
***
けたたましい地鳴りと共に、うねりを上げて巨大な根がゲッコウガに向かって突進してきた。根によってなぎ倒された幹から逃げるように、ヤヤコマの大群が空へ舞う。
伴随着震耳欲聋的地鸣,巨大的树根掀起波浪朝甲贺忍蛙猛冲而来。为躲避被树根扫倒的树干,成群的豆豆鸽慌忙飞向天空。
対峙するゲッコウガは怯みもせず、静かに手にした水手裏剣を構える。
对峙中的甲贺忍蛙毫无惧色,静静摆出手中水手里剑的架势。
ゲッコウガの背後から飛び出したのはジガルデだ。犬の姿を模したジガルデが唸り声上げる。緑の閃光が地面を駆け抜け、根の動きを封じる。
从甲贺忍蛙背后跃出的是基格尔德。以犬型姿态现身的基格尔德发出低吼。绿色闪光掠过地面,封锁了树根的行动。
根の動きが一瞬止まる。その隙を逃さず、ゲッコウガは水手裏剣を投げる。
根须的动作瞬间停滞。甲贺忍蛙抓住这转瞬即逝的破绽,掷出水之手裏剑。
「コウガ!」 "「甲贺!」"
ゲッコウガの攻撃を受けた根が爆散する。轟音とともに沸き起こった土煙によって視界が遮られる。それでもゲッコウガは前を睨み、相手の様子を警戒する。
承受甲贺忍蛙攻击的根须轰然爆裂。伴随巨响升腾的尘土遮蔽了视线,但甲贺忍蛙仍死死盯着前方,警惕着对手的动向。
徐々に土煙は治まって行く。そこに不気味な根の存在はなく、ただ地中に奇妙な穴がぽっっかりと空いているだけだ。
翻涌的尘土渐渐平息。诡异根须已不复存在,唯余地面上一个怪异的空洞。
無事に負のエネルギーを除去できたことを確認すると、ゲッコウガがは肩の力を抜き、息を吐いた。
确认成功清除了负面能量后,甲贺忍蛙放松了肩膀,长舒一口气。
『見事だゲッコウガ』 『干得漂亮,甲贺忍蛙』
「コウガ」 "“甲贺”"
賞賛の声を送るジガルデにゲッコウガは頷き返した。この辺りの土地はもう大丈夫だろう。不安げにゲッコウガ達の様子をうかがう野生のポケモン達に「ここはもう安全だ」と合図を送る。
甲贺忍蛙向发出赞许的基格尔德点头回应。这片土地应该没问题了。它向那些不安地观察着它们动向的野生宝可梦们发出信号:「这里已经安全了」。
『実に順調だ。このままいけば、カロスはすぐにでも元の平和な土地に戻るだろう』
『进展相当顺利。照这样下去,卡洛斯很快就能恢复成原本和平的土地吧』
「コウ」 "「吼」"
早くそうなるように願う。フレア団が残した負の遺産。人間のエゴが生み出したもの。その残骸がカロスの地を覆っているなんて、笑えない冗談だ。
我衷心期盼那一天早日到来。闪焰队留下的负面遗产。人类自私催生的产物。这些残骸竟覆盖着卡洛斯大地,真是个一点也不好笑的笑话。
植物の根の形をしたそれは至るとこに潜み、人やポケモンの負の感情に反応し姿を見せる。まだこの土地を滅ぼすことを諦めていないらしい。
那些形似植物根系的东西潜伏在各处,会对人类和宝可梦的负面情绪产生反应现形。看来它们仍未放弃毁灭这片土地的企图。
フラダリ達によって破壊された町は今もなお復興の真っ最中だ。野生のポケモン達も得体の知れないエネルギーに怯えている。早くこんなものなくなってしまえばいい。
被弗拉达利他们摧毁的城镇至今仍在重建之中。野生的宝可梦们也因那股来历不明的能量而瑟瑟发抖。真希望这些能快点消失。
地面にぽっかりと開いた穴。それを埋めようと、野生のポケモン達が集まり、技を使ったり、土をかき集めたりと必死に動いている。
地面上赫然裂开的洞穴旁,野生宝可梦们正聚集起来拼命填补,有的使用技能,有的扒拢泥土,全都忙碌不停。
元の姿を取り戻そうと奮闘するポケモン達を眺めながら、ゲッコウガは決意を固める。
望着努力恢复原状的宝可梦们,甲贺忍蛙坚定了决心。
カロスは美しい場所だ。そこが汚されるのは我慢ならない。人やポケモン達が安心してくらせる場所を一刻も早く取り戻さなければ。そして―
卡洛斯是个美丽的地方。我无法容忍它被玷污。必须尽快夺回能让人类和宝可梦安心生活的家园。然后——
『お主も早く帰りたいであろう』 『你也想早点回去吧』
ゲッコウガはドキリとする。いつのまにか戦闘モードを解いたジガルデ。二つのコアの一つであるプニちゃんがちょこんと地面に座っている。
甲贺忍蛙心头一震。不知何时已解除战斗形态的基格尔德,其两个核心之一的布尼正乖巧地坐在地上。
『今頃どうしているだろうな』 『此刻他正在做什么呢』
どうやらゲッコウガの心を読んだわけではないようだ。相変わらず尊大な口調ではあるが、そこには信頼が溢れている。
看来它并未真正读懂甲贺忍蛙的心思。虽然依旧是一副居高临下的口吻,但字里行间满溢着信任。
「コウ」 "「吼」"
本当にサトシはどうしているのだろう。元気でやっているのだろうか。
小智现在究竟过得怎样呢。想必一定精神抖擞地努力着吧。
ゲッコウガは空を仰ぐ。雲一つない青空。いい天気だ。カロスは今昼だ。ならばカントーは夜だろうか。教えてもらった時差をゲッコウガは懸命に考える。
甲贺忍蛙仰望着天空。万里无云的蓝天。真是个好天气。卡洛斯现在是正午。那么关都应该是夜晚吧。甲贺忍蛙努力回想着被告知的时差。
暫く家に滞在すると言っていた。母の美味しい料理を平らげ、寝ている頃になる。気持ち良さそうに寝るサトシの顔を想像して、ゲッコウガは小さく笑った。
他说过会在家待一阵子。想必正狼吞虎咽地吃着母亲做的美味料理,快到睡觉时间了。想象着小智舒服酣睡的脸庞,甲贺忍蛙微微笑了。
ああ、でももうサトシは新しい地方に旅立っているかもしれない。彼は冒険が好きで、じっとしていられない。
啊,但小智可能已经启程前往新的地区了。他热爱冒险,根本闲不住。
サトシ。大好きで大切な己の主。自身の全てを預けることができる唯一のトレーナー。
小智。我最喜欢且珍视的主人。是唯一能托付自己一切的训练家。
誰よりもポケモンが好きで、ポケモン達の為なら平気で無茶をする。彼はこの現状を誰よりも悲しみ、憤るゲッコウガの気持ちを理解していた。そして全てを託した。
比任何人都更热爱宝可梦,为了宝可梦们可以毫不犹豫地乱来。他比谁都更能理解甲贺忍蛙对现状的悲伤与愤怒。并将一切托付给了它。
この地を守ることは、彼の愛する者達を守ることにも繋がる。
守护这片土地,也等同于守护他所爱的人们。
使命を果たさなければならない。この使命を果たさなければサトシの元へ帰れない。
我必须完成使命。不完成这个使命,就无法回到小智身边。
強い輝きを放つ太陽。ゲッコウガは目を細めながら太陽を見つめ、そこにサトシの姿を重ねる。サトシは太陽のような存在だ。ゲッコウガは思う。
散发着强烈光芒的太阳。甲贺忍蛙眯起眼睛凝视着太阳,在那光芒中重叠出小智的身影。小智就像太阳一样的存在,甲贺忍蛙这样想着。
