きらきら星のワルツ 闪烁星光的华尔兹
「きらきら星のワルツ」 《闪烁星光的华尔兹》
A6/356P/全年齢/3000円 A6 尺寸/356 页/全年龄向/3000 日元
※イベントではノベルティーのうちわ(先着順)が付きます。
※活动现场将赠送限量团扇(先到先得)。
素敵な表紙はきょたさん(@kiyotamaru_2)に描いて頂きました!!
封面插画由きょた老师(@kiyotamaru_2)倾情绘制!!
装丁は全て餃子さん(@gyouz4)にデザインして頂きました!
整体装帧设计由饺子老师(@gyouz4)操刀完成!
✦本のあらすじ✦ ✦故事梗概✦
女の子として生まれた潔世一が大学の夏季休暇にドイツに渡り色々あってカイザーと出逢い恋に落ちる、二ヶ月間のアバンチュールなラブコメ。
以女儿身降世的洁世一在大学暑假期间远赴德国,经历种种邂逅凯撒并坠入爱河,为期两个月的浪漫爱情喜剧。
捏造満載かつ、男じゃないが故に世一がそもそも青い監獄に行けてないifの世界です。
这是一个虚构故事,设定中因为主角不是男性,导致世一根本没能进入蓝色监狱的 if 世界线。
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Ⅰ✦ Written in the stars.
Ⅰ✦ 命中注定的星缘
──潔世一は、サッカーが大大大大好きな20歳の女子大生である。
──洁世一,是个超级超级超级喜欢足球的 20 岁女大学生。
世一がサッカーに出逢ったのは4歳の時。 世一与足球的邂逅是在 4 岁那年。
ただボールを蹴るだけで楽しくて。気付けば時間の許す限りサッカーボールと戯れ合い、ボールと一緒に転がっていた。
光是踢着球就开心得不得了。不知不觉间只要一有空就会和足球玩耍,跟着球一起滚来滚去。
そうして、その頃はまだ性差なんて存在してなかったから。
那时候性别差异还不存在。
男の子みたいに短い髪で、男の子に混じって駆けずり回って。泥だらけになるまでサッカーボールを追いかけていた。
像男孩子一样留着短发,混在男孩堆里奔跑追逐。追着足球直到浑身沾满泥巴。
何もかもが楽しかった。 一切都那么快乐。
何もかもが、光り輝いていた。 一切都闪闪发光。
そこから少し大きくなったら男友達の誘いで小学校の地域クラブのチームに一緒に入って、そこで小さいながらも試合に出たりなんかもして。
稍微长大些后,在男性朋友的邀请下一起加入了小学地区俱乐部的球队,在那里虽然年纪小但也参加了一些比赛。
ただ好きだったサッカーから、〝勝つ為のサッカー〟をうっすら意識するようになっていてって。
只是从单纯喜欢的足球,开始隐约意识到"为了获胜而踢的足球"。
そうして、そんな頃に出逢ったのが──TVで観た、ノア様のスーパーゴールだったのだ。
就在那个时候遇见了──在电视上看到的诺亚大人那记超级进球。
──衝撃だった、〝こんなサッカーがあるんだ〟って。
──太震撼了,"原来还有这样的足球啊"。
冷静に的確に、どんな隙すらも見逃さずにその場の〝最適解〟を見抜いて実行する、思考能力の高さ。
冷静而精准,不放过任何破绽,瞬间洞察并执行"最优解"的卓越思考能力。
そうしてどんな不可能と思われる位置からでも無慈悲に繰り出される──圧倒的な才能で構成された、奇跡をなぞるような美しい放物線。
从任何看似不可能的角度都能无情击出的——由压倒性才能构筑的、宛如描摹奇迹的优美抛物线。
自分がやっていた〝遊び〟とはまるで違う、ただ貪欲に〝勝利〟を求めるノエル・ノアの渇望。
与自己曾经的"游戏"截然不同,诺埃尔·诺亚纯粹贪婪地追求着"胜利"的渴望。
その一挙手一投足に、ただただ世一は見惚れてしまった。それくらいノアの一撃は美しかった。
世界第一的选手就这样彻底沉醉于他的一招一式。诺亚的每一次击球都是如此惊艳绝伦。
そうだ、今までの固定概念全てがノア一色に塗り替えられていく。あれは正しく、世一の初体験で。
是啊,迄今为止所有的固有观念都被诺亚的色彩彻底覆盖。那才是正确的,是世一最初的体验。
──その日から、潔世一の世界は〝勝利の為のサッカー〟で鮮やかに色づいたのだ。
——从那天起,洁世一的世界就被"为了胜利而踢的足球"染上了鲜艳的色彩。
ただガムシャラにサッカーボールを追い駆けるのではなく、どうすればゴールチャンスは生まれるのかと思考しながら走るようになった。
他不再只是盲目地追逐足球,而是开始边跑边思考如何才能创造出射门机会。
誰よりも多く長くボールキープする為に、対敵相手だけではなくフィールド全体に意識を向けるようになった。
为了比任何人都能更长时间地控球,他开始将注意力不仅放在对手身上,更投向整个球场。
世一は小柄で、どうやっても体格の良い男の子には勝てなかったから。
因为世一身材矮小,无论如何都赢不过体格健壮的男孩子。
だからその分、技術と戦術での勝負に切り替えるしかなかったのだ。
所以只能转而依靠技术和战术来决胜负。
──あァ、今でも思い出す。 ──啊,至今仍记忆犹新。
自分よりも体躯の優れた男の子を出し抜きゴールを奪った瞬間の、あの全てが満たされるような万能感。
那个瞬间——当自己用技巧胜过体格强健的男孩并成功射门时,那种充盈全身的全能感。
その時だけ、まるでノア様の近くに行けたような気がして。
唯有那一刻,仿佛能靠近诺亚大人身边般令人心驰神往。
気持ちよかった。だからもっともっとノア様に近づきたくて、夢中になりながらボールを蹴って蹴って蹴り続けた。
太过美妙。所以想要更加更加接近诺亚大人,我忘情地踢着球,不停地踢啊踢啊。
そうだ。あの日あの瞬間から、世一の夢はずっと〝ノア様みたいな世界一のストライカーになること〟だったのだ。
没错。从那天那个瞬间起,成为世界第一的梦想就始终是"成为像诺亚大人那样的世界第一前锋"。
──ただその夢は、色々あって結局、途中で諦めちゃったけど。
──只不过这个梦想,因为种种缘故,最终还是在半途放弃了。
けど、それでもサッカーが嫌いになったわけじゃなかったから。
但即便如此,他并没有因此讨厌足球。
高校へ進学すると共に夢を切り替え、今の世一は〝いつか海外リーグの理学療法士になる為〟に、日々勉強に身を窶しているのだ。
升入高中后他转换了梦想,如今这位世界第一正为了"有朝一日成为海外联赛的理疗师"而每天埋头苦读。
サッカーをしていた頃は邪魔で短く切り揃えていた髪。
踢足球时为了方便总是剪得短短的头发。
でも勉強する時は結んだ方が楽だったから。いつしか髪は、肩を隠すくらい長くなっていて。
但学习时扎起来更轻松。不知不觉间,发丝已长到能遮住肩膀的长度。
日焼けでこんがりした肌は、気付けば白くなり。 被阳光晒得黝黑的肌肤,不知不觉间已恢复白皙。
高校を卒業する頃には、世一はいつの間にか〝女の子らしい女の子〟に生まれ変わっていた。
高中毕业时,世一不知何时已蜕变成"十足的女孩子模样"。
──その変化に、思うことがない訳じゃないけど。 ——对于这种变化,并非毫无感触。
ゴールへの未練だって、まだあるけど。 虽然对终点仍心存眷恋。
でも、別に全てが無駄だったワケじゃないから。 但这一切并非毫无意义。
そうだ。サッカーをやっていた経験は、思い出は。確かに今の世一の中で糧となり続けているのだから。
没错。踢足球的经历与回忆,确实成为了如今世界第一持续成长的养分。
───世一が目指すのは、国内リーグではなく海外リーグの理学療法士。
───世界第一的目标并非国内联赛,而是海外联赛的运动康复治疗师。
それは当然狭き門で。だからこそ人よりも何倍も努力が必要であるとわかっていた世一は、教授に掛け合いカリキュラム以外の資格も取れるよう奔走していた。
