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短編集:春/あきづき的小说

短編集:春 短篇集:春

11,183字22分钟

X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2024年3月・4月分)をまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的 One-Rai 投稿作品(2024 年 3 月·4 月)的汇总。

各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000~3000 字。目录请参见第 1 页。


素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
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賭博黙示録・凛

 卓上のルーレットを挟んで、見知った男がディーラーと向かい合う。
桌上的轮盘两侧,一位熟悉的男子与庄家相对而坐。

 黒と赤で塗り分けられた円盤が高速で回る。その回転にのせられた金額を思うと目眩がした。
 黑与红相间的圆盘高速旋转。想到那旋转中的金额,不禁感到一阵眩晕。

 固唾を呑んで見守る潔の横で、賭けた張本人は表面上平然とその行方を眺めている。
 紧张地咽下唾沫,守望着这一切的洁身旁,下注的当事人表面上却平静地注视着结果。

 やがてディーラーの手が動き、ホイールが停止する。凛はゆっくりと目を細める。
 不久,荷官的手动了,轮盘停止转动。凛缓缓地眯起了眼睛。

 凛が賭けた場所は赤の十六番。  凛赌的是红色十六号。
 ボールの落ちた先は——。  球落下的地方是——。


 そうだ、バカンスに行こう。  没错,去度假吧。
 潔がそう思い立ったのは、よく昼食を共にしていたドイツ人のチームメイトが如何にバカンスが素晴らしいかということを数か月間にわたり滔々と語って聞かせ続けた成果だった。
 洁之所以萌生这个念头,是因为几个月来,那位经常一起吃午饭的德国队友滔滔不绝地向他灌输假期有多么美妙。

 最初は特に興味もなく聞いていた潔がその思考に至ったのはもはや刷り込みに近い。
 起初并没有特别兴趣的洁,如今这种想法已近乎根深蒂固。

 傍から見ていた他のチームメイトは潔の目に渦巻き模様を幻視してそう思ったが、ワーカホリック気味の潔が息抜きをするのが悪いこととも思えなかったので誰も引き止めはしなかった。
 旁观的其他队友们看着洁的眼睛,仿佛看到了漩涡图案,但他们也不觉得工作狂洁需要休息是件坏事,所以没有人阻止他。

 そうと決まれば場所選びである。しかし潔はサッカーのこと以外あまり興味を持たずに生きてきたのでその手の情報には疎かった。
 既然决定了,接下来就是选地点。然而洁除了足球以外,对其他事情几乎不感兴趣,因此对这方面的信息也很陌生。

 そこで参考にしたのがかの偉大なるストライカー、ノエル・ノアである。インタビュー記事曰く、潔の永遠の憧れはバカンスをモナコで過ごすのが定番らしい。じゃあそこでいいか。そうなった。
 于是,他参考了那位伟大的前锋,诺埃尔·诺亚。据采访文章所述,洁的永恒偶像似乎习惯在摩纳哥度假。那么就去那里吧。就这样决定了。

 そこに道連れができることになったのは、潔にも想定外の出来事だった。
 能找到同伴一起去,对洁来说也是意料之外的事情。

 調べてみたところ、モナコはフランスのすぐ傍のようだった。そういうことなら、とフランスに拠点を置く凛に軽い気持ちで情報提供を求めたところ、流れで一緒に行くことになったのである。
 调查了一下,摩纳哥似乎就在法国旁边。既然如此,便轻率地向在法国设有据点的凛寻求信息,结果顺理成章地决定一同前往。

 凛とはそれなりに交流を持っているが、振り返ってみると行き先はお互いのホームタウンに限られていたので遠出は初めてだ。言い出しっぺとして気を引き締め、潔はプランを練った。
 与凛虽有一定交流,但回顾过往,目的地仅限于彼此的家乡,远行还是第一次。作为发起人,洁认真制定了计划。

 そうして訪れたモナコは期待に背かず、二人を存分にもてなしてくれた。壮麗な街並み、美しい海岸線、F1レース、美味美食、エトセトラエトセトラ。
 如此造访的摩纳哥不负期待,充分款待了两人。壮丽的街景、美丽的海岸线、F1 赛事、美味佳肴,等等等等。

 ひとしきり楽しんだある夜、潔は凛に告げた。  某个尽情享受的夜晚,洁对凛说道。

「明日は凛の行きたいとこ行こうぜ。散々付き合ってもらったし、俺のこと気にしないで羽伸ばせば?」
「明天去凛想去的地方吧。一直让你陪着我,不用顾虑我,尽情放松吧?」

 今回プランをメインで組んだのは潔だ。  这次行程的主要策划者是洁。
 凛にも希望を聞いてはいたが、好きにしろというばかりで凛自身がどうしたいかはあまり口にしなかった。一応提案内容について口を挟むことはあったので、凛の意見がまったく反映されていないというわけではない。とはいえ潔はどうにも引け目を感じずにはいられなかった。
 虽然凛也听说了希望,但只是让她随意去做,凛自己到底想怎么做却很少提及。虽然偶尔也会对提案内容插嘴,所以不能说完全没有反映凛的意见。尽管如此,洁还是无法不感到一丝愧疚。