ゲッコウガの中のサトシはいつも笑顔だ。今は離ればなれだが彼のことを思うだけで、力が溢れてくる。今日の勝利もサトシのお陰だろう。
甲贺忍蛙心中的小智总是面带笑容。虽然现在天各一方,但光是想到他,力量就会源源不断涌出。今天的胜利也一定是托小智的福吧。
『相変わらずトレーナー馬鹿だな』 "你还是那么痴迷于训练家啊"
青いコアが揶揄を飛ばす。ゲッコウガの考えていることなどお見通しのようだ。
蓝色核心发出揶揄。仿佛看透了甲贺忍蛙的心思一般。
「コウガ!」 "「甲贺!」"
『む、思う気持ちなら、余がユリーカを思う気持ちも負けぬぞ』
『哼,若论思念之情,余对尤莉卡的心意也绝不逊色』
『貴様は張り合うな』 『你别想跟我争』
ゲッコウガとプニちゃんの会話に青のコアが突っ込みをいれる。この掛け合いもそろそろ馴染みのものとなってきた。野生のポケモン達が不思議そうな顔で三人のやりとりを見つめる。
呱头蛙和布尼酱的对话中,蓝色核心突然插嘴。这样的互动也逐渐变得熟悉起来。野生的宝可梦们一脸好奇地注视着三人的交流。
先ほどまで不気味な根に支配され、不穏な空気が漂っていた丘は、すっかり元の穏やかな空気を取り戻していた。森にすむ、野生のポケモン達の憩いの場としての姿を。
刚才还被诡异树根笼罩、弥漫着不安气息的山丘,已经完全恢复了原本的宁静氛围。作为森林中野生宝可梦们休憩之地的模样。
「……コウ」 "「……甲贺」"
長居は無用だ。そろそろ次の場所へ移動しなければならない。一刻も早くカロスに張り巡らされた根を排除しなければ。ゲッコウガの中の正義感が熱く燃える。
不宜久留。必须尽快前往下一个地点。必须尽早清除遍布卡洛斯的根系。甲贺忍蛙心中的正义感熊熊燃烧。
『もっとゆっくりしていけばよいものを、生真面目な奴め』
"明明可以多待一会儿的,真是个死板的家伙"
ため息を吐きつつ、二体のコアは差し出されたゲッコウガの手に乗る為に飛び跳ねる。
叹息之间,两个核心跃起,落在伸出的甲贺忍蛙手中。
その小さな衝撃で小石がこつんと転がった。 那块小石子被轻轻一撞,咕噜噜地滚开了。
「コウ?」 "「小豪?」"
太陽の光りを受け、きらりと輝くそれはただの小石ではなさそうだ。ゲッコウガは首を傾げながら手に取り、土を払う。
在阳光的照耀下,那东西闪烁着微光,似乎并非普通的石子。甲贺忍蛙歪着头将它拾起,拂去尘土。
『メガストーンか』 『是超级石啊』
顔を覗かせたのは不思議な飴色。メガストーン。原石ではない。きちんと加工がされた奇麗な丸い宝石だ。
映入眼帘的是一颗奇异的琥珀色宝石。超级石。并非原石。这是经过精心打磨的完美圆形宝石。
何故こんな場所に落ちているのか。誰かの持ち物だろうかと辺りを見渡すが、野生のポケモン達はそろって首を横に振る。落とし物だろうか。
为什么它会掉在这种地方。是某人的物品吗?我环顾四周,野生的宝可梦们却一致摇头。难道是遗失物吗?
何故こんなところに落ちているのかわからないが、このままにはしておけない。プラターヌ研究所に届けた方が良さそうだ。幸い、ここはミアレシティのすぐ傍だ。
不知道为什么会掉在这种地方,但不能就这样放着不管。还是送到布拉塔诺研究所比较好。幸好这里就在密阿雷市旁边。
「コウ」 "「吼」"
『うむ、それがよかろう』 『嗯,那样也好吧』
あっさりと許可が下りた。 许可很爽快地批下来了。
『またあのようなことが起きては敵わんからな』 『要是再发生那种事可就不好对付了』
青いコアが吐き捨てる。あのようなことは当然フレア団を刺しているのだろう。巨石やジガルデの力を利用して行なわれようとしていた恐るべき計画。
蓝色的核心被吐了出来。那种事情无疑是在针对闪焰队吧。利用巨石和基格尔德的力量进行的可怕计划。
ジガルデ・コアはその一番の被害者である。 基格尔德核心是最大的受害者。
この石はエネルギーの塊だ。ポケモンとトレーナーを繋ぐもの。この石が持つメガ進化のエネルギーを悪用してフレア団はこの地に災いをもたらした。悪用されてはいけない。やはりプラターヌ研究所に届けるのが良い。
这块石头是能量的结晶。连接着宝可梦与训练家的纽带。弗拉达团滥用了这块石头所蕴含的超级进化能量,给这片土地带来了灾祸。绝不能被滥用。果然还是送到布拉塔诺博士的研究所最为妥当。
『あの博士ならば悪いようにしないだろう』 "那位博士应该不会有什么恶意吧"
ずっと囚われ、挙げ句に守るべきカロスにこのような事態を招いてしまった嫌悪感。そのせいでどうにも科学者という職の人間が苦手だと、青のコアは旅をする中でゲッコウガに漏らしたことがある。
一直被囚禁,最终却导致本该守护的卡洛斯陷入这般境地的厌恶感。正因为如此,旅途中蓝色核心曾向甲贺忍蛙透露过,自己无论如何都对科学家这类职业的人感到棘手。
だが共に世界を危機から救おうと奮闘した博士のことを彼なりに信頼しているらしい。
但他似乎以自己的方式信任着那位曾与他并肩奋战、拯救世界于危难之中的博士。
ゲッコウガはメガストーンを落とさないようしっかりと握りしめる。石からトクリトクリとした微かな鼓動が聞こえた気がした。
甲贺忍蛙紧紧攥住超级石不让它掉落。恍惚间似乎能听见石头传来微弱而持续的脉动。
『しかしそなたとサトシは本当に不思議だな』 『但你和智之间确实有种不可思议的羁绊啊』
「コウ?」 "「小豪?」"
『その石を必要とせず奇跡を起こす』 『无需借助那块石头也能创造奇迹』
プニちゃんはしみじみと頷き語る。 普尼酱深有感触地点点头说道。
ゲッコウガは手の平を開き、まじまじと石を見つめる。ゲッコウガが見つめた瞬間、石が肯定するかのように淡い輝きを放つ。
甲贺忍蛙摊开掌心,目不转睛地凝视着石头。就在它注视的刹那,石头仿佛予以回应般泛起了微光。
『離れていても互いを思い合う。互いの為にこうでありたいと考える。簡単なようで、難しい行為だ。しかも種族が違えば尚更なこと。ゲッコウガ。今もお主はサトシを思い、サトシの為、この地の平和を願っておるのだろう?』
『即使相隔两地,彼此依然心系对方。为了彼此,渴望成为这样的存在。看似简单,实则困难的行为。更何况种族不同,更是难上加难。甲贺忍蛙。此刻你依然思念着小智,为了小智,祈愿这片土地的和平吧?』
「コウガ」 "“甲贺”"
ゲッコウガは昔の自分を思い出す。ケロマツだった頃の自分は、ただひたすら己の為だけに強くなりたかった。自分の正義を信じていた。だがサトシと出会いかわった。
甲贺忍蛙回忆起了过去的自己。当它还是一只呱呱泡蛙时,只一心想着为自己变强。它曾坚信自己的正义。但与智相遇后,一切都改变了。