这自然是道窄门。正因如此,深知需要付出常人数倍努力的世一,正为争取教授同意获取课程外资格而四处奔走。
だから現状では、理学療法士と管理栄養士、両方の国家資格の取得を目指して努力している真っ最中なのだ。
因此目前正处于同时为取得物理治疗师和营养管理师两项国家资格而努力奋斗的阶段。
そうしてそれとは別にコツコツ勉強していた複数の外国語も、そこそこどうにかなりそうというか。とりあえず英語は会話レベルなら問題ない感じ。
除此之外,平时坚持自学的几门外语也渐渐有了些眉目。至少英语日常会话已经基本没问题了。
というか、会話も含めてどちらかというと英語よりもドイツ語の方がやる気もあったし得意なのかもしれない。
或者说比起英语,自己学习德语的干劲和天赋可能反而更胜一筹。
それは世一の〝推し〟たるノア様がドイツのブンデスリーガに所属してるからで。
毕竟世界第一的"推"诺亚大人可是效力于德国足球甲级联赛呢。
ノア様が引退する前──本音では一生引退しないで欲しい──までに、一度でいいから現地でノア様の生試合を観たい!! というモチベーションで、世一は世界公用語の英語と現地語のドイツ語と推しの母国語であるフランス語を高校時代からずっと勉強していたのだ。
在诺亚大人退役前——说真心话希望他永远别退役——哪怕只有一次也好,我想现场观看诺亚大人的实况比赛!!怀着这样的动力,世一从高中时代就开始持续学习世界通用语英语、当地语言德语,以及推的母语法语。
ちなみにこの三ヶ国語の中で、フランス語は実はちょっと苦手だ。
顺便一提,在这三种语言中,法语其实有点不太擅长。
もうなんていうか、文法云々よりも発音が難しすぎるのである。
该怎么说呢,与其说是语法问题,不如说发音实在太难了。
ドイツ語も喉を鳴らす発音だけど、フランス語はもっと重くてうがいみたいになるというか──端的に言うと喉が痒くなるのだ。
德语虽然也有需要震动喉咙的发音,但法语发音更沉重,简直像在漱口——简单来说就是会让喉咙发痒。
いやそれはドイツ語も同じなんだけど。 不过德语也是一样的情况啦。
だからやっぱりフランス語は後回しでもいいかなというか。
所以法语还是可以往后放放吧,或者说。
同時に三言語の習得を狙うのは、やっぱり難しいなと言うか。そもそもそんな頭良くないし。頭めちゃくちゃこんがらがるし。
同时掌握三门语言果然还是太难了。毕竟本来脑子就不够聪明。脑袋会彻底乱成一团。
でもフランス語使ってるノア様、超お洒落で格好いいんだよな……。
但是说着法语的诺亚大人,真的超级时髦帅气啊……。
「はぁ~~ノア様を肉眼で見たい……。現地で試合観戦したい……」
「啊啊啊~~好想亲眼看看诺亚大人……好想去现场看比赛……」
──勉強は、ぶっちゃけ好きでもないけど別に苦でもない。
──说实话,虽然不算喜欢学习,但也不觉得特别痛苦。
勉強はあくまで夢の為に必要だからで。一秒でも早く夢を叶える為に、今は全ての時間を注いで努力してる選択をしているというカンジ。
学习终究只是为了实现梦想的必要手段。为了能早一秒实现梦想,我现在选择把所有时间都倾注在努力上。
勿論、楽しそうにキャンパスライフを満喫している他の学生を見て、少しは合わせた方がいいのかな〜〜とか。思わないこともないけれど。
当然,看到其他学生享受校园生活的快乐模样,偶尔也会想是不是该稍微合群一点~~虽然这种念头转瞬即逝。
でも今更そういう輪の中に入るのって、やっぱ難しいし。
但现在要融入这种圈子,果然还是很难啊。
というかサークルとか飲み会とか彼氏とか。そういうのに時間を無駄にしたくないしで──結局、気づけばいつも時間が余ったら図書館で自習ばっかしちゃってる。
或者说社团活动啊、酒会啊、男朋友啊这些。我实在不想把时间浪费在这些事情上——结果回过神来,每次有空闲时间就总是一个人在图书馆自习。
「………ドイツかぁ」 "………德国啊"
つまり世一は、在籍してる学科でかなり浮いているのだ。
也就是说,世一在就读的系里显得相当格格不入。
いや勿論話す子は居るしお昼だって友達と食べたりはするけど。
当然也有能聊得来的同学,午饭也会和朋友一起吃。
でも課題に対する熱量が他の子とは一線を画し過ぎてて〝潔さんは私たちとは違うもんね……〟と引かれているように感じる。というか実際ドン引かれてると思う。
但对待课题的热忱程度和其他人差距太大,总感觉被"小洁和我们不是一类人呢……"这样疏远着。或者说实际上确实被明显疏远了。
それに気付いたのは二年に上がってからで。 意识到这点是在升入二年级之后。
けど気付いたからって、別にどうしようとも思わな──いやというよりも、今の生活、楽すぎるのだ。
不过就算意识到了,也完全没想过要改变——不对,应该说现在的生活实在太轻松了。
高校時代のように、興味のない会話に無理やり合わせようと努力しなくていいと言うか。あれはマジでダルかった。
就像高中时代那样,不必再勉强自己去迎合那些毫无兴趣的对话。那种事真的让人厌烦至极。
大学に上がるまではずっと、場の空気を読んでばっかだったから。
直到上大学前,我一直都在过度察言观色。
所謂色恋沙汰というものに、どうやっても巻き込まれて。けれど拒否りすぎると変に目立つから抗えなくて、それですごく疲れて……。
总是莫名其妙被卷入所谓的男女情事。但拒绝得太明显反而会惹人注目,所以无法反抗,为此疲惫不堪……
──だから今みたいに馴れ合いを完全に切り捨てた上で〝自分のやりたいこと〟だけに集中して動けるのは、正直とてもやりやすい。
──所以像现在这样彻底摒弃虚与委蛇,只专注于〝自己想做的事〞的状态,说实话让我感到无比轻松。
というのも、世一が大学の課題、特に実習にかなりの熱量を注いでいることが誰の目から見ても明らかだからか。
因为世一在大学课题上,尤其是实习方面投入了惊人的热情,这一点任谁都看得出来。
高校時代によくあった〝興味のない異性からの絡み〟が、本当に減ったのだ。
高中时期常见的"被不感兴趣的异性纠缠"情况,如今真的减少了许多。
いや今も、謎に無駄絡みしてくる男はいるけれど。 不过现在偶尔还是会有莫名其妙来搭讪的男人。
でもそういう奴らは世一が経験と実績を積む為に、休日返上で提携大学のスポーツチームのトレーナー補助に参加しているのを知ると、勝手に〝あ〜〜潔さんってガチタイプ?〟とか言って引いて離れてくれるので。
但这类人一旦得知世一为了积累经验,连节假日都在合作大学的运动队担任训练师助理,就会自动嘀咕着"啊~洁同学是那种事业狂类型?"然后识趣地退散。
マジで大学生って楽だな〜〜~と、ひっそり思ったり。
大学生活真是轻松啊~~~,我暗自想着。
「……行ってみたいな、ドイツ」 "……真想去德国看看呢"
──ミュンヘンって、実際はどんな感じなんだろう。 ──慕尼黑,实际上是什么样子的呢。
問いていたドイツ語の文法問題集から目を離して、なんとなく頬杖をつく。
我把视线从正在钻研的德语语法习题集上移开,不自觉地托起了腮帮子。
けど、そうだ。ノア様が所属する、バスタード・ミュンヘンの所在地。
不过,确实如此。诺亚大人所属的拜仁慕尼黑俱乐部所在地。
人生で、一度でいいから行ってみたい。 人生中,哪怕只有一次也好,真想去看看啊。
死ぬまでにはいつか必ず、絶対に行こうと思ってる。 在有生之年,总有一天一定要去,我暗自下定决心。
でもその一度って、いつかって。 但所谓的"一次"和"总有一天",究竟会是何时呢。
一体いつ訪れるんだろうか。 究竟何时才会到来呢。
───今行っちゃったって、いいのでは? ───现在就去,不也挺好吗?
