种心态,若在询问时洁恰好不在家,凛并不会特别抱怨。似乎每次都是默默折返。
潔は当初そうした凛の行動に気付いておらず、たまたまその様子を目にした隣家の老婦人から話を聞いて初めて知った。彼女がいなければ潔は今に至るまでコイツいつもタイミングいいな、と思い続けていたことだろう。
" 洁起初并未察觉凛的这些举动,直到偶然被邻居老妇人告知,才第一次得知。若非如此,洁恐怕至今仍会暗自感叹:“这家伙每次都挑得好时机啊。”
それを知ったとき、潔は多少の気まずさを覚えた。本人に確認する勇気はなかったので、ひとまず先に一報を入れろ、と改めて要求したが、その後も凛の行動に変化はない。
得知此事时,洁感到些许尴尬。他没有勇气直接向本人确认,于是再次要求先告知一声,但之后凛的行为依旧没有变化。
となれば潔にとって問題となるのは、心情の部分だけだ。多少の罪悪感と、それを大きく上回る困惑である。
对洁来说,问题仅在于情感部分。些许的罪恶感,以及远超于此的困惑。
一般的に見てもおかしな行動だろうが、それをやっているのが糸師凛であるという点がなおのこと異常だった。
一般来看,这行为颇为奇怪,但做出此事的是糸师凛,这一点更是异常至极。
そういうときの凛はいつもぶすくれたツラを引っ提げてやって来て、殺気だった目で潔を見る。適当に出掛けたり、潔の家で録画してあった試合の映像を見たりして過ごす。帰り際には随分スッキリした顔で去っていく。実に解せない。
每当这种时候,凛总是带着一副不悦的表情走过来,用充满杀气的眼神盯着洁。他会随意地出门,或者在洁的家里看录好的比赛录像,度过这段时间。离开时,脸上却是一副清爽的表情。实在令人费解。
リビングに戻り、放置していたケトルで湯を沸かす。急須は既に準備済みだ。
回到客厅,用放置已久的茶壶烧水。茶壶已经准备好了。
折角なので何かの折に貰った、勿体なくて使えずにいたお高い煎茶でも消費するとしよう。どこかに仕舞い込んだはずの包みを探して戸棚を漁る。なかなか見つからない。と、視界の端で凛が食器棚を前に首を傾げる。
难得有机会,不如就用那次在某场合收到的、一直舍不得用的高级煎茶来消磨一下吧。翻找着应该收在某处的包裹,打开橱柜寻找。怎么也找不到。这时,视线边缘看到凛站在餐具柜前,歪着头。
「おい、湯呑ねぇぞ」 「喂,茶碗不见了啊」
「ああ、場所変えたんだよ。前より取りやすいとこ、上から二段目」
「啊,换地方了。比之前更容易拿的地方,从上面数第二层」
「…」
「サンキュ。あ、あった」 「谢了。啊,找到了」
凛から湯呑を受け取り、再度戸棚に視線を戻して気付いた。過去の自分は目的の茶葉を、思っていたより手前の方に置いていたようだった。
从凛那里接过茶杯,再次将视线转向橱柜时,才注意到。过去的自己似乎把目标茶叶放在了比想象中更靠前的位置。
無事見つかった包みを開封し淹れた茶を飲んで、一息つく。
顺利找到的包裹被打开,泡好的茶被喝下,松了一口气。
同じように湯呑を傾ける凛の眉間の皺はいつの間にか和らいでいる。その様子を見て、潔はわずかに眉を下げた。
同样倾斜茶杯的凛,眉间的皱纹不知何时已经舒缓。看到这情景,洁微微垂下了眉毛。
実に解せない、釈然としない思いを抱えながらも急にやってくる凛を無碍に扱うことをしなかったのは潔の平和主義故だった。当初は、確かに。
尽管心中满是难以理解的、无法释怀的情感,但洁并没有对突然到来的凛冷眼相待,这正是洁的和平主义使然。起初,确实如此。
しかし、何度もこうして過ごすうちに、潔の中で変わってしまったことがある。
然而,随着这样多次共度的时光,洁心中发生了变化。
凛と共に過ごす時間を心地よく思うこと。別れ際、惜しむ気持ちが胸を満たすこと。
开始觉得与凛共度的时光是愉快的。分别时,心中充满了不舍之情。
ふと、しばらく凛の顔を見ていないことに気づいたとき、メッセージアプリから凛のアイコンをタップして、一言二言打ち込んだあと、結局送信せずに画面の電源を落とすこと。
忽然意识到已经有一段时间没看到凛的脸了,于是从消息应用中点击了凛的头像,打了几个字后,最终还是没有发送,直接关闭了屏幕。
つまりは潔の方から凛に会いたいとそう思うのは、いまや潔が凛のことを、サッカーを抜きにしてもそれなりに好ましく思っているからだ。
也就是说,洁之所以想主动去见凛,是因为现在洁即使不考虑足球,也对凛有着相当的好感。
でも、それを認めるのはなんとなく癪なので。 但是,承认这一点不知为何让人有些不爽。
「そういや手土産とかねぇの、冴みたいに」 「话说回来,没有带点特产什么的吗,像冴那样」
「は? んなもんあるわけねーだろ、兄貴のこと持ち出してんじゃねぇ死ね」
「哈?那种东西怎么可能会有,别提我哥的事了,去死吧」
もうしばらくは、このままで。 暂时就这样吧。
そんなふうに考えながら凛のことを揶揄って、潔はからからと笑った。
一边这样想着,一边调侃凛,洁哈哈大笑起来。