トレーナーであるのに己の身を顧みず、ポケモンの為に体をはるサトシ。
身为训练家却不顾自身安危,为保护宝可梦而奋不顾身的小智。
ケロマツだった頃、ルチャブルとそりが合わずよく喧嘩をした。タッグバトルだというのに互いのスタイルを優先して相手の攻撃を許してしまった。
当它还是一只呱呱泡蛙时,与摔角鹰人性格不合,经常吵架。明明是双打对战,却各自优先考虑自己的战斗风格,结果让对方有机可乘。
両手を広げ、攻撃から庇ってくれた背中は大きく、力強かった。
他张开双臂,用那宽阔有力的后背为我挡下了攻击。
初めて誰かの為に強くなりたいと思った。共に苦難を乗り越えたいと願った。一緒にいたいと強い思いが胸に沸き上がった。
第一次为了某人而想要变强。渴望共同克服困难。心中涌起强烈的愿望,想要在一起。
そうして一緒に旅をして仲間達と過ごし、様々なポケモンに出会い、相手を慈しむことを知った。今のゲッコウガがいるのはサトシがいたからだ。サトシなしでは絶対に進化などできなかった。
就这样一起旅行,与伙伴们共度时光,遇见了各种各样的宝可梦,学会了珍视对方。现在的甲贺忍蛙之所以存在,是因为有小智。没有小智,它绝对无法进化。
『うぬ、普通ならできぬことだ。お前は良きトレーナーに出会った』
『哼,这在通常情况下是不可能做到的。你遇到了一个好训练家。』
「コウ!」 "「呱!」"
『まあ、ポケモンを思う気持ちはユリーカもサトシに負けないが』
『嘛,要说对宝可梦的心意,柚莉嘉可不会输给小智』
『貴様はまたそれか! いい加減にしろ』 『你这家伙又来这套!给我适可而止』
その問答は研究所に着くまで繰り広げられた。 这段问答一直持续到抵达研究所为止。
ゲッコウガ達がプラターヌ研究所にたどり着いたのは昼前だ。そして研究所を出る頃にはすっかり辺りは夕闇に包まれていた。日は沈みかけ、月が顔を出し始めている。賑やかな声に包まれていた大通りは閑散としている。代わりに明かりの灯された家々から賑やかな笑い声が聞こえてきた。いい匂いがする。
甲贺忍蛙一行抵达布拉塔诺研究所时已近正午。待到离开研究所时,四周早已被暮色笼罩。夕阳西沉,新月初升。曾经人声鼎沸的大道如今冷冷清清,取而代之的是灯火通明的千家万户里传来的欢笑声。空气中飘来阵阵诱人的香气。
『やれやれ、随分と時間を取られたな』 "哎呀,真是花了不少时间啊"
肯定するようにゲッコウガは体を震わせ、ため息をついた。研究所を訪れてみれば、プラターヌは快くメガストーンを引き取ってくれた。そこまではよかった。そのまま久しぶりなのだからと引き止められ、体調はどうだと色々検査と受けさせられ、終わったのがつい先ほどである。
甲贺忍蛙仿佛确认般抖了抖身体,叹了口气。去研究所拜访时,布拉塔诺爽快地收下了超级石。到那一步还算顺利。之后被以好久不见为由挽留下来,接受了各种身体状况检查,直到刚才才结束。
「君に何かあったらサトシ君が悲しむ」 "如果你出了什么事,小智会伤心的"
そう言われてしまえばぐうの音もでない。まあ、メディカルチェックが受けられたことは幸いだ。色々と数値をとられたせいで逆に疲れてしまったが、美味しいポケモンフーズも分けてもらえたし、良いこと尽くめだ。
被这么一说,我也无言以对了。不过,能接受医疗检查真是太好了。虽然因为各种数值测量反而累得够呛,但还分到了美味的宝可梦食物,也算好事连连了。
そもそもプラターヌのお陰でゲッコウガは怪しまれることなく各地のポケモンセンターを利用できるのだ。博士に逆らうことはできないのだが。
多亏了布拉塔诺博士,甲贺忍蛙才能毫无嫌疑地使用各地的宝可梦中心。虽然无法违抗博士的命令。
プラターヌの元を訪れ、サトシの近況を聞けたのはゲッコウガにとって一番の幸運だ。プニちゃんもまたユリーカの話が聞けたので満更でもなさげた。
对甲贺忍蛙来说,能拜访布拉塔诺并打听到小智的近况是最大的幸运。而顽皮熊猫也因为听到了柚莉嘉的消息而显得心满意足。
一人放置されていた青のコアだけが、研究所にいる好奇心旺盛なポケモン達の恰好の標的となりちょっかいをかけられていた。それで少々青のコアはご機嫌斜めであったりする。
那颗被单独放置的蓝色核心,成了研究所里好奇心旺盛的宝可梦们绝佳的戏弄目标,因此蓝色核心的心情多少有些阴郁。
行儀悪くポケモンフーズをつまみながらゲッコウガは町中を歩く。久々に訪れたのだ。復興が進んだこの町を少しだけ眺めておきたい。
甲贺忍蛙一边没规矩地抓着宝可梦零食往嘴里塞,一边在城镇中漫步。这是它时隔许久再度造访。它想好好看看这座复兴进程显著的城镇。
『すっかり元通りだな』 『已经完全恢复原样了啊』
「コウガ……」 "「小刚……」"
元通り、とまではいかないが、ほぼ復興はすんでいるのだろう。建設中の看板を除けば、あの騒動が嘘のようだ。
虽然还谈不上完全恢复原样,但重建工作已基本完成。除了那些正在施工的告示牌外,那场骚乱仿佛从未发生过。
けれど、ゲッコウガの目に見える。地中深くに根を張っている赤い負のエネルギーが。それが、あの騒動は現実であり、まだ戦いが終わっていないと告げている。
然而,呱头蛙的眼中所见。深埋地底蔓延的红色负能量。那昭示着那场骚动确有其事,战斗尚未结束。
この平和は崩されないようにゲッコウガ達はカロス中に巣くう全ての根を取り除かなければならない。
为了守护这份来之不易的和平,甲贺忍蛙们必须将扎根在卡洛斯各地的所有根须彻底清除。
唯一事情を話してあるプラターヌもまた、どうにか取り除く術を探ってみると言ってくれていた。大丈夫。自分達は孤独ではない。
就连会说话的哲尔尼亚斯也表示会想办法寻找根除之术。没关系,我们并非孤军奋战。
ゲッコウガは歩みを止める。目の前に、懐かしい広場がひろがっている
甲贺忍蛙停下脚步。眼前,熟悉的广场正铺展开来
セレナ達が町の人々を元気づける為にパフォーマンスを行なった場所。そして、ゲッコウガがサトシと一緒に踊った場所だ。
那是莎莉娜她们为鼓舞镇上居民而进行表演的地方。也是甲贺忍蛙曾与小智共舞的场所。
「コウガ」 "“甲贺”"
サトシ、と名前を呟く。 轻声呼唤着智的名字。
『ゲッコウガ』 『甲贺忍蛙』
声が聞こえた気がした。それは恐らく木々が風にざわめいた音だっただろう。だがゲッコウガにはそれが別のものに聞こえた。夕日に揺らいだ影が、一瞬ゲッコウガに幻想を見せる。
仿佛听到了声音。那大概是树木在风中沙沙作响的声音吧。但对甲贺忍蛙来说,那听上去却像是别的东西。夕阳下摇曳的影子,一瞬间让甲贺忍蛙看到了幻象。
途端、寂しさが沸き上がった。 就在那一瞬间,寂寞感涌上心头。