 なんといってもモナコの公用語はフランス語だ。リゾート地として多言語に対応しているとはいえ、凛がいてくれて助かった場面は数知れない。そうやって世話を掛けておきながら行き先は自分が行きたいところばかりでは、あまりに不公平だろう。
 毕竟摩纳哥的官方语言是法语。尽管作为度假胜地有多语言应对,但有凛在身边帮忙的场景数不胜数。一边让人家帮忙,一边却只去自己想去的地方,未免太不公平了吧。

 神妙な面持ちの潔を前にして、凛は瞬きを一つ落とした。
 面对神情严肃的洁,凛轻轻眨了一下眼。

「…考えておく」 「…我会考虑的」
「おー、任せた」 「哦,交给你了」

 潔は安堵の表情を浮かべる。そのまま二人は寝室の前で別れた。
 洁露出安心的表情。就这样,两人在卧室前分别了。


 明くる朝。  翌日清晨。
 潔は凛に連れられていった先で、ひくりと顔を引き攣らせていた。
洁被凛带去的地方,他微微皱起了眉头。

 威風堂々とした佇まいで宮殿のようにも見える、極めて豪奢な建築物だ。モナコいちの観光地といっていいにも関わらず、今回のバカンスでまだ訪れていなかった場所。散々観光情報を調べた潔は知っている。その名はグラン・カジノ。
那是一座气势恢宏、宛如宫殿般的极其奢华的建筑。尽管这里是摩纳哥首屈一指的旅游胜地,但在这次假期中洁还未曾造访过。他早已通过详尽的旅游信息调查得知,这个地方名为大赌场。

 そう、つまり凛の行きたいところ、それはなんとカジノだったのである。
没错,凛想去的地方,竟然是赌场。

 出発前にジャケットとネクタイの着用を命じられ首を傾げていたが納得した。普段着では門前払いを受ける気配が濃厚だ。
出发前被要求穿上夹克和领带,虽然有些疑惑但还是接受了。穿着平时的衣服恐怕会被拒之门外。

 庶民的な金銭感覚を持つ潔は入口の時点で尻込みしたが、隣の男がずんずん突き進んでいくので足を止めることもできない。昨夜ああ言っておいてやっぱり俺はちょっと、などと口にできるほど平素の潔の我は強くない。
拥有平民金钱观的洁在入口处就有些退缩,但旁边的男人却大步向前,让他也无法停下脚步。昨晚那样说了之后,果然我还是有点……这种话平时是说不出口的。

 そうしてとどめに立派な身なりのドアマンに恭しく促されては、もはや潔に退路はなかった。
就这样,被衣冠楚楚的门卫恭敬地催促着,已经没有退路了。

 案内されてようやく腹を括り、まあこれも経験かと考えていた矢先だった。凛が目玉が飛び出るような額を資金にぶち込んだ。潔は我が目を疑った。
被引导着终于下定决心,想着这也算是一种经历吧,就在这时。凛将令人瞠目结舌的巨额资金投入了。洁不敢相信自己的眼睛。

 それでも最初はまだ良かった。  尽管如此,最初还算顺利。
 凛は賭ける対象を分散させ、少しずつ堅実に資金を増やしていった。時には負けながらも差し引きではプラス、というゲームを繰り返す様を見て、潔は感心すると同時に凛の私生活が少し心配になった。コイツ実はギャンブル狂だったりするんだろうか。ゴシップ記事にすっぱ抜かれそうだ。
凛将赌注分散开来,一点一点稳健地增加资金。有时虽然会输,但总体上还是盈利的,洁看着这一幕,既感到佩服,又对凛的私生活有些担忧。这家伙该不会是个赌徒吧?感觉会被八卦杂志大肆报道。

 そうして見かねた潔がそろそろ終わりにしないか、と声を掛けようとしたところで事件は起きた。
看不下去的洁正打算劝他差不多该收手了,就在这时,事件发生了。

 凛が堅調に膨れ上がった資金をルーレットにオールインしたのである。しかも番号指定の一点賭けだった。素人目にも正気の沙汰でないことは明らかだ。
凛将稳步积累的资金全部押在了轮盘赌上。而且还是指定号码的单点押注。在门外汉看来,这显然不是正常人的行为。

 潔は慌てて自分のゲームを放り出し止めに入った。 洁慌忙丢下自己的游戏,冲进了房间。

「待て待て待てそれはヤバいだろ! 確率わかってんのお前、外したら云…千万がすっ飛ぶんだぞ!?」
「等等等等,那也太危险了吧!你知道概率的吧,要是失败了,可是会损失上千万的啊!?」