「……、………」 「……,………」
持っていたペンを、静かに置いて。 将握着的笔,轻轻放下。
そうして何気ない仕草で、今度はスマホを手に取りスワイプしていく。
他若无其事地拿起手机划动屏幕。
ブックマークからバスタード・ミュンヘンの公式サイトの年間スケジュールと、ファンが有志で運営する推測の年間スケジュール表を開いて。
从书签里打开拜仁慕尼黑官网的年度赛程,以及球迷自发运营的预测版年度赛程表。
その二つを見比べながらまたペンを手に取った世一は、ノートにカリカリと文字を書き込んでいくのだ。
世一对比着两份赛程再次抓起笔,在笔记本上沙沙书写起来。
「……例年通りなら、8月中旬にポカールがあって、9月の中旬にアリアンツ・アレーナでチャンピオンリーグのグループステージが開幕されるはず。うちの大学の夏休みは長いから、上手く行けば……どっちもいける?」
"……按往年惯例,八月中旬有德国超级杯,九月中旬安联球场会迎来欧冠小组赛揭幕战。我们大学暑假够长,顺利的话……两场都能赶上?"
ポカールとは、ドイツ国内カップ戦のことで。 波卡尔杯是德国国内的杯赛。
バスタード・ミュンヘンを筆頭とする強豪の1部クラブ──1部クラブっていうのはつまりトップチームのことで、ブンデス1部とか呼ばれたりもする──からアマチュアクラブまでを含めた幅広いチームが、一度きりの一発勝負で来季のヨーロッパリーグの出場権を奪い合うのだ。
从以拜仁慕尼黑为首的顶级俱乐部——所谓顶级俱乐部即一线队,有时也被称为德甲球队——到业余俱乐部,众多球队将通过单场决胜的方式争夺下赛季欧联杯的参赛资格。
当然一部クラブが圧勝すると思いきや、しかし意外にも下位チームが善戦したりして。
虽然人们通常认为顶级俱乐部会轻松取胜,但意外的是低级别球队往往能顽强抵抗。
時にまさかの格下が強豪を突破するなどの〝番狂わせ〟が起きたりもする、ポカールはドイツサッカーファンなら目が離せない大会なのである。
有时甚至会出现弱旅爆冷击败豪强的"以下克上"戏码,对于德国足球迷而言,波卡尔杯正是一场不容错过的精彩赛事。
そうしてチャンピオンズリーグとは、ヨーロッパ全土のの〝頂点〟を決める為の大会のこと。
所谓欧冠联赛,就是决定全欧洲"顶点"的赛事。
ドイツは勿論、スペイン、イタリア、イングランドの強豪チームがぶつかり合い〝その年の欧州一〟を求めて文字通り奪い合う、世界中の注目が集まるビッグマッチトーナメントで。
德国自不必说,西班牙、意大利、英格兰的豪门球队在此交锋,为争夺"当年欧洲第一"的称号展开名副其实的厮杀,这是吸引全球目光的顶级锦标赛。
ポカールは8月に、そしてチャンピオンズリーグは9月にそれぞれに一試合ずつある筈──いや、ポカールってスーパーカップ含めて延期される可能性あるな。
法国超级杯在八月,而欧冠联赛在九月应该各有一场比赛——不对,法国超级杯连同超级杯在内都有可能延期。
ならそっちよりかは8月中旬から毎週末に開催されるブンデスリーガを目的にしておいて、それで運が良ければチャンピオンズリーグのグループステージが観れたり……?
既然如此不如以八月中旬起每周举办的德甲联赛为目标,这样运气好的话说不定还能看到欧冠小组赛……?
「……ありかも」 “……说不定有呢”
今年の夏季休暇は7月31日から。 今年的暑假从 7 月 31 日开始。
ここから、本当は実習として大学が提携してる運動部の合宿に、学科の生徒はトレーナー補助として帯同するんだけど。
原本从这时候起,作为实习安排,系里的学生要以训练员助理身份跟随大学合作运动社团的集训。
でも世一は去年参加した際に指導官に気に入られた縁で、そのままボランティアとしてずっと同じチームのトレーナー補助をし続けていたのだ。
但世一去年参加时被指导官看中,之后便一直以志愿者身份担任同一支队伍的训练员助理。
そうしてそのことは勿論教授も知っており。 教授当然也知道这件事。
というか教授の方から「定期的にレポート提出したら課外活動として単位あげるよ」と成果を認めてくれていたので。
不如说是教授主动提出"只要定期提交报告,就可以作为课外活动给你学分",认可了我的成果。
──交渉したらワンチャンで、今期の夏季実習を免除して貰えるかもしれない。
——如果去交涉的话,说不定有机会免除本学期的夏季实习。
多分、今までカウントして貰った単位と交換とかになるだろうけど。でもそれでも全然、構わないから。
大概会用之前累计的学分来交换吧。不过即便如此,我也完全没关系。
「ゼミ室……よりも今の時間だったら研究室の方かな」
"比起研讨室……这个时间点应该是在研究室吧"
拡げていた私物の問題集やペン類をまとめて、鞄に閉まっていく。
将摊开的私人物品习题集和文具收拾好,塞进包里。
消しカスを手で集めて、そのまま近くのゴミ箱に捨てて。そうして綺麗になった机によしっと頷いた後、世一は図書室を足早に後にしたのだ。
用手拢起橡皮屑,直接扔进附近的垃圾桶。看着变得整洁的桌面满意地点点头后,世一快步离开了图书室。
✦✦✦
──日本とは違う、どこか乾いた風を浴びながら。 ──沐浴着与日本截然不同的、带着几分干燥的风。
ガラガラとキャリーバックを引き摺った世一は、スマホ画面と睨めっこしながらとある場所を目指して歩いていた。
世一拖着哗啦作响的行李箱,一边盯着手机屏幕一边朝某个目的地走去。
大通りからはやや外れた路地の道沿い。 偏离主干道的小巷路边。
説明された住所の、説明されたアパートメント。 按照对方告知的地址,找到那栋指定的公寓。
目的地は、その三階の角部屋。 目标地点是三楼拐角处的房间。
見る限り、階段の気配はない。それはつまりこのパンパンのキャリーバックを自力で持ち上げなければならないということで。
目之所及,根本没有电梯的踪影。这意味着我必须独自把这个塞得鼓鼓的行李箱搬上去。
ほんのちょっとだけ遠い目をした世一は、けれどヨシッと気合いを入れて。重たいキャリーバックを抱き抱えながら、一歩一歩慎重に踏み外さないよう気を付けながら階段を上がっていくのだ。
虽然世一的眼神短暂地飘向了远方,但他还是"嘿咻"一声给自己打气。只见他紧紧抱住沉重的行李箱,每一步都小心翼翼避免踩空,就这样一级级攀爬着楼梯。
「……ッ、はぁ〜〜~!」 "......呃,哈啊~~~!"