「コウガ、コウガ」 "「甲贺,甲贺」"
美味しいと感じていたポケモンフーズが急に味気無いものにかわる。世界が色あせて見えた。
原本觉得美味可口的宝可梦食物突然变得索然无味。整个世界看起来都褪了色。
『サトシ君は、まだマサラタウンに滞在しているそうだよ。もしかしたら君の帰りを待っているのかもしれないね』
『听说小智还在真新镇停留呢。说不定他正在等你回去哦』
サトシはじっとしていられない性分だ。新しい冒険の匂いを探して直ぐに旅立ってしまう。カロスに来た時も、イッシュ地方の旅を終えてすぐだったという。
小智是个闲不住的性格。他总是嗅到新冒险的气息就立刻启程。就连来卡洛斯地区时,也是刚结束合众地方的旅行不久。
そのサトシがカロスの旅を終えて一ヶ月。まだマサラタウンに滞在している。その事実はゲッコウガを充分に驚かせた。同時に胸に沸き上がったのは歓喜だ。
那个小智结束卡洛斯旅行已经一个月了。他依然停留在真新镇。这个事实让甲贺忍蛙十分震惊。与此同时,心中沸腾而起的是欢喜。
プラターヌの言い分は推測にしか過ぎない。だがもしかしたら、本当にゲッコウガの帰りを待っているのかもしれない。そうだとしたら嬉しいどころではない。今直ぐにでもサトシの元へ飛んで行きたい。
布拉塔诺的说法不过是猜测。但说不定,他真的在等待甲贺忍蛙的归来。如果是这样的话,岂止是高兴,我现在就想立刻飞到小智身边去。
ゲッコウガはいてもたってもいられなくなった。こんな任務放り出して、直ぐにでも海を渡りサトシに会いたい。
呱头蛙再也按捺不住了。它恨不得立刻丢下任务,横渡大海去见小智。
ずっと気付かない振りをしてきた感情が顔を出し、駄駄をこねている。サトシの声が聞きたい。笑顔が見たかった。
一直假装没有察觉的感情终于显露出来,开始任性撒娇。想听到小智的声音。想看到他的笑容。
「ッ……」 "……"
肩に衝撃が走る。 肩膀传来一阵冲击。
考え事をしていたゲッコウガの前を不意に何かがよぎった。
一只正在沉思的甲贺忍蛙面前,突然有什么东西掠过。
叫び声が出てしまったのは仕方がないだろう。考え事に没頭し過ぎて全く気配に気付けなかったのだ。
发出叫声也是没办法的事。太过专注于思考,完全没有察觉到气息。
それは町の住人と思われる青年と、彼に連れられたポケモン、トリミアンだった。彼らは風のようにゲッコウガの前を通り過ぎて行った。必死の形相から、その二人もゲッコウガと同じで自分の世界に入りきっているのだろう。声を上げるゲッコウガ気にすることはなく全力で駆け、広場の真ん中にある噴水の前でぴたりとたち止まる。
那是一位看似镇上居民的年轻人和他带领的宝可梦——多丽米安。他们如风一般从甲贺忍蛙面前掠过。从他们拼命的表情来看,这两人大概也和甲贺忍蛙一样,完全沉浸在自己的世界里。甲贺忍蛙高声呼喊,却无人理会,它全力奔跑,在广场中央的喷泉前猛然停下脚步。
そのまま忙しなく辺りを見渡した。誰かを待っているらしい。噴水の前をうろうろと歩いては急に立ち止まり、ため息をつく。その繰り返しだ。
它就这样匆忙地环顾四周。似乎在等待某人。在喷泉前徘徊踱步,又突然停下脚步,叹了口气。如此反复。
『誰かを待っているようだな』 "你似乎在等待某人"
しばらくすると遠くから声が聞こえた。その途端。男性の顔が輝く。トリミアンが嬉しそうに跳ねた。
不久后,远处传来了声音。就在那一瞬间,男子的脸庞焕发出光彩。多丽米安欢快地蹦跳起来。
歓喜の声を上げながら待つ二人に向かって駆け寄ってくるのは華やかな服に身を包んだ女性と同種の雌のポケモンだ。
朝着发出欢呼声等待的两人奔跑而来的,是身着华丽服饰的女性与同种类的雌性宝可梦。
『なるほど、逢い引きか。恋人同士のようだな』 "原来如此,是幽会啊。看起来像是一对恋人呢。"
プニちゃんの言葉に、ゲッコウガは慌てて茂みの中へ姿を隠す。
听到普妮酱的话语,甲贺忍蛙慌忙躲进了树丛中隐藏身形。
男性と女性は軽くキスを交わすと抱きしめ合った。 男女轻轻交换了一个吻,随即紧紧相拥。
トリミアン達は喜びの咆哮を上げ、二、三度小さな円を描くように走り回った後、互いの体をぴたりとくっつけた。首元に自身の頭を擦りつけ合う。抱擁のつもりなのだろう。
特里米安们发出喜悦的咆哮,绕着小圈跑了两三圈后,彼此的身体紧紧贴在一起。它们互相蹭着对方的颈项,想必是在表达拥抱之意。
ゲッコウガの心がざわりとざわついた。見てはいけないものを見てしまったのに、目が離せない。
呱头蛙的心绪不宁。明明不该看的东西却看了,视线却无法移开。
よく彼と抱擁を交わし合った。それは甘える為の行為であったり、喜びを分かち合う為のものであったりと、その時々で意味合いは違った。しかしいつでもその行為は彼に対して愛を伝える為のスキンシップであった。
我们常常互相拥抱。有时是为了撒娇,有时是为了分享喜悦,每次的含义都不同。但无论何时,那都是向他传递爱意的亲密接触。
ゲッコウガに進化して、急に恥ずかしさが芽生えた。彼に子どもっぽい仕草を見せたくなくて、カッコいい自分を演じた。ハグはしなくなり、喜びを分かち合うスキンシップはハイタッチへと姿を変えた。
进化成甲贺忍蛙后,突然萌生了羞耻心。不想让他看到自己孩子气的举动,便刻意扮演起帅气的形象。不再拥抱,分享喜悦的肌肤之亲也变成了击掌的形式。
彼に飛びつきたい衝動を抑えたのは数回どころではない。恐らく何十回という回数だ。途中で気付いた親友のルチャブルが呆れていた。
想要扑向他的冲动,我抑制了不止几次。恐怕有几十次之多。途中注意到好友路卡利欧露出了无奈的表情。
「もっと甘えてくれてもいいんだぞ」 “你可以再多依赖我一点的。”
苦笑したサトシを思い出す。彼はきっとゲッコウガの見栄なんてお見通しだったのだろう。だって、彼は最高のトレーナーであったから。ゲッコウガが愛する唯一のトレーナー。それがサトシだ。
想起苦笑的智。他一定早就看穿甲贺忍蛙的逞强了吧。因为,他是最棒的训练家。是甲贺忍蛙唯一深爱的训练家。那就是智。
恋人達の語り合いをぼんやりと眺めていると、青のコアがにやりと笑った。
蓝之核心望着恋人们喃喃低语的身影,露出了意味深长的微笑。
『お主は番をつくらぬのか』 『你不打算报上名号吗』
突然の言葉。ゲッコウガはプニちゃんの片割れ、青のコアが何を言っているのか、わからなかった。
突如其来的话语。甲贺忍蛙不明白蓝色核心——小软的另一半在说些什么。
「コウ?」 "「小豪?」"
『だから番だ。お主ほどの者となれば、よりどりみどり選び放題ではないのか?』
"所以才是番。像你这样的家伙,不是可以随心所欲地挑选吗?"