「うっせぇな、俺の金をどうしようと俺の勝手だろ」 「吵死了,我的钱怎么花是我的自由吧」
「そりゃそうだけど! それにしたって限度ってもんがあるでしょーが!!」
「那当然啦!但再怎么说也有个限度吧!!」

「知るか、そんなもん犬にでも食わせとけ。いいから黙って見てろ。今いいとこなんだよ…!」
「谁知道啊,那种东西给狗吃吧。好了,闭嘴看着。现在可是关键时刻…!」

 凛はそう言って、微塵の躊躇もなく札束から手を離す。
凛说完,毫不犹豫地松开了手中的钞票。

 その目が爛々と輝いているのを見て、潔はああこれは無理だな、と説得を諦めた。
 看到那双眼睛熠熠生辉,洁放弃了说服,心想这真是没办法了。

 交換したチップが一点に積まれ、じゃらじゃらと山を成す。ディーラーが優雅に了承を告げ、円盤が無慈悲に回転を始める。
 交换的筹码堆积成山,哗啦哗啦地堆叠起来。荷官优雅地宣布开始,圆盘无情地开始旋转。

 潔は思わず天を仰いだ。天井から下がるシャンデリアがあまりにも煌びやかで、目の毒だった。
 洁不禁仰望天空。从天花板垂下的枝形吊灯过于华丽,简直刺眼。

 

 倍化したチップを前にして、潔は魂の抜けたような深い息を吐く。
面对倍化后的芯片,洁吐出一口仿佛灵魂出窍般的深沉叹息。

 結果は凛の勝ちだった。遠巻きにしていた観衆から微かなどよめきが漏れる。
结果是凛赢了。远远围观的观众中传来轻微的骚动声。

 凛はずっと黙りこくったままだ。これ以上続けようとするならば、流石にどんな手を使ってでも止めよう。そう決めて恐る恐る凛の様子を窺う。
凛一直沉默不语。如果再继续下去,我无论如何也要阻止她。下定决心后,我小心翼翼地观察着凛的动静。

 そして、拍子抜けした。 于是,感到一阵失落。
 終わってしまえば、凛の眼差しは元通りの冷たさだった。先ほどまでの熱は何処へやら、最早つまらないという感情をさえ滲ませている。大勝ちした人間の顔とは到底思えない。
一旦结束,凛的眼神又恢复了往常的冷漠。刚才的热度不知去了哪里,甚至流露出一种无趣的情感。完全看不出是取得大胜之人的表情。

 潔はため息をつき、今度こそディーラーに撤退を告げる。
洁叹了口气,这次终于向经销商宣布撤退。

 邪魔は入らなかった。 邪魔没有进来。


 カジノを出た後、二人は地元民向けの食堂に入った。
离开赌场后,两人走进了一家面向当地居民的食堂。

 正装姿が浮いているが仕方ない。ジャケットとネクタイを取り払って緩和する。潔の精神はもうこれ以上堅苦しさに耐えられなかった。
正装姿态显得有些突兀,但也是无可奈何。脱下外套和领带以缓解紧张。洁的精神已经无法再忍受这种拘谨了。

 店員の勧めで選んだ牛ほほ肉の煮込みを突きながら、潔は呆れた顔で言う。
在店员的推荐下选了牛颊肉炖菜,洁一边戳着一边无奈地说道。

「お前さぁ。もうカジノはやめといた方がいいと思う」
「我说你啊,还是别再赌场混了比较好。」

 向き合った切れ長の目は半眼のまま動かないが、反論はない。
 对面那双细长的眼睛依旧半眯着,没有动弹,也没有反驳。

「スリルが欲しいのはなんとなくわかるけど、」 「虽然我大概能理解你想追求刺激的心情,」

 肉片の刺さったフォークを皿から持ち上げる。纏わりついた液体が滴った。それを見届けた後、再び正面に視線を向ける。
 他举起插着肉片的叉子,缠绕在上面的液体滴落下来。确认这一幕后,再次将视线转向前方。

 持ち上げた先端をつい、と凛に突きつけた。  举起的叉尖不由自主地向凛刺去。

「あんなんじゃ、満足できないだろ」 「那种程度,你不会满足的吧」

 潔の丸い眼差しが細められ、ピッチ上の陽炎に揺らめく。
 洁的圆润目光变得锐利,在上升的热气中摇曳。

 凛は不快げに眉を寄せる。  凛不悦地皱起眉头。
 言葉はない。代わりに白い歯が、赤い肉に食らいついた。
无言以对。取而代之的是,洁白的牙齿狠狠咬进了鲜红的肉里。

评论

  • こば 小叶

    春から始まった短編集太刀川、季節を巡ってついに一周回ってきましたね! これからも素敵な作品楽しみにしております!
    从春天开始的短篇集太刀川,随着季节流转终于又回到了起点呢! 今后也期待着您精彩的作品!

    5月2日回信
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