鼬の毛皮は今冬までです/犬一代に狸一匹 鼬的毛皮只到今年冬天/犬一代有一只狸
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「鼬の毛皮は今冬までです」…未来捏造、一緒のチームに所属している雰囲気。両片想いでもだもだしています。
“鼬的毛皮只到今年冬天”…未来捏造,同属一个团队的氛围。即使双方单相思也犹豫不决。
「犬一代に狸一匹」…未来捏造、一緒のチーム所属。ふたりでのんびり話しています。
“犬一代与狸一只”……同属一个团队,捏造未来。两人正悠闲地聊天。
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鼬の毛皮は今冬までです 鼬的毛皮只能用到今年冬天
※未来捏造、一緒のチームな雰囲気。 ※未来捏造,团队一起的氛围。
「――ん」 「——嗯」
目を合わせず、最小限の音だけで寄越されたソレを、潔は苦笑しながら受け取る。まだ買ってからさほど時間は経っていないのであろうから、セーターの袖口をうんと伸ばして手のひらを熱から保護する。ころんと転がり込んだソレは、ロビーの片隅に設置された自動販売機で売られている、お汁粉の缶だ。
潔苦笑着接过对方不与他对视、仅以最小声音递来的那物。或许是因为刚买不久,他将毛衣袖口大大地拉长,以保护手掌不受热。滚落到他手中的,是设在大厅一隅的自动贩卖机所售的甜酒罐头。
「まぁた間違えたのか」 “嘛,是搞错了吗?”
揶揄う色を濃くすれば、凛は舌を打って別の缶を煽る。微糖のコーヒーだ。隣り合わせになっているコーヒー缶とお汁粉缶を、凛はよく取り違える。お汁粉が嫌いなわけではないが、口がすでに苦味を求めているところに甘味を注ぎたくないとのこと。すると、処理係に任命されるのは潔だ。甘い物を好む潔にとって断る理由もないため、こうして毎回ご相伴に預かる。
看到凛加重了嘲弄的神色,她便咂舌去开另一罐。那是微糖的咖啡。凛经常把放在一起的咖啡罐和红豆汤罐搞混。她并不是讨厌红豆汤,只是觉得在嘴里已经寻求苦味的时候,不想再注入甜味。于是,负责处理这些的就成了洁。对于喜欢甜食的洁来说,没有拒绝的理由,因此每次都由他来陪同。
「立ち話もなんだし」 站着说话也不太好
潔はお決まりのフレーズを述べて待合用のソファーを指差し、凛の返事を待たずに歩き出す。下手に返答を待てば、天邪鬼は素直に頷けない。だからこれは、幾星霜を経て身につけた凛に対する最適解なのだ。受け入れる体制を見せつつ、こちらからは近寄りすぎない。警戒心を自分で解かせる。猫ちゃんか。
洁指着等候用的沙发,说了句惯常的话,没等凛回应就迈步走开。如果勉强等待回答,那倔强的人是不会轻易点头的。所以这是经过多年磨练,对凛来说最合适的应对方式。既展示出接受的姿态,又不至于靠得太近。让对方自己解除警戒心。真像只猫啊。
先にソファーに腰掛けプルタブを指に引っ掛けていると、凛はのそのそ歩み寄る。そして潔の隣に腰掛けた。膝がぶつからない程度の間隔を空けて。
先坐在沙发上,凛将手提包挂在手指上,慢吞吞地走过来。然后坐在洁的旁边,保持了不碰到膝盖的距离。
「ふーっ。今日はここ最近でもかなり冷えてるな」 “呼。今天真是最近以来相当冷啊。”
飲み口に息を吹きかけながら潔は喋る。凛は自ら話題を振ることは滅多にない。潔の話に適当に相槌を打ったり、たまに呼水を受けて少し喋ってくれたり。比率を表せば七対三くらいだろうか。サッカーが議題となれば対等に投げ合うのだけれど、サッカー以外の会話をするようになったのは、いつ頃からだっただろうか。
洁一边对着瓶口吹气一边说话。凛很少主动提出话题。她会适时地附和洁的话,偶尔接过话茬说上几句。如果用比例来表示,大概是七比三吧。一旦话题转到足球上,两人就能平等交流,但不知从何时起,他们开始谈论足球以外的事情了。
「そういえば、今日近所のコーギーが散歩してたんだけど、モコモコの服着ててさ」
“说起来,今天附近的那只柯基散步时,穿着毛茸茸的衣服呢。”
犬用のブルゾンを纏った姿が愛らしかったこと。あの犬種によるフリフリと揺れる臀部に、えも言われぬ衝動が込み上げてきたこと。曲がり角まで見送っていたら少し遅刻しかけて走ったこと。今朝、潔が肩で息をしてきた理由を知った凛は、小馬鹿にするよう鼻で笑った。しかし潔は全く腹が立たなかった。凛は小学生のころ、通学途中に野良猫を構いまくって遅刻したことがある、という情報を彼の実兄から貰っていたためである。この世は情報の多さが勝負の決め手だ。
穿着犬用外套的模样十分可爱。那犬种特有的摇摆臀部,让人涌起难以言喻的冲动。目送它到拐角处,差点迟到而奔跑起来。今早,凛得知洁用肩膀呼吸的原因后,轻蔑地嗤之以鼻。但洁并未生气。因为他从洁的亲哥哥那里得知,凛小学时曾在上学路上逗弄野猫而迟到过。在这个世界上,信息的多少是胜负的关键。
伝聞の少年の微笑ましさに上がりそうになる口角を誤魔化すため、潔はお汁粉に息を吹きかける。あずき特有のまろい香りが鼻腔をくすぐる。
为了掩饰因传闻中少年的可爱而几乎上扬的嘴角,洁对着年糕小豆汤吹气。红豆特有的甘甜香气撩拨着鼻腔。
「まだ飲めねぇのか」 “还不能喝吗?”