上って、少し休んでを繰り返し。 爬一段,歇一会,如此反复。
そうしてやっと辿り着いた──指定された扉の、ちょっと癖があってやや鍵の回し難い扉を、ゆっくり押していく。
终于抵达了目的地——我缓缓推开那扇有些特别、钥匙转动起来略显费劲的指定房门。
「………わぁ、」 "……哇啊"
──開いて真っ先に目に入ったのは、クリーム色の奥に繋がる廊下。
——门开后最先映入眼帘的,是通往奶油色深处的走廊。
壁の両サイドには小さな絵が幾つも飾ってあって。右手側の壁には扉が二つ。けれど真正面には扉はない。
两侧墙壁上装饰着许多小幅画作。右手边的墙上有两扇门。但正前方却没有门扉。
なので多分、この右手側の扉がトイレとかキッチンとかで、真正面のあそこがリビングルームなんだろう。
所以大概,右手边这扇门应该是厕所或厨房,正对面那边就是客厅吧。
「ンよっと」 "嘿咻"
ガゴッと音を立て、重たいキャリーバックをなんとか廊下に押し込んでいく。
伴随着嘎吱一声响,总算把沉重的行李箱硬塞进了走廊。
本当はキャスターの泥を落としたかったけど。でも持って来たウェットティッシュはバックの中だし、ここじゃ狭すぎて開けないので。拭くのはもう、あの奥の部屋で荷物を開いてからにする。
其实很想把轮子上的泥巴弄干净。但带来的湿巾还在包里,这里又太窄打不开包。等到了里面房间打开行李后再擦吧。
フローリングの床も汚れちゃうかもだけど。 木地板可能会被弄脏。
でも、見た感じ艶々しててワックスの痕跡がある感じだから。多分クイックルワイパー的なので吹けば大丈夫だと予想する。
不过看起来油光发亮的,好像打过蜡的样子。估计用类似拖把的东西擦擦应该就没问题。
というか、やっぱりドイツだから三和土はないんだ。 话说回来,毕竟是在德国,果然没有三合土地面啊。
土足で暮らすか、どうするか。うーん。クイックルワイパーと一緒に、スリッパもスリッパも買っとこうかな。やっぱり靴は脱ぎたいかも。
是要穿着鞋生活呢,还是怎么办。嗯...要不和拖把一起,再买几双拖鞋吧。果然还是想脱鞋呢。
「よっとっと」 “嘿咻”
玄関扉の内鍵を閉めて、重たいキャリーバックをゴロゴロ押して前進していく。
关上大门的门锁,推着沉重的行李箱咕噜咕噜向前走。
廊下の途中には腰の位置くらいのサイズのチェストがあって、多分これが靴箱なのかなという感じ。
走廊中间放着齐腰高的柜子,感觉这大概就是鞋柜吧。
でも、ここで外靴に履き替えるんだ。玄関扉から離れた場所に靴箱があるのって、なんか不思議かも。
不过要在这里换室外鞋。鞋柜设在离大门这么远的地方,总觉得有点不可思议呢。
「……──!」 "……──!"
そうして見えたのは──異国情緒漂う、素敵なお部屋で。
映入眼帘的是——间充满异国风情的精致房间。
廊下とは打って変わって白い壁紙が張り巡らされた1Rの部屋は、予想していた以上に広々としていた。
与走廊截然不同,这间一居室贴着白色壁纸,比预想中要宽敞许多。
「ひろ〜〜い!」 "好~大啊!"
入口を入って目の前には、青いベルベットが素敵なソファー。
进门映入眼帘的,是一张铺着优雅蓝色天鹅绒的沙发。
そのすぐ隣には背の高い照明とサイドチェストがあって。それとは別に、高さのある机も置いてある。
紧挨着它的是一盏高挑的立灯和边柜。与之相对的另一侧,还摆放着一张高脚桌。
机の横に一人用の椅子が置いてあることから、寛ぐ時はソファーで、そして食事を取る時は椅子に座って食べろってことなんだろうか。
桌旁配了张单人椅,想来是让人休憩时坐沙发,用餐时就坐在椅子上进食吧。
生活が想像しやすくて、なんだかとてもワクワクする。
生活场景如此具象,不由得让人心潮澎湃。
「おっと、危ない危ない」 "哎呀,好险好险"
ソファーから少し離れた位置、つまり部屋の中央には赤茶の絨毯が敷いてあって。
距离沙发稍远的位置——也就是房间中央——铺着一张红褐色的地毯。
その絨毯にキャリーバックのキャスターが引っ掛けようになったので、慌てて迂回する。こんな素敵な絨毯を汚したら大変だ。
行李箱的滚轮差点勾住地毯边缘,我慌忙绕开。要是弄脏这么漂亮的地毯可就糟了。
──そうして、今世一が立ってる部屋の入口と対角線上の壁には、ダブルサイズくらいのベッドが一つ。
──而在与今世一所站房门呈对角线的墙边,摆着一张双人床大小的床铺。
そのベッドの近くにはまたチェストがあって──あぁ、真横にも小ぶりなチェストがあるな。上にランプが乗ってる。かわいい。
床边还放着一个柜子——啊,正侧面也有个小巧的柜子呢。上面摆着盏台灯。真可爱。
「天井たか~~……」 "天花板好高啊~~……"
四階建ての中での三階だから、この上にももう一部屋ある筈なんだけど。
因为是四层建筑里的第三层,按理说上面应该还有一间房才对。
でもそれにしても高く感じる天井に。ドイツ人って平均身長高いもんなと、なんだか勝手に関心してしまう。
但即便如此还是觉得天花板很高。德国人平均身高本来就高嘛,我不由自主地暗自感慨起来。
こんな広い部屋を独り占めだなんて。すっごく贅沢な気分だ。
独占这么宽敞的房间。简直奢侈得不可思议。
そのままキャリーバックを押しながら部屋に入れば、左手にもチェスト──いやこれは、サイズ的にクローゼット?──があることに気付いて。
推着行李箱走进房间时,注意到左手边还有个储物柜——不对,这个尺寸应该算步入式衣橱?——
その隣には勉強に向いてそうなガラス張りのお洒落な机と座りやすそうな椅子、そして縦長の窓が。
旁边是采光良好的玻璃书桌和看起来就很舒适的椅子,还有一扇竖长型的窗户。
「……! えっうわ、これハイツング!?」 「……! 哇啊,这居然是高层景观!?」
──ドイツの民家に必ずあると言われる、冬場に大活躍の暖房器具。
──据说德国每户人家都必备这种冬季大显身手的取暖设备。
ハイツングは長方形型の見た目で、パイプが伸びたりくっついたりしてる造りだとか本に書いてあったけど。マジだ。本に書いてあったまんま!
书上说海茨暖气是长方形外观,由可以伸缩连接的管道构成。真的耶!和书上写的一模一样!
それで──あぁ、この白い器具のバルブを回すと、家中に張り巡らされたパイプに温水が流れて室内を徐々に暖かくする仕組みになんだっけ。
然后──啊对了,转动这个白色设备的阀门,热水就会流遍家中铺设的管道,让房间渐渐暖和起来。
「うわ~~~!」 「哇~~~!」
今は夏だから出番はないけど、実物が見れてかなり感慨深い。
现在正值夏季所以派不上用场,但能亲眼见到实物还是相当感慨的。
なんだか本当にドイツに来たんだ! って感じがする。凄すぎ! テンション上がる!
不知怎的真的有种"来到德国了!"的实感。太厉害了!情绪高涨起来了!
あぁ、今が冬だったらな。使ったんだけどな。流石にこの季節に使ったら蒸されちゃうから、残念。
啊,要是现在是冬天就好了。本来可以用的。但在这个季节用的话肯定会闷得慌,真遗憾。
「ってうわうわうわ! 窓もドレーキップ窓だ!?」 "哇啊啊啊!连窗户都是德式上悬窗!?"
ドイツに居るんだから、そりゃそうだけど。 既然在德国,那确实是这样。
でもドイツと北欧でお馴染みの、横にも手前にも開くドレーキップ窓に。世一はついついハイテンションのまま駆け寄ってしまう。
但对于德国和北欧常见的、既能横向也能向内开启的倾斜式窗户。世一还是忍不住兴奋地跑过去。
「うわ〜〜、ほんとに変な作りだ……」 "哇~~,构造真的好特别啊......"