「コッ?」 “嗯?”
『その仕草は本当にわかってないのか。わからない振りをしているのか……まあいい。この地で一人。それでは寂しかろう。恋人の一人や二人作った方が良いだろうと言っているのだ』
"那个动作是真的不明白吗?还是装作不明白的样子……算了。独自一人在这片土地上。那样的话会很寂寞吧。我是说,交一两个恋人会比较好。"
良い番に巡り会えれば、強い子孫を残すこともできる。
若能遇上好时节,也能留下强健的子嗣。
青のコアは楽しげに告げる。まるで名案だと言わんばかりに。
蓝色的核心愉快地宣告着。仿佛在说这是个绝妙的主意。
『それがよい。良い伴侶を得て、子を生す。お主の子どもであればカロスの未来も安泰だ』
『这样很好。找到好伴侣,生下孩子。若是你的孩子,卡洛斯的未来也将安稳无忧』
『冗談もほどほどにしておけ。ゲッコウガ、聞かぬ方がよいぞ。こやつは達の悪い冗談を好むのだ』
“玩笑也要适可而止。甲贺忍蛙,最好别听。这家伙就爱开些恶劣的玩笑。”
『何を言う、お主、今一瞬名案だという顔をしたではないか』
"你在说什么,刚才那一瞬间你脸上明明露出了好主意的表情"
『馬鹿をいうな、そもそもゲッコウガには帰りを待つ仲間達が、サトシがいる!』
『别说傻话,甲贺忍蛙还有等着它回去的伙伴们,还有小智在啊!』
プニちゃんが声を荒げ、片割れを嗜める。その声量の大きさに、例の恋人達がぎょっとした顔をする。どうやらようやくゲッコウガ達の存在に気がついたらしい。
普尼酱突然提高音量,喝止了分裂体。那洪亮的声音让那对著名的恋人们露出了惊愕的表情。看来他们终于注意到甲贺忍蛙们的存在了。
顔をゆで卵のように赤らめ、彼らは早歩きで広場を立ち去る。トリミアンが恨めしそうな顔をしてゲッコウガ達にむかって吠えた。
他们涨红了脸,像煮熟的鸡蛋一样,快步离开了广场。多丽米安带着怨恨的表情向甲贺忍蛙们吠叫。
後に残されたのはバツの悪そうな顔をする青いコア。憤怒を全身で表す赤いコアことプニちゃん。そして一人どうすればよいのかわからず立ち尽くすゲッコウガ。三者三様のでこぼこトリオだけであった。
留下的只有一脸尴尬的蓝色核心。全身散发着愤怒的红色核心——普尼酱。以及一只不知所措、呆立原地的甲贺忍蛙。三者各异的凹凸组合仅此而已。
気まずい雰囲気のまま、三人は夜を迎えた。喧嘩するコア達にどう口を挟めばいいのか困惑し、仲裁を諦めたゲッコウガは二人を残し、木の枝に登ると幹にもたれ掛かった。
在尴尬的气氛中,三人迎来了夜晚。面对争吵不休的核心们,甲贺忍蛙不知该如何插话,最终放弃了调解,留下他们俩独自爬上树枝,倚靠在树干上。
深い藍色の空に浮かぶ白銀の輝き。美しい月の光は、ゲッコウガの中のわだかまりを癒していく。
夜空中漂浮着深蓝色的银白光辉。美丽的月光,渐渐治愈了甲贺忍蛙内心的纠结。
「コウガ」 "“甲贺”"
―ゲッコウガにはサトシがいる。 ——甲贺忍蛙有小智在。
プニちゃんの言葉を思い出し、心がトクリと波打った。
想起普尼酱的话语,心中泛起阵阵涟漪。
そうだ、ゲッコウガにはサトシがいる。 没错,甲贺忍蛙有小智在。
「…………コウガ」 「…………小刚」
ゲッコウガは膝を抱える。体を丸め、膝の上に顔を乗せる。慣れたようで、一人でいることに慣れない。今夜は眠れそうにもない。
甲贺忍蛙抱膝而坐。蜷缩身体,将脸埋在膝盖上。看似习以为常,却始终无法习惯独处。今夜恐怕又难以入眠。
寂しさもあるが、思い出してしまったのだ。傷ついたサトシの顔を。
寂寞如影随形,但更让他想起的是小智受伤时的面容。
『ごめん……ゲッコウガ。オレ、お前の都合も考えずに』
『对不起……甲贺忍蛙。我都没考虑你的感受』
取り繕ったような笑顔。必死に泣くのを耐え唇を噛み締めていたサトシ。震える体。唇の端から滲んだ血が、彼がどれほどショックを受けていたのか物語っていた。それでも懸命に笑顔を浮かべたその姿、なんと健気なことだろう。
强挤出的笑容。拼命忍住哭泣、紧咬嘴唇的智。颤抖的身体。从嘴角渗出的鲜血,诉说着他受到了多大的打击。即便如此仍努力露出笑容的样子,是多么令人心疼啊。
だがその健気な姿は、ゲッコウガがサトシを深く傷つけた故であった。
然而那坚强的身影,正是甲贺忍蛙深深伤害了智的缘故。
『一緒に、これからも旅をしないか』 "你愿意和我一起继续旅行吗?"
カロスの旅も終わりに近づいた頃、たった一人サトシに呼び出されたゲッコウガは思わぬ告白を受けた。
当卡洛斯之旅接近尾声时,被小智单独叫去的甲贺忍蛙收到了意想不到的告白。
耳まで真っ赤に染め上げ、拳を握りしめてサトシが放った言葉は、ゲッコウガに強烈な打撃を与えた。
萨托希的脸红到了耳根,紧握拳头喊出的话语,给甲贺忍蛙带来了强烈的冲击。
『お前とこれからも旅がしたいんだ』 『我还想和你继续旅行下去』
口から吐き出された言葉は熱烈な愛の告白だ。 从口中吐露的话语是炽热的爱的告白。
サトシの瞳は、まるでこれからバトルに向かうかのような鋭い眼光を放っている。サトシなりにこの言葉を言うのに勇気を必要としたらしい。強い光を放つ瞳の奥で揺れているのは、ゲッコウガの返事に対する期待と不安。ゲッコウガの反応を伺うように見るサトシは年頃の幼さを秘めていた。
小智的眼中,仿佛即将奔赴战斗般闪烁着锐利的光芒。似乎对小智而言,说出这番话也需要勇气。在那双闪耀强光的眼眸深处摇曳着的,是对甲贺忍蛙答复的期待与不安。窥探着甲贺忍蛙反应的小智,藏着与年龄相符的稚嫩。
『コッ』 『咔嚓』
―勿論、共にどこまでも ―当然,无论天涯海角都与你同行
そう口にしようとして、ゲッコウガははたと気がついた。
甲贺忍蛙正欲如此开口,却突然意识到了什么。
サトシにとって自分はどういう存在なんだろう。 对莎莉娜来说,我究竟是什么样的存在呢。
ゲッコウガにとってこれは愛の告白だ。人間で言うプロポーズと変わらない。だが、サトシにとってはどういう意味なのだろうか。
对甲贺忍蛙来说,这是爱的告白。与人类的求婚无异。但对小智而言,这又意味着什么呢?