「急かすなよ。猫舌なんだから」 “别催啊,我舌头怕烫。”
お汁粉の温度を確かめるよう、潔はちびちびと口に含む。そんな潔に凛の目元が僅かに和らいでいることを、潔は知っていた。
洁小口小口地含着年糕汤,以确认其温度。他知道凛的眼角因此微微缓和了些。
……いつまで続くんだろうな、これ。 ……这得持续到什么时候啊。
意気地のなさに胸中でため息をつく。誰のって――潔と凛、ふたりともだ。
心中为他们的懦弱叹息。不管是谁——洁和凛,两个人都是。
コーヒーとお汁粉の缶を間違える、なんてほぼほぼあり得ないミスを今月に入って三回も凛がやらかすわけがないのだ。濃い小豆色のパッケージには白く太い文字で“お汁粉”と表示されているのだから。これは凛の嘘……いや、言い訳。
咖啡和红豆汤罐头搞混,这种几乎不可能的错误,凛怎么可能在这个月内犯三次呢?深红色包装上明明用白色粗体字写着“红豆汤”。这是凛的谎言……不,是借口。
そして潔の言い訳。猫舌というほど熱さに弱くない。時間をかけて飲む口実に最も適していたから出た設定。そしてたぶん、これも勘づかれている。
然后是洁的借口。他并非真的怕热到被称为“猫舌”的程度。这个设定只是最适合用来作为慢慢品尝的借口。而且,大概,这个也被察觉到了。
潔はもう温くなってしまったお汁粉を、少し多めに飲む。お汁粉はもちろん、熱々の方が美味しい。なんだか製造元に申し訳なくなる。
洁将已经变凉的甜酒酿稍微多喝了一些。当然,甜酒酿还是热腾腾的更好喝。不知为何,心里对生产厂家感到有些抱歉。
……わかってるんだよ。“一緒にいたい”って言えばいいのはさ。
……我知道的。只要说“想和你在一起”就好了。
素直に言葉にすれば、凛も頷いてくれるだろう。でもなんとなく、お互いが理由を作ってまで引き延ばしているこの関係性が、ちょっと居心地が良すぎる。いじらしさが愛おしい。されど、もどかしさで寂しくなる。でも、ちょっと動けば膝が当たる距離に凛がいるものだから、寒くはならない。ぬるま湯に鼬ごっこ。
若坦率地将心意说出口,凛也会点头同意吧。但不知为何,我们彼此都在找理由拖延这段关系,这种舒适得让人留恋的感觉,既可爱又令人怜爱。然而,这种焦急又让人感到寂寞。不过,只要稍微一动就能碰到凛的距离,所以并不会感到寒冷。就像在温水中玩捉迷藏一样。
……ふ、不甲斐なさすぎる。 ……唉,真是太没出息了。
……唉,真是太没出息了。
普段から凛に対して年上ぶろうとするのだから、こういう場合も年長者である自分から動くべきなのだ。でもなかなか勇気が湧いてこない。煮え切らない鼬鍋。
平时就总想在凛面前摆出年长的架子,这种情况下也应该由作为年长者的自己主动行动。但就是怎么也鼓不起勇气。真是优柔寡断的鼬锅。
……冬だから。冬だから仕方がない。 ……因为冬天。因为是冬天,没办法。
今の季節に凛が隣からいなくなったら、凍死する。潔が冬に責任をなすりつけている間に、とうとうお汁粉を飲み干してしまう。
在这个季节,如果凛从旁边消失了,会冻死的。在洁把责任推给冬天的期间,终于把年糕汤喝光了。
「……」 “……”
「……」 “……”
名残惜しさを隠せない静寂。しかし、缶飲料をおかわりする合理的な理由は思いつけず、潔はのろのろ立ち上がる。
无法掩饰的依依不舍的静寂。然而,却想不出再要一罐饮料的合理理由,洁只好慢吞吞地站起来。
「……帰るか」 “……回去吗?”
「……ん」 “……嗯”
凛もどうやら自然な延長を捻り出せなかったらしい。せめて、ゴミ箱までゆっくり歩き、そっと空き缶を投入する。からん、からん。空き缶がぶつかる音が、呆れた風にロビーに響く。なんだか責められている気分になり、潔は肩を落とした。チラリと凛の横顔を盗み見れば、眉根を顰めている。恐らく、潔と同じ心情で。
凛似乎也没能想出自然的借口。至少,她慢慢走到垃圾桶旁,轻轻地将空罐投入。咣当,咣当。空罐碰撞的声音,带着无奈的回响在走廊里回荡。不知为何,洁感到自己像是在被责备,肩膀不由得垂了下来。她偷偷瞥了一眼凛的侧脸,只见她皱着眉头。恐怕,凛的心情也和洁一样。
……暖かくなったら。暖かくなったら頑張るから!
……暖和了以后。暖和了以后我会努力的!
次の季節に鼬を始末する決意を新たに、潔は駅で凛と別れる。
在下一个季节重新下定决心处理掉黄鼠狼,洁在车站与凛分别。
――しかし、芽吹きを待てぬ実兄という名の漁師が二匹の鼬を仕留めにくるとは、この時のふたりはまだ知らない。
——然而,他们还不知道,那位被称为等不及新芽的实兄的渔夫,会为了猎杀两只黄鼠狼而来。