──レバーを真横90度に回すと縦軸を中心に内開きし、レバーを回しきって180度にして開くと今度は窓の上部だけが部屋の内側に向かって開く、変わった作りのドレーキップ窓。
——将把手横向旋转 90 度时,窗户会以垂直轴为中心向内开启;当把手完全旋转 180 度打开时,这次只有窗户上部会向房间内侧开启,这种独特结构的倾斜式窗户。
日本のスライド式とは違って、どちらも内向きに開く不思議な窓なのだ。
与日本的推拉窗不同,这两扇都是向内开的奇妙窗户。
ちなみに、なぜ縦開きが必要なのかと言うと、雨や雪を部屋に入れない為なんだとか。
顺便一提,之所以需要纵向开窗,据说这是为了防止雨雪飘进房间。
なんでもドイツ人は、一日最低一回は窓を開けて換気するのが習慣らしく。雨の日でも雪の日でも部屋が汚れずに窓を開けられるよう、横開きだけでなく縦開きも出来るこの窓を使い始めたんだとか。
据说德国人有个习惯,每天至少要开窗通风一次。为了让雨天雪天开窗时房间不会弄脏,他们开始使用这种既能横向开启又能纵向开启的窗户。
なんか変なとこでエコっていうか。普通に、換気扇じゃだめなのかなとは正直思う。
总觉得这种环保方式有点奇怪。说实话我在想,普通换气扇难道不行吗?
「──すご……!」 「──太棒了……!」
レバーを90度に回し、開いた窓から顔を出してみれば。
将操纵杆旋转 90 度,从敞开的窗户探出头去。
視界いっぱいに色とりどりのカラフルな屋根と壁、そして鮮やかな木々の緑が映って、世一は胸をときめかせる。
视野中满是五彩缤纷的屋顶与墙壁,还有鲜亮的树木绿意,世一不禁心跳加速。
だってまるで、童話の世界のような光景だ。 因为这简直就像童话世界般的景象。
鮮やかな色彩がとても美しい。本当に〝ドイツに来たんだな〟って、実感できる……。
绚丽的色彩美得令人屏息。此刻才真切感受到"真的来到德国了"……
「素敵……」 "太美了……"
本当に、夢みたいだ。 简直像在做梦一样。
早まる心拍を宥めるように、胸に手を当てて。 将手按在胸前,试图安抚加速的心跳。
すぅ、と深く吸った世一は、そのままうっとりしながら時間をかけて息を吐いていく。
世一深深吸了一口气,就这样陶醉地缓缓将气息吐出。
───三か月前の、突発的にドイツに行きたくなった、あの日。
——那是三个月前,突然想去德国的那一天。
突然〝夏季休暇はドイツに行きたいので実習を免除してください〟と直談判してきた世一に、けれど教授は寛大な態度で受け止めてくれて。
面对突然跑来直截了当提出"暑假想去德国请免除实习"的世一,教授却以宽厚的态度接纳了这个请求。
むしろ笑いながら〝どうせ行くならワーキングホリデービザを取ればいい〟とか〝ドイツに住んでる知り合いにいい物件がないか聞いてあげよう〟とか。行き当たりばったりだった世一に、より具体的なイメージを抱かせてくれたのだ。
甚至笑着说"既然要去不如办个打工度假签证",或是"我问问住在德国的熟人有没有好房源"。这些建议让原本随性而行的世一,对旅程有了更具体的构想。
いや、背中を押してくれたのは教授だけじゃない。 不,在背后支持我的不止是教授一个人。
長期の国外旅行だなんて一体幾らかかるんだろうとビクビクしていた世一に対し、両親も「ずっと根詰めてたんだし、息抜きは必要ね」と快くドイツ行きを応援してくれた。
面对担心"长期国外旅行到底要花多少钱"而忐忑不安的世一,父母也爽快地支持他去德国散心:"你一直埋头苦学,确实需要放松一下"。
なんでも両親曰く、サッカーを辞めてから一心不乱に勉強し続ける世一をずっと心配してくれていたらしい。
听父母说,他们其实一直很担心自从放弃足球后就拼命学习的世一。
だから「一人で行かせるのは心配だけど。それがリフレッシュになるなら好きな所で思う存分羽を伸ばしてきなさい」と言ってくれて。
所以他们说:"虽然让你独自出远门有点担心。但如果这能让你重新振作的话,就在喜欢的地方尽情舒展翅膀吧。"
そうしてその、愛情で満たされた優しい言葉に。 就这样,被充满爱意的温柔话语所包围。
いつの間にか張り詰めていたらしい糸が、プツンと切れた感覚があって。
不知不觉间紧绷的弦,仿佛啪地一声断开了。
堪らずに泣き出してしまった世一を、母はまるで小さな子供をあやすように抱き締めてくれた。
母亲紧紧抱住忍不住哭出来的世一,就像哄小孩一般。
父にも背中を優しく摩って貰えて──ほんと、沢山心配かけちゃったな。
父亲也轻轻抚摸着我的背——真是,让他们担心太多了啊。
「………ほんとに、ドイツに来たんだ」 "……真的来到德国了啊"
──ここで、2ヶ月間過ごせるんだ。 ──要在这里度过两个月呢。
空港に降り立った時からずっと、どこか夢見心地で。 从踏足机场的那一刻起,就一直有种如梦似幻的感觉。
けれど今、頬をさらりと撫でる風に、今更実感が湧いて来る。
但此刻,轻抚过脸颊的微风,让我终于有了真切的实感。
正直、語学的な不安はある。 内心确实有着语言沟通方面的不安。
カルチャーショックの不安だってある。 也存在着文化冲击带来的忧虑。
バイトだって、ちゃんと出来るかわからない。 就连打工能否胜任都尚未可知。
それでも今──不安以上に、胸は希望でいっぱいだから。
但即便如此此刻——比起不安,心中更充盈着希望的光芒。
「……よし! じゃあまずは──サッカーだ!」 "……好!那就先来场——足球赛吧!"
アリアンツ・アレーナ。 安联球场。
ミュンヘンが誇る傑作建築であり、世一が応援するバスタード・ミュンヘンの本拠地。
慕尼黑引以为傲的建筑杰作,也是世界第一支持的拜仁慕尼黑队的主场。
そこで今日、バスタード・ミュンヘンのスポンサーであるアウディが主催する〝アウディ・フットボール・サミット〟──簡単に言うと、シーズン開幕前の調整を兼ねた親善試合が開催されるのある。
今天这里将举行由拜仁慕尼黑赞助商奥迪主办的"奥迪足球峰会"——简单来说,就是赛季开始前兼具热身性质的友谊赛。
もちろんあくまでプレシーズンの親善試合だから、公式戦として記録が残るわけではないけれど。
这毕竟只是季前热身赛,战绩不会被计入正式比赛记录。
しかしその対戦カードは海外の強豪クラブばかりで、そうして今回のカードはあのマンシャイン・シティなのだ。
但对手阵容全是海外劲旅俱乐部,而这次的对手正是那个曼城俱乐部。
つまりは世界一のストライカーと名高いノアと、そのノアの対抗馬として名を馳せるクリス・プリンスの一騎打ちが見られるかもしれない。
也就是说很可能看到世界第一前锋诺亚,与作为诺亚劲敌而声名鹊起的克里斯·普林斯之间的巅峰对决。
──こんなんもう、ドイツに来たなら観るっきゃないじゃん!? と、いうコトで。
——既然都来德国了,这种比赛不看白不看啊!?就是这么回事。
世一はチケット販売の朝からスマホに張り付き、販売開始と共に爆速連打でチケット争奪戦に勝利するという快挙を成し遂げていたのだ。
世一从门票开售的清晨就紧盯着手机,在销售开始的瞬间以闪电手速连续点击,成功夺得了门票争夺战的胜利。
こういう時、ドイツ語を勉強しておいて本当によかったと思う。
这种时候,真庆幸自己学过德语。
じゃなきゃ多分翻訳しながら入力する羽目になって、もたついてる間にカートからチケットを掻っ攫われていただろうから。
不然估计得边翻译边输入,磨蹭的功夫购物车里的票早就被人抢光了。
「試合開始は18時からだから、その前にストアでいっぱいグッズ買っちゃお~~!」
"比赛 18 点才开始,趁这之前去商店把周边买爆吧~~!"
アリアンツ・アリーナまでは、直通の路面バスがあったはず。
阿里安茨竞技场应该有直达的路面巴士。
そんでもって、ドイツの交通機関の信頼性は低い──まあ日本が凄すぎるという話でもあるんだけど──らしいので。
而且据说德国的公共交通可靠性不高——当然这也说明日本的交通实在太厉害了——所以。
早めに行った方が安全だろうと。開けていた窓をしっかり閉めた世一は、軽い足取りでチケットを取りにキャリーバックに歩いていくのだ。
还是早点出发比较安全吧。世一关好敞开的窗户,迈着轻快的步伐拖着行李箱去取票了。
荷開きは、取り敢えず今日またここに帰ってからで。 至于行李开箱嘛,等今晚回到这里再说吧。
あぁ、生試合観戦、すっごく楽しみ! 啊啊,现场观战实在太让人期待了!