サトシには沢山の仲間がいる。愛すべきポケモン達が。
小智有许多伙伴。都是值得珍爱的宝可梦们。
でも自分にとって愛すべきはただ一人、サトシだけ。
但对我而言值得深爱的,唯有小智一人。
サトシの瞳に宿るのは愛情だ。だがその愛は果たしてゲッコウガと同じものなのか。
小智眼中蕴含的是爱意。可那份爱真的与甲贺忍蛙相同吗?
―愛してくれるなら、自分だけを見て、自分だけを愛して。一番じゃないと嫌。証明して欲しい、一番の愛を。
——若说爱我,就只注视我一人,只爱我一人。不是唯一便不要。请向我证明,这份至上的爱。
悪魔の囁きが聞こえた。 恶魔的低语在耳边响起。
サトシの帰りを故郷で待つ仲間達。自分も、その内の一人に埋もれるのは嫌だ。彼は新しい旅で、新しい仲間を得る。例え今一緒に旅がしたいと言っていてもいつそれが覆るかわからない。サトシからそれを突きつけられたくない。ならばいっそ―
在故乡等待小智归来的伙伴们。我也不愿成为其中默默无闻的一员。他在新的旅程中会结识新的同伴。即便现在说着想一起旅行,不知何时这份心意就会改变。我不想被小智亲口告知这样的事实。既然如此——
『コウ』 『小』
無意識にゲッコウガは首を横に振っていた。 甲贺忍蛙无意识地摇了摇头。
「コウガ……」 "「小刚……」"
トレーナーなら命令すればよかったのに。「次の旅も一緒に行くんだぞ」と。きっとゲッコウガはそれを期待していた。そうしてくれたら、命令だという大義名分ができる。サトシの言葉に期待することも、悩むこともなく旅ができた。
若是训练家的话,明明只要下令就好。比如『接下来的旅程也要一起走』。甲贺忍蛙一定在期待着这句话。那样的话,就有了遵循命令的大义名分。既不用对小智的话语抱有期待,也不必为此烦恼,就能继续旅行了。
だけどサトシはそんなことをしなかった。 但小智并没有那么做。
『わかった』 『明白了』
ゲッコウガの返答に彼はあっさりと引き下がった。必死に泣くのを耐えながら、精一杯笑ってみせる。ただ瞳に滲む涙だけが正直に「なんで、どうして」そう訴えていた。それでも彼はゲッコウガに向かって笑った。
面对甲贺忍蛙的回答,他干脆地退让了。拼命忍住哭泣,竭力挤出笑容。唯有眼中渗出的泪水诚实地诉说着“为什么,怎么会这样”。即便如此,他依然对着甲贺忍蛙微笑。
サトシは何時でもポケモンの意思を優先する。 小智总是优先考虑宝可梦的意愿。
この時ばかりはそれが憎たらしいとゲッコウガは思った。
唯有此刻,甲贺忍蛙觉得那令人憎恨。
「コウ……」 "「甲贺……」"
瞳を伏せる。月の光が眩しく感じられた。何故、思い出してしまったのだろう。あの日の出来事は考えないようにしていた。サトシと普通に過ごそうと決めたから。
垂下眼帘。月光显得格外刺眼。为何会突然想起那些事呢?明明决定不再回忆那天的情景,明明下定决心要和智像往常一样相处。
この月の光のせいか。月を恨めしそうに睨むが、ただ夜空に浮かんでいるだけである。
是因为这月光吗。他怨恨地瞪着月亮,可它只是静静地悬挂在夜空中。
無慈悲に浮かぶ月が、ゲッコウガの本心を暴いていく。
冰冷的月光无情地揭露着甲贺忍蛙内心的真实。
ゲッコウガは時たま夢を見る。サトシが寝ているゲッコウガにひたすら謝り続ける夢だ。
杰尼龟偶尔会做梦。梦见小智对着睡着的自己不停道歉的梦。
『ごめん、ごめんな……』 『对不起,真的对不起……』
うわ言のように呟き続けるサトシの目尻に浮かぶのは涙。それを拭いたくて手を伸ばしたいのに、体が石のように動かないのだ。自分はただ泣くサトシを見るだけ。
小智如同梦呓般不断低语,眼角浮现的泪光。明明想伸手替他擦去,身体却像石头般动弹不得。我只能眼睁睁看着哭泣的小智。
『ごめん……身勝手でごめん……オレが』 『对不起……是我太任性了……对不起』
その姿はエイセツジムでの敗北を思い起こさせる。泣いているサトシ見ると、彼がそのままどこか遠くて行ってしまうのではと不安になる。懸命に体を動かそうする。だがぴくりとも動かない。まるで自分の体ではないかのように。
那身影让人想起在艾瑟体育馆的败北。看到哭泣的小智,不安涌上心头,生怕他就这样远去。拼命想要挪动身体。却纹丝不动。仿佛这具躯体已不属于自己。
やがて、ゲッコウガの不安通り、サトシは何処かへふらりと姿を消してしまうのだ。サトシが消えて、ゲッコウガの体はようやく自由に動くようになる。必死に探すが見つからず、嫌な汗とともに目が覚める。
最终,正如甲贺忍蛙所担心的那样,小智不知何时悄然消失了身影。随着小智的消失,甲贺忍蛙的身体终于能够自由活动。它拼命寻找却一无所获,在冷汗涔涔中惊醒过来。
起きて直ぐに夢だとわかり安堵する。だが何とも後味の悪い夢のせいでその日一日中気分が妙に落ち着かなくなるのだ。
醒来后立刻明白是梦,便松了口气。但因为这个令人不快的梦,一整天心情都莫名地无法平静。
きっとあの夢を見るのは、自分がサトシを傷つけたことに対して罪悪感を抱いているからだろう。
一定是因为对自己伤害了智而感到内疚,才会做那个梦吧。
自分が傷つきたくないから代わりにサトシを傷つけた。忘れるなと言わんばかりに夢でゲッコウガに罪を突きつけるのだ。
因为不想让自己受伤,所以让莎莉娜代替受伤。仿佛在说“别想忘记”一般,在梦中向甲贺忍蛙追究罪责。
断りを入れた瞬間のサトシの顔が忘れられない。 我永远无法忘记那一刻,小智脸上露出的拒绝表情。
大きく目を見開き、顔一面に「なんで」という疑問が広がっていた。震える唇が声にならない声で「なんで、どうして」と延々と疑問を投げかけている。
他睁大了眼睛,整张脸上都写满了“为什么”的疑问。颤抖的嘴唇无声地重复着“为什么,怎么会这样”,不断抛出绵长的疑问。
サトシの表情に引きずられ、今のは冗談だと告げたい衝動に駆られた。今ならまだ間に合う。答えを訂正できる。
被小智的表情所感染,一股冲动涌上心头,想要告诉他刚才只是玩笑。现在还为时不晚,还能修正答案。
『コウ、コウガ』 『呱,呱呱』
だが口から出たのはさらなる拒絶の言葉。拒絶に拒絶を塗り重ねた言葉は、サトシをさらに傷つけた。
但从口中吐出的却是更强烈的拒绝之词。层层叠加的拒绝言语,进一步伤害了小智。
ゲッコウガはサトシに期待をしていた。旅に慣れ、別れに慣れているサトシならば、きっと己の言葉の意味を深く考えず、笑って頷いてくれるだろう。
