短編集:春 短篇集:春
X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2024年3月・4月分)をまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的 One-Rai 投稿作品(2024 年 3 月·4 月)的汇总。
各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000~3000 字。目录请参见第 1 页。
素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
illust/105497745 插画/105497745
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甘いとしょっぱいの黄金比 甜与咸的黄金比例
桜の季節になった。なんとなく、恋人と花見をしようということになった。
樱花季到了。不知为何,两人决定一起去赏花。
待ち合わせは現地集合だ。目的地までの道すがら、潔は手土産を持っていこうと和菓子店に入った。
约定是现场集合。前往目的地的路上,洁打算带些伴手礼,于是走进了一家和果子店。
ついいつも通り注文しようとしたきんつばの隣、「季節限定」の文字が目に留まる。
正要像往常一样点金锷烧时,旁边“季节限定”的字样映入了眼帘。
縁のギザギザした、暗褐色の葉に包まれたピンク色。桜餅だった。
边缘呈锯齿状、暗褐色的叶子包裹着的粉红色。是樱饼。
顎に手を当て、ショーウィンドウを前に少し考える。老齢の店主は穏やかな表情で見守っている。
手托下巴,站在橱窗前稍作思考。年迈的店主带着温和的表情守望着。
しばらくの後ひとつ頷いて、潔は注文の言葉を口にした。
片刻后点了点头,洁开口说出了点单的话语。
「すみません、桜餅二つお願いします」 「不好意思,请给我两个樱饼。」
数年前、まだ青い監獄に閉じ込められていた頃の話だ。
那是几年前,他还被囚禁在青涩牢笼中的往事。
一度、食事の際にデザートとして桜餅がついてきたことがある。潔はそれを巡って、凛と軽い口論になった。
有一次,在用餐时作为甜点附赠了樱饼。洁围绕着它,与凛发生了轻微的口角。
今思えばなんともくだらないきっかけだ。桜餅の葉を食べるか、食べないか。そういう議題だった。
现在回想起来,那真是一个微不足道的小事。吃不吃樱饼的叶子。就是这样的议题。
どんな経緯か忘れたが、そのときの食事は他のいつものメンバーと時間がずれ、潔も凛もそれぞれ一人で食堂に入った。
虽然忘记了具体经过,但那天的用餐时间与其他平常的成员错开了,洁和凛各自独自进入了食堂。
食堂内の人はまばらで、テーブルも選び放題の状態である。相席をする必要はなかった。しかし逆にいえばわざわざ分かれて座る理由もない。トレーを受け取った潔は、特に迷うこともなく凛のテーブルに向かった。
食堂里人不多,桌子可以随意选择。没有必要拼桌。但反过来说,也没有特意分开坐的理由。洁接过托盘后,毫不犹豫地走向了凛的桌子。
歩いてくる潔に、凛は一瞬だけ視線を上げた。相手の姿を確認し、すぐにどうでもよさそうな顔をして食事に戻る。メインの焼き魚に箸を入れた。今日は鯖だった。
走来的洁,凛只是短暂地抬眼看了下。确认了对方的身影后,立刻摆出一副无关紧要的表情继续用餐。筷子伸向了主菜的烤鱼。今天的是鲭鱼。
一応軽く断りを入れ、潔は凛の向かいに座る。返事はなかったがいつものことだ。
姑且轻声拒绝了一下,洁在对面的凛对面坐下。没有回应,但这也是常态了。
今日はデザートがあるらしいと蜂楽から聞いて楽しみにしていた。トレーの隅に並んだ桜餅を見下ろし、潔は顔を綻ばせる。和菓子は好きだ。単純に嬉しい。
今天似乎有甜点,从蜂乐那里听说了,正期待着。看着托盘角落排列的樱饼,洁露出了笑容。他喜欢和果子。单纯地感到开心。
いただきますと手を合わせ、凛を見習って手短に食事に掛かる。
合掌说声‘我开动了’,学着凛的样子迅速开始用餐。
二人は時折トレーニングについての会話を交えながら食事を進めた。それぞれの皿が順調に空になっていく。そして食べ始めた順番の関係上、当然のように凛が先にデザートに到達した。
两人一边偶尔聊着训练的话题,一边继续用餐。各自的盘子顺利地逐渐清空。由于开始用餐的顺序,凛自然地先到达了甜点环节。
大きく口をあけ、豪快に桜餅に齧り付く様を見て潔は目を丸くする。
看到凛张大嘴巴豪迈地咬向樱饼的样子,洁惊讶地瞪大了眼睛。
「え、桜餅の葉っぱ食べんの…? マジで?」 「诶,樱花饼的叶子不吃吗…?真的吗?」