✦✦✦
─────凄い凄い凄い! ─────太棒了太棒了太棒了!
熱狂なんてもんじゃない。 这已经不能用狂热来形容了。
もはや感極まって、涙まで流しながら世一は力の限り叫んでいた。
情绪激动到极点,世界第一选手甚至流着眼泪声嘶力竭地呐喊着。
大合唱の、地響きのような応援歌。 如地震般轰鸣的应援大合唱。
それを全身で浴びながら。茹だるような熱気と高揚感に、全身を火照らせながら世一は声を振り絞る。
沐浴在这声浪中的世一,在蒸腾般的热烈气氛与高涨情绪里浑身发烫,声嘶力竭地呐喊着。
もう、どこもかしこもぐちゃぐちゃで。 一切都已经乱作一团。
けれどそれでも構わずタオルを回して、叫んで。視界に映る〝生のノエル・ノア〟に、あぁ。心臓が、爆発しちゃいそう。
但即便如此仍不停挥舞毛巾,放声呼喊。望着视野中"鲜活的诺埃尔·诺亚",啊。心脏简直快要爆炸。
けど、でも──現地観戦すごすぎる!!! 可是,但是——现场观战简直太棒了!!!
テレビで観るのとは全然違う、何もかもが違う! 和电视上看完全不同,一切都截然不同!
大気を揺らす、観客のこの一体感! ノアがトラップすれば息を呑み、ノアがドリブルで敵を抜きされば拳を握り、ノアがシュートを打てば悲鳴のような黄色い歓声と雄叫びが上がる。
震撼全场的观众共鸣!诺亚使出陷阱时全场屏息,诺亚用盘带突破对手时大家攥紧拳头,诺亚射门时爆发出近乎悲鸣的黄色欢呼与呐喊。
一喜一憂をこの場にいる全員と共有する感覚。全細胞が熱狂に取り込まれる、圧倒的没入感!
与现场所有人共享每一刻悲喜的体验。每个细胞都被狂热吞噬,压倒性的沉浸感!
あァ、我慢なんてできない──する必要がない! 啊,我根本忍不住——也没必要忍!
だって興奮に、高揚に、脳が焼き尽くされていく! 因为兴奋与高涨的情绪,简直要把我的大脑烧尽!
目の前の現実に、まるで魔法にでもかけられたみたい!
眼前的现实,简直像被施了魔法一样!
「ノア! ノアーーッッ! いけ! いけいけいけッ! そこ! そこだノアッッ!!」
"诺亚!诺亚——!上啊!冲冲冲!就是那里!就是那里诺亚!!"
──あぁ、これが夢ならば、永遠に醒めたくない。 ──啊,若这是梦境,但愿永不醒来。
繰り出される超絶技巧の数々に、脳汁体験が止まらない。
层出不穷的超凡技巧,让颅内高潮停不下来。
最早興奮どころじゃない没入感に、五感すらもバクってしまう。
早已超越兴奋的沉浸感,连五感都为之震颤。
だから横から肩を抱き締めてきた腕に、むしろ世一の方も細い腰に思い切り抱きついてしまって。
所以当那只手从侧面搂住肩膀时,世一选手反而更用力地环住了那纤细腰肢。
「いけっ! いけっ! イっけぇ〜〜~!!!」 「冲啊!冲啊!冲啊啊啊——!!!」
「Ball sie weg, Noah!!」 「射门啊,诺亚!!」
クリスを抜いたノアがシュートモーションに入る。 甩开克里斯的诺亚摆出了射门姿势。
当然クリスはそれを阻止しようとファールギリギリのタックルを仕掛けるけれど。
当然克里斯试图用近乎犯规的铲球来阻止这次进攻。
それを読んでいたノアは、ノアはむしろクリスの身体を起点に重心を浮かせて、そして。
诺亚读着这些文字,反而以克里斯的身体为支点让重心悬浮起来,然后。
──────GOOOOOOAL!!!! ——————进球啦!!!!
ねぇ、こんな最高なコトってない。 呐,没有比这更棒的事了。
その瞬間は、まるで全てがスローモーションにでもなったかのようだった。
那一刻,仿佛所有事物都变成了慢动作。
ゴールを見据えたノアの鋭く尖った眼光も、振り抜いた左太腿に浮いた筋肉の筋も、なにもかも。
诺亚那锁定终点的锐利眼神也好,挥动左大腿时浮现的肌肉线条也罢,一切的一切。
そのなにもかもがハッキリ視えた世界に、感極まった世一はぎゅうッと強く抱き合ったまま飛び跳ね、全身で悦びを表明してしまう。
在这能将所有细节尽收眼底的世界里,情绪激动的世一紧紧抱住对方蹦跳着,用全身表达着喜悦。
でもだって、こんな感情、我慢するだなんて出来るワケがない!
但是啊,这种感情怎么可能忍得住!
「やった~~~~~ッッ!!!! 勝った! 勝った勝った勝った! ノア様カッコイイ! うぁあ゛~~~ッッかっこいいよぉ……」
「太好啦~~~~~!!! 赢了!赢了赢了赢了!诺亚大人太帅了! 呜哇啊啊~~~帅呆了啦……」
「Jaaaaaaaa!! Noah, du bist echt der Hammer! Tja, Pech gehabt, Munchine!」
「哇啊啊啊!!诺亚,你真是太厉害了!哎呀,真不走运啊,蒙钦!」
試合終了の笛の音が鳴り響く。 终场哨声嘹亮响起。
響き渡る大合唱の雄叫びに、世一たちの絶叫も巻き込まれて。まるで一つの輪になったかのよう。
此起彼伏的集体欢呼声中,世一他们的呐喊也被卷入其中。仿佛所有人连成了一个圆环。
たのしい。きもちいい。滴る汗すら心地よくって、顔に容赦なく当たる爆乳にすら感動してしま───いや待って? 胸デッッえ? なにこれすご、え? これ胸? え??
好开心。好畅快。连滴落的汗水都如此惬意,迎面撞来的爆乳更是让人心潮澎──等等?这胸也太太大了吧?什么情况好厉害,诶?这是胸部?哈??
──え、なんか知らない外国人と抱き合っちゃってる……。
──啊、怎么和陌生外国人抱在一起了……。
頬を容赦なく押してくる極上の弾力に、流石に頭が冷静になってくる。すごくデカイ。
脸颊被那顶级弹力毫不留情地挤压着,脑袋总算冷静了下来。真的好大。
だから恐る恐る世一が上を見上げれば。世一の頭上──一応これでも162㎝あって、日本では身長ある方なのに。普通に見下ろされちゃってる……──からキラキラとした瞳を向けてくる彼女は、興奮に満ちた表情でこう話しかけてきたのだ。
于是世一战战兢兢地向上望去。世一的头顶——明明有 162cm 在日本算高个子了——此刻却被对方俯视着......那双闪闪发亮的眼睛正俯视着他,少女带着兴奋的表情这样搭话道。
「ハァイ! あなたはどこから来ましたか? ドイツ語はわかりますか?」
「嗨!你是从哪里来的?会说德语吗?」
「ぅえっはい! 日本からきました! ドイツ語少しわかります! ほんのちょっと!」
「啊、是的!我从日本来!会一点点德语!真的只有一点点!」
美人の圧、凄いな。 美人的气场,真是厉害啊。
そうしてさっきまでの爆速発音から打って変わった、単語を一つ一つ丁寧に区切ってのゆっくりとした言葉に。
与刚才连珠炮般的语速截然不同,现在变成了将每个单词都仔细分隔开的缓慢语调。
あぁ、聴き取りやすいようにしてくれたんだな、この人は外国人と話すのに慣れてるんだな〜〜と驚きながらも推測してしまう。
啊,原来是为了让我更容易听懂,这个人很习惯和外国人交流呢~~我一边惊讶一边暗自推测。
というか、そろそろ離して欲しいかも。なんか恥ずかしくなってきた。
话说,差不多该放开我了吧。总觉得开始害羞起来了。
「少し? あなたのドイツ語はとても上手ですよ! そして日本から来たのですね! 私は行った事ないけれど、良い所だと聞いてます」
"有点?你的德语说得非常好呢!而且是从日本来的吧!虽然我没去过,但听说是个很棒的地方"
「あ、ありがとうございます……」 "啊、谢谢……"
──あれ、なんだこの流れ。 ──咦,这发展是怎么回事。
自分の拙いドイツ語をドイツ美女によちよちと褒めそやされている状況に、今さっきまで高火力で灼かれ続けた所為でバグってた脳も流石に〝これはちょっとおかしくね?〟と思い始める。
面对德国美女对自己蹩脚德语磕磕绊绊的赞美,由于刚才持续遭受高火力灼烧而宕机的大脑,此刻也不禁开始产生"这情况是不是有点不对劲?"的念头。
だってドイツ人って、噂では仲良くなるまで時間かかるって聞いてたんだけど。でもなんか今、爆速で距離詰められてね……?