甲贺忍蛙对智抱有期待。习惯了旅行与离别的智,想必不会深思它话语的含义,只会笑着点头应允吧。
いつでもピカチュウだけを連れて彼は新しい旅にでる。覆すことができない真実だ。どんなに一緒に連れて行って欲しいと思っても彼は、それを受け入れない。彼は新しいスタートは二人でと決めてしまっているからだ。
他总是一如既往地只带着皮卡丘踏上新的旅程。这是无法改变的事实。无论我多么渴望能一同前往,他都不会接受。因为他早已决定,新的起点只属于他们两人。
カロス地方での旅が終わりに近づくにつれて、ゲッコウガは何度ピカチュウを羨んだだろう。自分が初めからサトシの手持ちであったならばと。
随着在卡洛斯地区的旅程接近尾声,呱头蛙曾多少次羡慕过皮卡丘。如果自己从一开始就是小智的伙伴该有多好。
ゲッコウガはサトシの特別になりたいのだ。 呱头蛙想成为小智的特别存在。
彼の中で特別なポジション、揺るがぬ地位を築き上げたい。キズナの力だけじゃない。もっともっと特別な証が欲しい。
想在他心中筑起无可动摇的特殊地位。仅靠羁绊之力还不够,我渴望更多特别的证明。
広場で睦み合う恋人達を見て、ゲッコウガが抱いたのは強烈な羨望だ。己の感情のまま、欲のまま抱きしめ合い、愛を語り合う。その行為が心底羨ましくて妬ましかった。
望着广场上耳鬓厮磨的恋人们,甲贺忍蛙心中涌起强烈的艳羡。随心所欲地拥抱欲望,互诉爱意——这般行径令它从心底既向往又妒忌。
ジガルデ・コアは、ある意味ゲッコウガの本心を見抜いていたのかもしれない。
或许,基格尔德核心在某种意义上已经看穿了甲贺忍蛙的本心。
一人は寂しい。 独自一人很寂寞。
元々己は強烈な飢えを抱いていた。その飢えを満たそうと、日々鍛錬に励み己を鍛えた。
原本我就怀抱着强烈的渴望。为了满足这份渴望,每日刻苦锻炼自我。
卵から孵ったばかりの頃。周りにいたのは陽気な仲間達。歌と踊りが大好きで、誰に対しても気安い。ゲッコウガは別に彼らが嫌いではなかた。ただ、相容れなかっただけだ。
刚从蛋里孵出来的时候。周围都是开朗的同伴们。他们热爱歌舞,对谁都自来熟。甲贺忍蛙并不讨厌他们。只是,彼此合不来罢了。
強くなりたかった。強くなって、心に空いた穴を埋めたかった。強くなれば孤独にも耐えられる。
我想要变强。变得更强,填补心中的空洞。只要足够强大,就能忍受孤独。
だからこそ、サトシとの出会いはゲッコウガにとって運命だった。あれほど感じていた飢えがぴたりと治まったのだ。代わりに沸いたのは慈愛だ。
正因如此,与智的相遇对甲贺忍蛙而言是命中注定的。那份曾如此强烈的饥渴感瞬间平息了。取而代之涌上心头的,是慈爱之情。
愛を育み合う相手がいれば、全てに対して愛を注ぎ、優しくなることができるのだ。
若有相互滋养爱意的伴侣,便能对一切倾注爱意,变得温柔。
サトシがいれば― 如果小智在的话——
そうして想像したのはサトシと抱きしめ合う姿だ。あの恋人同士のように顔をくっつけ熱烈に互いに愛を囁き合う。手をつなぎ、キスをして、ずっと離れず傍にいる。
于是想象中浮现的是与智相拥的画面。像那对恋人一样脸颊相贴,热烈地互诉爱意。手牵着手,亲吻着,永远不离不弃地相伴左右。
「コウガ……」 "「小刚……」"
ゲッコウガが顔を上げる。不意にプタラーヌが話していたことを思い出した。
呱头蛙抬起头来,突然想起了哲尔尼亚斯说过的话。
『これはシトロン君達から聞いたんだけどね。いやはや、若いってのは。マーベラス! なんでも空港のエスカレーターで』
"这是从希特隆他们那里听说的。哎呀,年轻真是。太棒了!据说是在机场的自动扶梯上"
思い出しかけ、大声を上げて叫んだ。ぎょっとした顔でジガルデ・コア達がゲッコウガを見るが無視する。それどころではない。
回忆涌上心头,他放声大喊。基格尔德核心们用惊愕的眼神望向甲贺忍蛙,却被无视。此刻哪有闲心理会这些。
胸の奥で燻り続ける感情が目を覚まし、ゲッコウガを急き立てる。ゲッコウガは叫び続け、いてもたってもいられなくなり、木から飛び降りると走り出した。
在胸腔深处闷烧的情感骤然苏醒,驱使着甲贺忍蛙。它持续嘶吼着,焦躁难耐地从树上跃下,开始狂奔。
待てと声が聞こえた気がしたが、気にしてなどいられない。
仿佛听到了有人喊“等等”,但我已无暇顾及。
「コウガ、コウガ」 "「甲贺,甲贺」"
ひたすらサトシの名を呼び、ゲッコウガは走る。大地を力強く踏みしめ、木々の間を駆け抜ける。目的地などない、ただ衝動を抑える為に全力で走り続ける。
一心呼唤着智的名字,甲贺忍蛙不断奔跑。它有力地踏过大地,穿梭于树林之间。没有目的地,只是为了抑制内心的冲动而全力奔跑。
ゲッコウガの奇行に、なにごとかと野生のポケモン達が顔を覗かせる。威嚇してくるものもいたがゲッコウガは、彼らを避けてただ走る。
甲贺忍蛙的怪异举动引来了野生宝可梦们的侧目。虽有挑衅者,但它只是避开它们继续奔跑。
だがゲッコウガの暴走は直ぐに終わりを迎える。 但甲贺忍蛙的失控很快迎来了终结。
ゲッコウガ達が一夜を過ごす為に選んだ場所は、ミアレシティを抜けて別の町へと続く道を少し逸れた茂みの中である。
甲贺忍蛙们为度过一夜而选定的地点,是在离开密阿雷市通往另一座城镇的道路稍偏处的树丛中。
人に会うことを避けるため、ゲッコウガ達は基本森の中を移動しているのだ。
为了避开与人相遇,甲贺忍蛙它们基本上都在森林中穿行。
そこからゲッコウガが走り辿り着いた場所。そこはかつてサトシと共に歩いた場所だ。初めて野営を行なった場所。
甲贺忍蛙奔跑抵达的地方。那是曾与小智一同走过的场所。初次进行野营的地点。
ゲッコウガは項垂れるようにその場でがっくりと膝をついた。太ももは痛み、胸が苦しい。荒い息をつきながらゲッコウガは呆然と前をみた。
甲贺忍蛙如同垂首般当场颓然跪地。大腿疼痛,胸口发闷。它喘着粗气,茫然望向前方。
「コウガ……」 "「小刚……」"
月の光りに照らされて輝く雫。ゲッコウガはまた幻想を見た。
月光照耀下闪烁的水滴。甲贺忍蛙又看到了幻象。
カロスで初めての野宿に、はしゃぐサトシとピカチュウ。その横でくつろぐ自分がいる。
在卡洛斯第一次露营时,兴奋的小智和皮卡丘。而在一旁放松的自己。
星空を見上げるサトシの後ろで、嬉しそうに寝間着を見せびらかすユリーカと、嗜めようとするシトロン。それかろ不安そうに寝袋を見つめるセレナ。初めての野宿に色々思うことがあったのだろう。少しだけ唇を引きつらせていた。