信じられないという顔で話し掛けてきた潔に、凛は冷え冷えとした眼差しを向ける。そのまま口内の桜餅をもしゃもしゃと咀嚼し、飲み込んだ。茶を啜ってから口を開く。
洁带着难以置信的表情开口询问,凛冷冷地瞥了他一眼。她继续咀嚼口中的樱花饼,吞咽下去。喝了一口茶后才开口。
「葉がなかったらただの餅だろ、こんなもん」 「没有叶子的话不就是普通的饼吗,这种东西」
「言われてみればそうか…? いやでも葉っぱは…ないない。絶対ない!」
「这么一说好像是啊…?不过叶子的话…没有没有。绝对没有!」
一瞬納得し掛け、慌てて首を左右に振る。 一瞬间差点被说服,慌忙左右摇头。
だって葉っぱだぞ、苦そう。それが潔の率直な感想だった。
因为那是叶子啊,感觉很苦。这是洁的直率感想。
潔にとって桜餅の葉とはただの装飾に過ぎず、それを食べるという選択肢をもったことがそもそもなかったのだ。潔家一同そうだったので、疑問を抱くこともなく毎回律儀に葉を剥がしてから食べてきた。
对于洁来说,樱饼的叶子不过是装饰,她从未想过要吃它。洁家的人都是如此,所以每次都毫不怀疑地认真剥去叶子再吃。
シンプルな驚き故に、つい語気が強まってしまう。 因为只是简单的惊讶,语气不自觉地变得强烈。
言われた凛の眉間に皺が寄る。 凛听了,眉头微微皱起。
「あ?」 「啊?」
たかが桜餅の葉だ。それほど思い入れがあるわけではない。他人がそれを食べようと食べるまいと、凛には何の関係もない。
不过是樱饼的叶子罢了。并没有那么深的感情。别人吃不吃,对凛来说都无关紧要。
しかしながら、ここまで勢いよく否定されると不愉快にもなるというものだ。
然而,被如此断然否定,心里难免感到不快。
凛の様子に気付いた潔が気まずい顔をする。 注意到凛的样子,洁露出了尴尬的表情。
「あー、ごめん、言い過ぎた。人それぞれだよな、うん」
「啊——,抱歉,说得太过了。每个人都有自己的想法嘛,嗯」
「…」
「俺は食べようと思ったことなかったからさ…」 「我本来就没打算吃……」
「……」
話し続ける潔を無視して、凛は桜餅の残りを口に放り込む。先刻と同じか、それよりやや荒々しい動きで甘味を噛み締めた。その額にはくっきりとした縦線が入ったままだ。
无视继续说话的洁,凛将剩下的樱饼塞入口中。动作与刚才相同,或者说是稍显粗鲁地咀嚼着甜味。额头上依然清晰地刻着一道竖线。
何を言っても余計な刺激を与えるだけと察し、潔は口を噤む。
察觉到无论说什么都只会带来多余的刺激,洁闭上了嘴。
沈黙が続く。凛の咀嚼が終わり、その喉が上下する。
沉默持续着。凛的咀嚼结束,喉咙上下动了动。
潔は湧き上がる好奇心を抑え切れず、凛に問い掛けた。
洁无法抑制涌起的好奇心,向凛问道。
「…それ、どんな味すんの?」 「…那是什么味道?」
「知るか。自分で喰って確かめろ」 「谁知道。自己尝尝看吧」
当初より更に数段冷たい眼差しで潔に一瞥をくれ、凛は席を立つ。所定の位置にトレーを置き、さっさと食堂を出て行った。
凛以比当初更为冷冽的目光冷冷一瞥,随即起身离席。将托盘放置在指定位置后,迅速离开了食堂。
残された潔は自分の桜餅を眺める。 留下的洁凝视着自己的樱饼。
そうして葉で包まれたままのそれを持ち上げ、怖々と、躊躇いがちに、歯を立てた。
他小心翼翼地拿起那仍被叶子包裹着的樱饼,战战兢兢地,犹豫不决地,咬了下去。
少しざらざらとした舌触り。葉脈だろうか、歯触りがところどころぷちぷちしている。味はしょっぱい。その後、食べ慣れた中身の甘さ。
舌尖触感略显粗糙。或许是叶脉吧,咬起来有些地方脆脆的。味道先是咸的,随后是熟悉的内馅甜味。
これは。 这是。
潔の目が輝く。飲み込んで、一息ついて、思わず声が溢れる。
洁的眼睛闪闪发光。咽下后,深吸一口气,不由自主地发出声音。
「……うま」 「……好吃」
道すがらに一部始終を思い出して、潔は少し笑う。 回想着事情的始末,洁微微一笑。
ぼんやり口論になったという認識で記憶していたが、振り返ってみればその域にすら達していなかった。
原本模糊地以为演变成了争吵,但仔细回想,连那个程度都未曾达到。
辿り着いた待ち合わせ場所の桜は満開で、潔は頬を緩める。相手は先に来ていたらしく、既にそこに立っていた。
抵达约定的地点,樱花正盛开,洁放松了脸颊。对方似乎已经先到了,已经在那里站着。
凛、と相手の名前を呼んで、潔は右手の袋を掲げて笑う。
凛,洁呼唤着对方的名字,举起右手的袋子笑着。
「桜餅買ってきた。花見しながら食べようぜ」 「买了樱饼。一边赏花一边吃吧」
振り返った男は、僅かに目を細めた。 回头看的男人微微眯起了眼睛。