因为听说德国人通常要花很长时间才能熟络起来。但不知怎么的,现在距离突然就拉近得超快……?
「私はあなたとお友達になりたいです! 折角だから連絡先交換しましょう!」
"我想和你做朋友!机会难得,我们交换联系方式吧!"
「と、ともだち」 "朋、朋友"
「そうよ、お友達!」 "没错,是朋友呀!"
やっぱこれ、爆速で距離詰められてるな……。 果然,这距离被迅速拉近了啊……
そう頭の片隅で他人事のように冷静に思うも。しかしその他の大部分は未だ先程のノア様のプレーにメロつきっぱなしで、上手く動いてなかったので。
虽然脑海一隅还保持着旁观者般的冷静。但其他大部分思绪仍沉浸在刚才诺亚大人的精彩表现中,导致身体没能及时反应。
まぁ、お友達、嬉しいし……? と興奮でのぼせきった思考回路で、世一は流されるままにスマホを取り出してしまったのである。
嘛,能和偶像做朋友当然开心啦……? 被兴奋冲昏头脑的世一就这样迷迷糊糊掏出了手机。
「えっと、連絡先って電話番号ですか? それともRINEですか?」
"那个...联系方式要电话号码呢?还是用 LINE?"
「ンー? ライン、はちょっと知らないですね。ドイツはwh@tsAppがメジャーなのよ」
“嗯?Line 的话我倒是不知道呢。德国这边 WhatsApp 更主流啦。”
──あ、ちょっと敬語砕けた。 ——啊,糟了,不小心没注意用敬语。
なんて思った瞬間、それを向こうも察したのか。世一の顔を見てニッと溌剌な笑みを浮かべた彼女は、そのまま「私達、そろそろ敬語じゃなくても良いと思うんだけど、どう?」と距離感近めに囁いて来る。
正这么想着的瞬间,对方似乎也察觉到了。看着世一的脸,她突然绽放出明快的笑容,凑近了些许距离轻声说道:“我觉得我们差不多可以不用敬语了吧,你觉得呢?”
そしてそれは普通に嬉しいけど、でもまだ喋り始めて五分も経ってなくない?
虽然确实挺开心的,可是我们开始聊天还不到五分钟吧?
なんだろう、ドイツの時間感覚って日本と違ったりするんだろうか。そろそろとは一体なんなのか。
不知道德国的"时间观念"是不是和日本不太一样。"马上就到"到底是什么意思啊。
諸々の定義がわからなすぎて、心の中のアマゾン探検隊も大混乱だ。
各种定义都搞不明白,连我内心的亚马逊探险队都乱成一团了。
けど、やっぱり頭は働いてなかったので。 不过说到底还是因为脑子没在运转。
未だ興奮で火照ったままの世一は、普通に「うん。すごく良いと思う」とか言って頷いてしまった。
依然兴奋得脸颊发烫的世界第一,就这样普通地点头说着"嗯。我觉得超棒的"。
いやだって。現地の友達欲しすぎるし。 因为实在太想要当地的朋友了。
「嬉しいわ! 私はミラ。両親が〝平和で素晴らしい人生を送れるように〟ってつけてくれたの。あなたは?」
"好开心!我叫米拉。父母给我取这个名字是希望我'能度过和平美好的人生'。你呢?"
「あ、私は世一。両親の名前から一字ずつ取ってて、意味は〝世界で一番素敵な子になりますように〟って」
"啊,我叫世一。是从父母名字里各取一个字组成的,寓意是'希望成为世界上最棒的孩子'"
言いながら、朗らかに微笑む両親の顔が脳裏に浮かぶ。
说着说着,父母开朗微笑的面容浮现在脑海中。
響き的には、どっちかというと男の子っぽいものだけど。でも大好きな両親から一字ずつ貰ったこの名前を、世一は幼少期からずっと気に入っている。
从发音上来说,这名字其实更偏向男孩子气。但世一从小就特别喜欢这个由最爱的父母各取一字组成的名字。
「へえ、素敵ね! ヨー、よいっひ? ヨイッヒ……ヨィヒ? 合ってる?」
"哇,好棒的名字!Yo...yoihhi?Yoihh...Yoiih?我念对了吗?"
「ちょっと惜しい。ヒじゃなくてチなんだ。でもヨイヒでもいいよ」
"稍微有点偏差呢。不是'hi'而是'chi'。不过念成 yoihi 也可以啦"
そう、ドイツ語に〝チ〟という発音はないのだ。 没错,德语里原本就没有"chi"这个发音。
だから渡独前からきっとヨイッヒとか呼ばれるだろうなと思ってたので。正直発音は、そこまで気にするつもりはなかったんだけど。
所以我早就猜到渡德前肯定会被叫成"约伊希"之类的。说实话发音方面,我本来没打算太在意的。
「だめよ、名前は大事なんだから。もっかい言ってちょうだい。完璧に発音できるわ、私」
"不行哦,名字可是很重要的。再说一遍给我听嘛,我一定能完美发音的。"
──いい子だな、この子。 ——真是个好孩子啊,这姑娘。
ラメ付きのマスカラで綺麗に上がった睫毛にバチンッとウインクされて。なんだかちょっとテンションが上がる。
她眨了下眼睛,贴着闪粉睫毛膏的漂亮睫毛啪地一颤。不知怎么的,我忽然有点小兴奋。
というか美人のウインクってマジで様になるな。そして顔の作画が違い過ぎて、自分と同じ生き物に正直見えない。
话说美人眨眼的模样真是风情万种啊。而且脸部作画差异太大,说实话看起来简直不像是和自己同个物种的生物。
「じゃあえと、ゆっくり言うね。よーいーち」 "那么接下来,我要慢慢说咯。预——备——"
「ヨーイーチ」 "预备——"
「よいち」 "预备"
「ヨイチ」 「洁一」
「そうそれ! 世一!」 「对对!世一!」
「ヨイチ! 世一!」 「洁一!世一!」
「そう! 凄くイイ! 世一!」 「没错!超级棒!世一!」
「ハァイ! 世一! イエ~~イ!」 "嗨!世一!耶~~!"
「あは! イエーイ!」 "啊哈!耶~!"