仰望星空的小智身后,尤莉卡开心地炫耀着睡衣,而希特隆试图劝阻。瑟蕾娜则不安地盯着睡袋。第一次露营想必让她思绪万千。她的嘴角微微抽动了一下。
不安を抑えようとしたのか、時たまセレナはサトシの方をちらりと見ては頬を染めている。
或许是为了压抑内心的不安,瑟蕾娜时不时偷瞄一眼小智,脸颊泛起红晕。
「コウガ……」 "「小刚……」"
見たくないと手を振る。ふつりと幻影が消える。次に現れたのは、サトシにキスするセレナの姿。プラターヌから聞いた空港での出来事。
他挥手表示不想看。幻影啪地消失了。接着出现的,是小智亲吻瑟蕾娜的身影。从布拉塔诺那里听说的机场事件。
あの広場で普段なら気にも止めない筈の恋人同士の馴れ合いを食い入るように見つめてしまった理由。
在那个广场上,为何会目不转睛地盯着平日根本不会在意的情侣亲昵——个中缘由。
サトシの申し入れを断った理由。 拒绝小智邀请的理由。
馬鹿だとゲッコウガは自分を責める。 甲贺忍蛙责备自己太愚蠢。
色々と言い訳をしているが、理由は単純明白なのだ。
虽然找了许多借口,但原因其实简单明了。
恋なんて生温い。キズナなんて尊いものじゃない。もっと欲深く重いもの。
恋爱这种温吞的感情算什么。羁绊也并非多么珍贵的东西。是比这更贪婪更沉重之物。
ゲッコウガはサトシに欲情していた。 呱头蛙对智爷怀有爱慕之情。
サトシの特別になりたい。サトシの一番になりたい。だからその体を暴くのも自分でありたい。
想成为小智的特别存在。想成为小智的第一。所以撕裂那具躯体的也必须是我。
「コウガ……コウコウ」 "「甲贺……甲贺」"
片膝を尽き、ゲッコウガは手を組む。人は祈りを捧げるときこういうポーズをすると聞いた。だからゲッコウガはそれを真似、必死に祈った。
单膝跪地,甲贺忍蛙双手合十。它听说人类祈祷时会摆出这样的姿势。于是甲贺忍蛙模仿着,拼命祈祷。
「コウガ……コウガ……」 "「甲贺……甲贺……」"
己の中にある劣情を、サトシを傷つけた自分を懺悔するかのように。ポケモンである己が抱いた、トレーナーに対する恋心を、ゲッコウガは月に向かって吐露し続けた。
仿佛在忏悔体内涌动的邪念,忏悔伤害过小智的自己。作为宝可梦却对训练家萌生的恋慕之心,甲贺忍蛙持续向月亮倾吐着。
月は無言でゲッコウガを照らし続ける。 月光无言,持续照耀着甲贺忍蛙。
イーブイは眠い目を擦りながら道を歩く。木の穴で睡眠を貪っていた時突如聞こえた呻き声。びっくりして思わず穴から顔を覗かせれば、風のように通り過ぎていくポケモンが一人。
伊布揉着惺忪睡眼走在路上。正当它在树洞里贪睡时,突然听到一声呻吟。受惊之下不由自主从洞口探出头来,只见一只宝可梦如风般掠过。
この付近ではあのポケモンの未進化の姿をよく見かける。野生で滅多にみることがない初心者トレーナー用のポケモンだ。初々しいトレーナーがケロマツを抱えて、よくこの付近を通り過ぎる。ただあのように一人で駆けるポケモンなど見たことがない。
在这附近经常能看到那只宝可梦未进化的样子。那是野生中极为罕见、专为新手训练家准备的宝可梦。稚嫩的训练家们抱着呱呱泡蛙,时常途经此地。但像那样独自奔跑的宝可梦,我从未见过。
気になってしかたがなかった。好奇心がうずく。そっと穴から這い出した。仲間達はやめろと止めたが、好奇心は止められない。それに不安がる仲間達の為に、様子を見に行く役割は誰かが果たさなければならない。色々言い訳をしながら彼は一人ポケモンを追い掛けた。
我忍不住感到好奇。好奇心在蠢动。我悄悄从洞里爬了出来。伙伴们劝我别去,但好奇心无法抑制。而且,为了那些不安的同伴们,总得有人去探明情况。他一边找着各种借口,一边独自追着那只宝可梦。
ポケモンはすぐ見つかった。辿り着いた丘の上で、必死に祈り続けるポケモン、ゲッコウガ。
很快就找到了那只宝可梦。在抵达的山丘上,拼命持续祈祷的宝可梦——甲贺忍蛙。
風に乗り、彼の呟きの一部がイーブイの耳に入る。どうやら人の名のようである。続いて聞こえる単語は「好き、愛してる」というもの。
乘着风,他的低语有一部分传入了伊布的耳中。听起来像是人名。接着听到的词语是“喜欢、爱着你”。
イーブイは顔を真っ赤にした。なんて熱烈な告白だろうか。こんな告白仲間同士でも聞いたことがない。
伊布的脸涨得通红。多么热烈的告白啊。这样的表白,即便是伙伴之间也未曾听闻。
もっと詳しく呟く内容が聞きたくて足を一歩踏み出した。
我想听更多详细的内容,于是向前迈出了一步。
風が吹き抜ける。嫌に生温い風だった。 风吹过。那风令人不适地温热。
まとわりつく風が気持ち悪くて、全身を震わる。そこでイーブイは悲鳴を上げた。
缠绕周身的阴风令人不适,全身都在颤抖。伊布发出了悲鸣。
月の光りに照らされ伸びるゲッコウガの影。彼が劣情を口にする度、その影が静かにうねり赤い光りを放つ。
月光下甲贺忍蛙的影子不断延伸。每当它吐露炽热情感时,那影子便悄然翻涌,泛起红光。
普通、影は動かない。彼はゲッコウガではなくゴーストなのだろうか。イーブイは目を擦る。やはり目に写るのはゲッコウガだ。
通常,影子是不会动的。他莫非不是甲贺忍蛙而是幽灵?伊布揉了揉眼睛。映入眼帘的,果然还是甲贺忍蛙。
影がイーブイを見て、ぴたりと動きをとめた。それから影はイーブイに向かって手招きをする。イーブイは目にしてしまった怪奇現象に悲鳴を上げ、慌ててその場から立ち去る。
影子看到伊布,突然停下了动作。接着,影子朝伊布招了招手。目睹这诡异现象的伊布发出尖叫,慌忙逃离了现场。
祈るゲッコウガが気付くことはなかった。 祈祷的甲贺忍蛙并未察觉。
***
現シリーズが終わってしまうということでUPいたしました。
ゲッコウガと別れた後のお話。
サトシくん…終わってほしくない…!!
pkmnに再度ハマるきっかけになったのがXYZなので思い入れが強い本です。
そしてあまりにもゲコサトのお別れが悲しすぎて書いてしまった本であり、好き勝手やってた本ですが、感想頂けて嬉しかった思い出。
闇堕ちメリバEDの妄想も今なお脳内でフィーバーしてるくらいゲコサト大好きです。
23.3.26 追記
延々とスクロールすると大変かなと思いページ分割しました。
こちらの方が読みやすいかと思いまして。