呑み込みの早いミラにパチパチと拍手していれば。 对反应敏捷的米拉啪啪地鼓起掌来。
テンション高くハイタッチを求められたので、その手にぺちんと世一は自分の手を当てた。
被情绪高涨地要求击掌,世一便轻轻地将自己的手贴上了那只伸来的手掌。
って、うわ指も長い! 全部大きいんだ、流石ドイツ人。
哇,手指也好长!全都这么大,不愧是德国人。
「じゃあ仲良くなったついでに、連絡先交換するわよ。wh@tsApp入れて、あ、あとこれとこれとこれも入れといた方がいいわ。こっちじゃ結構必需品」
"那既然都这么熟了,顺便交换下联系方式吧。先装个 wh@tsApp,啊对了还有这个这个和这个最好也装上。在这边这些基本是必需品"
「わ、待って待って。ここ回線弱い! フリーWi-Fiあるかな」
"等、等一下。这里信号好差!不知道有没有免费 Wi-Fi"
自分のスマホ画面を指さしアプリを見せてくるミラに、慌ててストアを開くけど。
看着米拉指着自己手机屏幕展示的应用程序,我慌忙打开应用商店。
でも場所の所為か、電波の具合が大変悪い。だからフリーWiーFiでどうにかしようとする世一に、ミラは怪訝なリアクションを取ってみせたのだ。
可能是地点原因,信号状况非常糟糕。看到世一试图用免费 Wi-Fi 解决问题,米拉露出了困惑的表情。
「何言ってるの? アプリ入れる時は絶対ダメよ。情報抜かれるわよ」
"你在说什么啊?下载应用时绝对不能用免费 Wi-Fi。会被盗取信息的哦"
「エッこわ! そうなの!?」 "诶好可怕!真的吗!?"
──知らなかった。なんなら今まで、結構フリーWi-Fi使っちゃってたんだけど……。
──完全不知道。说起来至今为止,我经常使用免费 Wi-Fi 呢……。
でもそうなると、アプリのDLにかなりの時間がかかっちゃうワケなので。
但这样一来,下载应用会耗费相当长的时间呢。
一向に進まないスマホ画面に、世一が困り果てながら「とりあえずwh@tsApp? だけ優先的に入れるから待ってて……」と情けない声を出していれば。
看着毫无进展的手机屏幕,世一苦恼地嘟囔着"总之先把 wh@tsApp?优先装好等着..."发出可怜巴巴的声音时。
色っぽく小首を傾げたミラは、なにやら思案顔でこう問いかけて来たのだ。
微微歪头露出性感表情的米拉,若有所思地抛来这样的疑问。
「世一、貴方って赤ちゃんみたいで不安。マジで何歳? ビール飲んでたから16歳は超えてると思ってたんだけど……。ご両親は近くに居る?」
"世一,你像个小宝宝似的让人担心呢。说真的你几岁?看你喝啤酒还以为肯定超过 16 岁了...你父母在附近吗?"
「ちょ、20! 20歳超えてるから! ちゃんと成人だよ! 車の免許も持ってるし! 一人でドイツ来たし!」
"等、20!已经超过 20 岁了!是正经的成年人了!连驾照都考到了!还独自来了德国呢!"
まさかの、いや突然の子供扱いに。流石にムッとする。
万万没想到,不,是猝不及防被当成小孩对待。这确实让人火大。
でもそう──世一はちゃんと成人で、お酒もそこそこ呑めて、車の免許だって持っているのだ。
但事实就是——世一确实已经成年,酒也能适当喝点,连汽车驾照都考到手了。
まあ国際免許じゃないからドイツで運転は出来ないけど。でも、持ってるっちゃ持ってるのだ! 大人の証明として!
虽然国际驾照还没办所以在德国不能开车。但考到就是考到了!这可是成年的证明!
「へえ。18歳の私よりもおこちゃまなのに。日本人ってほんとに年齢不詳ね」
「哎呀。比 18 岁的我还要孩子气呢。日本人真的看不出年龄啊」
「じゅ、じゅうはち……!?」 「十、十八……!?」
──その色っぽさで、18歳……!? ──那种性感风情,居然才 18 岁……!?
あまりにも衝撃的すぎて、開いた口が塞がらない。つまり完敗である。
冲击性实在太强,惊得我合不拢嘴。这下彻底败北了。
というか驚きすぎて普通に日本語が出てしまったってか──いや、え? その顔と身体で、18……? 25歳とかでなく? 18?
或者说我惊讶到直接飙出了日语——等等,哈?那张脸和身材,18 岁……?不是 25 岁之类的?18 岁?
西洋人は確かに発育いいし大人っぽいとは知ってたけど、これが18……?? これ18歳が出す色気か??
虽然知道西方人确实发育好又显成熟,但这真的是 18 岁……??这就是 18 岁散发的性感吗??
「あぁ、そろそろイイ感じね。んじゃ、行くわよ」 "啊,差不多到感觉不错的时候了。那么,我要开始咯"
「……えっ。な、なにが? どこに?」 "……诶?什、什么?要去哪里?"
すると、突然周りを見渡しながらそう言うミラに。 这时,环顾四周后突然这么说的米拉。
つられて世一も辺りをきょろきょろと見渡したけど、一体何がイイ感じなのかまるでわからない。
被带着节奏的世一也东张西望地环视周围,但完全不明白到底哪里感觉不错。
会話に夢中になり過ぎてて何か見逃したのかも。 或许是聊得太投入错过了什么。
あ、いや観客席のことかな。 啊,不对,可能是指观众席吧。
さっきよりもお客さんがやや減った気がする。ややだけど。まだ皆、ピッチでやってる勝利パフォーマンス観てるけど。
感觉客人比刚才稍微少了些。虽然只是稍微。大家还在球场看胜利表演呢。
てか話に夢中になりすぎて勝利パフォーマンス、全然観れてないじゃん! もったいな。
话说聊得太投入,完全没看胜利表演!太浪费了。
「どこって酒屋よ! チームが勝ったんだから祝杯上げなきゃ!」
"当然是去酒馆啦!球队赢了必须庆祝啊!"
──なんて思っていれば、ミラにサラッと飲み屋に誘われて。
──正这么想着,就被米拉随口邀去喝酒了。
一瞬〝クナイペってなんだっけ?〟と呆けた世一は、けれども次の瞬間には〝いやいやいや未成年飲酒!〟とギョッとした顔を浮かべたのである。
世一瞬间呆住了,心想"苦艾酒是什么来着?",但下一秒就露出震惊的表情"不不不未成年人不能喝酒!"。
「くないペ……クナイペ!? 居酒屋!? え、いや待ってミラ、さっき18歳って言ってなかった? 未成年飲酒にならない?」
"不是吧……居酒屋!?等等,米拉,你刚才不是说才 18 岁吗?未成年人喝酒不太好吧?"
「こっちじゃ16から合法」 「这边 16 岁就合法」
「うっそマジで!?」 “真的假的!?”
怒涛のカルチャーショックに、思わず目が回る。 突如其来的文化冲击让我头晕目眩。
でも16歳で飲酒OKって。だめだろ。ビール大国って言っても、それはダメだろ。若い時の飲酒って確か健康被害とかあるんじゃなかったっけ……?
但 16 岁就能喝酒也太离谱了吧。虽说啤酒大国,这也太乱来了。青少年饮酒不是会对健康造成危害吗……?
なんて、脳内でぐるぐる考えていれば。 正当我在脑海中反复纠结时。
ふと、ミラに手を取られて。そのままぐいッと引っ張られてしまう。
突然被米拉抓住手,猛地一下被拽了过去。
「えッ」 “诶?”
「ここの近くに穴場スポットがあるの。席が埋まる前に早く行きましょ」
“这附近有个秘密景点哦。趁座位还没被占满我们快去吧”
「ぇアッアッ! ま、待って待って!」 “啊、等等等等!”
──なんか、映画のワンシーンみたいだ。 ——简直像电影里的某个场景呢。
世一の吃り方はちょっと情けなさすぎて、映画には合わないだろうけど。
世界第一的吃相实在太难看了,根本不适合拍进电影里。
それでも外国に来て、人生イチの最高に素敵な試合を観戦して。
即便如此还是来到异国,亲眼目睹了人生中最精彩绝伦的比赛。
そうしてそこで出逢った綺麗な女の子に、笑い掛けられながら手を引かれてる。
然后被在那里邂逅的美丽女孩牵着手,朝我展露笑颜。
それらは全部、日本にいたら味わえなかっただろうモノで。
这一切都是在日本绝对无法体验到的珍贵经历。
その感慨にきゅっと唇を噛み締めた世一は──そのまま口角を、やわらかく釣り上げたのだ。
世一紧紧咬住嘴唇,将那份感慨咽下——随即嘴角便柔和地上扬起来。